説明

鞍乗り型車両のエアクリーナ構造

【課題】フレーム部材周辺の限られたスペースにエアクリーナを配置した鞍乗り型車両のエアクリーナ構造において、エアクリーナ容量を確保しつつメンテナンス性を確保し、かつ余剰スペースの発生を抑える。
【解決手段】エアクリーナ90の外形を形成するエアクリーナケース91と、このエアクリーナケース91内に収容されて外気をろ過するエレメント101とを備え、前記エアクリーナケース91が、スロットルボディに固定的に支持されるベース部92と、このベース部92に着脱可能に取り付けられるカバー部93とに分割され、前記エレメント101が、前記カバー部93に保持される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動二輪車等の鞍乗り型車両のエアクリーナの構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車体フレームにおけるヘッドパイプから後方に延びるメインフレームの後端からさらに下方に向けてミドルフレームを延出し、このミドルフレームの直前にエアクリーナ及びスロットルボディを連設した鞍乗り型車両において、エアクリーナケースの一側にエレメントを出し入れ可能な開口及びこれを開閉するメンテナンスカバーを設け、車体側方からエアクリーナのメンテナンスを可能としたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−230301号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記従来技術においては、エアクリーナケースの側部開口から出し入れ可能な大きさのエレメントとしなければならず、エアクリーナ容量が制限されるという課題がある。また、エレメントの大きさを確保しようとすると、エアクリーナケースを開閉できるだけのスペースがミドルフレームの前方に必要となり、組み付け後に空きスペースが生じてしまうという課題がある。
【0005】
そこで本発明は、上記のように限られたスペースにエアクリーナを配置した鞍乗り型車両のエアクリーナ構造において、エアクリーナ容量を確保しつつメンテナンス性を確保し、かつ余剰スペースの発生を抑えることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題の解決手段として、請求項1に記載した発明は、
鞍乗り型車両(1)の内燃機関(12)への燃料供給装置(89)に接続されるエアクリーナ(90)の構造において、
前記エアクリーナ(90)は、その外形を形成するエアクリーナケース(91)と、このエアクリーナケース(91)内に収容されて外気をろ過するエレメント(101)とを備え、前記エアクリーナケース(91)は、前記燃料供給装置(89)に固定的に結合される第一ケース(92)と、この第一ケース(92)に着脱可能に取り付けられる第二ケース(93)とに分割され、前記エレメント(101)は、前記第二ケース(93)に保持されることを特徴とする。
なお、前記鞍乗り型車両には、運転者が車体を跨いで乗車する車両全般が含まれ、自動二輪車のみならず、三輪(前一輪かつ後二輪の他に、前二輪かつ後一輪の車両も含む)又は四輪の車両も含まれる。
請求項2に記載した発明は、
前記エレメント(101)は、前記第一ケース(92)及び第二ケース(93)間の分割面(95)よりも第二ケース(93)側に配置されることを特徴とする。
請求項3に記載した発明は、
前記エアクリーナケース(91)は、前記第一ケース(92)を前側、前記第二ケース(93)を後側として前後分割されることを特徴とする。
請求項4に記載した発明は、
前記鞍乗り型車両(1)は、ヘッドパイプ(6)から後方に延びるメインフレーム(13)と、このメインフレーム(13)の後端から下方に延びるミドルフレーム(17)とを有する車体フレーム(5)を備え、前記ミドルフレーム(17)の前方に前記エアクリーナ(90)が配置され、このエアクリーナ(90)の前方に前記燃料供給装置(89)が連設され、前記エアクリーナ(90)の後端が前記ミドルフレーム(17)の前縁よりも前方に配置されることを特徴とする。
請求項5に記載した発明は、
前記メインフレーム(13)の下方に、クランクケース(31)から上方へ延びるシリンダ部(32)を備えると共に前記シリンダ部(32)から後方へ延びる吸気通路(89)を備えたエンジン(12)が配置され、前記吸気通路(89)に前記第一ケース(92)が固定される一方、前記第二ケース(93)は、板状の底壁(93c)の端縁から前方へ延びる筒状の外周壁(93a)を有し、前記外周壁(93a)の前端位置で前方に開放すると共に、前記外周壁(93a)の前端縁部が前記第一ケース(92)に取り付けられ、前記吸気通路(89)には、前記外周壁(93a)と平行な筒状をなして前記第二ケース(93)内に収納される前記エレメント(101)が接続され、このエレメント(101)の軸方向長さが、前記外周壁(93a)の軸方向長さよりも短くされることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
請求項1に記載した発明によれば、エアクリーナ全体を取り外さなくても、第二ケースとエレメントとの小組体を着脱することのみで、エアクリーナのメンテナンスが可能となるため、エアクリーナケースに設けた開口からエレメントを出し入れする場合と比べて、メンテナンス性を確保しつつエアクリーナ容量を確保できる。また、エアクリーナ全体を着脱する場合と比べて、その周囲の余剰スペースの発生を抑制できる。
請求項2に記載した発明によれば、エレメントが第二ケース内に全て収まることとなり、これらの小組体の着脱時にエレメントが他部品に干渉することを抑制できる。
請求項3に記載した発明によれば、エアクリーナケースが左右分割の場合よりもエレメントを着脱し難い前後分割の構造において、第二ケース及びエレメントの着脱の容易化を図ることができる。
請求項4に記載した発明によれば、燃料供給装置とミドルフレームとの間をエアクリーナの設置スペースとして効率よく利用できる。
請求項5に記載した発明によれば、燃料供給装置及びミドルフレーム間のスペースになるべく大容量のエアクリーナを配置しつつ、エレメント及び第二ケースの小組体の着脱の容易にできる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施形態における自動二輪車の左側面図である。
【図2】上記自動二輪車の車体フレームの斜視図である。
【図3】上記自動二輪車のエアクリーナ周辺の左側面図である。
【図4】上記自動二輪車のエアクリーナ周辺の上面図である。
【図5】上記エアクリーナの一部断面を含む斜視図である。
【図6】上記エアクリーナのベース部の斜視図である。
【図7】図5のC−C断面図である。
【図8】上記エアクリーナの分解状態の左側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下の説明における前後左右等の向きは、特に記載が無ければ以下に説明する車両における向きと同一とする。また以下の説明に用いる図中適所には、車両前方を示す矢印FR、車両左方を示す矢印LH、車両上方を示す矢印UPが示されている。
【0010】
図1に示す自動二輪車1において、その前輪2は左右一対のフロントフォーク3の下端部に軸支され、左右フロントフォーク3の上部はステアリングステム4及びトップブリッジ4aを介して車体フレーム5前端部のヘッドパイプ6に操向可能に枢支される。トップブリッジ4a上には操向用のバーハンドル4bが取り付けられる。左右フロントフォーク3間にはフロントフェンダ7が支持される。
【0011】
自動二輪車1の後輪8は、車体後部下側で前後に延びるスイングアーム9の後端部に軸支される。スイングアーム9の前端部は、車体フレーム5下部の左右ピボットプレート11に上下揺動可能に枢支される。後輪8は、自動二輪車1の原動機であるエンジン12に対して、車体後部左側に配設された例えばチェーン式の伝動機構9aを介して連結される。
【0012】
図2を併せて参照し、車体フレーム5は、車体中央に搭載したエンジン12を取り囲むクレードル形のもので、複数種の鋼材を溶接等により一体結合してなる。
車体フレーム5は、ヘッドパイプ6の上部後側から斜め下後方へ側面視で比較的緩傾斜をなして延びる単一のメインフレーム13と、ヘッドパイプ6の下部後側(メインフレーム13の前端部下側)から左右に分岐して斜め下後方へ側面視で比較的急傾斜をなして延びる左右一対のダウンフレーム14と、左右ダウンフレーム14の下端部から後方へ湾曲して略水平に延びる左右一対のロアフレーム15と、左右ロアフレーム15の後端部から上方へ湾曲して側面視で後方へ凸のV字形状をなして延びる左右一対のピボットフレーム16と、左右ピボットフレーム16の湾曲内周側(前側)に一体的に設けられる左右一対の前記ピボットプレート11とを有する。
【0013】
また、車体フレーム5は、メインフレーム13の後端部から左右に分岐して斜め下左右外側へ広がりつつ側面視で斜め下後方へ比較的急傾斜をなして延びて左右ピボットフレーム16の上端部に連なる左右一対のミドルフレーム17と、同じくメインフレーム13の後端部から左右に分岐して斜め後左右外側へ広がりつつ側面視で後方へ略水平に延びる左右一対のシートフレーム18と、左右ピボットフレーム16の湾曲頂部後側から左右シートフレーム18の後端部に向けて側面視で後上がりに延びる左右一対のシートサポートパイプ19と、左右ダウンフレーム14の上下中間部間を連結するフロントクロスパイプ21と、左右ピボットフレーム16の上端部間を連結するリヤアッパクロスパイプ22と、左右ピボットフレーム16の下端部間を連結するリヤロアクロスパイプ23とを有する。
【0014】
メインフレーム13は例えば鍛造成形品であり、左右幅に対して上下幅を広げた縦長の断面形状を有して前後に延びる。メインフレーム13の前端部下側にはガセット部13aが形成され、このガセット部13aの両側に左右ダウンフレーム14の上端部となるダウンフレーム接続部13bが形成される。メインフレーム13の後端部上側には、左右シートフレーム18の前端部をなるシートフレーム接続部13c、及び左右ミドルフレーム17の上端部となるミドルフレーム接続部13dがそれぞれ形成される。
【0015】
左右シートサポートパイプ19は、左右ピボットフレーム16から比較的緩傾斜をなして延びた後に湾曲して比較的急傾斜をなして斜め後上方に延びる。車体フレーム5の後端部には、例えば鍛造成形品である左右一対のクッション上端支持部材24が左右一対に設けられる。これら左右クッション上端支持部材24とスイングアーム9の左右アームとの間には、左右一対のリヤクッション25が配設される。左右クッション上端支持部材24には、左右シートフレーム18の後端部となる後シートフレーム接続部24a、及び左右シートサポートパイプ19の上端部となる後サポート接続部24bがそれぞれ形成される。
【0016】
ダウンフレーム14、ロアフレーム15、ピボットフレーム16及びミドルフレーム17は、それぞれ車体左右毎に単一の丸形鋼管の曲げ加工により連続して形成される。シートフレーム18及びシートサポートパイプ19は、それぞれ個別の丸形鋼管からなる。左右シートフレーム18の後方には、左右エクステンションフレーム18aがそれぞれ連結される。左右エクステンションフレーム18a間には、例えば鋼板製のリヤフェンダ26が支持される。左右シートフレーム18上には運転者用の前シート27が支持され、リヤフェンダ26上にはパッセンジャー用の後シート28が支持される。
【0017】
側面視でメインフレーム13、ミドルフレーム17、ダウンフレーム14、ロアフレーム15及びピボットフレーム16に囲まれた閉空間29には、自動二輪車1の原動機であるエンジン(内燃機関)12が搭載される。
エンジン12は空冷直列四気筒エンジンであり、その下部を構成するクランクケース31の前部上方にシリンダ部32を立設した構成を有する。シリンダ部32の起立方向は鉛直方向に対してやや前傾している。
【0018】
シリンダ部32は、クランクケース31側から順にシリンダ本体32a、シリンダヘッド32b及びヘッドカバー32cを積層してなる。シリンダヘッド32bの後部(吸気側)には吸気系部品が、シリンダヘッド32bの前部(排気側)には排気系部品がそれぞれ接続される。
シリンダ本体32a内の四気筒分のピストンの往復動は、クランクケース31前部内のクランクシャフトの回転動に変換され、クランクケース31後部内のトランスミッションを介して減速及び変速がなされた後、クランクケース31後部左側から前記伝動機構9aを介して後輪8に伝達される。
【0019】
なお、前シート27の前方には、所謂ティアドロップ型の燃料タンクの外観を模して内部に各種電装部品を収納する電装収納ボックス40が配置される。
前シート27の下方であって側面視でミドルフレーム17、ピボットフレーム16の上部、シートフレーム18及びシートサポートパイプ19に囲まれた後部閉空間29aには、実際にエンジン12の燃料(ガソリン)を貯蔵する燃料タンク70が配置される。燃料タンク70及び後部閉空間29aは、共に側面視で逆台形状に形成される。燃料タンク70への給油作業は、前シート27がその前端部下側のヒンジ軸27aを中心に回動することで可能となる。
【0020】
図3,4に示すように、前記吸気系部品は、シリンダヘッド32bの後部に接続されるスロットルボディ89と、スロットルボディ89の後部に接続されるエアクリーナ90とを有する。スロットルボディ89は、各気筒毎に設けられた四連式とされる。各スロットルボディ89は、それぞれ上部にインジェクタ(燃料噴射弁)89aを有する燃料供給装置とされる。なお、図中符号89bは各スロットルボディ89が形成する後上がりの吸気通路に沿う軸線を、符号CLは車体左右中心線をそれぞれ示す。軸線89bは、側面視でシリンダ部32の起立方向と略直交する直線である。
【0021】
スロットルボディ89及びエアクリーナ90は、前後方向ではシリンダ部32とミドルフレーム17との間に配置され、上下方向ではメインフレーム13の後部とクランクケース31の後部との間に配置される。
各スロットルボディ89の前端(下流端)は、シリンダヘッド32bの後部における各気筒の吸気ポートの開口にそれぞれ接続される。各スロットルボディ89の後端(上流端)は、エアクリーナ90の前部にそれぞれ接続される。
【0022】
図5,7,8を併せて参照し、エアクリーナ90は、その外形を形成するエアクリーナケース91と、エアクリーナケース91内に収納されてケース内に導入した外気をろ過するエレメント101とを備える。
エアクリーナケース91は、その前部を形成してスロットルボディ89に固定的に支持されるベース部92と、ベース部92の後方に着脱可能に取り付けられるカバー部93とに分割構成される。ベース部92及びカバー部93はそれぞれ樹脂成形品とされるが、これらを鉄製としてもよい。
【0023】
図6を併せて参照し、ベース部92は、前記軸線89bと略直交する平坦状をなし、その後面側には、各スロットルボディ89の後方にそれぞれ連なる四つのエアファンネル94が設けられる。一方、カバー部93は、前方に開放する容器形状をなし、その筒状の外周壁93aの前端縁部93bをベース部92の外周に設けた嵌合溝92aに気密に嵌合させた状態でベース部92に取り付けられる。カバー部93の外周壁93aの前端縁は、軸線89bと直交する平面上に形成される。以下、前記平面をエアクリーナケース91の分割平面95という(図7参照)。
【0024】
エレメント101は、前記軸線89bに沿う後面視で横長の楕円形状をなす乾式であり、前記楕円形状に沿って濾紙をひだ折りした筒状のエレメント本体101aと、エレメント本体101aの前端を保持する楕円環状の前ホルダ101bと、エレメント本体101aの後端を保持する楕円板状の後ホルダ101cとを一体的に有する。エレメント101(エレメント本体101a)は軸線89bと平行な筒状をなし、その軸線89bに沿う方向の長さはカバー部93(外周壁93a)のそれよりも短くされる。前後ホルダ101b,101cは合成樹脂又は鋼板からなる。エレメント101は、カバー部93の平板状の底壁(後壁)93cに後述するスリーブ102を介して保持される。
【0025】
ベース部92の後面側には、カバー部93内に保持したエレメント101の前ホルダ101bに対向するべく後面視楕円形状をなして後方に延びるリブ92bが立設される。このリブ92bの後端縁が、カバー部93内に保持したエレメント101の前ホルダ101bの前面にシール材101dを介して密接することで(図7参照)、エレメント101内外の空間がダーティサイド96とクリーンサイド97とに区画される。
【0026】
カバー部93の下端には吸気口98が形成され(図5参照)、この吸気口98からエアクリーナケース91内のダーティサイド96(エレメント101外方の空間)に外気が導入される。この外気は、エレメント101を通過し濾過されてクリーンサイド97(エレメント101内方の空間)に至る。クリーンサイド97内には前記各エアファンネル94が配置され、これら各エアファンネル94から各スロットルボディ89及びエンジン12側に濾過後の外気が供給される。
【0027】
図7を参照し、ベース部92の上部92cは、分割平面95に近接する位置で軸線89bに略直交する平板状に形成され、この上部92cの前方に前記インジェクタ89a等が配置される。ベース部92の上下中間部92dは、上部92cに対して前方に変位した平板状に形成され、この上下中間部92dの前面側に各スロットルボディ89の後端が、後面側に各エアファンネル94の前端がそれぞれ接続される。ベース部92の下部92eは、上下中間部92dよりもさらに前方に変位した平板状に形成され、ケース内空間の容量確保に寄与する。
【0028】
カバー部93の底壁93cには、所定長さを有する左右一対のスリーブ102が後方から挿通される。各スリーブ102は、エレメント101の後ホルダ101cを貫通してこれに係合する。後ホルダ101cにおける各スリーブ102の貫通部は、筒状のラバー101eを介して各スリーブ102に保持される。各スリーブ102の後端にはフランジ102aが形成され、もって各スリーブ102を介してカバー部93にエレメント101が保持される。各スリーブ102にはそれぞれ長尺のビス103が挿通され、これら各ビス103の先端ネジ部103aが各スリーブ102の前端から前方に突出可能である。
【0029】
図6を併せて参照し、ベース部92の上下中間部92dの後面側には、後方に突出する左右一対のポスト部104が一体形成される。これら各ポスト部104の後端部には、それぞれクリップ状のナット部材104aが装着され、これら各ナット部材104aに各ビス103の先端ネジ部103aを螺着し締め込むことで、エレメント101及びカバー部93がベース部92に締結固定される。このとき、エレメント101の前プレート前面のシール材101dがリブ92bの後端縁に密接し、エレメント101内外の空間がダーティサイド96とクリーンサイド97とに区画される。
【0030】
エレメント101を取り外す際は、まず各ビス103を取り外し、次いでカバー部93をその外周壁93aの前端縁部93bとベース部92の嵌合溝92aとの嵌合分だけ後方に移動させる。このように、カバー部93を少量だけ後方移動させるのみで、ベース部92に対するカバー部93の係合が解除される。このとき、エレメント101はカバー部93の底壁93cに各スリーブ102を介して一体的に保持される。
その後、カバー部93を側方等に引き抜くことで、カバー部93と共にエレメント101を車体から取り外すことができる。このとき、エレメント101が分割平面95よりもカバー部93内に入り込むことで、カバー部93及びエレメント101の小組体を引き抜く際のエレメント101と他部品との干渉が抑止される。
【0031】
以上説明したように、上記実施形態における鞍乗り型車両のエアクリーナ構造は、自動二輪車1のエンジン12への燃料供給装置(スロットルボディ89)に接続されるエアクリーナ90の構造であって、前記エアクリーナ90が、その外形を形成するエアクリーナケース91と、このエアクリーナケース91内に収容されて外気をろ過するエレメント101とを備え、前記エアクリーナケース91が、前記スロットルボディ89に固定的に支持されるベース部92と、このベース部92に着脱可能に取り付けられるカバー部93とに分割され、前記エレメント101が、前記カバー部93に保持されるものである。
この構成によれば、エアクリーナ90全体を取り外さなくても、カバー部93とエレメント101との小組体を着脱することのみで、エアクリーナ90のメンテナンスが可能となるため、エアクリーナケース91に設けた開口からエレメント101を出し入れする場合と比べて、メンテナンス性を確保しつつエアクリーナ容量を確保できる。また、エアクリーナ90全体を取り外す場合と比べて、その周囲の余剰スペースの発生を抑制できる。
【0032】
また、上記エアクリーナ構造は、前記エレメント101が、前記ベース部92及びカバー部93間の分割平面95よりもカバー部93側に配置されるものである。
この構成によれば、エレメント101がカバー部93内に全て収まることとなり、これらの小組体の着脱時にエレメント101が他部品に干渉することを抑制できる。
【0033】
また、上記エアクリーナ構造は、前記エアクリーナケース91が、前記ベース部92を前側、前記カバー部93を後側として前後分割されるものである。
この構成によれば、エアクリーナケース91が左右分割の場合よりもエレメント101を着脱し難い前後分割の構造において、カバー部93及びエレメント101の着脱の容易化を図ることができる。
【0034】
また、上記エアクリーナ構造は、前記自動二輪車1が、ヘッドパイプ6から後方に延びるメインフレーム13と、このメインフレーム13の後端から下方に延びるミドルフレーム17とを有する車体フレーム5を備え、前記ミドルフレーム17の前方に前記エアクリーナ90が配置され、このエアクリーナ90の前方に前記スロットルボディ89が連設され、前記エアクリーナ90の後端が前記ミドルフレーム17の前縁よりも前方に配置されるものである。
この構成によれば、スロットルボディ89とミドルフレーム17との間をエアクリーナ90の設置スペースとして効率よく利用できる。
【0035】
また、上記エアクリーナ構造は、前記メインフレーム13の下方に、クランクケース31から上方へ延びるシリンダ部32を備えると共に前記シリンダ部32から後方へ延びる吸気通路(スロットルボディ89)を備えたエンジン12が配置され、前記吸気通路に前記ベース部92が固定される一方、前記カバー部93は、板状の底壁93cの端縁から前方へ延びる筒状の外周壁93aを有し、前記外周壁93aの前端位置で前方に開放すると共に、前記外周壁93aの前端縁部が前記ベース部92に取り付けられ、前記吸気通路には、前記外周壁93aと平行な筒状をなして前記カバー部93内に収納される前記エレメント101が接続され、このエレメント101の軸方向長さが、前記外周壁93aの軸方向長さよりも短くされるものである。
この構成によれば、スロットルボディ89及びミドルフレーム17間のスペースになるべく大容量のエアクリーナ90を配置しつつ、エレメント101及びカバー部93の小組体の着脱の容易にできる。
【0036】
なお、本発明は上記実施形態に限られるものではなく、例えば、エアクリーナケース91が上下方向や斜め方向に分割されたり平面ではなく曲面等で分割される構成でもよい。また、エアクリーナ90に接続される燃料供給装置がキャブレターであってもよい。
ここで、前記鞍乗り型車両には、運転者が車体を跨いで乗車する車両全般が含まれ、自動二輪車のみならず、三輪(前一輪かつ後二輪の他に、前二輪かつ後一輪の車両も含む)又は四輪の車両も含まれる。
そして、上記実施形態における構成は本発明の一例であり、当該発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0037】
1 自動二輪車(鞍乗り型車両)
12 エンジン(内燃機関)
5 車体フレーム
6 ヘッドパイプ
12 エンジン
13 メインフレーム
17 ミドルフレーム
31 クランクケース
32 シリンダ部
89 スロットルボディ(燃料供給装置、吸気通路)
90 エアクリーナ
91 エアクリーナケース
92 ベース部(第一ケース)
93 カバー部(第二ケース)
93a 外周壁
93c 底壁
95 分割平面(分割面)
101 エレメント

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鞍乗り型車両(1)の内燃機関(12)への燃料供給装置(89)に接続されるエアクリーナ(90)の構造において、
前記エアクリーナ(90)は、その外形を形成するエアクリーナケース(91)と、このエアクリーナケース(91)内に収容されて外気をろ過するエレメント(101)とを備え、前記エアクリーナケース(91)は、前記燃料供給装置(89)に固定的に結合される第一ケース(92)と、この第一ケース(92)に着脱可能に取り付けられる第二ケース(93)とに分割され、前記エレメント(101)は、前記第二ケース(93)に保持されることを特徴とする鞍乗り型車両のエアクリーナ構造。
【請求項2】
前記エレメント(101)は、前記第一ケース(92)及び第二ケース(93)間の分割面(95)よりも第二ケース(93)側に配置されることを特徴とする請求項1に記載の鞍乗り型車両のエアクリーナ構造。
【請求項3】
前記エアクリーナケース(91)は、前記第一ケース(92)を前側、前記第二ケース(93)を後側として前後分割されることを特徴とする請求項1又は2に記載の鞍乗り型車両のエアクリーナ構造。
【請求項4】
前記鞍乗り型車両(1)は、ヘッドパイプ(6)から後方に延びるメインフレーム(13)と、このメインフレーム(13)の後端から下方に延びるミドルフレーム(17)とを有する車体フレーム(5)を備え、前記ミドルフレーム(17)の前方に前記エアクリーナ(90)が配置され、このエアクリーナ(90)の前方に前記燃料供給装置(89)が連設され、前記エアクリーナ(90)の後端が前記ミドルフレーム(17)の前縁よりも前方に配置されることを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載の鞍乗り型車両のエアクリーナ構造。
【請求項5】
前記メインフレーム(13)の下方に、クランクケース(31)から上方へ延びるシリンダ部(32)を備えると共に前記シリンダ部(32)から後方へ延びる吸気通路(89)を備えたエンジン(12)が配置され、
前記吸気通路(89)に前記第一ケース(92)が固定される一方、
前記第二ケース(93)は、板状の底壁(93c)の端縁から前方へ延びる筒状の外周壁(93a)を有し、前記外周壁(93a)の前端位置で前方に開放すると共に、前記外周壁(93a)の前端縁部が前記第一ケース(92)に取り付けられ、
前記吸気通路(89)には、前記外周壁(93a)と平行な筒状をなして前記第二ケース(93)内に収納される前記エレメント(101)が接続され、このエレメント(101)の軸方向長さが、前記外周壁(93a)の軸方向長さよりも短くされることを特徴とする請求項4に記載の鞍乗り型車両のエアクリーナ構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−245941(P2012−245941A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−120944(P2011−120944)
【出願日】平成23年5月30日(2011.5.30)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】