説明

頸部支持部材を有する患者支持装置

【課題】患者の快適性を高め、また技師の利便性を向上させた、新規な歯科用椅子を提供する。
【解決手段】直立状態と傾倒状態との間で移動可能な患者支持装置10は、下部および上部を有する一体型のクッション部材30と、頸部支持部材収容区域と、頸部支持部材76を備えることができる。下部は、患者がこの装置に座るとき、患者の背中下部の少なくとも一部が接触するよう構成し、上部は、患者がこの装置に座るとき、患者の頭部の少なくとも一部に接触するように構成する。一体型クッション部材30は、下部と上部との間に中間部を有することもできる。頸部支持部材76は、患者における頸部の後側の少なくとも一部と接触するよう構成した前面と、後面とを有し、この後面の一部は頸部支持部材収容区域に収容する構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願による発明は、新規な患者支持装置に関し、特に、患者の快適性を高め、また技師の利便性を向上させた、新規な歯科用椅子に関する。
【背景技術】
【0002】
歯科用椅子等の患者支持装置は、一般に、椅子を昇降させる機構、および椅子の背凭れを傾けて直立状態から傾倒状態に調整する機構を有する。例えば、患者は通常直立状態の椅子に座り、歯科医または技師(以下、操作者と称する)は、操作者が行う処置に最も都合の良いポジションまたは最適なポジションに患者を動かすために椅子の調整を行う。患者の快適性、および患者が容易に直立状態から傾倒状態に移行できることが大切である。したがって、患者支持装置を調整するための機構および患者支持装置内での患者の位置を調整するための機構の改善は、常に要望されている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
患者の快適性および操作者の利便性を向上する、改善した患者支持装置の実施形態および実施例を以下に説明する。
【0004】
一実施形態では、患者支持装置は、直立状態と傾倒状態との間で移動可能とする。この装置は、下部および上部を有する一体型のクッション部材を備えることができる。患者がこの装置を使用するとき、該下部は、少なくとも患者の背中下部の少なくとも一部に接触するよう構成し、また上部は、患者がこの装置を使用するとき、患者の頭部の少なくとも一部に接触するよう構成する。一体型のクッション部材は、さらに、下部と上部との間に中間部を有することもできる。この装置は、前面および後面を有する頸部支持部材を備えることもできる。頸部支持部材の前面は、患者における頸部の後側の少なくとも一部に接触するよう構成することができる。この装置は、一体型のクッション部材の中間部に配置する頸部支持部材収容区域を備えることもできる。頸部支持部材の後面の少なくとも一部分を頸部支持部材収容区域内に収容し、また頸部支持部材は、長手方向の複数の位置間で移動可能な構成とすることができる。
【0005】
特定の実施形態では、装置を直立状態と傾倒状態との間で移動する間に、頸部支持部材は、移動可能とする。他の特定の実施形態では、頸部支持部材収容区域は、細長いスロット部分を有する構成とすることができる。他の特定の実施形態では、頸部支持部材は、頸部支持部材の後面から突出し、細長いスロット部分に収容するよう構成した突出部材を有する。
【0006】
他の特定の実施形態では、頸部支持部材は、頸部支持部材収容区域内に、第1の向きまたは第2の向きで収容するよう構成することができる。第2の向きは、頸部支持部材を第1の向きから約180゜回転させることによって得ることができる。
【0007】
他の特定の実施形態では、頸部支持部材は、釈放可能な固定機構を備え、この釈放可能な固定機構は、頸部支持部材収容区域に頸部支持部材を釈放可能に保持するよう構成するることができる。他の特定の実施形態では、頸部支持部材の前面は、クッション部材を備えることができる。
【0008】
他の実施形態では、直立状態と傾倒状態との間で移動可能な患者支持装置を提供する。この装置は、患者の上半身の少なくとも一部を支持するためのフレーム部材を備えることができる。このフレーム部材は、実質的にフレーム部材の長手方向に延在する頸部支持部材収容区域を有することができる。この装置は、前面および後面を有する頸部支持部材を備えることができる。頸部支持部材の前面は、患者における頸部の後側の少なくとも一部に接触するように構成することができる。この頸部支持部材は、頸部支持部材の後面から突出する突出部材であって、頸部支持部材収容区域で滑動自在に保持するよう構成した突出部材を有することができる。
【0009】
特定の実施形態では、頸部支持部材収容区域は、細長いスロットを備える。他の特定の実施形態では、突出部材を細長いスロットに収容することができ、また、この突出部材を、細長いスロット内で第1位置から第2位置に移動可能な構成とすることができる。他の特定の実施形態では、頸部支持部材は、第1の向きまたは第2の向きのうち、一方の向きにして頸部支持部材収容区域内に収容するよう構成することができ、該第2の向きは、頸部支持部材を第1の向きから約180゜回転させることによって得る。
【0010】
他の特定の実施形態では、突出部材は、頸部支持部材の後面の横方向中心線からオフセットすることができる。他の特定の実施形態では、突出部材を頸部支持部材収容区域に確実に係合させ、この突出部材と頸部支持部材収容区域との係合は、手動で釈放可能な構成とすることができる。他の特定の実施形態では、頸部支持部材収容区域は、突出部材を頸部支持部材収容区域内に釈放可能に保持するよう構成した釈放可能な固定機構を備えることができる。
【0011】
特定の実施形態では、頸部支持部材の前面は、クッション部材を備えることができる。このクッション部材は、患者の頸部の後側と接触する寸法にすることができる。また、クッション部材が患者の頸部の後側に接触するとき、このクッション部材が患者の後頭部の上方部分に接触しないように、クッション部材を構成することができる。
【0012】
他の特定の実施形態では、フレーム部材は、頂部および底部を有することができる。このフレーム部材は、ほぼ底部から頂部にわたり延在する単一の連続クッションであって、頸部支持部材収容区域の周囲に延在する、該単一の連続クッションを備えることができる。単一の連続クッションにおけるフレーム部材の底部をカバーする部分は、患者の背中下部の少なくとも一部に接触する構成とすることができる。
【0013】
他の実施形態では、患者支持装置に患者を受け入れるために頸部支持部材を調整する方法を提供する。この方法は、頸部支持部材収容区域を有するフレーム部材、およびこの頸部支持部材収容区域内に少なくとも部分的に収容する頸部支持部材を有する患者支持装置を設けるステップと、患者支持装置に患者を受け入れるステップであって、フレーム部材の下部が患者の背中の少なくとも一部に接触し、フレーム部材の上部が少なくとも患者の頭部の一部に接触するよう患者を受け入れるステップと、フレーム部材を第1の向きから第2の向きに移動する移動ステップであって、フレーム部材の移動により、頸部支持部材を頸部支持部材収容区域内で第1位置から第2位置に向けての移動を生ずる、該移動ステップと、を有する。
【0014】
他の特定の実施形態では、患者が患者支持装置に受け入れる前に、頸部支持部材を頸部支持部材収容区域から取り外し、約180゜回転させ、再び頸部支持部材収容区域に再配置し、これにより、頸部支持部材と患者との間に異なるインタフェースを提供する。他の特定の実施形態では、フレーム部材の第1の向きから第2の向きへの移動は、フレーム部材を、ほぼ直立した状態からほぼ水平に傾倒した状態に回動させるステップを有する。
【0015】
他の特定の実施形態では、種々の回動機構および回動要素を、上述の頸部支持部材、装置および方法と組み合わせて使用することができる。例えば、一実施形態では、回動可能な患者支持装置を提供する。この装置は、上部フレーム部材と、この上部フレーム部材に連結する回動部材と、回動ベース部材と、アクチュエータ組立体と、を備えることができる。回動ベース部材を回動部材に連結することができ、また回動部材を、回動ベース部材に対して回動軸線周りに回動させることができる。アクチュエータ組立体は、第1状態と第2状態との間で移動可能な構成にすることができ、これにより、アクチュエータの第1端部と第2端部との間の長手方向距離は、これら2つの状態で異なる。アクチュエータ組立体の第1端部は、回動軸線から外れた区域で回動部材に結合することができ、アクチュエータ組立体の第2端部は、回動ベース部材に結合することができる。このようにして、第1状態から第2状態へのアクチュエータ組立体の移動によって、回動部材が回動軸線周りの回動を生ずる。
【0016】
他の実施形態では、患者支持装置の高さは、上述の頸部支持部材、他の装置および方法を組み合わせて調節可能とすることができる。例えば、一実施形態では、第1の高さから第2の高さに移動することができる患者支持装置と共に使用するための流体制御システムを提供する。このシステムは、リフトアームおよびほぼ直立したシリンダ組立体を備えることができる。リフトアームは、第1端部および第2端部を有することができ、このリフトアームの第1端部は、ベース部材に回動可能に結合することができ、リフトアームの第2端部は、椅子構体に結合することができる。ほぼ直立したシリンダ組立体は、ベース部分と、リフトアームに接触して支持する伸張可能部材と、を有することができる。この伸張可能部材は、第1位置から第2位置まで移動可能にすることができる。シリンダ組立体のベース部分は、上側リザーバおよび下側リザーバを備えることができ、これら上側リザーバおよび下側リザーバに含まれる全流体量は、伸張可能部材の位置に関わらず、ほぼ同じ量を維持することができる。
【0017】
本発明の上述のおよび他の目的、特徴および利点は、添付図面につき行う以下の詳細な説明からより明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】患者支持装置の実施形態を右方から見た斜視図である。
【図2】図1の患者支持装置の右側面図である。
【図3】図1の患者支持装置の正面図である。
【図4】図1の患者支持装置の背面図である。
【図5】図1の患者支持装置の平面図である。
【図6】図1の患者支持装置の底面図である。
【図7】上部フレーム部材を有する、患者支持装置上部の正面図である。
【図8】図7に示す装置の背面図である。
【図9】図7に示す装置の分解図である。
【図10】患者支持装置の頸部支持部材の斜視図である。
【図11】患者支持装置の一部の分解斜視図である。
【図12】患者支持装置における他の部分の分解斜視図である。
【図13】患者支持装置における他の部分を分解した底面からの斜視図である。
【図14】患者支持装置の肘掛(アームレスト)の斜視図である。
【図15】患者支持装置の肘掛(アームレスト)を他の方向から見た斜視図である。
【図16】アクチュエータ組立体を示す患者支持装置の一部における部分図である。
【図17】アクチュエータ組立体を示す、患者支持部材の一部における一部断面とする側面図である。
【図18】患者支持装置の一部を、直立状態にある上部フレーム部材と共に示す、一部断面とする左側図である。
【図19】患者支持装置の一部を、傾倒状態にある上部フレーム部材と共に示す、一部断面とする左側図である。
【図20A】患者支持装置を、部分的な傾倒状態にある上部フレーム部材と共に示す、平面図である。
【図20B】図20Aの20B−20B線上に沿う断面図である。
【図21】患者支持装置の一部におけるシリンダ組立体を示す、部分図である。
【図22】図21に示すシリンダ組立体の一部の断面図である。
【図23】患者支持装置の底部プレートおよびバンプリングの分解斜視図である。
【図24】支柱取付組立体に結合する、患者支持装置のベース部における一部の斜視図である。
【図25】支柱取付組立体を含む、患者支持装置のベース部における一部の図である。
【図26】支柱取付組立体を含む、患者支持装置のベース部の断面図である。
【図27】ツーピースの背部を有する患者支持装置の実施形態の右方から見た斜視図である。
【図28A】シリンダ組立体の一部を、閉鎖位置にあるバイパス弁と共に示す、断面図である。
【図28B】シリンダ組立体の一部を、開放位置にあるバイパス弁と共に示す、断面図である。
【図29A】シリンダ組立体の一部を、閉鎖位置にあるバイパス弁と共に示す、断面図である。
【図29B】シリンダ組立体の一部を、開放位置にあるバイパス弁と共に示す、断面図である。
【図30A】シリンダ組立体の一部を、閉鎖位置にある安全弁と共に示す、断面図である。
【図30B】シリンダ組立体の一部を、開放位置にある安全弁と共に示す、断面図である。
【図31A】シリンダ組立体の一部を、閉鎖位置にある安全弁と共に示す、断面図である。
【図31B】シリンダ組立体の一部を、開放位置にある安全弁と共に示す、断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本明細書および特許請求の範囲で使用しているように、特に明記しない限り、単数表記の不定冠詞、冠詞を有するものであっても、複数存在するものを含むものとする。さらに、用語「含む/有する」は、「備える」ことを意味する。さらに、用語「連結する」および「関連する」は、一般に、電気的、電磁的および/または物理的(例えば、機械的または化学的)に連結または結合することを意味するものであり、また連結または結合する部分間に中間要素が存在することを除外するものではない。
【0020】
さらに、説明を分かり易くするため、添付図面は、(一般の当業者が、本発明に基づいて容易に認識できる)種々の方法を示していないが、本発明のシステム、方法および装置は、他のシステム、方法および装置と組み合わせて使用することができる。さらに、本明細書は、ときどき「製造する」および「設ける」等の用語を使用して本発明の方法を記載する。これらの用語は、実施し得る実際の操作を極めて抽象化するものである。これら用語に対応する実際の操作は、特定の実施に基づいて変化し、本明細書の記載に基づいて、当業者は容易に認識できるであろう。
【0021】
図1〜6は、本発明による歯科用椅子10の実施形態における種々の図を示す。歯科用椅子10は、下半身用クッション20および上半身用クッション30を有する。ここで使用する用語「クッション」は、患者身体の一部と接触する任意の構造に言及するものであり、典型的な用途では、歯科用椅子10に若干のパッド性および/または衝撃吸収性をもたらす。
【0022】
下半身用クッション20を、下半身用フレーム40に結合する、または取り付ける。図1に示すように、下半身用クッション20は、下半身用フレーム40の長さにわたり延在しないようにするのが望ましい。むしろ、下半身用クッション20は、下半身用フレーム40の全長の一部までしか延在させず、したがって、露出部50が残るようにするのが望ましい。この露出部50(トウボード部とも称する)は、図1に示すように、足受け端部に位置するのが好ましい。図示のように、露出部50は、下半身用クッション20でカバーしない。露出部50には、随意に溝60を形成して、患者が歯科用椅子10に座るときおよび/または歯科用椅子10から降りるときに、患者の足で押しのける、またはとらえるのに使用する患者用のグリップ面を提供することができる。溝の代わりに、露出部50に、他の表面の不規則性および/または不連続性、例えば種々の窪みおよび/または隆起区域を形成することができ、この不規則性および/または不連続性によって、患者の足(または靴)が接触およびグリップする露出部50の性能が向上する。トウボード区域は、患者が椅子に乗り降りする結果として生じ得る変色、磨耗および他の損傷の発生を最小限に抑えるテクスチャ(質感)および色で形成するのが好ましい。例えば、トウボードは、灰色で形成することができ、さらに、材料における斑点および成形隆起を形成することができ、これらは、退色、引掻き傷および他の損傷を隠すことに役立つ。
【0023】
下半身用フレーム40の少なくとも露出部50は、頑強かつ抗擦過傷性を有する材料、例えば高密度ポリエチレン(high-density polyethylene:HDPE)で形成するのが望ましい。頑強かつ抗擦過傷性を有するプラスチックで露出部を形成することによって、下半身用フレームのトウボード部を露出したままにする(例えば、外張りしたクッションまたは他の被覆材料でカバーしないでおく)ことができる。下半身用フレーム40の一部を露出した状態にするので、下半身用クッション20の全長を短くすることができると同時に、歯科用椅子10の製造に必要な材料の量を削減することができる。さらに、露出部50をカバーしない状態にすることによって、患者の下半身(脚および足)に接触する材料が少なくなるので、患者は、歯科用椅子に乗り降りする際に、より容易に足を側方にスライドさせることができる。
【0024】
望ましくは、下半身用フレーム40全体(下部フレーム部材)は、単一材料、例えばHDPEで形成する。単一材料を使用することによって、下半身用フレーム40の構造を簡素化することができ、その構造的一体性を改善することができる。当然、特定用途に適しているならば、複合材料を使用することもできる。
【0025】
図4に明示するように、上半身用クッション30は、上半身用フレーム70(上部フレーム部材)に連結または取り付けることができる。上半身用フレーム70は、図1〜6に示すように、上半身用クッション30とほぼ同一の形状にすることができる。すなわち、クッションはフレームを超えて突出せず、またこのフレームは、上半身用クッション30の最外縁と上半身フレーム70の最外縁との間における狭い縁取り分だけ、患者側に僅かにのみ露出する。代案として、上半身用フレーム70は、上半身用クッション30とは異なる形状にすることができる。
【0026】
図7,8および9につき説明すると、上半身用クッション30および上半身用フレーム70をより詳細に示す。上半身用クッション30および上半身用フレーム70には、それぞれ開口72,74(または細長い溝孔)等の開口形成することができ、これら開口は、頸部支持部材76を収納するよう構成する。図8に示すように、上半身用フレーム70は、その後面側に溝孔付き部材90を設けることができる。これら溝孔付き部材90は、図11に示すように、背部支持部材94を介して、上半身用フレーム70を回動部材92(以下に詳述する)に連結するために使用することができる。上半身クッション30は、単一の連続(一体型)クッションであって、上半身用フレーム70の底部から頂部までほぼ延在するクッションにより構成するのが望ましい。上部フレーム部材の底部をカバーする連続クッションの一部は、患者の背中下部の少なくとも一部と接触するよう構成し、また上部フレーム部材の頂部をカバーする連続クッションの一部は、患者の後頭部の少なくとも一部と接触するよう構成する。
【0027】
他のクッションおよび椅子背部の構成も可能である。一実施例として、図27に示すように、上半身用フレームに、別個の頂部75および底部77を形成して、これらを互いに連結することができる。このような場合、2個の別個のクッションで、上半身用フレームの頂部75および底部77をカバーすることができる。
【0028】
図9につき説明すると、上半身用クッション30は、開口72,74を互いにほぼ整列させて、上半身用フレーム70に結合することができる。上半身用クッション30を上半身用フレーム70に結合した後、スロット部材78を開口72,74内に配置することができる。さらに、スロット部材78は、頸部支持部材76を収納する開口を画定することができる。スロット部材は、(患者の背中の一部と接触する)クッションの底部と(患者の後頭部の一部と接触する)クッションの頂部との間における中間区域に配置することができる。このようにして、頸部支持部材76をスロット部材に収容した状態で、患者の頸後部と接触できる。スロット部材78は、頸部支持部材76の一部をスロット部材78に収容させるとき、頸部支持部材76がスロット部材78内で滑動自在となる構成にすることもできる。
【0029】
図10は、頸部支持部材76の後方から見た斜視図である。図10に示すように、頸部支持部材76は、頸部クッション80および頸部支持フレーム82を有する。頸部支持フレーム82は、頸部支持フレーム82から突出する突出部材84を備えることができる。突出部材84は、スロット部材78内に収容するよう構成することができる。必要に応じて、突出部材84は、固定部材86(突出部材の各側面に1個)を有する構成とすることができ、これら固定部材を、頸部支持部材76をスロット部材78内に釈放可能に固定し、頸部支持部材76がスロット部材78から脱落するのを防ぐことができる。固定部材86はスロット部材78のレールに沿う所定位置にスナップ作用ではめ込んで、頸部支持部材76を一時的にスロット部材78に固定することができる。代案としては、スナップ嵌合を行う代わりに、固定部材86は、単に摩擦嵌合を生ずるだけとすることができる。頸部支持部材76をスロット部材78内に保持する、またはその保持を補助するための他の機構を設けることができ、例えば、頸部支持部材76およびスロット部材78のうち、一方または両方に磁気素子を設けることができる。
【0030】
頸部支持部材76をスロット部材78に固定するのを、スナップ嵌合、摩擦嵌合、または他の結合機構のいずれによって行うかに関わらず、頸部支持部材76をスロット部材78内で並進移動、または長手方向移動できるよう、スロット部材78内に保持するよう頸部支持部材を構成するのが望ましい。スロット部材78の長さは、頸部支持部材76に必要とされる移動量に応じて、変化させることができる。望ましくは、スロット部材78内での長手方向の移動量は、約127〜381mm(約5〜15インチ)とし、より望ましくは約228.6mm(約9インチ)とする。さらに、付加的な有効移動量を得るために、頸部支持部材76を、可逆的構成にすることができる。図10に示すように、突出部材84は頸部支持フレーム82の中央部分からオフセットする。特に、頸部支持部材76の移動長さが増大するように、突出部材84をオフセットすることができる。
【0031】
例えば、図10に示す構成では、頸部支持部材76を上半身用クッション30よりも低い位置に配置することができるので、小さい(例えば、身長の低い)人が、歯科用椅子10上に座ることができる。代案としては、大きな(例えば、身長の高い)人が座るために、頸部支持部材76を第2の向きに約180゜逆転する(すなわち、「逆さまに反転する」)ことができるので、頸部クッション80は、上半身用クッション30よりもより高い位置まで達することができる。便宜上、印88を頸部支持部材76に付けて、頸部支持部材が、大きい人用の配置なのか、小さい人用の配置なのかを示すことができる。上述のように突出部材84をオフセットすることによって、頸部クッション80の付加的な有効移動量を得ることができる。付加的な移動量は、頸部支持部材76の構成に応じて変化させることができるが、最小移動量は、少なくとも約25.4mm(約1インチ)とするのが好ましい。移動量は25.4mm(1インチ)を超えることができて、約25.4〜101.6mm(約1〜4インチ)とすることができる。例えば、一実施多形態では、頸部クッション80を小さい人用の配置(例えば、図10に示す配置)にすると、頸部クッション80の有効位置は、約25.4mm(約1インチ)の高さ分より低くすることができ、大きい人用の配置(例えば、図10に示す配置とは逆向きの配置)にすると、約25.4mm(約1インチ)の高さ分だけより高くすることができる。
【0032】
頸部クッション80は、軸線に関して対称とするのが望ましい。したがって、頸部クッション80は、図10に示す配置の向きであるか、または図10に示す配置とは逆の向きであるかに関わらず、実質的に対称とするのが望ましい。しかし、必要に応じて、頸部クッション80は、非対称的な構成にすることができる、この場合、この頸部クッション80は、第1配置での快適向きおよび第2の逆配置での第2快適向きを有することができるようにする。
【0033】
(頸部支持部材76を収容するための)頸部支持収容区域は、上部フレーム部材に沿って長手方向に延在する開口とすることができる。図示する実施形態では、この開口を細長いスロットとする。しかし、頸部支持収容区域は、他の長手方向の開口、例えば溝またはチャネルにより構成することができ、これら長手方向開口は、上部フレーム部材および/または上半身用クッションに全体的に貫通する、または全体的には貫通しない構成とすることもできることを理解されたい。
【0034】
動作にあたり、頸部支持部材は、自己調整することができる。患者が椅子に座るとき、上部フレーム部材の下方部分は、少なくとも患者の背中の一部と接触するので、椅子が直立状態から傾倒状態に移行する、およびその逆に移行するときに、頸部支持部材は、患者の頸部の後側に位置決めされたままとなる。例えば、上半身用フレーム70を傾倒させるとき、頸部支持部材は、スロット部材内で並進移動または下方移動して、上半身用フレーム70に対する患者の頸部の位置を自動的に調節する。このようにして、自己調節式の頸部支持部材は、患者(例えば、患者の頸後部)との接触を維持することができて、これによって、操作者による別個の調節を必要とせずに椅子を再配置するので、患者の快適性が高まる。
【0035】
図11は、上半身用フレーム70を回動歯科用椅子の下部、例えば回動部材92に結合する結合手段の実施形態を示す。上半身用フレーム70は、背部支持部材94に結合することができ、この背部支持部材94は、回動部材92に対して、例えばねじ96によって回動結合することができる。上半身用フレーム70は、ボルト97を使用して背部支持部材に取り外し可能に取り付けることができ、これらボルトは、溝孔付き部材90に整合する寸法にする(図8参照)。
【0036】
図12および13は、回動部材92を肘掛(アームレスト)98および上部構造部材100(または回動ベース部材)に結合するための方法を示す。回動部材92は、上部または下部を有するほぼ平面状の部位を備えることができる。この下部は、アクチュエータ組立体連結区域(例えば、上述の開口138)を備えることができる。一部を、下部から外方に突出することができ(例えば、突出部102)、また回動ポイント連結区域(例えば、上述の開口108)および下部フレーム連結区域(例えば、上述の開口120)を設けることができる。回動部材92の下部から下部フレーム連結区域までの距離は、回動ポイント連結区域から回動部材92の下部までの距離よりも長くする。
【0037】
アームレスト98は、このアームレスト98から突出するピン104であって、カラー106を貫通して回動部材突出部102の開口108に突入するピン104を介して回動部材突出部102に取り付ける。カラー106は、ピン104がカラー106内で容易に回転できるよう構成するのが好ましい。ピン104は、溝または収容区域150内で休止するよう構成する。収容区域150は、「V字」状構造または「U字」状構造に形成することができ、ピン104は、この「V字」型構造または「U字」型構造内で休止するよう構成することができる。したがって、回動部材92は、ピン104および収容区域150によって生ずる回動軸線周りに回動することができる。ピン104は、ねじまたは他の固定機構(図示せず)を、ピン104における開口152、および収容区域150における対応する開口(図示せず)に挿通して固定することによって、収容区域内に固定することができる。
【0038】
図示する実施形態に示すように、椅子が通常の直立状態にあるとき、患者がアームレスト98の一部しか利用できない(例えば、図2参照)が、椅子をより後ろに傾倒した状態にあるときは、患者はアームレスト98の全体を利用することができる(例えば、図19参照)ように、アームレスト98を構成することができる。すなわち、図2につき説明すると、例えば、直立状態では、アームレスト98の一部が椅子の背部の一部(例えば、クッション30)よりも背後に延在し、そのために、患者は、通常その部分を利用する(例えば、もたれ掛かる)ことができない。しかし、椅子が、図19に示すように、完全に傾倒した状態に回動すると、患者は、アームレストの全長に対して容易にアクセスすることができるようになる。したがって、椅子が直立状態にあるとき、アームレスト98が部分的に椅子の背部よりも後方に位置するよう、肘掛98を構成することができる。このようにアームレスト98を構成することによって、患者が椅子に座り込むよう構成する側面におけるアームレストが、患者が椅子に乗り降りするアクセス性に干渉しない。しかし、椅子を完全に傾倒するとき、患者は依然としてアームレスト98を十分に使用することができる。
【0039】
アームレスト98は、回動部材92と共に回動可能とする、または回動部材92とは別個に回動可能に構成することもできる。図14および図15につき説明すると、アームレスト98は、回動部材92に結合した後、回動または傾動するように構成することができる。例えば、図14に示すように、アームレスト98の主要部分110は、ピン104に対して移動可能とすることができる。一実施形態では、主要部分110は溝孔付き区画112を有し、ねじ114を、この溝孔付き区画112を挿通してピン104の一部内に突入させることができる。このようにして、アームレスト98の主要部分110は、溝孔付き区画112内で回転または回動することができる。好ましくは、アームレスト98は、約45°〜135°の間で回動させる、より好ましくは約75°〜105°の間で回動させることができるようにする。必要に応じて、摩擦調整部材155を設けて、アームレスト98を回動させる容易性を調節できるようにする。摩擦調節部材155を締め付けるか、または緩めることによって、より回動し難くする、またはより回動し易くするようにそれぞれアームレストを設定することができる。摩擦調節部材155は、例えば、ピン104に力を加えるようにする分割ブッシュに対して締め付けることができるねじにより構成する。
【0040】
代案としては、図15に示すように、回動部材92を回動するとき、アームレスト98を固定して回動しないように、アームレスト98を構成することができる。例えば、ねじ114を溝孔のない区画に配置して、アームレスト98の主要部分110をピン104に対して固定位置に固定することができる。必要に応じて、各アームレスト98を、一方側面に溝孔付き区画を有する構成とし(図14参照)、また他方の側面に溝孔のない区画を有する構成とする(図15参照)ことができる。このようにして、ねじ114をどちらの側面に使用するかによって、各アームレスト98を回動可能および回動不能のいずれの構成にもすることができる。2個の異なる動作モードに設定することが可能な単一のアームレストは、操作者が、好みおよび/または実施する特定の処置に基づいてアームレストの形態を選択および/または調整することができるので、有益である。
【0041】
再び図12および図13につき説明すると、下半身用フレーム40は、回動部材突出部102で回動部材92に取り付けることができる。特に、下半身用フレーム40は、ピン116を下半身用フレーム40の開口118、および回動部材92の開口120に挿通して固定することによって、連結することができる。
【0042】
回動部材92は、カム126(または支持部材)に回動可能に結合することができる。各カム126の第1端部は、回動回動部材92の一部に結合することができる開口124を有するが好ましい。例えば、各開口124はピン122を収容する構成とすることができる。ピン122は、回動部材92の開口128にも挿通して、各カム126を回動部材92に回動可能に結合することができる。下半身用フレーム40の下側部分を、カム126によって支持する。各カム126は、ほぼ直線状の区画、および湾曲したまたは非直線的な区画を有する構成にすることができる。各カムの一部に湾曲したまたは非直線的な区画を形成することによって、以下で詳細に説明するように、下半身用フレーム40は、回動部材92が移動するときに下半身用フレーム40の地面に対してなす角度を変更することができる。
【0043】
回動部材92が回転または回動するとき、下半身用フレーム40も移動して、地面に対する下半身用フレーム40の関係が、カムの126の形状、および下半身用フレーム40とカム126と間における接触ポイントに基づいて変化することになる。2個のカム126は、共に構造的安定性のための、またさらに下半身用フレーム40を支持するためのトロリーピンまたはトロリーバー170に連結するのが好ましい。バー170は、カム126の湾曲端部における開口172に挿通することによって、双方のカム126に結合することができる。バー170は、さらに、ローラ174に結合し、これらローラ174は、下半身用フレーム40を支持する構成とする。ローラ174は、バー170をカム126間の中央に維持する役割を果たすこともできる。必要に応じて、下半身用フレーム40の下側面に、窪み、溝および/またはトラックを設け、ローラ174および/またはバー170を収容する構成とすることができる。
【0044】
カム126の一部は、ローラ154上に載置するよう位置決めするのが好ましく、これらローラ154は上部構造100に結合する。図13に明示するように、ピン156をローラ154に挿通し、つぎに上部構造100の側面の開口158および上部構造100の下面から延在する他の開口160に挿通することによって、ローラ154を上部構造100に固定することができる。回動部材92が移動または回動するとき(以下に詳細に説明する)、ローラ154は転動または回転して、カム126を上部構造100に沿って容易に移動させることができる。
【0045】
アクチュエータ組立体130は、回動部材92を回動または回転させるよう構成することができる。アクチュエータ組立体130は、第1端部および第2端部を有し、また第1形態と第2形態との間で移動可能とすることができる。アクチュエータ130がこれらの2個の形態間で移動するとき、第1端部と第2端部との間の長手方向距離によって規定されるアクチュエータ組立体の長さが変化して、回動部材を回動させることができる。アクチュエータ組立体130は、好適には、回動部材92および上部構造100の双方に結合する。図12および図13で示すように、ピン132は、アクチュエータ組立体130の第1端部(例えば、ベース部分)を回動部材92に固定するよう構成することができ、他のピン134は、アクチュエータ組立体130の第2端部(例えば、伸張可能部分)を上部構造100に固定するよう構成することができる。ピン132は、(図13に示すように)アクチュエータ組立体130の第1端部における開口136、および回動部材92における1対の開口138に挿通する構成とすることができる。ピン134は、アクチュエータ組立体130の第2端部における開口140に挿通する構成にすることができる。開口140は、アクチュエータ組立体130のロッドまたはピストン部分に形成するのが好ましい。したがって、上述のように、アクチュエータ組立体130の第1端部は、ベース部分により構成するのが好ましく、第2端部は、伸張可能部分(例えばロッドまたはピストン)により構成するのが好ましい。好適な実施形態では、アクチュエータ組立体130は、伸張しない位置と伸張した位置との間で約50〜150mm突出(移動)する、より好ましくは約100mm〜120mm突出(移動)することができるリニアアクチュエータとすることができる。
【0046】
図16につき説明すると、アクチュエータ130の第2端部を上部構造100に取り付ける一実施形態を示す。ロッド142は、上部構造の一部の窪み162内に配置する。ピン134は、アクチュエータ組立体130のロッド142における開口140、および窪み162の側面における2個の開口に挿通する。eクリップ164または他の固定手段によって、ピン134を上部構造100に取り付けるまたは固定する。1個またはそれ以上の保持タブ166をロッド142の下側に取り付け、ねじ168で上部構造100にねじ止めし、さらにロッド142を上部構造100に固定することができる。
【0047】
第1直立状態から第2傾倒位置へ移行するように設計する椅子、例えば歯科用椅子または他の椅子における回動動作は、ヒトの腰の回動ポジションを模倣するようなに回動するのが好ましい。椅子背部を起こす、または傾倒(例えば、傾動)させると同時に、椅子座部を前後に移動させる単一の機構(例えば、アクチュエータ組立体)を有する椅子として構成することによって、ヒトの腰における固有の回動ポジションに追随する、簡単かつ効果的な方法を達成することができる。
【0048】
図17は、上述のように構成した椅子10の回動ポイントを示す。回動部材92は、アクチュエータ組立体130が伸張した状態で、直立状態にあることを示す(図18も参照されたい)。すなわち、ロッド142は完全に伸張(またはほぼ完全に伸張)した状態にあり、この結果、回動部材92および上半身用フレーム70は、直立状態またはほぼ直立した形態をとる。アームレスト98のピン104を収容区域150(図12に示す)内に収容するとき、回動部材92は、開口108に収容したピン104によって画定される軸線の周りに回動する。
【0049】
上述したように、複数の要素を、ピン104の周りにおける回動部材の回動ポイントからオフセットするいくつかのポイントで回動部材に連結する。再び図17につき説明すると、ピン116は、開口120に挿通して、下半身用フレーム40を回動部材92に取り付ける。したがって、下半身用フレーム40は、ピン104の周りの回動ポイントからオフセットされて、ピン104周りの回動部材92の運動によって、下半身用フレーム40の軸外(または偏心)動作を生じる。
【0050】
アクチュエータ組立体130を取り付けるポイントは、ピン104周りの回動部材92における回動ポイントからもオフセットする。図13に示すように、ピン132は、アクチュエータ組立体130の第1端部における開口136、および回動部材92における1対の開口138に挿通する。再び図17につき説明すると、アクチュエータ組立体130を結合するピン132は、ピン104周りの回動部材92における回動ポイントからオフセットしていることが判る。
【0051】
回動部材92にカム126を取り付けるポイントは、望ましくは、ピン104周りの回動部材92における回動ポイントからオフセットする。図17に示すように、カム126は、ピン122を開口128内に固定することによって回動部材に結合する。
【0052】
図12および図13に示すように、ピン132は、アクチュエータ組立体130の第1端部を回動部材92に固定するよう構成することができ、他のピン134は、アクチュエータ組立体130の第2端部を上部構造100に固定するよう構成することができる。ピン132は、(図13に示すように)アクチュエータ組立体130の第1端部で開口136に挿通し、さらに回動部材92の1対の開口138に挿通するよう構成することができる。ピン134は、アクチュエータ組立体130の第2端部で開口140に挿通するよう構成することができる。開口140は、アクチュエータ組立体130のロッドまたはピストン部分142に形成するのが好ましい。
【0053】
図17に示すように、回動部材92は、回動部材92の回動軸線と、この回動軸に対する他の要素を連結するための区域の位置とに関連させて説明することもできる。すなわち、回動部材92は、第1端部145および第2端部147を有しており、これらの端部間は長手方向の長さ149を有する。第1フレーム連結区域(例えば、上部フレーム部材70を収容するための区域)を第1端部145の近傍に配置することができ、またアクチュエータ組立体連結区域(例えば、アクチュエータ組立体を収容するための区域)を第2端部147の近傍に配置することができる。
【0054】
上述のように、回動部材92は、第1端部145と第2端部147との間に配置した回動軸取付区域(開口108)の周りで回動可能とすることができる。この回動軸線は、第1端部と第2端部との間で軸外に配置することもできる。例えば、回動部材92は、第1端部145および第2端部147間で、回動部材92から外方に突出する突出(拡張)部102を有する。この突出部102は、下部フレーム部材40を収容するためのフレーム連結区域(例えば、開口120)を有することもできる。このフレーム連結区域(開口120)は、回動ポイント連結区域を越えて突出する区域に配置する。
【0055】
図18および図19は、椅子10の断面図であって、上半身用フレームが直立状態(図18参照)、および傾倒状態(図19参照)にある椅子10を示す。図17および図18につき説明すると、直立状態では、アクチュエータ組立体130は、ロッド142がほぼ完全に伸張した伸張状態にある。アクチュエータ組立体130が伸張状態から収縮(非伸張)状態に移行するとき、第1端部におけるアクチュエータ組立体取付ポイント(すなわち、ピン132)と第2端部におけるアクチュエータ取付ポイント(すなわち、ピン134)との間の距離が短くなり、回動部材92が、ピン104で、回動ポイント周りに回動する。
【0056】
図19に示すように、アクチュエータ組立体130が非伸張状態に移行すると、下半身用フレーム40の取付ポイントが回動部材の回動ポイントからオフセットしているため、下半身用フレーム40は、回動部材92が傾倒状態に後方に回動するにつれて、後方に移動する。下半身用フレーム40のこの後方への移動は、一般に、患者が背中を仰向け姿勢に後倒するときの患者の腰運動を模倣するので、患者の椅子における適正位置を維持するのを補助する。
【0057】
同時に、カム126は前方に移動し、これはカム126を回動部材92の他のオフセット部分(すなわち、ピン122)に取り付けているからである。図18および図19を比較すると、カム126は下半身用フレーム40に対して前方に移動して、このことによって、下半身用フレーム40は、下半身用フレーム40がカム126の端部に位置するローラ174に沿って移動するにつれて、より高く上昇する。
【0058】
図20Aおよび図20Bは、ほぼ直立状態(図18参照)とほぼ傾倒状態(図19)と間の中間状態にある椅子10を示する。本発明装置は、ほぼ直立状態(図18)とほぼ傾倒状態(図19)との間で移行して種々の状態に位置決めするよう構成することができると同時に、本明細書で特別に説明した、ほぼ直立状態およびほぼ傾倒状態を越えて突出する状態をとるように構成することができることを理解されたい。図20Bの断面図に示すように、椅子をある状態から他の状態に移行するとき、下半身用フレーム40は、カム126の端部におけるローラ174と接触して、このローラ174上を転動する。
【0059】
図20Bに示すように、椅子構体(例えば、上部構造100、下半身用フレーム40および上半身用フレーム70)の高さの昇降は、リフトアーム182の一部に押し上げ力を付与するシリンダ組立体180を設けることによって達成することができる。リフトアーム182を、上部構造100の左右の側面における開口186で固定するショルダーボルト184によって、上部構造100に回動可能に結合する。他方の端部では、リフトアーム182を、ベース部材、例えば2個のタワー部材188に結合することができる。タワー部材188は、ベース板190から上方に突出し、各タワー部材188を、リフトアーム182の各側面でリフトアーム182に取り付ける。回動リフトアーム182をタワー部材188に回動可能に取り付けるのが好ましく、これにより、シリンダ組立体180がリフトアームを上方に押し上げるとき(図20B)、リフトアーム182は取付ポイント192の周りに回動することができる。シリンダ組立体180によってリフトアーム182に加える上向きの力を除去または減少することにより、また重力によってリフトアーム182(および、したがって椅子)をより低い高さに移動できるようににすることによって、リフトアーム182を下降させることができる。
【0060】
リンクアーム194をさらに設けて、椅子構体を安定させ、また椅子が垂直方向の移動範囲を移動する(例えば、椅子が昇降する)ときに、椅子構体をほぼ水平に維持することができる。図19に示すように、例えば、リンクアーム194をリフトアームの少なくとも片側(例えば、右側)に設けることができ、取付ポイント196で一方のタワー部材188に回動可能に取り付け、また他方の端部を取付ポイント198で上部構造100に回動可能に取り付けることができる。
【0061】
図21につき説明すると、椅子を部分的に示す。シリンダ組立体180は、ベース部分200および伸張可能部分202(例えば、ピストンまたはロッド)を有する。ベース部分200は、ベース板190に固定するか、取り付けることができ、伸張可能部分の一方の端部に開口204を設けることができる。この開口204は、ねじ208を使用してリフトアーム182の下部に固定するピン206を収容することができる。シリンダ組立体180が作動すると、伸張可能部材が上昇(または下降)して、リフトアーム182を上昇(または下降)させることができる。開口204は、ピン206を収容し、またリフトアーム182がある高さから他の高さに移行するときに、ピン206が開口204に対して回転することができるような寸法にする。必要に応じて、(図22に示すように)スリーブベアリング220を開口204に設け、伸張可能部分202およびピン206の相対的移動を容易にすることができる。伸張可能部分202は、(図22に示すように)回動可能部分222を有し、この回動可能部分222に開口204を画定する構成とすることもできる。
【0062】
再び図20Bにつき説明すると、シリンダ組立体180は、垂直またはほぼ垂直に配置することができる。シリンダ組立体180をほぼ垂直方向に指向させることによって、地面に対する椅子の「設置面積」を削減することができる。したがって、椅子をより小型化することができて、椅子構体の下側に、より開放的な構造を持たせることができる。さらに、上述のように、リフトアーム182をベース部材(例えば、2個のタワー部材188)に結合させるのが好ましい。この回動ポイントの高さは、少なくとも約228.6mm(約9インチ)とするのが好ましく、より好ましくは、約254mm(約10インチ)またはそれ以上とする。より高い回動ポイントを有することによって、椅子を、前後に大幅に移動させることなく上昇させることができる。このことは、椅子の周りの利用可能な操作クリアランスを減らすのに役立てることができる。一方で、多くの従来のリフト機構は複雑な機械的システムを必要とし、これら複雑な機械的システムは椅子の下側の空間をほぼ埋めてしまう、および/または椅子を昇降すると同時に、椅子を前方(患者の足の方向)に大幅に移動させることになる。
【0063】
伸張可能部分202が上方に移動するとき、伸張可能部分202は、リフトアーム182を上方に動かす。リフトアーム182は、伸張可能部分202に対してある角度をなすため、伸張可能部分202が短い距離移動するだけで、椅子10の高さを大幅に変化させる。したがって、例えば、伸張可能部分202は、約76.2〜127mm(3〜5インチ)の距離を移動するよう構成することができ、リフトアーム182との相対的な接触角度に基づいて、約254〜762mm(10〜30インチ)の高さ変化を生ずるよう構成することができる。システムの設置面積を削減し、また移動に対する高さ変化を最大化するために、シリンダ組立体は、リフトアーム182の一方の端部が他方の端部もより近接するような部位でリフトアーム182に接触するよう構成するのが好ましい。特に、シリンダ組立体180は、上部構造100に結合するリフトアーム182の区域よりも、リフトアーム182がタワー部材188と結合する区域により近接するように位置決めするのが好ましい。シリンダ組立体180は、約50psi〜1500psiの圧力で動作可能な単動シリンダとするのが好ましく、より好ましくは約75psi〜500psiの圧力で動作可能な単動シリンダとするのが。
【0064】
図22は、シリンダ組立体180の実施形態の詳細な図を示す。上述のように、シリンダ組立体180は、ベース部分200および伸張可能部分202を備える。伸張可能部分202は、シリンダ組立体180内で移動可能なピストンリフトシリンダ218を備えることができる。図22は、完全に伸張した状態のシリンダ組立体180を示す。不必要な配管を除去し、またシリンダ組立体180の設置面積を削減するために、シリンダ組立体180は、外部リザーバがない構成とするのが好ましい。すなわち、シリンダ組立体は、ベース部分の上側リザーバおよび下側リザーバ内に、シリンダ組立体の液圧流体のほぼ全てを保持する構成とする。当然、外部リザーバを設けないのが好ましいが、若干量の流体が上側リザーバおよび下側リザーバの外部に保有することができる。例えば、若干の流体は、ポンプ、流体継手部、配管等に保持することができる。しかし、外部リザーバがないので、上側リザーバおよび下側リザーバに含まれる作動可能な流体の全体積は、伸張可能部材の位置に関わらず、ほぼ同一のままである。
【0065】
流下管210および流体継手部212は、共にモータ/ポンプ214に接続する。伸張可能部分202を上昇させるために、液圧流体は、上側リザーバ221から流下管210、モータ/ポンプ214に流れ、流体継手部212を経て下側リザーバ219内に流れ込む。伸張可能部分202を下降させるために、この流れを逆転させる。液体はソレノイド弁223によって釈放され、このことによって、流体は下側リザーバ219から流体継手部212を経てモータ/ポンプ214に流入し、流下管210から上側リザーバ221に流れ込む。ソレノイド弁223は、ベース部分200内に位置するよう概略的に示したが、ソレノイド弁および他の流れ制御弁(例えば、伸張可能部材の位置を維持するよう設ける負荷保持逆止弁)を、ベース部分200の外部に設けることもできることを理解するべきである。例えば、外部マニホルド(図示せず)は、ポンプとシリンダ組立体180との間に配置して、ポンプと、上リザーバおよび下側リザーバとの間で往来する流れを制御する種々の弁を備えることができる。
【0066】
従来の液圧システムでは、一般に、移動限界を電気的制御システムで設定して、伸張可能部分202が過度の高さまで移動し、伸張可能部分202が伸張した状態でロックされるのを防ぐ。すなわち、伸張可能部分が極端に移動する場合、液圧システムが「フリーズアップする(固まる)」、すなわち、完全に伸張した状態にロックされる(ロックアウトする)。システムが「フリーズアップ」または伸張した状態にロックされる場合、1個またはそれ以上のホースを取り外して、システム内の圧力を釈放しなければならない。しかし、電気的制御システムは故障すると、システムがフリーズアップすることになる。したがって、電気的な移動制御限界を設けなくても、伸張可能部分が移動量を自己制御することができる液圧システムを設けるのが望ましい。
【0067】
したがって、シリンダ組立体は、特定の所定条件を満たすとき、上側リザーバと下側リザーバとの間で流体が流れることを可能にするよう構成する弁を備えるのが好ましい。すなわち、弁が開く条件は、予め決定しておき、椅子の操作中に、上側リザーバと下側リザーバとの間に、ユーザーが制御する液体の流れに関連させることができる種々の弁を設ける場合のように、エンドユーザーによって決めないものとする。図示する実施形態では、特定の所定条件の下で開くよう構成する弁を示し、この弁は、例えば、伸張可能部分が特定の所定位置(高さ)に達する、または一方のリザーバにおける圧力が所定値に達するとき、2個のリザーバ間を開放して流れを可能にするよう構成する。
【0068】
図22に示すように、伸張可能部分202がロックアウトするのを防ぐために、バイパス弁216は、主要部分200内で伸張可能部分202と共に移動するよう構成し、また、ピストンリフトシリンダ218が予め決定した所定高さに到達するとき、動作するよう構成することができる。バイパス弁216は、伸張可能部分202が所定高さに達するときに動作して、流体がピストンリフトシリンダの一方の側から他方の側に流れることができるよう構成することができる。したがって、動作した後には、バイパス弁216によって、主要部分200内で、流体を下側リザーバ219から上側リザーバ221に(またはその逆に)流すことができる。このように流体が通過することによって、シリンダ組立体180が、伸張可能部分202が過度に移動して、システムをロックアップする状況になるのを効果的に防ぐことができる。バイパス弁が動作するとき、流体はシステム内を単に循環して、伸張可能部分がそれ以上伸張することはない。
【0069】
バイパス弁216を開く機構は、様々のものとすることができる。図示の実施形態では、円筒状のスペーサ225が伸張可能部分202のロッド部材を包囲し、この円筒状のスペーサ225は、ピストンリフトシリンダ218と共に上昇および下降する。伸張可能部202が所定高さに達すると、スペーサ225はシリンダ227の前頭部に接触し、このことによって、スペーサ225が上方にそれ以上移動するのを防ぎ、スペーサ225の下方部分が、(図22に示すように)バイパス弁216に接触して動作させる。必要に応じて、ばね座金229をスペーサ225とピストンリフトシリンダ218との間に配置して、バイパス弁216が早期に開くのを防ぐ。
【0070】
バイパス弁216は、種々の形態でベース部分200内に配置することができる。例えば、図22に示すように、バイパス弁は、伸張可能部分と共に移動可能とし、また、伸張可能部分が所定の伸張限界に達するとき、ベース部分における静止部材に接触するよう構成することができる。代案として、バイパス弁は、ベース部分内で固定とし、伸張可能部分が所定伸張限界に達するとき、伸張可能部分の一部がバイパス弁に接触するよう構成することができる。図28Aおよび図28Bは、(図22に示すような)伸張可能部分と共に移動するように構成したバイパス弁の概略図を示し、図29Aおよび図29Bは、ベース部分内に据え付けるよう構成したバイパス弁の概略図を示す。しかし、一般的には、伸張可能部分と共にバイパス弁を移動させるのが好ましく、この理由としては、外部配管の必要がないからである。
【0071】
図28Aおよび図28Bにつき説明すると、ピストンリフトシリンダ218を備える伸張可能部分202の、第1の非伸張状態(図28A)および第2の伸張状態(図28B)を示す。シリンダ組立体180の主要部分200は、下側リザーバ219および上側リザーバ221を有し、バイパス弁216は、伸張可能部分202が所定高さに達するとき、流体が2個のリザーバ間を流れることができるよう構成する。図28Bに示すように、伸張可能部分202が所定高さに達するとき、バイパス弁216が開き、下側リザーバ219から上側リザーバ221に流体が流れることが可能となる。
【0072】
図29Aおよび図29Bにつき説明すると、ピストンリフトシリンダ218を備える他の伸張可能部分202の、第1の非伸張状態(図29A)および第2の伸張状態(図29B)を示す。便宜上、図29A,29B,31Aおよび31Bでは流下管210を示さないが、図22につき説明したように流体を循環させるため、流下管または他の接続手段が必要であると理解されたい。
【0073】
図29Aおよび図29Bに示す実施形態では、シリンダ組立体180の主要部分200は、下側リザーバ219および上側リザーバ221を有し、バイパス弁216は、伸張可能部202が所定高さに達するとき、2個のリザーバ間を液体が流れることができるよう構成する。しかし、図28Bの実施形態とは異なり、図29Bの支持形態では、伸張可能部分202に対して静止しているバイパス弁216を示す。バイパス弁216を伸張可能部分202の上方に配置するので、追加の配管(破線231によって概略的に示す)が、下側リザーバ219および上側リザーバ221間で液体が流れるのを可能にするのに必要となる。図29Bに示すように、バイパス弁216が開くとき、管231を介して下側リザーバ219および上側リザーバ221間を液体が流れる。したがって、バイパス弁216が作動する(または開く)と共に、(図22につき説明したように)流体が接続継手部212にポンプ送給される場合、図29Bに示すように、流体は、上側リザーバおよび下側リザーバを単に循環することになる。
【0074】
適切な弁は、本明細書に記載する液圧システムに固有の圧力を制御することができる弁であって、一方の端部に機械的な圧力が加わる際に、弁の2個の端部間に液体を流すことができる弁である。種々の普通の弁を使用することができ、例えば、シュレーダー・ブリッジポート・インターナショナル社(Schrader-Bridgeport International, Inc.)から入手できる特定の弁を使用することができる。好適には、この弁は、上述の圧力(例えば、少なくとも約500psiまでの圧力、および好ましくは1500psiまでまたはそれ以上の圧力)に対処する格付けの弁とする。
【0075】
他の実施形態では、弁はリリーフ安全弁を有する構成とすることができ、このリリーフ安全弁は、バイパス弁の代わりに使用する、またはバイパス弁と組み合わせて使用することができる。このリリーフ安全弁は、伸張可能部分202が、ロックアウトを生じ得る位置または高さに達するのを防ぐ。例えば、図30Aおよび図30Bに概略的に示すように、リリーフ安全弁237は、伸張可能部分202と共に移動するよう構成することができる。したがって、あらゆるシリンダ行程およびシリンダの位置で、下側リザーバ219の圧力が所定レベルに達する場合、リリーフ安全弁237が開いて、下側リザーバ219から上側リザーバ221に流体を流すことができるようになる(図30B参照)。
【0076】
図31Aおよび図31Bにつき説明すると、リリーフ安全弁237は、伸張可能部分202に対して静止している構成として示す(図29Aおよび図29Bにバイパス弁と共に示す実施形態と同様である)。下側リザーバ内の圧力が所定レベルに達するとき、リリーフ安全弁237が開くように、リリーフ安全弁237を構成することができる。図29Aおよび図29Bにつき上述したように、下側リザーバ219および上側リザーバ221間に追加の配管231を配置して、リリーフ安全弁が開くとき2個のリザーバ間に液体が流れることができるようにすることができる。図示の実施形態に示すリリーフ安全弁の所定圧力限界は、特定の用途に応じて種々の値に変化させることができる。しかし、若干の実施形態では、リリーフ安全弁は、下側リザーバの圧力が約750psiを越えるときに開くようにするのが好ましい。
【0077】
再び図20Bにつき説明すると、カバー230は、モータ/ポンプ214および電源232を含む、椅子10の下部の一部をカバーするよう構成することができる。必要に応じて、カバー230は、上部233および下部235を有し、この上部233は、下部235よりも幅が狭いものとする。このカバー230は、少なくとも部分的に電源232を囲むことができる隆起環状部材234に、着脱可能に結合することができる。
【0078】
図23につき説明すると、椅子10の下部をより詳細に説明する。ベース板190は、(図20Bに示すように)椅子10の下部の下側で後方に延びて存在させる(延在させる)のが好ましい。ベース板190は、(上述の)リフトアーム182が、ベース板190上方の隙間内に延在できるように、丈の低い低丈輪郭(ロープロファイル)にするのが好ましい。また、ベース板190が低丈輪郭にすることによって、椅子の底面に容易にアクセスすることが可能となると同時に、操作者の体および/または支持椅子(例えば、車輪つきのスツール)が、ベース板190上方の隙間に入り込むのを防いでおり、操作者の体および/または支持椅子が基礎板190上の隙間に入り込むと、操作者がけがをする可能性がある。ベース板190は、より幅の広い区域240を有し、その後方に幅の狭い区域242を有し、またそれら区域間に輪郭形成した形状を有する。この幅の狭い区域242によって、操作者(例えば、歯科医)は、支持椅子(図示せず)を患者により近い場所に位置取りさせることが可能となる。ベース板190は、椅子10の一部を床に取り付けるための取付区域243を画定する開口を設けることもできる。図24に示すように、取付機構は、例えば、床に固定することができるクリート(滑り止め)245を備えることができる。好適には、クリート245に溝孔部分248を設け、ボルトまたは他の固定部材で床に固定した後に、椅子の位置を調節可能とする。例えば、ボルト(図示せず)を、クリート245の溝孔部分248に挿通することができて、またこのボルトを少なくとも部分的に緩めることによって、他のボルトの位置を再び穴開けすることなく、椅子10の位置を調節することができる。
【0079】
隆起環状部材234は、ベース板190から前方に延在して、電源収容区域236(例えば、電源232および/またはモータ/ポンプ214)の少なくとも一部を包囲するのが好ましい。隆起環状部材234は、(図23に示すように)ベース板190とは別個に形成する、またはベース板190と一体的に形成することができる。図23に示すように、隆起環状部材234を別個に形成する構体とする場合、この隆起環状部材234は、例えば、ねじ部材238を使用してベース板190に結合することができる。
【0080】
隆起環状部材234は、好適には、半径方向に拡張する部分244を有し、その上面に棚状部分246設ける。棚状部分246は、カバー230の下部を収容または支持するよう構成することができる。図24に示すように、隆起環状部材234には、さらに、隆起環状部材234の一部から突出する1個またはそれ以上の突起250を設けることもできる。図1につき説明すると、カバー230は、このカバー230を隆起環状部材234の棚状部分246上に配置するとき、突起250を収容するよう構成した1個またはそれ以上の開口252を形成することができる。作用にあたり、カバー230は、棚状部分246上に配置し、1個またはそれ以上の突起250に対応する開口252内に突入させることによって固定する。好適には、隆起環状部材234には、突起250の位置の下側に窪みまたは凹部254を形成する。したがって、指をこの凹部254内に入れて、カバー230を外方に引っ張って開口252から突起250を釈放することによって、道具を使用せずに隆起環状部材234からカバー230を取り外すことができる。このようにして、隆起環状部材は確実にカバーと係合でき、また手で取り外すことができる。
【0081】
隆起環状部材234を床に隣接して配置すると、隆起環状部材234は、操作者の椅子の車輪、床の清掃器具(および関連する化学処理剤)等との接触ポイントになりがちである。したがって、隆起環状部材234は、PBT(polybutyleneterephthalate: ポリブチレンテレフタラート)で形成することができ、カバー230は、比較的高い強度、剛性、耐久性を有し、広範囲の化学物質、水溶液、オイルおよびグリースに対する耐化学性を有するアクリル系ポリ塩化ビニル(acrylic polyvinyl chloride)で形成することができる。当然、他の材料を、隆起環状部材およびカバーに使用することができるが、隆起環状部材は、より大きな力を受ける可能性があるので、隆起環状部材を形成する材料は、カバーを形成する材料よりもより剛固で、可撓性の低い材料とするのが好ましい。
【0082】
カバー230は、耐擦過傷性とするのも好ましい。カバー230の形状は、滑らかに輪郭形成することができ、訴求力のある審美的要素得るとともに、患者の服に引っ掛かったり、患者の体の一部に衝撃を与えたりするあらゆる鋭い端縁を排除することができる。カバーは、椅子の内部構造を痛め、また害を及ぼす可能性のある埃、汚れ、および他のあり得る汚染物でから内部構造を保護する役割を果たすことができる。このツール不要の取付方法は、さらに、好適には、カバー230と隆起環状部材234との間に緊密嵌合を達成することもできるので、汚染物が侵入し得る潜在的な開口をさらに減少させることができる。
【0083】
再び図24につき説明すると、支柱取付部256は、1個またはそれ以上のタワー部材188から突出するように構成することができる。支柱取付部256は、例えば、1個またはそれ以上のねじ258を使用してタワー部材188に固定することができる。支柱取付部256は、カバー230に形成した開口、例えば図1に示したカットアウト部253から突出させることができる。必要に応じて、支柱取付部256にベース部分260に設け、このベース部分260は支柱取付部256の一部を収容し、この支柱取付部256に取り付ける、結合する、または連結すべき素子のための安定したベースを提供することができる。図24に示すように、ベース部分260は、ベース部分260の上部における窪み内に突入する突出部材262を収容し、ベース部分260に支柱取付部256を結合する、または関連付けすることができる。支柱取付部256は、自己レベリング(例えば、自己プランビングまたは鉛直出し)状態で、支柱266を収容する、テーパ付きソケット264を備えることができる。支柱266は、少なくとも部分的に自己レベリングするので、支柱266(および関連する支持要素)の取り付けおよび調整は、簡素化し、また容易に行うことができる。
【0084】
ここで図25につき説明すると、支柱266は、支柱取付部256のソケット264に収容するよう構成することができる。種々の連結部、ワイヤ、配管等を支柱266に挿通することができるように、支柱266は、少なくとも部分的に中空にするのが好ましい。例えば、図25に示すように、支柱266は、支柱266の長手方向長さの少なくとも一部にわたり延在する、1個またはそれ以上の開口を有することができる。付帯ライン、例えばプランビング用ラインまたは電気的ラインを、支柱266の長手方向の開口によって担持する、または挿通することができる。支柱266は、さらに、種々の歯科用機器(付帯ライン付き、または付帯ラインが付いていない)、例えば歯科用ライト、制御パネル、タッチパッド、給排水システム(例えば、カスピドール(痰壷))、および他の歯科用要素、支持するよう構成することもできる。
【0085】
支柱266は、支柱266が床に対して直交するように支柱取付部256に結合するのが好ましい。この床に対する直交性を得るため、図26に示すように、ソケット264にテーパを付けけることができる。テーパ付きソケット264の下部は、支柱266内方に突出して、支柱266を支持するリップ部272を設けることができる。さらに、床に対する支柱266の角度は、開口269(図24に示す)に挿通する複数の位置決めねじ268を調整することによって、変更することができる。これら位置決めねじ268は、支柱266をテーパ付きソケット264に収容するとき、支柱266を少なくとも部分的に包囲する。位置決めねじの個数は様々な数にすることができるが、支柱266を少なくとも部分的に包囲するように、少なくとも3個の位置決めねじを備えるのが好ましい。図25では、4個の位置決めねじ268を、順次に90゜の角度間隔を空けて配置する。 位置決めねじ268の、ソケット内に突入する距離を調整することによって、支柱266の垂直方向の向きを調整することができる。
【0086】
ボルト等の定位部材270を、支柱取付部256の開口271内に突入させることができ、また支柱266の経路内に少なくとも部分的に突入させることができる。支柱266は、テーパ付きソケット264に支柱266を収容するとき、支柱266の底端部から定位部材270を通り過ぎて上方に延在する溝孔を設ける構成とすることができる。このようにして、支柱266は、支柱266を一方向にのみソケット264内に収容するよう構成することができて、このことは、配線または他の要素を、支柱266内に収容および保持するよう構成する場合に、望ましい。
【0087】
本発明の実施態様の原理を適用することができる、多くのあり得る実施形態を考慮すると、図示する実施形態は、単に好適な実施例でしかなくて、本発明の保護範囲を限定するものとみなすべきではないことを認識されたい。むしろ、本発明の保護の範囲は、以下の特許請求の範囲によって定義されるものであり、またこれら特許請求の範囲およびその精神に含まれる全てを請求する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直立状態と傾倒状態との間で移動可能な患者支持装置において、
下部および上部を有する一体型クッション部材であって、前記下部は、患者が前記患者支持装置に座るとき、前記患者の背中下部の少なくとも一部と接触するよう構成し、前記上部は、前記患者が前記患者支持装置に座るとき、前記患者の頭部の少なくとも一部に接触するよう構成し、さらに前記下部と前記上部との間における中間部を有する、該一体型クッション部材と、
前面および後面を有する頸部支持部材であって、前記頸部支持部材の前面は、前記患者における前記頸部の後側の少なくとも一部分と接触するよう構成した、該頸部支持部材と、
前記一体型クッション部材の前記中間部内に配置する頸部支持部材収容区域と、
を備える患者支持装置であって、
前記頸部支持部材の後面の少なくとも一部分を前記頸部支持部材収容区域に収容し、また、前記頸部支持部材は、長手方向の複数の位置間で移動可能な構成としたことを特徴とする患者支持装置。
【請求項2】
請求項1に記載の装置において、前記装置を直立状態と傾倒状態との間で移動するにつれて、前記頸部支持部材が移動できる構成としたことを特徴とする装置。
【請求項3】
請求項1に記載の装置において、前記頸部支持部材収容区域は、細長いスロット部分を有する構成としたことを特徴とする装置。
【請求項4】
請求項3に記載の装置において、前記頸部支持部材は、前記頸部支持部材の前記後面から突出する突出部材を有し、前記突出部材は、前記細長いスロット部分内に収容する構成としたことを特徴とする装置。
【請求項5】
請求項1に記載の装置において、前記頸部支持部材は、第1の向きおよび第2の向きで前記頸部支持部材収容区域内に収容するよう構成し、前記第2の向きは、前記頸部支持部材を前記第1の向きから約180゜回転させることによって得ることを特徴とする装置。
【請求項6】
請求項1に記載の装置において、前記頸部支持部材は、さらに、釈放可能な固定機構を備え、前記釈放可能な固定機構は、前記頸部支持部材収容区域に前記頸部支持部材を釈放可能に保持するよう構成したことを特徴とする装置。
【請求項7】
請求項1に記載の装置において、前記頸部支持部材の前記前面は、クッション部材を備えることを特徴とする装置。
【請求項8】
直立状態と傾倒状態との間で移動可能な患者支持装置において、
患者の上半身の少なくとも一部を支持するためのフレーム部材であって、前記フレーム部材は頸部支持部材収容区域を有し、前記頸部支持部材収容区域は、前記フレーム部材に沿ってほぼ長手方向に延在する、該フレーム部材と、
前面および後面を有する頸部支持部材であって、前記頸部支持部材の前記前面は、前記患者における前記頸部の後側の少なくとも一部分と接触するよう構成し、前記頸部支持部材は、前記頸部支持部材の前記後面から突出する突出部材を有し、前記突出部材は、前記頸部支持部材収容区域内に滑動自在に保持する構成とした、該頸部支持部材と、
を備える患者支持装置。
【請求項9】
請求項8に記載の装置において、前記頸部支持部材収容区域は、細長い溝孔を有する構成としたことを特徴とする装置。
【請求項10】
請求項9に記載の装置において、前記突出部材を前記細長いスロットに収容するとき、前記突出部材は、前記細長いスロット内で第1位置から位置に移動可能としたことを特徴とする装置。
【請求項11】
請求項8に記載の装置において、前記頸部支持部材は、前記頸部支持部材収容区域内に、第1の向きおよび第2の向きのうち、一方の向きにして収容するよう構成し、前記第2の向きは、前記頸部支持部材を、前記第1の向きから約180゜回転することによって得ることを特徴とする装置。
【請求項12】
請求項11に記載の装置において、前記突出部材は、前記頸部支持部材の前記後面の横方向中心線からオフセットしたことを特徴とする装置。
【請求項13】
請求項8に記載の装置において、前記突出部材を確実に前記頸部支持部材収容区域に係合させ、また前記突出部材と前記頸部支持部材収容区域との前記係合は、手動で釈放可能としたことを特徴とする装置。
【請求項14】
請求項13に記載の装置において、前記頸部支持部材は、前記突出部材を前記頸部支持部材収容区域内に釈放可能に保持するよう構成構成した、釈放可能固定機構を有する構成としたことを特徴とする装置。
【請求項15】
請求項8に記載の装置において、前記頸部支持部材の前記前面は、クッション部材を有する構成としたことを特徴とする装置。
【請求項16】
請求項15に記載の装置において、前記クッション部材は、前記患者の前記頸部の後側と接触する寸法にし、また前記クッション部材が前記患者の前記頸部の後側に接触するとき、前記患者の後頭部の上方部分に接触しないものとしたことを特徴とする装置。
【請求項17】
請求項8に記載の装置において、前記フレーム部材は頂部および底部を有し、前記フレーム部材は、ほぼ前記底部から前記頂部にわたって延在する単一の連続クッションであって、前記頸部支持部材収容区域周辺に存在する、該単一の連続クッションを備え、
前記連続クッションにおける前記フレーム部材の前記底部をカバーする部分は、前記患者の背中下部の少なくとも一部に接触するように構成したことを特徴とする装置。
【請求項18】
患者を患者支持装置に受け入れるために頸部支持部材を調整する方法において、
頸部支持部材収容区域を有するフレーム部材、および前記頸部支持部材収容区域に少なくとも部分的に収容する可動の頸部支持部材を有する患者支持装置を設けるステップと、
前記患者支持装置に患者を受け入れるステップであって、前記フレーム部材の下部が、前記患者の背中の少なくとも一部分に接触し、前記フレーム部材の上部が、前記患者の頭部の少なくとも一部分に接触するように前記患者を受け入れるステップと、
前記フレーム部材を第1の向きから第2の向きに移動する移動ステップであって、前記フレーム部材の移動により、前記頸部支持部材を、少なくとも部分的に前記頸部支持部材収容区域内で第1位置から第2位置に向けての移動を生ずる、該移動ステップと、
を有する頸部支持部材の調整方法。
【請求項19】
請求項18に記載の方法において、前記患者を前記患者支持装置に受け入れる前に、前記頸部支持部材を前記頸部支持部材収容区域から取り外し、約180゜回転させ、前記頸部支持部材収容区域に再び配置し、これにより、前記頸部支持部材と前記患者との間に異なるインタフェースを提供することを特徴とする方法。
【請求項20】
請求項18に記載の方法において、前記フレーム部材の第1の向きから第2の向きへの前記移動は、前記フレーム部材を、ほぼ垂直状態からほぼ水平に傾倒した状態に回動させるステップを有することを特徴とする方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20A】
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【図20B】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28A】
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【図28B】
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【図29A】
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【図29B】
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【図30A】
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【図30B】
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【図31A】
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【図31B】
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【公開番号】特開2010−188127(P2010−188127A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−29381(P2010−29381)
【出願日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【出願人】(510040983)エイ−デック インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】