説明

音声通信装置、音声通信システム、及び音声通信装置用プログラム

【課題】インターネット電話で通話中に、周囲の雰囲気の臨場感を相手先に伝えることができるインターネット通話システム、インターネット電話アダプタ、及びインターネット電話アダプタ用プログラムを提供する。
【解決手段】通話する際に発信者が受信者に周囲の雰囲気などを伝えたい場合、受信者の電話番号とともにコンテンツサーバの電話番号を入力する。コンテンツサーバには、発信者の周囲の環境音を集音して立体音響データとしてリアルタイムに配信するものや音楽を配信するものなどがある。受信側電話装置では、電話機が発呼する際に送信側で指定されたコンテンツサーバの情報が通知されるので、このIPアドレス情報に基づいてコンテンツサーバに接続して立体音響データを取得して、電話装置に接続されたサラウンドシステムで立体音響を再生する。これにより、受信者は、発信者と通話しながら、発信者とほぼ同じ雰囲気を体感できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、音声情報とともに、立体音響情報を配信する音声通信システム、この音声通信システムを構成する音声通信装置、及び音声通信装置用プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近時、ヘッドセットを接続したパソコンやインターネット電話用アダプタに接続した電話機などを使用し、インターネットを電話回線として使用して通話ができるインターネット電話が普及しつつある。インターネット電話は、上記のように電話回線としてインターネットを使用し、電話会社が所有する電話回線を全く使用しないか、または使用しても例えば家庭から最寄りの電話交換機までの電話回線のみなので、電話料金を距離や通話時間などに関係なく低額、一定額または無料に設定されている。
【0003】
ところで、通話者は、通話中に周囲の雰囲気を相手に伝えたいことがある。このような場合、通話者は、ヘッドセットのマイクや受話器で周囲の音(環境音)を集音して、相手に聞かせることで周囲の雰囲気を伝えることができる。しかしながら、ヘッドセットのマイクや受話器では、モノラル音しか集音できないため、通話者の周囲の雰囲気を完全に伝えることができないという問題がある。
【0004】
そこで、従来、高音質で臨場感のある電話通信を実現できるステレオ電話装置があった(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開平6−268722号公報(第2,3頁、第1−6図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のステレオ電話装置では、ステレオ電話機同士でステレオの音声相互通信を行うことができるので、モノラル音よりも立体感のある音声で会話をすることができる。また、このステレオ電話装置では、音声相互通信機能以外に音楽配信センターから音楽の供給サービスを受ける機能がある。
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載のステレオ装置では、通話用のマイクを使って周囲の環境音も伝えるため、ステレオ電話機同士で通話中に、環境音を相手にうまく伝えることができなかった。また、特許文献1に記載のステレオ電話装置では、ステレオ電話機同士で通話中に、音楽の供給サービスを受けることができないため、上記のサービスがあったとしても、通話中に、同時に、環境音や音楽の供給を受けられないという問題があった。
【0007】
そこで、本発明は、インターネット電話で通話中に、周囲の雰囲気の臨場感を相手先に伝えることができるインターネット通話システム、インターネット電話アダプタ、及びインターネット電話アダプタ用プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は、上記の課題を解決するための手段として、以下の構成を備えている。
【0009】
(1)ネットワークを介して発信側または受信側の音声通信装置と通信する音声通信装置であって、
通話者の音声を集音する音声集音手段と、
相手先の音声を再生する音声再生手段と、
受信側の指定情報、及びネットワーク上で音響コンテンツをストリーミング配信する複数の音響サーバのうち、発信者の所望する音響コンテンツを配信する音響サーバの指定情報の入力を受け付ける入力手段と、
前記入力手段で受け付けた音響サーバ指定情報を接続要求コマンドに添付して、受信側音声通信装置に送信し、前記接続要求コマンドを発信側音声通信装置から受信する通信手段と、
前記通信手段が前記接続要求コマンドを受信した時に、受信側音声通信装置と発信側音声通信装置とを相互接続して音声通信可能に制御する制御手段と、
前記音響サーバ指定情報に基づいて、ネットワークを介して受信した音響コンテンツだけを相手先の音声とは別に再生する音響コンテンツ再生手段と、
を備えたことを特徴とする。
【0010】
この構成においては、音声通信装置で通信する際に、発信者が受信者に自分の周囲の雰囲気などを伝えたい場合、受信者の電話番号とともに音響サーバの電話番号などの接続情報を入力する。受信側音声通信装置では、発呼する際に送信側で指定された音響サーバの接続情報が通知されるので、この情報に基づいて音響サーバに接続して音響コンテンツを取得して、受信側音声通信装置に接続された音響再生手段で音響コンテンツを再生する。これにより、受信者は、発信者と通話しながら、発信者とほぼ同じ雰囲気を体感することができる。
【0011】
(2)前記制御手段は、前記通信手段が前記音響サーバ指定情報を添付した接続要求コマンドを受信側音声通信装置へ送信した時、この受信側音声通信装置と音声通信可能に相互接続し、
前記音響コンテンツ再生手段は、前記音響サーバ指定情報で指定された音響サーバから受信した音響コンテンツを再生することを特徴とする。
【0012】
この構成においては、音響サーバ指定情報を添付した接続要求コマンドを受信側音声通信装置へ送信した時に、音響サーバ指定情報で指定された音響サーバに接続して音響コンテンツを受信するので、発信側の音声通信装置でも、音響コンテンツを再生できる。これにより、発信者及び受信者は、同じ音響コンテンツを同時に聞きながら通話することができる。
【0013】
(3)前記音響コンテンツ再生手段は、立体音響の音響コンテンツを立体的に再生する複数の音声出力手段を備えたことを特徴とする。
【0014】
音声通信装置の通信中に発信者が受信者と同じ雰囲気を体感したい場合、受信者の電話番号とともに音響サーバの電話番号などの接続情報を入力する。音響サーバには、山や海の環境音や音楽などのような立体音響の音響コンテンツを配信している。発信側音声通信装置及び受信側音声通信装置では、音響サーバに接続して音響コンテンツを取得して、受信側音声通信装置に接続された複数の音声出力手段で立体音響を再生する。これにより、受信者と発信者とは、通話しながら音響コンテンツを再生することで、臨場感のある環境音や音楽などを同時に体感することができる。
【0015】
(4)(1)乃至(3)のいずれかに記載の複数の音声通信装置とそれぞれ異なる音響コンテンツを前記音声通信装置にストリーミング配信する複数の音響サーバと、をネットワークを介して接続したことを特徴とする。
【0016】
この構成においては、音声通信装置間で通話中に、この音声通信装置へ音響サーバから音響コンテンツを配信して、音声通信装置に接続された音響コンテンツ再生手段を介して、通話中のユーザに通話の相手の音声だけでなく音響コンテンツを提供することができる。
【0017】
(5)前記音響サーバは、前記音響コンテンツ再生手段で再生可能な立体音響の音響コンテンツをストリーミング配信することを特徴とする。
【0018】
この構成においては、音声通信装置へ音響サーバから音響コンテンツを配信して、音声通信装置に接続された音響コンテンツ再生手段を介して、通話中のユーザに通話の相手の音声だけでなく音響コンテンツを提供することができる。
【0019】
(6)前記音響サーバは、音響コンテンツとして複数の集音手段で集音している環境音の立体的な音響を配信することを特徴とする。
【0020】
この構成においては、音声通信装置の受信者や送信者は、自然の環境音など音響コンテンツをリアルタイムに聞くことができる。したがって、音声通信装置のユーザは、通話中に自然の音などを楽しむことができる。
【0021】
(7)前記音響サーバは、音響コンテンツとして楽曲を配信することを特徴とする。
【0022】
この構成においては、音声通信装置へ音響サーバから音響コンテンツとして楽音を配信して、音声通信装置に接続された音響コンテンツ再生手段を介して、通話中のユーザに通話の相手の音声だけでなく楽音を提供することができる。
【0023】
(8) ネットワークを介して発信側または受信側の音声通信装置と通信する音声通信装置用プログラムであって、
通話者の音声を集音する音声集音手段と、
相手先の音声を再生する音声再生手段と、
受信側の指定情報、及びネットワーク上で音響コンテンツをストリーミング配信する複数の音響サーバのうち、発信者の所望する音響コンテンツを配信する音響サーバの指定情報の入力を受け付ける入力手段と、
前記入力手段で受け付けた音響サーバ指定情報を接続要求コマンドに添付して、受信側音声通信装置に送信し、前記接続要求コマンドを発信側音声通信装置から受信する通信手段と、
前記音響サーバ指定情報に基づいて、ネットワークを介して受信した音響コンテンツだけを相手先の音声とは別に再生する音響コンテンツ再生手段と、
を備えた音声通信装置の制御手段に、
発信側音声通信装置が生成した前記接続要求コマンドを発信側音声通信装置から受信する手順、
発信側音声通信装置が生成した前記接続要求コマンドを発信側音声通信装置から受信したときに、この受信側音声通信装置と発信側音声通信装置とを相互接続して音声通信可能にするとともに、前記音響サーバ指定情報で指定された音響サーバに接続して音響コンテンツを受信する手順、
及び前記音響コンテンツ再生手段を用いてこの音響コンテンツを再生する手順、
を実行させることを特徴とする。
【0024】
この構成においては、(1)と同様の効果を得ることができる。
【発明の効果】
【0025】
(1)音声通信装置で通信する際に、受信者の電話番号とともに音響サーバの電話番号など接続情報を入力すると、受信側音声通信装置では、発呼する際に送信側で指定された音響サーバの接続情報が通知され、この情報に基づいて音響サーバに接続して音響コンテンツを取得して、受信側音声通信装置に接続された音響コンテンツ再生手段で音響コンテンツを再生する。したがって、受信者は、発信者と通話しながら、発信者とほぼ同じ雰囲気を体感することができる。
【0026】
(2)音響サーバは、音響コンテンツ再生手段で再生可能な立体音響の音響コンテンツをストリーミング配信するので、受信者と発信者とは、通話しながら音響コンテンツを再生することで、臨場感のある環境音や音楽などを同時に体感することができる。
【0027】
(3)音声通信装置間で通話中のユーザに、通話の相手の音声だけでなく音響コンテンツを提供することができる。
【0028】
(4)音声通信装置のユーザは、通話中に自然の環境音など音響コンテンツをリアルタイムに聞くことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
まず、本発明の概略を説明する。本発明では、インターネット電話装置間で通話する際に、発信者が受信者に周囲の雰囲気などを伝えたい場合、受信者の電話番号とともにコンテンツサーバの電話番号を入力する。コンテンツサーバには、発信者の周囲の環境音を集音して立体音響データとしてリアルタイムに配信するものや音楽を配信するものなどがある。受信側電話装置では、電話機が発呼する際に送信側で指定されたコンテンツサーバの情報が通知されるので、この通知されたIPアドレス情報に基づいてコンテンツサーバに接続して立体音響データを取得して、電話装置に接続されたサラウンドシステムで立体音響を再生する。これにより、受信者は、発信者と通話しながら、発信者とほぼ同じ雰囲気を体感することができる。
【0030】
次に、本発明の実施形態に係るインターネット電話システムについて、図を参照しながら説明する。図1は、本発明の実施形態に係るインターネット電話システムの概略構成を示したブロック図である。図1に示すように、インターネット電話システム1は、発信側電話装置2、受信側電話装置3、電話番号サーバ4、音響サーバであるコンテンツサーバ5及びコンテンツサーバ6、ISP(Internet Service Provider)7、並びにISP8から成り、それぞれインターネット9に接続されている。
【0031】
なお、図1ではインターネット9に接続するためのモデムやルータなどの機器の表示を省略している。
【0032】
発信側電話装置2、受信側電話装置3、コンテンツサーバ5、及びコンテンツサーバ6には、電話番号及びIPアドレスが割り当てられており、電話回線としてインターネット9を介して通話することができる。また、コンテンツサーバ5,6から立体音響データの配信を受けることができる。
【0033】
電話番号サーバ4は、DNSサーバの一種であり、電話番号とIPアドレスとの対応関係を記述したデータベースを管理しており、クライアントからの要求に応じて、電話番号に対応するIPアドレスを参照できる。
【0034】
コンテンツサーバ5,6は、設置場所近傍の環境音を複数のマイク(集音手段)31,32で集音した立体音響データなどの音響コンテンツを圧縮して、リアルタイムに途切れることなくストリーミング配信する。例えば、ドルビーデジタル(登録商標)やDTS(登録商標)などの5.1チャンネルサラウンドシステム(立体音響再生システム)で再生できるように、複数のマイクで集音したアナログ音声を所定のディジタル圧縮フォーマットで圧縮変換して、インターネット9を介して配信する。また、コンテンツサーバ5やコンテンツサーバ6は、受信側電話装置3に接続された音響再生手段の性能に応じて、5.1チャンネルだけでなく、2チャンネル(ステレオ)の立体音響データ、6.1チャンネルや7.1チャンネルの立体音響データなどを配信することができる。さらに、コンテンツサーバ5,6は、電話装置から接続要求があった時のインターネット9の回線の混み具合や契約回線の通信容量に応じて、配信する立体音響データのチャンネル数の増減を問い合わせたり、チャンネル数を減少させたりすることができる。
【0035】
また、コンテンツサーバ5,6は、複数組のマイクを備えており、同じ場所の立体音響データであるが異なった内容の立体音響データを提供することができる。例えば、サッカースタジアムにおいて、一方のチームを応援するサポータの歓声、他方のチームを応援するサポータの歓声、スタジアム全体の観客の歓声などを配信することができる。
【0036】
なお、コンテンツサーバは、例えば、観光地、競技場、山奥の秘境など様々な場所の環境音を立体音響データとして集音できる場所に、コンテンツサーバ5やコンテンツサーバ6以外にも複数設置されている。
【0037】
ISP7は、発信側電話装置2をインターネット9に接続するためのものである。ISP8は、受信側電話装置3をインターネット9に接続するためのものである。
【0038】
発信側電話装置2は、ISP7を介してインターネット9に接続されている。発信側電話装置2は、第1のインターネット電話アダプタであるVoIPアダプタ11、電話機12、音響再生手段であるオーディオアンプ13及び6つのスピーカ14〜19(左メインスピーカ14、右メインスピーカ15、センタスピーカ16、左リアスピーカ17、右リアスピーカ18、及びサブウーファ19)、並びにモニタ20から成る。オーディオアンプ13及び6つのスピーカ14〜19によって、5.1チャンネルサラウンドシステムが構成される。発信側電話装置2は、もちろん電話を受信することもできる。また、発信側電話装置2は、発信専用に使用する場合、オーディオアンプ13、及び6つのスピーカ14〜19を備えない構成であっても良い。
【0039】
受信側電話装置3は、ISP8を介してインターネット9に接続されている。受信側電話装置3は、第2のインターネット電話アダプタであるVoIPアダプタ21、電話機22、立体音響再生手段であるオーディオアンプ23及び6つのスピーカ24〜29(左メインスピーカ24、右メインスピーカ25、センタスピーカ26、左リアスピーカ27、右リアスピーカ28、及びサブウーファ29)、並びにモニタ30から成る。オーディオアンプ23及び6つのスピーカ24〜29によって、5.1チャンネルサラウンドシステムが構成される。受信側電話装置2は、もちろん電話を発信する(電話をかける)こともできる。
【0040】
発信側電話装置2及び受信側電話装置3において、5.1チャンネルサラウンドシステムとしては、近時普及しつつある所謂ホームシアタシステムを使用すると良い。
【0041】
VoIPアダプタ11及びVoIPアダプタ21は、図2に示すような構成である。図2は、VoIPアダプタの構成を示したブロック図である。VoIPアダプタ11は、制御部(制御手段)であるCPU51、ROM52、RAM53、ディジタルオーディオインタフェース54、電話機インタフェース55、ネットワークインタフェース56が、バス57を介してそれぞれ接続されている。VoIPアダプタ11の場合、ディジタルオーディオインタフェース54には、オーディオアンプ13が接続される。電話機インタフェース55には、電話機12が接続される。ネットワークインタフェース56には、ISP7を介してインターネット9が接続されている。
【0042】
CPU51は、VoIPアダプタ11の各部の制御の他に、インターネット電話のプロトコル制御、オーディオストリームデータの制御、電話機の制御、オーディオデータのフォーマット変換などを行う。
【0043】
ROM52は、各種制御や変換処理をCPU51で行うためのプログラムを記憶しており、CPU51から随時読み出される。RAM53は、各種データを一時的に記憶する。
【0044】
ここで、発信側電話装置2及び受信側電話装置3は同様の構成であるため、受信側電話装置3を構成する各部について説明する。VoIPアダプタ21は、発信側電話装置2の電話機12からVoIPアダプタ11を経由して送信されたパケット単位の音声データを電話機22で再生できるように復元して電話機22へ出力する。また、電話機22からの音声データをパケット単位に分割して、発信側電話装置2のVoIPアダプタ11へ送信する。さらに、コンテンツサーバ5または6から送信された圧縮されている立体音響データを、オーディオアンプ23で増幅可能な状態に展開してオーディオアンプ23へ出力する。オーディオアンプ23は、スピーカ24〜29へ立体音響データを出力して、例えば、5.1チャンネルサラウンドシステムを再生することができる。モニタ30は、図外のDVDプレーヤなどから出力された動画データを表示することができる。
【0045】
次に、本発明の実施形態に係るインターネット電話システムの動作を説明する。以下の説明では、ある観光地に居る発信者が発信側電話装置2から受信側電話装置3へ通話する場合の動作について説明する。また、発信者がいる観光地には、周囲の環境音を集音して立体音響データを音響コンテンツとしてリアルタイムにストリーミング配信するコンテンツサーバ6が設置されている。図3は、本発明の実施形態に係るインターネット電話システムの動作を説明するためのフローチャートである。図3に示すように、発信者は、発信側電話装置2の電話機12から受信側電話装置3の電話機22の電話番号を入力する。また、この時、発信者は自分の周囲の雰囲気を受信者に体感してもらうために、自分の周囲の環境音を集音して立体音響データを配信するコンテンツサーバ6の電話番号を入力する(s1)。
【0046】
電話機12から入力された電話番号データは、VoIPアダプタ11の電話機インタフェース55を介してRAM53に一端格納される。CPU51は、これら2つの電話番号が割り当てられた相手先及びコンテンツサーバのIPアドレスを取得するために、インターネット9に接続された電話番号サーバ4にアクセスする (s2)。
【0047】
電話番号サーバ4は、問い合わせのあった電話番号に対応するIPアドレスを検索し(s11)、検出したIPアドレスをVoIPアダプタ11に送信する (s12)。VoIPアダプタ11は、電話番号サーバ4から送信されたIPアドレスを受信すると(s3)、このIPアドレスに基づいて受信側電話装置3に対して所定の接続要求を行う(s4)。また、この時、VoIPアダプタ11は、受信側電話装置3のVoIPアダプタ21に対してコンテンツサーバのIPアドレス情報を送信する(s5)。
【0048】
受信側電話装置3のVoIPアダプタ21は、VoIPアダプタ11からの接続要求に呼応して発信側電話装置2との通信を確立し(s21)、通話が可能な状態になる(s6,s23)。また、コンテンツサーバ6のIPアドレス情報に基づいて(s22)、コンテンツサーバ6に対して接続要求を行う(s24)。
【0049】
一方、コンテンツサーバ6は、リアルタイムに集音した立体音響データをインターネット9に接続された電話装置などからの配信要求に応じるために、常に以下の処理を行っている。すなわち、発信者がいる場所の任意の位置に設置された複数のマイクで環境音を集音する(s31)。集音されたアナログ音声データは、図外のA/Dコンバータを介してサーバの記憶部にディジタルデータとして一端格納される(s32)。また、集音された音声データは、ドルビーデジタル (登録商標)やDTS(登録商標)などの5.1チャンネルサラウンドシステムで再生可能な圧縮方式で1ストリームの立体音響データに圧縮変換される(s33)。そして、コンテンツサーバ6は、インターネット9を介して配信するために設けられた図外のバッファに、書き込みを行って随時データを最新のものに更新する(s34)。
【0050】
コンテンツサーバ6は、VoIPアダプタ21からの接続要求に呼応して受信側電話装置3との通信を確立し(s35)、立体音響データをパケットに分割しながらインターネット9を介して、VoIPアダプタ21へストリーミング配信する(s36)。
【0051】
受信側電話装置3のVoIPアダプタ21は、立体音響データを受信すると (s25)、このデータをSPDIF信号(ディジタルオーディオ信号)に変換して(s26)、オーディオアンプ23に出力する(s27)。オーディオアンプ23は、この立体音響データを受信すると、内蔵するデコーダで5.1チャンネルサラウンドシステムで再生可能な音声に伸長して(s41)、各音声信号をスピーカ24〜29に出力して立体音響を再生する(s42)。
【0052】
以上のような動作により、発信者は、受信者と通話する際に、発信者の周囲の環境音を受信者の5.1チャンネルサラウンドシステムで再生させることで、受信者に発信者の周囲の雰囲気を体感させることができる。これにより、受信者は、例えば送信者が聞いているビーチの波の音やスタジアムの歓声など、臨場感のある音声を自宅などで聞くことができる。
【0053】
また、上記のシステムにおいては、受信側電話装置3のみで立体音響データを再生するようにしたが、通話時に例えば、森の中の環境音など発信者の所望の場所の立体音響データや、音楽を配信するコンテンツサーバから受信側電話装置3と発信側電話装置2とに配信させることもできる。この場合、図3に示したフローチャートのステップs5において、取得したIPアドレス情報を受信側電話装置3へ送信する際に、VoIPアダプタ11からこのIPアドレス情報に基づいてコンテンツサーバ6に接続して、立体音響データの配信を受けるようにする。このようにすることで、コンテンツサーバ6から配信された立体音響データに基づいて、受信側電話装置3だけでなく、発信側電話装置2の5.1チャンネルサラウンドシステムで立体音響を再生できるので、発信者及び受信者は、臨場感あふれる立体音響を同時に聞きながら通話することができる。
【0054】
また、VoIPアダプタ11,21に動画のデコーダを設けておき、コンテンツサーバ6から、コンテンツサーバの設置された場所の近傍における景色などの動画圧縮データを配信させて、VoIPアダプタ11,21で伸長してモニタ20,30に出力させることで、発信者と受信者とで通話をしながら、立体音響とともに同じ動画を閲覧することが可能となる。これにより、発信者及び受信者は、通話中にさらに同じ雰囲気を共有することができるようになる。
【0055】
さらに、コンテンツサーバから配信する立体音響データは、環境音に限るものではなく、音楽や効果音など様々な音響データを音響コンテンツとしてストリーミング配信させることが可能である。
【0056】
なお、図1には、発信側電話装置2及び受信側電話装置3が固定電話の場合の例を示したが、本発明の実施例はこれに限るものではない。例えば、発信側及び受信側の少なくとも一方が移動可能な携帯電話であっても良い。図4は、電話装置が携帯電話の場合の実施例を示した構成図である。図4に示すように、発信側電話装置2や受信側電話装置3が携帯電話の場合、例えば無線LANアダプタのような無線通信部71,72を接続または内蔵して、インターネット9と無線基地41,42を介して接続する構成であると良い。
【0057】
また、発信側電話装置2及び受信側電話装置3に、5.1チャンネルサラウンドシステムを仮想的にヘッドホンで再現可能なオーディオアンプを内蔵したヘッドホン61,62を接続して、通話の音声と立体音響とを聞くことができるようにすることで、例えば、移動中に相手の周囲の雰囲気を体感しながら通話することができる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の実施形態に係るインターネット電話システムの概略構成を示したブロック図である。
【図2】VoIPアダプタの構成を示したブロック図である。
【図3】本発明の実施形態に係るインターネット電話システムの動作を説明するためのフローチャートである。
【図4】電話装置が携帯電話の場合の実施例を示した構成図である。
【符号の説明】
【0059】
1−インターネット電話システム
2−発信側電話装置
3−受信側電話装置
4−電話番号サーバ
5,6−コンテンツサーバ
7,8−ISP
9−インターネット
11,21−VoIPアダプタ
12,22−電話機
13,23−オーディオアンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ネットワークを介して発信側または受信側の音声通信装置と通信する音声通信装置であって、
通話者の音声を集音する音声集音手段と、
相手先の音声を再生する音声再生手段と、
受信側の指定情報、及びネットワーク上で音響コンテンツをストリーミング配信する複数の音響サーバのうち、発信者の所望する音響コンテンツを配信する音響サーバの指定情報の入力を受け付ける入力手段と、
前記入力手段で受け付けた音響サーバ指定情報を接続要求コマンドに添付して、受信側音声通信装置に送信し、前記接続要求コマンドを発信側音声通信装置から受信する通信手段と、
前記通信手段が前記接続要求コマンドを受信した時に、受信側音声通信装置と発信側音声通信装置とを相互接続して音声通信可能に制御する制御手段と、
前記音響サーバ指定情報に基づいて、ネットワークを介して受信した音響コンテンツだけを相手先の音声とは別に再生する音響コンテンツ再生手段と、
を備えたことを特徴とする音声通信装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記通信手段が前記音響サーバ指定情報を添付した接続要求コマンドを受信側音声通信装置へ送信した時、この受信側音声通信装置と音声通信可能に相互接続し、
前記音響コンテンツ再生手段は、前記音響サーバ指定情報で指定された音響サーバから受信した音響コンテンツを再生する請求項1に記載の音声通信装置。
【請求項3】
前記音響コンテンツ再生手段は、立体音響の音響コンテンツを立体的に再生する複数の音声出力手段を備えた請求項1または2に記載の音声通信装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載の複数の音声通信装置と、
それぞれ異なる音響コンテンツを前記音声通信装置にストリーミング配信する複数の音響サーバと、
をネットワークを介して接続したことを特徴とする音声通信システム。
【請求項5】
前記音響サーバは、前記音響コンテンツ再生手段で再生可能な立体音響の音響ンテンツをストリーミング配信する請求項4に記載の音声通信システム。
【請求項6】
前記音響サーバは、音響コンテンツとして複数の集音手段で集音している環境音の立体的な音響を配信する請求項4または5に記載の音声通信システム。
【請求項7】
前記音響サーバは、音響コンテンツとして楽曲を配信する請求項4乃至6のいずれかに記載の音声通信システム。
【請求項8】
ネットワークを介して発信側または受信側の音声通信装置と通信する音声通信装置用プログラムであって、
通話者の音声を集音する音声集音手段と、
相手先の音声を再生する音声再生手段と、
受信側の指定情報、及びネットワーク上で音響コンテンツをストリーミング配信する複数の音響サーバのうち、発信者の所望する音響コンテンツを配信する音響サーバの指定情報の入力を受け付ける入力手段と、
前記入力手段で受け付けた音響サーバ指定情報を接続要求コマンドに添付して、受信側音声通信装置に送信し、前記接続要求コマンドを発信側音声通信装置から受信する通信手段と、
前記音響サーバ指定情報に基づいて、ネットワークを介して受信した音響コンテンツだけを相手先の音声とは別に再生する音響コンテンツ再生手段と、
を備えた音声通信装置の制御手段に、
発信側音声通信装置が生成した前記接続要求コマンドを発信側音声通信装置から受信する手順、
発信側音声通信装置が生成した前記接続要求コマンドを発信側音声通信装置から受信したときに、この受信側音声通信装置と発信側音声通信装置とを相互接続して音声通信可能にするとともに、前記音響サーバ指定情報で指定された音響サーバに接続して音響コンテンツを受信する手順、
及び前記音響コンテンツ再生手段を用いてこの音響コンテンツを再生する手順、
を実行させるための音声通信装置用プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−306597(P2007−306597A)
【公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−167000(P2007−167000)
【出願日】平成19年6月25日(2007.6.25)
【分割の表示】特願2003−55745(P2003−55745)の分割
【原出願日】平成15年3月3日(2003.3.3)
【出願人】(000004075)ヤマハ株式会社 (5,930)
【Fターム(参考)】