説明

靱帯および腱の再生のための力学的に応答可能な足場

裂傷した靱帯および腱等の関節組織損傷の修復、再生、または再建のための多領域デバイスを提供する。デバイスは、3次元の編組状足場において、少なくとも1つの分解性材料と、生体適合性の非分解性ポリマー繊維ベースの材料とを含む。2つの端部分(14a、b)は、埋め込み部位でデバイスを取り付けるために設計され、かつ骨細胞の内方成長を可能にするように設計され、1つ以上の中間領域(12)は、靱帯または腱細胞の内方成長を可能にするように設計される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連する出願との相互参照)
本願は、米国特許法§119に基づき、米国仮特許出願第61/180,732号(2009年5月22日出願)および第61/181,033号(2009年5月26日出願)に対する優先権を主張する。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、埋め込み医療デバイスおよびプロステーシス、特に、関節組織用の構造上のプロステーシス、ならびに靱帯および腱を含む関節組織の再生用の生体内足場の双方として有用であるデバイスと、デバイスを作製し、使用する方法の分野である。
【背景技術】
【0003】
再建術は、欠損組織を生活可能で、機能的な代替手段と置換する原理に基づく。整形再建において、外科医は、外傷、病的変性、または先天性変形に起因する破損組織を自家移植片により置換することが多い。骨格再建における骨の移植は、整形外科医の一般的なタスクになっており、863,200を超える移植手順が、毎年、米国で実施されている。軟骨修復のための1,000,000を超える種々の手順が毎年実施され、靱帯修復のための約200,000〜250,000の手順が、毎年実施されている(Langer and Vacanti,非特許文献1)。現在、自家移植(患者から取った組織)および同種移植(屍体から取った組織)が、筋骨格問題の治療のための、最も一般的な置換採取源である(Friedman,et al.非特許文献2、Jackson,et al.非特許文献3、Gazdag,et al.非特許文献4、Shino et,al.非特許文献5、およびJackson,et al.非特許文献6)。前十字靱帯(ACL)の損傷等の靱帯損傷の修復において、膝蓋腱の切片が頻繁に使用される(Jackson,et al.非特許文献7)。自家性移植の移植術は、軟骨および骨修復において、現在の最適な治療である。
【0004】
しかしながら、これらの治療に付随する種々の問題が存在する。例えば、自家性組織における主な制限は、採取部位の残余組織が移植片の除去により破損される、供給部位の病的状態、および採取に利用可能である組織の量が限られていることである。同種移植は、これらの問題を緩和する試みである。しかしながら、この種の移植片は、組織に対する免疫応答のため、受容者により拒絶されることが多い。同種移植は、疾患を伝染することも可能である。徹底的なスクリーニングプロセスは、疾患を保有する組織の大半を排除するが、この方法は100%効果的ではない。外科医は、従来の再建移植材料に伴う制限の結果により、人工の代替手段を期待している。
【0005】
人工靱帯移植片または移植片支持体は、炭素繊維、Leeds−Keio(登録商標)靱帯(ポリエチレンテレフタレート)、Gore Tex(登録商標)プロステーシス(ポリテトラフルオロエチレン)、Dacron(登録商標)スリーブに巻き付けられたDacron(登録商標)テープで作製されるStryker−Dacron(登録商標)靱帯プロステーシス、およびポリプロピレンから作製されるGore−Tex(登録商標)靱帯増強デバイス(LAD)を含む。これらの移植片は、良好な短期間の成果を示したが、長期試験において、臨床問題に遭遇した。これらの合成靱帯移植片の制限は、置換材料の伸長、元の構造と比較した力学的強度の低下、および摩耗による置換材料の破砕を含む。
【0006】
天然の靱帯は、特に関節の構成骨を相互に保持する働きをするコラーゲン性軟組織の細長い束である。靱帯プロステーシスに所望される特徴は、適切な大きさおよび形状、生物学的適合性、外科医によって患者の身体に容易に取り付けられる機能、高い疲労耐性、ならびに修復または置換が求められる靱帯組織に近い力学的挙動を含む。
【0007】
コラーゲン繊維、生分解性ポリマー、およびそれらの複合物を含む靱帯構造物が開発されてきた。ACLおよび皮膚からの線維芽細胞が植種された、ACL再建のためのコラーゲン足場は、例えば、Bellincampi,et al.非特許文献8、および特許文献1に記載されている。構造へのACL線維芽細胞の付加、架橋剤の不在、および生体工学による組織を固定するための骨プラグの使用を含む、生体工学による靱帯モデルも記載されている(Goulet et al.Tendons and Ligaments.In R.P.Lanza,R.Langer,and W.L.Chick(eds),Principles of Tissue Engineering,pp.639−645,R.G.Landes Company and Academic Press,Inc.1997)。Murrayらの特許文献2は、断裂した前十字靱帯(ACL)を修復するための、コラーゲンまたは他の材料で作製される誘導性コアを含む3次元(3つの次元)足場組成物の使用、および断裂した前十字靱帯に組成物を付着させるための方法を記載する(特許文献3も参照のこと)。特許文献4は、裂傷したか、または断裂した靱帯を修復するための3次元の足場を開示する。足場は、タンパク質で作製されてもよく、ヒドロゲルまたはコラーゲン等の修復材料を用いて前処理される場合がある。Murrayらの米国特許出願第20080031923号は、靱帯を修復するために、裂傷した靱帯に適用されるコラーゲンゲルおよびコラーゲン−MATRIGELTMゲルの調製を記載する。これらのコラーゲンマトリクスは、大半が単一成分デバイスである。
【0008】
数多くの多成分靱帯プロステーシスが記載されている(例えば、特許文献5、特許文献6、特許文献7、特許文献8、および特許文献9を参照)。Hlavacekらの特許文献10は、グリコール酸または酪酸エステル連結を含む吸収性成分を有し、デバイスの残りは非吸収性成分を含む、デバイスを開示する。デバイスは、靱帯または腱の修復において、平らな編組として使用することができる、吸収性成分を含む複数の繊維を含む。必要な引っ張り強度は、最終編組のデニールを増加させることにより得られる。Silvestriniの特許文献11は、靱帯修復に使用するための、ポリエチレンテレフタレートおよびポリエステル/ポリエーテルブロックコポリマーを含む二成分デバイスを開示する。Liらの特許文献9は、2つの生体吸収性フィラメント密度の複合物である合成靱帯を記載する。強度保持の向上、耐荷力、および新しい組織の内方成長を有する、靱帯および腱等の関節組織を修復するためのデバイスがさらに必要である。
【0009】
本発明の目的は、力学的および構造的修復の双方を提供し、かつ新しい組織を形成するための細胞の内方成長のための足場を形成する、関節損傷の修復、再生、または再建のための生体適合性デバイスを提供することである。
【0010】
本発明のさらに別の目的は、強度保持の向上および新しい組織の内方成長をもたらす、関節損傷の修復、再生、または再建のためのデバイスを生産するための方法を提供することである。
【0011】
力学的および構造的支持を同時に提供しながら、細胞の内方成長および新しい組織の形成を支持する生体適合性ポリマーデバイスを、破損領域に埋め込むステップを含む、関節損傷における修復、再生、または再建のための方法を提供することも、本発明の目的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】国際公開第95/2550号
【特許文献2】米国特許出願公開第2002/0123805号明細書
【特許文献3】米国特許出願第2004/0059416号明細書
【特許文献4】国際公開第2007/087353号
【特許文献5】米国特許第3,797,047号明細書
【特許文献6】米国特許第4,187,558号明細書
【特許文献7】米国特許第4,483,023号明細書
【特許文献8】米国特許第4,610,688号明細書
【特許文献9】米国特許第4,792,336号明細書
【特許文献10】米国特許第4,792,336号明細書
【特許文献11】米国特許第5,061,283号明細書
【特許文献9】米国特許第5,263,984号明細書
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】Science,260(5110):920−6(1993)
【非特許文献2】Clin.Ortho.,196:9−14(1985)
【非特許文献3】Amer.J.Sports Med.,18(1):1−10(1990)
【非特許文献4】J.Amer.Acad Ortho.Surg.,3(1):1−8(1995)
【非特許文献5】J.Bone and Joint Surg.,70(4)1:556(1988)
【非特許文献6】Arthroscopy,10:442−52(1994)
【非特許文献7】Amer.J.Sports Med.,18(1):1−10(1990)
【非特許文献8】J.Orthop.Res.16:414−420(1998)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0014】
裂傷した靱帯および腱等の関節組織損傷の修復または再建のために、少なくとも3つの相を備えるデバイスを開発した。デバイスは、3次元の編組状足場において、ポリマー繊維ベースの分解性材料と、生体適合性の非分解性ポリマー繊維ベースの材料とを備える。好ましい実施形態において、デバイスは、骨細胞の内方成長を可能にする、埋め込み部位でデバイスを取り付けるために設計される端部分2つと、靱帯または腱の置換をもたらす、靱帯または腱の細胞の内方成長のための足場として機能する中間領域との、3つの領域から構成される。本実施形態において、中間領域は、大きさ、編組角度、多孔性、および/またはポリマー組成において、2つの端領域と異なる。分解性材料は、デバイスが分解性材料により提供される構造的および力学的補助を失う前に、靱帯の修復または増強を可能するように、約9ヶ月〜12ヶ月の期間後に分解するように設計される。デバイスは、3次元の回転編組法または行列法を使用して、分解性および非分解性のポリマー繊維を編むプロセスを使用して作製される。好ましい実施形態において、分解性材料はポリ(L−乳酸)(PLLA)繊維であり、非分解性材料はポリエステル繊維である。
【0015】
破損した関節組織は、切開手術中または関節鏡のいずれかで、損傷部位にデバイスを埋め込むことにより修復されるか、再生されるか、再建されるか、および/または増強される。2つの端部は、締まりネジ、リベット、または縫合糸等の他の取り付けデバイスを使用して、ドリルで穴を開けた骨孔の中に固定される。裂傷した、または破損した靱帯もしくは腱、または同種移植片組織は、治癒または増強を強化するために、デバイスに縫合されるか、またはそれに隣接して配置され得る。足場は、他の結合組織、または関節損傷組織、または他の組織を修復するために改変することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、多領域靱帯修復デバイスの斜視図である。
【図2A】図2Aは、図1のデバイスの骨の取り付け端部の斜視図である。]
【図2B】図2Bは、デバイスの靱帯組織足場の中心領域の斜視図である。
【図3】図3は、図2Aに示されるデバイスの骨の取り付け端の端部の斜視図である。
【図4A】図4Aは、裂傷したACLを置換するための、デバイスの埋め込みの予想図である。
【図4B】図4Bは、裂傷したACLを置換するための、デバイスの埋め込みの予想図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
好ましい実施形態において、デバイスは、関節損傷の修復、再生、再建、または増強に使用される。関節損傷は関節内および関節外の双方の損傷を含む。関節内損傷は、例えば、半月板、靱帯、および軟骨に対しての損傷を含む。関節外損傷は、靱帯、腱、または筋肉に対しての損傷を含むが、これらに限定されない。これらは、前十字靱帯(ACL)、外側側副靱帯(LCL)、後十字靱帯(PCL)、内側側副靱帯(MCL)、掌側橈骨手根靱帯、背側橈骨手根靱帯、尺側側副靱帯、橈側側副靱帯、半月板、唇、例えば、関節唇および寛骨臼唇、軟骨、ならびに他の組織に対しての損傷を含む。治療される損傷は、例えば、裂傷した、または断裂した靱帯である場合がある。靱帯は、コラーゲン繊維で構成される、強靭な線維性結合組織の短い束である。靱帯は、骨を他の骨と接合して、関節を形成する。裂傷した靱帯は、靱帯は接合したままだが、破損して、靱帯に断裂をもたらすものである。裂傷は、任意の長さ、または形状であり得る。断裂した靱帯は、靱帯の2つの別個の端部を提供する靱帯が完全に切断されるものである。断裂した靱帯は、同じ、または異なる長さの2つの靱帯の端部を提供する。断裂は、靱帯の断端が一端で形成されるような断裂であってもよい。破損した組織の修復は、締まりネジ、縫合糸、およびアンカー等の、力学的デバイスと組み合わせて、部分的に分解性のポリマーデバイスを使用して達成される。
【0018】
I.靱帯または腱修復デバイス
多成分ポリマーデバイスは、組織再生のためのテンプレートとして機能し、また初期の構造的および力学的支持を提供する。階層的設計法に基づき、好ましい靱帯または腱修復デバイス10を図1に示す。デバイスは、分解性ポリマー繊維と、1つ以上の非分解性または非常にゆっくり分解するポリマー繊維材料で構成される。好ましい実施形態において、デバイスは、デバイスを骨に取り付けるための2つの端部14a、14b(図4A、4Bに示される)と、置換関節組織として機能する中間領域12の、3つの領域からなる。この実施形態において、中間領域12は、大きさ、編組角度、多孔性、および/またはポリマー組成において、2つの端領域14a、14bと異なる(図2A、2B)。中間領域および端領域の初期の力学的強度は、僅かに強度が低下する骨の取り付け領域における追加の編組回転により生じる小さな差を除き、好ましくは、同じである。靱帯細胞の内方成長は中間領域で生じ、骨細胞の内方成長は、2つの端領域で生じる。時間とともに、デバイスは、分解し始める。端領域は、中間領域の高多孔性により、好ましくは、中間領域よりゆっくり分解する。中間領域は、同じ速度で分解するか、または異なる分解速度の領域を有してもよい。
【0019】
A.ポリマー材料
本明細書に使用される分解性領域は、ポリマーが分解すると、細胞および細胞外マトリクスにより置換される領域である。本明細書に使用される、非分解性成分は、分解性成分が分解しても、構造的および力学的特性を保持する。分解性領域は、好ましくは、9〜12ヶ月にわたって分解する。非分解性領域は、埋め込み後、1〜2年は分解しない。
【0020】
いくつかの実施形態において、非分解性材料は、生体適合性非分解性ポリマーで作製される。他の実施形態において、非分解性成分は、ゆっくり分解するポリマーである。さらに他の実施形態において、使用される非分解性材料は、1つ以上の非分解性ポリマーと、ゆっくり分解するポリマーとの混合物である。これらの実施形態において、ゆっくり分解するポリマーは、その分解速度が分解性成分として選択されるポリマーの分解速度より遅いように選択される。好ましい実施形態において、ゆっくり分解するポリマーの分解は、1〜2年で生じる。完全な分解は、生じない場合がある。
【0021】
適切な非分解性ポリマーは、ポリエチレン、ポリスチレン、シリコーン、ポリフルオロエチレン、ポリアクリル酸、ポリアミド(例えば、ナイロン)、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリウレタン、ポリブタジエン、ポリブチレン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルイミド、ポリフェニレンオキシド、ポリメチルペンテン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリフタルアミド、ポリ硫化フェニレン、ポリエーテルエーテルケトン(「PEEK」)、ポリイミド、ポリメチルメタクリレート、および/またはポリプロピレンを含む。いくつかの場合において、ポリマーは、リン酸三カルシウム、ヒドロキシアパタイト、フルオロアパタイト、酸化アルミニウム、または酸化ジルコニウム等のセラミックを含む場合がある。
【0022】
適切な分解性ポリマーは、ポリ酢酸およびポリグリコール酸等のポリヒドロキシ酸ならびにそれらのコポリマー、ポリ酸無水物、ポリオルトエステル、ポリホスファゼン、ポリカプロラクトン、生分解性ポリウレタン、ポリ酸無水物−コ−イミド、ポリフマル酸プロピレン、ポリジオキサンポリカプロラクトン、およびポリ4−ヒドロキシブチレート等のポリヒドロキシアルカン酸、ならびに/またはそれらの組み合わせを含む。タンパク質および多糖類等の天然の生分解性ポリマー、例えば、細胞外マトリクス成分、コラーゲン、フィブリン、多糖、セルロース、絹、またはキトサンも使用することが可能である。
【0023】
好ましい生分解性ポリマーは、ポリ(L−乳酸(PLLA)、ポリ(DL−乳酸(PLA)、およびポリ(DL−乳酸−コ−グリコール酸)(PLGA)等の乳酸ポリマーである。ポリ(DL−乳酸−コ−グリコール酸)のコモノマー(ラクチド−グリコリド)比は、好ましくは、100:0から50:50の間である。最も好ましくは、コモノマー比は、85:15(PLGA 85:15)から50:50(PLGA 50:50)の間である。PLLAのPLGAとの混合、好ましくは、PLGA85:15とPLGA50:50も使用することができる。非分解性領域の好ましいポリマーはポリエステルであり、分解性領域の好ましいポリマーはポリ(L−乳酸(PLLA)である。
【0024】
非分解性成分に対する分解性成分の割合は、非分解性成分が、分解性成分の分解後、保持された強度を提供するように選択される。好ましい実施形態において、非分解性成分は、デバイスの30%未満である。より好ましい実施形態において、非分解性成分は、デバイスの10〜30%を形成する。
【0025】
B.細胞植種
デバイスは、任意に、細胞、好ましくは哺乳類細胞、より好ましくはヒト細胞を用いて植種することができる。代替的に、デバイスを埋め込み、細胞をデバイスに付着させ、デバイス上およびデバイス内で増殖させることが可能である。種々の細胞種が植種に使用することができる。好ましい実施形態において、靱帯および腱の置換において、細胞は、元が間葉であるか、または間葉細胞を生成することができるかのいずれかである。したがって、好ましい細胞種は、結合組織のもの、ならびに多分化能性もしくは多能性の成人または胚性幹細胞、好ましくは多能性幹細胞である。ACL靱帯の修復、再生または再建において、足場をACL宿主細胞を用いて植種し、天然ACLの残部をそのままにし、デバイスを残部に隣接して、またはその中に埋め込むことが好ましい場合がある。しかしながら、足場は、付着および内方成長を示し、編組状足場の意図される目的に適する、任意の細胞種を用いて植種することが可能である。結合組織もしくは実質細胞等の他の組織種の修復、再生、または増強に使用される時、これらの足場の中に植種することが可能ないくつかの例示的な細胞種としては、骨芽細胞および骨芽細胞様細胞、内分泌細胞、線維芽細胞、内皮細胞、尿生殖器細胞、リンパ管細胞、膵島細胞、肝細胞、筋細胞、腸細胞、腎(kidney)細胞、血管細胞、甲状腺細胞、副甲状腺細胞、副腎−視床下部下垂体軸の細胞、胆管細胞、卵巣もしくは精巣細胞、唾液分泌細胞、腎(renal)細胞、軟骨細胞、上皮細胞、神経細胞、および筋芽細胞もしくは幹細胞、特に多能性幹細胞等の前駆細胞が挙げられるが、これらに限定されない。
【0026】
最初に使用される細胞を採取し、組織培養物中で成長させ、継代する。次いで、培養された細胞を3次元の編組状足場上に植種し、生細胞および部分的に分解性マトリクスからなる移植片材料を生産する。足場の各領域に植種することができる。端領域の骨芽細胞または間葉幹細胞は、骨、靱帯の再生を補助する。中間領域の間葉幹細胞は、靱帯を再生する。この移植片材料は、次いで、破損した靱帯または腱の治癒および修復を促進するために、靱帯または腱の損傷部位で、外科的に患者に埋め込むことができる。
【0027】
成長因子および他の生理活性剤を移植片材料に添加してもよい。好ましい実施形態において、これらは、線維芽細胞成長因子(FGF)、血管内皮増殖因子(VEGF)、上皮増殖因子(EGF)、および骨形態形成タンパク質(BMP)を含む。フィブロネクチンおよびビメンチン等の接着材料も添加することができる。これらは、好ましくは、0.1ナノグラム〜1マイクログラムの範囲の量で添加される。細胞単離物(例えば、骨髄細胞から)または血液から単離された生体因子も、移植片に添加されるか、または移植片とともに配置することができる。
【0028】
II.製造方法
標準的な器具および技法を使用して、デバイスを調製し、複数の領域(取り付け用の2つの端部、および少なくとも1つ、2つ、または3つ以上の領域)を作製するように改変される。中間領域が、組織の内方成長を促進するような、適切な原繊維間空間および最小限の厚さを有するようにデバイスを編み組む。
【0029】
好ましい実施形態において、PLLAおよびポリエステル繊維を編み組み、3次元の編組デバイスを形成する。構造がデバイスの長さにわたって所望の強度および剛性を有するように、デバイスを編み組む、織る、または組み合わせる。好ましい実施形態において、3次元の回転編組法または行列法が使用される。3次元の回転編組は、ホーンギヤの平坦な配列で繊維ボビンを独立して、かつ選択的に移動させることによって、編組構造における繊維配置の柔軟性を高めることを除き、従来の2次元の編組技法と同じである。これは、意図される最終用途に特定的に設計される繊維構造の生産を可能にする。しかしながら、本開示を読むことによって当業者が理解するように、行列法を含む、開示される3次元の編組状足場を調製するための他の技法も使用することができる。
【0030】
3次元の編組の形状および繊維構造を決定する幾何学的パラメータは、編組角度分布、繊維体積率、キャリアの数、および編組糸の幅を含む。編組パターンは、同様に、使用される編組機械/技法に依存する。取り付け端部の正面図を図3に示す。側面図を図2Aに示す。中間領域の緩い編組との本対照を図2Bに示す。
【0031】
デバイスのピーク負荷強度範囲は、500〜3200Nであり、初期剛性範囲は200〜700N/mmである。一束当りの繊維の数は、10〜60の範囲であり、編組当りの束の数は、36の範囲であるが、最低16から最大64であり得る。
【0032】
本技術の鍵は、少なくとも3つの異なる領域を含み、それぞれが特定の細孔の大きさのマトリクスを有し、特定の細胞内方成長を促進することである。典型的な多孔性の範囲は50から70%の間であり、細孔の大きさは177μmから250μmの間である。骨に取り付けるための2つの端部において、細孔の大きさは、骨細胞の内方成長を可能にするように設計され、中間領域は、特に、靱帯細胞の内方成長を可能にするように設計される。
【0033】
デバイスは、強度および骨の内方成長の双方を提供するための各端部の取り付けのための領域、ならびにこれが新しい組織によって置換され得るまで、靱帯または腱の細胞成長および構造的機能の保持を可能にする中間領域を有さない、米国特許第4,792,336号等の、従来のデバイスと対照的である。
【0034】
デバイスは、典型的に、ホイルまたはTYVEX(登録商標)パッケージ等の減菌キットで提供される。好ましい実施形態において、デバイスは、配置を容易にするために、移植片に縫合糸またはホイップスティッチを備える。キットは、典型的に、ネジ、縫合糸、または取り付けのための他の手段を備える。
【0035】
III.使用方法
デバイスは、関節修復または再建を必要とする部位に多領域ポリマーデバイスを埋め込むことにより、関節損傷の修復、再生、または再建のために使用される。
【0036】
2つ、または3つのポータルを有する、標準的な関節鏡検査技術を使用して、埋め込みを実施する。脛骨上のリーマーを使用して、貫通した脛骨を通ってACLの脛骨足跡領域までガイドを穴あけした後、ガイドピンをACLの大腿部挿入部の挿入部近くの大腿骨に対して等尺点位置に挿入する。この後、大腿骨側の標準的なリーマーを使用して貫通する。その後、多くの場合、ビースピンを使用して穴あけを完了し、次いで、移植片は脛骨および大腿骨を通過する。次いで、締まりネジを使用して、またはENDOBUTTON(登録商標)タイプの技法により移植片を固定する。関節切開を使用することにより、視覚化が補助され得る。好ましくは、移植片は、完全に関節鏡検検査ベースの技法のため、関節切開をせずに配置される。
【0037】
図4Aおよび4Bに示されるように、端部14a、14bは、骨孔に配置され、締まりネジ、リベット、縫合糸16、または他の技法により固定される。デバイスは、移植膝蓋腱を埋め込むために、現在、外科医により使用されているのと同じ技法を使用して埋め込まれることが意図される。
【0038】
使用には、修復される組織の生体力学的特性と一致するように、適切な数のデバイスが埋め込まれる。これは、術後の正常な機能に早く戻ることを可能にする。埋め込まれたデバイスは荷重に耐え、組織の内方成長が開始する。埋め込みの生分解性材料の力学的特性は、埋め込み後ゆっくり壊変し、負荷の内方成長線維組織への漸進的移行を可能にする。好ましい実施形態において、生分解性材料の分解は、約9〜12ヶ月後に生じる。さらなる内方成長は、吸収されるにつれて、埋め込み物の生分解性材料により提供された空間内へと継続される。このプロセスは、生分解性材料が完全に吸収され、新しく形成された組織のみが残るまで継続される。分解性材料の分解後に残る生体適合性の非吸収性材料は、新しく形成された組織の長期間にわたる支持を提供する。
【0039】
以下の非限定的な実施例は、本発明をさらに説明するために提供される。
【実施例】
【0040】
(実施例1)ヒツジ実験用のL−C靱帯編組の調製
材料および方法
手動の編組機械を使用して、長さ1メートルのL−C靱帯編組を調製し、総計36の繊維束(それぞれ24の繊維を含む)が作製されるまで、単一の繊維束を作製した。編組機械の底に位置する留め位置に繊維束を留める。36の繊維束の張力を弱める。長さ5cmの「タイトな」編組部分を作製した。全長約18インチの2つの繊維であるPLLA繊維の小片を使用して、長さ9インチの4つの繊維になるように長さ5cmの「タイトな」編組部分の留め端部上に2つに折り畳んだ。長さ3cmの「開いた」編組の部分を作製し、長さ3cmの部分の周りに完全に一回編組回転させる。全長約18インチの2つの繊維であるPLLA繊維の小片を使用して、長さ9インチの4つの繊維になるように長さ3cmの「開いた」編組部分の留め端部上に2つに折り畳んだ。きつく締める。長さ1インチのより糸を残し、余分な繊維を切断する。繊維束の編組が編組機械の上部で完了するまで、繰り返す。これにより13〜14の個別の8cmのTiger靱帯を含む1メートルの編組を得る。
【0041】
(実施例2)大型動物試験
オーストラリアのシドニー近辺にあるUniversity of New South Walesで、16匹のヒツジを使った試験的な大型動物試験を実施した。試験は、前十字靱帯の腱−骨再建に使用するために、大型動物モデルにおけるL−C靱帯の生体内反応を評価するように設計された。試験は、埋め込み後12週間での、標準的な2つに折り畳まれた自家移植腱対照と比較した、膝関節の肉眼的反応に関する生体内動作、免疫応答、骨孔のX線による評価、ポリマー破片の滑液の分析、合成靱帯の力学的動作、膝の骨孔および関節内空間の合成靱帯の組織学的および病理学的評価を評価した。
【0042】
材料および方法
動物:16匹のヒツジを4つの群に分けた:4匹は自家移植(対照)、4匹はL−C靱帯、4匹はtiger、および4匹はL−C靱帯により強化された自家移植。
埋め込み物:
自家移植群は、2つに折り畳まれた伸筋腱から成る。
L−C靱帯は、100%PLLA、編組、全長8cm、2.5×2.5cm、断面4mmである。
【0043】
Tigerは、83%PLLA、17%ポリエステル、編組、全長8cm、2.5×3×2.5cm、断面4mmである。
【0044】
埋め込み方法:
ヒツジの右後脚でACL再建を実施した。大腿部と脛骨に7mmの孔を開けた。大腿および脛骨の孔の固定には、チタンRCIスクリュー(8mmヘッドの7×25mm、Smith&Nephew)を使用した。
【0045】
鎮静のために、動物はZoletil(登録商標)のIM注射を受けた。イソフルランおよび酸素吸入を使用して、麻酔を達成した。全動物は、抗生物質による予防として、麻酔後、1gのセファロチンを静脈内投与され、5mlのベナシリン(Benacillin)を筋肉内投与された。動物は、外科的処置の開始前に、痛み緩和のために、ブプレノルフィン(Temgesic、0.006mg/Kg、SC)および4mlのカルプロフェン(Rimadyl、SC)も投与された。規定通りの手術前の血液検査のため、20ミリリットルの血液を採取した。
【0046】
自家移植の採取
中手骨の遠位部を超えた背部−側方面上に0.5cmの切開口を作製した。側部伸筋が他の伸筋から完全に解放されたら、#2縫合糸を用いて、改変されたKrachowスティッチを解放された遠位部に挿入した。腱ストリッパーを使用して、腱を近位に分け、これは、横方向に線維−骨の孔が退出する手首で腱を切断する。移植腱を除去し、生理食塩水に浸漬したガーゼで包んだ。吸収性の3−0縫合糸(Davis & Geck,North Ryde,Australia)で採取切開口部を閉じた。調製中、常に移植片を生理食塩水で湿らせておいた。#2縫合糸(Ethibond,Johnson and Johnson,North Ryde,NSW Australia)を使用して、Krackowスティッチを移植片のもう一方の端に配置した。
【0047】
再建
下内側−傍膝蓋切開口を作製した。関節包の下まで切開を続け、縦方向に分けた。皮膚の縁部および関節包をそらし、ヒツジの膝に典型である関節内の脂肪体を露出させた。脂肪体を一部切除して、十字靱帯を露出させた。PCLを破損しないように注意しながら、脛骨と大腿骨へのその挿入部で分けて、ACLを切除した。脂肪体を切除するために切断ジアルテミー療法を使用したが、ACLは、関節内の熱損傷を最小限にするためにナイフで切除された。ACLの脛骨および大腿骨への取り付け部位を、この時点で留意し、印を付けた。
【0048】
ガイド上に4.5mmのカニューレ挿入されたドリルビット、その後、7mmのカニューレ挿入されたドリルで骨孔を作製した。脛骨側は、脛骨粗面にすぐ遠位である、脛骨の内側縁から穴あけされた。ガイドは最初に穴あけされ、ACLの脛骨挿入部の中央で関節を退出する。大腿骨側は、関節内表面から外側方向に穴あけされた。上述のドリルガイドおよびカニューレ挿入されたドリルを用いて、大腿ACL挿入部の後部から孔を作製した。孔は、側方大腿骨顆部の側方面に近位に抜け出る。関節を生理食塩水で十分に洗浄した。移植片は、脛骨孔を通って膝関節に入り、次いで大腿孔に配置された。骨に隣接するネジを配置する間、張力(約40N)を移植片にかけた。手術部位を3−0Vicryl(Johnson and Johnson,North Ryde,Australia)で層状に閉じ、皮膚を3−0Dexon(Davis&Geck,North Ryde,Australia)で閉じた。部位を消毒し、Op−siteスプレーで噴霧した。
【0049】
術後の監視および回復
ヒツジはおりの中で自由に動き、最大に体重をかけた。そえ木は常に使用しなかった。第1週目は、毎日、その後は週に1回、腫れ、感染、出血、血腫、および一般健康障害についてヒツジを監視した。
【0050】
臨床機能の評価
手術時の弛緩および跛行の臨床評価は、跛行スコアに基づき定性的に評価された。スコア0は、負荷に耐えられない足の不自由な動物を表し、1は僅かに負荷に耐えられる、2は部分的に負荷に耐えられる、そして3は完全に負荷に耐えられることを表す。臨床評価は、1週目、4週目、および8週目、ならびに12週、26週、および52週での安楽死前に行われた。
【0051】
前方引き出しの機能検査は、全体的な弛緩を評価するために、術後評価と同じ方式で、屠殺時に実施された。
【0052】
指定された時間点で、Lethobarbを使用することにより、致死量注射を介して動物を殺した。右の後脚を実験の評価項目用に採取した。左の大腿骨遠位部を対側脚の検査のために採取した。日常的血液検査のため、安楽死の時に20ミリリットルの血液を採取した。この血液検査は、全体的な動物の健康状態を確認するために使用された。
【0053】
死後の分析は、内臓(心臓、肝臓、腎臓)、ならびにリンパ節において実施された。これらの組織の写真を撮り、一部を迅速に解剖し、規定通りの組織学的検査のためにリン酸緩衝ホルマリン中に入れた。パラフィン切片をH&Eで染色し、普通光および偏光下で、組織的外観および任意のポリマー摩耗破片の有無を検証した。
【0054】
膝を30度に屈曲させた全体的な膝安定を検証するために、前方引き出しテストは、屠殺後に実施された。膝を緩いまたは安定と判定した。
【0055】
力学的検査
力学的検査は、屍体の膝において、(Rogers et al.,1990、Walsh et al.,2007)の報告された技法を使用して、新しいデバイスを用いて、12、26、および52週、ならびにゼロ時点で実施された。力学的検査は、大腿骨−移植片−脛骨の複合構造体において実施された。右および左の後脚は、較正された油圧サーボ式検査機(MTS 858 Bionix,MTS Corporation,MN)を使用して検査された。膝包が無処置の大腿骨および脛骨を、取り付け調製のため、ドリルのテンプレート治具に配置した。これは、穴をあけている間の大腿骨および脛骨の任意の回転を避け、再現性のある検査設定を提供するために行われる。2つのドリル穴は、試料の再現性のある配置を確実にするために、取り付けテンプレートに基づき、大腿骨および脛骨の骨幹に配置される。取り付けテンプレートは、負荷および変位特性が前方引き出し荷重プロファイルで測定され得るように、試料を45度の屈曲に配向された。
【0056】
取付穴をあけた後、膝を解剖した。前中央切開口を使用して包を慎重に反転させ、組織学的検査のセクションに記載される組織学的分析のため、ホルマリン中に入れた。関節内移植片を破損しないように注意しながら、注意深く解剖することにより内側と外側の半月板を除去した。後の組織学的検査のため、半月板をホルマリンの中に入れた。大腿骨および脛骨の関節端骨の状態を記述し、写真を撮った。取付穴があけられた後、解剖を完了した。これは、任意の回転または移動なしに、大腿骨および脛骨の再現性のある配向を可能にした。
【0057】
10サイクルの前処理プロファイルを使用して、前方引き出し配向(45度)で試料を検査した後、50mm/分で破損するまで検査する前に、応力緩和期間が続いた。全試料について、ピーク負荷、引き抜きエネルギー、および線形剛性、ならびに破損モードおよび部位を判断した。分散分析法、その後、Windows(登録商標)のSPSSを用いたGames Howell事後検定を使用して、力学的データを分析した。
【0058】
滑液分析
採取時のポリマー破片の痕跡について、合成靱帯群の滑液を分析した。存在する液体を18ゲージ針および20mlのシリンジを用いて収集した。シリンジ内の液体の写真を撮り、色を書き留めた。液体試料を顕微鏡のスライド上に設置し、任意のポリマー破片の有無を偏光下で検証した。
【0059】
コンピュータ断層撮影
右大腿骨および脛骨(腱−骨再建側)において、コンピュータ断層撮影(CT)を実施した。Toshiba社製のスキャナー(Tokyo,Japan)を使用して、大腿骨および脛骨の長手方向軸に垂直にCTスキャンを実施した。全てのスキャンにおいて、スライス幅は0.5mmに設定された。CTスキャンをDICOMフォーマットで保存した。DICOM画像をMIMICS(Materialise,Belgium)を使用して表示した。3次元モデルを、軸面、矢状面、および冠状面に基づき復元し、検証した。
【0060】
マイクロコンピュータ断層撮影
右大腿骨および脛骨(腱−骨再建側)において、マイクロコンピュータ断層撮影(CT)を実施した。Inveon社製のスキャナー(Siemens,USA)を使用して、大腿骨および脛骨の長手方向軸に垂直にCTスキャンを実施した。全てのスキャンにおいて、スライス幅は50ミクロンに設定された。CTスキャンをDICOMフォーマットで保存した。DICOM画像をMIMICS(Materialise,Belgium)を使用して表示した。3次元モデルを、軸面、矢状面、および冠状面に基づき復元し、検証した。
【0061】
DICOM画像のJPEG画像をレポートに提供した。ネジ、腱−骨、およびネジ−骨の相互作用は、マイクロCTの使用により、より詳細な様式で定性的に検討された。
【0062】
磁気共鳴画像
組織学的検査専用の動物に対して、MRIを実施した。解剖前に、3T MRIインタクト(intact)を使用して右および左の後脚をスキャンした。T2強調画像を使用して、対側面と比較した全体的な治癒状態を評価するために、移植片の関節内部分のシグナル強度についてMR画像を分析した。
【0063】
右の脛骨および大腿骨の組織学的検査
ホルマリンを2回交換しながら、最低72時間、冷却したリン酸緩衝ホルマリンに固定することにより、組織学的検査用に右の脛骨を処理した。適切な固定後、脛骨を弓鋸で粗く刈り込み、脛骨孔および骨の周囲を単離した。単離した骨孔をエタノールで脱水し、PMMAに埋め込んだ。ポリマー化ブロックは、Buelher社製の鋸を使用して、骨孔の長手方向軸に垂直に5mmブロックに切断された。ブロックをFaxitroned、研磨し、環境電子顕微鏡(Hitachi TM1000)を使用して、骨の内方成長および合成靱帯との融合について検証した。ネジ−移植片および移植片−骨の相互作用は、内方成長および相互作用の痕跡、ならびに骨吸収等の有害事象について検証された。
【0064】
各ブロックからの最終部分は、Leica SP 1600ミクロトームを使用して、規定通りの簡単な組織学的検査用に切断された。移植片、ネジ、および孔の間の組織学的相互作用は、骨の反応、またはある場合には有害反応に関して評価される。
【0065】
右および左の膝の関節内部分を採取し、大腿挿入部を7−0縫合糸で印を付けた。アルコールで脱水した後、これらの試料をPMMAで処理した。Leicaミクロトームを使用して、ブロックを薄片にした。薄片をH&EおよびTetrachromeで染色し、新しい組織浸潤を評価した。細胞数および浸潤の程度を時間に対して比較した。各時間点で、組織学的検査を無処置の左の手術しなかった側と比較した。
【0066】
右と左の膝の内側および外側の包組織は、規定通りのパラフィン組織学的検査およびH&E染色のために処理された。これらの薄片を比較して、移植片または外科的処置が骨膜に変化をもたらしたかどうかを判断した。
【0067】
内側の大腿骨顆部および内側の脛骨からの関節軟骨の試料を採取する。軟骨試料をホルマリン中に固定し、ギ酸中で脱石灰した。矢状切片をパラフィンに埋め込み、切片をH&EおよびSaf Oで染色して、外科手術または合成移植片の存在による関節軟骨の任意の変化を検証した。
【0068】
右と左の膝からの内側半月板の試料を採取した。試料をホルマリン中に固定し、パラフィン組織学的検査のために処理した。切片をH&Eで染色して、外科手術または合成移植片の存在による半月板の任意の変化を検証した。
【0069】
結果
本試験の主な目的は、100%生分解性合成移植片であるL−C LigamentTMを使用したACL再建と比較した、従来のACL自家移植修復の初期反応を検証することであった。成ヒツジモデルを使用して、試験は、種々の時間枠で、多くの生体内性能要因を検証する。本試験で評価された評価項目は、埋め込み後、種々の時間点で、標準的な2つに折り畳まれた(4本によられた)自家移植腱対照と比較した、術後回復、動物の弛緩および跛行の臨床評価、膝関節の肉眼的反応、免疫応答、骨孔のX線による評価、滑液の分析、ならびに膝の骨孔および関節内空間のL−C LigamentTMの組織学的および病理学的評価を含む。
【0070】
最初の埋め込み後、検査動物は、臨床的に評価され、定時スケジュールで、跛行および荷重能力について監視された。合成移植片で処置された全ての被験体は、自家移植で処置されたものと比較して、優れた回復を示した。これは、ある程度、自家移植モデルに見られる、採取された部位の病的状態の欠失による。試験動物は、最初の1〜3日の間、部分的な荷重を体験したが、その後、荷重を増加した。最初の屠殺が発生した時には、全ての動物は、定性的な跛行スコアに基づき、正常な歩行であった。
【0071】
埋め込みから約12週間後、巨視的検査ならびに組織学的、X線検査、および病理学的評価のために、数匹の試験動物を屠殺した。死後の分析は、主な内臓、ならびにリンパ節において実施された。任意の有害事象の徴候はなかった。
【0072】
X線および磁気共鳴画像(MRI)を含む、再建された脚のX線画像分析は、12週間後、固定ネジの配置を確認した。12週でのマイクロコンピュータ断層撮影(マイクロCT)の冠状断像は、2つのチタン締まりネジとL−C LigamentTM合成移植片を示した。ネジは、大腿骨と脛骨の孔に良好に配置され、孔の縁に沿った新しい接触面がCTスキャンで認められ、術後12週間で、骨−孔接触面の治癒が進行していることを示した。マイクロCT画像は、大腿骨または脛骨の孔が拡大しなかったことも実証した。これは、有益で重要な所見であった。
【0073】
L−C LigamentTM試験動物の巨視的解剖は、膝の関節における有害反応の兆候を示さず、滑液は清浄で、破片はなかった。さらに、12週で、合成靱帯を埋め込まれた動物の線維組織は関節内領域の移植片を完全に覆っていた。合成移植片の断面図は、関節内領域と脛骨の表面の双方において、L−C LigamentTM内に明確な組織も示した。これらの巨視的所見は、全て有意な治癒の兆しであり、強力な再生反応を示す。
【0074】
12週で屠殺された動物の詳細な組織学的検査は、巨視的所見を裏付けた。L−C LigamentTM移植片の関節内部分、ならびに遠位および近位脛骨を採取し、脱水し、ポリメチルメタクリレート(PMMA)に埋め込み、メチレンブルー/フッシンで染色し、光学顕微鏡で分析した。大腿骨孔を通したネジの長手方向軸に垂直に、切片を切断した。移植片の長手方向軸に垂直に関節内部分を薄片にし、脛骨孔をネジの長手方向軸に垂直に孔の近位部ならびに中間部を薄片にした。
【0075】
L−C LigamentTM動物の組織学的試験は、全て、関節内領域内における靱帯化、ならびに脛骨孔の入口(固定点)における線維組織統合の強力な証拠を示した。靱帯化のプロセスは、新しい組織の移植片の関節内部内への統合を特徴とした。組織学的に、固定点での組織浸潤は、多くの類似する研究成果に主に不足していたことであった。
【0076】
合成移植片は、12週の時間点で、偏光下で観察された時に、大腿骨孔を通るネジの長手方向軸に垂直な部分において容易に確認された。移植片は、無損傷のように見え、分解の巨視的証拠はなかった。移植片は、大腿骨孔に良く固定され、ドリルの縁の海綿骨の肥厚は明らかであった。新しい線維組織は移植片に統合されたことが認められた。多核細胞が軟組織−骨接触面に沿って存在した。高倍率下で、膨化した線維芽細胞および新しい結合組織が、デバイス内に統合する新しい軟組織において認められた。PLLAにおける吸収の証拠は、12週で認められず、PLLA繊維は無損傷のように見えた。
【0077】
移植片の長手方向軸に垂直に薄片された関節内部は、新しい線維組織が繊維間に存在する空間に統合した、PLLA繊維の存在を明らかにした。高倍率は、骨孔に記述する、同様の線維組織の移植片への統合、および線維芽細胞の存在を実証した。
【0078】
脛骨孔の近位部の切片も12週の時間点で分析した。これらの切片は骨孔に位置するが、ネジはこれらの切片に存在せず、切片はネジの上であることを示す。合成移植片は、偏光下で観察された時に、骨によって包囲されていた。移植片は無損傷のように見え、分解の巨視的痕跡はなく、新しい線維組織が移植片に浸潤していることが認められた。高倍率下で、PLLA繊維は無損傷のように見え、新しい線維組織およびコラーゲン組織はPLLA繊維に統合していることが認められた。
【0079】
脛骨孔の中央の移植片−ネジ接触面の切片を分析した。これらの切片において、移植片上のホイップスティッチは、孔に対して移植片を圧縮するネジとともに認められた。ネジが移植片を圧縮する脛骨孔内の接触面の綿密な検証は、縁での統合および移植片の安定した固定を明らかする。接触面は事実上繊維状であり、線維芽細胞は新しく形成された結合組織である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
関節組織の置換または再生のためのデバイスであって、
埋め込み後9ヶ月から12ヶ月の間に分解するポリマー繊維と、
埋め込み後1年未満に分解しないポリマー繊維と、
を備え、
前記ポリマー繊維は、3次元の編組状足場に編み込まれ、埋め込み部位で前記デバイスを取り付けるための2つの端部分と、前記端部分間の少なくとも1つの中間部とを形成し、前記中間部のポリマーは、より急速に分解するか、または前記中間部は、前記端部分より多孔質であり、
前記デバイスは、組織が前記デバイスに統合されると、前記埋め込み部位で関節組織の機能を提供する、
デバイス。
【請求項2】
前記端部分は、骨に取り付け可能であり、骨組織の内方成長を可能にする、靱帯または腱修復のための、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記中間部の多孔性は、結合組織の内方成長を可能にする、請求項2に記載のデバイス。
【請求項4】
3次元の回転編組法、または行列法により生産される、請求項1に記載のデバイス。
【請求項5】
500〜3200Nの範囲のピーク負荷強度を有し、200〜700N/mmの初期剛性範囲を有する、請求項1に記載のデバイス。
【請求項6】
一束当りの繊維の数は、10〜60の範囲であり、編組当りの束の数は、16〜64の範囲である、請求項1に記載のデバイス。
【請求項7】
50〜70%の多孔性の範囲を有し、細孔の大きさは、177μmから250μmの間である、請求項1に記載のデバイス。
【請求項8】
前記中間部は、大きさ、編組角度、または多孔性において、前記端部分と異なる、請求項1に記載のデバイス。
【請求項9】
前記ポリマー繊維の少なくとも70%は、1年未満に分解可能である、請求項1に記載のデバイス。
【請求項10】
前記ポリマー繊維の70〜90%は、1年未満に分解可能である、請求項9に記載のデバイス。
【請求項11】
前記分解性ポリマー繊維は、ポリ(L−乳酸(PLLA)、ポリ(DL−乳酸(PLA)、ポリ(DL−乳酸−コ−グリコール酸)(PLGA)、ポリオルトエステル、ポリ酸無水物、ポリホスファゼン、ポリカプロラクトン、ポリヒドロキシアルカノエート、生分解性ポリウレタン、ポリ酸無水物−コ−イミド、ポリフマル酸プロピレン、ポリジオキサノン、多糖類、コラーゲン、絹、キトサン、およびセルロースから成る群より選択されるポリマーで構成される、請求項1に記載のデバイス。
【請求項12】
前記非分解性ポリマー繊維は、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリエステル、ポリエチレン、ポリアミド、ポリイミド、ポリウレタン、ポリブタジエン、ポリブチレン、およびポリプロピレンから成る群より選択されるポリマーで構成される、請求項1に記載のデバイス。
【請求項13】
前記デバイスは、細胞が植種され、その内方成長は前記足場により支持される、請求項1に記載のデバイス。
【請求項14】
前記細胞は、間葉系細胞、間葉系細胞を生成する細胞、線維芽細胞、多能性幹細胞、および多分化能性幹細胞から成る群より選択される、請求項13に記載のデバイス。
【請求項15】
患者の損傷した腱または靱帯を修復、再生、置換、または再建するための方法であって、請求項1〜14のうちのいずれかのデバイスを損傷した腱または靱帯の部位に埋め込むステップを含む、方法。
【請求項16】
請求項1〜14のうちのいずれかに記載のデバイスと、取り付けるための手段とを備える、キット。
【請求項17】
請求項1〜14のうちのいずれかに記載のデバイスを作製する方法であって、
3次元の足場であって、
埋め込み後9ヶ月〜12ヶ月で分解するポリマー繊維と、
埋め込み後1年未満に分解しないポリマー繊維と、
を備える、3次元の足場を編み組むステップを含み、
前記ポリマー繊維は、3次元の編組状足場に編み込まれ、埋め込みの部位で前記デバイスを取り付けるための2つの端部分と、前記端部分間の少なくとも1つの中間部とを形成し、前記中間部のポリマーは、より急速に分解するか、または前記中間部は、前記端部分より多孔質であり、
前記デバイスは、組織が前記デバイスに統合されると、前記埋め込み部位で関節組織の機能を提供する、
方法。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【公表番号】特表2012−527300(P2012−527300A)
【公表日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−511803(P2012−511803)
【出願日】平成21年12月30日(2009.12.30)
【国際出願番号】PCT/US2009/069809
【国際公開番号】WO2010/134943
【国際公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【出願人】(511278512)ソフト ティシュー リジェネレイション, インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】