説明

顎嚢胞の予防または治療用の組成物

【課題】顎嚢胞の予防または治療用の組成物と、当該組成物を用いた顎嚢胞の予防または治療方法の提供。
【解決手段】p38MAPK阻害剤を有効成分として含むことで、顎嚢胞の治療に有効な組成物を得た。また当該組成物を用いることで、顎嚢胞の予防または治療を可能とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は顎嚢胞の予防または治療用の組成物に関する。さらに詳しくはp38MAPK(Mitogen−activated protein kinase)阻害剤を有効成分として含む顎嚢胞の予防または治療用の組成物と、当該組成物を用いた顎嚢胞の新しい予防または治療方法の提供に関する。
【背景技術】
【0002】
顎嚢胞の治療として、例えば、歯根嚢胞においては、歯の中から根管外へと漏出する感染源を除去した後、防腐的材料を根尖孔まで充填する感染根管治療を試み、治癒しない場合には外科的に切除することが一般的であった。また、歯原性角化嚢胞等の他の顎嚢胞の治療では、外科的に切除する以外に方法がなかった。このように、従来の顎嚢胞の治療には、効果的な薬剤が得られていなかった。
【0003】
歯根嚢胞は歯性感染症の原因歯の根尖部病巣内に嚢胞が形成される炎症性嚢胞で、根管からの持続的な細菌性の刺激により形成されると考えられている(非特許文献1、2参照)。
歯根嚢胞の嚢胞壁は、病理組織学的に3層からなり、内層の裏層上皮層は不規則な上皮突起をそなえた重層扁平上皮で構成され、これに接して炎症性細胞が浸潤している肉芽組織層、その外層に厚い線維性結合組織層が存在することが知られている。
歯根嚢胞は感染根管治療を行ったにもかかわらず治癒しない場合があることから(非特許文献3参照)、初発の原因は感染であるものの、その後の嚢胞の拡大機構については感染以外の要因、リーマー等による器械刺激、刺激性の強い根管消毒薬による組織障害および抜髄や根幹拡大時の歯髄片等の押し出しによる上皮の増殖等の要因が存在すると考えられている(非特許文献4、5参照)。
【0004】
その他にも歯根嚢胞の拡大機構に関する要因として、歯根嚢胞壁で産生されるPGE(Prostaglandin E)が、嚢胞拡大における主要な骨吸収因子である可能性が報告され(非特許文献6参照)、嚢胞の結合組織性被膜部由来の線維芽細胞にIL−1(Interleukin−1)を作用させるとPGE産生が10倍以上亢進したことから(非特許文献7参照)、歯根嚢胞におけるPGE産生の主体は嚢胞結合組織性被膜由来の線維芽細胞であると示唆されている。
【0005】
歯根嚢胞由来の線維芽細胞様細胞(Radicular cyst−derived fibroblast−like cells、以下、RC cellsとする)は、PGEの作用によって、上皮の増殖因子でもあるKGF(keratinocyte growth factor)、HGF(hepatocyte growth factor)や、骨吸収因子でありgp130をレセプターに共有するIL−6(Interleukin−6)、IL−11(Interleukin−11)、LIF(leukemia inhibitory factor)等の炎症性メディエーターの産生が促進されることから、間接的にも嚢胞拡大に関与している可能性が示唆されている(非特許文献8、9参照)。
【0006】
また、野崎(非特許文献10参照)および本発明者ら(非特許文献11)はin vitroの実験系で、PGEによる刺激によって、RC cellsおよび歯原性角化嚢胞由来の線維芽細胞様細胞(Odontogenic keratocyst−derived fibroblast−like cells、以下、KC cellsとする)において、HGF、IL−6およびPGEの産生が促進されることを確認している。そして、これらの細胞がPGEによる刺激によってPGE産生を促進させたことから、PGEのオートクリン機構を有することを示唆し、同様の機構がin vivoにおいても存在すれば、根管からの持続的な抗原の供給がなくとも、嚢胞の拡大が継続する可能性があることを報告している。
【0007】
近年、培養滑膜線維芽細胞にIL−1β(Interleukin−1β)存在下で、PGE刺激を行うと、p38MAPKの活性化を介してCOX2(Cyclooxygenase2)の発現が促進かつ安定化されること(非特許文献12参照)や、IL−1刺激による滑膜線維芽細胞様細胞のIL−6産生促進にp38が関与することが報告されている(非特許文献13参照)。
MAPKファミリーは、細胞外からの情報を細胞内へ伝える細胞内シグナル伝達経路を構成する分子群であり(非特許文献14参照)、p38は特に高浸透圧、熱および炎症性サイトカインなどの刺激によって活性化されることから(非特許文献15参照)、PGE刺激によるRC cellsのPGEおよびIL−6産生促進におけるシグナル伝達機構には、p38が関与している可能性が考えられる。
そこで本発明者は、顎嚢胞の治療に有用な薬剤を見出すために、PGE刺激による、RC cellsのCOX、IL−6の遺伝子発現ならびにPGE、IL−6産生への影響を調べ、これらの炎症性メディエーターの発現および産生を抑制し得る物質を検討した。
【非特許文献1】Meghji S、 Qureshi W、 Henderson B、 Harris M (1996) The role of endotoxin and cytokines in the pathogenesis of odontogenic cysts. Arch. Oral. Biol. 41、 523−531
【非特許文献2】石川梧朗、秋吉正豊(1978)口腔病理学.第1版、永末書店、京都、378−391
【非特許文献3】枝 重夫(1997)嚢胞および嚢胞性病変.ハンディ病理学・口腔病理学.第1版、下野正基編、学建書院、東京、222−232
【非特許文献4】Harris M、 Toller P (1975) The pathogenesis of dental cysts. Br. Med. Bull. 31、 159−163
【非特許文献5】川崎孝一、大森明、松田なおみ(2007)サルの抜髄歯を用いた歯根嚢胞の発生に関する実験的研究、日本歯科保存学雑誌50、80−90
【非特許文献6】Harris M、 Jenkins MV、 Bennett A、 Wills MR (1973) Prostaglandin production and bone resorption by dental cysts. Nature 245、 213−215
【非特許文献7】Harvey W、 Guat−Chen F、 Gordon D、 Meghji S、 Evans A、 Harris M (1984) Evidence for fibroblasts as the major source of prostacyclin and prostaglandin synthesis in dental cyst in man. Arch. Oral. Biol. 29、 223−229
【非特許文献8】野崎弘晃、大島光宏、山口洋子、小木曽文内、明石俊和、大塚吉兵衛(2001)PGE2が歯根嚢胞由来細胞のケラチノサイト増殖因子(KGF)産生に及ぼす影響、日本歯科保存学雑誌44、917−923
【非特許文献9】野崎弘晃、大島光宏、山口洋子、小木曽文内、明石俊和、大塚吉兵衛(2001)PGE2が歯根嚢胞由来細胞の骨吸収性サイトカイン産生に及ぼす影響.日本歯科保存学雑誌44、836−843
【非特許文献10】野崎弘晃(2002)PGE2が歯根嚢胞由来細胞のPGE2産生に及ぼす影響.日本歯科保存学雑誌45、273−281
【非特許文献11】大島崇史、宮田博史、大島光宏、山口洋子、古豊育太朗、小木曽文内、大塚吉兵衛、伊藤公一(2006)PGE2が歯根嚢胞および歯原性角化嚢胞由来細胞のHGF、IL−6 および PGE2産生に及ぼす影響.日本歯科保存学雑誌、797−809
【非特許文献12】Faour WH、 He Y、 He QW、 de Ladurantaye M、 Quintero M、 Mancini A、 Di Battista JA (2001) Prostaglandin E2 regulates the level and stability of cyclooxygenase−2 mRNA through activation of p38 mitogen−activated protein kinase in interleukin−1β−treated human synovial fibroblasts. J. Biol. Chem. 276、 31720−31731
【非特許文献13】Miyazawa K、 Mori A、 Miyata H、 Akahane M、 Ajisawa Y、 Okudaira H (1998) Regulation of interleukin−1beta−induced interleukin−6 gene expression in human fibroblast−like synoviocytes by p38 mitogen−activated protein kinase. J. Biol. Chem. 273、 24832−24838
【非特許文献14】緒方正人(2004)炎症制御におけるp38 MAPキナーゼの役割.臨床免疫41、404−410
【非特許文献15】山本拓也、西田栄介 (2005) MAPキナーゼカスケードの多様な役割.生命現象や疾患を支配する分子メカニズムと新しい研究法 現在と未来 シグナル伝達研究2005−’06実験医学23、1649−1656
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、外科的手術を必要としない顎嚢胞を予防または治療するための新しい組成物および当該組成物を用いた顎嚢胞の予防または治療方法の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を行った結果、p38MAPK阻害剤が顎嚢胞由来細胞において炎症性メディエーターの発現および産生の抑制に効果があることを見出し、本発明を完成するに至った。本発明のp38MAPK阻害剤を有効成分として含む組成物は、嚢胞内に直接局所投与等することにより、骨吸収に関連した炎症性メディエーターの発現および産生を抑制し、嚢胞の拡大を抑制することができる。さらに嚢胞の拡大に伴う、骨吸収を抑制することができる。本発明の予防または治療用の組成物は歯原性角化嚢胞等の歯根嚢胞以外の顎嚢胞にも用いることができる。
【0010】
すなわち、本発明は次の(1)〜(11)の顎嚢胞を予防または治療するための新しい組成物等に関する。
(1) p38MAPK阻害剤を有効成分として含む顎嚢胞の予防または治療用の組成物。
(2) p38MAPK阻害剤が4−(4−Fluorophenyl)−2−(4−hydroxyphenyl)−5−(4−pyridyl)1H−imidazoleまたは4−(4−Fluorophenyl)−2−(4−methylsulfinylphenyl)−5−(4−pyridyl)1H−imidazoleである上記(1)に記載の組成物。
(3) 当該組成物が顎嚢胞の拡大を抑制する上記(1)または(2)に記載の組成物。
(4) 当該組成物が顎嚢胞の細胞壁を構成する細胞の増殖を抑制することで、顎嚢胞の拡大を抑制する上記(3)に記載の組成物。
(5) 当該組成物が顎嚢胞の細胞壁を構成する細胞のp38活性化を抑制することで、顎嚢胞の拡大を抑制する上記(3)に記載の組成物。
(6) 当該組成物が顎嚢胞の細胞壁を構成する細胞のCOX2およびIL−6の遺伝子発現を抑制することで、顎嚢胞の拡大を抑制する上記(3)に記載の組成物。
(7) 当該組成物が顎嚢胞の細胞壁を構成する細胞のPGEおよびIL−6の産生を抑制することで、顎嚢胞の拡大を抑制する上記(3)に記載の組成物。
(8) 顎嚢胞の細胞壁を構成する細胞が歯根嚢胞由来の線維芽細胞様細胞または歯原性角化嚢胞由来の線維芽細胞様細胞である上記(4)〜(7)のいずれかに記載の組成物。
(9) 嚢胞内局所投与用の組成物である上記(1)〜(8)のいずれかに記載の組成物。
(10)顎嚢胞が歯根嚢胞または歯原性角化嚢胞である上記(1)〜(9)のいずれかに記載の組成物。
【発明の効果】
【0011】
本発明により確立された顎嚢胞を予防または治療するための新しい組成物は、外科的な切除等以外に有効な方法がなかった顎嚢胞の治療において、薬剤による予防または治療を可能とする。本発明の組成物は、嚢胞内への直接局所投与が可能であるため人体に与える副作用が少なく有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の「組成物」とは、p38MAPK阻害剤を有効成分とする顎嚢胞の予防または治療用の組成物のことをいう。
本発明の組成物は、顎嚢胞の予防、治療または外科的切除後の再発防止に利用できる。対象となる顎嚢胞としては、歯根嚢胞、歯原性角化嚢胞等が挙げられる。
【0013】
本発明の組成物に含まれるp38MAPK阻害剤は、顎嚢胞の予防または治療に効果があればいずれのp38MAPK阻害剤であっても良い。
例えば、p38MAPK阻害剤としては、4−(4−Fluorophenyl)−2−(4−hydroxyphenyl)−5−(4−pyridyl)1H−imidazole、4−(4−Fluorophenyl)−2−(4−methylsulfinylphenyl)−5−(4−pyridyl)1H−imidazole、2−(4−Chlorophenyl)−4−(4−fluorophenyl)−5−pyridin−4−yl−1,2−dihydropyrazol−3−one、(RS)−{4−[5−(4−Fluorophenyl)−2−methylsulfanyl−3H−imidazol−4−yl]pyridin−2−yl}−(1−phenylethyl)amine]、5−(2−Amino−4−pyrimidinyl)−4−(4−fluorophenyl)−1−(4−piperidinlyl)imidazole、trans−1−(4−Hydroxycyclohexyl)−4−(4−fluorophenyl)−5−(2−methoxypyrimidin−4−yl)imidazole、2−Methyl−4−phenyl−5−(4−pyridyl)oxazoleまたは6−(4−Fluorophenyl)−2,3−dihydro−5−(4−pyridyl)imidazo[2,1−b]thiazole等が挙げられ、特に4−(4−Fluorophenyl)−2−(4−hydroxyphenyl)−5−(4−pyridyl)1H−imidazoleまたは4−(4−Fluorophenyl)−2−(4−methylsulfinylphenyl)−5−(4−pyridyl)1H−imidazoleを用いることが好ましい。また、これらの化合物の生理学的に許容される塩、例えば塩酸塩も本発明のp38MAPK阻害剤に含まれるものとする。
【0014】
これらのp38MAPK阻害剤は、市販のものを用いることもできる。例えば、4−(4−Fluorophenyl)−2−(4−hydroxyphenyl)−5−(4−pyridyl)1H−imidazoleであれば、メルク社の製品番号SB202190を用いることができ、4−(4−Fluorophenyl)−2−(4−methylsulfinylphenyl)−5−(4−pyridyl)1H−imidazoleであればメルク社の製品番号SB203580(SB203580 Hydrochloride、Calbiochem)を用いることができる。
また、2−(4−Chlorophenyl)−4−(4−fluorophenyl)−5−pyridin−4−yl−1,2−dihydropyrazol−3−oneであれば、メルク社の製品番号p38 MAP Kinase Inhibitorを、(RS)−{4−[5−(4−Fluorophenyl)−2−methylsulfanyl−3H−imidazol−4−yl]pyridin−2−yl}−(1−phenylethyl)amine]であれば、メルク社の製品番号p38 MAP Kinase Inhibitor IIIを、5−(2−Amino−4−pyrimidinyl)−4−(4−fluorophenyl)−1−(4−piperidinlyl)imidazoleであれば、メルク社の製品番号SB 220025を、trans−1−(4−Hydroxycyclohexyl)−4−(4−fluorophenyl)−5−(2−methoxypyrimidin−4−yl)imidazoleであれば、メルク社の製品番号SB 239063を、2−Methyl−4−phenyl−5−(4−pyridyl)oxazoleであれば、メルク社の製品番号SC 68376を、または6−(4−Fluorophenyl)−2,3−dihydro−5−(4−pyridyl)imidazo[2,1−b]thiazoleであれば、メルク社の製品番号SKF−86002を用いることができる。
【0015】
さらに、本発明の「組成物」は、有効成分のp38MAPK阻害剤と併用して、他の阻害剤を用いることができる。他の阻害剤としては、血小板由来成長因子受容体のリン酸化(活性化)を阻害する効果を有するメシル酸イマニチブや、COXの阻害剤で、細胞のPGE産生を抑制する効果があるアスピリン、インドメタシンまたはデキサメタゾン等が挙げられる。また、血管新生阻害薬であるbevacizumab(ロシュ社、登録商標アバスチン)や臨床試験中であるKRN951(麒麟麦酒社、参考文献1)等が挙げられる。また抗生物質類も挙げられ、これらを一種類以上組み合わせて併用することにより、p38MAPK阻害剤の含有量を減らすことができ、副作用の危険性を下げることができる。
[参考文献1] Cancer Research 66, 9134−9142, September 15, 2006
【0016】
その他、本発明の「組成物」には、p38MAPK阻害剤を有効成分とし、そのp38の活性化を阻害する作用を損なわないものであればいずれの成分も含むことができる。
すなわち、p38MAPK阻害剤のみでもよく、また、p38MAPK阻害剤以外に薬剤を製造する上で必要とされる一般的な成分をも含むことができる。
本発明の「組成物」は投与方法に合わせて好ましい形態であれば、顆粒、粉末、固形、ゲル状、ゾル状、または溶液状等のいずれの形態であっても良く、その形態を保つための安定剤等も含むことができる。
【0017】
本発明の顎嚢胞の予防または治療方法とは、p38MAPK阻害剤を有効成分として含む組成物を顎嚢胞または顎嚢胞の発生の可能性が高い部位に投与することをいう。
「組成物」の投与方法としては、顎嚢胞の発生の可能性が高い部位に本発明の組成物を塗布すること等で投与することができる。さらに顎嚢胞の発生の予防を目的とする場合には、根管貼薬として、綿栓やペーパーポイント等に滲み込ませて根管内に投与することができ、外科的切除後の再発防止を目的とする場合には、徐放性となるように、コラーゲンスポンジ等の吸収性の担体を併用して投与することができる。本発明の組成物を予防のために投与する、顎嚢胞の発生の高い部位としては、感染根管治療によって、器械刺激や組織障害を受けやすい、根管治療中の歯等の部位が挙げられる。
また、顎嚢胞が発生した後であれば、嚢胞内に局所投与することで、人体に与える副作用の可能性を下げることができる。
【0018】
本発明の顎嚢胞の予防または治療方法による、顎嚢胞の予防または治療の効果は、顎嚢胞の発生や、発生後の顎嚢胞の拡大が抑制されたことから判断できる。
顎嚢胞の拡大の抑制とは、本発明の組成物を投与したことにより、顎嚢胞の細胞壁を構成する細胞の増殖が抑制されること、当該細胞のp38活性化が抑制されること、COX2およびIL−6の遺伝子発現が抑制されることや当該細胞のPGEおよびIL−6の産生が抑制されることで判断することができる。
【0019】
以下、実施例をあげて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例1】
【0020】
組成物の調製
p38MAPK阻害剤である4−(4−Fluorophenyl)−2−(4−hydroxyphenyl)−5−(4−pyridyl)1H−imidazoleとして、メルク社の製品番号SB202190を用いた。また4−(4−Fluorophenyl)−2−(4−methylsulfinylphenyl)−5−(4−pyridyl)1H−imidazoleとして、メルク社の製品番号SB203580(SB203580 Hydrochloride、Calbiochem)を用いた。これらを有効成分とする組成物(以下、有効成分によって、組成物(SB202190)または組成物(SB203580)とする)を次のように調製し、顎嚢胞の予防または治療に用いた。
【0021】
1)組成物(SB203580)
メルク社より購入した粉末のSB203580(塩酸塩)を、終末濃度の1000倍濃いものとなるように水で調製し、小分けして、フリーザーに凍結保存した。使用時に終末濃度(2μM)となるように希釈して用いた。
2)組成物(SB202190)
メルク社より購入した粉末のSB202190を、DMSOで溶かして終末濃度の1000倍濃いものとなるように調製し、小分けして、フリーザーに凍結保存した。使用時に終末濃度(2μM)となるように希釈して用いた。
【0022】
[試験例]
材料の調製
1.組成物
実施例1で調製した組成物を用い、顎嚢胞由来細胞への効果を調べた。
2.顎嚢胞由来細胞
顎嚢胞由来細胞の一つとして、日本大学歯学部付属歯科病院口腔外科、歯内療法科で治療の目的で外科的に摘出され、同病院検査室病理部で歯根嚢胞または歯原性角化嚢胞と診断された嚢胞組織の一部から、歯根嚢胞由来のRC cellsと歯原性角化嚢胞由来のKC cellsを得た。なお、試料の採取は日本大学歯学部倫理委員会の規定に基いて行った。また、患者には組織の一部が本研究に用いられることをあらかじめ説明し、文書による同意を得た。
RC cellsは、野崎ら(非特許文献8参照)の方法に準じて得た。すなわち、組織片を3%の抗生物質溶液(ペニシリン/ストレプトマイシン/ネオマイシン、PSN、Gibco、Invitrogen)を含むDulbeccos modified Eagle medium(DMEM、Wako)で数回洗浄し、歯科用メス(No.15、Feather)で細片化した。6例の歯根嚢胞から組織片を得て、それぞれ個体別に用いた。
6穴プレート(Sumitomo Bakelite)の底に当該組織片をカバースリップで固定後、10%ウシ胎児血清(Fetal Bovine Serum、FBS、Hyclone)および1%PSNを含むDMEMで、37℃および5%CO/95%airの条件下で初代培養を行った。約2週間後、外生した細胞がコンフルエントになった時点で、トリプシン/EDTA溶液(Gibco、Invitrogen)を用いて細胞を剥離し、同様の条件下で継代培養を行い、4から7代継代したものをRC cellsとして用いた。
【0023】
[試験例1]
RC cellsのp38活性化に及ぼす組成物の効果
1.RC cellsのp38活性化
1)上記試験例で調製した6例のRC cellsを6穴プレートに入れ、初代培養と同様の条件下でコンフルエントになるまで培養した。
2)無血清のDMEMで24時間の血清飢餓を行った後、組成物(SB203580)を終末濃度2μMとなるように加え、1時間処理をした(SB処理群)。比較として組成物を添加しないRC cellsを用いた(SB未処理群)。
3)2)にPGEとして、小野薬品から供与されたPGEの安定な誘導体であるPGEβ−CD(以下、PGEβ−CDをPGEとする)を終末濃度0.1μMとなるように加え、0、5、15、30、60および120分間細胞を刺激した。
4)各々の時間刺激した後、PGEを含む培地を取り除き、PBSで洗浄した後、それぞれのウェルに250μlのlysis buffer(pH7.5、20mM Tris−HCl、0.5%Triton X100、0.5%sodium deoxycholate、0.15M NaCl、10mM ethylenediamine tetraacetic acid、30mM sodium pyrophosphate、0.5mM sodium orthovanadate、74KIU/ml aprotinin)を用いて細胞層の回収を行った。
【0024】
2.p38活性化の確認
活性化(リン酸化)p38の有無は、Western blottingを用いて調べた。
1)細胞溶解液中のタンパクを10%polyacrylamide slab gel(c−PAGEL、ATTO)で電気泳動を行って分離した後、gel上のタンパクをPVDF膜(Millipore)に転写し、ブロックエース(雪印乳業)でブロッキングを行った。
2)一次抗体としてanti−active p38(rabbit IgG、ポリクローナル、Promega)を、10倍希釈したブロックエースで2000倍希釈して用いた。二次抗体としてビオチン標識anti−rabbit IgG(Zymed)を、10倍希釈したブロックエースで5000倍希釈して用い、さらにhorseradish peroxidase標識ストレプトアビジン(KPL)とインキュベートした後、ECL法(ImmunoStar Reagent、Wako)でエックス線フィルム(Hyperfilm ECL、Amersham)上にバンドを検出した。
3)リン酸化p38を確認するためのポジティブコントロールとしてanisomycin 処理したC−6 glioma 細胞の溶解液、ネガティブコントロールとして未処理のC−6 glioma 細胞の溶解液(p38 MAP Kinase Control Cell Extracts、Cell Signaling)を用いた。
【0025】
3.total p38量の確認
total p38量は、reprobing buffer(Re−blot plus strong antibody stripping solution、Chemicon)で活性化p38を調べた転写膜を15分間ストリッピングし、ブロッキング後にanti−p38 MAPK(rabbit IgG、ポリクローナル抗体、Sigma)を、10倍希釈したブロックエースで5000倍希釈して用い、以後は上述と同様の方法で調べた。
【0026】
4.結果
p38の活性化におよぼすPGE刺激の影響をWestern blottingで調べた結果を図1に示した。
活性化p38は、すべての症例(SB未処理群)において分子量38−kDaにPGE刺激5分から30分後に強く認められ、その後はしだいに減少した。また、total p38量として、すべての症例においてPGE刺激0分から120分後までの刺激時間で、分子量38−kDaにほぼ同じ強さのバンドとして認められたことから、すべてのレーンでほぼ同じ量のタンパクが泳動されていることが確認された。
一方、組成物(SB203580)を加えたSB処理群においては、図2に示すとおり、SB未処理群と比較して、刺激後5分から30分で活性化p38のバンドの減少がみられた。図2では、代表として2例を示した。従って、本発明の組成物(SB203580)は、RC cellsのPGE刺激によるp38活性化を抑制することが確認された。
【0027】
[試験例2]
RC cellsのCOX1、COX2およびIL−6の遺伝子発現に及ぼす組成物の効果
1.RC cellsのCOX1、COX2およびIL−6の遺伝子発現
1)上記試験例で調製した6例のRC cellsを6穴プレートに入れ、初代培養と同様の条件下でコンフルエントになるまで培養した。
2)無血清のDMEMで24時間の血清飢餓を行った後、組成物(SB203580)を終末濃度2μMとなるように加え、1時間処理をした(SB処理群)。比較として組成物を添加しないRC cellsを用いた(SB未処理群)。
3)2)にPGEを終末濃度0.1μMとなるように加え、0、1、3、6、12および24時間細胞を刺激した。
4)各々の刺激時間後、PGEを含む培地を取り除き、PBSで洗浄した後、Trizol reagent(Invitrogen)を用いて細胞層を回収し、全RNAを抽出した。
【0028】
2.COX1、COX2およびIL−6の遺伝子発現の確認
COX1、COX2およびIL−6の遺伝子発現は、real−time PCR(polymerase chain reaction)法を用いて調べた。
1)上記で抽出した全RNAより、GeneAmp RNA PCR core kit(Applied Biosystems)を用いてmRNAからcDNAへ変換した。
2)得られたcDNAを用いてCOX1、COX2、IL−6および内部標準としてグリセルアルデヒド3−リン酸脱水素酵素(GAPDH)に特異的なプライマーと、蛍光色素としてPower SYBR Green PCR Master Mix(Applied Biosystems)を用い、ABI PRISM 7700 Sequence Detection System(Applied Biosystems)によりreal−time PCR法(50℃2分、95℃10分の後、95℃15秒、60℃1分で40サイクル)を行った。プライマーの塩基配列は表1および配列表配列番号1〜8に示した。
3)GAPDHの定量結果で補正する相対定量で目的遺伝子を定量し、SB未処理群とSB処理群との比較には、Wilcoxon signed−ranks testを用いて統計学的処理を行った。
【0029】
【表1】

【0030】
3.結果
real−time PCR法によってPGE刺激がRC cellsのCOX1、COX2およびIL−6の遺伝子発現に及ぼした影響を図3−1、3−2、3−3に示した。
1)COX1の遺伝子発現は、SB未処理群(図ではPGE又はPGE刺激群とする。以下同じ)、SB処理群(図ではSB203580、SB202190又はSB処理群とする。以下同じ)ともに、症例5および6で時間依存的にPGE刺激によってわずかに上昇する傾向を示したが、他の症例において変化はほとんどみられなかった。また、SB203580の添加がCOX1の遺伝子発現に及ぼす影響はほとんど認められなかった。
2)COX2の遺伝子発現は、5症例でPGE刺激後1時間をピークに、また1症例で3時間をピークに顕著に上昇した。その後、刺激後6時間まで減少し、12および24時間後に再び上昇する傾向を示した。SB処理群の症例1を除いた5症例において、COX2の遺伝子発現の上昇は、SB未処理群と比較して顕著に抑制されていた。
3)IL−6の遺伝子発現は、ほぼすべての症例でPGE刺激後1時間をピークに上昇し、その後は減少した。またSB処理群では、症例1および3を除いた4症例で、その遺伝子発現はPGE刺激群と比較して顕著に抑制されていた。
【0031】
4.統計学的処理の結果
6症例を平均して、統計学的処理を行った結果を図4に示した。
1)COX1の遺伝子発現は、24時間でSB未処理群およびSB処理群いずれも2倍程度に上昇していた。SB未処理群においては3、12および24時間で、SB処理群においては6、12および24時間でコントロール(0時間)と比較して有意な上昇が認められたが、SB未処理群とSB処理群との比較では有意な差は認められなかった。これは、PGE刺激によるCOX1の遺伝子発現の変化にp38の活性化が関与している可能性が低いためであると考えられる。
2)COX2の遺伝子発現は、SB未処理群においてコントロール(0時間)と比較して1、3、12および24時間後で有意な上昇が確認された。また、SB処理群ではPGE刺激群と比較して0、1、3、6および24時間後で有意に減少した。
3)IL−6の遺伝子発現は、SB未処理群においてコントロールと比較して1および3時間後で有意な上昇が確認された。また、SB処理群ではSB未処理群と比較して0、1、3および6時間後で有意に減少した。
4)従って、本発明の組成物(SB203580)は、RC cellsのPGE刺激によるCOX2の遺伝子発現およびをIL−6の遺伝子発現を抑制することが確認された。
【0032】
[試験例3]
RC cellsのCOX2およびIL−6の遺伝子発現に及ぼす組成物の効果
1.RC cellsのCOX2およびIL−6の遺伝子発現
上記試験例で調製した2例のRC cellsに、組成物(SB202190)または組成物(SB203580)を用いて、試験例2、1.と同様の方法でCOX2およびIL−6の遺伝子発現を行った。以下、組成物(SB202190)で処理したものをSB処理群(SB202190)と、組成物(SB203580)で処理したものをSB処理群(SB203580)と表わす。
2.COX2およびIL−6の遺伝子発現の確認
試験例2、2.と同様の方法で、COX2およびIL−6の遺伝子発現を確認し、GAPDHの定量結果で補正する相対定量で目的遺伝子を定量した。
【0033】
3.結果
2症例の遺伝子発現の結果を図5に示した。
1)COX2の遺伝子発現は、SB未処理群においてコントロール(0時間)と比較して1、および3時間後で有意な上昇が確認された。また、SB処理群(SB202190)およびSB処理群(SB203580)ではSB未処理群と比較して1、3時間後で有意に減少した。SB処理群(SB203580)と比べて、SB処理群(SB202190)の方が有意に減少していることから、組成物(SB202190)の方が、より効果が強いと考えられた。
2)IL−6の遺伝子発現は、SB未処理群においてコントロールと比較して1および3時間後で有意な上昇が確認された。また、SB処理群(SB202190)およびSB処理群(SB203580)ではSB未処理群と比較して1および3時間後で有意に減少した。SB処理群(SB203580)とSB処理群(SB202190)では、有位な差は見られなかった。
3)以上より、本発明の組成物(SB202190)または組成物(SB203580)は、RC cellsのPGE刺激によるCOX2の遺伝子発現およびをIL−6の遺伝子発現を抑制することが確認された。
【0034】
[試験例4]
RC cellsのPGEおよびIL−6産生に及ぼす組成物の効果
1.RC cellsのPGEおよびIL−6産生および定量
1)上記試験例で調製した6例のRC cellsを24穴プレートに入れ、初代培養と同様の条件下でコンフルエントになるまで培養した。
2)無血清のDMEMで24時間の血清飢餓を行った後、組成物(SB203580)を終末濃度2μMとなるように加え、1時間処理をした(SB処理群)。比較として組成物を添加しないRC cellsを用いた(SB未処理群)。
3)2)にPGEを終末濃度0.1μMとなるように加え、3時間細胞を刺激した。
4)3)の細胞を無血清のDMEMで2回洗浄し、500μl/wellの無血清のDMEMと交換した後、培養上清を3時間後に回収した。
5)さらに、SB未処理群およびSB処理群それぞれのコントロールは、PGEによる刺激を行わずに、上記4)までの工程を行った後、3時間後に回収した培養上清を用いた。
6)回収した培養上清をProstaglandin E Express EIA kit(Cayman Chemical)および human IL−6 DuoSet ELISA Development System(R&D system)を用い、製造者指示に従ってPGE量とIL−6量を各2連で測定した。
7)得られた6症例の成績は、Wilcoxon signed−ranks testにより統計学的処理を行った。
【0035】
2.結果
1)PGEの産生に及ぼす組成物(SB203580)の効果を図6および図7に示した。
図6に示すように、SB未処理群の培養上清中のPGE量は、コントロールと比較して顕著に増加した。また、すべての症例においてSB処理群の培養上清中のPGE量は、SB未処理群と比較して減少した。統計学的処理を行った結果、図7に示すように、SB未処理群ではコントロール(無刺激)と比較して有意に増加し、またSB処理群では、SB未処理群と比較して有意に減少していることが確認された。
2)IL−6の産生に及ぼす組成物(SB203580)の効果を図8および図9に示した。
図8に示すように、SB未処理群の培養上清中のIL−6量は、すべての症例においてコントロールと比較して顕著に増加した。また、すべての症例においてSB処理群の培養上清中のIL−6量は、SB未処理群と比較して減少していたが、症例3においては産生量の減少は、他の症例に比べて少ない傾向を示した。統計学的処理を行った結果、図9に示すように、PGE刺激群ではコントロールと比較して有意に増加し、またSB処理群では、PGE刺激群と比較して有意に減少していることが確認された。
3)従って、本発明の組成物(SB203580)は、PGEおよびIL−6産生を抑制することが確認された。
【0036】
[試験例5]
KC cellsのCOX2およびIL−6の遺伝子発現に及ぼす組成物の効果
1.KC cellsのCOX2およびIL−6の遺伝子発現
上記試験例で調製した2例のKC cellsに、組成物(SB202190)または組成物(SB203580)を用いて、試験例3と同様の方法でCOX2およびIL−6の遺伝子発現を行い、GAPDHの定量結果で補正する相対定量で目的遺伝子を定量した。また、試験例4と同様の方法で培養上清中に含まれるIL−6の発現量をELISAで定量した。
【0037】
2.結果
2症例の遺伝子発現の結果を図10に示した。また、IL−6の発現量を図11に示した。
1)図10に示すように、COX2の遺伝子発現は、SB未処理群においてコントロール(0時間)と比較して1、および3時間後で有意な上昇が確認された。また、SB処理群(SB202190)およびSB処理群(SB203580)ではSB未処理群と比較して1、3時間後で有意に減少した。
2)図10に示すように、IL−6の遺伝子発現は、SB未処理群においてコントロールと比較して1および3時間後で有意な上昇が確認された。また、SB処理群(SB202190)およびSB処理群(SB203580)ではSB未処理群と比較して1時間後で有意に減少した。
症例1においては3時間後でSB処理群(SB202190)がSB未処理群と同様に上昇したが、SB処理群(SB203580)では減少した。また、症例2においては、SB処理群(SB203580)と比べて、組成物(SB202190)の方が減少した。
3)図11に示すように、SB未処理群の培養上清中のIL−6量は、症例1および2においてコントロールと比較して顕著に増加した。また、症例1(24時間)および2(6時間)においてSB処理群の培養上清中のIL−6量は、SB未処理群と比較して減少した。
4)以上より、本発明の組成物(SB202190)または組成物(SB203580)は、KC cellsのPGE刺激によるCOX2の遺伝子発現およびIL−6の遺伝子発現を抑制することが確認された。なお、症例によって効果が高い組成物や効果の持続性が異なる場合があることが示唆された
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明の顎嚢胞の予防または治療用の組成物は、顎嚢胞の予防または治療を可能とする。本発明の組成物は、嚢胞内への直接局所投与が可能であるため人体に与える副作用が少なく有用である。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】RC cellsのp38活性化に及ぼすPGE刺激の影響を示した図である(試験例1)。
【図2】RC cellsのp38活性化に及ぼす組成物の効果を示した図である(試験例1)。
【図3−1】症例1、2におけるRC cellsのCOX1、COX2およびIL−6の遺伝子発現に及ぼす組成物の効果を示した図である(試験例2)。
【図3−2】症例3、4におけるRC cellsのCOX1、COX2およびIL−6の遺伝子発現に及ぼす組成物の効果を示した図である(試験例2)。
【図3−3】症例5、6におけるRC cellsのCOX1、COX2およびIL−6の遺伝子発現に及ぼす組成物の効果を示した図である(試験例2)。
【図4】RC cellsのCOX1、COX2およびIL−6の遺伝子発現に及ぼす組成物の効果を示した図である(試験例2)。
【図5】RC cellsのCOX2およびIL−6の遺伝子発現に及ぼす組成物の効果を示した図である(試験例3)。
【図6】RC cellsのPGE産生に及ぼす組成物の効果を示した図である(試験例4)。
【図7】RC cellsのPGE産生に及ぼす組成物の効果を示した図である(試験例4)。
【図8】RC cellsのIL−6産生に及ぼす組成物の効果を示した図である(試験例4)。
【図9】RC cellsのIL−6産生に及ぼす組成物の効果を示した図である(試験例4)
【図10】KC cellsのCOX2およびIL−6の遺伝子発現に及ぼす組成物の効果を示した図である(試験例5)。
【図11】KC cellsのIL−6産生に及ぼす組成物の効果を示した図である(試験例5)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
p38MAPK阻害剤を有効成分として含む顎嚢胞の予防または治療用の組成物。
【請求項2】
p38MAPK阻害剤が4−(4−Fluorophenyl)−2−(4−hydroxyphenyl)−5−(4−pyridyl)1H−imidazoleまたは4−(4−Fluorophenyl)−2−(4−methylsulfinylphenyl)−5−(4−pyridyl)1H−imidazoleである請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
当該組成物が顎嚢胞の拡大を抑制する請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
当該組成物が顎嚢胞の細胞壁を構成する細胞の増殖を抑制することで、顎嚢胞の拡大を抑制する請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
当該組成物が顎嚢胞の細胞壁を構成する細胞のp38活性化を抑制することで、顎嚢胞の拡大を抑制する請求項3に記載の組成物。
【請求項6】
当該組成物が顎嚢胞の細胞壁を構成する細胞のCOX2およびIL−6の遺伝子発現を抑制することで、顎嚢胞の拡大を抑制する請求項3に記載の組成物。
【請求項7】
当該組成物が顎嚢胞の細胞壁を構成する細胞のPGEおよびIL−6の産生を抑制することで、顎嚢胞の拡大を抑制する請求項3に記載の組成物。
【請求項8】
顎嚢胞の細胞壁を構成する細胞が歯根嚢胞由来の線維芽細胞様細胞または歯原性角化嚢胞由来の線維芽細胞様細胞である請求項4〜7のいずれかに記載の組成物。
【請求項9】
嚢胞内局所投与用の組成物である請求項1〜8のいずれかに記載の組成物。
【請求項10】
顎嚢胞が歯根嚢胞または歯原性角化嚢胞である請求項1〜9のいずれかに記載の組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3−1】
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【図3−2】
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【図3−3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2008−260703(P2008−260703A)
【公開日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−103363(P2007−103363)
【出願日】平成19年4月11日(2007.4.11)
【出願人】(899000057)学校法人日本大学 (650)
【Fターム(参考)】