説明

鞍乗型車両のキャニスタ配置構造

【課題】複数のフレームに囲まれた領域にエアクリーナが配置され、このエアクリーナの下方にキャニスタが配置された場合において、キャニスタを車両後方の外的要因から簡易な構造で広範囲に保護できる鞍乗型車両のキャニスタ配置構造を提供する。
【解決手段】側面視で、センタフレーム7Rと、シートフレーム5Rと、サブフレーム8Rと、で囲まれる領域にエアクリーナ45を配置し、左右一対のサブフレーム8Rを、その車幅方向における左右の間の幅寸法が上方から下方に向かうに従い漸次幅狭となるように形成し、キャニスタ55を、エアクリーナ45の下方で、且つサブフレーム8Rの前方に、その長手方向を車幅方向に向けて配置し、キャニスタ55とサブフレーム8Rとが、後面視で重なるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鞍乗型車両のキャニスタ配置構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種の技術として、車両側面視で、自動二輪車における複数のフレームに囲まれた領域にエアクリーナが配置され、このエアクリーナの下方にキャニスタが配置される構造が知られている(特許文献1参照)。この構造では、車幅方向外側から各種配管がキャニスタに接続されている。また、特許文献2には、キャニスタの長手方向を車幅方向に向けて配置する構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−76662号公報
【特許文献2】特開昭56−67677号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献2に開示の車両において特許文献1の構造のように、複数のフレームに囲まれた領域にエアクリーナを配置し、その下にキャニスタを、その長手方向を車幅方向に向けて配置した場合、特許文献2に記載された自動二輪車では、キャニスタの後方に位置する左右のフレーム間の車幅方向における幅寸法は一定であり、且つキャニスタの車幅方向における幅寸法よりも大きいと考えられるため、キャニスタは後方に露出してしまう。このため、キャニスタを車両後方からの飛び石等の外的要因から保護することが好ましい。
【0005】
本発明は係る実情に鑑みてなされたものであり、複数のフレームに囲まれた領域にエアクリーナが配置され、このエアクリーナの下方にキャニスタが配置された場合において、キャニスタを車両後方の外的要因から簡易な構造で広範囲に保護できる鞍乗型車両のキャニスタ配置構造の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題の解決手段として、本発明は以下の手段を提供する。
請求項1に記載の発明は、ヘッドパイプ(3)と、該ヘッドパイプ(3)から後方へ延出するメインフレーム(4)と、前記ヘッドパイプ(3)から下方へ延出した後に、後方へ延出する左右一対のダウンフレーム(6L,6R)と、前記メインフレーム(4)の後部から後斜め下方へ延出し、前記ダウンフレーム(6L,6R)の後部に連結する左右一対のセンタフレーム(7L,7R)と、前記メインフレーム(4)の後部から後方へ延出する左右一対のシートフレーム(5L,5R)と、前記センタフレーム(7L,7R)と前記シートフレーム(5L,5R)とを連結し、これらセンタフレーム(7L,7R)とシートフレーム(5L,5R)とで側面視で三角形状の領域を形成するサブフレーム(8L,8R)と、を備える車体フレーム(2)と、クランク軸を収容するクランクケース(25)と、該クランクケース(25)の前部に設けられるシリンダ部(26)と、該シリンダ部(26)に設けられるシリンダヘッド(27)と、を備え、前記車体フレーム(2)の前記メインフレーム(4)の下方に配置されるエンジン(12)と、前記エンジン(12)の上方に配置される燃料タンク(10)と、前記燃料タンク(10)の内部で生じた蒸発燃料を、チャージ管(65)を通して吸着するキャニスタ(55)を有し、該キャニスタ(55)で吸着した燃料を、該キャニスタ(55)からパージ管(64)を通して前記エンジン(12)の吸気系に供給する蒸発燃料処理装置と、側面視で、前記センタフレーム(7L,7R)と、前記シートフレーム(5L,5R)と、サブフレーム(8L,8R)と、で囲まれる領域に配置されるエアクリーナ(45)と、を備える鞍乗型車両のキャニスタ配置構造において、前記左右一対のサブフレーム(8L,8R)は、その車幅方向における左右の間の幅寸法が、上方から下方に向かうに従い、漸次幅狭となるように形成され、前記キャニスタ(55)は、前記エアクリーナ(45)の下方で、且つ前記サブフレーム(8L,8R)の前方に、その長手方向を車幅方向に向けて配置され、前記キャニスタ(55)と前記サブフレーム(8L、8R)とが、後面視で重なるように配置される、ことを特徴とする鞍乗型車両のキャニスタ配置構造を提供する。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の鞍乗型車両のキャニスタ配置構造において、前記キャニスタ(55)は、前記エアクリーナ(45)の下面に取付けられる、ことを特徴とする。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の鞍乗型車両のキャニスタ配置構造において、前記エアクリーナ(45)の下面には、前記キャニスタ(55)を支持するステー(61)と、前記キャニスタ(55)の少なくとも一部を収容する凹部(101)と、が設けられる、ことを特徴とする。
【0009】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか1項に記載の鞍乗型車両のキャニスタ配置構造において、前記エアクリーナ(45)、前記センタフレーム(7L,7R)、前記シートフレーム(5L,5R)、及びサブフレーム(8L,8R)を車幅方向外側から覆うカバー部材(38L,38R)を備え、前記パージ管(64)に逆止弁(66)が設けられ、該逆止弁(66)が前記カバー部材(38L,38R)の内側に配置される、ことを特徴とする。
【0010】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれか1項に記載の鞍乗型車両のキャニスタ配置構造において、前記サブフレーム(8L,8R)は、上側に配置され上下方向に沿う第1平行部(81L,81R)と、該第1平行部(81L,81R)の下端から該第1平行部(81L,81R)に対して傾斜して下方に延出する傾斜部(82L,82R)と、該傾斜部(82L,82R)の下端から下方に上下方向に沿って延出する第2平行部(83L,83R)と、を備えてなり、前記キャニスタ(55)は、前記傾斜部(82L,82R)の前方に配置される、ことを特徴とする。
【0011】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の鞍乗型車両のキャニスタ配置構造において、左右の前記第1平行部(81L,81R)間の車幅方向における幅寸法が前記キャニスタ(55)の車幅方向における幅寸法よりも大きく、左右の前記第2平行部(83L,83R)間の車幅方向における幅寸法が前記キャニスタ(55)の車幅方向における幅寸法よりも小さく設定される、ことを特徴とする。
【0012】
請求項7に記載の発明は、請求項6に記載の鞍乗型車両のキャニスタ配置構造において、前記傾斜部(82L,82R)の上部に、同乗者が足を載せる同乗者用ステップ(30L,30R)を支持するステップフレーム(31L,31R)が接続される、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に記載の発明によれば、エアクリーナの下方にキャニスタが配置される場合において、キャニスタ後方に位置する左右一対のサブフレームの左右の間の幅寸法が上方から下方に向かうに従い漸次幅狭となるようにこれらサブフレームを形成し、このサブフレームが後面視でキャニスタと重なるようにすることで、サブフレームがキャニスタの後方を上方から下方に向けて斜めに横断することなり、キャニスタの後部が広範囲に覆われる。したがって、フレームの形状を利用し、特段専用の部材を必要とすることなく、キャニスタを保護することができるため、簡易な構造でキャニスタを車両後方の外的要因から広範囲に保護できる。
請求項2に記載の発明によれば、キャニスタをエアクリーナと小組(ユニット化)でき、組み立て性を向上できる。
請求項3に記載の発明によれば、キャニスタをエアクリーナに強固に支持しつつ、エアクリーナ下面でキャニスタを保護することもできる。
請求項4に記載の発明によれば、逆止弁をカバー部材によって保護することができる。さらに、逆止弁が外部に露出しないので、外観性も向上する。
請求項5に記載の発明によれば、エアクリーナの車幅方向における幅寸法がキャニスタよりも大きい場合に、エアクリーナの後方を、サブフレームによって保護しやすくなる。
請求項6に記載の発明によれば、第1平行部間の車幅方向における幅寸法がキャニスタの車幅方向における幅寸法よりも大きいので、キャニスタを側方の外的要因からも保護できる。さらに、第2平行部間の車幅方向における幅寸法がキャニスタの車幅方向における幅寸法よりも小さいので、後面視でキャニスタとサブフレームとの重なる領域を大きくすることができる。
請求項7に記載の発明によれば、車幅方向中心から遠くなる傾斜部の上部にステップフレームを接続することで、キャニスタの配置に影響されることなく、同乗者用ステップ間の車幅方向における幅を確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態に係る構造を備える自動二輪車の左側面図である。
【図2】同自動二輪車の右側面図である。
【図3】同自動二輪車の要部左側面図であり、同自動二輪車からカバー部材を一部取り外した状態の要部左側面図である。
【図4】同自動二輪車の要部右側面図であり、同自動二輪車からカバー部材を一部取り外した状態の要部右側面図である。
【図5】同自動二輪車の要部後面図である。
【図6】同自動二輪車の要部を左前方から見た斜視図である。
【図7】同自動二輪車の要部を右後方から見た斜視図である。
【図8】エアクリーナのキャニスタの取付構造を説明する図であり、(A)はエアクリーナの取付構造部の側面図であり、(B)は(A)のX−X線に沿う断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。なお、以下の説明に用いる図面において、矢印FRは車両前方を、矢印UPは車両上方を、矢印LHは車両左方をそれぞれ示している。
【0016】
図1及び図2に示す自動二輪車1の車体フレーム2は、前端を構成するヘッドパイプ3と、ヘッドパイプ3から後斜め下方へ延出するメインフレーム4と、メインフレーム4の後部から後方へ延出する左右一対のシートフレーム5L,5Rと、メインフレーム4の前部から下方へ延出した後、後方へ延出する左右一対のダウンフレーム6L,6Rと、メインフレーム4の後部から後斜め下方へ延出した後、下方へ延出することでダウンフレーム6L,6Rの後部にそれぞれ連結する左右一対のセンタフレーム7L,7Rと、前方から後斜め上方に延出し、センタフレーム7L,7R及びシートフレーム5L,5Rを連結する左右一対のサブフレーム8L,8Rと、を備えている。シートフレーム5L,5R、センタフレーム7L,7R、及びサブフレーム8L,8Rで囲まれる領域は、側面視で三角形状を呈している。
【0017】
ヘッドパイプ3には、下部に前輪WFを支持するフロントフォーク9が回転自在に取り付けられ、メインフレーム4には、燃料タンク10が取り付けられている。センタフレーム7L,7Rの下部には、左右一対のピボットプレート11L,11Rが取り付けられ、このピボットプレート11L,11Rには、エンジン12及び変速機13からなるパワーユニット14が支持されるとともに、スイングアーム15が上下スイング自在に支持されている。また、シートフレーム5L,5Rには、シート16及び後部左側方に設けた後部側方ガード部材17が支持されている。
【0018】
フロントフォーク9は、左右一対のフォーク単体18L,18Rをトップブリッジ19及びこのトップブリッジ19の下方に配置したボトムブリッジ20で連結したものであり、トップブリッジ19には、バーハンドル21が取り付けられている。トップブリッジ19及びボトムブリッジ20の前方には、フロントカウル24が支持されている。また、ダウンフレーム6L,6Rには、エンジン12を前方から保護する矩形の枠体であるエンジンガード部材22が固定されている。
【0019】
エンジン12は、クランク軸を収容するクランクケース25と、クランクケース25の前部に設けられるシリンダ部26と、シリンダ部26に設けられるシリンダヘッド27と、を備え、メインフレーム4の下方に位置している。シリンダ部26の内部には、ピストンが摺動可能に収容されている。シリンダ部26は、そのシリンダ軸線C1の延長線が少なくとも前輪WFと交差する、すなわち前輪WFを指向して略水平となるようにクランクケース25に取り付けられている。
【0020】
燃料タンク10の下方には、収納ボックス33が配置され、収納ボックス33は、メインフレーム4と、エンジン12のシリンダ部26と、の間に位置している。燃料タンク10の後方に位置するシート16は、シートフレーム5L,5Rに沿って前後方向に延在し、シート16の後部両端部の下方には、左右一対のリヤカバー28L,28Rが配置されている。また、シートフレーム5L,5Rの後部には、リヤカバー28L,28Rの間から後斜め下方に延びるリヤフェンダ29が取り付けられている。
【0021】
シート16の後部には同乗者が着座可能であり、シート16の下方には、同乗者が足を載せるための左右一対の後部ステップ30L,30Rが配置されている。後部ステップ30L,30Rは、サブフレーム8L,8Rから後斜め下方に延出した左右一対のステップフレーム31L,31Rの下端部に取り付けられている。また、ステップフレーム31L,31Rの下端部は、ピボットプレート11L,11Rから後方に延びる左右一対のサポートフレーム32L,32Rの後端部に接続され補強されている。
【0022】
スイングアーム15は、左右一対のアーム部材34L,34Rで構成され、後端部に後輪WRを回転可能に支持している。また、アーム部材34L,34Rの後端部には、左右一対のリヤクッションユニット36L,36Rのそれぞれの下端が取り付けられ、これらリヤクッションユニット36L,36Rの上端は、シートフレーム5L,5Rにそれぞれ固定されている。
【0023】
エンジン12のシリンダヘッド27には、吸気装置40及び排気装置41が接続されており、吸気系である吸気装置40は、シリンダヘッド27の上面に吸気管42を介して接続した燃料供給装置であるキャブレタ43と、このキャブレタ43にコネクティングチューブ44を介して接続したエアクリーナ45と、から構成されている。吸気管42は側面視で、シリンダヘッド27の上面に接続されて後方へ向けて延びている。なお、キャブレタ43は、燃料噴射装置用のスロットルボディであっても良いことは言うまでもない。
【0024】
また、排気装置41は、シリンダヘッド27の下面に接続された排気管46と、この排気管46の後端に取付けたマフラ47と、から構成されている。
【0025】
上記エアクリーナ45は、樹脂材料から形成された筐体であるエアクリーナケース48内にエレメント(不図示)を収容してなるものであって、シートフレーム5L,5R、センタフレーム7L,7R及びサブフレーム8L,8Rで囲まれる側面視で三角形状の領域に配置されている。エアクリーナ45は、メインフレーム4の後部、シートフレーム5L,5Rの前部等に、図示しないブラケットを介して取り付けられている。
【0026】
また、エアクリーナ45は、左右両側を左右一対のセンタカバー38L,38Rで覆われている。センタカバー38L,38Rは、側面視で台形状に形成されており、シートフレーム5L,5R、センタフレーム7L,7R及びサブフレーム8L,8Rで囲まれる領域に沿うようにして、これら各フレームを覆っている。
【0027】
センタカバー38L,38Rの車幅方向内側においてエアクリーナ45の下方には、キャニスタ55が配置され、キャニスタ55は、燃料タンク10に連通し、燃料タンク10から導き出された蒸発燃料を吸着剤で吸着し、当該吸着剤に吸着した燃料を、吸気系を構成するキャブレタ43に供給する。
【0028】
図3、図4、図5に示すように、キャニスタ55は円筒状を呈し、その長手方向、すなわち、その軸線C2(図5参照)を車幅方向に沿わせた状態で、側面視で、シートフレーム5L,5R、センタフレーム7L,7R、及びサブフレーム8L,8Rで囲まれる領域に配置されている。キャニスタ55は、吸着材を収容した筒状部56と、筒状部56の左端部を覆う左端ガード部57と、筒状部の右端部を覆う右端ガード部58と、を備えている。なお、本実施形態では、キャニスタ55はエアクリーナ45の下面に取付けられている。
【0029】
図8を参照し、エアクリーナ45の下面には、上方に向けてへこむ凹部101が形成され、キャニスタ55はこの凹部101に一部が収容されるようにしてエアクリーナ45に取付けられている。凹部101には、この凹部101の周方向に並ぶ一対の支持ステー61,61が一体に形成され、これら支持ステー61,61がキャニスタ55を支持する。図8(b)に示すように、支持ステー61,61は先端部分を車幅方向左側に向けて形成されるL字状であり、その先端部分でキャニスタ55を支持する。キャニスタ55の筒状部56には、弾性部材(ラバー部材)からなる筒状のケース62が嵌め入れられ、このケースに62は、キャニスタ55の径方向の外側に突出する貫通孔を有する係合片63,63が支持ステー61,61に対応して一対形成されている。そして、キャニスタ55は、上記係合片63,63に支持ステー61,61が挿入されることで、エアクリーナ45に支持されている。
【0030】
図5に示すように、キャニスタ55は、サブフレーム8L、8Rと後面視で重なるように配置されており、サブフレーム8L,8Rは、その車幅方向における左右の間の幅寸法が、上方から下方に向かうに従い、漸次幅狭となるように形成されている。
【0031】
具体的に、サブフレーム8L,8Rは、上側に配置され上下方向(鉛直方向)に沿う第1平行部81L,81Rと、第1平行部81L,81Rの下端から第1平行部81L,81Rに対して傾斜し車幅方向内側に向けて下方に延出する傾斜部82L,82Rと、傾斜部82L,82Rの下端から下方に上下方向(鉛直方向)に沿って延出する第2平行部83L,83Rと、を備えてなる。
【0032】
左右の第1平行部81L,81Rの車幅方向の外側縁部間の幅寸法は、キャニスタ55の車幅方向における幅寸法よりも大きく設定され、また、左右の第2平行部83L,83Rの車幅方向の外側縁部間の幅寸法は、キャニスタ55の車幅方向における幅寸法よりも小さく設定されている。
【0033】
傾斜部82L,82Rの上部には、上記ステップフレーム31L,31Rが接続されており、ステップフレーム31L,31Rは、傾斜部82L,82Rの上部の車幅方向外側面に固着されたブラケット84L,84Rを介して傾斜部82L,82Rに接続されている。ステップフレーム31L,31Rは後面視で、車幅方向外側に向けて下方に延出している。
【0034】
以下、キャニスタ55の配管について説明すると、図6、図7も参照し、キャニスタ55の右端ガード部58には、パージ管64と、チャージ管65と、が接続され、キャニスタ55は、パージ管64によりキャブレタ43に接続され、チャージ管65により燃料タンク10に接続されている。また、キャニスタ55の左端ガード部57には、キャニスタ55内の不要物を排出するためのドレイン管69と、キャニスタ55を大気に連通させる新気導入管68と、が接続されている。
【0035】
パージ管64は、キャニスタ55から前上方に引き出され、右のセンタフレーム7Rの内側で、このセンタフレーム7Rに沿って延出し、その後、メインフレーム4の下方を通り、キャブレタ43に接続されている。パージ管64は、経路途中に配された逆止弁66を通してキャブレタ43に接続されている。逆止弁66は、パージ管64の管内の圧力に応じて、キャブレタ43側へ向かう蒸発燃料の流れを許容すべく開放する一方弁であり、キャニスタ55よりも上方に配置されており、図1に示すように、センタカバー38Rの内側に配置される。図4、図7に示すように、逆止弁66は、センタフレーム7Rから後斜め上方に突出するように固着されたステー100の車幅方向内側に配されて、このステー100に固定されている。ここで、図1に示すように、センタカバー38L,38Rは、キャニスタ55の側方の一部も覆っている。
【0036】
一方、チャージ管65は、キャニスタ55から前上方に引き出され、燃料タンク10の内部に挿入されている。チャージ管65は、燃料タンク10の内部において上方に配された気液分離部67に接続され、気液分離部67は、例えばシール部材を備えて液体の燃料がチャージ管65に供給されないように構成されている。
【0037】
また、新気導入管68は、キャニスタ55から上方に引き出され、図1に示すように、その上端(先端部)がセンタカバー38Lの車幅方向内側に配置され、センタカバー38L内で開放している。また、ドレイン管69は、キャニスタ55から下方に引き出され、図5に示すように、第2平行部83Lに沿って下方に延出し、その下端を下方に向けて開放している。
【0038】
以上に説明したように、この自動二輪車1は、側面視で、センタフレーム7L,7Rと、シートフレーム5L,5Rと、サブフレーム8L,8Rと、で囲まれる領域にエアクリーナ45が配置され、左右一対のサブフレーム8L,8Rが、その車幅方向における左右の間の幅寸法を上方から下方に向かうに従い漸次幅狭となるように形成され、キャニスタ55が、エアクリーナ45の下方で、且つサブフレーム8L,8Rの前方に、その長手方向を車幅方向に向けて配置され、キャニスタ55とサブフレーム8L、8Rとが、後面視で重なるように配置される構造を有している。
【0039】
このような構造では、エアクリーナ45の下方にキャニスタ55が配置される場合において、キャニスタ55後方に位置する左右一対のサブフレーム8L,8Rの左右の間の幅寸法が上方から下方に向かうに従い漸次幅狭となるようにこれらサブフレーム8L,8Rを形成し、サブフレーム8L,8Rを後面視でキャニスタ55と重なるようにすることで、サブフレーム8L,8Rがキャニスタ55の後方を上方から下方に向けて斜めに横断することなり、キャニスタ55の後部が広範囲に覆われる。したがって、フレームの形状を利用し、特段専用の部材を必要とすることなく、キャニスタ55を保護することができるため、簡易な構造でキャニスタ55を車両後方の外的要因から広範囲に保護できる。
【0040】
また、この自動二輪車1は、キャニスタ55が、エアクリーナ45の下面に取付けられる構造を有するが、この構造では、キャニスタ55をエアクリーナ45と小組(ユニット化)でき、組み立て性を向上できる。さらに、エアクリーナ45の下面に、キャニスタ55を支持する支持ステー61と、キャニスタ55の少なくとも一部を収容する凹部101が設けられるため、キャニスタ55をエアクリーナ45に強固に支持しつつ、エアクリーナ45下面でキャニスタ55を保護することもできる。また、この自動二輪車1は、エアクリーナ45、センタフレーム7L,7R、シートフレーム5L,5R、及びサブフレーム8L,8Rを車幅方向外側から覆うセンタカバー38L,38Rを備え、パージ管64に逆止弁66が設けられ、逆止弁66がセンタカバー38L,38Rの内側で開放するように配置される構造を有する。この構造では、逆止弁66をセンタカバー38L,38Rによって保護することができる。さらに、逆止弁66が外部に露出しないので、外観性も向上する。
【0041】
また、この自動二輪車1は、サブフレーム8L,8Rが、上側に配置され上下方向に沿う第1平行部81L,81Rと、第1平行部81L,81Rの下端から第1平行部81L,81Rに対して傾斜して下方に延出する傾斜部82L,82Rと、傾斜部82L,82Rの下端から下方に上下方向に沿って延出する第2平行部83L,83Rと、を備えてなり、キャニスタ55が、傾斜部82L,82Rの前方に配置される構造を有する。これによれば、エアクリーナ45の車幅方向における幅寸法がキャニスタ55よりも大きい場合に、エアクリーナ45の後方を、サブフレーム8L,8Rによって保護しやすくなる。
【0042】
また、この自動二輪車1は、左右の第1平行部81L,81R間の車幅方向における幅寸法がキャニスタ55の車幅方向における幅寸法よりも大きく、左右の第2平行部83L,83R間の車幅方向における幅寸法がキャニスタ55の車幅方向における幅寸法よりも小さく設定される構造を有するが、この構造では、キャニスタ55を側方の外的要因からも保護できる。さらに、第2平行部83L,83R間の車幅方向における幅寸法がキャニスタ55の車幅方向における幅寸法よりも小さいので、後面視でキャニスタ55とサブフレーム8L,8Rとの重なる領域を大きくすることができる。
【0043】
さらに、この自動二輪車1は、傾斜部82L,82Rの上部に、同乗者が足を載せる同乗者用ステップである後部ステップ30L,30Rを支持するステップフレーム31L,31Rが接続される構造を有している。この構造では、車幅方向中心から遠くなる傾斜部82L,82Rの上部にステップフレーム31L,31Rを接続することで、キャニスタ55の配置に影響されることなく、後部ステップ30L,30R間の車幅方向における幅を確保できる。
【0044】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0045】
1 自動二輪車(鞍乗型車両)
2 車体フレーム
4 メインフレーム
5L,5R シートフレーム
6L,6R ダウンフレーム
7L,7R センタフレーム
8L,8R サブフレーム
10 燃料タンク
12 エンジン
25 クランクケース
26 シリンダ部
27 シリンダヘッド
45 エアクリーナ
55 キャニスタ
56 筒状部
64 パージ管
65 チャージ管
66 逆止弁
68 新気導入管
69 ドレイン管
81L,81R 第1平行部
82L,82R 傾斜部
83L,83R 第2平行部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘッドパイプ(3)と、該ヘッドパイプ(3)から後方へ延出するメインフレーム(4)と、前記ヘッドパイプ(3)から下方へ延出した後に、後方へ延出する左右一対のダウンフレーム(6L,6R)と、前記メインフレーム(4)の後部から後斜め下方へ延出し、前記ダウンフレーム(6L,6R)の後部に連結する左右一対のセンタフレーム(7L,7R)と、前記メインフレーム(4)の後部から後方へ延出する左右一対のシートフレーム(5L,5R)と、前記センタフレーム(7L,7R)と前記シートフレーム(5L,5R)とを連結し、これらセンタフレーム(7L,7R)とシートフレーム(5L,5R)とで側面視で三角形状の領域を形成するサブフレーム(8L,8R)と、を備える車体フレーム(2)と、
クランク軸を収容するクランクケース(25)と、該クランクケース(25)の前部に設けられるシリンダ部(26)と、該シリンダ部(26)に設けられるシリンダヘッド(27)と、を備え、前記車体フレーム(2)の前記メインフレーム(4)の下方に配置されるエンジン(12)と、
前記エンジン(12)の上方に配置される燃料タンク(10)と、
前記燃料タンク(10)の内部で生じた蒸発燃料を、チャージ管(65)を通して吸着するキャニスタ(55)を有し、該キャニスタ(55)で吸着した燃料を、該キャニスタ(55)からパージ管(64)を通して前記エンジン(12)の吸気系に供給する蒸発燃料処理装置と、
側面視で、前記センタフレーム(7L,7R)と、前記シートフレーム(5L,5R)と、サブフレーム(8L,8R)と、で囲まれる領域に配置されるエアクリーナ(45)と、を備える鞍乗型車両のキャニスタ配置構造において、
前記左右一対のサブフレーム(8L,8R)は、その車幅方向における左右の間の幅寸法が、上方から下方に向かうに従い、漸次幅狭となるように形成され、
前記キャニスタ(55)は、前記エアクリーナ(45)の下方で、且つ前記サブフレーム(8L,8R)の前方に、その長手方向を車幅方向に向けて配置され、
前記キャニスタ(55)と前記サブフレーム(8L、8R)とが、後面視で重なるように配置される、
ことを特徴とする鞍乗型車両のキャニスタ配置構造。
【請求項2】
前記キャニスタ(55)は、前記エアクリーナ(45)の下面に取付けられる、
ことを特徴とする請求項1に記載の鞍乗型車両のキャニスタ配置構造。
【請求項3】
前記エアクリーナ(45)の下面には、前記キャニスタ(55)を支持するステー(61)と、前記キャニスタ(55)の少なくとも一部を収容する凹部(101)と、が設けられる、
ことを特徴とする請求項2に記載の鞍乗型車両のキャニスタ配置構造。
【請求項4】
前記エアクリーナ(45)、前記センタフレーム(7L,7R)、前記シートフレーム(5L,5R)、及びサブフレーム(8L,8R)を車幅方向外側から覆うカバー部材(38L,38R)を備え、
前記パージ管(64)に逆止弁(66)が設けられ、該逆止弁(66)が前記カバー部材(38L,38R)の内側に配置される、
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の鞍乗型車両のキャニスタ配置構造。
【請求項5】
前記サブフレーム(8L,8R)は、上側に配置され上下方向に沿う第1平行部(81L,81R)と、該第1平行部(81L,81R)の下端から該第1平行部(81L,81R)に対して傾斜して下方に延出する傾斜部(82L,82R)と、該傾斜部(82L,82R)の下端から下方に上下方向に沿って延出する第2平行部(83L,83R)と、を備えてなり、
前記キャニスタ(55)は、前記傾斜部(82L,82R)の前方に配置される、
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の鞍乗型車両のキャニスタ配置構造。
【請求項6】
左右の前記第1平行部(81L,81R)間の車幅方向における幅寸法が前記キャニスタ(55)の車幅方向における幅寸法よりも大きく、左右の前記第2平行部(83L,83R)間の車幅方向における幅寸法が前記キャニスタ(55)の車幅方向における幅寸法よりも小さく設定される、
ことを特徴とする請求項5に記載の鞍乗型車両のキャニスタ配置構造。
【請求項7】
前記傾斜部(82L,82R)の上部に、同乗者が足を載せる同乗者用ステップ(30L,30R)を支持するステップフレーム(31L,31R)が接続される、
ことを特徴とする請求項6に記載の鞍乗型車両のキャニスタ配置構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−67295(P2013−67295A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−208018(P2011−208018)
【出願日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】