説明

音叉型圧電振動ジャイロ

【課題】 回路基板に接合された音叉型振動子を有する音叉型圧電振動ジャイロを小型化し、特性や信頼性を向上すること。
【解決手段】 音叉型振動子及び回路基板の電極の端末を一つの面に配置するとともに、音叉型振動子側の電極の端末にバンプ21b〜27bを形成し、端末が配置された面を対向させて接合する。端末にバンプ21b〜27bを形成することで、接合後の音叉型振動子と回路基板の接合面の間に、バンプの高さに相当する間隙が生じ、音叉型振動子の回路基板への接合による特性変化を抑制できるとともに、接合の強度が確保できるので、信頼性が向上する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として自動車のナビゲーションシステム、姿勢制御、カメラ一体型VTRの手振れ防止装置等に用いられるジャイロスコープのうち、特に音叉型振動子を用いた音叉型圧電振動ジャイロに関する。
【背景技術】
【0002】
振動ジャイロは、速度を持つ物体に角速度が与えられると、その物体自身に速度方向と直角な方向にコリオリ力が発生するという力学現象を利用した角速度センサである。一般的には、電界や磁界の印加により歪みを生じる材料を用い、電気的な信号を印加することで機械的な振動(駆動モード)を励起させることができ、且つ、駆動振動と直交する方向の機械的な振動(検出モード)の大きさを電気的に検出可能とした系を構成したものである。
【0003】
このような系において、予め駆動モードを励振した状態で、駆動モードの振動面及び検出モードの振動面の交線と、平行な軸を中心とした角速度を与えると、前述のコリオリ力の作用により、検出モードが発生し、出力電圧として検出される。検出された出力電圧は駆動モードの大きさ及び角速度に比例するため、駆動モードの大きさを一定にした状態では、出力電圧の大きさから角速度の大きさを求めることができる。振動ジャイロの中でも、電気的信号と機械的振動の変換を、圧電効果で行うものを圧電振動ジャイロと称し、多方面で用いられている。
【0004】
圧電振動ジャイロは、さまざまな構造がこれまで研究、開発されてきたが、中でも、振動子の支持や入出力信号の配線接続方法については、さまざまな構造が提案されてきており、性能、生産性、形状、信頼性等の改良という観点から、なお研究開発が行われている。
【0005】
例えば、特許文献1には、駆動用及び検出用の複数の電極が一つの側面に配置された音叉型振動子を、支持具やリード線を用いずに回路基板に接合した音叉型圧電振動ジャイロにおいて、回路基板に設けられたランドに音叉型振動子の電極の端末を、半田付け等によって直接電気的に接続するとともに、回路基板側に切り欠きを設け、端末以外の音叉型振動子の電極が回路基板に接触しないようにしたことを特徴とする音叉型の圧電振動ジャイロが開示されている。
【0006】
図9は、特許文献1に開示されている、従来の音叉型圧電振動ジャイロにおける、音叉型振動子と回路基板の接合状態の一例を示す斜視図である。図9において、71は音叉型振動子、72は回路基板、73は切り欠き、74はランドである。
【0007】
この例においては、図における裏側に配置された音叉型振動子71側の電極の端末と、ランド74との直接半田付けで電気的な接続と、音叉型振動子71の回路基板72への固定を行っている。また、回路基板72には、切り欠き73が設けられているので、端末が設けられている部分以外の、音叉型振動子71の電極が設けられている面と、回路基板72との間には、切り欠き73の深さに相当する空隙が形成される。
【0008】
また、特許文献2には、アーム部に設けられた電極の端末が基部の一つの面に集められ、電極の端末が集められた面以外の基部の面を、キャビティを有する基台に固着し、基部側の電極の端末と、基台側に設けられた電極を接合した構成を有する角速度センサが開示されている。
【0009】
図10は、特許文献2に開示されている、従来の角速度センサにおける、音叉型振動子と基台との接合状態の一例を示す図で、図11は、従来の角速度センサにおける、音叉型振動子と基台との接合状態の別の例を示す図である。図10において、81は音叉型振動子,82,83,84は電極、85は基台、86はワイヤボンディングであり、音叉型振動子側と基台側の電極の接合は、ワイヤボンディングによって行っている。また、図11において、91は音叉型振動子、92,93,94,95,96,97,99は電極、98は基台であり、音叉型振動子側と基台側の電極の接合は、導電性接着剤によって行っている。
【0010】
特許文献1及び特許文献2に開示されている技術の共通点は、音叉型振動子の基部における一つの平面に電極の端末全部を配置し、基台側の電極も一つの平面に配置することにより、接合を二つの平面の突き合わせで行うものであり、これにより、従来の立体的な支持構造を、よりコンパクト化でき、小形で安価な圧電振動ジャイロが得られるというものである。
【0011】
【特許文献1】特開平9−126783号公報
【特許文献2】特開平11−230758号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、図11に示した構成のように、ワイヤボンディングを使用した場合、音叉型振動子の実装面積は、ワイヤの引き回し分だけ音叉型振動子のサイズより大きくなり、ワイヤのループ高さも考えると決して小形化に適した構造とは言えない。また、音叉型振動子の支持固定に導電性接着剤を使用する場合、導電性接着剤の塗布量によって、音叉型振動子の、特に面外振動モード、つまり二つのアーム部を含む平面と直交する方向の振動モードにおける、Qm値のばらつきの増加に繋がり、結果として圧電振動ジャイロの感度ばらつきに繋がる。
【0013】
また、導電性接着剤による接合の信頼性を確保するためには、音叉型振動子及び基台の表面状態や、接着剤自体の管理が難しくなる。更に、導電性接着剤が熱硬化型の場合、振動子を位置決めした後、接着剤を硬化させるまでの間、その位置決め状態を保持する必要が生じ、振動子を位置精度良く接合することが困難である。
【0014】
導電性接着剤としてUV硬化型を用いた場合は、硬化に要する時間を短縮できるが、音叉型振動子が小形であるため、音叉型振動子を位置決め保持した状態で、光を接着剤塗布面に均一に照射することが困難で、導電性接着剤の硬化反応が不均一になり、その結果、特性変動を引き起こす原因となる。
【0015】
また、音叉型振動子の電気的な接続と支持固定を導電性接着剤で行う場合、前記の問題に加えて、現状の小型音叉型振動子においては、実装部の音叉型振動子の幅が1mm程度であり、1個あたりの電極パッド幅は、可能な限り大きくしても、上限が200〜300μm程度であることから、プロセスの難易度が上がり、生産性は低下する。
【0016】
つまり、このような複数の微小電極を、導電性接着剤を用いて接続するには、導電性接着剤の微少な塗布量管理が必要となり、現実的には、高い歩留まりで生産することは困難である。
【0017】
また、振動子の支持固定と電気的接続を半田で行う場合も、溶融時における半田の流れ込みにより、接合面積にばらつきが生じ、音叉振動子の特に面外振動モードにおけるQm値がばらつきを増加し、結果として圧電振動ジャイロの感度ばらつき増加に繋がる。無論、接続したい箇所以外の電極をレジスト保護することは、工数の増加に繋がり、音叉型振動子側へのレジスト塗布は、性能上及び信頼性上好ましくない。
【0018】
更に、カメラ等携帯用機器へ搭載する圧電振動ジャイロは、実装形態も含め小形化を求められ、それら機器へのリフローによる表面実装を可能とすることが求められる。こうした点から見た場合も、次のような問題が生じる。
【0019】
音叉型振動子の支持固定と電気的接続部の半田、つまりジャイロの内部半田は、再溶融すると音叉型振動子の、特に面外振動モードのインピーダンス特性に変化が生じ、感度等の圧電振動ジャイロ特性に変化が生ずるため、再溶融は許されない。
【0020】
従って、内部半田にはリフロー実装時において再溶融しない高融点のものが必要となる。しかし、近年の半田部鉛フリー化の促進により、リフロー実装に使用される半田の融点が高くなり、リフロー実装時の製品本体の周辺ピーク温度は260℃に達する可能性も生じるようになった。内部半田を再溶融させないためには、融点が260℃以上の半田が内部半田として必要になるが、融点が260℃を超えるような半田には濡れ性、機械的強度に優れるものはなく、接合部の信頼性を満足させることが大変困難であった。
【0021】
従って、本発明の課題は、音叉型振動子を用いた圧電振動ジャイロにおいて、音叉型振動子の実装面積が小さく、薄型で、支持接合面積のばらつきが少なく、接合部の耐熱性を初めとしたさまざまな信頼性に優れ、生産性にも優れた音叉型振動子の実装構造を提供し、小形で、安価で、かつ信頼性に優れた音叉型圧電振動ジャイロを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明は、前記の課題解決のため、音叉型振動子における電極の端末の構造を再検討した結果なされたものである。
【0023】
即ち、本発明は、複数のアーム部と基部が圧電単結晶にて一体に形成され、前記アーム部の表面に駆動及び検出用の複数の電極が設けられ、前記電極の端末全てが前記基部の同一の面に配置されてなる端末配置面を具備する音叉形振動子と、同一の面に駆動回路及び検出回路の電極の端末が配置されてなる端末配置面を具備する回路基板とを有し、前記音叉型振動子側の端末配置面と前記回路基板側の端末配置面が、対向配置されてなる音叉型圧電振動ジャイロにおいて、前記音叉型振動子側の電極の端末には、前記音叉形振動子に設けられた駆動及び検出ならびに基準用として必要な電極の数よりも多い数で、かつ融点が260℃以上の導体からなるバンプが形成され、前記バンプが前記回路基板側の電極の端末に接合されることで、前記音叉型振動子が前記回路基板に電気的に接続され、機械的に支持されてなる音叉型圧電振動ジャイロである。
【0024】
また、本発明は、前記駆動および検出用の複数の電極の内、少なくともひとつの電極には、前記音叉形振動子の接合に使用する前記バンプを2つ以上用いて、前記音叉型振動子が前記回路基板に電気的に接続され、機械的に支持されてなる圧電振動ジャイロである。
【0025】
また、本発明は、前記駆動および検出用の複数の電極とは別の電極を前記音叉形振動子の基部に施し、基部に引き回された複数の電極と前記別の電極に、前記バンプを形成し、接合することで、前記音叉型振動子が前記回路基板に電気的に接続され、機械的に支持されてなる圧電振動ジャイロである。
【0026】
また、本発明は、複数のアーム部と基部が圧電単結晶にて一体に形成され、前記アーム部の表面に駆動及び検出用の複数の電極が設けられ、前記電極の端末全てが前記基部の同一の面に配置されてなる端末配置面を具備する音叉形振動子と、同一の面に駆動回路及び検出回路の電極の端末が配置されてなる端末配置面を具備する回路基板とを有し、前記音叉型振動子側の端末配置面と前記回路基板側の端末配置面が、対向配置されてなる音叉型圧電振動ジャイロにおいて、前記音叉型振動子側の電極の端末には、融点が260℃以上の導体からなるバンプが形成され、その形成配置に関しては、前記音叉型振動子側の電極の端末形成領域を前記音叉型振動振動子の長手方向に2等分しできた2つの領域において、前記アームに遠い側よりも前記アームに近い側の領域にバンプの数を多く形成し、前記バンプが前記回路基板側の電極の端末に接合されることで、前記音叉型振動子が前記回路基板に電気的に接続され、機械的に支持されてなる音叉型圧電振動ジャイロである。
【0027】
また、本発明は、前記バンプを構成する導体が金または金を含む合金からなることを特徴とする音叉型圧電振動ジャイロである。
【発明の効果】
【0028】
本発明においては、音叉型振動子の電極の端末を一つの面に配置するとともに、260℃以上の融点を有する導体で形成したバンプとし、回路基板への電気的な接続と支持固定を行うことにより、厚さ方向と実装面積において小型化が実現でき、また支持及び配線が同時にできるため、部品点数も少なくすることが可能となり、組立工数も削減でき生産性を向上させることができる。
【0029】
また、バンプの融点は十分高いため、リフロー実装時に再溶融することも無く、感度等の圧電振動ジャイロ特性に変化を生じさせることもなく信頼性も向上させることができる。更に、バンプは形状を均一にすることが可能で、形成する位置も高い精度で制御できることから、音叉型振動子の接合状態を均一にできる。このため、Qmのばらつきを大幅に低減することができ、感度等の特性ばらつきを減少できる。
【0030】
更に、形成するバンプの数を駆動検出電極の端末数より多くした構造及び、アーム側にバンプの数を偏らせる構造をとることで、圧電振動ジャイロにおける機械的強度の信頼性においても、製品の自由落下に耐えるレベルまで向上させることができる。
【0031】
即ち、本発明の効果は、小形化に適し、音叉型振動子と回路基板の組立時の、支持、配線等が容易で、生産性が高く、リフロー実装工程における昇温に起因する性能ばらつきも小さく、更に製品落下にも耐える高い機械的強度を有する音叉型圧電振動ジャイロを提供できることにある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下に、本発明による音叉型圧電振動ジャイロの実施の形態を、図を参照しながら説明する。
【0033】
図1は、本発明の音叉型圧電振動ジャイロにおける、音叉型振動子と回路基板を組み立てる前の状態の一例を示す斜視図である。図1において、10は音叉型振動子、11はアーム部、12は基部、13は第一のアーム部、14は第二のアーム部、15、18は検出電極、16、19は駆動電極、17、20は基準電極、21ないし27は音叉型振動子側の電極の端末配置面に形成されたランド、30は回路基板、31ないし37はランド、38は回路基板側の電極の端末配置面、即ち、音叉型振動子の実装面、39は回路実装面、40は回路実装用ランド群、41は外部端子、42は回路部品である。尚、26及び27のランドは、駆動電極、検出電極、基準電極とは独立した、機械的接続専用のランドである。
【0034】
図1に示したように、本実施の形態における音叉型振動子のアーム部11は、第一のアーム部13と第二のアーム部14からなり、基部12と一体に形成されている。音叉型振動子10を構成する圧電材料には、リフロー実装時に生じる温度上昇で、圧電特性が損なわれることがないように、耐熱性を考慮した材料を用いる。例えば、LiNbO3、LiTaO3、水晶等を用いるのが好ましい。
【0035】
ここで、二つのアーム部の面と、基部の面を含む面を主面とすると、図1に示したように、第一のアーム部13の一方の主面には、検出電極15、駆動電極16、基準電極17が、第二のアーム部14の一方の主面には、検出電極18、駆動電極19、基準電極20が各々形成されている。また、検出電極15,18を基部12まで引き回し、その先端にはランド21,24を形成する。同様に、駆動電極16,19、基準電極17,20を基部12まで引き回し、その先端にはランド22〜27を形成する。なお、基準電極17及び基準電極20は同一のランド23に接続し共通電極とする。
【0036】
図2は、図1における音叉型振動子10側の、ランドに形成されたバンプを示す斜視図である。本図に示した電極及びランドは、クロムの下地と金からなり、スパッタリングで形成され、フォトリソグラフィを利用してパターニングしたものである。ここでは前記の方法で作製したが、メッキや蒸着等の他の方法で作製してもよい。また、バンプ21b〜27bは、金からなり、メッキ法、ボール法、ワイヤパンピング法のいずれかを用いることで形成できる。尚、音叉形振動子に設けられた駆動及び検出ならびに基準用として必要な電極の数よりも多い数の、ランドとバンプが形成する。
【0037】
更に、音叉型振動子側の電極の端末形成領域28を音叉型振動振動子の長手方向の境界線29にて2等分しできた2つの領域において、前記アームに遠い側よりも前記アームに近い側の領域にバンプの数を多く形成している。
【0038】
図3は、音叉型振動子10側に設けたバンプを、回路基板側のランドに接合する状態を示す図で、図3(a)は接合前の状態、図3(b)は接合後の状態を示す。図3(a)に示したように、音叉型振動子10側のバンプ24b,25bを、回路基板側のランドの対応する部分に対向配置接触させ、接触部に熱、圧力、超音波を加えて金属接合し、電気的な接続を確保するとともに、音叉型振動子10を回路基板30に固定する。
【0039】
本発明の構成で生じる重要な特長は、バンプを設けることで、回路基板30側の音叉型振動子実装面38と音叉型振動子10とは直接接触することがなく、両者の間にバンプの高さに相当する間隙が形成されていることであり、このような構造により、音叉型振動子の面内振動及び面外振動におけるQmのばらつきを極めて小さくできる。
【0040】
バンプの高さを、20〜100μm程度に設計することにより、回路基板のそりや、温度変化に伴う膨張を考慮しても、音叉型振動子10が、回路基板30側の音叉型振動子実装面38に接触することはなく、Qmが大きく変化することはない。更に、音叉型振動子10の基部12におけるランドは、基部の面積をできるだけ活用して、なるべく間隔をあけて形成することが、音叉型振動子の支持の安定化に寄与し、外力に対する信頼性が向上する。
【0041】
従って、図3(b)において、Lで示した長さは、強度と感度を十分に勘案して設計する必要がある。図3(c)には、音叉振動子実装面の方から衝撃が加わった場合の音叉振動子の挙動を示す。図が示すように、衝撃印加時においてバンプには、衝撃に相当する応力が加わることとなるが、図3(c)のように片持ち構造の場合、支持固定されていないフリーのアームがある側のバンプにその応力が集中することとなる。すなわち、図3(c)のような構造の場合には、バンプ24bよりも25bの方が加わる応力が大きくなる。本発明では、応力が大きく加わる箇所により多くのバンプを形成しているため、バンプ1つに対する応力集中が緩和でき、無駄にバンプを増やすことなく、効率的に強度を向上させることができている。
【0042】
図4は、バンプの配置を示す図である。図4(a)は、改善前のバンプ配置図であり、図4(b)〜図4(e)は、本発明に関わる他の実施例を示すバンプ配置図である。図4(e)の配置は、1つの駆動電極に2つのバンプ25b,26bを形成し、もう1つの駆動電極に2つのバンプ22b,27bを形成した例である。表1には、本発明のバンプ数の増加及びバンプ配置を含むさまざまな構造別の製品落下試験結果を示す。表1に示される構造1とは、図4(a)に示すバンプ配置の構造である。構造2は、図4(b)に示すバンプ配置の構造である。構造3は、図2に示すバンプ配置の構造である。
【0043】
【表1】



【0044】
表1が示す通り、本発明のバンプ配置である構造2及び3では、150cmの落下に対しても故障することがなく、カメラ等携帯用機器へ搭載する圧電振動ジャイロとして、十分な機械的強度を得ていることが言える。
【0045】
図2に記載のバンプ配置以外として、図4(b)〜図4(e)に記載のバンプ配置としても同程度の強度が得られるため構わない。大切なことは、アーム形成側の方におけるバンプ実装密度を高くすることである。なお、図2のバンプを構成する導体は、金を用いているが、融点が260℃以上となる金を含む合金においても同様の効果を奏する。
【0046】
なお、音叉振動において、2つのアームを真っ直ぐ開いたり閉じたりさせ、即ち安定化させるため、バンプの配置は、音叉振動子の中心軸に対して対称な方が好ましい。
【0047】
また、回路基板30は、前記の音叉型振動子との接続に用いるランド以外に、外部端子41を備えている。この外部端子41は、リフローによる表面実装に対応できるように、十分な面積を確保する必要があり、図1に示した回路基板30の背面側にも電極が連続して形成されている。
【0048】
次に、音叉型圧電振動ジャイロとしての動作について、図を参照して説明する。図5は、音叉型振動子の結晶軸の配置についての説明図である。図4おけるX軸は、Y軸、Z軸のいずれに対しても垂直な方向、即ち、図を記載した面に対して垂直な方向である。単結晶は、一般に結晶軸の方向に対し、圧電定数、コンプライアンス、誘電率が異なる。そのため音叉型振動子10を、高い効率で所定の方向に屈曲振動させるためには、音叉型形状に対し結晶軸をどのようにとるか十分考慮する必要がある。ここでは、LiNbO3を用いた場合について図5を用いて説明する。LiNbO3の場合は、三方晶、点群3mの結晶であるので、結晶のX軸を音叉型振動子の長手方向、及び主面、即ち、図1における電極が配置された面に対し垂直にとった。
【0049】
また、音叉型振動子の幅方向の電界に対する長手方向の伸縮の効率、即ち、電気機械結合係数が最も大きくなるよう、結晶のY軸と音叉型振動子の長手方向がなす角度が50°となるようなカット角を利用する構成にした。この時、結晶のY軸をX軸中心に140°回転させた方向を140Yと呼ぶこととすると、音叉型振動子の幅方向は140Yの方向となっている。
【0050】
次に、本実施の形態の、音叉型圧電振動ジャイロの、基本的な動作原理を説明する。図6R>6は、音叉型振動子の断面における電界の方向と、変位の方向を模式的に示す図で、図6(a)は電界の方向を示す図、図6(b)は変位の方向を示す図である。
【0051】
また、図7は、音叉型振動子の振動の向きを模式的に示した図で、図7(a)は面内振動、つまり二つのアーム部を含む面の方向の振動、図7(b)は面外振動、つまり二つのアーム部を含む面と直交する方向の振動を示す。
【0052】
二つのアーム部は、図6(a)における矢印が示す通り、アーム部の幅方向に対し、アーム部内で逆向き、かつ第一のアーム部13、第二のアーム部14の間においても、逆向きの電界を印加することにより、音叉型振動子の外側と内側において、長手方向に逆向きの伸縮が生じ、図7(a)に示す面内振動を励起させることができる。
【0053】
また、図7(b)に示す面外振動が生じた時には、つまりは、アーム部の対向する二つの主面の、長手方向において逆向きの伸縮が生じた時には、図6(b)における矢印が示す通り、アーム部の幅方向に対し、アーム内で同じ向き、かつ左右アーム間で逆向きの電界が発生する。
【0054】
図8は、図1に示した回路部品40における、駆動検出回路の一例を示すブロック図である。前記の音叉型振動子を、回路基板を介し図8に示すように、回路に接続することで、音叉型圧電振動ジャイロを構成することが可能となる。
【0055】
図8に示すように、この例においては、基準電極17,20を基準電位50に接地、あるいは仮接地し、検出電極15,18には位相が180°異なる信号を入力することで、音叉型振動子の振動を励起することができる。また、帰還抵抗54,55、及びオペアンプ52,53により構成された電流検出回路により、検出電極15,18で得られる電流を電圧に変換する。この信号を用い前述の音叉型振動子の面内振動を安定に保つために、自励発振回路57を検出電極15,18へフィードバックさせる。
【0056】
一方、電流検出回路で得られた電圧は、加算回路56により面内振動成分の信号を取り除き、面外振動成分のみの信号を取り出すことができる。この信号を自励発振回路57のタイミングにて同期検波回路58で同期検波し、その後、ローパスフィルタ59により整流することで、面外振動の大きさに比例した、即ち加えられた角速度に比例した出力60が得られることとなる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の音叉型圧電振動ジャイロにおける、音叉型振動子と回路基板を組み立てる前の状態の一例を示す斜視図。
【図2】音叉型振動子側のランドに形成されたバンプを示す斜視図。
【図3】バンプを回路基板側のランドに接合する状態を示す図。図3(a)は接合前の状態を示す図。図3(b)は接合後の状態を示す図。図3(c)は外部から衝撃が加えられた時の挙動を示す図。
【図4】バンプの配置を示す図。図4(a)は、改善前のバンプ配置図。図4(b)〜図4R>4(e)は、本発明に関わる他の実施例を示すバンプ配置図
【図5】音叉型振動子の結晶軸の配置についての説明図。
【図6】音叉型振動子の断面における電界の方向と変位の方向を模式的に示す図。図6(a)は電界の方向を示す図。図6(b)は変位の方向を示す図。
【図7】音叉型振動子の振動の向きを模式的に示した図。図6(a)は面内振動を示す図。図7(b)は面外振動を示す図。
【図8】駆動検出回路の一例を示すブロック図。
【図9】従来の音叉型圧電振動ジャイロにおける音叉型振動子と回路基板の接合状態の一例を示す斜視図。
【図10】従来の角速度センサにおける、音叉型振動子と基台との接合状態の一例を示す図。
【図11】従来の角速度センサにおける、音叉型振動子と基台との接合状態の別の例を示す図。
【符号の説明】
【0058】
10,71,81,91 音叉型振動子
11 アーム部
12 基部
13 第一のアーム部
14 第二のアーム部
15,18 検出電極
16,19 駆動電極
17,20 基準電極
21,22,23,24,25,26,27, ランド
31,32,33,34,35,36,37,74 ランド
21b,22b,23b,24b,25b,26b,27b バンプ
28 音叉型振動子側の電極端末形成領域
29 音叉型振動子の長手方向の境界線
30,72 回路基板
38 音叉型振動子の実装面
39 回路実装面
40 回路実装用ランド群
41 外部端子
42 回路部品
50 基準電位
54,55 帰還抵抗
52,53 オペアンプ
56 加算回路
57 自励発振回路
58 同期検波回路
59 ローパスフィルタ
60 出力
73 切り欠き
82,83,84,92,93,94,95,96,97,99 電極
85,98 基台
86 ワイヤボンディング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のアーム部と基部が圧電単結晶にて一体に形成され、前記アーム部の表面に駆動及び検出用の複数の電極が設けられ、前記電極の端末全てが前記基部の同一の面に配置されてなる端末配置面を具備する音叉形振動子と、同一の面に駆動回路及び検出回路の電極の端末が配置されてなる端末配置面を具備する回路基板とを有し、前記音叉型振動子側の端末配置面と前記回路基板側の端末配置面が、対向配置されてなる音叉型圧電振動ジャイロにおいて、前記音叉型振動子側の電極の端末には、前記音叉形振動子に設けられた駆動及び検出ならびに基準用電極の数と等しい数かそれよりも多い数で、かつ融点が260℃以上の導体からなるバンプが形成され、前記バンプが前記回路基板側の電極の端末に接合されることで、前記音叉型振動子が前記回路基板に電気的に接続され、機械的に支持されてなることを特徴とする音叉型圧電振動ジャイロ。
【請求項2】
前記駆動および検出用の複数の電極の内、少なくともひとつの電極には、前記音叉形振動子の接合に使用する前記バンプを2つ以上用いて、前記音叉型振動子が前記回路基板に電気的に接続され、機械的に支持されてなることを特徴とする請求項1記載の圧電振動ジャイロ。
【請求項3】
前記駆動および検出用の複数の電極とは別の電極を前記音叉形振動子の基部に施し、基部に引き回された複数の電極と前記別の電極に、前記バンプを形成し、接合することで、前記音叉型振動子が前記回路基板に電気的に接続され、機械的に支持されてなることを特徴とする請求項1記載の圧電振動ジャイロ。
【請求項4】
複数のアーム部と基部が圧電単結晶にて一体に形成され、前記アーム部の表面に駆動及び検出用の複数の電極が設けられ、前記電極の端末全てが前記基部の同一の面に配置されてなる端末配置面を具備する音叉形振動子と、同一の面に駆動回路及び検出回路の電極の端末が配置されてなる端末配置面を具備する回路基板とを有し、前記音叉型振動子側の端末配置面と前記回路基板側の端末配置面が、対向配置されてなる音叉型圧電振動ジャイロにおいて、前記音叉型振動子側の電極の端末には、融点が260℃以上の導体からなるバンプが形成され、その形成配置に関しては、前記音叉型振動子側の電極の端末形成領域を前記音叉型振動振動子の長手方向に2等分しできた2つの領域において、前記アームに遠い側よりも前記アームに近い側の領域にバンプの数を多く形成し、前記バンプが前記回路基板側の電極の端末に接合されることで、前記音叉型振動子が前記回路基板に電気的に接続され、機械的に支持されてなることを特徴とする音叉型圧電振動ジャイロ。
【請求項5】
前記バンプを構成する導体は、金または金を含む合金からなることを特徴とする請求項1記載の音叉型圧電振動ジャイロ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2005−321374(P2005−321374A)
【公開日】平成17年11月17日(2005.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−614(P2005−614)
【出願日】平成17年1月5日(2005.1.5)
【出願人】(000134257)NECトーキン株式会社 (1,832)
【Fターム(参考)】