説明

鞍乗型車両の車体フレーム構造

【課題】剛性を改善できる鞍乗型車両の車体フレーム構造を提供する。
【解決手段】前輪(2f)を回転可能に支持するフロントフォーク(3)を回動可能に支持するヘッドパイプ(11)と、ヘッドパイプ(11)から後方へ延びるメインフレーム(12)と、メインフレーム(12)の後下部に設けられ、後輪(2r)を揺動可能に支持する支持部材(4)を軸支するピボット部(14)とを有し、ピボット部(14)の前方に原動機(20)が配置される車体フレーム(10)と、ヘッドパイプ(11)の後方で原動機(20)の上方に配置される容器(30)とを備え、車体フレーム(10)のメインフレーム(12)を容器(30)の上側に配置し、かつメインフレーム(12)の少なくとも一部を車両上方へ露出させた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鞍乗型車両の車体フレーム構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、鞍乗型車両の車体フレーム構造として、例えば特許文献1に見られるような構造が知られている。同文献の符号を借りて説明すると、この鞍乗型車両の車体フレーム構造は、前輪(2)を回転可能に支持するフロントフォーク(3)を回動可能に支持するヘッドパイプ(6)と、このヘッドパイプ(6)から後方へ延びるメインフレーム(12)と、このメインフレーム(12)の後下部に設けられ、後輪(8)を揺動可能に支持する支持部材(9)を軸支するピボット部(10)とを有し、ピボット部(10)の前方に原動機(15)が配置される金属製の車体フレーム(5)と、
ヘッドパイプ(6)の後方で原動機(15)の上方に配置される容器としての燃料タンク(27)とを備えている。
この特許文献1における燃料タンク(27)は、前記メインフレーム(12)上に、該メインフレーム(12)を上から跨ぐようにして設けられている。
【0003】
また、従来、例えば特許文献2に見られるように、メインフレーム(111)およびピボット部(109)が左右一対のものとして構成され、左右一対のメインフレーム(111)の上部に燃料タンクが配置された構造も知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4628927号公報
【特許文献2】特開2010−274761号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した従来の鞍乗型車両の車体フレーム構造では、車体フレームにおけるメインフレームの上方に容器としての燃料タンクが配置されているため、車両全体を側方から見たとき、車体フレームの外側に容器が位置することとなり、剛性面での課題があった。
したがって、本発明が解決しようとする課題は、剛性を改善できる鞍乗型車両の車体フレーム構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために本発明の鞍乗型車両の車体フレーム構造は、前輪を回転可能に支持するフロントフォークを回動可能に支持するヘッドパイプと、このヘッドパイプから後方へ延びるメインフレームと、このメインフレームの後下部に設けられ、後輪を揺動可能に支持する支持部材を軸支するピボット部とを有し、前記ピボット部の前方に原動機が配置される車体フレームと、
前記ヘッドパイプの後方で前記原動機の上方に配置される容器とを備えた鞍乗型車両の車体フレーム構造であって、
前記車体フレームのメインフレームを前記容器の上側に配置し、かつ該メインフレームの少なくとも一部を車両上方へ露出させたことを特徴とする。
この鞍乗型車両の車体フレーム構造によれば、車体フレームのメインフレームが前記容器の上側に配置され、かつ該メインフレーム上面の少なくとも一部が車両上方へ露出しているから、車両全体を側方から見たとき、車体フレームの内側に容器が位置し、容器の外側に車体フレームのメインフレームが位置することとなる。したがって、車両全体としての剛性の向上を図ることが可能となる。
前記車体フレームは、前記ヘッドパイプの左右から下方に延び、車両幅方向に関し、前記容器よりも外側に配置される左右一対のダウンフレームを備えている構成とすることができる。
このように構成すると、左右一対のダウンフレームによって、側方の衝撃から容器を保護することが可能となる。
側面視で、前記メインフレームの前部と前記ダウンフレームの上部とのなす角度を鈍角とし、前記メインフレームの前部と前記ダウンフレームの上部との間に、容器の前部を配置した構成とすることができる。
このように構成すると、容器前部の容量増加を図ることが可能となる。特に、容器を、小物入れ等の収納容器として構成した場合、容器前部に手を入れやすくなるので、使い勝手を良好とすることができる。
前記メインフレームの断面形状は、車両前後方向から見て、縦より横が長い幅広形状とすることができる。
このように構成すると、メインフレームの上方への突出を抑制することができ、外観の向上を図ることができる。
前記原動機が、クランクケースと、該クランクケースの前部から上方へ延出するシリンダブロックとを有するエンジンである場合には、前記容器の底面が前記シリンダブロックに対向して配置される構成とすることができる。
このように構成すると、容器底面により、シリンダブロックからの熱気が上方に上がることを抑制することができる。
前記容器は、前記メインフレームの内側に沿わせて配置した構成とすることができる。
このように構成すると、外観を向上させつつ、容器で車体フレームを補強することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明に係る鞍乗型車両の車体フレーム構造の実施の形態を用いた車両の一例としての自動二輪車の側面図。
【図2】車体フレーム構造の一実施の形態を示す斜視図。
【図3】同じく部分省略正面図。
【図4】図2におけるIV−IV端面図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明に係る鞍乗型車両の車体フレーム構造の実施の形態について図面を参照して説明する。なお、各図において、同一部分ないし相当する部分には、同一の符号を付してある。
【0009】
図1に示す鞍乗型車両は自動二輪車である。
この自動二輪車1は、前輪2fを回転可能に支持するフロントフォーク3を回動可能に支持するヘッドパイプ11と、このヘッドパイプ11から後方へ延びるメインフレーム12と、このメインフレーム12の後下部に設けられ、後輪2rを揺動可能に支持する支持部材4を軸支するピボット部14とを有し、ピボット部14の前方に原動機20が配置される車体フレーム10と、ヘッドパイプ11の後方で原動機20の上方に配置される容器30とを備えている。
容器30は、原動機20の動力源(例えばガソリン、バッテリー)が収容される動力源容器(例えばガソリンタンク、バッテリーケース)の他、エアクリーナ容器、小物等の物品収納容器等として構成することができる。
【0010】
図1,図2に示すように、この自動二輪車1における車体フレーム構造は、車体フレーム10のメインフレーム12を容器30の上側に配置し、かつメインフレーム12上面12u(図2)の少なくとも一部を車両上方へ露出させたことを特徴とする。
このような構造によれば、車体フレーム10のメインフレーム12が容器30の上側に配置され、かつメインフレーム12の上面12uの少なくとも一部が車両上方へ露出しているから、車両全体を側方から見たとき(図1参照)、車体フレーム10の内側に容器30が位置し、容器30の外側に車体フレーム10のメインフレーム12が位置することとなる。したがって、容器30の上部においてメインフレーム12が車両の外殻部材を構成することとなり、車両全体としての剛性の向上を図ることが可能となる。
また、容器30は車体フレーム10で保護されるため、容器30自体の軽量化を図ることができ、結果として、車両全体の軽量化を図ることができる。
また、車両全体を側方から見たとき(図1参照)、車体フレーム10の内側に容器30が位置し、容器30の外側に車体フレーム10のメインフレーム12が位置することとなるから、外観性を向上させることが可能となる。
【0011】
後輪2rを揺動可能に支持する支持部材4は、スイングアームで構成することができる。支持部材4は、ピボット部14にピボット軸4pで揺動可能に支持される。支持部材4と、車体フレーム10との間には、クッションユニット5が設けられる。クッションユニット5の上端は、車体フレーム10における連結部15(図2参照)に軸15a(図1)で連結され、クッションユニット5の下端は、支持部材4における連結部4jに軸4aで連結される。
【0012】
車体フレーム10は、金属、例えばアルミニウム合金で、一体成型することができる。
メインフレーム12は、ヘッドパイプ11からピボット部14へ向かって上方へ凸状をなすアーチ状とすることができる。望ましくは、ヘッドパイプ11から後方へ向かって一旦上方へ延びる上方延出部12a(図2)を有するアーチ状とする。
そのように構成すると、一層、剛性の向上を図ることができる。
【0013】
この実施の形態のメインフレーム12は、ヘッドパイプ11から後方へ向かって一旦上方へ延びる上方延出部12aと、その後部から第1屈曲部12bを介して略水平方向(あるいは僅かに下方へ向かう)後方延出部12cと、その後部から第2屈曲部12dを介して後下部に向かう下方延出部12eとを有し、この下方延出部12eの下部に、前記ピボット部14が設けられる。
【0014】
この実施の形態のメインフレーム12は、その上面12uのほとんどの部分が、車両上方へ向かって露出しているが、一部のみ露出させるようにすることができる。例えば前側略半分のみを露出させるようにすることもできる。具体的には、例えば、上方延出部12a、第1屈曲部12b、および後方延出部12cの上面のみを露出させ、第2屈曲部12dおよび下方延出部12eの上部は、図示しないカバーまたは、運転者が座るシート6(図1)の前部で覆うようにすることもできる。
【0015】
図4に示すように、メインフレーム12の断面形状は、車両前後方向から見て、縦より横が長い幅広形状とすることができる。
このように構成すると、メインフレーム12の上方への突出を抑制することができ、外観の向上を図ることができる。メインフレーム12の幅W1は容器30上面32の幅W2の1/3以上とすることが、容器保護および外観性向上の観点から、望ましい。
図示の断面形状は矩形としたが、横長(幅広)の楕円形状とすることもできる。
【0016】
図1〜図3に示すように、車体フレーム10は、ヘッドパイプ11の左右から下方に延び、車両幅方向に関し、容器30よりも外側に配置される左右一対のダウンフレーム16、16を備えている構成とすることができる。
このように構成すると、左右一対のダウンフレーム16、16によって、側方の衝撃から容器30を保護することが可能となる。
【0017】
図1に示すように、側面視で、メインフレーム12の前部とダウンフレーム16の上部とのなす角度θを鈍角とし、メインフレーム12の前部とダウンフレーム16の上部との間に、容器30の前部31を配置した構成とすることができる。
このように構成すると、容器30の前部31の容量増加を図ることが可能となる。特に、容器30を、小物入れ等の収納容器として構成した場合、容器前部に手を入れやすくなるので、使い勝手を良好とすることができる。
【0018】
図1に示すように、原動機20は、クランクケース21と、該クランクケース21の前部から上方へ延出するシリンダブロック22とを有するエンジンで構成することができる。この場合、容器30の底面33がシリンダブロック22に対向して配置される構成とすることが望ましい。
そのように構成すると、容器底面33により、シリンダブロック22からの熱気が上方に上がることを抑制することができる。
【0019】
図1,図2に示すように、容器30は、メインフレーム12の内側に沿わせて配置した構成とすることができる。
このように構成すると、外観を向上させつつ、容器30で車体フレーム10を補強することが可能となる。容器30は、メインフレーム12の少なくとも上方延出部12aと下方延出部12eとに沿わせて配置することが望ましい。
容器30をガソリンタンクとして構成する場合には、メインフレーム12を貫通させてガソリンタンクの燃料キャップ34を設けることができる。
【0020】
図1、2において、15b、15bはシートレール40の固定部、15c、16cはエンジン固定部である。
【0021】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内において適宜変形実施可能である。例えば、鞍乗型車両としては、二輪車の他、三輪車、四輪車を挙げることができる。
【符号の説明】
【0022】
1:自動二輪車(鞍乗型車両)、2f:前輪、2r:後輪、3:フロントフォーク、4:スイングアーム(支持部材)、10:車体フレーム、11:ヘッドパイプ、12:メインフレーム、14:ピボット部、16:ダウンフレーム、20:原動機、21:クランクケース、22:シリンダブロック、30:容器、33:底面。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前輪(2f)を回転可能に支持するフロントフォーク(3)を回動可能に支持するヘッドパイプ(11)と、このヘッドパイプ(11)から後方へ延びるメインフレーム(12)と、このメインフレーム(12)の後下部に設けられ、後輪(2r)を揺動可能に支持する支持部材(4)を軸支するピボット部(14)とを有し、前記ピボット部(14)の前方に原動機(20)が配置される車体フレーム(10)と、
前記ヘッドパイプ(11)の後方で前記原動機(20)の上方に配置される容器(30)とを備えた鞍乗型車両の車体フレーム(10)構造であって、
前記車体フレーム(10)のメインフレーム(12)を前記容器(30)の上側に配置し、かつ該メインフレーム(12)の少なくとも一部を車両上方へ露出させたことを特徴とする鞍乗型車両の車体フレーム構造。
【請求項2】
請求項1において、
前記ヘッドパイプ(11)の左右から下方に延び、車両幅方向に関し、前記容器(30)よりも外側に配置される左右一対のダウンフレーム(16)を備えていることを特徴とする鞍乗型車両の車体フレーム構造。
【請求項3】
請求項2において、
側面視で、前記メインフレーム(12)の前部と前記ダウンフレーム(16)の上部とのなす角度(θ)を鈍角とし、前記メインフレーム(12)の前部と前記ダウンフレーム(16)の上部との間に、容器(30)の前部(31)を配置したことを特徴とする鞍乗型車両の車体フレーム構造。
【請求項4】
請求項1〜3のうちいずれか一項において、
前記メインフレーム(12)の断面形状は、車両前後方向から見て、縦より横が長い幅広形状としたことを特徴とする鞍乗型車両の車体フレーム構造。
【請求項5】
請求項1〜4のうちいずれか一項において、
前記原動機(20)は、クランクケース(21)と、該クランクケース(21)の前部から上方へ延出するシリンダブロック(22)とを有するエンジンであり、前記容器(30)の底面(33)が前記シリンダブロック(22)に対向して配置されることを特徴とする鞍乗型車両の車体フレーム構造。
【請求項6】
請求項1〜5のうちいずれか一項において、
前記容器(30)は、前記メインフレーム(12)の内側に沿わせて配置したことを特徴とする鞍乗型車両の車体フレーム構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−67338(P2013−67338A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−208934(P2011−208934)
【出願日】平成23年9月26日(2011.9.26)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】