頭部用スケール
【課題】国際10−20法による基準点を容易に設定することができるスケールを提供する。
【解決手段】
移動可能に重ねられた可撓性のある第1および第2の帯11,12と、長手方向中心を示す中心部材30と、第1の帯と第2の帯とを中心30に対して、同じ移動量だけ伸びまたは縮ませる機構部13とを有する。このスケールを被検体1の頭に当て、伸縮状態表示目盛り16により、全長を測定し、その数値に対応する目盛りを基準点表示目盛り17から探すことにより、その目盛りの指す位置を基準点として求めることができる。また、中心部材30の位置を基準点として求めることができる。
【解決手段】
移動可能に重ねられた可撓性のある第1および第2の帯11,12と、長手方向中心を示す中心部材30と、第1の帯と第2の帯とを中心30に対して、同じ移動量だけ伸びまたは縮ませる機構部13とを有する。このスケールを被検体1の頭に当て、伸縮状態表示目盛り16により、全長を測定し、その数値に対応する目盛りを基準点表示目盛り17から探すことにより、その目盛りの指す位置を基準点として求めることができる。また、中心部材30の位置を基準点として求めることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体光計測装置等による脳計測において、国際10−20法による計測点の位置決めをするための頭部用スケールに関する。
【背景技術】
【0002】
脳機能や脳活動を測定する装置として、生体光計測装置や脳波計が知られている。これらはいずれも頭皮上にプローブや電極を配置することにより、脳の情報を無侵襲に計測する。
【0003】
例えば、生体光計測装置は、光出射用光ファイバプローブと受光用光ファイバプローブとを頭皮上の所定の位置にそれぞれ配置し、光出射用光ファイバープローブから例えば2波長の近赤外光を出射し、頭蓋内を通過した光を受光用光ファイバプローブで受光する。受光強度から酸素化ヘモグロビン濃度と脱酸素化ヘモグロビン濃度の変化を示す信号を計測する。一方、脳波計は、頭皮上の所定位置に配置した電極から、脳の電気活動を測定する。
【0004】
従来、生体光計測装置や脳波計の測定は、特許文献1および2に記載されているように、国際10−20法で定められる複数の相対的基準点にプローブや電極を配置している。国際10−20法は、被検者の鼻根、後頭結節、左右耳介前点を基準として、頭蓋外周を通ってこれらを結ぶ線分を所定の割合で分割した位置を当該被検者の相対的基準点として設定する方法である。
【0005】
国際10−20法による相対的基準点を図12に示す。図12(a)、(b)のように、鼻根と後頭結節を頭頂を通って結ぶ曲線と、左右の耳介前点を頭頂を通って結ぶ曲線との交点、すなわちそれぞれの線分の中心を正中中心の基準点Czとする。図12(a)のように鼻根と後頭結節を頭頂を通って結ぶ曲線を長さ10%、20%、20%、20%、20%、10%の割合で6つに分割した場合、中心のCzから鼻根側に20%の位置をFzとする。Czから後頭結節側へ20%の位置をPzとする。
【0006】
図12(b)のように左右の耳介前点を頭頂を通って結ぶ曲線を長さ10%、20%、20%、20%、20%、10%の割合で6つに分割する点を、右耳介前点から左耳介前点側へ順にT4、C4、Cz、C3、T3とする。
【0007】
図12(c)のように鼻根上部と左耳介上部のT3と後頭結節と右耳介上部のT4とを通って頭を一周する曲線を想定する。鼻根上部からT3を通って後頭結節上部に至る長さを10%、20%、20%、20%、20%、10%に分割することにより鼻根上部側から順にFp1、F7、T3、T5、O1と規定する。また、鼻根上部からT4を通って後頭結節上部に至る長さを10%、20%、20%、20%、20%、10%に分割することにより鼻根上部側から順にFp2、F8、T4、T6、O2と規定する。
【0008】
さらに、図12(c)のようにF8とFzを結ぶ曲線の中点にF4、FzとF7を結ぶ曲線の中点にF3を設定する。T6とPzを結ぶ曲線の中点にP4、PzとT5を結ぶ曲線の中点にP3を設定する。
【0009】
このようにして19点の相対的基準点が設定される。
【0010】
このように国際10−20法による相対的基準点は、被検者の頭の大きさに応じて決定されるため、従来は、被検者の頭部に巻き尺をあて、鼻根から頭頂を通って後頭結節に至る曲線の長さ、左右の耳介前点を頭頂を取って結ぶ曲線の長さをそれぞれ計測し、計測した長さから10%、20%、20%、20%、20%、10%の長さを計算で求め、各基準点を設定している。周方向についても同様である。
【0011】
また、特許文献2では、基準点の設定を容易にするために、平行に並べた複数の長板状部材の両端を伸縮可能な連結部材で連結したホルダーを開示している。これにより、長板状部材を平行に保持したまま、間隔を調整でき、長板状部材に備えられた貫通孔(ソケット)にプローブを挿入することにより、位置決めできる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2008−67904号公報
【特許文献2】特開2007−159644号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
従来のように、巻き尺により被検者の頭のサイズを測定して、基準点を求める方法は、複数の基準点を求めるためには、被検者の頭に巻き尺を巻きつけて複数個所の長さを測定しながら、それをメモし、電卓等を叩いて所定の割合を計算してそれをメモし、求めた長さの位置を再び被検者の頭に巻き尺を当てて決め、その位置にプローブを位置決めするという手順が必要である。これを多数の点について行うと時間がかかり、被検者および操作者の負担が大きい。
【0014】
また、特許文献2に記載のホルダーは、長板状部材を等間隔に配置できると記載されているが、上述したように国際10−20法により基準点は、等間隔ではないうえ、所定の割合の位置であるため、単に等間隔に長板状部材を配置するだけでは一義的に基準点を決定することはできない。
【0015】
本発明の目的は、国際10−20法による基準点を容易に設定することができるスケールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的を達成するために、本発明の第1の態様によれば以下のような頭部用スケールが提供される。すなわち、長手方向移動可能に重ねられた可撓性のある第1および第2の帯と、重ねられた第1および第2の帯の全体の長さの中心を示す中心部材と、第1の帯の端部を中心に対して所定量だけ伸びまたは縮ませた場合に、第2の帯の端部を中心に対して、第1の帯とは逆の方向へ同じ移動量だけ伸びまたは縮ませる機構部とを有する頭部用スケールである。第1の帯の上には、第1および第2の帯の伸縮状態を示すための伸縮状態表示目盛りと数値が記載され、第2の帯の上には、伸縮状態表示目盛りに対応した数値、および、その数値の示す伸縮状態において中心部材の位置から予め定めた距離を示す基準点表示目盛りが記載されている。これにより、このスケールを被検体の頭に当て、伸縮状態表示目盛りにより、全長を測定し、その数値に対応する目盛りを基準点表示目盛りから探すことにより、その目盛りの指す位置を基準点として求めることができる。また、中心部材の位置を基準点として求めることができる。
【0017】
第1および第2の帯と前記機構部を二組用意し、一組の第1および第2の帯は、他の組の第1および第2の帯と直交して配置することが可能である。これにより、2方向についてそれぞれ基準点を求めることができる。たとえば、鼻根から後頭結節方向と、左右の耳介を結ぶ方向について基準点を求めることができる。
【0018】
基準点表示目盛りを、第2の帯の上に2種類記載することができる。該2種類の基準点表示目盛りは、中心部材を挟んで両側に記載することができる。これにより、例えば中心部材をCz、その両側の前後方向のFz,Pzまたは、C4,C3の位置を求めることができる。
【0019】
例えば、伸縮状態表示目盛りは、第2の帯の端部を基準として読まれるようにその目盛りおよび数値が記載されている。
【0020】
機構部としては、例えば、中心が前記中心部材に回転可能に固定された円盤を有する構成とする。円盤は、中心部材に対して対称に形成された2本のスリットを備え、2本のスリットには、第1および第2の帯に固定された突起とそれぞれ係合している構成とする。
【0021】
また、本発明によれば、第2の態様の頭部用スケールが提供される。すなわち、1辺の長さの比が1:2:2:2:2:1である6個の格子を一列に、かつ、開き角の変位可能に連結した格子連続体を有する頭部用スケール。このように連結した格子連続体は、全体の伸縮状態により自由に被検体の頭部の細部に合わせることができるとともに、その伸縮状態に関わらず、格子の長手方向の対角距離は、1:2:2:2:2:1である。よって、格子連結体の連結点が示す位置が、国際10−20法による基準点に対応する。
【0022】
例えば、格子連続体を2本、中心で交差させ連結することにより、前後、左右の2方向に基準点を決定することができる。
【0023】
交差した2本の格子連続体の1本を前後用スケール、もう1本を左右用スケールとし、これらにさらに2本の前記格子連続体を右外周用スケールと左外周用スケールとして連結した構成することも可能である。このとき、右外周用スケールの両端は、前後用スケールの格子連続体の両端の格子とその内側の格子との連結部にそれぞれ連結され、左外周用スケールの両端は、前記右外周用スケールの両端が連結されたのと同じ前記連結部に連結された構成とすることにより、右外周用スケールと左外周用スケールで輪を構成することができる。これにより、頭部に被せることが可能なスケールを提供できる。
【0024】
右外周用スケールの格子連続体の中心の連結部は、左右用スケールの格子連続体の右端部の格子とその内側の格子との連結部に連結され、左外周用スケールの格子連続体の中心の連結部は、左右用スケールの格子連続体の左端部の格子とその内側の格子との連結部に連結されている構成とすることも可能である。これにより、前後用スケールの端部を鼻根と後頭結節、左右用スケールの端部を左右耳介前点に位置決めし、全体を頭に沿うように伸縮するだけで、17点の基準点をその連結点から決定することができる。
【0025】
例えば、格子連続体を構成する6個の格子のうち隣接する格子の辺は、連続した帯により構成することができる。これにより、隣接する格子の開き角を伸縮状態に関わらず同一にすることができる。
【0026】
前後用スケールの前側の端部から2個目と3個目の格子の連結部と、左外周用スケールの前側の端部から2個目と3個目の格子の連結部に、1辺の長さの比が1:1である2個の格子の連続体の両端を連結することができる。また、前後用スケールの前側の端部から2個目と3個目の格子の連結部と、右外周用スケールの前側の端部の2個目と3個目の格子の連結部に、1辺の長さの比が1:1である2個の格子の連続体の両端を連結することができる。これにより、2個の格子の連続体の中央の連結点から、さらに2点の基準点を決定することができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明の頭部用スケールを用いることにより、国際10−20法による基準点を容易に設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】第1の実施形態の簡易型スケールの上面図。
【図2】図1の簡易型スケールを被検体1の頭に当てた状態を示す斜視図。
【図3】図1の簡易型スケールの前後用スケール10の(a)帯11,12の形状を示す上面図、(b)帯11,12を重ねてピン11c,12cで係合した状態を示す上面図、(c)円盤13の上面図、(d)帯11,12の上に円盤13を重ねた状態の上面図。
【図4】図1の簡易型スケールの前後用スケール10に左右用スケール10を重ねることを示す説明図。
【図5】図1の簡易型スケールを被検体1の頭に当てて伸縮させた状態の一例を示す上面図。
【図6】図1の簡易型スケールを頭の小さい被検体1に当てて伸縮させた状態の一例を示す上面図。
【図7】第2の実施形態の全位置決定用スケールを被検体1の頭に被せた状態を示す斜視図。
【図8】図7の全位置決定用スケールを構成する格子連続体の構造を示す上面図。
【図9】図8の格子連続体を4本組み合わせて図7の全位置決定用スケールを構成することを示す説明図。
【図10】図8の格子連続体を構成する3種類の帯E、F、Gの形状を示す上面図。
【図11】図7の全位置決定用スケールに連結するための、格子2個の連続体を示す上面図。
【図12】被検体の頭皮上での国際10−20法による基準点の位置を示す(a)左側面図、(b)正面図、(c)上面図。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明の一実施の形態について説明する。
(第1の実施の形態)
第1の実施の形態として、簡易型スケールについて図1〜図5を用いて説明する。
【0030】
図1のように、本実施形態の簡易型スケールは、前後用スケール10と左右用スケール20とを直交させ、連結ピン30を貫通させて留めた構造である。これらを図2のように被検体1の頭部に沿わせて配置することにより、国際10−20法のCz、Fz、Pz、C3、C4の位置を求めることができる。
【0031】
前後用スケール10は、図3(a)に示した形状の柔軟性のある2枚の帯11,12を図3(b)のように重ねた構造である。帯11には、ガイド用スリット11aと、中央スリット11bが設けられ、端部にピン11cが固定されている。帯12には、ガイド用スリット12aと、中央スリット12bが設けられ、端部にピン12cが固定されている。帯11、12を重ねた状態で、帯11のピン11cを帯12のガイド用スリット12aに挿入してこれと係合させ、帯12のピン11cを帯11のガイド用スリット11aに挿入し、これと係合させている。これにより、2枚の帯11,12は互いに、重なった状態でスリット11a、12aに沿って移動することができ、これにより前後用スケール10は伸縮することができる。
【0032】
帯11,12を一体的に、同じ移動量で伸び縮みさせるために、帯11の上には、図3(c)の形状の円盤13が、図3(d)のように重ねて配置されている。
【0033】
連結ピン30は、2枚の帯11、12の中央スリット11a、12aと、円盤13の中央の穴13aを貫通している。
【0034】
また、帯11、12には、突起11d、12dが設けられ、ピン31、32がそれぞれ固定されている。帯11のピン31は、円盤13のスリット33に係合し、帯12のピン32は、円盤13のスリット34に係合している。スリット33,34の長手方向は、ピン30を中心に対称に半径方向に伸びている。
【0035】
このように、半径方向に2本のスリット33,34をもつ円盤13に、帯11,12のピン31,32を係合していることにより、2枚の帯11,12のうち一方の帯11が、ピン30を中心に操作者により伸ばされた場合、円盤13が回転することにより、他方の帯12もスリット34によって付勢され、同じ移動量だけ反対方向に移動する。これにより、帯11,12が一体的に同じ移動量で伸びまたは縮む、前後用スケール10が構成される。
【0036】
下側の帯12の上には、図1、図3(d)のように全長測定用目盛り16が付され、上側の帯11上には、正中前頭部の基準点Fzの位置を示すFz目盛り17と、正中頭頂部の基準点Pzの位置を示すPz目盛り18とが付されている。全長測定用目盛り16は、前後用スケール10の全体の長さを示す目盛りおよび数値が予め求めた位置に刻まれている。Fz目盛り17の目盛りおよび数値は、それぞれの伸縮状態のときのFz,Pz位置をそれぞれ示すようにあらかじめ求めた位置に刻まれている。
【0037】
一方、左右用スケール20は、図4に示すように、前後用スケール10と同様の構成であり、柔軟性のある2枚の帯21,22と円盤23とが重ねられた構造である。ただし、前後用スケール10と異なり、円盤23は、帯21,22の下に配置されている。帯21,22と円盤は、前後用スケール10に対して直交し、かつ、円盤13同士が重なるように配置され、図1のように連結ピン30により連結されている。よって、2枚の円盤13、23の間で4枚の帯11,12、21,22が挟まれた構成であり、4枚の帯の突起11d,12d等は、2枚の円盤13の間で移動するため、外面は滑らかである。
【0038】
左右用スケール20も、前後用スケール10と同様に、2枚の帯21,22の一方の帯21が、ピン30を中心に操作者により伸ばされた場合、円盤23が回転することにより、他方の帯22も、同じ移動量だけ反対側に移動し、帯21,22が一体的に同じ移動量で伸びまたは縮む構成である。
【0039】
下側の帯22の上には、全長測定用目盛り26が付され、上側の帯21上には、中心部の基準点C3の位置を示すC3目盛り27と、中心部の基準点C4の位置を示すC4目盛り28とが付されている。
【0040】
操作者は、前後用スケール10を伸縮させ、図2に示すように、一方の端部14が被検体1の鼻根2に、他方の端部15が後頭結節に位置するように配置する。同時に左右用スケール20も伸縮させ、一方の端部24が被検体1の左耳介前点3に、他方の端部25が右耳介前点に位置するように配置する。この状態で連結ピン30が示す位置が正中中心の基準点Czである。
【0041】
操作者は、前後用スケール10の上側の帯11の端部を目盛り指示線19として用い、全長測定用目盛り16上で目盛り指示線19と重なる目盛りの数値を読む。全長測定用目盛り16は、この数値が、前後用スケール10の両端14,15の距離を表すように、あらかじめ求められたピッチおよび数値で刻まれている。よって、目盛り指示線19の数値を読み出すことにより、鼻根2から後頭結節までの全長を測定できる。
【0042】
また、Fz目盛り17は、前後用スケール10のその伸縮状態で、全長測定用目盛り16から読みだした数値と同じ数値の目盛りが指している位置がFzとなるように、すなわちCzから全長の20%の距離だけ鼻根側の位置に当該全長数値が付された目盛りが位置するように、予め求めた位置に目盛りおよび数値が刻まれている。よって、Fz目盛り17から、全長測定用目盛り16により測定した数値と同じ数値を示す目盛りを探すと、当該目盛りが指す位置が当該被検体1のFz位置である。このFz位置を頭皮上にマーキング等することにより、Fz位置を容易に決定することができる。
【0043】
また、Pz目盛り18は、前後用スケールのその伸縮状態で、全長測定用目盛り16から読みだした数値と同じ数値の目盛りが指している位置がPzとなるように、すなわちCzから全長の20%の距離だけ後頭部側の位置に当該全長数値が付された目盛りが位置するように、予め求めた位置に目盛りおよび数値が刻まれている。よって、Pz目盛り18から全長測定用目盛り16により測定した数値と同じ数値を示す目盛りを探すと、当該目盛りが指す位置が当該被検体1のPz位置である。このPz位置を頭皮上にマーキング等することにより、Pz位置を容易に決定することができる。
【0044】
同様に、操作者は、左右用スケール20の上側の帯21の端部を目盛り指示線29として用い、全長測定用目盛り26上で目盛り指示線29と重なる目盛りの数値を読み出す。全長測定用目盛り26は、この数値が、左右用スケール20の両端24,25の距離を表すように、あらかじめ求められたピッチおよび数値で刻まれている。よって、目盛り指示線29の数値を読み出すことにより、被検体1の左耳介前点3から右耳介前点までの全長を測定できる。
【0045】
また、C3目盛り27は、左右用スケール20のその伸縮状態で、全長測定用目盛り26から読みだした数値と同じ数値の目盛りが指している位置がC3の位置となるように、すなわちCzから全長の20%の距離だけ左耳介側の位置に当該全長数値が付された目盛りが位置するように、予め求めた位置に目盛りおよび数値が刻まれている。よって、C3目盛り27から全長測定用目盛り26により測定した数値と同じ数値を示す目盛りを探すと、当該目盛りが指す位置が当該被検体1のC3の位置である。このC3位置を頭皮上にマーキング等することにより、C3位置を容易に決定することができる。
【0046】
また、C4目盛り28は、左右用スケール20のその伸縮状態で、全長測定用目盛り26から読みだした数値と同じ数値の目盛りが指している位置がC4となるように、すなわちCzから全長の20%の距離だけ右耳介側の位置に当該全長数値が付された目盛りが位置するように、予め求めた位置に目盛りおよび数値が刻まれている。よって、全長測定用目盛り26により測定した数値と同じ数値を示すC4目盛り28の目盛りを探し、当該目盛りが示す位置を頭皮上にマーキング等することにより、C4位置を容易に決定することができる。
【0047】
具体例として、前後用スケール10の端部14を被検体1の鼻根2に、他方の端部15を後頭結節に、左右用スケール20の端部24を被検体1の左耳介前点3に、他方の端部25を右耳介前点にそれぞれ配置した状態が図5の伸縮状態であった場合について説明する。実際は、図2のように被検体の頭に沿わせて測定および基準点の位置決めを行うが、全体を図示するために、図5のように平面に広げた状態で説明する。
【0048】
図5の例の場合、被検体1の鼻骨から後頭結節までの長さは、前後用スケール10の目盛り指示線19(帯11の端部)が全長測定用目盛り16と重なる位置を操作者から読むことにより42cmであることがわかる。よって、Fz用目盛り17から42の数値の目盛りを探すと、その目盛りの指している位置がFzの位置である。また、Pz用目盛り18から42の数値の目盛りを探すと、その目盛りの指している位置がPzの位置である。よって、これらの位置を頭皮上にマーキング等することにより容易にFz、Pzの位置を求めることができる。
【0049】
また、図5の例において、被検体1の左右の耳介間の長さは、左右用スケール20の目盛り指示線29(帯21の端部)が全長測定用目盛り26と重なる位置を操作者が読むことにより、45cmであることがわかる。よって、C3用目盛り27から45の数値の目盛りを探すと、その目盛りの指している位置がC3の位置である。また、C4用目盛り18から45の数値の目盛りを探すと、その目盛りの指している位置がC4の位置である。よって、これらの位置を頭皮上にマーキング等することにより容易にC3、C4の位置を求めることができる。
【0050】
同様に、被検体1の頭が小さい場合の例を図6に示す。図6の例の場合、被検体1の鼻骨から後頭結節までの長さは、前後用スケール10の全長測定用目盛り16を読むことで33cmであることがわかる。よって、Fz用目盛り17から33の数値の目盛りを探すことにより、Fz位置を求めることができる。また、Pz用目盛り18の33の数値の目盛り位置を探すことにより、Pz位置を求めることができる。
【0051】
図6の例において、被検体1の左右の耳介間の長さは、左右用スケール20の全長測定用目盛り26を読むことで35cmであることがわかる。C3用目盛り27から35の数値の目盛りを探すことにより、C3位置を求めることができる。また、C4用目盛り18から35の数値の目盛りを探すことにより、C4位置を求めることができる。
【0052】
このように、第1の実施形態では、連結ピン30(Cz)を中心に両側に同じ移動量だけ伸縮する前後用スケール10と左右用スケール20を用いた場合、伸縮状態ごとにFz、Pz、C3、C4の位置が一義的に決まることを利用して、あらかじめ目盛り17,18,27,28と、目盛りに対応する全長の数値を刻んでおくことにより、容易にFz、Pz、C3、C4およびCzを位置決めすることができる。
【0053】
これにより、巻き尺を頭に当てて全長を測定してメモし、電卓等で長さを計算し、求めた長さを巻き尺で計って頭皮上での位置を出すという作業が不要になり、容易に国際10−20法の基準点Fz、Pz、C3、C4およびCzを求めることができる。よって、短時間でプローブや電極をこれらの基準点に配置することができ、被検者および操作者の負担が少ない。
【0054】
(第2の実施の形態)
第2の実施の形態として、全位置決定用スケールについて図7等を用いて説明する。
【0055】
図7の全位置検出用スケールは、図7に示したように、伸縮可能な複数の格子を連結した構造であり、被検体1の頭にかぶせて用いる。これにより、被検体の頭の大きさにかかわらず、国際10−20法による19点の基準点のうち17点の位置を容易に決定できる。また、後述の中点検出用の部材をさらに連結することにより、残り2点を決定できる。
【0056】
本実施形態の全位置検出用スケールの構造について具体的に説明する。本実施の形態の全位置検出用スケールは、図8に示したように6つの格子が伸縮可能に連結された部材(格子連続体)を4本、図9のように連結したものであり、図9において3つの連結点84を連結し、3つの連結点85を連結することにより輪をつくり、図7のように頭にかぶせることができるスケールを構成している。
【0057】
図8の格子連続体は、図10に示すように可撓性ある3種の帯E,G,Fを交差させ、交差点を角度変位可能に連結し、交差した帯の端部を隣接する交差した帯の端部と連結することにより構成されている。
【0058】
帯Eには、両端に貫通孔e1、e3が備えられ、中央に貫通孔e2が備えられている。貫通孔e1と貫通孔e2との距離は、貫通孔e2と貫通孔e3との距離と等しい。
【0059】
帯Gには、両端に貫通孔g1、g3が備えられ、その間に貫通孔g2が備えられている。貫通孔g2とg3の距離は、貫通孔g1と貫通孔g2の距離の半分に設定されている。貫通孔g1と貫通孔g2の距離は、帯Eの貫通孔e1、e2間と等しく設定されている。
【0060】
帯Hには、両端に貫通孔h1、h2が備えられ、その距離は、貫通孔g2とg3の距離と等しい、すなわち帯Eの貫通孔e1、e2間の距離の半分である。
【0061】
帯E(E1〜E6)を図8のように2本づつ交差させたものを3組用意し、交差点の貫通孔e2にピンk3,k4,k5をそれぞれ挿入して、交差角度を変位可能に連結する。この3組の帯Eの交差体を一列に並べ、隣接する交差体の両端の貫通孔e1,e3にピンを挿入して角度変位可能に図8のように連結する。
【0062】
一方、2本の帯Gを交差させて貫通孔g2をピンk2、k6を挿入し、交差角度の変位可能に固定したものを二組用意し、3組の帯Eの交差体の連続体の両側に配置し、図8のように連結する。さらにその両端に帯Hを図8のようにピンで連結し、帯Hの端部同士を連結する。
【0063】
これにより、図8のように、6つの格子が直線状に並んだ格子連続体が得られる。3種の帯E、G、Hの貫通孔の間隔を、図10のように定めているため、両端の2つの格子の一辺の長さを1とすると、その間の4つの格子の一辺の長さは2である。また、隣接する格子の辺は、一本の連続する帯によって構成されているため、隣接する格子の開き角αは、対頂角となり等しい。
【0064】
よって、格子連続体の6つの格子の開き角αが等しくなるように配置することにより、各格子の長さ(長手方向に対向する頂点間の距離)は、常に全長に対して、10%、20%、20%、20%、20%、10%となる。この割合は、格子連続体の伸縮状態に関わらず一定である。
【0065】
本実施形態では、この格子連続体を4本用い、これを図9のように連結する。すなわち、前後用スケール40、左右用スケール50、右外周用スケール60、左外周用スケール70としてそれぞれ格子連続体を用い、図9のように連結点81、82、83で連結し、さらに右外周用スケール60と左外周用スケール70をその両端の連結点84、85で連結して輪にする。
【0066】
このように連結することにより、前後用スケール40と左右用スケール50が相互の中央で交差し、前後用スケール40の両端からその全長の10%上がった位置に右外周用スケール60と左外周用スケール70の構成する輪が連結されたスケールが構成される。右外周用スケール60と左外周用スケール70は、それぞれの中央で、左右用スケール40の両端からその全長の10%上がった位置に連結されている。
【0067】
なお、図9のように右外周用スケール40の連結ピンを連結点84から順にk31〜k37と呼ぶ。左外周用スケール70のピンを連結点84から順にk41〜k47と呼ぶ。前後用スケール40のピンを前側から順にk11〜k17と呼ぶ。左右用スケール50のピンを右側から順にk21〜k27と呼ぶ。
【0068】
国際10−20法の各基準点は、図12(a)、(b),(c)に示すように、鼻根から後頭結節までの長さを10%、20%、20%、20%、20%、10%に分割することにより、鼻根から30%の位置をFz、50%の位置をCz、70%の位置をPzと規定する。また、左右の耳介前点を結ぶ長さを10%、20%、20%、20%、20%、10%に分割することにより左耳介側から順にT3、C3、Cz、C4、T4と規定する。さらに、鼻根および後頭結節からそれぞれ10%頭頂寄りの点と、左右の耳介から10%頭頂寄りのT3、T4を通って頭を一周する輪を想定し、この輪において鼻根上部からT3を通って後頭結節上部に至る長さを10%、20%、20%、20%、20%、10%に分割することにより鼻根上部側から順にFp1、F7、T3、T5、O1と規定する。また、鼻根上部からT4を通って後頭結節上部に至る長さを10%、20%、20%、20%、20%、10%に分割することにより鼻根上部側から順にFp2、F8、T4、T6、O2と規定する。
【0069】
よって、被検体1の基準点を決定する際には、図7に示すように本実施形態のスケールを頭にかぶせ、前後用スケール40の端部(ピンk11)の位置を鼻根にあて、他端(ピンk17)の位置を後頭結節に当て、格子の開き角が等しくなるように調整する。同様に左右用スケール50の端部(ピンk21)の位置を右耳介前部にあて、他端(ピンk27)の位置を左耳介前部に当て、格子の開き角が等しくなるように調整する。この状態で右外周用スケール60と左外周用スケール50についてそれぞれ格子の開き角が等しくなるように調整する。
【0070】
これにより、各構成連結体のピンの位置は、それぞれの全長の10%、20%、20%、20%、20%、10%を指す。
【0071】
よって、図7および図9のように前後用スケール40のピンk13、k14、k15の位置がそれぞれFz、Cz、Pzの位置を示す。左右用スケール50のk22、k23、k24、k25、k26の位置がそれぞれT4、C4、Cz、C3、T3の位置を示す。左外周用スケール70のk42、k43、k44、k45、k46の位置がそれぞれFp1、F7、T3、T5、O1の位置を示す。右外周用スケール60のk32、k33、k34、k35、k36の位置がそれぞれFp2、F8、T4、T6、O2の位置を示す。
【0072】
以上により、国際10−20法上の基準点のうち17点の位置を決定できる。
【0073】
また、図11のように同じ大きさの格子が2個連結された格子連結体を用意し、一端のピン91をF8のピンk33に連結し、他端のピン93をFzのピンk13に連結することにより、その中点の位置F4を決定できる。同様に、図11の格子連結体をF7のピンk43と、Fzのピンk13と連結することにより、その中点の位置F3を決定できる。なお、図11の格子連結体の格子の一辺の長さは、図8の構成連結体の格子の一辺と異なる長さであっても構わない。
【0074】
以上により、国際10−20方向のすべての基準点を決定できる。
【0075】
このように、第2の実施の形態では、可撓性があり、伸縮可能な格子連結体を用いることにより、その伸縮の度合いに関わらず、格子の連結ピンの位置が全長の10%、20%、20%、20%、20%、10%を示すことを利用して、被検体1の頭に被せるだけで、頭の寸法を計測することなく、全基準点位置をきわめて容易に決定することができる。よって、短時間でプローブや電極をこれらの基準点に配置することができ、被検者および操作者の負担が少ない。
【符号の説明】
【0076】
10…前後用スケール、11…帯、12…帯、13…円盤、16…全長測定用目盛り、17…Fz用目盛り、18…Pz用目盛り、20…左右用スケール、21…帯、22…帯、23…円盤、26…全長測定用目盛り、27…C3用目盛り、28…C4用目盛り、30…連結ピン、31、32…ピン、33,34…スリット、40…前後用スケール、50…左右用スケール、60…右外周用スケール、70…左外周用スケール、81、82,83,84…連結点、91,92,93…ピン、E,G,H…帯。
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体光計測装置等による脳計測において、国際10−20法による計測点の位置決めをするための頭部用スケールに関する。
【背景技術】
【0002】
脳機能や脳活動を測定する装置として、生体光計測装置や脳波計が知られている。これらはいずれも頭皮上にプローブや電極を配置することにより、脳の情報を無侵襲に計測する。
【0003】
例えば、生体光計測装置は、光出射用光ファイバプローブと受光用光ファイバプローブとを頭皮上の所定の位置にそれぞれ配置し、光出射用光ファイバープローブから例えば2波長の近赤外光を出射し、頭蓋内を通過した光を受光用光ファイバプローブで受光する。受光強度から酸素化ヘモグロビン濃度と脱酸素化ヘモグロビン濃度の変化を示す信号を計測する。一方、脳波計は、頭皮上の所定位置に配置した電極から、脳の電気活動を測定する。
【0004】
従来、生体光計測装置や脳波計の測定は、特許文献1および2に記載されているように、国際10−20法で定められる複数の相対的基準点にプローブや電極を配置している。国際10−20法は、被検者の鼻根、後頭結節、左右耳介前点を基準として、頭蓋外周を通ってこれらを結ぶ線分を所定の割合で分割した位置を当該被検者の相対的基準点として設定する方法である。
【0005】
国際10−20法による相対的基準点を図12に示す。図12(a)、(b)のように、鼻根と後頭結節を頭頂を通って結ぶ曲線と、左右の耳介前点を頭頂を通って結ぶ曲線との交点、すなわちそれぞれの線分の中心を正中中心の基準点Czとする。図12(a)のように鼻根と後頭結節を頭頂を通って結ぶ曲線を長さ10%、20%、20%、20%、20%、10%の割合で6つに分割した場合、中心のCzから鼻根側に20%の位置をFzとする。Czから後頭結節側へ20%の位置をPzとする。
【0006】
図12(b)のように左右の耳介前点を頭頂を通って結ぶ曲線を長さ10%、20%、20%、20%、20%、10%の割合で6つに分割する点を、右耳介前点から左耳介前点側へ順にT4、C4、Cz、C3、T3とする。
【0007】
図12(c)のように鼻根上部と左耳介上部のT3と後頭結節と右耳介上部のT4とを通って頭を一周する曲線を想定する。鼻根上部からT3を通って後頭結節上部に至る長さを10%、20%、20%、20%、20%、10%に分割することにより鼻根上部側から順にFp1、F7、T3、T5、O1と規定する。また、鼻根上部からT4を通って後頭結節上部に至る長さを10%、20%、20%、20%、20%、10%に分割することにより鼻根上部側から順にFp2、F8、T4、T6、O2と規定する。
【0008】
さらに、図12(c)のようにF8とFzを結ぶ曲線の中点にF4、FzとF7を結ぶ曲線の中点にF3を設定する。T6とPzを結ぶ曲線の中点にP4、PzとT5を結ぶ曲線の中点にP3を設定する。
【0009】
このようにして19点の相対的基準点が設定される。
【0010】
このように国際10−20法による相対的基準点は、被検者の頭の大きさに応じて決定されるため、従来は、被検者の頭部に巻き尺をあて、鼻根から頭頂を通って後頭結節に至る曲線の長さ、左右の耳介前点を頭頂を取って結ぶ曲線の長さをそれぞれ計測し、計測した長さから10%、20%、20%、20%、20%、10%の長さを計算で求め、各基準点を設定している。周方向についても同様である。
【0011】
また、特許文献2では、基準点の設定を容易にするために、平行に並べた複数の長板状部材の両端を伸縮可能な連結部材で連結したホルダーを開示している。これにより、長板状部材を平行に保持したまま、間隔を調整でき、長板状部材に備えられた貫通孔(ソケット)にプローブを挿入することにより、位置決めできる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2008−67904号公報
【特許文献2】特開2007−159644号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
従来のように、巻き尺により被検者の頭のサイズを測定して、基準点を求める方法は、複数の基準点を求めるためには、被検者の頭に巻き尺を巻きつけて複数個所の長さを測定しながら、それをメモし、電卓等を叩いて所定の割合を計算してそれをメモし、求めた長さの位置を再び被検者の頭に巻き尺を当てて決め、その位置にプローブを位置決めするという手順が必要である。これを多数の点について行うと時間がかかり、被検者および操作者の負担が大きい。
【0014】
また、特許文献2に記載のホルダーは、長板状部材を等間隔に配置できると記載されているが、上述したように国際10−20法により基準点は、等間隔ではないうえ、所定の割合の位置であるため、単に等間隔に長板状部材を配置するだけでは一義的に基準点を決定することはできない。
【0015】
本発明の目的は、国際10−20法による基準点を容易に設定することができるスケールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的を達成するために、本発明の第1の態様によれば以下のような頭部用スケールが提供される。すなわち、長手方向移動可能に重ねられた可撓性のある第1および第2の帯と、重ねられた第1および第2の帯の全体の長さの中心を示す中心部材と、第1の帯の端部を中心に対して所定量だけ伸びまたは縮ませた場合に、第2の帯の端部を中心に対して、第1の帯とは逆の方向へ同じ移動量だけ伸びまたは縮ませる機構部とを有する頭部用スケールである。第1の帯の上には、第1および第2の帯の伸縮状態を示すための伸縮状態表示目盛りと数値が記載され、第2の帯の上には、伸縮状態表示目盛りに対応した数値、および、その数値の示す伸縮状態において中心部材の位置から予め定めた距離を示す基準点表示目盛りが記載されている。これにより、このスケールを被検体の頭に当て、伸縮状態表示目盛りにより、全長を測定し、その数値に対応する目盛りを基準点表示目盛りから探すことにより、その目盛りの指す位置を基準点として求めることができる。また、中心部材の位置を基準点として求めることができる。
【0017】
第1および第2の帯と前記機構部を二組用意し、一組の第1および第2の帯は、他の組の第1および第2の帯と直交して配置することが可能である。これにより、2方向についてそれぞれ基準点を求めることができる。たとえば、鼻根から後頭結節方向と、左右の耳介を結ぶ方向について基準点を求めることができる。
【0018】
基準点表示目盛りを、第2の帯の上に2種類記載することができる。該2種類の基準点表示目盛りは、中心部材を挟んで両側に記載することができる。これにより、例えば中心部材をCz、その両側の前後方向のFz,Pzまたは、C4,C3の位置を求めることができる。
【0019】
例えば、伸縮状態表示目盛りは、第2の帯の端部を基準として読まれるようにその目盛りおよび数値が記載されている。
【0020】
機構部としては、例えば、中心が前記中心部材に回転可能に固定された円盤を有する構成とする。円盤は、中心部材に対して対称に形成された2本のスリットを備え、2本のスリットには、第1および第2の帯に固定された突起とそれぞれ係合している構成とする。
【0021】
また、本発明によれば、第2の態様の頭部用スケールが提供される。すなわち、1辺の長さの比が1:2:2:2:2:1である6個の格子を一列に、かつ、開き角の変位可能に連結した格子連続体を有する頭部用スケール。このように連結した格子連続体は、全体の伸縮状態により自由に被検体の頭部の細部に合わせることができるとともに、その伸縮状態に関わらず、格子の長手方向の対角距離は、1:2:2:2:2:1である。よって、格子連結体の連結点が示す位置が、国際10−20法による基準点に対応する。
【0022】
例えば、格子連続体を2本、中心で交差させ連結することにより、前後、左右の2方向に基準点を決定することができる。
【0023】
交差した2本の格子連続体の1本を前後用スケール、もう1本を左右用スケールとし、これらにさらに2本の前記格子連続体を右外周用スケールと左外周用スケールとして連結した構成することも可能である。このとき、右外周用スケールの両端は、前後用スケールの格子連続体の両端の格子とその内側の格子との連結部にそれぞれ連結され、左外周用スケールの両端は、前記右外周用スケールの両端が連結されたのと同じ前記連結部に連結された構成とすることにより、右外周用スケールと左外周用スケールで輪を構成することができる。これにより、頭部に被せることが可能なスケールを提供できる。
【0024】
右外周用スケールの格子連続体の中心の連結部は、左右用スケールの格子連続体の右端部の格子とその内側の格子との連結部に連結され、左外周用スケールの格子連続体の中心の連結部は、左右用スケールの格子連続体の左端部の格子とその内側の格子との連結部に連結されている構成とすることも可能である。これにより、前後用スケールの端部を鼻根と後頭結節、左右用スケールの端部を左右耳介前点に位置決めし、全体を頭に沿うように伸縮するだけで、17点の基準点をその連結点から決定することができる。
【0025】
例えば、格子連続体を構成する6個の格子のうち隣接する格子の辺は、連続した帯により構成することができる。これにより、隣接する格子の開き角を伸縮状態に関わらず同一にすることができる。
【0026】
前後用スケールの前側の端部から2個目と3個目の格子の連結部と、左外周用スケールの前側の端部から2個目と3個目の格子の連結部に、1辺の長さの比が1:1である2個の格子の連続体の両端を連結することができる。また、前後用スケールの前側の端部から2個目と3個目の格子の連結部と、右外周用スケールの前側の端部の2個目と3個目の格子の連結部に、1辺の長さの比が1:1である2個の格子の連続体の両端を連結することができる。これにより、2個の格子の連続体の中央の連結点から、さらに2点の基準点を決定することができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明の頭部用スケールを用いることにより、国際10−20法による基準点を容易に設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】第1の実施形態の簡易型スケールの上面図。
【図2】図1の簡易型スケールを被検体1の頭に当てた状態を示す斜視図。
【図3】図1の簡易型スケールの前後用スケール10の(a)帯11,12の形状を示す上面図、(b)帯11,12を重ねてピン11c,12cで係合した状態を示す上面図、(c)円盤13の上面図、(d)帯11,12の上に円盤13を重ねた状態の上面図。
【図4】図1の簡易型スケールの前後用スケール10に左右用スケール10を重ねることを示す説明図。
【図5】図1の簡易型スケールを被検体1の頭に当てて伸縮させた状態の一例を示す上面図。
【図6】図1の簡易型スケールを頭の小さい被検体1に当てて伸縮させた状態の一例を示す上面図。
【図7】第2の実施形態の全位置決定用スケールを被検体1の頭に被せた状態を示す斜視図。
【図8】図7の全位置決定用スケールを構成する格子連続体の構造を示す上面図。
【図9】図8の格子連続体を4本組み合わせて図7の全位置決定用スケールを構成することを示す説明図。
【図10】図8の格子連続体を構成する3種類の帯E、F、Gの形状を示す上面図。
【図11】図7の全位置決定用スケールに連結するための、格子2個の連続体を示す上面図。
【図12】被検体の頭皮上での国際10−20法による基準点の位置を示す(a)左側面図、(b)正面図、(c)上面図。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明の一実施の形態について説明する。
(第1の実施の形態)
第1の実施の形態として、簡易型スケールについて図1〜図5を用いて説明する。
【0030】
図1のように、本実施形態の簡易型スケールは、前後用スケール10と左右用スケール20とを直交させ、連結ピン30を貫通させて留めた構造である。これらを図2のように被検体1の頭部に沿わせて配置することにより、国際10−20法のCz、Fz、Pz、C3、C4の位置を求めることができる。
【0031】
前後用スケール10は、図3(a)に示した形状の柔軟性のある2枚の帯11,12を図3(b)のように重ねた構造である。帯11には、ガイド用スリット11aと、中央スリット11bが設けられ、端部にピン11cが固定されている。帯12には、ガイド用スリット12aと、中央スリット12bが設けられ、端部にピン12cが固定されている。帯11、12を重ねた状態で、帯11のピン11cを帯12のガイド用スリット12aに挿入してこれと係合させ、帯12のピン11cを帯11のガイド用スリット11aに挿入し、これと係合させている。これにより、2枚の帯11,12は互いに、重なった状態でスリット11a、12aに沿って移動することができ、これにより前後用スケール10は伸縮することができる。
【0032】
帯11,12を一体的に、同じ移動量で伸び縮みさせるために、帯11の上には、図3(c)の形状の円盤13が、図3(d)のように重ねて配置されている。
【0033】
連結ピン30は、2枚の帯11、12の中央スリット11a、12aと、円盤13の中央の穴13aを貫通している。
【0034】
また、帯11、12には、突起11d、12dが設けられ、ピン31、32がそれぞれ固定されている。帯11のピン31は、円盤13のスリット33に係合し、帯12のピン32は、円盤13のスリット34に係合している。スリット33,34の長手方向は、ピン30を中心に対称に半径方向に伸びている。
【0035】
このように、半径方向に2本のスリット33,34をもつ円盤13に、帯11,12のピン31,32を係合していることにより、2枚の帯11,12のうち一方の帯11が、ピン30を中心に操作者により伸ばされた場合、円盤13が回転することにより、他方の帯12もスリット34によって付勢され、同じ移動量だけ反対方向に移動する。これにより、帯11,12が一体的に同じ移動量で伸びまたは縮む、前後用スケール10が構成される。
【0036】
下側の帯12の上には、図1、図3(d)のように全長測定用目盛り16が付され、上側の帯11上には、正中前頭部の基準点Fzの位置を示すFz目盛り17と、正中頭頂部の基準点Pzの位置を示すPz目盛り18とが付されている。全長測定用目盛り16は、前後用スケール10の全体の長さを示す目盛りおよび数値が予め求めた位置に刻まれている。Fz目盛り17の目盛りおよび数値は、それぞれの伸縮状態のときのFz,Pz位置をそれぞれ示すようにあらかじめ求めた位置に刻まれている。
【0037】
一方、左右用スケール20は、図4に示すように、前後用スケール10と同様の構成であり、柔軟性のある2枚の帯21,22と円盤23とが重ねられた構造である。ただし、前後用スケール10と異なり、円盤23は、帯21,22の下に配置されている。帯21,22と円盤は、前後用スケール10に対して直交し、かつ、円盤13同士が重なるように配置され、図1のように連結ピン30により連結されている。よって、2枚の円盤13、23の間で4枚の帯11,12、21,22が挟まれた構成であり、4枚の帯の突起11d,12d等は、2枚の円盤13の間で移動するため、外面は滑らかである。
【0038】
左右用スケール20も、前後用スケール10と同様に、2枚の帯21,22の一方の帯21が、ピン30を中心に操作者により伸ばされた場合、円盤23が回転することにより、他方の帯22も、同じ移動量だけ反対側に移動し、帯21,22が一体的に同じ移動量で伸びまたは縮む構成である。
【0039】
下側の帯22の上には、全長測定用目盛り26が付され、上側の帯21上には、中心部の基準点C3の位置を示すC3目盛り27と、中心部の基準点C4の位置を示すC4目盛り28とが付されている。
【0040】
操作者は、前後用スケール10を伸縮させ、図2に示すように、一方の端部14が被検体1の鼻根2に、他方の端部15が後頭結節に位置するように配置する。同時に左右用スケール20も伸縮させ、一方の端部24が被検体1の左耳介前点3に、他方の端部25が右耳介前点に位置するように配置する。この状態で連結ピン30が示す位置が正中中心の基準点Czである。
【0041】
操作者は、前後用スケール10の上側の帯11の端部を目盛り指示線19として用い、全長測定用目盛り16上で目盛り指示線19と重なる目盛りの数値を読む。全長測定用目盛り16は、この数値が、前後用スケール10の両端14,15の距離を表すように、あらかじめ求められたピッチおよび数値で刻まれている。よって、目盛り指示線19の数値を読み出すことにより、鼻根2から後頭結節までの全長を測定できる。
【0042】
また、Fz目盛り17は、前後用スケール10のその伸縮状態で、全長測定用目盛り16から読みだした数値と同じ数値の目盛りが指している位置がFzとなるように、すなわちCzから全長の20%の距離だけ鼻根側の位置に当該全長数値が付された目盛りが位置するように、予め求めた位置に目盛りおよび数値が刻まれている。よって、Fz目盛り17から、全長測定用目盛り16により測定した数値と同じ数値を示す目盛りを探すと、当該目盛りが指す位置が当該被検体1のFz位置である。このFz位置を頭皮上にマーキング等することにより、Fz位置を容易に決定することができる。
【0043】
また、Pz目盛り18は、前後用スケールのその伸縮状態で、全長測定用目盛り16から読みだした数値と同じ数値の目盛りが指している位置がPzとなるように、すなわちCzから全長の20%の距離だけ後頭部側の位置に当該全長数値が付された目盛りが位置するように、予め求めた位置に目盛りおよび数値が刻まれている。よって、Pz目盛り18から全長測定用目盛り16により測定した数値と同じ数値を示す目盛りを探すと、当該目盛りが指す位置が当該被検体1のPz位置である。このPz位置を頭皮上にマーキング等することにより、Pz位置を容易に決定することができる。
【0044】
同様に、操作者は、左右用スケール20の上側の帯21の端部を目盛り指示線29として用い、全長測定用目盛り26上で目盛り指示線29と重なる目盛りの数値を読み出す。全長測定用目盛り26は、この数値が、左右用スケール20の両端24,25の距離を表すように、あらかじめ求められたピッチおよび数値で刻まれている。よって、目盛り指示線29の数値を読み出すことにより、被検体1の左耳介前点3から右耳介前点までの全長を測定できる。
【0045】
また、C3目盛り27は、左右用スケール20のその伸縮状態で、全長測定用目盛り26から読みだした数値と同じ数値の目盛りが指している位置がC3の位置となるように、すなわちCzから全長の20%の距離だけ左耳介側の位置に当該全長数値が付された目盛りが位置するように、予め求めた位置に目盛りおよび数値が刻まれている。よって、C3目盛り27から全長測定用目盛り26により測定した数値と同じ数値を示す目盛りを探すと、当該目盛りが指す位置が当該被検体1のC3の位置である。このC3位置を頭皮上にマーキング等することにより、C3位置を容易に決定することができる。
【0046】
また、C4目盛り28は、左右用スケール20のその伸縮状態で、全長測定用目盛り26から読みだした数値と同じ数値の目盛りが指している位置がC4となるように、すなわちCzから全長の20%の距離だけ右耳介側の位置に当該全長数値が付された目盛りが位置するように、予め求めた位置に目盛りおよび数値が刻まれている。よって、全長測定用目盛り26により測定した数値と同じ数値を示すC4目盛り28の目盛りを探し、当該目盛りが示す位置を頭皮上にマーキング等することにより、C4位置を容易に決定することができる。
【0047】
具体例として、前後用スケール10の端部14を被検体1の鼻根2に、他方の端部15を後頭結節に、左右用スケール20の端部24を被検体1の左耳介前点3に、他方の端部25を右耳介前点にそれぞれ配置した状態が図5の伸縮状態であった場合について説明する。実際は、図2のように被検体の頭に沿わせて測定および基準点の位置決めを行うが、全体を図示するために、図5のように平面に広げた状態で説明する。
【0048】
図5の例の場合、被検体1の鼻骨から後頭結節までの長さは、前後用スケール10の目盛り指示線19(帯11の端部)が全長測定用目盛り16と重なる位置を操作者から読むことにより42cmであることがわかる。よって、Fz用目盛り17から42の数値の目盛りを探すと、その目盛りの指している位置がFzの位置である。また、Pz用目盛り18から42の数値の目盛りを探すと、その目盛りの指している位置がPzの位置である。よって、これらの位置を頭皮上にマーキング等することにより容易にFz、Pzの位置を求めることができる。
【0049】
また、図5の例において、被検体1の左右の耳介間の長さは、左右用スケール20の目盛り指示線29(帯21の端部)が全長測定用目盛り26と重なる位置を操作者が読むことにより、45cmであることがわかる。よって、C3用目盛り27から45の数値の目盛りを探すと、その目盛りの指している位置がC3の位置である。また、C4用目盛り18から45の数値の目盛りを探すと、その目盛りの指している位置がC4の位置である。よって、これらの位置を頭皮上にマーキング等することにより容易にC3、C4の位置を求めることができる。
【0050】
同様に、被検体1の頭が小さい場合の例を図6に示す。図6の例の場合、被検体1の鼻骨から後頭結節までの長さは、前後用スケール10の全長測定用目盛り16を読むことで33cmであることがわかる。よって、Fz用目盛り17から33の数値の目盛りを探すことにより、Fz位置を求めることができる。また、Pz用目盛り18の33の数値の目盛り位置を探すことにより、Pz位置を求めることができる。
【0051】
図6の例において、被検体1の左右の耳介間の長さは、左右用スケール20の全長測定用目盛り26を読むことで35cmであることがわかる。C3用目盛り27から35の数値の目盛りを探すことにより、C3位置を求めることができる。また、C4用目盛り18から35の数値の目盛りを探すことにより、C4位置を求めることができる。
【0052】
このように、第1の実施形態では、連結ピン30(Cz)を中心に両側に同じ移動量だけ伸縮する前後用スケール10と左右用スケール20を用いた場合、伸縮状態ごとにFz、Pz、C3、C4の位置が一義的に決まることを利用して、あらかじめ目盛り17,18,27,28と、目盛りに対応する全長の数値を刻んでおくことにより、容易にFz、Pz、C3、C4およびCzを位置決めすることができる。
【0053】
これにより、巻き尺を頭に当てて全長を測定してメモし、電卓等で長さを計算し、求めた長さを巻き尺で計って頭皮上での位置を出すという作業が不要になり、容易に国際10−20法の基準点Fz、Pz、C3、C4およびCzを求めることができる。よって、短時間でプローブや電極をこれらの基準点に配置することができ、被検者および操作者の負担が少ない。
【0054】
(第2の実施の形態)
第2の実施の形態として、全位置決定用スケールについて図7等を用いて説明する。
【0055】
図7の全位置検出用スケールは、図7に示したように、伸縮可能な複数の格子を連結した構造であり、被検体1の頭にかぶせて用いる。これにより、被検体の頭の大きさにかかわらず、国際10−20法による19点の基準点のうち17点の位置を容易に決定できる。また、後述の中点検出用の部材をさらに連結することにより、残り2点を決定できる。
【0056】
本実施形態の全位置検出用スケールの構造について具体的に説明する。本実施の形態の全位置検出用スケールは、図8に示したように6つの格子が伸縮可能に連結された部材(格子連続体)を4本、図9のように連結したものであり、図9において3つの連結点84を連結し、3つの連結点85を連結することにより輪をつくり、図7のように頭にかぶせることができるスケールを構成している。
【0057】
図8の格子連続体は、図10に示すように可撓性ある3種の帯E,G,Fを交差させ、交差点を角度変位可能に連結し、交差した帯の端部を隣接する交差した帯の端部と連結することにより構成されている。
【0058】
帯Eには、両端に貫通孔e1、e3が備えられ、中央に貫通孔e2が備えられている。貫通孔e1と貫通孔e2との距離は、貫通孔e2と貫通孔e3との距離と等しい。
【0059】
帯Gには、両端に貫通孔g1、g3が備えられ、その間に貫通孔g2が備えられている。貫通孔g2とg3の距離は、貫通孔g1と貫通孔g2の距離の半分に設定されている。貫通孔g1と貫通孔g2の距離は、帯Eの貫通孔e1、e2間と等しく設定されている。
【0060】
帯Hには、両端に貫通孔h1、h2が備えられ、その距離は、貫通孔g2とg3の距離と等しい、すなわち帯Eの貫通孔e1、e2間の距離の半分である。
【0061】
帯E(E1〜E6)を図8のように2本づつ交差させたものを3組用意し、交差点の貫通孔e2にピンk3,k4,k5をそれぞれ挿入して、交差角度を変位可能に連結する。この3組の帯Eの交差体を一列に並べ、隣接する交差体の両端の貫通孔e1,e3にピンを挿入して角度変位可能に図8のように連結する。
【0062】
一方、2本の帯Gを交差させて貫通孔g2をピンk2、k6を挿入し、交差角度の変位可能に固定したものを二組用意し、3組の帯Eの交差体の連続体の両側に配置し、図8のように連結する。さらにその両端に帯Hを図8のようにピンで連結し、帯Hの端部同士を連結する。
【0063】
これにより、図8のように、6つの格子が直線状に並んだ格子連続体が得られる。3種の帯E、G、Hの貫通孔の間隔を、図10のように定めているため、両端の2つの格子の一辺の長さを1とすると、その間の4つの格子の一辺の長さは2である。また、隣接する格子の辺は、一本の連続する帯によって構成されているため、隣接する格子の開き角αは、対頂角となり等しい。
【0064】
よって、格子連続体の6つの格子の開き角αが等しくなるように配置することにより、各格子の長さ(長手方向に対向する頂点間の距離)は、常に全長に対して、10%、20%、20%、20%、20%、10%となる。この割合は、格子連続体の伸縮状態に関わらず一定である。
【0065】
本実施形態では、この格子連続体を4本用い、これを図9のように連結する。すなわち、前後用スケール40、左右用スケール50、右外周用スケール60、左外周用スケール70としてそれぞれ格子連続体を用い、図9のように連結点81、82、83で連結し、さらに右外周用スケール60と左外周用スケール70をその両端の連結点84、85で連結して輪にする。
【0066】
このように連結することにより、前後用スケール40と左右用スケール50が相互の中央で交差し、前後用スケール40の両端からその全長の10%上がった位置に右外周用スケール60と左外周用スケール70の構成する輪が連結されたスケールが構成される。右外周用スケール60と左外周用スケール70は、それぞれの中央で、左右用スケール40の両端からその全長の10%上がった位置に連結されている。
【0067】
なお、図9のように右外周用スケール40の連結ピンを連結点84から順にk31〜k37と呼ぶ。左外周用スケール70のピンを連結点84から順にk41〜k47と呼ぶ。前後用スケール40のピンを前側から順にk11〜k17と呼ぶ。左右用スケール50のピンを右側から順にk21〜k27と呼ぶ。
【0068】
国際10−20法の各基準点は、図12(a)、(b),(c)に示すように、鼻根から後頭結節までの長さを10%、20%、20%、20%、20%、10%に分割することにより、鼻根から30%の位置をFz、50%の位置をCz、70%の位置をPzと規定する。また、左右の耳介前点を結ぶ長さを10%、20%、20%、20%、20%、10%に分割することにより左耳介側から順にT3、C3、Cz、C4、T4と規定する。さらに、鼻根および後頭結節からそれぞれ10%頭頂寄りの点と、左右の耳介から10%頭頂寄りのT3、T4を通って頭を一周する輪を想定し、この輪において鼻根上部からT3を通って後頭結節上部に至る長さを10%、20%、20%、20%、20%、10%に分割することにより鼻根上部側から順にFp1、F7、T3、T5、O1と規定する。また、鼻根上部からT4を通って後頭結節上部に至る長さを10%、20%、20%、20%、20%、10%に分割することにより鼻根上部側から順にFp2、F8、T4、T6、O2と規定する。
【0069】
よって、被検体1の基準点を決定する際には、図7に示すように本実施形態のスケールを頭にかぶせ、前後用スケール40の端部(ピンk11)の位置を鼻根にあて、他端(ピンk17)の位置を後頭結節に当て、格子の開き角が等しくなるように調整する。同様に左右用スケール50の端部(ピンk21)の位置を右耳介前部にあて、他端(ピンk27)の位置を左耳介前部に当て、格子の開き角が等しくなるように調整する。この状態で右外周用スケール60と左外周用スケール50についてそれぞれ格子の開き角が等しくなるように調整する。
【0070】
これにより、各構成連結体のピンの位置は、それぞれの全長の10%、20%、20%、20%、20%、10%を指す。
【0071】
よって、図7および図9のように前後用スケール40のピンk13、k14、k15の位置がそれぞれFz、Cz、Pzの位置を示す。左右用スケール50のk22、k23、k24、k25、k26の位置がそれぞれT4、C4、Cz、C3、T3の位置を示す。左外周用スケール70のk42、k43、k44、k45、k46の位置がそれぞれFp1、F7、T3、T5、O1の位置を示す。右外周用スケール60のk32、k33、k34、k35、k36の位置がそれぞれFp2、F8、T4、T6、O2の位置を示す。
【0072】
以上により、国際10−20法上の基準点のうち17点の位置を決定できる。
【0073】
また、図11のように同じ大きさの格子が2個連結された格子連結体を用意し、一端のピン91をF8のピンk33に連結し、他端のピン93をFzのピンk13に連結することにより、その中点の位置F4を決定できる。同様に、図11の格子連結体をF7のピンk43と、Fzのピンk13と連結することにより、その中点の位置F3を決定できる。なお、図11の格子連結体の格子の一辺の長さは、図8の構成連結体の格子の一辺と異なる長さであっても構わない。
【0074】
以上により、国際10−20方向のすべての基準点を決定できる。
【0075】
このように、第2の実施の形態では、可撓性があり、伸縮可能な格子連結体を用いることにより、その伸縮の度合いに関わらず、格子の連結ピンの位置が全長の10%、20%、20%、20%、20%、10%を示すことを利用して、被検体1の頭に被せるだけで、頭の寸法を計測することなく、全基準点位置をきわめて容易に決定することができる。よって、短時間でプローブや電極をこれらの基準点に配置することができ、被検者および操作者の負担が少ない。
【符号の説明】
【0076】
10…前後用スケール、11…帯、12…帯、13…円盤、16…全長測定用目盛り、17…Fz用目盛り、18…Pz用目盛り、20…左右用スケール、21…帯、22…帯、23…円盤、26…全長測定用目盛り、27…C3用目盛り、28…C4用目盛り、30…連結ピン、31、32…ピン、33,34…スリット、40…前後用スケール、50…左右用スケール、60…右外周用スケール、70…左外周用スケール、81、82,83,84…連結点、91,92,93…ピン、E,G,H…帯。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向移動可能に重ねられた可撓性のある第1および第2の帯と、前記重ねられた第1および第2の帯の全体の長さの中心を示す中心部材と、前記第1の帯の端部を前記中心に対して所定量だけ伸びまたは縮ませた場合に、前記第2の帯の端部を前記中心に対して、前記第1の帯とは逆の方向へ同じ移動量だけ伸びまたは縮ませる機構部とを有し、
前記第1の帯の上には、前記第1および第2の帯の伸縮状態を示すための伸縮状態表示目盛りと数値が記載され、前記第2の帯の上には、前記伸縮状態表示目盛りに対応した数値、および、その数値の示す伸縮状態において前記中心部材の位置から予め定めた距離を示す基準点表示目盛りが記載されていることを特徴とする頭部用スケール。
【請求項2】
請求項1に記載の頭部用スケールにおいて、前記第1および第2の帯と前記機構部を二組有し、一組の前記第1および第2の帯は、他の組の前記第1および第2の帯と直交して配置されていることを特徴とする頭部用スケール。
【請求項3】
請求項1または2に記載の頭部用スケールにおいて、前記基準点表示目盛りは、前記第2の帯の上に2種類記載され、該2種類の基準点表示目盛りは、前記中心部材を挟んで両側に記載されていることを特徴とする頭部用スケール。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項に記載の頭部用スケールにおいて、前記伸縮状態表示目盛りは、前記第2の帯の端部を基準として読まれるようにその目盛りおよび数値が記載されていることを特徴とする頭部用スケール。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1項に記載の頭部用スケールにおいて、前記機構部は、中心が前記中心部材に回転可能に固定された円盤を有し、
前記円盤は、前記中心部材に対して対称に形成された2本のスリットを備え、前記2本のスリットには、前記第1および第2の帯に固定された突起とそれぞれ係合していることを特徴とする頭部用スケール。
【請求項6】
1辺の長さの比が1:2:2:2:2:1である6個の格子を一列に、かつ、開き角の変位可能に連結した格子連続体を有することを特徴とする頭部用スケール。
【請求項7】
請求項6に記載の頭部用スケールにおいて、前記格子連続体を2本、中心で交差させ連結したことを特徴とする頭部用スケール。
【請求項8】
請求項7に記載の頭部用スケールにおいて、前記交差した2本の格子連続体の1本を前後用スケール、もう1本を左右用スケールとし、これらにさらに2本の前記格子連続体を右外周用スケールと左外周用スケールとして連結した構成であり、
前記右外周用スケールの両端は、前記前後用スケールの格子連続体の両端の格子とその内側の格子との連結部にそれぞれ連結され、前記左外周用スケールの両端は、前記右外周用スケールの両端が連結されたのと同じ前記連結部に連結されることにより、前記右外周用スケールと左外周用スケールは、輪を構成していることを特徴とする頭部用スケール。
【請求項9】
請求項8に記載の頭部用スケールにおいて、前記右外周用スケールの格子連続体の中心の連結部は、前記左右用スケールの格子連続体の右端部の格子とその内側の格子との連結部に連結され、前記左外周用スケールの格子連続体の中心の連結部は、前記左右用スケールの格子連続体の左端部の格子とその内側の格子との連結部に連結されていることを特徴とする頭部用スケール。
【請求項10】
請求項6ないし9に記載の頭部用スケールにおいて、6個の格子のうち隣接する格子の辺は、連続した帯により構成されていることを特徴とする頭部用スケール。
【請求項11】
請求項9に記載の頭部用スケールにおいて、前記前後用スケールの前側の端部から2個目と3個目の格子の連結部と、前記左外周用スケールの前側の端部から2個目と3個目の格子の連結部には、1辺の長さの比が1:1である2個の格子の連続体の両端が連結され、
前記前後用スケールの前側の端部から2個目と3個目の格子の連結部と、前記右外周用スケールの前側の端部の2個目と3個目の格子の連結部には、1辺の長さの比が1:1である2個の格子の連続体の両端が連結されていることを特徴とする頭部用スケール。
【請求項1】
長手方向移動可能に重ねられた可撓性のある第1および第2の帯と、前記重ねられた第1および第2の帯の全体の長さの中心を示す中心部材と、前記第1の帯の端部を前記中心に対して所定量だけ伸びまたは縮ませた場合に、前記第2の帯の端部を前記中心に対して、前記第1の帯とは逆の方向へ同じ移動量だけ伸びまたは縮ませる機構部とを有し、
前記第1の帯の上には、前記第1および第2の帯の伸縮状態を示すための伸縮状態表示目盛りと数値が記載され、前記第2の帯の上には、前記伸縮状態表示目盛りに対応した数値、および、その数値の示す伸縮状態において前記中心部材の位置から予め定めた距離を示す基準点表示目盛りが記載されていることを特徴とする頭部用スケール。
【請求項2】
請求項1に記載の頭部用スケールにおいて、前記第1および第2の帯と前記機構部を二組有し、一組の前記第1および第2の帯は、他の組の前記第1および第2の帯と直交して配置されていることを特徴とする頭部用スケール。
【請求項3】
請求項1または2に記載の頭部用スケールにおいて、前記基準点表示目盛りは、前記第2の帯の上に2種類記載され、該2種類の基準点表示目盛りは、前記中心部材を挟んで両側に記載されていることを特徴とする頭部用スケール。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項に記載の頭部用スケールにおいて、前記伸縮状態表示目盛りは、前記第2の帯の端部を基準として読まれるようにその目盛りおよび数値が記載されていることを特徴とする頭部用スケール。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1項に記載の頭部用スケールにおいて、前記機構部は、中心が前記中心部材に回転可能に固定された円盤を有し、
前記円盤は、前記中心部材に対して対称に形成された2本のスリットを備え、前記2本のスリットには、前記第1および第2の帯に固定された突起とそれぞれ係合していることを特徴とする頭部用スケール。
【請求項6】
1辺の長さの比が1:2:2:2:2:1である6個の格子を一列に、かつ、開き角の変位可能に連結した格子連続体を有することを特徴とする頭部用スケール。
【請求項7】
請求項6に記載の頭部用スケールにおいて、前記格子連続体を2本、中心で交差させ連結したことを特徴とする頭部用スケール。
【請求項8】
請求項7に記載の頭部用スケールにおいて、前記交差した2本の格子連続体の1本を前後用スケール、もう1本を左右用スケールとし、これらにさらに2本の前記格子連続体を右外周用スケールと左外周用スケールとして連結した構成であり、
前記右外周用スケールの両端は、前記前後用スケールの格子連続体の両端の格子とその内側の格子との連結部にそれぞれ連結され、前記左外周用スケールの両端は、前記右外周用スケールの両端が連結されたのと同じ前記連結部に連結されることにより、前記右外周用スケールと左外周用スケールは、輪を構成していることを特徴とする頭部用スケール。
【請求項9】
請求項8に記載の頭部用スケールにおいて、前記右外周用スケールの格子連続体の中心の連結部は、前記左右用スケールの格子連続体の右端部の格子とその内側の格子との連結部に連結され、前記左外周用スケールの格子連続体の中心の連結部は、前記左右用スケールの格子連続体の左端部の格子とその内側の格子との連結部に連結されていることを特徴とする頭部用スケール。
【請求項10】
請求項6ないし9に記載の頭部用スケールにおいて、6個の格子のうち隣接する格子の辺は、連続した帯により構成されていることを特徴とする頭部用スケール。
【請求項11】
請求項9に記載の頭部用スケールにおいて、前記前後用スケールの前側の端部から2個目と3個目の格子の連結部と、前記左外周用スケールの前側の端部から2個目と3個目の格子の連結部には、1辺の長さの比が1:1である2個の格子の連続体の両端が連結され、
前記前後用スケールの前側の端部から2個目と3個目の格子の連結部と、前記右外周用スケールの前側の端部の2個目と3個目の格子の連結部には、1辺の長さの比が1:1である2個の格子の連続体の両端が連結されていることを特徴とする頭部用スケール。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2010−158398(P2010−158398A)
【公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−2726(P2009−2726)
【出願日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【出願人】(000153498)株式会社日立メディコ (1,613)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【出願人】(000153498)株式会社日立メディコ (1,613)
【Fターム(参考)】
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