説明

面皰炎症抑制剤及びこれを含む皮膚外用剤

【課題】化粧料に含有させるのに適した、面皰の炎症を抑制する作用を有する成分を発見し、これを利用して、化粧料などの皮膚外用剤を提供する。
【解決手段】一般式(1)R−Su−Hy(Rは炭素数4〜10の直鎖で1価の脂肪族アシル基を表し、Suは糖残基を表し、Hyはハイドロキノン残基を表す。)に表されるアシル化ハイドロキノン配糖体及び/又はその生理的に許容される塩を面皰炎症抑制剤の有効成分とする。また、この面皰炎症抑制剤を皮膚外用剤の成分とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、面皰炎症抑制剤及びこれを含む皮膚外用剤に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、エステティックや美容整形で処置される頻度の高い症状の一つににきび痕が挙げられる。にきびは、Propionibacterium acnes等の菌が毛穴に繁殖することにより起こる炎症であるが、この炎症は、炎症部位の肥厚を引き起こすと同時に、メラノサイトを活性化することによりメラニンの産生の促進と沈着を誘導する。また、炎症の治癒の過程では、通常MMP1等のコラゲナーゼの活性が亢進し、瘢痕が形成されること(非特許文献1)、瘢痕形成にはマトリックスメタロプロテアーゼI型(MMP1)やII型(MMP2)が関与することが知られている(非特許文献2)。このような理由から、にきびの発症は治癒後の瘢痕の原因となり、いわゆるにきび痕として肌の外観印象に大きな影響を与えると考えられている。
にきびの発症部位には、脂腺性毛包の毛穴の中の脂肪と角質が混ざった塊である面皰が見られる。面皰は、P. acnes等の菌の繁殖の場であり、菌の繁殖によりやがて炎症を起こす。すなわち、面皰の炎症を抑制するためには、面皰内での菌の増殖を抑制することが重要である。菌の増殖を抑制するためには、日常的な処置が必要であり、例えば化粧料の使用などの日常的な動作によって処置することが望ましい。
【0003】
面皰の炎症を抑制するためには、抗菌成分と抗酸化成分を組み合わせて投与すること、例えば、テトラサイクリンやアスコルビン酸を組み合わせて投与することが有効であることが報告されている(非特許文献3)。しかしながら、テトラサイクリンなどの抗生物質を日常的に使用する化粧料に含有することは現実的でない。このような背景において、日常的に使用する化粧料に含有させるのに適した、面皰の炎症を抑制する成分の発見が求められていた。さらに、面皰が炎症を起こした場合でも、いわゆるにきび痕の形成を極力抑制するような成分の発見も求められていた。
【0004】
一方、一部のハイドロキノン誘導体には活性酸素を消去する作用があることが知られている(特許文献1、非特許文献4)。また、アルブチンなどのハイドロキノン配糖体がメラニン産生抑制作用を有することや肌荒れ改善作用を有することが知られ(特許文献2、特許文献3)、広範囲の化粧料に配合されている(特許文献4)。また、一部のアシル化アルブチンは、チロシナーゼ阻害活性を有することが知られている(特許文献5)。
しかしながら、ハイドロキノン配糖体の面皰に対する作用については、これまで報告されていない。
また、6−O−(3−ブテノイル)アルブチン、6−O−(4−ペンテノイル)アルブチン、6−O−(5−ヘキセノイル)アルブチン、6−O−(カプリロイル)アルブチン、6−O−(2−ノネノイル)アルブチン又は6−O−(9−デセノイル)アルブチン等は、文献未記載の新規化合物である。
【0005】
【特許文献1】特開平10−265386号公報
【特許文献2】特開平06−9366号公報
【特許文献3】特開平05−139950号公報
【特許文献4】特開2004−269523号公報
【特許文献5】国際公開第2004/033475号パンフレット
【非特許文献1】Pillinger M. H., et.al.; J. Immunol.; 2003; 171 (11); 6080-6089
【非特許文献2】Fujiwara M., et.al.; Br. J. Dermatol.; 2005; 153 (2); 295-300
【非特許文献3】Bowles W.H.; J Esthet Dent.;1998;10(4); 182-186
【非特許文献4】Iwai K.,et.al.; J Agric Food Chem.; 2004; 52(15); 4893-4898
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、化粧料に含有させるのに適した、面皰の炎症を抑制する作用を有する成分を発見し、これを利用して、化粧料などの皮膚外用剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、面皰の炎症を抑制する作用を有する成分を求めて鋭意研究努力を重ねた結果、下記一般式(1)に表されるアシル化ハイドロキノン配糖体又はその生理的に許容される塩が、P. acnesの抗菌作用、MMP1亢進の抑制作用を有していることを見い出し、本発明を完成させるに至った。即ち、本発明は、以下に示す通りである。
<1>下記一般式(1)に表されるアシル化ハイドロキノン配糖体及び/又はその生理的に許容される塩を有効成分として含む面皰炎症抑制剤。
【0008】
【化1】

【0009】
(但し、式中Rは炭素数4〜10の直鎖で1価の脂肪族アシル基を表し、Suは糖残基を表し、Hyはハイドロキノン残基を表す。)
<2>前記一般式(1)に表されるアシル化ハイドロキノン配糖体は、下記一般式(2)に表されるアシル化アルブチンであることを特徴とする、<1>に記載の面皰炎症抑制剤。
【0010】
【化2】

【0011】
(但し、式中Rは炭素数4〜10の直鎖で1価の脂肪族アシル基を表す。)
<3>前記一般式(1)又は(2)において、Rで表される直鎖で1価の脂肪族アシル基は、不飽和結合を有することを特徴とする、<1>又は<2>に記載の面皰炎症抑制剤。
<4>
前記一般式(2)に表されるアシル化アルブチンは、6−O−(3−ブテノイル)アルブチン、6−O−(4−ペンテノイル)アルブチン、6−O−(5−ヘキセノイル)アルブチン、6−O−(カプリロイル)アルブチン、6−O−(2−ノネノイル)アルブチンまたは6−O−(9−デセノイル)アルブチンであることを特徴とする<2>又は<3>に記載の面皰炎症抑制剤。
<5><1>〜<4>の何れか1項に記載の面皰炎症抑制剤を含む皮膚外用剤。
<6>にきびの予防又は改善用であることを特徴とする<5>に記載の皮膚外用剤。
<7>6−O−(3−ブテノイル)アルブチン、6−O−(4−ペンテノイル)アルブチン、6−(5−ヘキセノイル)アルブチン、6−O−(カプリロイル)アルブチン、6
−O−(2−ノネノイル)アルブチン又は6−O−(9−デセノイル)アルブチン、若しくはこれらの生理的に許容される塩。
【発明の効果】
【0012】
本発明の面皰炎症抑制剤は、面皰の炎症を抑制する効果に優れる。また、本発明の面皰炎症抑制剤は、化粧料などの皮膚外用剤に配合するのにも好適である。本発明の面皰炎症抑制剤を含有する皮膚外用剤は、にきびの予防又は改善に有効である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
(1)本発明の面皰炎症抑制剤
本発明の面皰炎症抑制剤は、前記一般式(1)に表されるアシル化ハイドロキノン配糖体及び/又はその生理的に許容される塩を有効成分として含むことを特徴とする。
【0014】
前記一般式(1)において、Rは炭素数4〜10の直鎖で1価の脂肪族アシル基を表す。好ましくは該アシル基の炭素数は7〜9である。該脂肪族のアシル基は、不飽和結合を有していても、飽和であっても良いが、不飽和結合を有することが好ましい。
好ましいアシル基としては、例えば、ブテノイル基、ペンタノイル基、ヘキセノイル基、ヘプテノイル基、オクテノイル基、ノネノイル基、デセノイル基、ブタノイル基、ヘキサノイル基、オクタノイル基(カプリロイル基)、デカノイル基(カプリノイル基)などが例示できる。中でも、3−ブテノイル基、4−ペンテノイル基、5−ヘキセノイル基、カプリロイル基、2−ノネノイル基及び9−デセノイル基が好ましく例示できる。
【0015】
一般式(1)において、Suは糖残基を表す。糖残基は、単糖残基でも、多糖残基でもよい。糖の種類としては、配糖体に見られる糖であれば特段の限定はなく、例えば、グルコース残基、フルクトース残基、アラビノース残基、ガラクトース残基、ラムノース残基等の単糖残基や、スクロース残基、マルトース残基等の多糖残基等が好適に例示できる。これらの中では単糖残基が好ましく、中でもグルコース残基が特に好ましい。
【0016】
上述したアシル基は、糖残基に結合している。糖残基に結合しているアシル基の数は、糖残基1分子あたり1個でも構わないし2個以上でも構わない。好ましくは、糖残基1分子あたりアシル基が1個結合し、且つ水酸基が少なくとも2個存在する形態である。
【0017】
一般式(1)において、Hyはハイドロキノン残基を表す。
【0018】
一般式(1)に表されるアシル化ハイドロキノン配糖体の内、特に好ましいものは一般式(2)に表されるアシル化アルブチンである。
中でも、6−O−(3−ブテノイル)アルブチン、6−O−(4−ペンテノイル)アルブチン、6−O−(5−ヘキセノイル)アルブチン、6−O−(カプリロイル)アルブチン、6−O−(2−ノネノイル)アルブチン又は6−O−(9−デセノイル)アルブチンが好ましく例示できる。
【0019】
一般式(1)に表されるアシル化ハイドロキノン配糖体は、例えば、ハイドロキノン配糖体と、アシル基に対応する脂肪酸クロリドを、アルカリ存在下反応させることにより得ることができる。
例えば、一般式(2)に表されるアシル化アルブチンは、アルブチンのグルコシル基の6位水酸基に、アシル基を導入することにより製造することが出来る。アシル基の導入は、アルブチンと、アシル基に対応する脂肪酸クロリドとを、アルカリ存在下反応させた後、グルコシル基の6位水酸基にアシル基が導入されたものを精製して得ることも出来るし、例えば、前記特許文献5(国際公開第2004/033475号パンフレット)に記載されるように、リパーゼを用いて、アルブチンと脂肪酸乃至は脂肪酸のエステル、特に好
ましくは脂肪酸のビニルエステルとを反応させる方法によっても製造できる。副産物の生成が少ないことから、後者のリパーゼを用いた方法で製造することが特に好ましい。かかる製造方法において使用されるリパーゼとしては、バチルス属由来のアルカリ性プロテアーゼ、カンジダアンタクティカ(Candida anterctica)由来のリパーゼなどが好ましく例示でき、カンジダアンタクティカ由来のリパーゼ、取り分け、リパーゼタイプBが、非水溶媒系でも優れた酵素活性が得られることから、特に好ましい。
【0020】
一般式(1)に表されるアシル化ハイドロキノン配糖体は、そのまま面皰炎症抑制剤の有効成分として使用することも出来るし、アルカリとともに塩を形成させて使用することも出来る。一般式(1)に表されるアシル化ハイドロキノン配糖体の塩としては、通常、医薬、化粧料の分野で知られている、生理的に許容されるアルカリの塩であれば特段の限定はなく、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩、カルシウム塩、マグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、トリエチルアミン塩、トリエタノールアミン塩、モノエタノールアミン塩等の有機アミン塩、リジン塩、アルギン酸塩等の塩基性アミノ酸塩等が好適に例示できる。
【0021】
一般式(1)に表されるアシル化ハイドロキノン配糖体及びその生理的に許容される塩は、P.acnes等の菌に対する抗菌作用、メラニン産生抑制作用、及びPPM1の阻害作用を有する。
【0022】
本発明の面皰炎症抑制剤は、一般式(1)に表されるアシル化ハイドロキノン配糖体及びその生理的に許容される塩以外に、この作用を補助する成分を含有することも好ましい。
この様な成分としては、既に、面皰の炎症を予防、改善したり、炎症の悪化を抑制する作用を有する物質などが好適に例示できる。具体的には、4−アルキルレゾルシノール類、アスコルビン酸又はその誘導体などが好ましく例示できる。4−アルキルレゾルシノール類としては、4−ヘキシルレゾルシノール、4−シクロヘキシルレゾルシノール、4−(1−エチルプロピル)レゾルシノールなどが例示できる。アスコルビン酸の誘導体としては、例えば、2−グルコシドのような配糖体、リン酸エステル、硫酸エステル等が好適に例示できる。
【0023】
また、本発明の面皰炎症抑制剤は、面皰の炎症を鎮静するために、抗炎症成分を含有することも好ましい。この様な抗炎症成分としては、グリチルリチン酸塩、グリチルレチン酸ステアリルエステル等のグリチルレチン酸類縁物質、トラネキサム酸、トラネキサム酸メチルアミドなどのトラネキサム酸類縁物質などが好適に例示できる。
【0024】
また、本発明の面皰炎症抑制剤は、P.acnes等の菌が発生する活性酸素を消去するために、活性酸素消去成分を含有することも好ましい。かかる活性酸素消去成分としては、例えば、ビタミンEニコチン酸エステル、δ−トコフェロールなどのビタミンE類が好ましく例示できる。
【0025】
(2)本発明の皮膚外用剤
本発明の皮膚外用剤は、本発明の面皰炎症抑制剤を含有することを特徴とする。
皮膚外用剤とは、皮膚に対して外用で適用される製剤の総称であり、具体的には、化粧料(医薬部外品や薬用化粧品等の皮膚外用医薬と化粧料との中間的性格を有するものを含む。)、皮膚外用医薬、皮膚外用雑貨等が例示できる。本発明の皮膚外用剤は、化粧料とすることが好ましい。これは、面皰が形成されているものの炎症がないことから疾病とは診断されない場合があり、このような場合に面皰の炎症を予防するためには化粧料による日常的な処置が、簡便かつ有効であるからである。勿論、面皰の炎症(にきび)の治療、改善などを目的として投与する皮膚外用医薬も、本発明の面皰炎症抑制剤の作用を十分に
利用するものであり、本発明の技術的範囲に含まれる。
【0026】
本発明の皮膚外用剤における面皰炎症抑制剤の含有量は、一般式(1)に表されるアシル化ハイドロキノン配糖体及び/又はその生理的に許容される塩の含有量として、好ましくは0.01〜10質量%、さらに好ましくは0.1〜5質量%である。
また、面皰炎症抑制剤が4−アルキルレゾルシノール類、アスコルビン酸又はその誘導体、活性酸素消去成分、抗炎症成分などを含む場合には、4−アルキルレゾルシノールの含有量が0.1〜1質量%、アスコルビン酸又はその誘導体の含有量が1〜10質量%、活性酸素消去成分の含有量が0.01〜1質量%、抗炎症成分の含有量が0.01〜5質量%となるように、面皰炎症抑制剤の含有量を調節することもできる。
【0027】
本発明の皮膚外用剤の用途は特に制限されないが、特ににきび予防又は改善用とすることが好ましい。なお、本発明の皮膚外用剤は、チロシナーゼ阻害又は美白以外の目的に使用するものであることが好ましい。
【0028】
本発明の皮膚外用剤の剤形としては、化粧料や皮膚外用医薬組成物で使用されている剤形であれば特段の限定はされない。例えば、ローション剤形、エマルション剤形、クリーム剤形、オイルゲル剤形、水性ゲル剤形等が特に好適に例示できる。
【0029】
本発明の皮膚外用剤は、上記面皰炎症抑制剤以外に通常皮膚外用剤で使用される任意成分を含有することが出来る。この様な任意成分としては、例えば、マカデミアナッツ油、アボガド油、トウモロコシ油、オリーブ油、ナタネ油、ゴマ油、ヒマシ油、サフラワー油、綿実油、ホホバ油、ヤシ油、パーム油、液状ラノリン、硬化ヤシ油、硬化油、モクロウ、硬化ヒマシ油、ミツロウ、キャンデリラロウ、カルナウバロウ、イボタロウ、ラノリン、還元ラノリン、硬質ラノリン、ホホバロウ等のオイル、ワックス類;流動パラフィン、スクワラン、プリスタン、オゾケライト、パラフィン、セレシン、ワセリン、マイクロクリスタリンワックス等の炭化水素類;オレイン酸、イソステアリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、ウンデシレン酸等の高級脂肪酸類;セチルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、オクチルドデカノール、ミリスチルアルコール、セトステアリルアルコール等の高級アルコール等;イソオクタン酸セチル、ミリスチン酸イソプロピル、イソステアリン酸ヘキシルデシル、アジピン酸ジイソプロピル、セバチン酸ジ−2−エチルヘキシル、乳酸セチル、リンゴ酸ジイソステアリル、ジ−2−エチルヘキサン酸エチレングリコール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、ジ−2−ヘプチルウンデカン酸グリセリン、トリ−2−エチルヘキサン酸グリセリン、トリ−2−エチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、テトラ−2−エチルヘキサン酸ペンタンエリトリット等の合成エステル油類;ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、ジフェニルポリシロキサン等の鎖状ポリシロキサン;オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサンシロキサン等の環状ポリシロキサン;アミノ変性ポリシロキサン、ポリエーテル変性ポリシロキサン、アルキル変性ポリシロキサン、フッ素変性ポリシロキサン等の変性ポリシロキサン等のシリコーン油等の油剤類;脂肪酸セッケン(ラウリン酸ナトリウム、パルミチン酸ナトリウム等)、ラウリル硫酸カリウム、アルキル硫酸トリエタノールアミンエーテル等のアニオン界面活性剤類;塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ベンザルコニウム、ラウリルアミンオキサイド等のカチオン界面活性剤類;イミダゾリン系両性界面活性剤(2−ココイル−2−イミダゾリニウムヒドロキサイド−1−カルボキシエチロキシ2ナトリウム塩等)、ベタイン系界面活性剤(アルキルベタイン、アミドベタイン、スルホベタイン等)、アシルメチルタウリン等の両性界面活性剤類;ソルビタン脂肪酸エステル類(ソルビタンモノステアレート、セスキオレイン酸ソルビタン等)、グリセリン脂肪酸類(モノステアリン酸グリセリン等)、プロピレングリコール脂肪酸エステル類(モノステ
アリン酸プロピレングリコール等)、硬化ヒマシ油誘導体、グリセリンアルキルエーテル、POEソルビタン脂肪酸エステル類(POEソルビタンモノオレエート、モノステアリン酸ポリオキエチレンソルビタン等)、POEソルビット脂肪酸エステル類(POE−ソルビットモノラウレート等)、POEグリセリン脂肪酸エステル類(POE−グリセリンモノイソステアレート等)、POE脂肪酸エステル類(ポリエチレングリコールモノオレート、POEジステアレート等)、POEアルキルエーテル類(POE2−オクチルドデシルエーテル等)、POEアルキルフェニルエーテル類(POEノニルフェニルエーテル等)、プルロニック型類、POE・POPアルキルエーテル類(POE・POP2−デシルテトラデシルエーテル等)、テトロニック類、POEヒマシ油・硬化ヒマシ油誘導体(POEヒマシ油、POE硬化ヒマシ油等)、ショ糖脂肪酸エステル、アルキルグルコシド等の非イオン界面活性剤類;ポリエチレングリコール、グリセリン、1,3−ブチレングリコール、エリスリトール、ソルビトール、キシリトール、マルチトール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ジグリセリン、イソプレングリコール、1,2−ペンタンジオール、2,4−ヘキサンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,2−オクタンジオール等の多価アルコール類;ピロリドンカルボン酸ナトリウム、乳酸、乳酸ナトリウム等の保湿成分類;表面を処理されていても良い、マイカ、タルク、カオリン、合成雲母、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、無水ケイ酸(シリカ)、酸化アルミニウム、硫酸バリウム等の粉体類、;表面を処理されていても良い、ベンガラ、黄酸化鉄、黒酸化鉄、酸化コバルト、群青、紺青、酸化チタン、酸化亜鉛の無機顔料類;表面を処理されていても良い、雲母チタン、魚燐箔、オキシ塩化ビスマス等のパール剤類;レーキ化されていても良い赤色202号、赤色228号、赤色226号、黄色4号、青色404号、黄色5号、赤色505号、赤色230号、赤色223号、橙色201号、赤色213号、黄色204号、黄色203号、青色1号、緑色201号、紫色201号、赤色204号等の有機色素類;ポリエチレン末、ポリメタクリル酸メチル、ナイロン粉末、オルガノポリシロキサンエラストマー等の有機粉体類;パラアミノ安息香酸系紫外線吸収剤;アントラニル酸系紫外線吸収剤;サリチル酸系紫外線吸収剤、;桂皮酸系紫外線吸収剤、;ベンゾフェノン系紫外線吸収剤;糖系紫外線吸収剤;2−(2’−ヒドロキシ−5’−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、4−メトキシ−4’−t−ブチルジベンゾイルメタン等の紫外線吸収剤類;エタノール、イソプロパノール等の低級アルコール類;ビタミンA又はその誘導体、ビタミンB6塩酸塩、ビタミンB6トリパルミテート、ビタミンB6ジオクタノエート、ビタミンB2又はその誘導体、ビタミンB12、ビタミンB15又はその誘導体等のビタミンB類;α−トコフェロール、β−トコフェロール、γ−トコフェロール、ビタミンEアセテート等のビタミンE類、ビタミンD類、ビタミンH、パントテン酸、パンテチン、ピロロキノリンキノン等のビタミン類等;フェノキシエタノール等の抗菌剤などが好ましく例示できる。
【0030】
また、本発明の皮膚外用剤を、面皰炎症改善用、にきび治療用などの皮膚外用医薬とする場合には、抗生物質を含有することもできる。抗生物質としては、クリンダマイシン、テトラサイクリン、ドキシサイクリン、ミノマイシンなどのテトラサイクリン系が好ましく例示でき、その含有量は、好ましくは1〜5質量%である。
【0031】
本発明の皮膚外用剤は、面皰炎症抑制剤と任意成分とを常法に従って処理することにより製造できる。
【0032】
以下に、実施例を挙げて、本発明について更に詳細に説明を加えるが、本発明がかかる実施例にのみ限定されないことは言うまでもない。
【実施例1】
【0033】
アルブチン 1.5g、3−ブテン酸 1.9g、ジメチルスルホキシド 1.35ml、ジオキサン 12mlに、「ノボザイム435」(ノボザイム社) 0.36g及びモレ
キュラーシーブ4A 1.35gを添加し、35℃、130rpmにて3日間撹拌した。変換率は40%であった。生成物をTLCで調べたところ、ほぼモノエステルのみが生成していることが分かった。酵素反応液をろ過して、酵素粉末を除去した後、反応液を減圧濃縮し、これをシリカゲル25gを充填したカラムに添加し、ヘキサン:酢酸エチル(1:1)で溶出し、生成物を集め、濃縮し、6−O−(3−ブテノイル)アルブチン(化合物1)を得た。化合物1のNMRチャートを図1に示す。
【実施例2】
【0034】
実施例1の3−ブテン酸を4−ペンテン酸に置き換えて同様に処理し、6−O−(4−ペンテノイル)アルブチン(化合物2)を得た。化合物2のNMRチャートを図2に示す。
【実施例3】
【0035】
実施例1の3−ブテン酸を5−ヘキセン酸に置き換えて同様に処理し、6−O−(5−ヘキセノイル)アルブチン(化合物3)を得た。化合物3のNMRチャートを図3に示す。
【実施例4】
【0036】
実施例1の3−ブテン酸をカプリル酸に置き換えて同様に処理し、6−O−(カプリロイル)アルブチン(化合物4)を得た。化合物4のNMRチャートを図4に示す。
【実施例5】
【0037】
実施例1の3−ブテン酸を2−ノネン酸に置き換えて同様に処理し、6−O−(2−ノネノイル)アルブチン(化合物5)を得た。化合物5のNMRチャートを図5に示す。
【実施例6】
【0038】
実施例1の3−ブテン酸を9−デセン酸に置き換えて同様に処理し、6−O−(9−デセノイル)アルブチン(化合物6)を得た。化合物6のNMRチャートを図6に示す。
【実施例7】
【0039】
<試験例1>
化合物2、4〜6について、P.acnesに対する抗菌作用を、パルプディスク法で確認した。即ち、普通寒天平板培地に、0.2%寒天溶液をオートクレーブ処理したものを60℃に温度調整し、塗工し、これに3日間前培養したP.acnesを播種した。これに各種検体50mg/mLを含むエタノール溶液20μLを含浸させた6mmφの濾紙を置き、37℃で一晩培養した。濾紙の周りに出来た阻止円を、次の基準で判別し評点を付した。即ち、明確に阻止円が存しない場合を−、2mm以下の不明瞭な阻止円を形成する場合を±、明確であるが幅が2mm以下の阻止円を+、阻止円の幅が2mmを越えて4mm以下の場合を++、阻止円の幅が4mmを越えて5mm以下の場合を+++とした。比較対照の為に、エタノールを含浸した濾紙(対照)、6−O−ウンデカノイルアルブチン(比較化合物1)を含浸した濾紙、アルブチン(比較化合物2)を含浸させた濾紙も同様に検討した。結果を表1に示す。これより、一般式(1)に表されるアシル化ハイドロキノン配糖体は優れたP.acnesに対する抗菌作用を有することが分かった。一方、アシル化アルブチンの抗菌作用は、アシル基の炭素数に影響を受けること、アシル化アルブチンの抗菌作用は、アシル基の炭素数が4〜10の場合に発揮されることも分かった。
【0040】
【表1】

【実施例8】
【0041】
<試験例2>
実施例1〜6の化合物について、細胞毒性とメラニン産生抑制作用を評価した。即ち、24ウェルのプレートを使用し、4.5×104個/cm2の濃度で正常ヒト表皮メラノサイト(倉敷紡績社製)を播種し、二酸化炭素雰囲気下、37℃で24時間培養を行った。対象化合物をDMSOに溶解し培地に加えたものを前日の培地と交換した。細胞毒性については、さらに2日間培養した後にトリプシン処理で細胞を回収し、0.5%トリパンブルーで染色した後、血球計算板上で生死細胞の割合を観察することにより評価した。また、メラニン産生抑制作用については、前記対象化合物を含む培地に交換した際に、細胞のメラニン合成過程で特異的に細胞に取り込まれる14Cラベルしたチオウラシルを0.25μCi(マイクロキュリー)添加し前記培養条件と同様に2日間培養した。各ウェルから培養液を除去し、PBS(リン酸緩衝生理食塩水)で洗浄後、トリクロロ酢酸(TCA)50μLを添加し細胞を溶解する。細胞が完全に溶解した後、水500μLを加え、ウェル中の全液性成分をチューブに移し、15分以上氷冷下で放置後、15000rpmで5分間遠心分離した。遠心分離後のチューブから上清を除去し、再度10%TCA500μLを添加し、氷冷下15分以上放置した。その後、15000rpmで5分間遠心分離した。再度上清を除去し、シンチレーターとしてアクアゾル-2(パーキンエルマー社製)を1mL加え、液体シンチレーションカウンター(LSC-6100:アロカ社製)にて放射線量を測定した。コントロールとして、該化合物を含まないサンプルを前記同様に調製し、コントロールに対する各化合物の放射線量の百分率を求め、メラニン量(%)とした。観察の判定基準は、細胞の生死に関しては、細胞の死滅率が50%以上の場合は細胞毒性あり、50%未満の場合は細胞毒性なしと判定し、メラニンの産生抑制作用に関してはメラニン量がコントロールに対して50%以下の場合に有効、50%より大きい場合に無効と判定した。結果を表2に示す。これより、本発明の化合物は細胞毒性が少なく、メラニン産生抑制作用に優れることが分かる。比較化合物1(6−ウンデカノイルアルブチン)、比較化合物2(アルブチン)も同様に検討した。比較化合物1では、メラニン産生抑制作用は有効と判定されたが細胞毒性ありと判定された。
これより、一般式(1)に表されるアシル化ハイドロキノン配糖体は、細胞毒性がなく、優れたメラニン産生抑制作用を有することが分かった。
【0042】
【表2】

【実施例9】
【0043】
<試験例3>
化合物1について、MMP1に対する阻害作用を試験した。即ち、「MMP-1 Assay Kit for Drug Discovery, Colorimetric, QuantiZyme」(Biomol International社製)を用い、化合物1の存在下、及び非存在下でのMMP1活性を測定した。化合物1の存在下でのMMP1活性は、化合物の非存在下でのそれに対して、化合物1の濃度が1mMの場合104.7%、0.1mMの場合108.3%であった。これより、一般式(1)に表されるアシル化ハイドロキノン配糖体はMMP1の亢進を抑制する作用をも有していることが分かった。
【実施例10】
【0044】
以下に示す処方に従って、本発明の皮膚外用剤である、化粧料1〜6を製造した。即ち、イ、ロの成分をそれぞれ80℃に加温し、攪拌下イに徐々にロを加え、ホモミキサーにより乳化状態を均一化した後、攪拌冷却し化粧料を得た。
【0045】
【表3】

【0046】
【表4】

【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明は、化粧料などの皮膚外用剤に応用できる。特に、にきび予防又は改善用の化粧料に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】化合物1のNMRチャートを示す図である。
【図2】化合物2のNMRチャートを示す図である。
【図3】化合物3のNMRチャートを示す図である。
【図4】化合物4のNMRチャートを示す図である。
【図5】化合物5のNMRチャートを示す図である。
【図6】化合物6のNMRチャートを示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)に表されるアシル化ハイドロキノン配糖体及び/又はその生理的に許容される塩を有効成分として含む面皰炎症抑制剤。
【化1】

(但し、式中Rは炭素数4〜10の直鎖で1価の脂肪族アシル基を表し、Suは糖残基を表し、Hyはハイドロキノン残基を表す。)
【請求項2】
前記一般式(1)に表されるアシル化ハイドロキノン配糖体は、下記一般式(2)に表されるアシル化アルブチンであることを特徴とする、請求項1に記載の面皰炎症抑制剤。
【化2】

(但し、式中Rは炭素数4〜10の直鎖で1価の脂肪族アシル基を表す。)
【請求項3】
前記一般式(1)又は(2)において、Rで表される直鎖で1価の脂肪族アシル基は、不飽和結合を有することを特徴とする、請求項1又は2に記載の面皰炎症抑制剤。
【請求項4】
前記一般式(2)に表されるアシル化アルブチンは、6−O−(3−ブテノイル)アルブチン、6−O−(4−ペンテノイル)アルブチン、6−O−(5−ヘキセノイル)アルブチン、6−O−(カプリロイル)アルブチン、6−O−(2−ノネノイル)アルブチンまたは6−O−(9−デセノイル)アルブチンであることを特徴とする請求項2又は3に記載の面皰炎症抑制剤。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか1項に記載の面皰炎症抑制剤を含む皮膚外用剤。
【請求項6】
にきびの予防又は改善用であることを特徴とする請求項5に記載の皮膚外用剤。
【請求項7】
6−O−(3−ブテノイル)アルブチン、6−O−(4−ペンテノイル)アルブチン、6−(5−ヘキセノイル)アルブチン、6−O−(カプリロイル)アルブチン、6−O−(2−ノネノイル)アルブチン又は6−O−(9−デセノイル)アルブチン、若しくはこれらの生理的に許容される塩。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−132644(P2009−132644A)
【公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−309747(P2007−309747)
【出願日】平成19年11月30日(2007.11.30)
【出願人】(000003160)東洋紡績株式会社 (3,622)
【出願人】(000113470)ポーラ化成工業株式会社 (717)
【Fターム(参考)】