音響空間制御装置及び音響空間制御方法
【課題】従来よりも操作負担を低減できる音響空間制御装置に関する技術を提供する。
【解決手段】空間内に配置されたスピーカから出力されるべき音信号に対して音響処理を行うことで、該空間内に聴取者が嗜好する音響空間を形成する音響空間制御装置であって、前記音響処理を実行する際に用いる、頭部伝達関数に関するパラメータを記憶する記憶部と、前記記憶部が記憶する前記パラメータを前記音響空間が変化するように調整するパラメータ調整部と、前記パラメータ調整部によって調整された前記パラメータに基づく音響処理後の音信号を聴取姿勢を保持した状態で聴取する聴取者からの指示を受け付け、該指示を受け付けた際のパラメータを最適パラメータとして決定する最適パラメータ決定部と、最適パラメータ決定部によって決定された最適パラメータに基づいて前記音響処理を行う音響処理実行部と、を備える。
【解決手段】空間内に配置されたスピーカから出力されるべき音信号に対して音響処理を行うことで、該空間内に聴取者が嗜好する音響空間を形成する音響空間制御装置であって、前記音響処理を実行する際に用いる、頭部伝達関数に関するパラメータを記憶する記憶部と、前記記憶部が記憶する前記パラメータを前記音響空間が変化するように調整するパラメータ調整部と、前記パラメータ調整部によって調整された前記パラメータに基づく音響処理後の音信号を聴取姿勢を保持した状態で聴取する聴取者からの指示を受け付け、該指示を受け付けた際のパラメータを最適パラメータとして決定する最適パラメータ決定部と、最適パラメータ決定部によって決定された最適パラメータに基づいて前記音響処理を行う音響処理実行部と、を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、音響空間制御装置及び音響空間制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば車両といった所定の空間に、聴取者の嗜好に合わせた音響空間を形成する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載の技術では、ボタン操作やタッチパネル操作によって音響空間に対応するイメージ画像を操作することで、空間内に聴取者の嗜好に合わせた音響空間を形成することができる。
【特許文献1】特開2007−116363号公報
【特許文献2】特開平10−32890号公報
【特許文献3】特開平10−32898号公報
【特許文献4】特開平10−32899号公報
【特許文献5】特開平10−32900号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ボタン操作やタッチパネル操作によって音響空間に対応するイメージ画像を操作することで車両等の空間内に音響空間を形成する技術が知られている。この技術によれば、比較的簡単な操作で聴取者の嗜好に合わせた音響空間を形成することができる。上記技術では、イメージ画像を操作してパラメータを設定する際、例えば着席した聴取姿勢を崩して操作を行う必要があるが、聴取姿勢を崩さずに操作ができれば聴取者の操作負担をより低減することができる。また、車両空間では、聴取者の操作負担を低減することで安全性も向上することができ、より操作負担を低減できる技術の開発が望まれている。
【0004】
本発明では、上記した問題に鑑み、聴取者の嗜好を反映した音響空間を形成可能な音響空間制御装置において、従来よりも操作負担を低減できる音響空間制御装置に関する技術を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明では、上述した課題を解決するために、音響空間を頭部伝達関数に関するパラメータを調整して調整音を車両空間内に出力し、聴取姿勢を保持した状態で聴取者からの指示を受け付け、指示を受け付けた際のパラメータに基づいて音響処理を実行することとした。
【0006】
より詳細には、本発明は、空間内に配置されたスピーカから出力されるべき音信号に対して音響処理を行うことで、該空間内に聴取者が嗜好する音響空間を形成する音響空間制御装置であって、前記音響処理を実行する際に用いる、頭部伝達関数に関するパラメータを記憶する記憶部と、前記記憶部が記憶する前記パラメータを前記音響空間が変化するように調整するパラメータ調整部と、前記パラメータ調整部によって調整された前記パラメータに基づく音響処理後の音信号を聴取姿勢を保持した状態で聴取する聴取者からの指示を受け付け、該指示を受け付けた際のパラメータを最適パラメータとして決定する最適パラメータ決定部と、最適パラメータ決定部によって決定された最適パラメータに基づいて前記音響処理を行う音響処理実行部と、を備える。
【0007】
本発明によれば、聴取者は、聴取姿勢を保持した状態でパラメータの調整を行うことができる。その結果、本発明によれば、従来よりも聴取者の操作負担を低減し、かつ、聴取者の嗜好する音響空間を空間内に形成することができる。
【0008】
調整部は、記憶部が記憶するパラメータを前記音響空間が変化するように調整する。これにより、聴取者は、自らにとって最適と思われる音響空間を、例えばタッチパネル等を操作せずとも、確認することができる。調整部によるパラメータの調整は、所定の時間内で行うことが好ましい。所定の時間は、聴取者が確認するのに十分な時間であればよく特に限定されない。
【0009】
調整部によって調整されるパラメータとは、頭部伝達関数に関するパラメータ、頭部伝達関数を用いて音響処理する際に用いるパラメータである。頭部伝達関数に関するパラメータには、音響処理、例えば、車両空間内に仮想音源を定位させる音像定位処理や、スピーカから出力される、直接音、初期反射音、リバーブのうち少なくともいずれか一つを遅延させる遅延処理や、音響空間の外部からの漏れ音を低減する漏れ音低減処理等を行う際に用いるパラメータが例示される。本発明は、聴取者の聴取姿勢に変化が生じた場合に、頭部伝達関数が変化することによる音響処理効果の低減を防止するために、聴取者の姿勢が一定(頭部伝達関数に変化がない)状態で、音響処理を調整するものである。なお、調整部は、頭部伝達関数を用いて音響処理が施した後、これを調整音としてスピーカから出力させる。
【0010】
最適パラメータ決定部は、聴取者からの指示を受け付け、指示を受け付けた際のパラメータを最適パラメータとして決定する。聴取者からの指示は、聴取姿勢を保持した状態で行われる。聴取姿勢を保持した状態とは、換言すると、聴取者の受聴点が定位していることであり、例えば、聴取者が座席に着席して静止している状態である。
【0011】
なお、前記聴取者からの指示は、該聴取者が発する音声と、該聴取者が聴取姿勢を保持した状態で操作可能な送信部から送信される電気信号と、のうち少なくともいずれか一方によって行うことができる。聴取者が発する音声によれば、聴取者の聴取姿勢を保持した状態で聴取者からの指示を受け付けることができる。また、送信部、例えばリモートコントローラによれば、同じく聴取者の聴取姿勢を保持した状態で聴取者からの指示を受け付けることができる。
【0012】
ここで、本発明において、前記パラメータは、段階的なパラメータによって構成され、前記パラメータ調整部は、前記段階的なパラメータ同士の間の値を補間し、補間することで連続化されたパラメータに基づく調整音を前記スピーカから出力させるようにしてもよい。段階的なパラメータとすることで、記憶部の負担を低減することができる。また、パラメータ同士の間の値を補間することで、途切れのない連続的な調整音を生成することが可能となる。その結果、聴取者の嗜好をより忠実に反映した音響空間を形成するためのパラメータを決定することが可能となる。
【0013】
また、本発明において、前記音響処理は、前記車両空間内に仮想音源を定位させる音像定位処理と、前記スピーカから出力される、直接音、初期反射音、リバーブのうち少なくともいずれか一つを遅延させる遅延処理と、前記音響空間の外部からの漏れ音を低減する漏れ音低減処理と、のうち少なくともいずれか一つが含まれるようにしてもよい。
【0014】
音像定位処理によれば、空間内の任意の位置に音像を定位させることができる。また、遅延処理によれば、音響空間に広がり等を持たせることができる。更に、漏れ音低減処理によれば、音響空間の外部からの漏れを低減し、よりクリアな音声を提供することができる。
【0015】
また、本発明は、前記音響空間の種類に関する情報と、実行する音響処理に関する情報とのうち少なくともいずれか一つを含む設定情報を受け付ける設定情報受付部を更に備え
、前記パラメータは、前記音響処理と、前記複数のスピーカとの夫々に対応して複数設けられ、前記調整部は、前記設定情報受付部で受け付けた設定情報に基づいて、前記複数のパラメータの中から所定のパラメータを抽出し、抽出したパラメータを調整し、調整したパラメータに基づく調整音を前記スピーカから出力させるようにしてもよい。
【0016】
音響空間の種類には、空間内に一つの音響空間が形成されるものや、空間内に複数の音響空間が形成されるもの(パーソナル音響空間)が含まれる。音響処理に関する情報には、音響処理の種類に関する情報、すなわち、音像定位処理、遅延処理、漏れ音低減処理が含まれる。複数のスピーカ毎に夫々の音響処理に対応するようにパラメータを設けておくことで、聴取者の嗜好をより反映した音響空間の提供が可能となる。
【0017】
また、本発明において、前記所定の空間は、車両空間としてもよい。車両空間では、運転者も聴取者に含まれ、安全性の面から見ても簡単な操作で各席の音響制御を実行できることが好ましい。従って、本発明の音響空間制御装置は、車両空間に搭載する音響空間制御装置として好適に用いることができる。
【0018】
なお、本発明は、上述した音響空間制御装置を組み込んだオーディオシステムやカーナビゲーションシステムとすることができる。また、本発明は、上述したいずれかの機能を実現させる方法としてもよい。すなわち、本発明は、空間内に複数配置されたスピーカから出力されるべき音信号に対して音響処理を行うことで、該空間内に聴取者が嗜好する音響空間を形成する音響空間制御方法であって、前記音響処理を実行する際に用いる、頭部伝達関数に関するパラメータを記憶する記憶ステップと、前記記憶ステップで記憶された前記パラメータを前記音響空間が変化するように調整するパラメータ調整ステップと、前記パラメータ調整ステップによって調整された前記パラメータに基づく音響処理後の音信号を聴取姿勢を保持した状態で聴取する聴取者からの指示を受け付け、該指示を受け付けた際のパラメータを最適パラメータとして決定する最適パラメータ決定ステップと、最適パラメータ決定ステップで決定された最適パラメータに基づいて音響処理を行う音響処理実行ステップと、を備える。更に、本発明は、上述したいずれかの機能を実現させるプログラム、又はプログラムを記録した記録媒体であってもよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、聴取者の嗜好を反映した音響空間を形成可能な音響空間制御装置において、従来よりも操作負担を低減できる音響空間制御装置に関する技術を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
次に、本発明の音響空間制御装置の実施形態について図面に基づいて説明する。なお、実施形態では、本発明の音響空間制御装置を車両のナビゲーションシステムに組み込んだ場合を例に説明する。但し、これに限定されるものではなく、本発明の音響空間制御装置は、映画館、コンサートホール、電車やバスなど、様々な場所で用いることができる。
【0021】
(構成)
図1は、実施形態の音響空間制御装置100が搭載される車両50の概略図である。車両50には閉ざされた空間である車両空間51が設けられ、車両50には本発明の聴取者に相当する運転者を含む搭乗者が滞在可能である。また、音響空間制御装置100には、複数のスピーカが接続されている。すなわち、車両50には、前方左側にFLスピーカ10a、前方右側にFRスピーカ10b、後方左側にRLスピーカ10c、後方右側にRRスピーカ10d、前方中央にFCスピーカ10f、天井にSPスピーカ10e、後方中央にSWスピーカ10gが設けられている。実施形態の音響空間制御装置100によれば、これらの各スピーカから出力されるべき音声信号を制御することで車両空間51内に聴取
者が嗜好する音響空間を形成することができる。
【0022】
また、車両50には、シート毎に異なる音響空間(以下、パーソナル音響空間という。)を提供するため、上述した各スピーカに加えてシート毎にスピーカ及びエラーマイクが設けられている。具体的には、運転席201、助手席202、後部座席左203、後部座席右204といった夫々のシートには、聴取者の頭部近傍にスピーカが聴取者へ向けて設置されている。運転席201を例に説明すると、運転席201のシート前面側、例えばシート肩口、ヘッドレスト等には、聴取者へ向けて設置された左スピーカ81aと右スピーカ81bとが設けられている。これらの各シートに設けられたスピーカは、パーソナル音響空間を提供すべくDSP4によって音響処理が行われた音声信号を車両空間51へ出力する。
【0023】
運転席201の左スピーカ81a及び右スピーカ81bの前方には、左エラーマイク71と右エラーマイク71bが設けられている。なお、図1においては、各シートに設置されたエラーマイクが、聴取者の耳の横付近に設けられているが、実際には、左スピーカ81aや右スピーカ82aと同じく、運転席201のシート背面部に設置される。例えば運転席に設置されている左エラーマイク71aや右エラーマイク71bは、他席(例えば、後部座席)からの漏れ音を取得する。従って、リアルタイムに漏れ音を低減する処理を制御する場合には、これに基づいてDSP4による音響処理が実行される。
【0024】
なお、助手席202、運転席201後部の後部座席及び助手席202後部の後部座席にも運転席201と同様に夫々聴取者の頭部近傍に、左スピーカ82a等と右スピーカ82b等が聴取者へ向けて設定されている。また、左スピーカ82a等と右スピーカ82b等の夫々の前方には左エラーマイク72a等や右エラーマイク72b等が設置されている。その結果、実施形態の音響空間制御装置100では、パーソナル音響空間の形成も可能である。
【0025】
図2は、実施形態の音響空間制御装置100の概略構成を示す。図2に示すように、車両50に音響空間制御装置100が搭載され、音響空間制御装置100は、CD、DVD、MD、チューナ、テープ、TVなどからなる音声再生ユニット1、前記音声再生ユニット1の中から使用する再生装置を選択するセレクタ2、A/Dコンバータ3、DSP4(Digital Signal Processor)、D/Aコンバータ5、表示部7及び操作部8からなるインターフェース30、HDD9、ナビ部12、エンコーダ・デコーダ13、制御部20により構成されている。また、音響空間制御装置100には、メインアンプ6、スピーカ10、マイクアンプ23、エラーマイク70が接続されている。
【0026】
音声再生ユニット1は、聴取者の要求に応じて各種音声信号を出力する。また、音声再生ユニット1は、異なる音声信号をシート毎に出力可能である。例えば、音声再生ユニット1は、運転席にAM放送の音声信号やナビ部12からの音声案内に関する音声信号等を出力し、後部座席には、CDやDVD等に格納されている楽曲等の音声信号を出力することができる。
【0027】
インターフェース30は、表示部7と操作部8とを備えるタッチパネルによって構成されている。また、本実施形態のインターフェース30には、聴取者から発生される音声を取得するマイク24が設けられている。ナビ部12は、GPS(Global Positioning System)受信部、経路設定部、ガイド内容作成部、ガイド音声制御部、ガイド表示制御部と
いった一般的なナビゲーション装置に必要な構成を有していればよい。
【0028】
A/Dコンバータ3は、音声再生ユニット1から出力された音声信号をデジタル信号に変換する。DSP4は、変換されたデジタル信号に音響処理を施す。D/Aコンバータ5
は、デジタル信号をアナログ信号に変換する。メインアンプは、変換されたアナログ信号を増幅し各スピーカへ出力する。
【0029】
制御部20は、音響空間制御装置100で実行される処理を制御する。また、制御部20は、DSP4によって実行される音響処理を制御する。ここで、図3は、実施形態の制御部20の機能ブロック図を示す。同図に示すように、制御部20には、選択受付部61、パラメータ取得部62、パラメータ調整部63、パラメータ決定部64、音響処理実行部65、メモリ22によって構成されている。なお、制御部20の内部構成は、CPU21で実行されるプログラムによって実現することができる。また、このような構成に代えて、制御部20は、その内部構成のいずれか1以上をCPU21とは異なるプロセッサ、ハードウェア回路等によって実現してもよい。
【0030】
選択受付部61は、最適パラメータを決定する上で必要な設定情報を、インターフェース30を介して受け付ける。設定情報には、音響空間の種類に関する情報、音響処理に関する情報等が含まれる。音響空間の種類に関する情報には、車両空間51の全体に亘って形成される音響空間、シート毎に形成されるパーソナル音響空間等が含まれる。また、音響処理に関する情報には、車両空間内に仮想音源を定位させる音像定位処理、スピーカから出力される、直接音、初期反射音、リバーブのうち少なくともいずれか一つを遅延させる遅延処理、音響空間の外部からの漏れ音を低減する音漏れ低減処理等が例示される。なお、前記設定情報には、パーソナル音響空間を設定する場合に設定される、パーソナル音響空間を適用するシートに関する情報も含まれる。
【0031】
パラメータ取得部62は、選択受付部61で受け付けた音響処理に関する情報に基づいて、メモリ22に格納されている頭部伝達関数に関するパラメータを取得する。例えば、パラメータ取得部62は、選択受付部61で受け付けた情報が遅延処理の場合、遅延処理パラメータを取得する。また、パラメータ取得部62は、選択受付部62で受け付けた情報が音像定位処理の場合、定位処理パラメータを取得する。また、パラメータ取得部62は、選択受付部62で受け付けた情報が音漏れ低減処理の場合、音漏れ低減パラメータを取得する。
【0032】
ここで、図4は、定位処理パラメータと遅延処理パラメータの一例を示す。図4に示す定位処理パラメータは、音源定位処理、すなわち、FIRフィルタ4dが頭部伝達関数の畳み込み演算処理を実行する際に用いられる。図4に示す一例は、フロントスピーカ(センター)に関するものであり、フロントスピーカ(センター)では、周波数領域において4kHz付近にピークをもつデータが前方定位に有効であることに基づいて設定されている。具体的には、周波数4kHz(中心周波数)を中心として、周波数3kHz、周波数5kHzといったように3つのパラメータが段階的に設定されている。なお、図5は、定位処理パラメータを設定する際の根拠とされる周波数領域表示に関するグラフを示す。本実施形態では、図5に示す4kHz付近にピークを有するデータを用いることとした。但し、これに限定されるものではない。周波数6kHzや9kHzも中心周波数に相当することから、周波数6kHzや9kHzを中心周波数として、これらの前後のパラメータを設定し、パラメータ同士の間の値を補間するようにしてもよい。また、全ての中心周波数(4kHz、6kHz、9kHz)と中心周波数の前後のパラメータ(3kHz、5kHz、8kHz、10kHz)をパラメータとして設定し、補間するようにしてもよい。
【0033】
また、図4に示す遅延処理パラメータは、遅延器4bが、直接音、初期反射音、リバーブ等を遅延させる際に用いられる。図4に示す一例では、遅延量6msec(2m)を中心として、遅延量3msec(1m)、遅延量30msec(3m)といったように3つのパラメータが段階的に設けられている。なお、図6は、時間領域表示に関するグラフを示す。図6(a)は、補間処理前を示し、図6(b)は、補間処理後を示す。図6におい
て、円で囲まれた数字1は直接音、円で囲まれた数字2は初期反射音、円で囲まれた数字3はリバーブを示す。補間処理については、後述する。なお、他のスピーカについても実験等によって最適と思われる中心的な値を求め、この中心的な値から所定の間隔をあけて前後の値を設定すればよい。パラメータは予め連続的にしてもよいが、本実施形態のように段階的に設定することでデータ容量の削減を図ることができる。
【0034】
パラメータ調整部63は、パラメータ取得部62で取得したパラメータを調整し、調整したパラメータに基づく調整音をスピーカ10から出力させる。パラメータを調整するとは、パラメータを補間すること、すなわち、パラメータ同士の間の値を補間してパラメータを連続化することを意味する。上述したように本実施形態で用いられるパラメータは、段階的であり、パラメータ同士の間にブランクがあることから、パラメータ調整部63は、このパラメータ同士の間の値を補間する。そして、パラメータ調整部63は、補間することで連続されたパラメータに基づいてDSP4を制御し、音響処理を実行し、調整音をスピーカから出力させる。換言すると、パラメータ調整部63は、パラメータを変化させながら調整音を出力する。パラメータを補間することで、途切れのない連続的な調整音を生成することが可能となる。その結果、聴取者の嗜好をより忠実に反映した音響空間を形成するためのパラメータを決定することが可能となる。
【0035】
パラメータ決定部64は、聴取者にとって最適なパラメータを決定するための聴取者からの指示を受け付け、最適パラメータを決定する。より具体的には、聴取者指示受付部64は、聴取者が聴取姿勢を保持した状態で発声した声を、インターフェース30に設けられているマイク24を介して取得し、聴取者の声を取得した時点におけるパラメータを読み取り、この読み取ったパラメータを最適パラメータとして決定する。すなわち、車両空間51には、パラメータを変化させながら調整音が出力されており、聴取者は自分にとって最適と思われ時点で例えば「そこ」、「OK」といった声を発する。このように聴取者から発せられた声を、パラメータ決定部64がマイク24を介して取得し、取得した時点におけるパラメータを最適パラメータとして決定する。これにより、タッチパネル等を操作することなく、すなわち聴取姿勢を保持した状態でパラメータの調整及び最適パラメータの決定を行うことができる。なお、決定したパラメータは、決定した聴取者の識別情報(例えば、氏名等)と関連付けてメモリ22に記憶すればよい。このようにすることで、次回は、聴取者の識別情報をインターフェース30から入力するだけで、聴取者の嗜好する音響空間を提供することが可能となる。
【0036】
なお、聴取者からの指示は、聴取者が聴取姿勢を保持した状態でできればよく音声に限定されるものではない。聴取者からの指示は、例えば、電気信号によって行ってもよい。すなわち、聴取者からの指示は、リモートコントローラを通じて行ってもよく、また、例えば運転席に聴取者として運転手の指示を送信するためのステアリングスイッチを設け、ステアリングスイッチによって行うようにしてもよい。
【0037】
次に、上述した制御部によって制御されることで音響処理を実行するDSP4について説明する。なお、本実施形態の音響空間制御装置100は、車両空間51の全体に亘って一つの音響空間を形成することができると共に、パーソナル音響空間の形成も可能である。そして、音響空間の形成とパーソナル音響空間の形成とでは、DSP4で行われる処理も異なってくる。そこで、DSP4の説明では、音響空間の形成とパーソナル音響空間の形成とを分けて説明するものとする。
【0038】
まず、車両空間51の全体に亘って一つの音響空間を形成する場合に機能するDSP4の構成について説明する。図7は、DSP4の構成の一例を示す図である。同図に示すように、DSP4は、可変器4a、遅延器4b、イコライザ4c、FIRフィルタ4d、加算器4eを備える。また、これらの可変器4a、遅延器4b、イコライザ4c、FIRフ
ィルタ4d、加算器4eは、電気的に制御部20と接続されている。音声信号X1〜X6は、スピーカ10a〜10gのそれぞれから出力される音声を構成するものである。
【0039】
可変器4aは、A/Dコンバータ3によって変換されたデジタル信号のゲインを調整する。遅延器4bは、ゲイン調整されたデジタル信号に遅延処理を施す。この遅延処理における遅延処理時間は、制御部20のメモリ22に格納されているパラメータに基づいて決定される。遅延処理が施されたデジタル信号は、イコライザ4cによってイコライジングされる。
【0040】
FIRフィルタ4dは、音声再生ユニット1から出力される出力信号に対する頭部伝達関数(HRTF:Head-Related Transfer Function)の畳み込み演算処理を行う。すなわち、FIRフィルタ4dによれば、音像定位処理を行うことができる。頭部伝達関数は、音像の定位方向や聴取者に対する音像の相対距離に対応するように予め決定され、制御部20のメモリ22にパラメータとして格納されている。なお、畳み込み演算処理といった音響処理が行われたデジタル信号は、同様に所定の処理が施されたデジタル信号と加算される。加算されたデジタル信号は、D/Aコンバータ5によってアナログ信号に変換され、メインアンプ6に出力され、最終的にスピーカ10より出力される。
【0041】
次に、パーソナル音響空間を形成する際に機能するDSP4の構成について説明する。図8は、DSP4を中心とした機能ブロック図を示す。なお、図8は、運転席201のスピーカ81a、81bへ供給される音声信号に音響処理を実行する例を示す。同図に示すように、DSP4は、漏れ音低減フィルタ41、仮想音源フィルタ43、後方音源逆フィルタ44、補助フィルタ42によって構成されている。
【0042】
後部座席203、204のスピーカ83a、83b、84a、84bから運転席201の聴取者に漏れる音を効果的に低減するため、後部座席203、204のスピーカ83a、83b、84a、84bと運転席201のエラーマイク71a、71bとの間の漏れ音伝達関数P(z)と、運転席201のスピーカ81と運転席201のエラーマイク71との間の誤差経路伝達関数C(z)を動的に推定すると共に、臨場感のあるパーソナル音響空間を提供するために、運転席201のスピーカ81が出力する音声を仮想音源81a1、81b1に示すように聴取者の前方に定位させる。なお、漏れ音伝達関数P(z)と誤差経路伝達関数C(z)は、実験などにより夫々値を算出し、パラメータ化してもよい。例えば、漏れ音伝達関数P(z)と誤差経路伝達関数C(z)について漏れ音のレベルを複数段階に設定し、更に実験等によって得られた最適と思われる値を中心値として、この前後の値を所定の間隔をあけて設定すればよい。このようなパラメータを上述したパラメータ調整部63で調整することで、漏れ音処理におけるパラメータの設定が可能となる。
【0043】
また、仮想音源フィルタ43で聴取者の前方に音像を有する音を生成し、更に、後方音源逆フィルタ44で、運転席201のスピーカ81の位置を基準とする音像を聴取者の耳位置に近いエラーマイク71の位置へ定位させることで臨場感のあるパーソナル音響空間を提供することができる。なお、仮想音源フィルタ43や後方音源逆フィルタ44による処理についても、パラメータを用いた処理が可能である。その場合、実験などにより予め最適と思われる中心値を設定し、この前後の値を所定の間隔をあけて設定すればよい。
【0044】
漏れ音低減フィルタ41は、補助フィルタ42の出力に基づいて推定された漏れ音伝達関数P(z)及び誤差経路伝達関数C(z)もしくは、パラメータを用い、後部座席203、204のスピーカ83、84からの漏れ音を打ち消す制御音を発生させるフィルタである。この漏れ音低減フィルタ41は、ADF(適応フィルタ:Adaptive Digital Filter)として構成される。なお、漏れ音低減フィルタ41に供給される音声信号は、音声再
生ユニット1から出力される。
【0045】
ここで、漏れ音低減フィルタ41の算出手順について簡単に説明する。漏れ音低減フィルタ41を「Hl(z)」、補助フィルタ42を「S(z)」、漏れ音伝達関数を「P(z)」、誤差経路伝達関数を「C(z)」とすると、これらの関係は、式1によって表される。なお、漏れ音低減フィルタ41が生成する制御音(打ち消し音)は、Hl(z)C(z)として表される。
S(z)=P(z)+Hl(z)C(z)・・・式1
【0046】
上記式1において、S(z)及びHl(z)に2通りの初期値(S1(z)、びHl1(z)、S2(z)、Hl2(z))を入力し、打ち消し誤差が最小となるようにS1(z)及びS2(z)を更新することで、最適なP(z)及びC(z)を推定することができる。そして、最適なHl(z)は、式2で表すことができる。
Hl(z)=−P(z)/C(z)・・・式2
【0047】
仮想音源フィルタ43は、音声再生ユニット1から出力される音声信号を受け取り、運転席201の聴取者の前方に仮想的な音像を有する仮想音場を生成するフィルタ(Q(z))である。なお、仮想音源フィルタ43によって生成される仮想音場は、図8の仮想音源81a1、81b1に示したように、あたかも聴取者の前方に音源があるように音声再生ユニット1からの音声信号を処理したものである。また、仮想音源フィルタ43は、事前の実験や測定結果に基づいて予め求められた伝達関数であるので、処理負荷をかけることなく臨場感のある音場を得ることができる。ここで、この事前の測定は、聴取者を模擬したダミーヘッドの前方に設置した2つのスピーカから音声を出力し、ダミーヘッドの耳位置に設置されたマイクで、耳位置におけるインパルス応答を測定することによって行われる。そして、この測定の結果に基づいて目標音場の目標伝達関数を求め、求めた目標伝達関数をQ(z)とする。
【0048】
後方音源逆フィルタ44は、運転席201のスピーカ81と運転席201のエラーマイク71との間の誤差経路伝達関数C(z)の逆関数として定義されるフィルタであり、運転席201のスピーカ81の位置を基準とする仮想音場を運転席201のエラーマイク71位置へ定位させる処理を行う。これにより、運手席201のスピーカ81が聴取者の後方に設置されることに起因する音像の後方定位を補正することが可能となる。なお、後方音源逆フィルタ44を「Hb(z)」とすると、Hb(z)は、式3で表すことができる。なお、式3におけるC(z)は、予め推定しておいた静的な誤差経路伝達関数が用いられる。
Hb(z)=1/C(z)・・・式3
【0049】
補助フィルタ42は、音声再生ユニット1と運転席201のエラーマイク71の出力を受け取り、漏れ伝達関数P(z)及び誤差経路伝達関数C(z)を推定する処理を行うフィルタである。そして、この補助フィルタ42の出力は、漏れ音低減フィルタ41の適応制御に用いられる。
【0050】
(処理フロー)
次に、上述した音響空間制御装置100で実行される処理について説明する。図9は、音響空間制御装置100で行われる処理フローを示す。なお、以下に説明する処理は、CPU41がメモリ42に格納されている所定のプログラムを実行することで実現される。
【0051】
ステップS01では、選択受付部61がパラメータを決定する上で必要な設定情報(音響空間の種類に関する情報、実行する音響処理に関する情報等)を、インターフェース30を介して受け付ける。ここで、図10は、インターフェース30に表示される音響空間選択画面の一例を示す。同図に示すように、インターフェース30には、音響空間(全体
)選択ボタン81と、パーソナル音響空間選択ボタン82が表示されている。また、パーソナル音響空間ボタン82が選択された場合、パーソナル音響空間を形成するシートを選択できるように、インターフェース30には、シート選択ボタンが表示されている。
【0052】
また、図11は、インターフェース30に表示される処理選択画面の一例を示す。図11に示す処理選択画面は、音響空間選択画面においていずれかのボタンが選択されることで表示される。図11に示すように、インターフェース30には、音源定位処理ボタン83、遅延処理ボタン84、漏れ音低減処理ボタン85が各処理のイメージ画像と共に表示されている。なお、これらの処理ボタンは、複数選択してもよい。設定情報の受け付けが完了するとステップS02へ進む。
【0053】
ステップS02では、パラメータ取得部62が、ステップS01で選択された音響処理に必要なパラメータをメモリ22から取得する。なお、複数の音響処理が選択されている場合、それぞれの音響処理に必要なパラメータ(遅延処理パラメータ、定位処理パラメータ、音漏れて威厳パラメータ)を取得する(図4参照)。パラメータの取得が完了するとステップS03へ進む。
【0054】
ステップS03では、パラメータ調整部63が、パラメータ取得部62で取得したパラメータを調整し、調整したパラメータに基づいて音声を出力する。例えば、音響空間(全体)、音源定位処理が選択された場合、メモリ22から取得したこれに対応するパラメータに基づいて音源定位処理が実施された音声を所定の時間(例えば10秒間)出力する。なお、複数の音響処理が選択されている場合には、夫々別々に行ってもよく、また、同時に行ってもよい。なお、パラメータ調整部63による、パラメータを変化させながらの音声の出力開始前に、図12に示すように、スピーカ10やインターフェース30を介してこれからパラメータの調整が開始されることを通知する。これにより、聴取者は、パラメータの調整が開始されることを認識でき、聴取姿勢をとることができる。また、パラメータの調整中は、図13に示すように、パラメータが調整中である旨を表示してもよい。これにより、聴取者は、現在パラメータが調整中であることを視覚を通じて認識することができる。パラメータの調整が開始されるとステップS04へ進む。
【0055】
ステップS04では、パラメータ決定部64が、聴取者からの指示の受け付けを開始し、聴取者からの指示(本実施形態では、聴取者から発せられる声)があるか否かを判断する。パラメータ決定部64は、聴取者からの指示を受け付けた場合、ステップS05へ進む。一方、パラメータ決定部64は、聴取者からの指示を受け付けていない場合、再度ステップS03へ進む。すなわち、ステップS04における処理は、聴取者からの指示を受け付けるまで繰り返される。なお、最適パラメータが決定された場合、図14に示すように、最適パラメータが決定された旨を表示してもよい。これにより、聴取者は、最適パラメータが決定されたことを視覚を通じて認識することができる。
【0056】
ステップS05では、パラメータ決定部64が、聴取者からの指示を受け付けた時点におけるパラメータを取得し、取得したパラメータを最適パラメータとして聴取者の識別情報と関連付けてメモリ22へ記録する。例えば音源定位処理において最適パラメータとして4.1kHz(CFスピーカ)が決定される。そして、このように取得された最適パラメータに基づいて音響処理が実行され、車両空間51へ音声が出力される。
【0057】
以上説明した実施形態の音響空間制御装置100によれば、聴取者の嗜好を反映した音響空間を形成可能な音響空間制御装置において、聴取姿勢を変えることなく音響空間を形成するためのパラメータを設定することができる。
【0058】
以上、本発明の好適な実施形態を説明したが、本発明の音響空間制御装置はこれらに限
らず、可能な限りこれらの組合せを含むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】実施形態の音響空間制御装置が搭載される車両の概略図を示す。
【図2】実施形態の音響空間制御装置の概略構成を示す。
【図3】実施形態の制御部の機能ブロック図を示す。
【図4】パラメータの一例を示す。
【図5】定位処理パラメータを設定する際の根拠とされる周波数領域表示に関するグラフを示す。
【図6】時間領域表示に関するグラフを示す。
【図7】DSPの構成の一例を示す図である。
【図8】DSPを中心とした機能ブロック図を示す。
【図9】音響空間制御装置で行われる処理フローを示す。
【図10】インターフェースに表示される音響空間選択画面の一例を示す。
【図11】インターフェースに表示される処理選択画面の一例を示す。
【図12】インターフェースに表示される通知画面の一例を示す。
【図13】インターフェースに表示されるパラメータ調整中を表示する画面の一例を示す。
【図14】インターフェースに表示される最適パラメータの決定を表示する画面の一例を示す。
【符号の説明】
【0060】
1・・・再生処理ユニット
2・・・セレクタ
3・・・A/Dコンバータ
4・・・DSP
5・・・D/Aコンバータ
6・・・メインアンプ
7・・・表示部
8・・・操作部
10・・・スピーカ
20・・・制御部
23・・・マイクアンプ
24・・・マイク
61・・・選択受付部
62・・・パラメータ取得部
63・・・パラメータ調整部
64・・・最適パラメータ決定部
70・・・エラーマイク
【技術分野】
【0001】
本発明は、音響空間制御装置及び音響空間制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば車両といった所定の空間に、聴取者の嗜好に合わせた音響空間を形成する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載の技術では、ボタン操作やタッチパネル操作によって音響空間に対応するイメージ画像を操作することで、空間内に聴取者の嗜好に合わせた音響空間を形成することができる。
【特許文献1】特開2007−116363号公報
【特許文献2】特開平10−32890号公報
【特許文献3】特開平10−32898号公報
【特許文献4】特開平10−32899号公報
【特許文献5】特開平10−32900号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ボタン操作やタッチパネル操作によって音響空間に対応するイメージ画像を操作することで車両等の空間内に音響空間を形成する技術が知られている。この技術によれば、比較的簡単な操作で聴取者の嗜好に合わせた音響空間を形成することができる。上記技術では、イメージ画像を操作してパラメータを設定する際、例えば着席した聴取姿勢を崩して操作を行う必要があるが、聴取姿勢を崩さずに操作ができれば聴取者の操作負担をより低減することができる。また、車両空間では、聴取者の操作負担を低減することで安全性も向上することができ、より操作負担を低減できる技術の開発が望まれている。
【0004】
本発明では、上記した問題に鑑み、聴取者の嗜好を反映した音響空間を形成可能な音響空間制御装置において、従来よりも操作負担を低減できる音響空間制御装置に関する技術を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明では、上述した課題を解決するために、音響空間を頭部伝達関数に関するパラメータを調整して調整音を車両空間内に出力し、聴取姿勢を保持した状態で聴取者からの指示を受け付け、指示を受け付けた際のパラメータに基づいて音響処理を実行することとした。
【0006】
より詳細には、本発明は、空間内に配置されたスピーカから出力されるべき音信号に対して音響処理を行うことで、該空間内に聴取者が嗜好する音響空間を形成する音響空間制御装置であって、前記音響処理を実行する際に用いる、頭部伝達関数に関するパラメータを記憶する記憶部と、前記記憶部が記憶する前記パラメータを前記音響空間が変化するように調整するパラメータ調整部と、前記パラメータ調整部によって調整された前記パラメータに基づく音響処理後の音信号を聴取姿勢を保持した状態で聴取する聴取者からの指示を受け付け、該指示を受け付けた際のパラメータを最適パラメータとして決定する最適パラメータ決定部と、最適パラメータ決定部によって決定された最適パラメータに基づいて前記音響処理を行う音響処理実行部と、を備える。
【0007】
本発明によれば、聴取者は、聴取姿勢を保持した状態でパラメータの調整を行うことができる。その結果、本発明によれば、従来よりも聴取者の操作負担を低減し、かつ、聴取者の嗜好する音響空間を空間内に形成することができる。
【0008】
調整部は、記憶部が記憶するパラメータを前記音響空間が変化するように調整する。これにより、聴取者は、自らにとって最適と思われる音響空間を、例えばタッチパネル等を操作せずとも、確認することができる。調整部によるパラメータの調整は、所定の時間内で行うことが好ましい。所定の時間は、聴取者が確認するのに十分な時間であればよく特に限定されない。
【0009】
調整部によって調整されるパラメータとは、頭部伝達関数に関するパラメータ、頭部伝達関数を用いて音響処理する際に用いるパラメータである。頭部伝達関数に関するパラメータには、音響処理、例えば、車両空間内に仮想音源を定位させる音像定位処理や、スピーカから出力される、直接音、初期反射音、リバーブのうち少なくともいずれか一つを遅延させる遅延処理や、音響空間の外部からの漏れ音を低減する漏れ音低減処理等を行う際に用いるパラメータが例示される。本発明は、聴取者の聴取姿勢に変化が生じた場合に、頭部伝達関数が変化することによる音響処理効果の低減を防止するために、聴取者の姿勢が一定(頭部伝達関数に変化がない)状態で、音響処理を調整するものである。なお、調整部は、頭部伝達関数を用いて音響処理が施した後、これを調整音としてスピーカから出力させる。
【0010】
最適パラメータ決定部は、聴取者からの指示を受け付け、指示を受け付けた際のパラメータを最適パラメータとして決定する。聴取者からの指示は、聴取姿勢を保持した状態で行われる。聴取姿勢を保持した状態とは、換言すると、聴取者の受聴点が定位していることであり、例えば、聴取者が座席に着席して静止している状態である。
【0011】
なお、前記聴取者からの指示は、該聴取者が発する音声と、該聴取者が聴取姿勢を保持した状態で操作可能な送信部から送信される電気信号と、のうち少なくともいずれか一方によって行うことができる。聴取者が発する音声によれば、聴取者の聴取姿勢を保持した状態で聴取者からの指示を受け付けることができる。また、送信部、例えばリモートコントローラによれば、同じく聴取者の聴取姿勢を保持した状態で聴取者からの指示を受け付けることができる。
【0012】
ここで、本発明において、前記パラメータは、段階的なパラメータによって構成され、前記パラメータ調整部は、前記段階的なパラメータ同士の間の値を補間し、補間することで連続化されたパラメータに基づく調整音を前記スピーカから出力させるようにしてもよい。段階的なパラメータとすることで、記憶部の負担を低減することができる。また、パラメータ同士の間の値を補間することで、途切れのない連続的な調整音を生成することが可能となる。その結果、聴取者の嗜好をより忠実に反映した音響空間を形成するためのパラメータを決定することが可能となる。
【0013】
また、本発明において、前記音響処理は、前記車両空間内に仮想音源を定位させる音像定位処理と、前記スピーカから出力される、直接音、初期反射音、リバーブのうち少なくともいずれか一つを遅延させる遅延処理と、前記音響空間の外部からの漏れ音を低減する漏れ音低減処理と、のうち少なくともいずれか一つが含まれるようにしてもよい。
【0014】
音像定位処理によれば、空間内の任意の位置に音像を定位させることができる。また、遅延処理によれば、音響空間に広がり等を持たせることができる。更に、漏れ音低減処理によれば、音響空間の外部からの漏れを低減し、よりクリアな音声を提供することができる。
【0015】
また、本発明は、前記音響空間の種類に関する情報と、実行する音響処理に関する情報とのうち少なくともいずれか一つを含む設定情報を受け付ける設定情報受付部を更に備え
、前記パラメータは、前記音響処理と、前記複数のスピーカとの夫々に対応して複数設けられ、前記調整部は、前記設定情報受付部で受け付けた設定情報に基づいて、前記複数のパラメータの中から所定のパラメータを抽出し、抽出したパラメータを調整し、調整したパラメータに基づく調整音を前記スピーカから出力させるようにしてもよい。
【0016】
音響空間の種類には、空間内に一つの音響空間が形成されるものや、空間内に複数の音響空間が形成されるもの(パーソナル音響空間)が含まれる。音響処理に関する情報には、音響処理の種類に関する情報、すなわち、音像定位処理、遅延処理、漏れ音低減処理が含まれる。複数のスピーカ毎に夫々の音響処理に対応するようにパラメータを設けておくことで、聴取者の嗜好をより反映した音響空間の提供が可能となる。
【0017】
また、本発明において、前記所定の空間は、車両空間としてもよい。車両空間では、運転者も聴取者に含まれ、安全性の面から見ても簡単な操作で各席の音響制御を実行できることが好ましい。従って、本発明の音響空間制御装置は、車両空間に搭載する音響空間制御装置として好適に用いることができる。
【0018】
なお、本発明は、上述した音響空間制御装置を組み込んだオーディオシステムやカーナビゲーションシステムとすることができる。また、本発明は、上述したいずれかの機能を実現させる方法としてもよい。すなわち、本発明は、空間内に複数配置されたスピーカから出力されるべき音信号に対して音響処理を行うことで、該空間内に聴取者が嗜好する音響空間を形成する音響空間制御方法であって、前記音響処理を実行する際に用いる、頭部伝達関数に関するパラメータを記憶する記憶ステップと、前記記憶ステップで記憶された前記パラメータを前記音響空間が変化するように調整するパラメータ調整ステップと、前記パラメータ調整ステップによって調整された前記パラメータに基づく音響処理後の音信号を聴取姿勢を保持した状態で聴取する聴取者からの指示を受け付け、該指示を受け付けた際のパラメータを最適パラメータとして決定する最適パラメータ決定ステップと、最適パラメータ決定ステップで決定された最適パラメータに基づいて音響処理を行う音響処理実行ステップと、を備える。更に、本発明は、上述したいずれかの機能を実現させるプログラム、又はプログラムを記録した記録媒体であってもよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、聴取者の嗜好を反映した音響空間を形成可能な音響空間制御装置において、従来よりも操作負担を低減できる音響空間制御装置に関する技術を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
次に、本発明の音響空間制御装置の実施形態について図面に基づいて説明する。なお、実施形態では、本発明の音響空間制御装置を車両のナビゲーションシステムに組み込んだ場合を例に説明する。但し、これに限定されるものではなく、本発明の音響空間制御装置は、映画館、コンサートホール、電車やバスなど、様々な場所で用いることができる。
【0021】
(構成)
図1は、実施形態の音響空間制御装置100が搭載される車両50の概略図である。車両50には閉ざされた空間である車両空間51が設けられ、車両50には本発明の聴取者に相当する運転者を含む搭乗者が滞在可能である。また、音響空間制御装置100には、複数のスピーカが接続されている。すなわち、車両50には、前方左側にFLスピーカ10a、前方右側にFRスピーカ10b、後方左側にRLスピーカ10c、後方右側にRRスピーカ10d、前方中央にFCスピーカ10f、天井にSPスピーカ10e、後方中央にSWスピーカ10gが設けられている。実施形態の音響空間制御装置100によれば、これらの各スピーカから出力されるべき音声信号を制御することで車両空間51内に聴取
者が嗜好する音響空間を形成することができる。
【0022】
また、車両50には、シート毎に異なる音響空間(以下、パーソナル音響空間という。)を提供するため、上述した各スピーカに加えてシート毎にスピーカ及びエラーマイクが設けられている。具体的には、運転席201、助手席202、後部座席左203、後部座席右204といった夫々のシートには、聴取者の頭部近傍にスピーカが聴取者へ向けて設置されている。運転席201を例に説明すると、運転席201のシート前面側、例えばシート肩口、ヘッドレスト等には、聴取者へ向けて設置された左スピーカ81aと右スピーカ81bとが設けられている。これらの各シートに設けられたスピーカは、パーソナル音響空間を提供すべくDSP4によって音響処理が行われた音声信号を車両空間51へ出力する。
【0023】
運転席201の左スピーカ81a及び右スピーカ81bの前方には、左エラーマイク71と右エラーマイク71bが設けられている。なお、図1においては、各シートに設置されたエラーマイクが、聴取者の耳の横付近に設けられているが、実際には、左スピーカ81aや右スピーカ82aと同じく、運転席201のシート背面部に設置される。例えば運転席に設置されている左エラーマイク71aや右エラーマイク71bは、他席(例えば、後部座席)からの漏れ音を取得する。従って、リアルタイムに漏れ音を低減する処理を制御する場合には、これに基づいてDSP4による音響処理が実行される。
【0024】
なお、助手席202、運転席201後部の後部座席及び助手席202後部の後部座席にも運転席201と同様に夫々聴取者の頭部近傍に、左スピーカ82a等と右スピーカ82b等が聴取者へ向けて設定されている。また、左スピーカ82a等と右スピーカ82b等の夫々の前方には左エラーマイク72a等や右エラーマイク72b等が設置されている。その結果、実施形態の音響空間制御装置100では、パーソナル音響空間の形成も可能である。
【0025】
図2は、実施形態の音響空間制御装置100の概略構成を示す。図2に示すように、車両50に音響空間制御装置100が搭載され、音響空間制御装置100は、CD、DVD、MD、チューナ、テープ、TVなどからなる音声再生ユニット1、前記音声再生ユニット1の中から使用する再生装置を選択するセレクタ2、A/Dコンバータ3、DSP4(Digital Signal Processor)、D/Aコンバータ5、表示部7及び操作部8からなるインターフェース30、HDD9、ナビ部12、エンコーダ・デコーダ13、制御部20により構成されている。また、音響空間制御装置100には、メインアンプ6、スピーカ10、マイクアンプ23、エラーマイク70が接続されている。
【0026】
音声再生ユニット1は、聴取者の要求に応じて各種音声信号を出力する。また、音声再生ユニット1は、異なる音声信号をシート毎に出力可能である。例えば、音声再生ユニット1は、運転席にAM放送の音声信号やナビ部12からの音声案内に関する音声信号等を出力し、後部座席には、CDやDVD等に格納されている楽曲等の音声信号を出力することができる。
【0027】
インターフェース30は、表示部7と操作部8とを備えるタッチパネルによって構成されている。また、本実施形態のインターフェース30には、聴取者から発生される音声を取得するマイク24が設けられている。ナビ部12は、GPS(Global Positioning System)受信部、経路設定部、ガイド内容作成部、ガイド音声制御部、ガイド表示制御部と
いった一般的なナビゲーション装置に必要な構成を有していればよい。
【0028】
A/Dコンバータ3は、音声再生ユニット1から出力された音声信号をデジタル信号に変換する。DSP4は、変換されたデジタル信号に音響処理を施す。D/Aコンバータ5
は、デジタル信号をアナログ信号に変換する。メインアンプは、変換されたアナログ信号を増幅し各スピーカへ出力する。
【0029】
制御部20は、音響空間制御装置100で実行される処理を制御する。また、制御部20は、DSP4によって実行される音響処理を制御する。ここで、図3は、実施形態の制御部20の機能ブロック図を示す。同図に示すように、制御部20には、選択受付部61、パラメータ取得部62、パラメータ調整部63、パラメータ決定部64、音響処理実行部65、メモリ22によって構成されている。なお、制御部20の内部構成は、CPU21で実行されるプログラムによって実現することができる。また、このような構成に代えて、制御部20は、その内部構成のいずれか1以上をCPU21とは異なるプロセッサ、ハードウェア回路等によって実現してもよい。
【0030】
選択受付部61は、最適パラメータを決定する上で必要な設定情報を、インターフェース30を介して受け付ける。設定情報には、音響空間の種類に関する情報、音響処理に関する情報等が含まれる。音響空間の種類に関する情報には、車両空間51の全体に亘って形成される音響空間、シート毎に形成されるパーソナル音響空間等が含まれる。また、音響処理に関する情報には、車両空間内に仮想音源を定位させる音像定位処理、スピーカから出力される、直接音、初期反射音、リバーブのうち少なくともいずれか一つを遅延させる遅延処理、音響空間の外部からの漏れ音を低減する音漏れ低減処理等が例示される。なお、前記設定情報には、パーソナル音響空間を設定する場合に設定される、パーソナル音響空間を適用するシートに関する情報も含まれる。
【0031】
パラメータ取得部62は、選択受付部61で受け付けた音響処理に関する情報に基づいて、メモリ22に格納されている頭部伝達関数に関するパラメータを取得する。例えば、パラメータ取得部62は、選択受付部61で受け付けた情報が遅延処理の場合、遅延処理パラメータを取得する。また、パラメータ取得部62は、選択受付部62で受け付けた情報が音像定位処理の場合、定位処理パラメータを取得する。また、パラメータ取得部62は、選択受付部62で受け付けた情報が音漏れ低減処理の場合、音漏れ低減パラメータを取得する。
【0032】
ここで、図4は、定位処理パラメータと遅延処理パラメータの一例を示す。図4に示す定位処理パラメータは、音源定位処理、すなわち、FIRフィルタ4dが頭部伝達関数の畳み込み演算処理を実行する際に用いられる。図4に示す一例は、フロントスピーカ(センター)に関するものであり、フロントスピーカ(センター)では、周波数領域において4kHz付近にピークをもつデータが前方定位に有効であることに基づいて設定されている。具体的には、周波数4kHz(中心周波数)を中心として、周波数3kHz、周波数5kHzといったように3つのパラメータが段階的に設定されている。なお、図5は、定位処理パラメータを設定する際の根拠とされる周波数領域表示に関するグラフを示す。本実施形態では、図5に示す4kHz付近にピークを有するデータを用いることとした。但し、これに限定されるものではない。周波数6kHzや9kHzも中心周波数に相当することから、周波数6kHzや9kHzを中心周波数として、これらの前後のパラメータを設定し、パラメータ同士の間の値を補間するようにしてもよい。また、全ての中心周波数(4kHz、6kHz、9kHz)と中心周波数の前後のパラメータ(3kHz、5kHz、8kHz、10kHz)をパラメータとして設定し、補間するようにしてもよい。
【0033】
また、図4に示す遅延処理パラメータは、遅延器4bが、直接音、初期反射音、リバーブ等を遅延させる際に用いられる。図4に示す一例では、遅延量6msec(2m)を中心として、遅延量3msec(1m)、遅延量30msec(3m)といったように3つのパラメータが段階的に設けられている。なお、図6は、時間領域表示に関するグラフを示す。図6(a)は、補間処理前を示し、図6(b)は、補間処理後を示す。図6におい
て、円で囲まれた数字1は直接音、円で囲まれた数字2は初期反射音、円で囲まれた数字3はリバーブを示す。補間処理については、後述する。なお、他のスピーカについても実験等によって最適と思われる中心的な値を求め、この中心的な値から所定の間隔をあけて前後の値を設定すればよい。パラメータは予め連続的にしてもよいが、本実施形態のように段階的に設定することでデータ容量の削減を図ることができる。
【0034】
パラメータ調整部63は、パラメータ取得部62で取得したパラメータを調整し、調整したパラメータに基づく調整音をスピーカ10から出力させる。パラメータを調整するとは、パラメータを補間すること、すなわち、パラメータ同士の間の値を補間してパラメータを連続化することを意味する。上述したように本実施形態で用いられるパラメータは、段階的であり、パラメータ同士の間にブランクがあることから、パラメータ調整部63は、このパラメータ同士の間の値を補間する。そして、パラメータ調整部63は、補間することで連続されたパラメータに基づいてDSP4を制御し、音響処理を実行し、調整音をスピーカから出力させる。換言すると、パラメータ調整部63は、パラメータを変化させながら調整音を出力する。パラメータを補間することで、途切れのない連続的な調整音を生成することが可能となる。その結果、聴取者の嗜好をより忠実に反映した音響空間を形成するためのパラメータを決定することが可能となる。
【0035】
パラメータ決定部64は、聴取者にとって最適なパラメータを決定するための聴取者からの指示を受け付け、最適パラメータを決定する。より具体的には、聴取者指示受付部64は、聴取者が聴取姿勢を保持した状態で発声した声を、インターフェース30に設けられているマイク24を介して取得し、聴取者の声を取得した時点におけるパラメータを読み取り、この読み取ったパラメータを最適パラメータとして決定する。すなわち、車両空間51には、パラメータを変化させながら調整音が出力されており、聴取者は自分にとって最適と思われ時点で例えば「そこ」、「OK」といった声を発する。このように聴取者から発せられた声を、パラメータ決定部64がマイク24を介して取得し、取得した時点におけるパラメータを最適パラメータとして決定する。これにより、タッチパネル等を操作することなく、すなわち聴取姿勢を保持した状態でパラメータの調整及び最適パラメータの決定を行うことができる。なお、決定したパラメータは、決定した聴取者の識別情報(例えば、氏名等)と関連付けてメモリ22に記憶すればよい。このようにすることで、次回は、聴取者の識別情報をインターフェース30から入力するだけで、聴取者の嗜好する音響空間を提供することが可能となる。
【0036】
なお、聴取者からの指示は、聴取者が聴取姿勢を保持した状態でできればよく音声に限定されるものではない。聴取者からの指示は、例えば、電気信号によって行ってもよい。すなわち、聴取者からの指示は、リモートコントローラを通じて行ってもよく、また、例えば運転席に聴取者として運転手の指示を送信するためのステアリングスイッチを設け、ステアリングスイッチによって行うようにしてもよい。
【0037】
次に、上述した制御部によって制御されることで音響処理を実行するDSP4について説明する。なお、本実施形態の音響空間制御装置100は、車両空間51の全体に亘って一つの音響空間を形成することができると共に、パーソナル音響空間の形成も可能である。そして、音響空間の形成とパーソナル音響空間の形成とでは、DSP4で行われる処理も異なってくる。そこで、DSP4の説明では、音響空間の形成とパーソナル音響空間の形成とを分けて説明するものとする。
【0038】
まず、車両空間51の全体に亘って一つの音響空間を形成する場合に機能するDSP4の構成について説明する。図7は、DSP4の構成の一例を示す図である。同図に示すように、DSP4は、可変器4a、遅延器4b、イコライザ4c、FIRフィルタ4d、加算器4eを備える。また、これらの可変器4a、遅延器4b、イコライザ4c、FIRフ
ィルタ4d、加算器4eは、電気的に制御部20と接続されている。音声信号X1〜X6は、スピーカ10a〜10gのそれぞれから出力される音声を構成するものである。
【0039】
可変器4aは、A/Dコンバータ3によって変換されたデジタル信号のゲインを調整する。遅延器4bは、ゲイン調整されたデジタル信号に遅延処理を施す。この遅延処理における遅延処理時間は、制御部20のメモリ22に格納されているパラメータに基づいて決定される。遅延処理が施されたデジタル信号は、イコライザ4cによってイコライジングされる。
【0040】
FIRフィルタ4dは、音声再生ユニット1から出力される出力信号に対する頭部伝達関数(HRTF:Head-Related Transfer Function)の畳み込み演算処理を行う。すなわち、FIRフィルタ4dによれば、音像定位処理を行うことができる。頭部伝達関数は、音像の定位方向や聴取者に対する音像の相対距離に対応するように予め決定され、制御部20のメモリ22にパラメータとして格納されている。なお、畳み込み演算処理といった音響処理が行われたデジタル信号は、同様に所定の処理が施されたデジタル信号と加算される。加算されたデジタル信号は、D/Aコンバータ5によってアナログ信号に変換され、メインアンプ6に出力され、最終的にスピーカ10より出力される。
【0041】
次に、パーソナル音響空間を形成する際に機能するDSP4の構成について説明する。図8は、DSP4を中心とした機能ブロック図を示す。なお、図8は、運転席201のスピーカ81a、81bへ供給される音声信号に音響処理を実行する例を示す。同図に示すように、DSP4は、漏れ音低減フィルタ41、仮想音源フィルタ43、後方音源逆フィルタ44、補助フィルタ42によって構成されている。
【0042】
後部座席203、204のスピーカ83a、83b、84a、84bから運転席201の聴取者に漏れる音を効果的に低減するため、後部座席203、204のスピーカ83a、83b、84a、84bと運転席201のエラーマイク71a、71bとの間の漏れ音伝達関数P(z)と、運転席201のスピーカ81と運転席201のエラーマイク71との間の誤差経路伝達関数C(z)を動的に推定すると共に、臨場感のあるパーソナル音響空間を提供するために、運転席201のスピーカ81が出力する音声を仮想音源81a1、81b1に示すように聴取者の前方に定位させる。なお、漏れ音伝達関数P(z)と誤差経路伝達関数C(z)は、実験などにより夫々値を算出し、パラメータ化してもよい。例えば、漏れ音伝達関数P(z)と誤差経路伝達関数C(z)について漏れ音のレベルを複数段階に設定し、更に実験等によって得られた最適と思われる値を中心値として、この前後の値を所定の間隔をあけて設定すればよい。このようなパラメータを上述したパラメータ調整部63で調整することで、漏れ音処理におけるパラメータの設定が可能となる。
【0043】
また、仮想音源フィルタ43で聴取者の前方に音像を有する音を生成し、更に、後方音源逆フィルタ44で、運転席201のスピーカ81の位置を基準とする音像を聴取者の耳位置に近いエラーマイク71の位置へ定位させることで臨場感のあるパーソナル音響空間を提供することができる。なお、仮想音源フィルタ43や後方音源逆フィルタ44による処理についても、パラメータを用いた処理が可能である。その場合、実験などにより予め最適と思われる中心値を設定し、この前後の値を所定の間隔をあけて設定すればよい。
【0044】
漏れ音低減フィルタ41は、補助フィルタ42の出力に基づいて推定された漏れ音伝達関数P(z)及び誤差経路伝達関数C(z)もしくは、パラメータを用い、後部座席203、204のスピーカ83、84からの漏れ音を打ち消す制御音を発生させるフィルタである。この漏れ音低減フィルタ41は、ADF(適応フィルタ:Adaptive Digital Filter)として構成される。なお、漏れ音低減フィルタ41に供給される音声信号は、音声再
生ユニット1から出力される。
【0045】
ここで、漏れ音低減フィルタ41の算出手順について簡単に説明する。漏れ音低減フィルタ41を「Hl(z)」、補助フィルタ42を「S(z)」、漏れ音伝達関数を「P(z)」、誤差経路伝達関数を「C(z)」とすると、これらの関係は、式1によって表される。なお、漏れ音低減フィルタ41が生成する制御音(打ち消し音)は、Hl(z)C(z)として表される。
S(z)=P(z)+Hl(z)C(z)・・・式1
【0046】
上記式1において、S(z)及びHl(z)に2通りの初期値(S1(z)、びHl1(z)、S2(z)、Hl2(z))を入力し、打ち消し誤差が最小となるようにS1(z)及びS2(z)を更新することで、最適なP(z)及びC(z)を推定することができる。そして、最適なHl(z)は、式2で表すことができる。
Hl(z)=−P(z)/C(z)・・・式2
【0047】
仮想音源フィルタ43は、音声再生ユニット1から出力される音声信号を受け取り、運転席201の聴取者の前方に仮想的な音像を有する仮想音場を生成するフィルタ(Q(z))である。なお、仮想音源フィルタ43によって生成される仮想音場は、図8の仮想音源81a1、81b1に示したように、あたかも聴取者の前方に音源があるように音声再生ユニット1からの音声信号を処理したものである。また、仮想音源フィルタ43は、事前の実験や測定結果に基づいて予め求められた伝達関数であるので、処理負荷をかけることなく臨場感のある音場を得ることができる。ここで、この事前の測定は、聴取者を模擬したダミーヘッドの前方に設置した2つのスピーカから音声を出力し、ダミーヘッドの耳位置に設置されたマイクで、耳位置におけるインパルス応答を測定することによって行われる。そして、この測定の結果に基づいて目標音場の目標伝達関数を求め、求めた目標伝達関数をQ(z)とする。
【0048】
後方音源逆フィルタ44は、運転席201のスピーカ81と運転席201のエラーマイク71との間の誤差経路伝達関数C(z)の逆関数として定義されるフィルタであり、運転席201のスピーカ81の位置を基準とする仮想音場を運転席201のエラーマイク71位置へ定位させる処理を行う。これにより、運手席201のスピーカ81が聴取者の後方に設置されることに起因する音像の後方定位を補正することが可能となる。なお、後方音源逆フィルタ44を「Hb(z)」とすると、Hb(z)は、式3で表すことができる。なお、式3におけるC(z)は、予め推定しておいた静的な誤差経路伝達関数が用いられる。
Hb(z)=1/C(z)・・・式3
【0049】
補助フィルタ42は、音声再生ユニット1と運転席201のエラーマイク71の出力を受け取り、漏れ伝達関数P(z)及び誤差経路伝達関数C(z)を推定する処理を行うフィルタである。そして、この補助フィルタ42の出力は、漏れ音低減フィルタ41の適応制御に用いられる。
【0050】
(処理フロー)
次に、上述した音響空間制御装置100で実行される処理について説明する。図9は、音響空間制御装置100で行われる処理フローを示す。なお、以下に説明する処理は、CPU41がメモリ42に格納されている所定のプログラムを実行することで実現される。
【0051】
ステップS01では、選択受付部61がパラメータを決定する上で必要な設定情報(音響空間の種類に関する情報、実行する音響処理に関する情報等)を、インターフェース30を介して受け付ける。ここで、図10は、インターフェース30に表示される音響空間選択画面の一例を示す。同図に示すように、インターフェース30には、音響空間(全体
)選択ボタン81と、パーソナル音響空間選択ボタン82が表示されている。また、パーソナル音響空間ボタン82が選択された場合、パーソナル音響空間を形成するシートを選択できるように、インターフェース30には、シート選択ボタンが表示されている。
【0052】
また、図11は、インターフェース30に表示される処理選択画面の一例を示す。図11に示す処理選択画面は、音響空間選択画面においていずれかのボタンが選択されることで表示される。図11に示すように、インターフェース30には、音源定位処理ボタン83、遅延処理ボタン84、漏れ音低減処理ボタン85が各処理のイメージ画像と共に表示されている。なお、これらの処理ボタンは、複数選択してもよい。設定情報の受け付けが完了するとステップS02へ進む。
【0053】
ステップS02では、パラメータ取得部62が、ステップS01で選択された音響処理に必要なパラメータをメモリ22から取得する。なお、複数の音響処理が選択されている場合、それぞれの音響処理に必要なパラメータ(遅延処理パラメータ、定位処理パラメータ、音漏れて威厳パラメータ)を取得する(図4参照)。パラメータの取得が完了するとステップS03へ進む。
【0054】
ステップS03では、パラメータ調整部63が、パラメータ取得部62で取得したパラメータを調整し、調整したパラメータに基づいて音声を出力する。例えば、音響空間(全体)、音源定位処理が選択された場合、メモリ22から取得したこれに対応するパラメータに基づいて音源定位処理が実施された音声を所定の時間(例えば10秒間)出力する。なお、複数の音響処理が選択されている場合には、夫々別々に行ってもよく、また、同時に行ってもよい。なお、パラメータ調整部63による、パラメータを変化させながらの音声の出力開始前に、図12に示すように、スピーカ10やインターフェース30を介してこれからパラメータの調整が開始されることを通知する。これにより、聴取者は、パラメータの調整が開始されることを認識でき、聴取姿勢をとることができる。また、パラメータの調整中は、図13に示すように、パラメータが調整中である旨を表示してもよい。これにより、聴取者は、現在パラメータが調整中であることを視覚を通じて認識することができる。パラメータの調整が開始されるとステップS04へ進む。
【0055】
ステップS04では、パラメータ決定部64が、聴取者からの指示の受け付けを開始し、聴取者からの指示(本実施形態では、聴取者から発せられる声)があるか否かを判断する。パラメータ決定部64は、聴取者からの指示を受け付けた場合、ステップS05へ進む。一方、パラメータ決定部64は、聴取者からの指示を受け付けていない場合、再度ステップS03へ進む。すなわち、ステップS04における処理は、聴取者からの指示を受け付けるまで繰り返される。なお、最適パラメータが決定された場合、図14に示すように、最適パラメータが決定された旨を表示してもよい。これにより、聴取者は、最適パラメータが決定されたことを視覚を通じて認識することができる。
【0056】
ステップS05では、パラメータ決定部64が、聴取者からの指示を受け付けた時点におけるパラメータを取得し、取得したパラメータを最適パラメータとして聴取者の識別情報と関連付けてメモリ22へ記録する。例えば音源定位処理において最適パラメータとして4.1kHz(CFスピーカ)が決定される。そして、このように取得された最適パラメータに基づいて音響処理が実行され、車両空間51へ音声が出力される。
【0057】
以上説明した実施形態の音響空間制御装置100によれば、聴取者の嗜好を反映した音響空間を形成可能な音響空間制御装置において、聴取姿勢を変えることなく音響空間を形成するためのパラメータを設定することができる。
【0058】
以上、本発明の好適な実施形態を説明したが、本発明の音響空間制御装置はこれらに限
らず、可能な限りこれらの組合せを含むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】実施形態の音響空間制御装置が搭載される車両の概略図を示す。
【図2】実施形態の音響空間制御装置の概略構成を示す。
【図3】実施形態の制御部の機能ブロック図を示す。
【図4】パラメータの一例を示す。
【図5】定位処理パラメータを設定する際の根拠とされる周波数領域表示に関するグラフを示す。
【図6】時間領域表示に関するグラフを示す。
【図7】DSPの構成の一例を示す図である。
【図8】DSPを中心とした機能ブロック図を示す。
【図9】音響空間制御装置で行われる処理フローを示す。
【図10】インターフェースに表示される音響空間選択画面の一例を示す。
【図11】インターフェースに表示される処理選択画面の一例を示す。
【図12】インターフェースに表示される通知画面の一例を示す。
【図13】インターフェースに表示されるパラメータ調整中を表示する画面の一例を示す。
【図14】インターフェースに表示される最適パラメータの決定を表示する画面の一例を示す。
【符号の説明】
【0060】
1・・・再生処理ユニット
2・・・セレクタ
3・・・A/Dコンバータ
4・・・DSP
5・・・D/Aコンバータ
6・・・メインアンプ
7・・・表示部
8・・・操作部
10・・・スピーカ
20・・・制御部
23・・・マイクアンプ
24・・・マイク
61・・・選択受付部
62・・・パラメータ取得部
63・・・パラメータ調整部
64・・・最適パラメータ決定部
70・・・エラーマイク
【特許請求の範囲】
【請求項1】
空間内に配置されたスピーカから出力されるべき音信号に対して音響処理を行うことで、該空間内に聴取者が嗜好する音響空間を形成する音響空間制御装置であって、
前記音響処理を実行する際に用いる、頭部伝達関数に関するパラメータを記憶する記憶部と、
前記記憶部が記憶する前記パラメータを前記音響空間が変化するように調整するパラメータ調整部と、
前記パラメータ調整部によって調整された前記パラメータに基づく音響処理後の音信号を聴取姿勢を保持した状態で聴取する聴取者からの指示を受け付け、該指示を受け付けた際のパラメータを最適パラメータとして決定する最適パラメータ決定部と、
最適パラメータ決定部によって決定された最適パラメータに基づいて前記音響処理を行う音響処理実行部と、
を備える音響空間制御装置。
【請求項2】
前記聴取者からの指示は、該聴取者が発する音声と、該聴取者が聴取姿勢を保持した状態で操作可能な送信部から送信される電気信号と、のうち少なくともいずれか一方によって行われる、請求項1に記載の音響空間制御装置。
【請求項3】
前記パラメータは、段階的なパラメータによって構成され、
前記パラメータ調整部は、前記段階的なパラメータ同士の間の値を補間し、補間することで連続化されたパラメータに基づく調整音を前記スピーカから出力させる請求項1又は請求項2に記載の音響空間制御装置。
【請求項4】
前記音響処理は、
前記車両空間内に仮想音源を定位させる音像定位処理と、
前記スピーカから出力される、直接音、初期反射音、リバーブのうち少なくともいずれか一つを遅延させる遅延処理と、
前記音響空間の外部からの漏れ音を低減する漏れ音低減処理と、のうち少なくともいずれか一つが含まれる、請求項1から請求項3のいずれか一に記載の音響空間制御装置。
【請求項5】
前記音響空間の種類に関する情報と、前記音響処理に関する情報とのうち少なくともいずれか一つを含む設定情報を受け付ける設定情報受付部を更に備え、
前記パラメータは、前記音響処理と、前記複数のスピーカとの夫々に対応して複数設けられ、
前記調整部は、前記設定情報受付部で受け付けた設定情報に基づいて、前記複数のパラメータの中から所定のパラメータを抽出し、抽出したパラメータを調整し、調整したパラメータに基づく調整音を前記スピーカから出力させる請求項1から請求項4のいずれか一に記載の音響空間制御装置。
【請求項6】
前記音響空間は、前記空間内に設けられるパーソナル音響空間である請求項1から請求項5のいずれか一に記載の音響空間制御装置。
【請求項7】
前記所定の空間は、車両空間である、請求1から請求項6のいずれか一に記載の音響空間制御装置。
【請求項8】
空間内に複数配置されたスピーカから出力されるべき音信号に対して音響処理を行うことで、該空間内に聴取者が嗜好する音響空間を形成する音響空間制御方法であって、
前記音響処理を実行する際に用いる、頭部伝達関数に関するパラメータを記憶する記憶ステップと、
前記記憶ステップで記憶された前記パラメータを前記音響空間が変化するように調整するパラメータ調整ステップと、
前記パラメータ調整ステップによって調整された前記パラメータに基づく音響処理後の音信号を聴取姿勢を保持した状態で聴取する聴取者からの指示を受け付け、該指示を受け付けた際のパラメータを最適パラメータとして決定する最適パラメータ決定ステップと、
最適パラメータ決定ステップで決定された最適パラメータに基づいて音響処理を行う音響処理実行ステップと、
を備える音響空間制御方法。
【請求項9】
前記聴取者からの指示は、該聴取者が発する音声と、該聴取者が聴取姿勢を保持した状態で操作可能な送信部から送信される電気信号と、のうち少なくともいずれか一方によって行われる、請求項8に記載の音響空間制御方法。
【請求項1】
空間内に配置されたスピーカから出力されるべき音信号に対して音響処理を行うことで、該空間内に聴取者が嗜好する音響空間を形成する音響空間制御装置であって、
前記音響処理を実行する際に用いる、頭部伝達関数に関するパラメータを記憶する記憶部と、
前記記憶部が記憶する前記パラメータを前記音響空間が変化するように調整するパラメータ調整部と、
前記パラメータ調整部によって調整された前記パラメータに基づく音響処理後の音信号を聴取姿勢を保持した状態で聴取する聴取者からの指示を受け付け、該指示を受け付けた際のパラメータを最適パラメータとして決定する最適パラメータ決定部と、
最適パラメータ決定部によって決定された最適パラメータに基づいて前記音響処理を行う音響処理実行部と、
を備える音響空間制御装置。
【請求項2】
前記聴取者からの指示は、該聴取者が発する音声と、該聴取者が聴取姿勢を保持した状態で操作可能な送信部から送信される電気信号と、のうち少なくともいずれか一方によって行われる、請求項1に記載の音響空間制御装置。
【請求項3】
前記パラメータは、段階的なパラメータによって構成され、
前記パラメータ調整部は、前記段階的なパラメータ同士の間の値を補間し、補間することで連続化されたパラメータに基づく調整音を前記スピーカから出力させる請求項1又は請求項2に記載の音響空間制御装置。
【請求項4】
前記音響処理は、
前記車両空間内に仮想音源を定位させる音像定位処理と、
前記スピーカから出力される、直接音、初期反射音、リバーブのうち少なくともいずれか一つを遅延させる遅延処理と、
前記音響空間の外部からの漏れ音を低減する漏れ音低減処理と、のうち少なくともいずれか一つが含まれる、請求項1から請求項3のいずれか一に記載の音響空間制御装置。
【請求項5】
前記音響空間の種類に関する情報と、前記音響処理に関する情報とのうち少なくともいずれか一つを含む設定情報を受け付ける設定情報受付部を更に備え、
前記パラメータは、前記音響処理と、前記複数のスピーカとの夫々に対応して複数設けられ、
前記調整部は、前記設定情報受付部で受け付けた設定情報に基づいて、前記複数のパラメータの中から所定のパラメータを抽出し、抽出したパラメータを調整し、調整したパラメータに基づく調整音を前記スピーカから出力させる請求項1から請求項4のいずれか一に記載の音響空間制御装置。
【請求項6】
前記音響空間は、前記空間内に設けられるパーソナル音響空間である請求項1から請求項5のいずれか一に記載の音響空間制御装置。
【請求項7】
前記所定の空間は、車両空間である、請求1から請求項6のいずれか一に記載の音響空間制御装置。
【請求項8】
空間内に複数配置されたスピーカから出力されるべき音信号に対して音響処理を行うことで、該空間内に聴取者が嗜好する音響空間を形成する音響空間制御方法であって、
前記音響処理を実行する際に用いる、頭部伝達関数に関するパラメータを記憶する記憶ステップと、
前記記憶ステップで記憶された前記パラメータを前記音響空間が変化するように調整するパラメータ調整ステップと、
前記パラメータ調整ステップによって調整された前記パラメータに基づく音響処理後の音信号を聴取姿勢を保持した状態で聴取する聴取者からの指示を受け付け、該指示を受け付けた際のパラメータを最適パラメータとして決定する最適パラメータ決定ステップと、
最適パラメータ決定ステップで決定された最適パラメータに基づいて音響処理を行う音響処理実行ステップと、
を備える音響空間制御方法。
【請求項9】
前記聴取者からの指示は、該聴取者が発する音声と、該聴取者が聴取姿勢を保持した状態で操作可能な送信部から送信される電気信号と、のうち少なくともいずれか一方によって行われる、請求項8に記載の音響空間制御方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
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【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2009−147815(P2009−147815A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−325085(P2007−325085)
【出願日】平成19年12月17日(2007.12.17)
【出願人】(000237592)富士通テン株式会社 (3,383)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年12月17日(2007.12.17)
【出願人】(000237592)富士通テン株式会社 (3,383)
【Fターム(参考)】
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