説明

頭付棒状部品供給装置、及び時計の製造方法

【課題】 頭付棒状部品が確実に整列させ、頭付棒状部品の詰まりを防止することができる頭付棒状部品供給装置を提供するとともに、生産性を向上させることができる時計の製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】 頭付棒状部品Xが収容されたホッパと、ホッパ内の頭付棒状部品Xをかき上げる上下揺動可能なかき上げ部材4と、かき上げ部材4から移送された頭付棒状部品Xを搬送するシュートと、を備える頭付棒状部品供給装置において、かき上げ部材4には、直線的に延在する断面視略L字形の切欠部43が形成されており、かき上げ部材4を上方へ揺動させることで、ホッパ内の頭付棒状部品Xの棒部が切欠部43に嵌め込まれるとともに頭付棒状部品Xの頭部が切欠部43の上端に引っ掛けられ、頭付棒状部品Xが切欠部43に沿って整列した状態でかき上げられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ネジ等の頭付棒状部品を整列させた状態で供給する頭付棒状部品供給装置、及びその頭付棒状部品供給装置を用いた時計の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、上記した頭付棒状部品供給装置として、例えば下記の特許文献1に記載されているように、多数の頭付棒状部品が収容されたホッパ内でかき上げ部材を上下揺動させることで頭付棒状部品をかき上げて、その頭付棒状部材をシュートに移送して搬送する構成が知られている。上記したかき上げ部材には溝部が形成されており、かき上げ部材で頭付棒状部品をかき上げたとき、頭付棒状部品の棒部が上記した溝部の中に挿入されるとともに頭付棒状部品の頭部が溝部の上端に引っ掛かり、頭付棒状部品が溝部に沿って整列した状態でかき上げられる。そして、これらの頭付棒状部品は、溝部をシュートに向けて傾けることでシュートに流し込まれるように移送され、シュートによって搬送される。
【特許文献1】特開平7−285647号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記した従来の頭付棒状部品供給装置では、シュート上に配置された頭付棒状部品のうち、不整列の頭付棒状部品をエアで吹き飛ばす構成になっているが、この技術では、不整列の頭付棒状部品を確実に排除することができないという問題がある。このため、不整列の頭付棒状部品が排除されなかった場合には、シュートとその上方に配設されたトップアジャスタとの間に不整列の頭付棒状部品が噛み込まれて詰まるという不具合が生じる。したがって、上記した従来の頭付棒状部品供給装置を用いて時計を製造すると、頭付棒状部品供給装置において頭付棒状部品の詰まりが生じる度に製造ラインを停止しなければならず、生産性が低下するという問題が生じる。
【0004】
本発明は、上記した従来の問題が考慮されたものであり、頭付棒状部品が確実に整列させ、頭付棒状部品の詰まりを防止することができる頭付棒状部品供給装置を提供することを目的としている。さらに、本発明は、頭付棒状部品供給装置における頭付棒状部品の詰まりを防止して生産性を向上させることができる時計の製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る頭付棒状部品供給装置は、頭付棒状部品が収容されたホッパと、該ホッパ内の前記頭付棒状部品をかき上げる上下揺動可能なかき上げ部材と、該かき上げ部材から移送された前記頭付棒状部品を搬送するシュートと、を備える頭付棒状部品供給装置において、前記かき上げ部材には、直線的に延在する断面視略L字形の切欠部が形成されており、前記かき上げ部材を上方へ揺動させることで、前記ホッパ内の前記頭付棒状部品の棒部が前記切欠部に嵌め込まれるとともに前記頭付棒状部品の頭部が前記切欠部の上端に引っ掛けられ、前記頭付棒状部品が前記切欠部に沿って整列した状態でかき上げられることを特徴としている。
このような特徴により、切欠部に不整列な状態で引っ掛けられた頭付棒状部品は不安定になるため落下し易い。したがって、かき上げ部材で頭付棒状部品をかき上げる際、不整列の頭付棒状部品が切欠部から落下して排除され、切欠部には良姿勢(棒部が切欠部に嵌め込まれるとともに頭部が切欠部の上端に引っ掛けられた状態)の頭付棒状部品が切欠部に残ってかき上げられる。
【0006】
また、本発明に係る頭付棒状部品供給装置は、前記切欠部が、仮想鉛直面に対して傾けて形成されており、前記棒部の先端面が載置される前記切欠部の底面は、該切欠部の入隅部から該切欠部の下側の出隅部側に向かうに従い上向きに傾斜され、前記棒部の外周面が当接される前記切欠部の側面は、前記底面に対して垂直に形成されていることが好ましい。
これにより、かき上げ部材で頭付棒状部品をかき上げる際、良姿勢の頭付棒状部品が一層落下しにくくなり、より多くの頭付棒状部品が切欠部に整列した状態でかき上げられる。
【0007】
また、本発明に係る頭付棒状部品供給装置は、少なくとも前記かき上げ部材を振動させる振動手段が備えられていることが好ましい。
これにより、かき上げ部材で頭付棒状部品をかき上げた際、振動手段によってかき上げ部材を振動させることにより、かき上げ部材の切欠部に不整列な状態で引っ掛かった頭付棒状部品は、かき上げ部材から外れてホッパ内に落下する。すなわち、不整列の頭付棒状部品が切欠部から効率良く落下し、不整列の頭付棒状部品が切欠部に更に残りにくくなる。
【0008】
また、前記頭付棒状部品供給装置は、前記かき上げ部材の揺動を一時停止させることが可能であり、該かき上げ部材が一時停止している間に該かき上げ部材に振動が与えられることが好ましい。
これにより、振動手段によってかき上げ部材を振動させる際、一時停止された状態でかき上げ部材に振動が与えられる。
【0009】
さらに、前記頭付棒状部品供給装置は、前記かき上げ部材が、前記切欠部が水平に延在する位置で一時停止されることが好ましい。
これにより、振動手段によってかき上げ部材を振動させる際、切欠部が水平に延在する状態でかき上げ部材に振動が与えられる。
【0010】
また、本発明に係る時計の製造方法は、上記した頭付棒状部品供給装置を用いて時計部品を供給して該時計部品の組み立てを行って時計を製造することを特徴としている。
このような特徴により、頭付棒状部品が整列された状態で搬送され、頭付棒状部品の供給時における詰まりが防止される。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る頭付棒状部品供給装置によれば、不整列の頭付棒状部品が落下し易い切欠部によって頭付棒状部品をかき上げることにより、不整列の頭付棒状部品が排除され、良姿勢の頭付棒状部品が切欠部に残るので、頭付棒状部品を確実に整列させることができ、頭付棒状部品の詰まりを防止することができる。
また、本発明に係る時計の製造方法によれば、頭付棒状部品供給装置における頭付棒状部品の詰まりが防止されるので、時計の生産性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明に係る頭付棒状部品供給装置、及び時計の製造方法の実施の形態について、図面に基いて説明する。
【0013】
[頭付棒状部品供給装置]
まず、本発明に係る頭付棒状部品供給装置の実施の形態について説明する。
図1は、本実施の形態における頭付棒状部品供給装置1を模式的に表した断面図であり、図2及び図3は、後述するかき上げ板4の上端部の断面図であり、図4及び図5は頭付棒状部品供給装置1の動作を表した模式的な断面図である。
なお、図2は後述する切欠部43に良姿勢(整列状態)の頭付棒状部品Xが引っ掛けられた状態を示しており、図3(a)〜図3(d)は後述する切欠部43に不整列の頭付棒状部品Xが引っ掛けられた状態を示している。
【0014】
図1に示すように、頭付棒状部品供給装置1は、ネジやピン、軸材、歯車等の頭付棒状部品Xを整列させた状態で供給するフィーダであり、その概略構成としては、基台2と、ホッパ3と、かき上げ板4(本発明におけるかき上げ部材に相当する。)と、シュート5と、振動体6(本発明における振動手段に相当する。)と、揺動機構7と、を備えている。
【0015】
ホッパ3は、上面が開放された箱体であり、基台2の上部に設けられている。このホッパ3の内部には、多数の頭付棒状部品Xがバラ状態で収容されている。ホッパ3の底部には、かき上げ板4が挿通される開口3aが形成されており、また、ホッパ3の側部には、シュート5が挿通される開口3bが形成されている。
【0016】
かき上げ板4は、ホッパ3内の頭付棒状部品Xをかき上げるための部材であり、アーム40の先端部に扇状の板部41が設けられた構成からなる。このかき上げ板4は、基台2に取り付けられており、仮想鉛直面S(図2に示す。)に沿って揺動可能、つまり水平軸周りに回転可能に設けられている。詳しく説明すると、アーム40の基端部が、基台2に取り付けられた回転軸42により軸支されており、この回転軸42を中心にしてアーム40が鉛直面に沿って回転可能になっている。また、板部41は、アーム40の先端部に突設されており、上記したホッパ3の底部の開口3a内に挿通されている。
【0017】
上記した板部41の先端部には、切欠部43が形成されている。この切欠部43は、図2に示すように、板部41の先端部を断面視略L字形に切り欠いて段状に形成されている。詳しく説明すると、切欠部43は、頭付棒状部品Xの棒部の先端面が載置される底面43aと、この底面43aの一方側(図2における右側)の端部から立設されて頭付棒状部品Xの棒部の外周面が当接される側面43bと、から形成されている。また、切欠部43は、かき上げ板4の回転面に沿って直線的に延在されており、切欠部43の延在方向の両端はそれぞれ開放されている。切欠部43の内側に頭付棒状部品Xの棒部が嵌め込まれるとともに、切欠部43の上端(上側の出隅部43e)に頭付棒状部品Xの頭部が引っ掛けられることで、複数の頭付棒状部品Xが切欠部43に沿って整列した状態でかき上げられる。
【0018】
また、上記した切欠部43は、上記した仮想鉛直面Sに対して傾けて形成されている。具体的に説明すると、上記底面43aは、切欠部43の入隅部43c(一方側)から切欠部43の下側の出隅部43d側(他方側)に向かうに従い上向きに傾斜されている。また、上記側面43bは、上記のように傾斜した底面43aに対して垂直に形成されている。すなわち、上方に向かうに従い一方側(図2における右側)に傾斜されている。なお、切欠部43の傾斜角度θは、10°≦θ≦25°の範囲内に設定することが好ましく、本実施の形態では、傾斜角度θが15°に設定されている。
【0019】
シュート5は、かき上げ板4から移送された頭付棒状部品Xを吊り下げ状態で搬送するためのものであり、その上面には直線的な溝部50が形成されている。この溝部50の内側に頭付棒状部品Xの棒部が挿入されるとともに、溝部50の上端に頭付棒状部品Xの頭部が引っ掛けられることで、頭付棒状部品Xが溝部50に沿って整列した状態で搬送される。また、シュート5の上流側(図1における右側)の端部は、ホッパ3の側部の開口3bからホッパ3の内側に差し込まれており、かき上げ板4が上昇した際に、シュート5の溝部50がかき上げ板4の切欠部43に連続する位置に配設されている。また、シュート5は略水平に配置されており、このシュート5に吊り上げられた頭付棒状部品Xは、シュート5を図示せぬ振動手段によって振動させることで下流側へ搬送される。
【0020】
振動体6は、かき上げ板4を振動させるためのものであり、基台2の下に設置されている。かき上げ板4及びホッパ3は、基台2と一体的に設けられているため、基台2を振動させることで、その振動がかき上げ板4やホッパ3に伝達される。一方、シュート5は、基台2やホッパ3等と切り離されているため、振動体6による基台2の振動はシュート5に伝達されない。なお、振動体6としは、公知の振動体を用いることが可能であり、例えば、モータの回転軸に重りを偏心させた状態で取り付け、この重りをモータにより回転させることで振動を発生させる構造のものを用いることができる。
【0021】
揺動機構7は、かき上げ板4を水平軸周りに揺動させるための機構であり、例えば、モータ等の駆動源と、駆動源の動力をかき上げ板4のアーム40に伝達するリンクと、を備えた構成からなる。この揺動機構7には、一時停止機能が備えられており、かき上げ板4の切欠部43が水平に延在する位置(以下、水平位置と記す。)でかき上げ板4の揺動が一時停止される。具体的に説明すると、ホッパ3の内面には、かき上げ板4の位置を検出するセンサ8が備えられており、このセンサ8によってかき上げ板4が水平位置になったことを検知する。このセンサ8は、振動体6の駆動源や揺動機構7の駆動源を制御する図示せぬ制御手段(制御盤)に電気的に接続されている。センサ8としては、公知のセンサを用いることができ、例えば光センサ等を用いることができる。
【0022】
次に、上記した構成からなる頭付棒状部品供給装置1の作用について説明する。
【0023】
まず、図1に示すように、図示せぬ制御手段を操作して揺動機構7の駆動源を稼動させ、かき上げ板4が上方へ揺動させる。これにより、ホッパ3内に収容された頭付棒状部品Xがかき上げられる。詳しく説明すると、頭付棒状部品Xの棒部がかき上げ板4の切欠部43内に嵌め込まれるとともに頭付棒状部品Xの頭部が切欠部43の上端に引っ掛けられ、頭付棒状部品Xがかき上げ板4の上端部に載せられた状態で保持される。
【0024】
このとき、切欠部43に不整列な状態で引っ掛けられた頭付棒状部品X´は不安定になるため切欠部43から落下する。上記した「不整列な状態」の具体例としては、例えば、図3(a)に示すように、頭付棒状部品X´の頭部の外周面が切欠部43の底面43aに載置されて棒部が側方に突出した状態や、図3(b)に示すように、頭付棒状部品X´が横向きの状態で切欠部43の上端(上側の出隅部43e)に載せられて棒部が側方に突出した状態や、図3(c)に示すように、頭付棒状部品X´の頭部が切欠部43の下側の出隅部43dに引っ掛かった状態や、図3(d)に示すように、頭付棒状部品X´が切欠部43の延在方向と平行に配置され、頭付棒状部品X´の頭部の外周面が切欠部43の底面43a(下側の出隅部43d)に載置されるとともに切欠部43の側面43bに当接された状態、などが考えられる。上記した図3(a)〜図3(d)のいずれの状態であっても、頭付棒状部品X´は不安定になるため、切欠部43から落下する。
【0025】
続いて、図4に示すように、かき上げ板4が水平位置になると、センサ8が図示せぬ制御手段に電気信号を送信する。この電気信号を上記制御手段が受信すると、当該制御手段から揺動機構7の駆動源及び振動体6の駆動源にそれぞれ電気信号が送信され、揺動機構7の駆動源が一定時間だけ停止してかき上げ板4の揺動が一時停止するとともに、振動体6の駆動源が一定時間だけ稼動して振動体6が振動する。振動体6の振動は基台2を介してかき上げ板4に伝達されるため、かき上げ板4は、水平位置で一時停止した状態で振動する。これにより、万一、かき上げ板4の上端(切欠部43)に不整列の頭付棒状部品X´が残っていたとしても、その頭付棒状部品X´はかき上げ部材4の切欠部43から振るい落とされて排除される。その結果、棒部が切欠部43内に嵌め込まれて頭部が切欠部43の上端に引っ掛けられた良姿勢の頭付棒状部品Xだけが切欠部43上に残り、頭付棒状部品Xが切欠部43に沿って整列した状態で並べられる。
【0026】
特に、上記した頭付棒状部品供給装置1では、切欠部43が仮想鉛直面Sに対して傾けて形成されているため、図2に示すように、良姿勢の頭付棒状部品Xは落下しにくく、切欠部43には、多くの頭付棒状部品Xが整列される。
【0027】
次に、図5に示すように、図示せぬ制御手段から揺動機構7の駆動源及び振動体6の駆動源にそれぞれ電気信号が送信され、揺動機構7の駆動源が再稼動してかき上げ板4が再び上方へ揺動するとともに、振動体6の駆動源が停止して振動体6の振動が停止する。これにより、かき上げ板4は、その切欠部43が傾斜してシュート5の溝部50に連続する位置まで揺動する。その結果、かき上げ板4の切欠部43に載せられた頭付棒状部品Xが、下流側(図3における左側)から順次、切欠部43に沿って滑り落ちるようにシュート5の溝部50に移送される。そして、シュート5に移送された頭付棒状部品Xは、図示せぬ振動手段によってシュート5が振動することで、シュート5の溝部50に沿って下流側へ搬送されて供給される。
【0028】
上記した頭付棒状部品供給装置1によれば、不整列の頭付棒状部品X´が落下し易い切欠部43によって頭付棒状部品Xをかき上げることにより、不整列の頭付棒状部品X´が排除され、良姿勢の頭付棒状部品Xが切欠部43に残るので、頭付棒状部品Xを確実に整列させることができる。これにより、シュート5による搬送時における頭付棒状部品Xの詰まりを防止することができる。
【0029】
また、切欠部43が仮想鉛直面Sに対して傾けて形成されており、この切欠部43には、良姿勢の頭付棒状部品Xが多数整列されるので、頭付棒状部品Xのかき上げ作業が効率的に行われ、シュート5に十分な数量の頭付棒状部品Xを移送させることができる。これにより、頭付棒状部品供給装置1による頭付棒状部品Xの供給量を十分に確保することができる。
【0030】
また、振動体6によってかき上げ板4を振動させることで、切欠部43に残った不整列の頭付棒状部品X´を振るい落として排除することができるので、かき上げ板4の切欠部43に頭付棒状部品Xをより一層確実に整列させることができる。これにより、シュート5による搬送時における頭付棒状部品Xの詰まりを確実に防止することができる。
【0031】
また、かき上げ板4の揺動は一時停止させることが可能であり、かき上げ板4の揺動を一時停止させている間に振動体6によってかき上げ板4を振動させているので、かき上げ板4を振動させる時間を十分に確保することができ、不整列の頭付棒状部品X´を確実に排除することができる。
【0032】
また、仮に、かき上げ板4の切欠部43が傾いた状態でかき上げ板4を振動させると、良姿勢状態で整列された頭付棒状部品Xが振動により切欠部43に沿って移動し、切欠部43の端部から落下する可能性があるが、上記した頭付棒状部品供給装置1では、かき上げ板4は水平位置で一時停止されて振動が与えられるので、かき上げ板4を振動させた際に、かき上げ板4の切欠部43に整列された頭付棒状部品Xが、切欠部43の端部から落下することを防止することができる。
【0033】
[時計の製造方法]
次に、本発明に係る時計の製造方法の実施の形態について説明する。
図6は本実施の形態における時計組立機100を模式的に表した平面図である。
【0034】
まず、時計組立機100について説明すると、図6に示すように、時計組立機100には、パレットYを搬送する環状のパレットコンベア101と、パレットY内に地板X1を供給する供給ブロック102と、地板X1に対して図示せぬ時計部品を組み込んでいく複数の組立ブロック103…と、組み立てが完成した時計X2を回収する回収ブロック104と、が備えられている。上記した各ブロック102,103…,104は、パレットコンベア101の搬送方向に沿って並べられており、上流側から供給ブロック102、組立ブロック103…、回収ブロック104の順で配設されている。
【0035】
供給ブロック102には、複数の地板X1が入った供給トレーT1が載置される架台110と、供給トレーT1内の地板X1をパレットY内まで搬送する供給ロボット111と、が備えられている。供給ロボット111には、地板X1を保持するチャック111aが備えられており、このチャック111aが水平方向及び鉛直方向にそれぞれ移動可能になっている。
【0036】
各組立ブロック103…には、図示せぬ歯車(時計部品)を供給する第一、第二歯車供給装置120,121と、図示せぬ歯車受(時計部品)を供給する歯車受供給装置122と、図示せぬネジ(時計部品)を供給するネジ供給装置123と、上記した各時計部品を組み立てる組立ロボット124と、がそれぞれ備えられている。第一、第二歯車供給装置120,121及びネジ供給装置123は、上記した頭付棒状部品供給装置1からなる。また、組立ロボット124には、各時計部品を保持するチャック124aと、上記したネジを締めるためのドライバ124bと、が備えられており、これらチャック124a及びドライバ124bが水平方向及び鉛直方向にそれぞれ移動可能になっている。
【0037】
回収ブロック104には、複数の完成品(時計X2)が入れられる回収トレーT2が載置される架台130と、パレットY内の時計X2を回収トレーT2内まで搬送する回収ロボット131と、が備えられている。回収ロボット131には、時計X2を保持するチャック131aが備えられており、このチャック131aが水平方向及び鉛直方向にそれぞれ移動可能になっている。
【0038】
次に、上記した時計組立機100を用いて時計の地板X1に歯車や歯車受等の時計部品を組み込んでいき、時計を組み立てる時計の製造方法について説明する。
【0039】
まず、供給ブロック102において、地板X1を供給する工程を行う。
具体的に説明すると、供給ロボット111のチャック111aを供給トレーT1の位置まで移動させ、このチャック111aによって供給トレーT1内の地板X1を保持する。続いて、地板X1を保持したチャック111aをパレットコンベア101の位置まで移動させ、パレットコンベア101の上に載って搬送されてきたパレットY内に地板X1を搬送する。この地板X1は、パレットYとともにパレットコンベア101によって組立ブロック103の方へ搬送される。
【0040】
次に、組立ブロック103において、歯車や歯車受等の図示せぬ時計部品を組み立てる工程を行う。
具体的に説明すると、まず、組立ロボット124のチャック124aを第一歯車供給装置120の供給口(シュート5)の位置まで移動させ、第一歯車供給装置120から供給された図示せぬ歯車を上記チャック124aによって保持する。続いて、この歯車を保持したチャック124aをパレットコンベア101の位置まで移動させ、パレットコンベア101の上に載って搬送されてきたパレットY内の地板X1に対して取り付ける。次に、第二歯車供給装置121により供給された図示せぬ歯車を、上述した第一歯車供給装置120により供給された歯車と同様に、チャック124aを用いてパレットY内の地板X1に対して取り付ける。このようにして、全ての歯車の取り付けが完成した後、歯車受供給装置122により供給された図示せぬ歯車受を、上述した第一歯車供給装置120により供給された歯車等と同様に、チャック124aを用いてパレットY内の地板X1に対して取り付ける。その後、ネジ供給装置123により供給された図示せぬネジを、上述した第一歯車供給装置120により供給された歯車等と同様に、チャック124aを用いてパレットY内の歯車受のネジ穴に差し込み、組立ロボット124のドライバ124bによって締め付ける。以上により、時計部品が組み立てられ、時計X2が完成する。
【0041】
なお、各組立ブロック103において、それぞれ上述した時計部品の組み立てが行われる。
また、完成した時計X2はパレットYとともにパレットコンベア101によって回収ブロック104の方へ搬送される。
【0042】
次に、回収ブロック104において、完成した時計X2を回収する工程を行う。具体的に説明すると、回収ロボット131のチャック131aを、パレットコンベア101の上に載って搬送されてきたパレットY内の時計X2の位置まで移動させ、このチャック131aによってパレットY内の時計X2を保持する。続いて、時計X2を保持したチャック131aを回収トレーT2の位置まで移動させ、時計X2を回収トレーT2内に搬送して時計X2を回収する。
【0043】
上記した時計X2の製造方法によれば、歯車やネジ等の頭付棒状部品が、上記した頭付棒状部品供給装置1からなる第一、第二歯車供給装置120,121やネジ供給装置123により供給されるため、歯車やネジのフィーダ時における詰まりを防止することができ、これにより、時計X2の生産性を向上させることができる。
【0044】
以上、本発明に係る頭付棒状部品供給装置、及び時計の製造方法の実施の形態について説明したが、本発明は上記した実施の形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、上記した実施の形態では、切欠部43が仮想鉛直面Sに対して傾けて形成されているが、本発明は、切欠部43が傾けられてなく、仮想鉛直面Sに沿って形成されていてもよい。すなわち、切欠部43の側面43bが仮想鉛直面Sと平行に形成されるとともに切欠部43の底面43aが仮想鉛直面Sに対して垂直に形成されていてもよい。
【0045】
また、上記した実施の形態では、シュート5に吊り上げられた頭付棒状部品Xが、シュート5を図示せぬ振動手段によって振動させることで下流側へ搬送される構成になっているが、本発明は、シュート5を下流側に向かって下向きに傾斜させ、シュート5に吊り上げられた頭付棒状部品Xが滑り落ちるように下流側へ搬送される構成であってもよい。これによれば、シュート5を振動させる図示せぬ振動手段が不要となる。
【0046】
また、上記した実施の形態では、基台2の下に振動体6が設置され、かき上げ板4とともに基台2及びホッパ3が振動する構成になっているが、本発明は、かき上げ板4が振動する構成であればよく、基台2やホッパ3が振動しない構成であってもよい。例えば、揺動機構7に振動体6が取り付けられ、揺動機構7及びかき上げ板4を振動させる構成であってもよく、或いは、振動体6をかき上げ板4に当接させ、かき上げ板4だけが振動する構成であってもよい。
【0047】
また、上記した実施の形態では、切欠部43が水平に延在する状態のかき上げ板4に対して振動を与えているが、本発明は、切欠部43が斜めに延在する状態のかき上げ板4に対して振動を与えることも可能である。例えば、切欠部43の上流側(図1における右側)の端部に、頭付棒状部品Xの滑り落ちを防止するストッパを設置し、切欠部43の下流側が上向きに傾いた状態のかき上げ板4、つまり、水平位置になる前の状態のかき上げ板4に対して振動を与えることも可能である。
【0048】
また、上記した実施の形態では、かき上げ板4の揺動を一時停止させている間にかき上げ板4に対して振動を与えているが、本発明は、かき上げ板4の揺動が一時停止されず、かき上げ板4を揺動させながらかき上げ板4に対して振動を与えることも可能である。例えば、かき上げ板4の揺動過程のうち、水平位置の前後の範囲においてかき上げ板4に振動を与える構成にすることも可能である。
【0049】
また、上記した実施の形態では、頭付棒状部品供給装置1(第一、第二歯車供給装置120,121やネジ供給装置123)を用いて歯車やネジ等の時計部品を供給し、これらの時計部品を組み立てて時計X2を製造しているが、本発明に係る頭付棒状部品供給装置は、時計部品以外の部品の供給に用いることも可能である。
その他、本発明の主旨を逸脱しない範囲で、上記した実施の形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、上記した変形例を適宜組み合わせてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明に係る頭付棒状部品供給装置の実施の形態を説明するための断面図である。
【図2】本発明に係る頭付棒状部品供給装置の実施の形態を説明するための切欠部の断面図である。
【図3】(a)〜(d)は本発明に係る頭付棒状部品供給装置の実施の形態を説明するための不整列の頭付棒状部品が載せられた切欠部の断面図である。
【図4】本発明に係る頭付棒状部品供給装置の実施の形態を説明するための断面図である。
【図5】本発明に係る頭付棒状部品供給装置の実施の形態を説明するための断面図である。
【図6】本発明に係る時計の製造方法の実施の形態を説明するための時計組立機の平面図である。
【符号の説明】
【0051】
1 頭付棒状部品供給装置
3 ホッパ
4 かき上げ板(かき上げ部材)
43 切欠部
43a 底面
43b 側面
43c 入隅部
43d 出隅部
5 シュート
6 振動体(振動手段)
X 頭付棒状部品

【特許請求の範囲】
【請求項1】
頭付棒状部品が収容されたホッパと、該ホッパ内の前記頭付棒状部品をかき上げる上下揺動可能なかき上げ部材と、該かき上げ部材から移送された前記頭付棒状部品を搬送するシュートと、を備える頭付棒状部品供給装置において、
前記かき上げ部材には、直線的に延在する断面視略L字形の切欠部が形成されており、
前記かき上げ部材を上方へ揺動させることで、前記ホッパ内の前記頭付棒状部品の棒部が前記切欠部に嵌め込まれるとともに前記頭付棒状部品の頭部が前記切欠部の上端に引っ掛けられ、前記頭付棒状部品が前記切欠部に沿って整列した状態でかき上げられる、ことを特徴とする頭付棒状部品供給装置。
【請求項2】
前記切欠部は、仮想鉛直面に対して傾けて形成されており、
前記棒部の先端面が載置される前記切欠部の底面は、該切欠部の入隅部から該切欠部の下側の出隅部側に向かうに従い上向きに傾斜され、
前記棒部の外周面が当接される前記切欠部の側面は、前記底面に対して垂直に形成されている、ことを特徴とする請求項1に記載の頭付棒状部品供給装置。
【請求項3】
少なくとも前記かき上げ部材を振動させる振動手段が備えられている、ことを特徴とする請求項1又は2の何れか一項に記載の頭付棒状部品供給装置。
【請求項4】
前記かき上げ部材の揺動を一時停止させることが可能であり、該かき上げ部材が一時停止している間に該かき上げ部材に振動が与えられる、ことを特徴とする請求項3に記載の頭付棒状部品供給装置。
【請求項5】
前記かき上げ部材は、前記切欠部が水平に延在する位置で一時停止される、ことを特徴とする請求項4に記載の頭付棒状部品供給装置。
【請求項6】
請求項1から5の何れかに記載された頭付棒状部品供給装置を用いて時計部品を供給して該時計部品の組み立てを行って時計を製造する、ことを特徴とする時計の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−132497(P2009−132497A)
【公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−309774(P2007−309774)
【出願日】平成19年11月30日(2007.11.30)
【出願人】(000002325)セイコーインスツル株式会社 (3,629)
【Fターム(参考)】