説明

音響防音材料及びその製造方法

【課題】ある部屋から隣接する部屋へ、または部屋の外から中へ、若しくは部屋の中から外へと音が透過するのを防止するための壁、天井、床またはドアの能力を大幅に高める新規な層状構造及び関連する製造プロセスを提供する。
【解決手段】改善された音響減衰性壁(天井または床)あるいはドア材料は、接着剤としても働く1または複数の粘弾性材料からなる層をその一体的部分として有するとともに、プラスチック、ビニル、プラスチックまたはゴムのような石油系製品、金属、セルロース若しくは木材などの1または複数の拘束層を有する。一実施例では、標準的ウォールボード(通常石膏)が層状構造の外面を含み、1または複数の拘束層はこの石膏の外面の間に形成される。結果として得られる構造では、該構造を透過する音の減衰が改善される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は音響減衰性(acoustical damping)の材料、特に、壁、天井、床及びドアの防音特性を大幅に向上し、あるエリアから別のエリアへの音の透過を防止する新規な層状構造の防音材料に関する。
【背景技術】
【0002】
騒音は経済的問題及び公共政策的問題の両方として発生している。防音室は様々な目的で必要とされる。例えば、共同住宅、ホテル及び学校は全て、音の透過を極力抑え隣の部屋にいる人に不快感を与えないようにする壁、天井及び床を備えた部屋を必要とする。防音は、高速道路、空港、鉄道のような公共輸送設備に隣接した建物、映画館、ホームシアター、音楽練習室、レコーディングスタジオなどにおいて特に重要である。問題の深刻さを示す一つの指標は、音響透過クラス(Sound Transmission Class: STC)評価の下限を規定する建築条例が広範に生じていることである。また、容認し難い騒音について住宅所有者と建築業者との間で訴訟問題が広範に発生していることも問題の深刻さを示している。米国経済にとって不利益なことに、どちらの問題も、ある自治体において大手建築業者が住宅、マンション、アパートの建築を拒否したり、建築業者に対する責任保険の広範な解約が生じたりすることにつながっている。
【0003】
これまで壁は、通常、スタッド(studs)の両外面にドライウォール(drywall)を設けることで形成され、スタッド間にはある部屋から隣の部屋へ音が透過するのを減少させる目的でバッフル(baffles)またはプレートが配置されるのが普通であった。残念ながら、そのようなドライウォールを用いた標準的な壁は最良のものでも約30dbしか音の透過を減少させることができず、しかもその大部分は、ほとんどの苦情や訴訟の原因となっている低周波数ではなく、中域周波数及び高周波数に集中している。
【0004】
このような問題を軽減するため、様々な技法及び製品が生まれている。例えば、木製スタッドのスチールスタッドによる置き換え、ドライウォールをスタッドから離し分離するための弾性チャネル、質量荷重された(mass-loaded)ビニルバリア、セルロース遮音壁(cellulose sound-board)、セルロース及びファイバーグラス芯の遮音材、及び、互い違い梁(staggered-beam)構造や二重梁(double-beam)構造のような技法が生まれている。これらは全て騒音の透過を減らすものであるが、やはり、所与の部屋においてある種の音(例えば低周波数、高デシベル)が隣接する部屋(上や下の部屋も含む)に伝わるのを防止する程ではない。商業的に入手可能な製品を簡単に見ると、これらの技法及び技術において長年ほとんど革新がなされていないことがわかる。
【0005】
従って、所与の部屋から隣接する部屋への音の透過を減少するための新規な材料及び新規な構成方法が必要とされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明によると、ある部屋から隣接する部屋へ、または部屋の外から中へ、若しくは部屋の中から外へと音が透過するのを防止するための壁、天井、床またはドアの能力を大幅に高める新規な層状構造及び関連する製造プロセスが提供される。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この材料はいくつかの異なる材料を積層した構造を有する。一実施例によると、ドライウォールの代替となる層状構造は、金属、セルロース(例えば、木材)、あるいはビニル、複合プラスチックまたはゴムのような石油系製品からなる内部拘束層に吸音性接着剤でそれぞれ接着された選択された厚さの石膏ボードからなる2つの外部層によるサンドイッチ構造を有する。一実施例では、拘束層は選択された厚さの亜鉛めっき鋼を有し、接着剤層は特定の厚さの特別に調合されたQuietGlueという粘弾性材料からなる。2つの石膏ボードの内側面に設けられた接着剤層は各々約16分の1インチの厚さであり、亜鉛めっき鋼は0.005から0.5インチの厚さである。一例では、16分の1インチ厚さの接着剤層と30ゲージ亜鉛めっき鋼を用いて構成された4フィート×8フィートのパネルは、同じ厚さの典型的なドライウォールが約75ポンドであるのに対し、約108ポンドの重量があり、全体の厚さは約8分の5インチであり、STCは約38である。この特定の材料を用いた両面標準構造では約58のSTCが得られる。その結果、壁を透過する騒音の低減は約60dbとなるが、それに対し商業的に入手可能な標準的なドライウォールを用いた透過騒音の低減は30dbである。
【0008】
一実施例では、亜鉛めっき鋼金属層は好適には油が塗られておらず、標準的なスパックル処理(regular spackle)がなされている。その結果得られる製品は、亜鉛めっき鋼のセンターシートを含むものの、ウッドブレード(wood blades)を用いた標準的な手鋸でカットすることができる。ただし通常のドライウォールのように表面に傷をつけて割ることはできない。
【0009】
本発明の別の実施例は所定材料の付加層(additional layers)を用いており、非対象である。2つの外部石膏ボード層はそれらの表面に直に隣接してquiet glueの層を有し、それらに続いて2つの金属層があり、その後に2つの更なる接着剤層があり、そして中央に積層木材(一実施例では、合板で使用されるような積層木材の層)が配置される。この構造の仕上げ後のトータルの厚さは変動し得るが、付加された2つの金属層により通過する音が一層減衰される。
【0010】
本発明の積層シートは、一つの層から隣接する層への音の伝搬を低減する1または複数の拘束層とともに音及び振動を効果的に吸収することのできる特殊な接着剤を用いている。拘束層は金属、セルロース、プラスチック複合材、ビニルまたは他の多孔質若しくは半多孔質(semi-porous)の材料からなるものとすることができる。得られる音の減衰は、標準的なドライウォールを用いて得られるのと比べて大きく向上される。
【0011】
本発明は以下の詳細な説明と図面によってより良く理解されるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】音の透過を低減するための本発明に基づいて形成された層状構造を示している。
【図2】音の透過を大きく低減することのできる9層の材料を含む層状構造の第2実施例を示している。
【図3】図3及び図4は、音の透過を低減することのできる本発明に基づく代替的な実施例を示している。
【図4】図3及び図4は、音の透過を低減することのできる本発明に基づく代替的な実施例を示している。
【図5】本発明のいくつかの実施例における音響減衰テストの結果を示している。
【図6】本発明のいくつかの実施例における音響減衰テストの結果を示している。
【図7】本発明のいくつかの実施例における音響減衰テストの結果を示している。
【図8】本発明のいくつかの実施例における音響減衰テストの結果を示している。
【図9】本発明のいくつかの実施例における音響減衰テストの結果を示している。
【図10】本発明のいくつかの実施例における音響減衰テストの結果を示している。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下の詳細な説明は例示を意図しているのであって限定的であることを意図しているのではない。本発明の他の実施例(例えば、外部及び内部層材料の数、種類、厚さ及び配置順序)は以下の説明から当業者には自明であろう。
【0014】
このような層状パネルの形成プロセスには、多くの因子、即ち、接着剤の正確な化学組成、積層材料及び接着剤の対称的及び非対称的な様々な厚さ、加圧プロセス、乾燥及び脱湿プロセスが考慮される。
【0015】
図1は本発明の一実施例の層状構造を示している。図1において、本構造は水平に示されており、本構造の各層は上から下へと説明される。しかしながら、本発明の層状構造は垂直な壁やドアに設けられるときは垂直方向に配置され、天井や床に配置されるときは水平方向や角度をつけられて設けることができる。従って、上層から下層へと説明するのは図1のような配置においてこれらの層について説明するためであり、本発明を垂直方向に用いる場合はこの限りではない。図1において、最上層11は標準的な石膏ボードで形成され、一実施例では4分の1インチの厚さである。もちろん、所望に応じていずれの層に対しても多くの他の組み合わせ及び厚さを用いることができる。厚さは、得られる層状構造に求められる音響減衰(即ち、STC評価)及び得られる構造の重さによってのみ制限される。構造の重さにより、意図された用途のため層状構造を壁、天井、床及びドアに設置する作業員の能力が制限される。
【0016】
最上層11の石膏ボードは通常標準的な公知の技法を用いて形成され、従って石膏ボードの製造方法については説明しない。次に、石膏ボード11の下には「QGquiet glue(商標)」と呼ばれる接着剤層12が設けられている。接着剤12は特殊な粘弾性ポリマーから形成され、周囲の層により拘束された接着剤に衝当した音のエネルギーを効果的に吸収し、広い周波数スペクトルに渡って音の振幅を低減し、それによって得られる層状構造を透過する音のエネルギーを低減する特性を有する。通常、この接着剤は表1に示した材料で形成されるが、表1の下に示した特性を有する他の接着剤を本発明において用いることもできる。
【0017】
【表1】

【0018】
QuietGlueの物理的な固体状態の特性には以下が含まれる:
1)室温より低い広いガラス転位温度
2)ゴムに典型的な機械的応答(即ち、破断時の高伸張、低弾性率)
3)室温における高い剥離強度
4)室温における低い剪断強さ
5)有機溶剤(例えば、テトラヒドロフラン、メタノール)中での膨張
6)水に溶けない(わずかに膨張)
7)ドライアイスの温度において容易に基体(substrate)から剥離
【0019】
接着剤層12の下には金属層13がある。金属層13は、一実施例では、0.13インチの厚さの30ゲージ亜鉛めっき鋼からなる。もちろん、所望であれば他ゲージの亜鉛めっき鋼あるいは他の材料を用いることもできる。例えば、所望ならばアルミニウムを用いることもでき、超軽量チタンのシートやアルミニウムとチタンの積層を含む金属の積層のような特殊金属を用いることもできる。重要なのは亜鉛めっき鋼は、使用される場合、油が塗られておらず(non-oiled)且つ標準的なスパックル処理(regular spackle)がなされているということである。油が塗られていないことは、QuietGlue層が金属層13の上面に確実に接着し且つ金属層13の下面の隣接するQuietGlue層14が金属層13の下面に確実に接着するのに必要である。標準的なスパックル処理によって、金属がその全面に渡って均一な特性を有することが保証される。
【0020】
次に、接着剤層14が金属層13の下面に被覆範囲及び厚みに関して慎重に制御されて配置される。接着剤層14はやはり音を吸収する粘弾性材料からなり、通常、接着剤層12と同じ材料である。最後に、石膏ボード層15が構造の最下層に配置され、均一な圧力(ポンド/平方インチ)、温度及び時間について制御されて慎重に圧力が加えられる。
【0021】
最後に、パネルを乾燥させるため、得られたアセンブリは通常48時間脱湿及び乾燥される。
【0022】
通常、ただし常にではないが、得られる層状構造が火災規定(fire codes)に合致するように、石膏ボード層11及び15は収縮を低減するための繊維を含む。典型的な火災規定では、壁構造は1時間は炎に耐え得ることが必要とされる。外側の石膏ボード層及び金属コアは、得られる層状構造が少なくとも1時間、構造によっては4時間程度火災に耐えられ、それにより通常の火災規定を満たし得るようにすることが意図されている。
【0023】
典型的には30ゲージ鋼板からなる金属層13(しかし求められるSTC、重量及び厚さに応じて、10ゲージから40ゲージの範囲に渡る、他の金属とすることもできる)は、概ね名刺程度の厚さである。重要なのは、組立前において、この金属に折り目(creased)がついていないことである。なぜなら折り目があると金属が音の透過の低減に果たす能力が損なわれるからである。本層状構造では、完全に平坦で損傷のない金属板のみが使用され得る。
【0024】
別の実施例では、鋼板13は質量荷重されたビニル(mass-loaded vinyl)や同様の製品で置き換えられる。しかしながら、鋼板はビニルよりもずっと変形しずらい(less forgiveness)ので、拘束層としてビニルよりも高い性能を発揮し得る。しかしながら、他のカットしやすさなどの理由のため、所望ならばビニルを鋼板の代わりに層状構造において用いてもよい。セルロース、木材、石膏、プラスチックまたは他の拘束材料をビニルまたは金属の代わりに用いることもできる。代替材料は任意の種類、任意の適切な厚さとすることができる。
【0025】
結果として得られる構造はウッドブレードを有する標準的な木材用鋸でカットすることができる。
【0026】
図2は本発明の第2の実施例を示している。石膏ボードからなる2つの外部層21及び29は、それらの内側面が好適には図1の接着剤12のような粘弾性ポリマーから形成されたQuietGlue層22及び28によりそれぞれコーティングされている。このような粘弾性ポリマーは音の音響エネルギーに応答して変形することにより音響エネルギーを吸収することができる。QuietGlueの内側面には2つのシート金属層23及び27が設けられている。通常、これらのシート金属層23及び27は各々亜鉛めっき鋼である。一実施例では、亜鉛めっき鋼は30ゲージであり、0.013インチの厚さを有するが、所望に応じて、他の厚さの鋼板または他の材料とすることもできる。鋼板層23及び27の内側面は、接着剤層22及び28と同じ種類の粘弾性材料からなる、quiet glueの付加層24及び26によって覆われている。そしてこの構造の中央部は合板で広く用いられているようなパイン材積層板25により形成されている。一実施例では、このパイン材積層板は10分の1インチの厚さであるが、MDFまたは他の木材タイプとすることもできる。
【0027】
ここでもまた、亜鉛めっき鋼は図1の実施例に関連して上記した理由により油が塗られておらず且つ標準的なスパックル処理がされている。接着剤層は全て吸音能力を有する粘弾性材料である。得られる製品は約8分の7インチの厚さを有し、重さは4×8セクション当たり約148ポンドである。得られた材料の単独のSTCは42であり、これにより両面標準構造のSTCの値として62が得られる。鋼板層は組立前において折り目がないことが好ましい。鋼板に折り目があるとその意図された目的が達成できなくなる恐れがある。損傷のない完全に平坦な鋼板を用いることが最適な結果を得るのに必要である。ここでもまた、得られる構造はウッドブレードを用いた標準的な動力鋸でカットすることができる。木材からなる内部層25は一実施例ではカリフォルニア州、ロックリン(Rocklin)で入手可能なSierra pine社の10分の1インチ厚のMDFからなる(http://www.sierrapine.com)。
【0028】
図1及び2の構造の製造においては、まず接着剤が通常16分の1インチの厚さで(ただし所望に応じて他の厚さとしてもよい)石膏ボード上に所定の態様でローラーで塗られ、続いて鋼板が接着剤上に置かれる。接着剤が水性である場合、採用される乾燥及び脱湿技法に応じて、接着剤が完全に乾くのに10〜30時間を要する。溶液型の粘弾性接着剤を代わりに用いることもできる。その結果得られる構造は各アセンブリの固有の要求に応じて約2乃至5ポンド/平方インチの圧力の下で所定の態様で乾燥される。所望により他の圧力を用いてもよい。図2の実施例を形成するため、石膏ボード−接着剤−金属層構造の各々の金属が露出した面に付加接着剤層が約16分の1インチの厚さにローラによって塗布され、続いて薄いパイン木材層が、既に形成された石膏−接着剤−金属シート上の2つの接着剤層の間に配置される。その結果得られる構造はプレス機に設置され、1乃至5ポンド/平方インチの圧力が加えられて、48時間までの所定の時間乾燥される。
【0029】
図3は本発明の音響防音材料の別の実施例を示している。図3において、石膏ボード30及び34からなる2つの外部層はそれらの内側面に接着剤層31及び33をそれぞれ有している。これら2つの接着剤層31及び33の間には、ビニルからなる拘束材料32が配置されている。このビニルは質量荷重されており、一実施例では、1ポンド/平方フィートまたはそれ以上であり、ミネソタ州ミネアポリスのTechnifoam社を含む多くのメーカから入手可能である。石膏ボードからなる外部層30及び34がそれぞれ8分の5インチの厚さであり、粘弾性QuietGlue層31及び33がそれぞれ約16分の1インチの厚さであり、質量荷重されたビニルが約32分の1インチの厚さである場合、この構造の総重量は4×8フィートセクション当たり約190ポンドとなる。この材料の仕上げ後のトータルの厚さは、ビニルの厚さ及び粘弾性QuietGlue層31及び33の実際の厚さに依存して1.3乃至15.インチとなる。
【0030】
図3の実施例は標準的なドライウォールのように刻みをつけることはできず、木材用鋸を用いてカットしなければならない。図3の防音材料を実際にカットするのには通常の木材用鋸刃で十分である。
【0031】
図4は本発明の防音材料の更なる実施例を示している。この実施例では、2つの外部層35及び39は8分の5インチの合板であり、それらの内面にquiet glueの層36及び38をそれぞれ有している。QuietGlueの間には質量荷重されたビニル37の層が設けられている。図4の構造は床や他の通常木材が用いられるような建築エリアに用いることが意図されている。一実施例では合板シート35及び39はそれぞれ通常8分の5インチの厚さである。この実施例では、QuietGlue層36及び38は各々約16分の1インチの厚さであり(ただし所望ならば他の厚さも用いることができる)、質量荷重されたビニル37は通常16分の1乃至4分の1インチの厚さである。質量荷重されたビニルが8分の1インチの厚さのとき、図4の構造のトータルの厚さは約1.5インチとなる。ビニルが16分の1インチの厚さの場合、トータルの厚さは約1.4インチとなる。
【0032】
図3の構造単独では38のSTCを有し、図4の構造は36のSTCを有する。図1及び2の構造はそれぞれ37及び38のSTCを有する。
【0033】
QuietGlueが不均一に塗布されていたり上記した防音材料のシートの端部に空隙が残っていたりするとSTC評価が数db下がり得る。更に、これらの材料で形成された壁、床、天井あるいはドアの防音特性を改善するには、シートの端及び角まで全体に渡って接着剤を均一に塗布しなければならない。上記したパネルはいずれも通常のドライウォールのように刻み目をつけることはできない。これらのパネルは鋸刃(通常、木材用鋸刃)を用いてカットしなければならない。
【0034】
上記した音響透過クラスの数値は基本的には建築の分野でパーティション、ドア及び窓をそれらの防音特性を評価するのに用いられる数値である。STCテストの結果特定のパーティションに割り当てられる数値は、音響透過クラスを定める複数の曲線のセットに対するベストフィット型アプローチを表している。テストはそれをテスト環境から独立したものとしパーティションについてのみの数値を与えるようになされる。このようなSTC測定法は、3分の1オクターブ幅で得られる音響測定に対するASTM E90実験室テスト、及び各パーティションにおける音響透過損失から“STC”(音響透過クラス)の数値を計算するためのASTM E413によって定められ、これらの基準は、http://www.astm.orgにおいてインターネットで入手可能である。
【0035】
本発明の防音材料に対する透過損失を周波数の関数としてデシベルで示したデータが図5、6、7、8、9及び10に記載されている。図5は、図3に示したようなQuiet Rock Ultraをスタッドの両側に配し遮音材(insulation)を用いない標準的な2×4構造を示している。デシベルで表した透過損失は63Hzにおける25dbから4、000Hzにおける約58dbまで変化している。
【0036】
オクターブ幅の中心周波数は表において2行に渡って示されている。各行の一番上のラインには3分の1オクターブ幅の中心周波数が示されている。水平方向に区分けされた数値の第2行はトータル値を示しており、3つめの数値のセットは不足db値の95%信頼係数を示している。EWR及びOITCはそれぞれ“External Wall Rating”、“Outdoor-Indoor Transmission Class”を表しており、透過損失を測定する他の方法を示している。最終的な音響透過クラスの数値は右下角においてSTCという表記の下に示されている。図3に示したタイプの2つのパネルを標準的な2インチ×4インチの木製スタッド構造の両面に使用したものでは、STCは54となっている。
【0037】
当業者には知られているように、標準的な2×4構造の両面に標準的な8分の5インチのドライウォールを用いた同様の構造のSTCは34である。従って、本発明はこの特定の構成において標準的なドライウォールに対しSTCを20ポイント改善している。
【0038】
カナダの国家研究会議(National Research Council:NRC)は、多くの他の構造(例えば、弾性チャネルのような様々なアイソレータや、遮音壁、セルロース及びファイバーグラス芯のような遮音充填材とともに木製及びスチールスタッドを標準的な互い違い梁または二重梁構造で用いたもの)のSTC評価を文書化している。本発明に対しても同様のテストを行った。
【0039】
図3に示したタイプのパネルを単独で用いる場合、図6の右下角に示すように、STCは38である。従って、図1に示したタイプのパネルを単独で使用するのは、図5に示したように2×4スタッドの両面に2つのパネルを用いる場合よりも音の透過を減少させる上で効果が小さい。
【0040】
図4に示した構造を標準的な2×4構造の両面に用いる場合、図7に示すようにSTCは49である。このことは、図4に示した木材構造は、ビニルの内部層と石膏ボードの外部層を有する図3に示した構造に比べると音の透過の低減において効果が小さいが、いずれも標準的な材料に比べて大きく改善されていることを示している。
【0041】
図8は図4の木材構造を2×4スタッドに単独で用いた場合(遮音材なし)、STCが49となることを示しており、これは同様の構成で図3の構造で得られるSTC評価より低い。当業者には知られているように、標準的な合板を両面に有する同様の壁のSTC評価は29である。従って、標準的な木材に対して大幅な改善がなされることが示されている。
【0042】
図4の構造を遮音材なしに標準的な2×4構造の一面に用いた場合、図9のグラフに示すように、STCが43となった。これは標準的な合板に対し音響減衰特性の大幅な改善であるが、図85に示したような標準的な2×4構造においてスタッドの両面に図4の構造を用いた場合ほどよくはない。最後に、図4の構造を単独で用いた場合、図10に示すようにSTCは36となったが、これは同様の構成における図3の構造に対するSTCである38(図6)よりも低い。
【0043】
このように、本発明の層状構造はそれに関連する音響透過クラスの数値において大幅な改善を示し、ある部屋から隣接した部屋へと透過する音を大幅に減少させる。
【0044】
本発明の別の実施例は非対称的であり、比較的厚い材料の層の一面に粘弾性接着剤が配置され、粘弾性接着剤上に、第1の材料層に比べて薄い材料の層が配置される。この薄い材料層は、金属またはビニルまたはゴムまたは他の適切な薄い材料のような拘束層とすることができる。この構造は音響減衰効果を有するが、図1乃至4に記載した構造よりも軽く取り扱いやすい。このような構造は、例えば、図1に示した構造の層11、12及び13により形成することができる。
【0045】
本発明の層状構造の各材料に対して与えた寸法は、コスト、全体的な厚さ、重量及びSTC値を制御するのに必要に応じて変えることができる。記載した実施例及びそれらの寸法は単に例示を目的としたものであって限定的なものではない。
【0046】
本発明の他の実施例は上記記載から明らかであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
層状構造の形成方法であって、
2つの面を有する第1の材料からなる層を提供する過程と、
前記第1の材料からなる層の一面に粘弾性接着剤からなる層を配置する過程と、
前記粘弾性接着剤上に第2の材料からなる層を配置する過程と、
前記第2の材料からなる層を前記粘弾性接着剤の層及び前記第1の材料からなる層に選択された時間押し付ける過程と、
前記第2の材料からなる層、前記第1の材料からなる層、及び前記粘弾性接着剤を乾燥させる過程とを有することを特徴とする方法。
【請求項2】
所定の材料からなる内部層または選択された複数の材料からなる複数の層を提供する過程と、
請求項1の過程を用いて形成される2以上の層状構造の内面となるべき各面上に粘弾性接着剤からなる層を形成する過程と、
2以上の内面となるべき面が前記内部層または前記複数の層に隣接するように2以上の層状構造を配置する過程と、
上記過程によって形成された複合構造を所定時間、所定圧力で加圧する過程と、
前記加圧された複合構造を乾燥させる過程とを有することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1の材料が金属層を含み、前記第2の材料が石膏層を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記内部層が任意の木材のようなセルロース系の層を含むことを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記セルロース系の層が木材であることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記内部層が、ビニル、プラスチック複合材及びゴムからなる群から選択された層を含むことを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項7】
前記内部層が、亜鉛めっき鋼、ステンレス鋼、アルミニウム、チタニウム、及び2以上の金属の複合材からなる群から選択された金属層を含むことを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項8】
前記金属層が亜鉛めっき鋼を含むことを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項9】
層状構造の形成方法であって、
2つの面を有する第1の材料からなる層を提供する過程と、
前記第1の材料からなる層の一面に粘弾性接着剤からなる層を配置する過程と、
前記粘弾性接着剤上に、前記第1の材料の100分の1から2分の1の厚さの第2の材料からなる層を配置する過程と、
前記第2の材料からなる層を前記粘弾性接着剤の層及び前記第1の材料に選択された時間押し付ける過程と、
前記第2の材料からなる層、前記第1の材料からなる層、及び前記粘弾性接着剤を乾燥させる過程とを有することを特徴とする方法。
【請求項10】
前記第1の材料が石膏層を含み、前記第2の材料が金属層を含むことを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記第1の材料が石膏層を含み、前記第2の材料がプラスチック及びプラスチック複合材層からなる群から選択された層を含むことを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記第1の材料が石膏層を含み、前記第2の材料がビニル及びゴムからなる群から選択された層を含むことを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項13】
前記第1の材料が石膏層を含み、前記第2の材料がセルロース系材料及び木材からなる群から選択された層を含むことを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項14】
前記第1の材料がセルロース系材料及び木材からなる群から選択された層を含み、前記第2の材料が金属を含むことを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項15】
前記第1の材料がセルロース系材料及び木材層からなる群から選択された材料を含み、前記第2の材料が石油系プラスチック複合材及び石油系ゴム層からなる材料の群から選択された材料を含むことを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項16】
前記第1の材料がセルロース系材料及び木材からなる群から選択された層を含み、前記第2の材料が石油系プラスチック複合材、ビニル及びゴムからなる群から選択された層を含むことを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項17】
層状構造の形成方法であって、
2つの面を有する第1の材料からなる層を提供する過程と、
前記第1の材料からなる層の一面に粘弾性接着剤からなる層を配置する過程と、
前記粘弾性接着剤上に第2の材料からなる層を配置する過程と、
前記第2の材料からなる層を前記粘弾性接着剤の層及び前記第1の材料に選択された時間押し付ける過程と、
前記第2の材料からなる層、前記第1の材料からなる層、及び前記粘弾性接着剤を乾燥させる過程とを有することを特徴とする方法。
【請求項18】
前記2つの外部層が対称的であり、全く同じタイプの材料から形成され、全く同じ密度及び厚さを有することを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記2つの外部層が非対称であり、全く同じタイプの材料以外の材料からなり、全く同じ密度及び厚さ以外の密度及び厚さを有していることを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記2以上の内部層が対称的であり、全く同じタイプの材料から形成され、全く同じ密度及び厚さを有することを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項21】
前記2以上の内部層が非対称であり、全く同じタイプの材料以外の材料からなり、全く同じ密度及び厚さ以外の密度及び厚さを有していることを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項22】
層状の吸音構造であって、
2つの面を有する第1の材料からなる層と、
前記第1の材料からなる層の一面上に設けられた粘弾性接着剤からなる層と、
前記粘弾性接着剤上に設けられた第2の材料からなる層とを有することを特徴とする構造。
【請求項23】
前記第2の材料からなる層が前記第1の材料の10分の1から2分の1の厚さであることを特徴とする請求項22に記載の層状吸音構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−257086(P2009−257086A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−185945(P2009−185945)
【出願日】平成21年8月10日(2009.8.10)
【分割の表示】特願2006−525373(P2006−525373)の分割
【原出願日】平成16年8月27日(2004.8.27)
【出願人】(506078334)シリアス・マテリアルズ・インコーポレイテッド (6)
【出願人】(306038628)
【氏名又は名称原語表記】SURACE, Kevin J.
【住所又は居所原語表記】726 Pierino Avenue, Sunnyvale, California 94086, U.S.A.
【出願人】(306038639)
【氏名又は名称原語表記】PORAT, Marc U.
【住所又は居所原語表記】1390 Beverly Estates Drive, Beverly Hills, California 90210, U.S.A.
【Fターム(参考)】