説明

鞍乗型乗物用のロックシステム

【課題】ロック解除時の運転者の操作負担を軽減するとともにバッテリー電力の浪費を防止する。
【解決手段】運転者が所持する携帯端末10と、鞍乗型乗物に設けられて携帯端末10と無線通信して認証を行う制御装置39と、鞍乗型乗物に設けられて制御装置39により動作が制御されるロック装置12〜15と、鞍乗型乗物に搭載された複数の電装品4,5へ電源を供給させるオン状態と、複数の電装品4,5へ電源を供給させないオフ状態との間の切り換えを行うイグニッションスイッチ6と、運転者の操作に応じて前記認証のための無線通信を開始させるウェイクアップ信号を制御装置39に入力するウェイクアップスイッチ16と、を備え、制御装置39は、イグニッションスイッチ6がオフ状態であるときに、ウェイクアップ信号が入力され且つ認証が成立すると、ロック装置12〜15をロック解除状態とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鞍乗型乗物のためのロックシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動二輪車では駐車中にも第三者が車体の様々な部位に触れることができるため、小物入れ等の開閉機構にはロック装置が設けられており、運転者がキーにより機械的にロック解除することで開閉できるようにするのが一般的である。また、キーを回してイグニッションスイッチ(メインスイッチ)をオン状態とするのに連動してロック装置を電気的に駆動してロック解除させるものも提案されている(例えば、特許文献1参照)。これによれば、ロック装置がイグニッションスイッチと連動しているため、ロックの掛け忘れを防止することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−36186号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ロック装置のロック解除を行う度にキー操作を行うのは、運転者にとって面倒である。また、イグニッションスイッチをオン状態にすれば各種電装品に電源が供給されるので、ロック装置をロック解除させるためだけにイグニッションスイッチをオン状態にすると、バッテリー電力が無駄に消費されることとなる。
【0005】
そこで本発明は、ロック解除時の運転者の操作負担を軽減するとともにバッテリー電力の浪費を防止することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は前記事情に鑑みてなされたものであり、本発明に係る鞍乗型乗物用のロックシステムは、運転者が所持する携帯端末と、鞍乗型乗物に設けられ、前記携帯端末と無線通信して認証を行う制御装置と、前記鞍乗型乗物に設けられ、前記制御装置により動作が制御されるロック装置と、前記鞍乗型乗物に搭載された複数の電装品へ電源を供給させるオン状態と、前記複数の電装品へ電源を供給させないオフ状態との間の切り換えを行うイグニッションスイッチと、運転者の操作に応じて、前記認証のための無線通信を開始させるウェイクアップ信号を前記制御装置に入力するウェイクアップスイッチと、を備え、前記制御装置は、前記イグニッションスイッチがオフ状態であるときに、前記ウェイクアップ信号が入力され且つ前記認証が成立すると、前記ロック装置をロック解除状態とするよう制御することを特徴とする。
【0007】
前記構成によれば、運転者が、キー操作を行うことなく、携帯端末を所持した状態で鞍乗型乗物に近づいてウェイクアップスイッチを操作するだけで、ロック装置がロック解除されるため、ロック解除時の運転者の操作負担を軽減することが可能となる。その際、ロック装置のロック解除を行うためだけに、イグニッションスイッチを操作して各種電装品に電源供給する必要がないため、バッテリー電力の浪費を低減することが可能となる。また、ウェイクアップスイッチが操作されてから認証のための無線通信を開始するので、常に認証のための通信動作を行う場合に比べて、乗物及び携帯端末の電力消費を抑制することが可能となる。
【0008】
前記ロック装置は、前記鞍乗型乗物に複数設けられており、前記ウェイクアップスイッチは、前記複数のロック装置に対して1つ設けられており、前記制御装置は、前記イグニッションスイッチがオフ状態であるときに、前記ウェイクアップ信号が入力され且つ前記認証が成立すると、前記複数のロック装置を同時にロック解除するよう制御してもよい。
【0009】
前記構成によれば、運転者が携帯端末を所持した状態で鞍乗型乗物に近づいて1つのウェイクアップスイッチを操作するだけで、複数のロック装置が同時にロック解除されるため、運転者の操作負担をより軽減することが可能となる。
【0010】
前記ロック装置は、前記鞍乗型乗物に複数設けられており、前記ウェイクアップスイッチは、前記複数のロック装置ごとに夫々対応して設けられており、前記制御装置は、前記イグニッションスイッチがオフ状態であるときに、前記ウェイクアップ信号が入力され且つ前記認証が成立すると、前記ウェイクアップ信号を発生させた前記ウェイクアップスイッチに対応する前記ロック装置を個別にロック解除するよう制御してもよい。
【0011】
前記構成によれば、運転者が携帯端末を所持した状態で鞍乗型乗物に近づいてウェイクアップスイッチを操作したときには、その操作したウェイクアップスイッチに対応するロック装置だけがロック解除されるため、複数のロック装置を同時にロック解除する場合に比べて、バッテリー電力の浪費を低減することが可能となる。
【0012】
前記鞍乗型乗物は、前記ロック装置に対応して手動操作可能に設けられた可動部を備えており、前記ウェイクアップスイッチは、運転者の操作による前記可動部の初期動作を検出して前記制御装置に前記信号を入力してもよい。
【0013】
前記構成によれば、可動部の操作がウェイクアップスイッチの操作を兼ねており、運転者が可動部を動かすように操作するだけで、その初期動作を検出してロック装置が自動的にロック解除され、運転者の操作負担をより軽減することが可能となる。
【0014】
前記制御装置は、前記認証が不成立になると前記ロック装置をロック状態とするよう制御してもよい。
【0015】
前記構成によれば、携帯端末を所持した運転者が鞍乗型乗物から離れるだけで、ロック装置が自動的にロックされるので、ロック時における運転者の操作負担も軽減することが可能となる。
【0016】
前記制御装置は、前記ウェイクアップ信号が入力され且つ前記認証が成立してから所定時間内であって前記認証の成立が継続しているとき、前記ロック装置をロック解除状態とするよう制御し、前記制御装置は、前記所定時間の経過後において、前記イグニッションスイッチがオン状態であるときには前記ロック装置をロック解除状態を継続し、前記イグニッションスイッチがオフ状態であるときには前記ロック装置をロック状態とするよう制御してもよい。
【0017】
前記構成によれば、前記所定時間内は認証の成立が継続しているとロック装置がロック解除されているので、ロック対象物に対して運転者は所望の操作を行うことができ、所定時間経過後はイグニッションスイッチがオフであるとロック装置は自動的にロック状態となる。よって、ロック解除後のロック忘れを防止することが可能となる。また、イグニッションスイッチをオンにすれば、ロック装置はロック解除状態となるので、前記所定時間経過後であっても運転者はロック対象物に対して所望の操作を行うことが可能となる。
【0018】
前記制御装置は、前記鞍乗型乗物が走行状態であると判断される所定の走行条件が成立すると、前記ロック装置をロック状態とするよう制御してもよい。
【0019】
前記構成によれば、鞍乗型乗物の走行中にロック装置がロック解除されることを防止することが可能となる。
【発明の効果】
【0020】
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、ロック解除時の運転者の操作負担を軽減しながらバッテリー電力の浪費を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の第1実施形態に係る鞍乗型乗物用のロックシステムを示すブロック図である。
【図2】図1に示すイグニッションスイッチの操作部を表した図面である。
【図3】図1に示すロックシステムの動作を説明するフローチャートである。
【図4】本発明の第2実施形態に係る鞍乗型乗物用のロックシステムを示すブロック図である。
【図5】図4に示す小物入れ用ロック装置及びその近傍を表した断面図である。
【図6】図5に示す開閉蓋のフック部、係止部材、係止解除部材及びストッパを表した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明に係る実施形態を図面を参照して説明する。
【0023】
(第1実施形態)
図1は本発明の第1実施形態に係る鞍乗型乗物用のロックシステム1を示すブロック図である。本実施形態のロックシステム1は、運転者乗降用ドアのない鞍乗型乗物である自動二輪車に搭載されるが、小型滑走艇(Personal Watercraft)等のような他の鞍乗型乗物に搭載されてもよい。図1に示すように、ロックシステム1は、バッテリーに接続されたメインECU3(電子制御ユニット)を備え、そのメインECU3には、複数の走行用電装品4及び複数のアクセサリ電装品5が接続されている。
【0024】
走行用電装品4は、例えば、エンジンの点火装置、燃料噴射装置、スロットル装置、メータ装置、照明装置(ヘッドランプ等)、ABS/CBS、スタータモータ、センサ類(クランク角センサ、車速センサ、スロットル開度センサ等)などからなる。また、アクセサリ電装品5は、例えば、ハンドルグリップヒータ、ナビゲーションシステムなどからなる。つまり、走行用電装品4は、乗物の走行に直接必要なものであり、アクセサリ電装品5は、乗物の走行に直接必要とならないものである。
【0025】
メインECU3には、公知のイグニッションスイッチ6及びスタータスイッチ7が接続されている。イグニッションスイッチ6は、走行用電装品4及びアクセサリ電装品5へ電源を供給させるオン状態と、走行用電装品4及びアクセサリ電装品5へ電源を供給させないオフ状態との間の切り換えを行うものである。スタータスイッチ7は、イグニッションスイッチ6が閉状態(オン状態)であるときにオン状態とされると、エンジンのスタータモータ(図示せず)を駆動させるスイッチであり、ハンドル(図示せず)の近傍に設けられたボタン(図示せず)を運転者が押すことで閉状態(オン状態)となる。
【0026】
図2は図1に示すイグニッションスイッチ6の操作部20を表した図面である。図2に示すように、操作部20は、円環状の固定部21と、その固定部21に内嵌された回動部22とを備え、ハンドル(図示せず)の近傍に設けられている。固定部21の運転者に面する外面には、「ON」「OFF」「LOCK」等の表示が設けられている。回動部22の運転者に面する外面には、運転者が把持して回すための操作ツマミ23が突設されている。
【0027】
図1及び図2に示すように、運転者が操作ツマミ23を固定部21の「OFF」の位置に合わせると、イグニッションスイッチ6が開状態(オフ状態)となり、走行用電装品4及びアクセサリ電装品5等への給電が停止される。また、運転者が操作ツマミ23を固定部21の「ON」の位置に合わせると、イグニッションスイッチ6が閉状態(オン状態)となり、各電装品4,5及び後述する各種ロック装置12〜15等へ給電がなされる。また、運転者が操作ツマミ23を押し回して固定部21の「LOCK」の位置に合わせると、ハンドル(図示せず)がロックされる。
【0028】
図1に示すように、ロックシステム1は、バッテリーに接続されたサブECUであるスマートECU11を備えている。スマートECU11は、運転者が所持する携帯端末10と無線通信して認証を行う車載機である。スマートECU11及び携帯端末10は、キーレスエントリーシステムを実現するためのものであり、無線アンテナが内蔵されている。そして、スマートECU11とメインECU3とで、ロックシステム1の制御装置3が構成されている。
【0029】
スマートECU11には、イグニッションスイッチ用ロック装置12、小物入れ用ロック装置13、燃料キャップ用ロック装置14、パニエケース用ロック装置15などが接続されている。イグニッションスイッチ用ロック装置12は、イグニッションスイッチ6の操作部20の操作ツマミ23(図2参照)を回せないようにするものである。小物入れ用ロック装置13は、車体に設けられた小物入れの開閉蓋を開放できないようにするものである。燃料キャップ用ロック装置14は、燃料タンク(図示せず)のキャップ(開閉蓋)を開放できないようにするものである。パニエケース用ロック装置15は、パニエケース(図示せず)の車体への取付固定部を固定解除状態にできないようにするものである。なお、パニエケースとは、自動二輪車の車体後側の側部に取り付けられる収容ケースのことである。
【0030】
スマートECU11には、ウェイクアップスイッチ16が接続されている。ウェイクアップスイッチ16は、車体に設けられたボタン(図示せず)を運転者が押すことで閉状態(オン状態)となって、認証のための無線通信を開始させるウェイクアップ信号をスマートECU11に入力する。本実施形態のウェイクアップスイッチ16は、図2に示す操作ツマミ23を押し込むことでオン状態となるように構成されているが、ウェイクアップスイッチ16の操作部をイグニッションスイッチ6の操作部20とは別に設けてもよい。
【0031】
ウェイクアップ信号が入力されたスマートECU11は要求信号を無線送信し、その要求信号を受信した携帯端末10はIDコード等を含む応答信号を無線送信する。その応答信号を受信したスマートECU11は、応答信号に含まれるIDコードが正当であるか否かの認証を行う。認証が成立すると、スマートECU11は、各種ロック装置12〜15に電源を供給して各種ロック装置12〜15を同時にロック解除するように制御するが、その他の電装品(メインECU3、走行用電装品4及びアクセサリ電装品5)には電源を供給しない。また、認証が成立した場合には、イグニッションスイッチ用ロック装置12がロック解除されるため、イグニッションスイッチ6をオン状態にすることが許可されることとなるが、認証が成立しない場合には、イグニッションスイッチ用ロック装置12はロック解除されないため、イグニッションスイッチ6をオン状態にすることは許可されない。
【0032】
次に、ロックシステム1の動作について説明する。図3は図1に示すロックシステム1の動作を説明するフローチャートである。図3に示すように、イグニッションスイッチ6がオフ状態(主電源がオフ)である自動二輪車において、スマートECU11は、ウェイクアップスイッチ16が運転者により操作されたか否かを判定し(ステップS1)、ウェイクアップスイッチ16が操作された場合には携帯端末10との無線通信を開始する(ステップS2)。より具体的には、ウェイクアップスイッチ16が操作されるとスマートECU11にウェイクアップ信号(オン信号)が入力されてスマートECU11が起動し、スマートECU11は、その起動時から所定時間(例えば、30秒)にわたって携帯端末10と無線通信して認証を行う(ステップS3)。
【0033】
ステップS3において認証が成立した場合には、スマートECU11は、メインECU3、走行用電装品4及びアクセサリ電装品5へ電源を供給しないまま(即ち、主電源がオフのまま)、ロック装置12〜15の全てに電源を供給してロック装置12〜15の全てを同時にロック解除する(ステップS4)。一方、ステップS3において認証が成立しない場合には、スマートECU11は、ロック装置12〜15をロック状態のままに維持する(ステップS5)。
【0034】
次いで、スマートECU11は、イグニッションスイッチ6がオン状態であるか否かを判定する(ステップS6)。なお、ステップS3で認証が成立していない場合には、イグニッションスイッチ6をオン状態にすることは許可されないため、必然的にイグニッションスイッチ6はオフ状態であると判定されることとなる。ステップS6においてイグニッションスイッチ6がオフ状態である場合には、スマートECU11は、前記所定時間が経過したか否かを判定する(ステップS7)。前記所定時間が経過していない場合には、ステップS3に戻る。つまり、前記所定時間内においては、認証の成立が継続しているとロック装置12〜15のロック解除状態が継続されるので、ロック対象物(例えば、小物入れの開閉蓋や燃料キャップ等)に対して運転者は所望の操作を行うことができる。
【0035】
一方、前記所定時間が経過した場合には、ロック装置12〜15をロック状態とし(ステップS13)、スマートECU11への電源供給を停止して処理を終了する。つまり、イグニッションスイッチ6がオフ状態のままで前記所定時間が経過すると、ロック装置12〜15は自動的にロック状態となるので、ロック解除後のロック忘れが防止される。
【0036】
ステップS6においてイグニッションスイッチ6がオン状態である場合には、スマートECU11は、ロック装置12〜15の全てに電源を供給してロック装置12〜15の全てを同時にロック解除するとともに、メインECU3、走行用電装品4及びアクセサリ電装品5にも電源を供給する(ステップS8)。つまり、イグニッションスイッチ6をオン状態にすれば、ロック装置12〜15はロック解除状態となるので、前記所定時間の経過後であっても運転者はロック対象物に対して所望の操作を行うことが可能となる。
【0037】
次いで、スマートECU11は、自動二輪車が走行状態であると判断される所定の走行条件が成立するか否かを判定する(ステップS9)。具体的には、前記走行条件は、車速センサで検出される車速が所定値(例えば、10km/h)より大きいこと、エンジン回転数センサで検出されるエンジン回転数が所定値(例えば、アイドリング回転数)より大きいこと、及び、スタータスイッチ7がオンされたこと、の少なくとも1つである。
【0038】
ステップS9において前記走行条件が成立したと判定された場合には、スマートECU11は、ロック装置12〜15をロック状態とする(ステップS10)。これにより、自動二輪車の走行中にロック装置12〜15のロック対象物が動作してしまうこと、例えば、小物入れの開閉蓋が開放されてしまうことなどが防止される。一方、ステップS9において前記走行条件が成立しないと判定された場合には、スマートECU11は、ロック装置12〜15をロック解除状態とする(ステップS11)。次いで、スマートECU11は、イグニッションスイッチ6がオフ状態であるか否かを判定する(ステップS12)。
【0039】
ステップS12においてイグニッションスイッチ6がオン状態である場合には、ステップS9に戻る。一方、ステップS12においてイグニッションスイッチ6がオフ状態である場合には、ロック装置12〜15をロック状態とし(ステップS13)、主電源をオフして処理を終了する。
【0040】
以上に説明した構成によれば、運転者が、ハンドルロックの解除操作やイグニッションスイッチのオン操作のようなキー操作を行うことなく、携帯端末10を所持した状態で自動二輪車に近づいてウェイクアップスイッチ16を操作するだけで、ロック装置12〜15がロック解除されるため、ロック解除時の運転者の操作負担を軽減することが可能となる。その際、ロック装置12〜15のロック解除を行うためだけに、イグニッションスイッチ6を操作して各種電装品4,5に電源供給する必要がないため、バッテリー電力の浪費を低減することが可能となる。また、ウェイクアップスイッチ16が操作されてから認証のための無線通信を開始するので、常に認証のための通信動作を行う場合に比べて、自動二輪車及び携帯端末10の電力消費を抑制することが可能となる。
【0041】
また、運転者が携帯端末10を所持した状態で自動二輪車に近づいて1つのウェイクアップスイッチ16を操作するだけで、複数のロック装置12〜15が同時にロック解除されるので、ロック解除のための運転者の操作負担をより軽減することが可能となる。さらに、スマートECU11は、認証が不成立になるとロック装置12〜15をロック状態とするので、携帯端末10を所持した運転者が自動二輪車から離れるだけで、ロック装置12〜15が自動的にロックされ、ロック時における運転者の操作負担も軽減することが可能となる。
【0042】
(第2実施形態)
図4は本発明の第2実施形態に係る鞍乗型乗物用のロックシステム31を示すブロック図である。なお、第1実施形態と共通する構成については同一符号を付して説明を省略する。図4に示すように、本実施形態のロックシステム31では、複数のウェイクアップスイッチ51〜54が複数のロック装置12〜15ごとに夫々対応するように個別に設けられている。ウェイクアップスイッチ51〜54は、夫々対応するロック装置12〜15の近傍に設けられている。ロックシステム31の動作については、概ね図3のフローチャートと同じであるが、ステップS1で操作されたウェイクアップスイッチ51〜54に対応する1つのロック装置12〜15のみをステップ4でロック解除する点が相違する。つまり、スマートECU41は、イグニッションスイッチ6がオフ状態であるときに、ウェイクアップスイッチ51〜54のうち何れかが操作されてウェイクアップ信号が入力され且つ認証が成立すると、そのウェイクアップ信号を発生させたウェイクアップスイッチの近傍にあるロック装置のみをロック解除する。以下、ロック装置12〜15及びウェイクアップスイッチ51〜54のうち、小物入れ用ロック装置13及びそのウェイクアップスイッチ52について代表して説明する。
【0043】
図5は図4に示す小物入れ用ロック装置13及びその近傍を表した断面図である。図6は図5に示す開閉蓋61、係止部材62、係止解除部材63及びストッパ65を表した斜視図である。なお、以下の説明においては、図5の紙面左側を「前」、紙面右側を「後」、紙面上側を「上」、紙面下側を「下」、紙面奥側を「右」、紙面手前側を「左」とする。図5及び6に示すように、小物入れ用ロック装置13は、小物入れ59の開閉蓋61の係止解除動作をロックするためのものである。小物入れ59は、車体外方に露出している。小物入れ59は、収容空間を形成するケース本体60と、開閉蓋61と、係止部材62と、係止解除操作部63と、ロック装置13とを備えている。ロック装置13は、ストッパ65と、リンク機構66と、電動アクチュエータ67とを備えている。
【0044】
開閉蓋61は、その下面側に突出して係止孔61bが形成されたフック部61aを有している。係止部材62は、先端部に形成された案内溝62bと、先端面に形成されて前方斜め上方に面するように傾斜した第1傾斜面62aと、第1傾斜面62aよりも左右後方に形成されて前方斜め上方に面するように傾斜した第2傾斜面62cとを有している。係止部材62は、開閉蓋61が閉鎖位置にある状態で係止孔61bを係止し、係止位置と非係止位置との間で動作可能なものである。係止部材62は、押しスプリング68により前方に向けて付勢されており、その付勢力により係止部材62の先端部が開閉蓋61の係止孔61bに挿入係止される。
【0045】
係止解除操作部63は、係止部材62を係止位置から非係止位置に動作させるよう手動操作により動作する可動部である。係止解除操作部63は、運転者が指で押すための押圧部63aと、押圧部63aから案内溝62bを通って下方に突出してストッパ65に干渉しうる干渉部63bと、係止部材62の第2傾斜面62cに当接するカム部63cとを有している。係止解除操作部63が操作されていない状態では、干渉部63bの下端とストッパ65との間には若干のクリアランスが存在する。つまり、ロック装置13のストッパ65は、係止部材62が非係止位置に動作しない範囲で係止解除操作部63が所定量動作可能なように係止解除操作部63の動作を規制している。
【0046】
ウェイクアップスイッチ52は、係止解除操作部63の手動操作に連動してスマートECU41にウェイクアップ信号を入力する。つまり、ウェイクアップスイッチ52は、係止解除操作部63が前記所定量の範囲で動作したことを検知し(つまり、初期動作を検知し)、スマートECU41にウェイクアップ信号を入力する。具体的には、ウェイクアップスイッチ52は、係止解除操作部63の押圧部63aの下面に設けられた板状導体からなる接点70と、係止解除操作部63の下方にあるハウジング69の上面に設けられたコイル状導体からなる接点71とを備えている。そして、運転者が係止解除操作部63を下方に押すと、干渉部63bがストッパ65に当接する前に両接点70,71が互いに接触し、ウェイクアップ信号が発生する。
【0047】
ストッパ65は、干渉部63bの動作軌道を横切る位置と干渉部63bの動作軌道から退避する位置との間で移動可能に配置されている。リンク機構66は、電動アクチュエータ67の動作をストッパ65に伝える機構である。リンク機構66は、一端部にストッパ65が接続されたリンク部材72と、リンク部材72を回動自在に支持するホルダ73と、ストッパ65が前方に移動する方向にリンク部材72を付勢する引張スプリング74とを備えている。電動アクチュエータ67は、内部のソレノイドを励磁して出力軸を進退させるように構成されている。電動アクチュエータ67の出力軸は、リンク部材72の他端部に当接している。
【0048】
電動アクチュエータ67の出力軸が進出すると、その押圧力でリンク機構66が動作してストッパ65は干渉部63bの動作軌道から退避する位置に移動する。この状態がロック解除状態である。ロック解除状態では、運転者が係止解除操作部63を下方に押すことで、カム部63cが係止部材62の第2傾斜面62cを押して、係止部材62が押しスプリング68に抗して後方に退避し、係止部材62と係止孔61bとの係止が解除される。
【0049】
電動アクチュエータ67の出力軸が退避すると、引張スプリング74による付勢力でリンク機構66が動作してストッパ65は干渉部63bの動作軌道を横切る位置に移動する。この状態がロック状態である。ロック状態では、係止解除操作部63の干渉部63bがストッパ65と干渉するため、係止解除操作部63を下方に押して係止部材62と係止孔61bとの係止を解除することができず、開閉蓋61を閉鎖状態から開放状態にすることができなくなる。但し、ストッパ65は、係止解除操作部63の動作を規制するものの、係止部材62の動作を規制しない。よって、開閉蓋61が開放状態でロック装置13がロック状態となっても、開閉蓋61のフック部61aの下端部が係止部材62の第1傾斜面62aを押して係止部材62を押しスプリング68に抗して後方に退避させることができ、開閉蓋61を閉じることができる。その結果、図3のステップS10のように自動二輪車が走行開始してロック装置13がロック状態となっても、その走行中に開放状態にある開閉蓋61を閉じることが可能となる。
【0050】
以上に説明した構成によれば、運転者が携帯端末10を所持した状態で自動二輪車に近づいてウェイクアップスイッチ51〜54の何れか1つを操作したときには、その操作したウェイクアップスイッチ51〜54に対応する1つのロック装置12〜15だけがロック解除されるため、複数のロック装置を同時にロック解除する場合に比べて、バッテリー電力の浪費を低減することが可能となる。また、係止解除操作部63の操作がウェイクアップスイッチ52の操作を兼ねており、運転者が係止解除操作部63を動かすように操作するだけで、その初期動作を検出してロック装置13が自動的にロック解除され、運転者の操作負担をより軽減することが可能となる。
【0051】
なお、前記実施形態では、開閉蓋として小物入れ59の蓋を例示したが、車体に設けられた収容空間を開閉するものであればよい。また、前記実施形態では、ウェイクアップスイッチ52として、係止解除操作部63の動作に連動してウェイクアップ信号を発生する構成を例示したが、その他の可動部(ハンドル、開閉蓋など)の手動操作に連動してウェイクアップ信号を発生する構成としてもよい。また、前記実施形態では、ウェイクアップスイッチ52として一対の接点70,71を例示したが、運転者が係止解除操作部63に触れたことを検知するタッチセンサー等を用いてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0052】
以上のように、本発明に係る鞍乗型乗物用のロックシステムは、ロック解除時の運転者の操作負担を軽減しながらバッテリー電力の浪費を防止する優れた効果を有し、この効果の意義を発揮できる自動二輪車等の鞍乗型乗物に広く適用すると有益である。
【符号の説明】
【0053】
1,31 ロックシステム
・ 電装品
6 イグニッションスイッチ
9,39 制御装置
10 携帯端末
12〜15 ロック装置
16,51〜54 ウェイクアップスイッチ
63 係止解除操作部(可動部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転者が所持する携帯端末と、
鞍乗型乗物に設けられ、前記携帯端末と無線通信して認証を行う制御装置と、
前記鞍乗型乗物に設けられ、前記制御装置により動作が制御されるロック装置と、
前記鞍乗型乗物に搭載された複数の電装品へ電源を供給させるオン状態と、前記複数の電装品へ電源を供給させないオフ状態との間の切り換えを行うイグニッションスイッチと、
運転者の操作に応じて、前記認証のための無線通信を開始させるウェイクアップ信号を前記制御装置に入力するウェイクアップスイッチと、を備え、
前記制御装置は、前記イグニッションスイッチがオフ状態であるときに、前記ウェイクアップ信号が入力され且つ前記認証が成立すると、前記ロック装置をロック解除状態とするよう制御することを特徴とする鞍乗型乗物用のロックシステム。
【請求項2】
前記ロック装置は、前記鞍乗型乗物に複数設けられており、
前記ウェイクアップスイッチは、前記複数のロック装置に対して1つ設けられており、
前記制御装置は、前記イグニッションスイッチがオフ状態であるときに、前記ウェイクアップ信号が入力され且つ前記認証が成立すると、前記複数のロック装置を同時にロック解除するよう制御する請求項1に記載の鞍乗型乗物用のロックシステム。
【請求項3】
前記ロック装置は、前記鞍乗型乗物に複数設けられており、
前記ウェイクアップスイッチは、前記複数のロック装置ごとに夫々対応して設けられており、
前記制御装置は、前記イグニッションスイッチがオフ状態であるときに、前記ウェイクアップ信号が入力され且つ前記認証が成立すると、前記ウェイクアップ信号を発生させた前記ウェイクアップスイッチに対応する前記ロック装置を個別にロック解除するよう制御する請求項1に記載の鞍乗型乗物用のロックシステム。
【請求項4】
前記鞍乗型乗物は、前記ロック装置に対応して手動操作可能に設けられた可動部を備えており、
前記ウェイクアップスイッチは、運転者の操作による前記可動部の初期動作を検出して前記制御装置に前記信号を入力する請求項1乃至3のいずれかに記載の鞍乗型乗物用のロックシステム。
【請求項5】
前記制御装置は、前記認証が不成立になると前記ロック装置をロック状態とするよう制御する請求項1乃至4のいずれかに記載の鞍乗型乗物用のロックシステム。
【請求項6】
前記制御装置は、前記ウェイクアップ信号が入力され且つ前記認証が成立してから所定時間内であって前記認証の成立が継続しているとき、前記ロック装置をロック解除状態とするよう制御し、
前記制御装置は、前記所定時間の経過後において、前記イグニッションスイッチがオン状態であるときには前記ロック装置をロック解除状態を継続し、前記イグニッションスイッチがオフ状態であるときには前記ロック装置をロック状態とするよう制御する請求項1乃至5のいずれかに記載の鞍乗型乗物用のロックシステム。
【請求項7】
前記制御装置は、前記鞍乗型乗物が走行状態であると判断される所定の走行条件が成立すると、前記ロック装置をロック状態とするよう制御する請求項1乃至6のいずれかに記載の鞍乗型乗物用のロックシステム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−98608(P2011−98608A)
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−253432(P2009−253432)
【出願日】平成21年11月4日(2009.11.4)
【出願人】(000000974)川崎重工業株式会社 (1,710)
【Fターム(参考)】