説明

顔画像検出装置

【課題】乗員の顔面に向けて投光された光のちらつきを抑え、ひいては運転者の眼鏡への周囲の風景の写り込みを防止することが可能な顔画像検出装置を提供する。
【解決手段】車両の乗員の顔面を含む領域に向けて投光する投光器と、乗員の顔面を含む予め定められた領域を撮像する際に、撮像条件を設定する撮像制御部と、撮像制御部の設定した撮像条件に基づいて、乗員の顔面を含む予め定められた領域を撮像する撮像部と、車両または乗員に照射される環境光を検出する環境光検出部と、検出した環境光の光量が予め定められた光量閾値を上回るときの動作モードと、光量閾値を下回るときの動作モードの少なくとも2つのモードのいずれかを判定する動作モード判定部と、動作モードに基づき、投光器の光源の発光パターンを設定する発光パターン設定部と、発光パターンに基づいて、光源を発光させるよう投光器を制御する投光器制御部と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像した画像から人物の顔画像を検出する顔画像検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
運転者の顔を車両室内に設けられたカメラで撮像し、撮像した顔画像を処理して顔の特徴点である目、鼻、口等を抽出し、特徴点の位置や目の開閉状態より車両運転者の顔の向き、居眠り運転等の運転状態を検出する運転者状態検出装置が開示されている。このような運転者状態検出装置では、近赤外の波長領域を持つ赤外ストロボやLEDをカメラの近くに配備して運転者の顔を照明し運転者の顔を撮像している。
【0003】
眼球の網膜反射像および角膜反射像の位置を画像情報として取り入れて、車両運転者の眼球からの反射像を計測する場合、太陽光などの強い外来光下では、瞳孔が縮小するため、瞳孔を通過して網膜に達する光量が減少し、網膜からの反射像が得にくくなり、視線方向の計測精度が悪化する。そこで、シャッター速度を高速化し、照明光のピークパワーを増加させることにより、外来光によるノイズが低減され、計測時間の増大を招くことなく、精度よく、反射像を抽出できる車両用視線方向計測装置が考案されている(特許文献1参照)。
【0004】
また、2次元撮像手段により撮像された検出対象者の顔画像に基づき検出対象者の目を検出する目検出手段が検出対象者の目を検出していないとき、少なくとも検出対象者の顔面を、光学フィルタを通過する赤外光で照明するとともに2次元撮像手段の光軸と赤外光の光軸とのなす角度が所定角度以上になるように配置された赤外光照明手段を励起することで、運転者が眼鏡を装着していても眼鏡のレンズ表面反射光の影響を極力抑えて、運転者の顔画像を撮像できる顔画像撮像装置が考案されている(特許文献2参照)。
【0005】
また、カメラによる顔画像の取得時における照明照度を、各種の乗員外観認識処理で必要な照明照度に変更することにより、赤外線照射手段の長寿命化が可能である運転者の外観認識システムが考案されている(特許文献3参照)。
【0006】
また、低照度環境において被写体の明るさの変化に応じて適応的に照明装置の発光量を調整できる動画撮像装置が考案されている(特許文献4参照)。
【0007】
また、自車両の照射部が作動しており、かつ自車両のエンジンが停止しているときは、環境光検出部で検出された環境光照度に主に基づいて照射光の強度を調節する一方、自車両の照射部、および自車両のエンジンがそれぞれ作動しているときは、認識部から通知される認識結果に主に基づいて照射光の強度を調節することで、運転者に違和感を与えることのない照明装置が考案されている(特許文献5参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平08−159733号公報
【特許文献2】特開平09−021611号公報
【特許文献3】特開2005−301742号公報
【特許文献4】特開2005−354155号公報
【特許文献5】特開2010−176382号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】スタンレー電気株式会社のLEDに関するサイト(http://www.stanley-components.com/jp/selection_guide_tree/selection_guide_search_detail.cfm)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1にもあるように、強い外来光下で、例えば、運転者の眼鏡に周囲の風景が映りこむような環境において運転者の顔の特徴点を検出する場合、太陽光よりも強い照明があることが好ましい。そこで、例えばLED等の光源を撮像タイミングに合わせてパルス点灯することで、常時点灯させる場合に比較してより強い光を効果的に照射することが行われる。LEDの光源波長は夜間において運転者が不快に感じたり運転操作に支障を与えることがないように、通常は不可視光である近赤外光が用いられるが、撮像系の感度を確保するために近赤外光の中でも低波長側のLEDを選択することが現実的であり、通常そのようなLEDでは可視成分も若干含まれており運転者の視覚特性によっては赤く知覚される場合がある。このため、特に夜間など周囲が暗いときには、撮像タイミングによっては運転者にフリッカ(ちらつき)を感じさせてしまうことがある。
【0011】
フリッカを抑制するためには、照明を常時点灯すればよいが、LEDの定格範囲の電流量では発光強度が弱く、眼鏡への風景の写り込みをなくすには十分ではない。十分な発光強度を確保するためには、例えば多数のLEDをアレイ状に設置することも考えられるが、コストアップにつながるという問題がある。
【0012】
特許文献2〜特許文献5においては、目の検出状態,乗員外観認識処理,被写体の明るさ,あるいは照射部およびエンジンの動作状況に応じて照射光(LED)の発光強度(光量)を調整しているが、フリッカ抑制対策や発光強度の調整等の、目の安全性に対する考慮については、開示・示唆ともない。
【0013】
上記問題点を背景として、本発明の課題は、乗員の顔面に向けて投光された光のフリッカを抑えつつ運転者の眼鏡への周囲の風景の写り込みを低減することが可能な顔画像検出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段および発明の効果】
【0014】
上記課題を解決するための顔画像検出装置は、車両の乗員の顔面を含む領域に向けて投光する投光器と、乗員の顔面を含む予め定められた領域を撮像する際に、撮像素子の露光時間やゲイン、γカーブなどの撮像条件を設定する撮像制御部と、撮像制御部の設定した撮像条件に基づいて、乗員の顔面を含む予め定められた領域を撮像する撮像部と、車両または乗員に照射される太陽光、街路灯、顔画像検出装置以外から放射される車両内の光などを含む環境光を検出する環境光検出部と、検出した環境光の光量が予め定められた光量閾値を上回るときの動作モードと、光量閾値を下回るときの動作モードの少なくとも2つのモードのいずれかを判定する動作モード判定部と、動作モードに基づき、投光器の光源の発光パターンを設定する発光パターン設定部と、発光パターンに基づいて、光源を発光させるよう投光器を制御する投光器制御部と、を備えることを特徴とする。
【0015】
本発明は、環境光の状況により動作モードを判定し、その動作モードに基づいて投光器の発光パターンを設定することで、運転者が知覚する投光器(すなわち、光源)のフリッカを低減できるように制御している。上記構成によって、環境光の光量が多いときには、投光器の光量を比較的大きくするように発光パターンを設定しても、照明のフリッカを低減できる。これにより、眼鏡への風景の写り込みが特に問題となる日中においてフリッカをドライバに感じさせることなく眼鏡への風景の写り込みを低減することもできる。一方、環境光の光量が少ないときには、眼鏡への風景の写り込みの影響は小さいので、投光器の光量を小さくして発光時間を長く設定したり、フリッカを感じないように発光周期が短くなるように発光パターンを設定することで、照明のフリッカを低減することができる。また、投光器に多数のLEDをアレイ状に設置することなく必要光量(発光強度)を確保することができる。
【0016】
また、本発明の顔画像撮像装置は、撮像部により撮像した画像データから乗員の顔面を認識する認識部を備え、認識部において、乗員の顔面の予め定められた領域における画素値が予め定められた基準値に近づくように、投光器が発光パターンで発光する際、撮像制御部は、撮像部の露光時間あるいはゲインの少なくとも一方を調整することにより撮像条件を設定し、次回の撮像時には、設定した撮像条件を反映して撮像部が撮像することを特徴とする。
【0017】
また、本発明の顔画像撮像装置における撮像制御部は、認識部での認識結果において、乗員の顔面の所定領域における画素値が基準値の範囲内とならないときには、撮像条件を再度設定し、その再度設定した撮像条件を反映して撮像部が撮像を行うことを繰り返す。その際、認識結果をフィードバックしたことにより、頻繁に撮像条件が変わることもありうる。また、頻繁に撮像条件が変わることにより乗員の顔面を正しく認識できないこともありうる。そのため、予め決められた時間を経過した際に、撮像制御部は認識部での認識結果を用いて撮像条件を再設定することを特徴とする。
【0018】
本発明では、動作モードを判定するために環境光の状態を定期的に測定しているため、走行環境下で時々刻々と変化する環境光の影響をフィードバックした結果として頻繁に動作モードが変わることもあり得る。また、乗員の顔面の認識状態が基準状態に近い場合に動作モードが変わると、かえって以降の認識状態が基準状態とは異なる状態となり、乗員の顔面を認識するための最適な制御に収束しないことにより、乗員の顔面を正しく認識できないこともありうる。そのため、撮像制御部が繰り返しの撮像条件を制御している期間が予め定められた期間閾値を超えたとき、動作モード判定部は動作モードを再度判定することを特徴とする。上記構成によって、動作モードを再判定する手間を省き、迅速に乗員の顔面を正しく認識できるようになる。
【0019】
上記構成によっても、頻繁に動作モードを再判定することを防止するとともに、迅速に乗員の顔面を正しく認識できるようになる。
【0020】
また、本発明の顔画像撮像装置における発光パターン設定部は、環境光検出部が予め定められたタイミングで検出している環境光の状態に基づいて、光源の発光パターンを変更することにより乗員がフリッカを感じにくくなるようにすることを特徴とする。
【0021】
上記構成によって、乗員の顔面を認識することよりも、フリッカの抑制を優先することで、光源の発光(すなわち、フリッカ)が、運転の妨げになることや車内環境を悪化させることを防止することができる。
【0022】
また、本発明の顔画像撮像装置における発光パターン設定部は、動作モードが環境光閾値を上回るブライトモードのときは、発光パターンを、撮像部の露光のタイミングと同期したパルス発光である露光同時発光を含むパターンに設定することを特徴とする。
【0023】
眼鏡への風景の写りこみの起こる状況では、環境光量が多いので、投光器(すなわち、光源)をパルス点灯させてその投光量を大きくしても、運転者はフリッカを感じにくい。上記構成によって、ブライトモードのときには、フリッカの発生を抑制しつつ、環境光量に対する投光量を増やす(すなわち、S/N比を向上させる)ことで乗員の顔面を正しく認識することが可能となる。
【0024】
また、本発明の顔画像撮像装置における発光パターン設定部は、動作モードが環境光閾値を下回るダークモードのときは、発光パターンを、撮像部の露光のタイミングと同期するパルス発光である露光同時発光に加え、撮像部の露光時間と同時期ではない時間にも発光する発光パターンである非露光時発光を含むものに設定することを特徴とする。
【0025】
上記構成によって、ダークモードのときには、パルス発光の頻度(例えば周波数)を大きくすることで、乗員はフリッカを感じにくくなる。
【0026】
また、本発明の顔画像撮像装置における発光パターン設定部は、非露光時発光における発光パターンをパルス発光とすることを特徴とする。
【0027】
非露光時発光における発光パターンをパルス発光とすることによって、見かけ上パルスの周波数が高くなるため、光源のフリッカを抑制できるとともに、撮像時には露光同時発光により十分な光量を確保できるため、乗員の顔面を正しく認識することが可能となる。なお、環境光が弱いときには、眼鏡への風景の写りこみは起こりにくいことが知られている。また、非露光時発光を行うことで顔画像撮像にとって不要な発光を投光器にさせることになるため、光源の定格内使用を考慮すると露光同時発光の際の光量をブライトモード時と比較して相対的に低く設定する必要があるが、ダークモード時はそもそも環境光が少ないためS/Nが十分高く保たれるため問題にはならない。
【0028】
また、本発明の顔画像撮像装置の発光パターン設定部は、非露光時発光における発光パターンを常時発光とすることを特徴とする。
【0029】
上記構成によっても、投光器を常時発光することで光源のフリッカを抑制できるとともに、露光時間を長くすることで撮像時には十分な光量を確保できるため、乗員の顔面を正しく認識することが可能となる。また、常時発光を行うことで露光時以外にも無駄に投光させることになるため、光源の定格内使用を考慮すると投光量を相対的に低く設定する必要があるが、ダークモード時はそもそも環境光が少ないためS/Nが十分高く保たれるため、上記の通り露光時間を長くすることで問題にはならない。
【0030】
また、本発明の顔画像撮像装置における発光パターン設定部は、露光同時発光および非露光時発光における光源への印加電流をそれぞれ独立した値に設定することを特徴とする。
【0031】
上記構成によっても、発光の見かけ上の周波数を大きくすることができるので、光源のフリッカを抑制できるとともに、撮像時には十分な光量を確保できるため、乗員の顔面を正しく認識することが可能となる。さらに、非露光時発光時の印加電流を低減することで光源の消費電流を低減することができる。
【0032】
また、本発明の顔画像撮像装置における光源が投光する光は、近赤外の波長を含むことを特徴とする。
【0033】
上記構成によって、近赤外の波長領域を持つ赤外ストロボやLEDを用いて運転者の顔を撮像している従来の顔画像撮像装置の構成を大きく変更することなく本発明の構成を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の顔画像検出装置の構成を示すブロック図。
【図2】本発明の投光器制御処理を説明するフロー図。
【図3】照度閾値の設定例を示す図。
【図4】投光器の投光パターンと撮像部の撮像タイミングの関係を示す図。
【図5】各動作モードにおける投光パターンの例を示す図。
【図6】カメラ制御テーブルの例を示す図。
【図7】従来技術による投光器制御処理を説明するフロー図。
【図8】LEDをパルス駆動する際のパルス幅と電流量との関係を示す図。
【図9】本発明の投光器制御処理の別例を説明するフロー図。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明の顔画像検出装置について、図面を用いて説明する。図1に、本発明の顔画像検出装置1の構成を示す。顔画像検出装置1は、主制御部2と、主制御部2に接続された環境光検出部3,投光器4,撮像部5,操作部6を含んで構成される。また、LAN15を介してナビゲーション装置11と通信可能に接続してもよい。
【0036】
主制御部2は、周知のCPU,ROM,RAM,およびAD変換回路や入出力回路等の周辺回路等を含むコンピュータハードウェアとして構成され、CPUがROMに記憶された制御プログラムおよびデータを実行することで、顔画像検出装置1の各種機能を実現する。主制御部2に含まれる、動作モード判定部21,発光パターン設定部22,投光器制御部23,撮像制御部24,認識部25,設定部27,記憶部28は、上述のコンピュータハードウェアを、機能毎にブロック化して表示したものである。
【0037】
動作モード判定部21は、外部から取得した情報に基づいて、動作モードを判定し、その結果を出力する。発光パターン設定部22は、動作モードに応じた投光器4の発光パターンを設定する。投光器制御部23は、発光パターン設定部22からの出力を受け、設定された発光パターンに基づいて投光器4の光源4aを励起あるいは停止する。撮像制御部24は、投光器制御部23あるいは発光パターン設定部22からの出力を受け、撮像部5の動作制御(例えば、シャッター5aの開閉)を行う。認識部25は、周知の画像処理回路を含み、撮像部5で撮像した画像データを画像処理可能な状態に増幅し、一般的な2値化処理や特徴点の抽出処理を行うことによって乗員の顔面の画像を抽出し、その抽出結果に基づいて、乗員の顔面を認識できたか否かを出力する。
【0038】
設定部27は、操作部6(後述)の操作に基づいて、顔画像検出装置1の動作に関する設定を行う。記憶部28は、周知のフラッシュメモリ等の不揮発性記憶媒体により構成され、設定部27の設定内容、あるいはカメラ制御テーブル(図6参照)のような、顔画像検出装置1の動作に必要なデータを記憶する。
【0039】
また、主制御部2に、日時情報を出力する時計IC29,LAN15との通信インターフェース回路であるLAN I/F26を含む構成としてもよい。
【0040】
環境光検出部3は、車両に照射される光(すなわち、環境光)を検出するためのもので、周知のCdSセルを用いた光センサあるいは照度計を用いる。また、車両に車室内の空調を行う車両用空調装置(図示せず)が備えられ、その車両用空調装置に、車両に対する日射量を検出するための周知の日射センサが含まれているときには、日射センサを用いてもよい。
【0041】
投光器4は、例えば、近赤外の波長を含む光をパルス発光可能である赤外LEDのような光源4aを含んで構成される。光源4aは、投光器制御部23により励起され、乗員の顔面あるいはその周辺を含めた方向に近赤外光を照射する。また、投光器4は、光源4aが照射する近赤外光の光軸と撮像部5の光軸とが概ね一致するように配置される。
【0042】
撮像部5は、例えば、周知のCCD、CMOSカメラ等で構成され、乗員の顔面を含む予め定められた領域を撮像する。撮像部5には、予め定められたタイミングおよび露光時間に基づいて動作するシャッター5aが設けられている。
【0043】
操作部6は、キーあるいはスイッチで構成され、ユーザの操作により、例えば、照度閾値(詳細は後述)等の設定を行う。
【0044】
ナビゲーション装置11は、車両の走行に伴ってGPS(Global Positioning System:全地球測位システム)等により現在位置を検出し、その現在位置を表示装置上に道路地図とともに表示して、出発地から目的地までの適切な経路を設定し、表示装置や音声出力装置などによって案内する周知のもので、位置検出部11a,地図データ11b等を含んでいる。
【0045】
まず、本発明の構成との比較のため、図7を用いて、従来技術による投光器制御処理について説明する。まず、投光器制御部23からの制御指令により、投光器4から乗員の顔面あるいはその周辺を含めた方向にパルス状の近赤外光を一定周期で照射するとともに、撮像制御部24からの制御指令により、撮像部5で乗員の顔面を含む予め定められた領域を撮像する(S31)。次に、認識部25において、撮像した画像データから乗員の顔を認識する(S32)。その認識結果に基づいて、制御値(例えば、投光器4の光量あるいは撮像部5のシャッタースピード,詳細は後述)を変更する必要がある場合(S33:Yes)、制御値を変更し(S34)、ステップS31へ戻り、投光・撮影を行う。
【0046】
図7の構成では、乗員の顔の認識精度を上げるためには、近赤外光の照射時間を長くする、近赤外光の発光強度(光量)を上げる、露光時間を長くする、のうちの少なくとも一つを行えばよい。しかし、例えば常時発光のように近赤外光の照射時間(すなわち、パルス幅)を長くする方法では、フリッカの発生は抑制できるが、図8のように、LEDの定格範囲の電流量では、十分な発光強度を得ることができない(詳細は、非特許文献1参照)。
【0047】
図2を用いて、本発明の投光器制御処理について説明する。なお、本処理は、上述の制御プログラムに含まれ、制御プログラムの他の処理とともにCPUにより繰り返し実行される。
【0048】
まず、以下のうちの少なくとも一つを用いて環境光情報(照度)を取得する(S11)。
・ 環境光検出部3に含まれる光センサあるいは照度計の値を環境光情報として取得する。
・ 上述の日射センサで検出した日射量を照度に換算する。
・ 時計IC29から取得した日時情報から、例えば、朝,昼,夕方,夜間のような時間帯を特定し、その時間帯に基づいて照度を推定する。
・ 撮像部5で撮像した画像に車両の窓が含まれているときには、窓の撮像状態(例えば、窓の明るさ)から照度を推定する。
・ 撮像部5で撮像した画像から、乗員の瞳孔径を検出し、瞳孔径から照度を推定する(瞳孔径が大きいほど照度は低くなる)。
・ ナビゲーション装置11から現在位置情報を取得し、現在位置から照度を推定する。例えば、トンネル内を走行中であれば照度は低くなる。
【0049】
次に、動作モード判定部21において、取得した照度が、予め定められた照度閾値を上回るか否かを判定する。図3に、照度閾値の設定例を示す。照度閾値は、ほとんどの人がフリッカを感じない領域内の、個人差によってフリッカを感じる領域との境界となる照度よりも高い値に設定されている。そして、図2のように、取得した照度が照度閾値を上回る場合(S12:Yes)、動作モードをブライトモードとする(S13)。一方、取得した照度が照度閾値を下回る場合(S12:No)、動作モードをダークモードとする(S24)。
【0050】
なお、人間の光に対する感受性には個人差があるので、照度閾値を変更することができるようにしてもよい。乗員が所定の手順で操作部6を操作すると、設定部27がその操作を検出して操作内容(すなわち、照度閾値)を設定し記憶部28に記憶する。また、設定内容は、動作モード判定部21に出力する。
【0051】
次に、動作モードに変化があったか否か、すなわち今回決定した動作モードが、前回の処理で決定した動作モードと同じか否かを判定する。動作モードに変化があった場合(S14:Yes)、ディレイ閾値nにn2をセットする(S15)。一方、動作モードに変化がない場合(S14:No)、ディレイ閾値nにn1をセットする(S25)。ここで、n1,n2は0または正の整数で、n1>n2の関係がある。
【0052】
次に、発光パターン設定部22において、動作モードに応じた発光パターンを設定する(S16)。
【0053】
ここで、図4を用いて、投光器4の発光パターンと撮像部5のシャッター5aの開閉制御タイミングについて説明する。図4の例では、シャッター5aは、周期T1で開閉(露光ともいう)を繰り返す。投光器4は、シャッター5aの開閉タイミング(周期T1)に同期してパルス発光する。まず、投光器4が発光を開始(ON)し、発光を開始して予め定められた時間経過後に、シャッター5aが開状態となり、露光時間終了後にシャッター5aが閉状態となるとともに、発光を終了(OFF)する。なお、撮影対象物体により露光時間(シャッター5aの開状態の時間)は変動する(詳細は後述)。また、露光が終了してから予め定められた時間が経過したときに、投光器4の発光を終了してもよい。
【0054】
無論、投光器4の投光タイミングを基準として、撮像部5の撮像を制御する構成としてもよい。
【0055】
次に、図5を用いて、各動作モードにおける投光器4(すなわち、光源4a)発光パターンの例について説明する。撮像部5のシャッター5aは、例えば、30Hzの周期で露光を繰り返す。ブライトモードでは、投光器4は、シャッター5aの露光に同期して電流Iが印加されて発光する(すなわち、露光同時発光)。発光パターンは、パルス発光である。
【0056】
なお、パルス発光の波形は、矩形波あるいは方形波の他に、鋸歯状波,三角波,正弦波であってもよい。これらの波形のいずれを用いるかは、投光器制御部23および投光器4の構成により定められる。
【0057】
図5の例では、ダークモードは、発光パターンとしてダークモード1〜7が列記してあるが、これらのうちの一つを用いる。無論、図3において、照度閾値を複数設定してダークモード領域を細分化し、その細分化した領域毎に、7個のうちから発光パターンを設定してもよい。以下、各ダークモードの発光パターンについて説明する。
【0058】
ダークモード1は、投光器4は、60Hzの周期で発光を繰り返す。つまり、シャッター5aの露光に同期するタイミング(すなわち、露光同時発光)でパルス発光し、かつ、シャッター5aの露光に同期しないタイミング(すなわち、非露光同時発光)でパルス発光する。これにより、フリッカの発生を抑制できる。
【0059】
上記説明では60Hzの発光周期を代表例として用いたが、車両の振動によっては60Hzにおいてもフリッカを知覚する場合がある。したがって、ダークモード1では、周知の振動センサ(図示せず)を用いて車両内の各部の振動を検知し、それらの振動周波数に応じて、非露光同時発光させる発光周期を変化させてもよい。すなわち、車両内の振動を検知する振動検知部を備え、発光パターン設定部は、検知した振動周波数に応じて、非露光同時発光の発光パターンを設定する構成である。つまり、振動周波数の高い環境においてはよりフリッカを知覚しやすいため、フリッカを感じにくいように発光周波数を連動させて高く設定する。ここで関係する振動は、投光器自体の振動と運転者の振動の相対的な値であるが、運転者の振動は計測することが困難なため、シートの振動から人体モデルを用いて推定した頭部の振動周波数を用いてもよい。
【0060】
ダークモード2は、投光器4は、ダークモード1と同様に60Hzの周期でパルス発光を繰り返すが、シャッター5aの露光に同期しないタイミングでは、電流(すなわち、発光強度)I2をシャッター5aの露光に同期するタイミングの電流Iよりも小さくして発光している。これにより、フリッカの発生を抑制できるとともに、ダークモード1に比べて投光器4での消費電流を低減することができる。
【0061】
ダークモード3は、投光器4は、ダークモード2において、シャッター5aの露光に同期しないタイミングでは、発光電流I3をダークモード2のI2よりも小さくして発光する一方、発光時間をダークモード2よりも長くしている。これにより、フリッカの発生を抑制できるとともに、ダークモード1に比べて投光器4での消費電流を低減することができる。
【0062】
ダークモード4は、投光器4は、ブライトモードと同様に30Hzの周期で発光を繰り返すが、電流値はそのままで発光時間をブライトモードよりも長くしている。これにより、フリッカの発生を抑制できる。
【0063】
ダークモード5は、投光器4は、ブライトモードと同様に30Hzの周期で発光を繰り返すが、シャッター5aの露光終了後も、予め定められた時間(例えば、発光周期よりも短い)、露光時の電流Iとは異なる(例えば、少ない)電流I5で発光している。これにより、フリッカの発生を抑制できるとともに、ダークモード4に比べて投光器4での消費電流を低減することができる。
【0064】
ダークモード6は、投光器4は、シャッター5aの露光タイミングに関係なく常時発光する。このときの発光電流I6は、ブライトモードの電流値Iよりも小さくする。これにより、フリッカの発生を抑制できるとともに、特にダークモード4に比べて投光器4での消費電流を低減することができる。
【0065】
ダークモード7は、ブライトモードとダークモード6とを合わせたもので、投光器4は、シャッター5aの露光終了後も、露光時の電流Iよりも小さな発光電流I7で常時発光する。これにより、フリッカの発生を抑制できるとともに、特にダークモード4に比べて投光器4での消費電流を低減することができる。
【0066】
上述のダークモードの各発光パターンにおいて、より効果の高いものとして、ダークモード1,2,6を挙げることができる。
【0067】
図2に戻り、投光器制御部23において、上述のように決定した発光パターンに基づいて、撮像タイミングに基づいて投光器4の投光制御を行うとともに、撮像制御部24が撮像部5を動作制御して撮像を行う(S17)。そして、認識部25において、撮像部5にて撮像した画像データから乗員の顔を認識する(S18)。そして、その認識結果に基づいて、制御値を変更する必要があるか否かを判定する。
【0068】
例えば、撮影した乗員の顔画像から額・頬などの肌に相当する領域を検出し、乗員の肌の色であるその領域の色(フィルタを通した画素値)と、記憶部28に予めに記憶されている予め定められた基準色とを比較して、その比較結果(例えば、双方の色の差を数値化したもの)に基づいて、制御値を変更する必要があるか否かを判定する。
【0069】
制御値を変更する必要がない場合(S19:No)、ディレイカウンタMの値をインクリメントし(S23)、ステップS17へ戻り、現在の制御値を用いて投光・撮像を繰り返す。一方、制御値を変更する必要がある場合(S19:Yes)、ディレイカウンタMの値とディレイ閾値nとを比較し、M>nの場合(S20:Yes)、ディレイカウンタM=0とし(S21)、ステップS11へ戻り、動作モードを再度決定する。
【0070】
一方、M>nでない場合(S20:No)、制御値を変更し(S22)、ディレイカウンタMの値をインクリメントする(S23)。そして、ステップS17へ戻り、投光・撮影を行う。
【0071】
上述のように、動作モードが変化した直後のディレイ閾値nは、動作モードが変化しない通常時のディレイ閾値n1よりも小さいn2が設定されている。すなわち、一定時間は、動作モード判定部が動作モードを判定した際、動作モードが変化したときは、動作モードが変化しないときよりも短く設定される構成である。つまり、動作モードの変化が一時的のものか否かを判別できるようになっている。よって、車両においては、橋の下あるいは建物の陰を走行する場合のような、比較的短時間の照度の変化によって動作モードが変化したときに、変化前の動作モードに迅速に戻ることができるので、乗員の顔を正確に認識できない時間を短縮することができる。
【0072】
図6を用いて、制御値の詳細について説明する。制御値は、予め記憶部28に記憶されたカメラ制御テーブルを参照して決定する。カメラ制御テーブルは、少なくとも1つの制御テーブル(テーブル1)を含む。各パラメータのうち、「dB」は、例えば、上述の認識部25での、撮影した乗員の顔画像の色と基準色との比較において、双方の色の差を数値化したもの、あるいはインデックス番号である。そして、初期設定値は「0」であり、このときのシャッター5aの開状態の時間(露光時間)である「シャッター時間」は300μsecで、撮像した画像データ(アナログ信号)を撮像部5で増幅するための増幅率である「Gain(ゲイン)」は2倍となっている。つまり、制御値は、「シャッター時間」および「Gain」を含む構成となっている。
【0073】
また、制御値は、「Gain」が同じで「シャッター時間」が異なるものを含んでおり、制御値の微調整を可能としている。無論、「シャッター時間」が同じで「Gain」が異なる制御値を含む構成としてもよい。
【0074】
撮像した顔画像の色が基準色よりも暗いときには、発光強度が小さいので、例えば、双方の色の差に基づいて、現在の「dB」値よりも大きい「dB」値に対応する「シャッター時間」および「Gain」に変更する。一方、撮像した顔画像の色が基準色よりも明るいときには、発光強度が十分大きいので、双方の色の差に基づいて、現在の「dB」値よりも小さい「dB」値に対応する「シャッター時間」および「Gain」に変更する。
【0075】
動作モードが変化したときは、現在の「dB」値に対応する制御値を用いて撮像してもよいし、「dB」値が「0」に対応する制御値を用いて撮像してもよい。
【0076】
また、テーブル1〜3のようにカメラ制御テーブルを複数備え、撮像した顔画像の色と基準色との比較結果(色の差)に応じて、テーブル1〜3のうちから使用するテーブルを選択し、選択したテーブルから制御値を決定してもよい。また、カメラ制御テーブルを、発光パターン毎に備える構成としてもよい。
【0077】
図9を用いて、本発明の投光器制御処理の別例について説明する。なお、本処理は、上述の図2の変形例であるため、図2と同様の処理ステップについては同一の番号を付与し、ここでの詳細な説明は割愛する。ステップS11〜S18までは、図2と同様である。
【0078】
ステップS18で、認識部25において、撮像部5にて撮像した画像データから乗員の顔を認識した後、ディレイカウンタMの値とディレイ閾値nとを比較し、M>nの場合(S19a:Yes)、ディレイカウンタM=0とし(S21)、ステップS11へ戻り、動作モードを再度決定する。
【0079】
一方、M>nでない場合(S19a:No)、図2と同様に制御値を変更する必要があるか否かを判定する。制御値を変更する必要がない場合(S20a:No)、ディレイカウンタMの値をインクリメントし(S23a)、ステップS17へ戻り、現在の制御値を用いて投光・撮像を繰り返す。一方、制御値を変更する必要がある場合(S20a:Yes)、制御値を変更する(S22a)。そして、ディレイカウンタMの値をインクリメントし(S23a)、ステップS17へ戻り、投光・撮影を行う。
【0080】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、これらはあくまで例示にすぎず、本発明はこれらに限定されるものではなく、特許請求の範囲の趣旨を逸脱しない限りにおいて、当業者の知識に基づく種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0081】
1 顔画像検出装置
2 主制御部
3 環境光検出部
4 投光器
4a 光源
5 撮像部
5a シャッター
6 操作部
11 ナビゲーション装置
21 動作モード判定部
22 発光パターン設定部
23 投光器制御部
24 撮像制御部
25 認識部
27 設定部
28 記憶部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の乗員の顔面を含む領域に向けて投光する投光器と、
前記乗員の顔面を含む予め定められた領域を撮像する際に、撮像条件を設定する撮像制御部と、
前記撮像制御部の設定した撮像条件に基づいて、乗員の顔面を含む予め定められた領域を撮像する撮像部と、
前記車両または前記乗員に照射される環境光を検出する環境光検出部と、
検出した前記環境光の光量が予め定められた光量閾値を上回るときの動作モードと、前記光量閾値を下回るときの動作モードの少なくとも2つのモードのいずれかを判定する動作モード判定部と、
前記動作モードに基づき、前記投光器の光源の発光パターンを設定する発光パターン設定部と、
前記発光パターンに基づいて、前記光源を発光させるよう投光器を制御する投光器制御部と、
を備えることを特徴とする顔画像撮像装置。
【請求項2】
前記撮像部により撮像した画像データから前記乗員の顔面を認識する認識部を備え、
前記認識部において、前記乗員の顔面の予め定められた領域における画素値が予め定められた基準値に近づくように、前記投光器が前記発光パターンで発光する際、前記撮像制御部は、前記撮像部の露光時間あるいはゲインの少なくとも一方を調整することにより前記撮像条件を設定し、次回の撮像時には、設定した撮像条件を反映して前記撮像部が撮像することを特徴とする請求項1に記載の顔画像撮像装置。
【請求項3】
前記撮像制御部は、前記認識部での認識結果において、前記乗員の顔面の所定領域における画素値が前記基準値の範囲内でないときには、前記撮像条件を再度設定するが、その際、前回の撮像条件の設定反映後から一定時間が経過していない場合は、前記撮像条件を再設定した後、前記一定時間が経過するまで前記再設定した該撮像条件を反映しないことを特徴とする請求項2に記載の顔画像撮像装置。
【請求項4】
前記動作モード判定部は、前記環境光検出部により検出された環境光の状態に基づいて、前記動作モードを再判定する際に、前回の前記動作モードの判定後から一定時間が経過していない場合は、前記再判定の後、前記一定時間が経過するまで前記再判定した動作モードを反映しないことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の顔画像撮像装置。
【請求項5】
前記動作モード判定部は、前記一定時間が経過後、前記撮像条件の再設定要求が生じたときに前記動作モードを再判定する、もしくは前記一定時間が経過後直ちに前記動作モードを再判定することを特徴とする請求項4に記載の顔画像撮影装置。
【請求項6】
前記発光パターン設定部は、前記環境光検出部が予め定められたタイミングで検出している前記環境光の状態に基づいて、前記光源の発光パターンを変更することにより、前記乗員がフリッカを感じにくくなるようにすることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の顔画像撮像装置。
【請求項7】
前記発光パターン設定部は、前記動作モードが前記光量閾値を上回るブライトモードのときは、前記発光パターンを、前記撮像部の露光のタイミングと同期したパルス発光である露光同時発光を含むものに設定することを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の顔画像撮像装置。
【請求項8】
前記発光パターン設定部は、前記動作モードが前記光量閾値を下回るダークモードのときは、前記発光パターンを、前記撮像部の露光のタイミングと同期するパルス発光である露光同時発光に加え、前記撮像部の露光時間と同時期ではない時間に発光する発光パターンである非露光時発光を含むものに設定することを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の顔画像撮像装置。
【請求項9】
前記発光パターン設定部は、前記非露光時発光における発光パターンをパルス発光とすることを特徴とする請求項8に記載の顔画像撮像装置。
【請求項10】
前記発光パターン設定部は、前記非露光時発光における発光パターンを常時発光とすることを特徴とする請求項8に記載の顔画像撮像装置。
【請求項11】
前記発光パターン設定部は、前記露光同時発光および前記非露光時発光における前記光源への印加電流をそれぞれ独立した値に設定することを特徴とする請求項8から請求項10のいずれか1項に記載の顔画像撮像装置。
【請求項12】
前記光源が投光する光は、近赤外の波長を含むことを特徴とする請求項1から請求項11のいずれか1項に記載の顔画像撮像装置。

【図1】
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【図2】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−45317(P2013−45317A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−183260(P2011−183260)
【出願日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】