説明

顕微鏡システム

【課題】簡易な操作で標本試料上における所望の観察位置を拡大または縮小することができる顕微鏡システムを提供する。
【解決手段】1または複数のレンズからなり、標本試料Sに対してズーム可能なズーム光学系243aと、ズーム光学系243aを光軸に沿って移動させるズーム駆動部243bと、表示部62の表示画面上に設けられ、外部からの物体の接触位置に応じた入力を受け付けるタッチパネル63と、タッチパネル63から異なる接触位置の入力に応じた2つの位置信号が出力された場合、この2つの位置信号に対応するタッチパネル63上における接触位置の中点を、ズーム光学系243aのズーム倍率によらずに固定されるズーム中心位置としてズーム光学系243aのズーム倍率の変更を指示する駆動信号をズーム駆動部243bに出力する駆動制御部745と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タッチパネルによるタッチ操作によって、標本試料を拡大観察する顕微鏡システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、顕微鏡システムでは、ジョイスティックまたはハンドスイッチのような操作コントローラに替えて、タッチパネルを用いて操作コントローラで顕微鏡システムの各構成部を操作する技術が知られている(特許文献1参照)。この技術では、表示モニタに、ステージ上に載置された標本試料の画像およびズーム倍率の変更の入力を受け付ける操作情報を表示させ、タッチパネルから入力される外部からの物体の接触位置に応じた位置信号に応じてズーム倍率を変更することで、直感的な操作を可能にしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−59940号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した技術では、標本試料上の観察位置を変更して拡大する場合、タッチパネルを介して観察位置の指定を行ってからズーム倍率の変更を行っているため、その都度、観察位置の指定とズーム倍率の変更の2つの操作を別々に行わなければならず、煩雑な操作になるという問題点がある。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、簡単な操作で標本試料上における所望の観察位置を拡大または縮小することができる顕微鏡システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明にかかる顕微鏡システムは、顕微鏡装置に含まれる複数の電動ユニットの各々を駆動させて標本試料を観察する顕微鏡システムであって、1または複数のレンズからなり、前記標本試料に対してズーム可能なズーム光学系と、前記ズーム光学系を光軸に沿って移動させるズーム駆動部と、前記ズーム光学系を介して前記標本試料の観察像を撮像して、前記標本試料の画像データを生成する撮像部と、前記撮像部が生成した前記画像データに対応する画像を表示する表示部と、前記表示部の表示画面上に設けられ、外部からの物体の接触位置に応じた入力を受け付けるタッチパネルと、前記タッチパネルから異なる前記接触位置の入力に応じた2つの位置信号が出力された場合、該2つの位置信号に対応する前記タッチパネル上における接触位置の中点を、前記ズーム光学系のズーム倍率によらずに固定されるズーム中心位置として前記ズーム光学系のズーム倍率を変更する駆動信号を前記ズーム駆動部に出力する駆動制御部と、を備えたことを特徴とする。
【0007】
また、本発明にかかる顕微鏡システムは、上記発明において、前記標本試料が載置され、水平方向に移動可能な電動ステージをさらに備え、前記駆動制御部は、前記ズーム光学系のズームの変更前後において前記画像上で表示される前記ズーム中心位置が略同じ表示位置で表示される位置に、前記電動ステージを駆動する駆動信号を出力することを特徴とする。
【0008】
また、本発明にかかる顕微鏡システムは、上記発明において、前記駆動制御部は、前記2つの位置信号にそれぞれ対応する2つの接触位置の距離が時間とともに大きくなる場合、前記ズーム光学系のズーム倍率を拡大する駆動信号を出力する一方、前記2つの位置信号にそれぞれ対応する2つの接触位置の距離が時間とともに小さくなる場合、前記ズーム光学系のズーム倍率を縮小する駆動信号を出力することを特徴とする。
【0009】
また、本発明にかかる顕微鏡システムは、上記発明において、前記2つの接触位置の距離の変化前後の長さの比および前記2つの接触位置の距離の変化開始直後における前記ズーム光学系のズーム倍率に基づいて、前記ズーム光学系によるズーム倍率を算出するズーム倍率算出部をさらに備え、前記駆動制御部は、前記ズーム倍率算出部が算出した前記ズーム倍率に応じた駆動信号を前記ズーム駆動部に出力することを特徴とする。
【0010】
また、本発明にかかる顕微鏡システムは、上記発明において、互いに倍率が異なる複数の対物レンズを有するレボルバと、前記標本試料の観察光の光路上から前記複数の対物レンズを択一的に切替えるレボルバ駆動部と、をさらに備え、前記駆動制御部は、前記対物レンズの倍率と前記ズーム光学系のズーム倍率との組み合わせによって定まる総合ズーム倍率に対応する駆動信号を、前記ズーム駆動部および前記レボルバ駆動部それぞれに出力することを特徴とする。
【0011】
また、本発明にかかる顕微鏡システムは、上記発明において、前記駆動制御部は、前記タッチパネルから出力される前記2つの位置信号のうち少なくとも一方が停止した場合、前記ズーム駆動部、電動ステージおよび前記レボルバ駆動部にそれぞれ駆動信号を出力することを特徴とする。
【0012】
また、本発明にかかる顕微鏡システムは、上記発明において、前記中点を識別可能な情報で前記表示部に表示させる表示制御部をさらに備えたことを特徴とする。
【0013】
また、本発明にかかる顕微鏡システムは、上記発明において、前記表示制御部は、前記2つの接触位置の距離の変化量に対応するズーム領域を識別可能な情報で前記表示部に表示させることを特徴とする。
【0014】
また、本発明にかかる顕微鏡システムは、上記発明において、前記表示制御部は、前記2つの接触位置の距離の変化量に対応する前記ズーム光学系のズーム倍率を前記表示部に表示させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、駆動制御部がタッチパネルから異なる接触位置の入力に応じた2つの位置信号が出力された場合、この2つの位置信号に対応するタッチパネル上における2つの接触位置の中点を、ズーム光学系のズーム倍率によらずに固定するズーム中心位置にしてズーム光学系のズーム倍率を変更する駆動信号をズーム駆動部に出力する。これにより、1つの操作により、標本試料上における所望の観察位置を拡大または縮小することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、本発明の実施の形態1にかかる顕微鏡システムの構成の一例を示す概念図である。
【図2】図2は、本発明の実施の形態1にかかる顕微鏡システムの機能構成を示すブロック図である。
【図3】図3は、本発明の実施の形態1にかかる顕微鏡システムの表示入力部の一例を示す図である。
【図4】図4は、本発明の実施の形態1にかかる顕微鏡システムが行う処理の概要を示すフローチャートである。
【図5】図5は、ピンチ操作の開始時を模式的に示す図である。
【図6】図6は、ピンチ操作の終了時を模式的に示す図である。
【図7】図7は、本発明の実施の形態1にかかる顕微鏡システムの表示部が表示する画像の一例を示す図である。
【図8】図8は、本発明の実施の形態1の変形例2にかかる顕微鏡システムの表示部が表示する画像の一例を示す図である。
【図9】図9は、本発明の実施の形態1の変形例3にかかる顕微鏡システムの表示部が表示する画像の一例を示す図である。
【図10】図10は、本発明の実施の形態1の変形例4にかかる顕微鏡システムの表示部が表示する画像の一例を示す図である。
【図11】図11は、本発明の実施の形態1の変形例6にかかる顕微鏡システムの表示部が表示する画像の一例を示す図である。
【図12】図12は、本発明の実施の形態1の変形例7にかかる顕微鏡システムの表示部が表示する画像の一例を示す図である。
【図13】図13は、本発明の実施の形態2にかかる顕微鏡システムが行う処理の概要を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して、本発明を実施するための形態(以下、「実施の形態」という)について説明する。なお、以下に説明する実施の形態によって本発明が限定されるものではない。さらに、図面の記載において、同一の部分には同一の符号を付して説明する。
【0018】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1にかかる顕微鏡システムの構成の一例を示す概念図である。図2は、本発明の実施の形態1にかかる顕微鏡システムの機能構成を示すブロック図である。なお、図1および図2において、顕微鏡システム1が載置される平面をXY平面とし、XY平面と垂直な方向をZ方向として説明する。
【0019】
図1および図2に示すように、顕微鏡システム1は、標本試料Sを観察する顕微鏡装置2と、顕微鏡装置2を駆動制御する顕微鏡制御部3と、顕微鏡装置2を介して標本試料Sを撮像して画像データを生成する撮像装置4と、撮像装置4の駆動を制御する撮像制御部5と、制御端末7を介して撮像装置4が撮像した画像データに対応する画像を表示するとともに、顕微鏡システム1の各種の操作の入力を受け付ける表示入力部6と、顕微鏡制御部3、撮像制御部5および表示入力部6を制御する制御端末7と、を備える。顕微鏡装置2、顕微鏡制御部3、撮像装置4、撮像制御部5、表示入力部6および制御端末7は、データが送受信可能に有線または無線で接続されている。
【0020】
顕微鏡装置2は、標本試料Sが載置される電動ステージ21と、側面視略C字状をなし、電動ステージ21を支持するとともに、レボルバ22を介して対物レンズ23を保持する顕微鏡本体部24と、標本試料Sに光を照射する落射照明用光源25と、を備える。
【0021】
電動ステージ21は、XYZ方向に移動自在に構成されている。電動ステージ21は、モータ211によってXY平面内で移動自在である。電動ステージ21は、顕微鏡制御部3の制御のもと、図示しないXY位置の原点センサによってXY平面における所定の原点位置を検出し、この原点位置を基点としてモータ211の駆動量が制御されることによって、標本試料S上の観察箇所を移動する。電動ステージ21は、観察時のX位置およびY位置に関する位置信号(XY座標)を顕微鏡制御部3に出力する。また、電動ステージ21は、モータ212によってZ方向に移動自在である。電動ステージ21は、顕微鏡制御部3の制御のもと、図示しないZ位置の原点センサによって電動ステージ21のZ方向における所定の原点位置を検出し、この原点位置を基点としてモータ212の駆動量が制御されることによって、所定の高さ範囲内の任意のZ位置に標本試料Sを焦準移動させる。電動ステージ21は、観察時のZ位置に関する位置信号を顕微鏡制御部3に出力する。
【0022】
レボルバ22は、顕微鏡本体部24に対してスライド自在または回転自在に設けられ、対物レンズ23を標本試料Sの上方に配置する。レボルバ22は、ノーズピースやスイングレボルバ等を用いて構成される。レボルバ22は、マウンタ221によって倍率(観察倍率)が異なる複数の対物レンズ23を保持する。レボルバ22は、観察光の光路上に挿入されて標本試料Sの観察に用いる対物レンズ23を択一的に切換えるため、マウンタ221をスライド移動又は回転させるレボルバ駆動部222と、レボルバ22の接続状態等を検出するレボルバ検出部223と、を有する。
【0023】
レボルバ駆動部222は、顕微鏡制御部3の制御のもと、マウンタ221をスライド移動又は回転させる。レボルバ検出部223は、レボルバ22が顕微鏡本体部24に接続されていることを検知するレボルバ接続センサ(図示せず)と、対物レンズ23が観察光の光路上に挿入された対物レンズ23の種類を識別するレボルバセンサ(図示せず)と、対物レンズ23が観察光の光路上に挿入されたことを検知する移動完了センサ(図示せず)と、を有する。レボルバ検出部223は、各種センサが検出した検出結果を顕微鏡制御部3へ出力する。
【0024】
対物レンズ23は、たとえば1倍,2倍,4倍の比較的倍率の低い対物レンズ231(以下、「低倍対物レンズ231」という)と、10倍,20倍,40倍の低倍対物レンズ231の倍率に対して高倍率である対物レンズ232(以下、「高倍対物レンズ232」という)とを少なくとも一つずつマウンタ221に装着される。なお、低倍対物レンズ231および高倍対物レンズ232の倍率は一例であり、高倍対物レンズ232が低倍対物レンズ231に対して高ければよい。
【0025】
顕微鏡本体部24は、ファイバー251を介して落射照明用光源25から出射された照明光L1(以下、「落射照明光L1」という)を集光する照明レンズ241と、落射照明光L1の光路を対物レンズ23の光軸に沿って偏向させるハーフミラー242と、標本試料Sを拡大するズームレンズ部243と、対物レンズ23、ズームレンズ部243およびハーフミラー242を介して入射される標本試料Sの反射光を集光して観察像を結像する結像レンズ244とが内部に設けられている。
【0026】
ズームレンズ部243は、1または複数のレンズからなり、標本試料Sに対してズーム可能なズーム光学系243aと、ズーム光学系243aを光軸に沿って駆動するズーム駆動部243bとを有する。ズーム駆動部243bは、顕微鏡制御部3の制御のもと、ズーム光学系243aを光軸に沿って移動させることにより、ズーム光学系243aのズーム倍率を変更する。
【0027】
落射照明光L1は、照明レンズ241、ハーフミラー242、ズーム光学系243aおよび対物レンズ23を経て標本試料Sに照射される。標本試料Sで反射した反射光L2(以下、「観察光L2」という)は、対物レンズ23、ズーム光学系243a、ハーフミラー242および結像レンズ244を経て撮像装置4に入射する。
【0028】
落射照明用光源25は、ハロゲンランプ、キセノンランプまたはLED(Light Emitting Diode)等によって構成される。落射照明用光源25は、ファイバー251を介して標本試料Sの観察像を形成するための落射照明光L1を顕微鏡本体部24に出射する。
【0029】
顕微鏡制御部3は、CPU(Central Processing Unit)等を用いて構成され、制御端末7の制御のもと、顕微鏡装置2を構成する各部の動作を統括的に制御する。具体的には、顕微鏡制御部3は、レボルバ駆動部222を駆動することにより、マウンタ221を回転させて観察光L2の光路上に配置する対物レンズ23を切換える切換処理、モータ211またはモータ212を駆動することにより、電動ステージ21の駆動処理、および標本試料Sの観察に伴う顕微鏡装置2の各部の調整を行う調整処理等を行う。また、顕微鏡制御部3は、顕微鏡装置2を構成する各部の状態、たとえば電動ステージ21の位置情報(XY位置、Z位置)およびレボルバ22に装着された対物レンズ23の種類情報等を制御端末7に出力する。
【0030】
撮像装置4は、CCD(Charge Coupled Device)またはCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等の撮像素子41を用いて構成される。撮像装置4は、撮像制御部5の制御のもと、結像レンズ244を経て入射された標本試料Sの観察像を撮像し、カメラケーブルを介して撮像した標本試料Sの画像データを制御端末7へ出力する。
【0031】
撮像制御部5は、CPU等を用いて構成され、撮像装置4の動作を制御する。具体的には、撮像制御部5は、撮像装置4の自動ゲイン制御のON/OFF切換処理、ゲインの設定処理およびフレームレートの設定処理等を行って撮像装置4の撮影動作を制御する。撮像制御部5は、AE処理部51と、AF処理部52と、を有する。
【0032】
AE処理部51は、撮像装置4が生成した画像データに基づいて、撮像装置4の露出条件を自動的に設定する。具体的には、AE処理部51は、制御端末7を介して取得した画像データから輝度を算出し、算出した輝度に基づいて撮像装置4の露出条件、たとえば露光時間を決定することで撮像装置4の自動的に調整するAE処理を行う。
【0033】
AF処理部52は、撮像装置4が生成した画像データに基づいて、撮像装置4のピントを自動的に調整する。具体的には、AF処理部52は、画像データに含まれるコントラストを評価し、合焦している合焦位置(焦点位置)を検出することにより、撮像装置4のピントを自動的に調整するAF処理を行う。なお、AF処理部52は、画像データに基づいて、電動ステージ21の各Z位置における画像のコントラストを評価することにより、合焦している焦点位置(Z位置)を検出してもよい。
【0034】
表示入力部6は、制御端末7との通信を行う表示通信部61と、画像を表示する表示部62と、外部からの物体の接触に応じた位置信号を出力するタッチパネル63と、を有する。
【0035】
表示通信部61は、制御端末7との通信を行うための通信インターフェースである。表示通信部61は、制御端末7から出力される画像データを表示部62へ出力する。
【0036】
表示部62は、液晶または有機EL(Electro Luminescence)等からなる表示パネルを用いて構成される。表示部62は、表示通信部61を介して入力される画像データに対応する画像を表示する。表示部62は、顕微鏡システム1の各種操作情報等を表示する。
【0037】
タッチパネル63は、表示部62の表示画面上に設けられ、外部からの物体の接触位置に応じた入力を受け付ける。具体的には、タッチパネル63は、ユーザが表示部62に表示される操作アイコンに従ってタッチ(接触)した位置を検出し、この検出したタッチ位置に応じた位置信号を制御端末7へ出力する。たとえば、図3に示すように、タッチパネル63は、表示部62が顕微鏡システム1の各種操作情報を画像表示領域A1内で表示することで、グラフィカルユーザインターフェース(GUI)として機能する。一般に、タッチパネルとしては、抵抗膜方式、静電容量方式および光学方式等がある。本実施の形態1では、いずれの方式のタッチパネルであっても適用可能である。また、タッチパネル63は、ユーザがタッチした位置を含む領域の重心をタッチ位置として検出する。
【0038】
制御端末7は、顕微鏡制御部3、撮像制御部5および表示入力部6との通信を行う制御通信部71と、顕微鏡システム1の各種情報を記憶する記憶部73と、顕微鏡システム1の各部の駆動を指示する駆動指示信号の入力を受け付ける入力部72と、顕微鏡システム1の各部を制御する制御部74と、を備える。
【0039】
制御通信部71は、顕微鏡制御部3、撮像制御部5および表示入力部6それぞれとの通信を行うための通信インターフェースである。また、制御通信部71は、カメラケーブルを介して撮像装置4から出力される画像データを制御部74へ出力する。
【0040】
入力部72は、キーボード、マウス、ジョイスティックおよび各種スイッチ等を用いて構成され、各種スイッチの操作入力に応じた操作信号を制御部74に出力する。
【0041】
記憶部73は、制御端末7の内部に固定的に設けられるフラッシュメモリおよびRAM(Random Access Memory)等の半導体メモリを用いて実現される。記憶部73は、顕微鏡システム1に実行させる各種プログラム、プログラムの実行中に使用される各種データを記憶する。また、記憶部73は、制御部74の処理中の情報を一次的に記憶する。記憶部73は、撮像装置4が撮像した画像データを記憶する画像データ記憶部731と、表示入力部6のタッチパネル63から入力される接触位置を示す位置信号を記憶する位置信号記憶部732と、を有する。なお、記憶部73は、外部から装着されるメモリカード等を用いて構成されてもよい。
【0042】
制御部74は、CPU等を用いて構成され、入力部72およびタッチパネル63からの駆動指示信号、位置信号および切換信号等に応じて顕微鏡システム1を構成する各部に対応する指示やデータの転送等を行って顕微鏡システム1の動作を統括的に制御する。
【0043】
制御部74の詳細な構成について説明する。制御部74は、画像処理部741と、トリミング部742と、ズーム倍率算出部743と、移動量算出部744と、駆動制御部745と、表示制御部746と、を有する。
【0044】
画像処理部741は、制御通信部71を介して入力される画像データに対して、所定の画像処理を施して表示部62で表示する表示画像を生成する。具体的には、画像処理部741は、画像データに対して、オプティカルブラック減算処理、ホワイトバランス調整処理、同時化処理、カラーマトリクス演算処理、γ補正処理、色再現処理およびエッジ強調処理等を含む画像処理を行う。画像処理部741は、画像データを所定の方式、たとえばJPEG(Joint Photographic Experts Group)方式で圧縮し、圧縮した画像データを画像データ記憶部731へ出力する。
【0045】
トリミング部742は、画像処理部741が画像処理を施した画像データに対応する画像から所定の領域を切出してトリミング画像を生成する。
【0046】
ズーム倍率算出部743は、タッチパネル63から出力される2つの位置信号に基づいて、ズームレンズ部243によるズーム倍率を算出する。具体的には、ズーム倍率算出部743は、タッチパネル63から出力される2つの位置信号に対応するタッチパネル63上の接触位置の距離の変化前後の長さの比および変化開始直後のズーム光学系243aのズーム倍率に基づいて、ズーム光学系243aによるズーム倍率を算出する。なお、ズーム倍率算出部743は、接触位置の距離量に応じて補正係数や重み付けを行ってもよい。
【0047】
移動量算出部744は、タッチパネル63から出力される2つの位置信号に基づいて、ズーム光学系243aのズームの前後において表示部62によって表示される画像上でズーム光学系243aのズーム倍率によらず固定されるズーム中心位置が略同じ表示位置で表示される位置に、電動ステージ21を駆動させる移動量および位置を算出する。
【0048】
駆動制御部745は、タッチパネル63から異なる接触位置の入力に応じた2つの位置信号が出力された場合、この2つの位置信号に対応するタッチパネル63上における接触位置の中点を、ズーム光学系243aのズーム倍率によらず固定されるズーム中心位置にしてズーム光学系243aのズーム倍率を変更する駆動信号をズーム駆動部243bに出力する。駆動制御部745は、ズーム倍率算出部743が算出したズーム倍率に応じた駆動信号をズーム駆動部243bに出力する。また、駆動制御部745は、ズーム光学系243aによるズームの変更前後において表示部62によって表示される画像上でズーム光学系243aのズーム中心位置が略同じ表示位置で表示される位置に、電動ステージ21を駆動させる駆動信号をモータ211に出力する。具体的には、駆動制御部745は、移動量算出部744が算出した電動ステージ21を移動させる移動量に応じた駆動信号をモータ211に出力する。
【0049】
表示制御部746は、表示部62の表示態様を制御する。具体的には、表示制御部746は、画像データ記憶部731が記憶する複数の画像データの各々の画像を表示部62に表示させる。表示制御部746は、顕微鏡システム1の各々の動作に関する操作情報、たとえば、電動ステージ21の操作情報等を表示部62に表示させる。
【0050】
このように構成された顕微鏡システム1は、制御部74の制御のもと、撮像装置4で撮像された標本試料Sの画像データを表示部62に表示することによってユーザに標本試料Sの画像を観察させることができる。さらに、顕微鏡システム1は、タッチパネル63から入力される位置信号に基づいて、制御部74が顕微鏡システム1の各部に指示信号や駆動信号を出力することにより、顕微鏡装置2および撮像装置4が駆動する。
【0051】
つぎに、顕微鏡システム1が行う動作について説明する。図4は、本実施の形態1にかかる顕微鏡システム1が行う処理の概要を示すフローチャートである。なお、以下においては、顕微鏡装置2の電動ユニットとして電動ステージ21およびズームレンズ部243を例に説明する。
【0052】
図4に示すように、駆動制御部745は、タッチパネル63に対し、ピンチ操作が開始されたか否かを判断する(ステップS101)。具体的には、図5に示すように、駆動制御部745は、ユーザがタッチパネル63上において異なる2箇所(K1,K2)にタッチすることにより、タッチパネル63から異なる接触位置の入力に応じた2つの位置信号が出力されたか否かを判断する。タッチパネル63に対し、ピンチ操作が開始されたと駆動制御部745が判断した場合(ステップS101:Yes)、顕微鏡システム1は、ステップS102へ移行する。一方、タッチパネル63を介してピンチ操作が開始されていないと駆動制御部745が判断した場合(ステップS101:No)、顕微鏡システム1は、本処理を終了する。
【0053】
続いて、駆動制御部745は、タッチパネル63から出力される2つの位置信号に対応したタッチ位置K1,K2を取得し(ステップS102)、ズーム光学系243aによるズーム中心位置を算出する(ステップS103)。具体的には、図5に示すように、駆動制御部745は、ユーザが最初にタッチパネル63にタッチした2つのタッチ位置K1,K2を結ぶ直線の中点P1をズーム光学系243aのズーム中心位置として算出する。
【0054】
その後、駆動制御部745は、タッチパネル63に対し、ピンチ操作が終了したか否かを判断する(ステップS104)。具体的には、駆動制御部745は、タッチパネル63から少なくとも一方の位置信号の出力が停止したか否かを判断することにより、ピンチ操作が終了したか否かを判断する。タッチパネル63に対し、ピンチ操作が終了したと駆動制御部745が判断した場合(ステップS104:Yes)、顕微鏡システム1は、ステップS105へ移行する。一方、タッチパネル63に対し、ピンチ操作が終了していないと駆動制御部745が判断した場合(ステップS104:No)、顕微鏡システム1は、ステップS102へ戻る。
【0055】
続いて、駆動制御部745は、ユーザがタッチパネル63から離反した離反位置を取得する(ステップS105)。具体的には、図6に示すように、駆動制御部745は、ユーザがタッチパネル63から離反した際のタッチパネル63から出力される位置信号に応じた離反位置K11,K12を取得する。図5および図6においては、ピンチ操作として標本試料Sを拡大するピンチアウト操作を例に説明したが、標本試料Sを縮小するピンチイン操作であってもよい。ここで、ピンチアウト操作とは、ユーザがタッチパネル63に対して異なる位置でタッチした2つのタッチ位置をタッチパネル63の外縁に向けて2つのタッチ位置の距離を時間とともに大きくすることである。また、ピンチイン操作とは、ユーザがタッチパネル63に対して異なる位置でタッチした2つのタッチ位置をタッチパネル63の中心に向けて2つのタッチ位置の距離を時間とともに小さくする。
【0056】
その後、ズーム倍率算出部743は、ズームレンズ部243によるズーム倍率を算出する(ステップS106)。具体的には、ズーム倍率算出部743は、ユーザがタッチパネル63に対してピンチ操作の開始時の2つのタッチ位置K1,K2を結ぶ直線とピンチ操作の終了時の2つの離反位置K11,K12を結ぶ直線との比率をR、ズーム中心位置を含む関心領域(以下、(ROI)という)をズームする際のROIズーム補正係数をC、現在のズーム倍率をNとした場合において、R≦1.0の条件を満たすとき、以下の式によってズーム倍率Zを算出する。
Z=(R×C+(1−C)×N ・・・(1)
また、R>1.0の条件を満たすとき、ズーム倍率算出部743は、以下の式によってズーム倍率Zを算出する。
Z=((1÷(1÷R)×C)+(1−C))×N ・・・(2)
【0057】
このように、ズーム倍率算出部743は、式(1)〜(2)を用いて2つの接触位置の距離の変化前後の長さの比、ROIズーム補正係数および現在のズーム倍率に基づいて、ズーム光学系243aのズーム倍率を算出する。ここで、ROI補正係数は、予めシミュレーションから求めて適宜設定することができる。本実施の形態1では、ROI補正係数を0.5で設定する。これにより、ユーザは、ピンチ操作の前後による比率が略0.2〜0.25の範囲の場合、3〜4回のピンチ操作で最低ズーム倍率から最大ズーム倍率に段階的に変更することができる(×1.0→×3.0→×9.0→×27.0→×30.0)。なお、ズーム倍率は、均等であってもよい(×1.0→×10.0→×20.0→×30.0)。
【0058】
続いて、移動量算出部744は、ピンチ操作における2つのタッチ位置K1,K2の中点P1に基づいて、電動ステージ21を移動する移動量を算出する(ステップS107)。具体的には、駆動制御部745は、表示部62が表示する画像Wn(n=自然数)内においてピンチ操作による2つのタッチ位置K1,K2の中点P1の表示位置が固定される位置までの電動ステージ21の移動量を算出する。
【0059】
その後、駆動制御部745は、移動量算出部744が算出した電動ステージ21の移動量が電動ステージ21の移動量の限界値であるか否かを判定する(ステップS108)。移動量算出部744が算出した電動ステージ21の移動量が電動ステージ21の移動量の限界値であると駆動制御部745が判断した場合(ステップS108:Yes)、駆動制御部745は、電動ステージ21の移動量を電動ステージ21の移動量を限界値に設定する(ステップS109)。その後、顕微鏡システム1は、ステップS110へ移行する。一方、移動量算出部744が算出した電動ステージ21の移動量が電動ステージ21の移動量の限界値でないと駆動制御部745が判断した場合(ステップS108:No)、顕微鏡システム1は、ステップS110へ移行する。
【0060】
続いて、駆動制御部745は、移動量算出部744が算出した電動ステージ21の移動量に応じた駆動信号を顕微鏡制御部3に出力する(ステップS110)。この場合、顕微鏡制御部3は、駆動制御部745から入力される駆動信号に基づいて、モータ211を駆動することにより、電動ステージ21を移動する。
【0061】
その後、駆動制御部745は、電動ステージ21の移動が完了したか否かを判断する(ステップS111)。具体的には、駆動制御部745は、顕微鏡制御部3から電動ステージ21の移動完了を示す移動完了信号が入力されたか否かを判断する。電動ステージ21の移動が完了したと駆動制御部745が判断した場合(ステップS111:Yes)、顕微鏡システム1は、ステップS112へ移行する。一方、電動ステージ21の移動が完了していないと駆動制御部745が判断した場合(ステップS111:No)、駆動制御部745は、この判断を所定間隔(たとえば1パルス)ごとに行う。
【0062】
続いて、駆動制御部745は、ズーム倍率算出部743が算出したズーム倍率に応じたズーム駆動指示信号を顕微鏡制御部3に出力する(ステップS112)。この場合、顕微鏡制御部3は、駆動制御部745から入力されるズーム駆動指示信号に基づいて、ズーム駆動部243bを駆動することにより、ズーム光学系243aを光軸に沿って移動させて顕微鏡装置2のズーム倍率を変更する。なお、顕微鏡制御部3は、駆動制御部745から入力されるズーム駆動指示信号がズーム光学系243aの光学ズームによる光学ズーム倍率が上限を超えている場合、ズームレンズ部243の光学ズームを最大に変更するとともに、制御端末7にトリミング部742によるデジタルズームを指示するデジタルズーム指示信号を出力してもよい。
【0063】
その後、駆動制御部745は、ズーム光学系243aによるズームが完了したか否かを判断する(ステップS113)。具体的には、駆動制御部745は、顕微鏡制御部3からズーム光学系243aのズーム完了を示すズーム完了信号が入力されたか否かを判断する。ズーム光学系243aのズーム駆動が完了したと駆動制御部745が判断した場合(ステップS113:Yes)、顕微鏡システム1は、ステップS114へ移行する。一方、ズーム光学系243aのズーム駆動が完了していないと駆動制御部745が判断した場合(ステップS113:No)、駆動制御部745は、この判断を所定間隔(たとえば1パルス)ごとに行う。
【0064】
続いて、駆動制御部745は、撮像制御部5に撮影指示信号を出力することにより、撮像装置4に電動ステージ21およびズーム光学系243aそれぞれの駆動後の標本試料Sを撮像させて画像データを生成させることにより、表示部62が表示する画像を電動ステージ21およびズーム光学系243aそれぞれの駆動後の画像に更新する(ステップS114)。具体的には、図7に示すように、駆動制御部745は、ズーム光学系243aによるズーム中心位置(中点P1)は、表示部62によって表示される画像Wn内の表示位置がピンチ操作(ズーム操作)の前後でほぼ移動していない。この結果、1回の操作で標本試料S上における所望の観察箇所を変更することなく、拡大または縮小して観察することができる。ステップS114の後、顕微鏡システム1は、本処理を終了する。
【0065】
以上説明した本発明の実施の形態1によれば、駆動制御部745がタッチパネル63から異なる接触位置の入力に応じた位置信号が出力された場合、この2つの位置信号に対応するタッチパネル63上における2つの接触位置の中点P1を、ズーム光学系243aのズーム倍率によらず固定されるズーム中心位置としてズーム光学系243aのズーム倍率の変更を指示する駆動信号をズーム駆動部243bに出力する。これにより、1つの操作で標本試料S上における所望の観察位置を拡大または縮小することができる。
【0066】
また、本発明の実施の形態1によれば、表示部62が表示するライブ画像を見ながら標本試料Sを拡大して観察する観察位置を直感的な操作により変更することができる。
【0067】
さらに、本発明の実施の形態1によれば、表示部62が表示するライブ画像Wn上に顕微鏡装置2の操作を受け付ける操作情報(アイコン)を表示しないので、表示部62の表示領域の場所を大きくすることができるとともに、表示部62が表示するライブ画像Wnが標本試料Sのみになる。この結果、ユーザは、標本試料Sのみに集中して観察することができる。
【0068】
また、本発明の実施の形態1によれば、ズーム倍率算出部743がタッチパネル63から出力される2つの位置信号にそれぞれ対応する2つの接触位置の距離の変化前後の長さの比および2つの接触位置の距離の変化開始時のズーム光学系243aのズーム倍率に基づいて、ズーム光学系243aのズーム倍率を算出するので、異なるユーザが操作した場合であっても、同じ操作性を実現することができる。
【0069】
また、本発明の実施の形態1によれば、従来のROI領域に対するROIズームに比して、ROI領域を示すフレーム枠を表示することないので、少ない操作回数でROIに対するズーム操作を実行することができる。同様に、ROI領域を示すフレーム枠の表示を行わないので、ROIズームの縮小処理にも対応することができる。
【0070】
また、本発明の実施の形態1によれば、表示部62が表示するライブ画像Wn上におけるズームレンズ部243によるズーム中心位置がズーム操作の前後で移動しないため、ユーザが標本試料S上の観察位置を見失うことがない。
【0071】
また、本発明の実施の形態1によれば、駆動制御部745がズーム倍率算出部743によって算出されたズーム倍率に応じた駆動信号をズーム駆動部243bに出力するため、ユーザが何度もピンチ操作を行わなくとも、規定回数でズームレンズ部243のズーム倍率を最大または最小に変更することができる。この結果、ユーザは、ズーム倍率を確信するための余分なピンチ操作を行う必要がない。
【0072】
(実施の形態1の変形例1)
上述した実施の形態1において、駆動制御部745は、ピンチ操作の開始位置の2つのタッチ位置を結ぶ直線とピッチ操作の終了時の2つの離反位置を結ぶ直線との比率に基づいて算出したズーム倍率でズームレンズ部243を駆動していたが、たとえば一回のピンチ操作によるズーム倍率に制限を設けてもよい。この場合、ユーザは、入力部72を介してズームレンズ部243の最大倍率から最小倍率まで、又は最小倍率から最大倍率までのズーム倍率の切り替えに要するピンチ操作回数を設定するようにしてもよい。これにより、ユーザの嗜好に合わせたピンチ操作を行うことができる。
【0073】
(実施の形態1の変形例2)
上述した実施の形態1において、ズーム光学系243aのズーム中心位置P1を識別可能な状態で表示部62に表示させてもよい。図8は、本実施の形態1の変形例2にかかる顕微鏡システム1の表示部62が表示する画像の一例を示す図である。
【0074】
図8に示すように、表示制御部746は、駆動制御部745が算出した中点P1(ズーム中心位置)を中心に互いに直行する十字線G1を表示部62に表示させる。これにより、ユーザは、ズーム光学系243aのズーム中心位置P1を確認しながらピンチ操作を行うことができる。
【0075】
なお、上述した実施の形態1の変形例2では、表示制御部746がズーム光学系243aのズーム中心位置に十字線G1を表示部62に表示させていたが、識別可能な情報として、たとえば文字や図形等のアイコンを表示部62に表示させてもよい。
【0076】
(実施の形態1の変形例3)
上述した実施の形態1において、表示制御部746がピンチ操作の操作量に対応したROIズーム領域およびROI領域を識別可能に表示部62に表示させてもよい。図9は、本実施の形態1の変形例3にかかる顕微鏡システム1の表示部62が表示する画像の一例を示す図である。
【0077】
図9に示すように、表示制御部746は、タッチパネル63から出力される位置信号に基づいて、ピンチ操作時にピンチ操作の操作量に対応するROIズーム領域Z1,Z2、ROIズーム領域に対応するズーム倍率および現在のズーム光学系243aのズーム倍率を表示部62に表示させてもよい。具体的には、ROIズーム領域Z1は、ピンチ操作の開始時において現在のズーム光学系243aのズーム倍率(×2.0)から縮小可能なズーム倍率(×1.0)までのピンチ操作の操作量を示す。ROIズーム領域Z2は、ピンチ操作の開始時において現在のズーム光学系243aのズーム倍率(×2.0)から拡大可能なズーム倍率(×8.0)までのピンチ操作の操作量を示す。
【0078】
このように、本実施の形態1の変形例3によれば、表示制御部746が、タッチパネル63から出力される位置信号に基づいて、ピンチ操作時にピンチ操作の操作量およびズーム倍率等を表示部62に表示させる。この結果、ユーザは、ピンチ操作の操作中において、リアルタイムにピンチ操作による拡大可能なROIズーム領域、縮小可能なROI領域および現在のズーム倍率を直感的に把握することができる。
【0079】
(実施の形態1の変形例4)
上述した実施の形態1において、表示制御部746がタッチパネル63から出力される位置信号に基づいて、ピンチ操作の操作中における操作量に応じてズーム光学系243aのズーム倍率を、ピンチ操作を行っている画像上に重畳させて表示させてもよい。図10は、本実施の形態1の変形例4にかかる顕微鏡システム1の表示部62が表示する画像の一例を示す図である。
【0080】
図10に示すように、表示制御部746は、ピンチ操作に応じてズーム光学系243aのズーム倍率を、ピンチ操作を行っている画像Wn上に重畳させて表示部62に表示させる。
【0081】
このように、本実施の形態1の変形例4によれば、表示制御部746がタッチパネル63から出力される位置信号に基づいて、ピンチ操作の操作量に応じてズーム光学系243aのズーム倍率を、ピンチ操作を行っている画像Wn上に重畳させて表示させる。この結果、ユーザは、ピンチ操作を行いながらリアルタイムにズーム光学系243aのズーム倍率を直感的に把握することができる。
【0082】
なお、上述した実施の形態1の変形例4において、表示制御部746は、タッチパネル63から出力される位置信号に基づいて、ズーム光学系243aのズーム中心位置P1に対応する電動ステージ21の位置を、ユーザがピンチ操作を行っている付近の画像Wn上に模式的に重畳して表示部62に表示させてもよい。これにより、ユーザは、ズーム光学系243aのズーム中心位置P1および電動ステージ21の位置を直感的に把握することができる。
【0083】
(実施の形態1の変形例5)
上述した実施の形態1では、駆動制御部745が電動ステージ21の移動を制御することにより、ピンチ操作の前後であっても、ズーム光学系243aのズーム中心位置P1を表示部62によって表示される画像上の同じ位置で表示していたが、たとえばズーム光学系243aのズーム中心位置P1を表示部62によって表示される画像上の中心になるように電動ステージ21を駆動するようにしてもよい。これにより、ズーム中心位置が表示部62によって表示される画像の中心に移動する。この結果、ユーザは、標本試料Sにおける所望の観察位置を表示部62の中央で観察することができるので、ピンチ操作の回数を低減することができる。
【0084】
(実施の形態1の変形例6)
上述した実施の形態1において、タッチパネル63を介してズーム光学系243aのズーム中心位置P1を表示部62が表示する画像上で指定するようにしてもよい。図11は、本実施の形態1の変形例6にかかる顕微鏡システム1の表示部62が表示する画像の一例を示す図である。
【0085】
図11に示すように、駆動制御部745は、タッチパネル63から入力される位置信号が一定時間(たとえば2秒)を超えてタッチパネル63の略同じ位置を示す場合、ズーム光学系243aのズーム中心位置P1を表示部62が表示する画像Wn上で指定する(図11(a))。この際、表示制御部746は、駆動制御部745が指定したズーム光学系243aのズーム中心位置P1を識別可能な情報、たとえば記号、文字および図形等のアイコンによって表示部62に表示させる。具体的には、図11(b)に示すように、表示制御部746は、駆動制御部745が指定したズーム光学系243aのズーム中心位置P1に対応する画像Wn上にアイコンA11を表示させる。
【0086】
その後、駆動制御部745は、タッチパネル63上のいずれかの位置でピンチ操作が行われた場合(図11(c))、指定したズーム光学系243aのズーム中心位置P1が表示部62によって表示される画像Wn上で略同じ位置になるように(図11(d))、電動ステージ21の移動を制御する。
【0087】
このように、本実施の形態1の変形例6によれば、駆動制御部745がタッチパネル63から入力される位置信号が一定時間を超えてタッチパネル63の略同じ位置を示す場合、ズーム光学系243aのズーム中心位置P1を表示部62が表示する画像Wn上で指定する。これにより、ユーザは、タッチパネル63上のいずれかの位置でピンチ操作を繰り返し行っても、ズーム光学系243aのズーム中心位置P1が固定されるので、標本試料S上の略同じ観察位置を拡大または縮小しながら観察することができる。
【0088】
(実施の形態1の変形例7)
上述した実施の形態1において、駆動制御部745は、タッチパネル63から入力される位置信号の軌跡に応じて、ズーム光学系243aのROIズーム領域を設定してもよい。図12は、本実施の形態1の変形例7にかかる顕微鏡システム1の表示部62が表示する画像の一例を示す図である。
【0089】
図12に示すように、駆動制御部745は、ユーザがタッチパネル63上でタッチした軌跡G2に応じて、ズーム光学系243aのROIズーム領域を設定する(図12(a)を参照)。具体的には、駆動制御部745は、タッチパネル63から入力された位置信号に対応するタッチ位置において最大値および最小値のXY座標を含む矩形領域をROIズーム領域として設定する(図12(a)を参照)。
【0090】
その後、駆動制御部745は、矩形領域全体を表示部62の表示領域全体で表示するため、電動ステージ21およびズーム駆動部243bを駆動することにより、矩形領域を表示部62の表示領域に表示させる(図12(b)を参照)。
【0091】
このように、本実施の形態1の変形例7によれば、駆動制御部745は、タッチパネル63から入力される位置信号の軌跡G2に応じて、ズーム光学系243aのROIズーム領域を設定する。これにより、ユーザは、タッチパネル63を介して表示部62によって表示される画像Wn上をタッチし続けるだけで、標本試料S上における所望の観察位置を拡大して観察することができる。
【0092】
(実施の形態1の変形例8)
上述した実施の形態1では、駆動制御部745の制御のもと、水平方向に移動可能な電動ステージ21であったが、ユーザが手動で移動させるマニュアルステージであっても本発明を適用することができる。具体的には、駆動制御部745は、ピンチ操作に応じてズームレンズ部243によるズーム倍率のみ変更する。これにより、ユーザは、マニュアルステージであっても、ピンチ操作によってズーム倍率を変更することができる。
【0093】
(実施の形態2)
つぎに、本発明の実施の形態2について説明する。本発明の実施の形態2にかかる顕微鏡システムは、上述した実施の形態にかかる顕微鏡システムによる動作のみ異なり、顕微鏡システムの構成は上述した実施の形態にかかる顕微鏡システムと同様の構成を有する。このため、以下においては、本発明の実施の形態2にかかる顕微鏡システムによる動作のみ説明する。
【0094】
図13は、本実施の形態2にかかる顕微鏡システム1が行う処理の概要を示すフローチャートである。
【0095】
図13に示すように、ステップS201〜ステップS206は、図4のステップS101〜ステップS106にそれぞれ対応する。
【0096】
ステップS207において、駆動制御部745は、ズーム倍率算出部743が算出したズーム倍率でズーム光学系243aの光学ズームが可能であるか否かを判断する。ズーム倍率算出部743が算出したズーム倍率でズーム光学系243aの光学ズームが可能であると駆動制御部745が判断した場合(ステップS207:Yes)、顕微鏡システム1は、後述するステップS208へ移行する。一方、ズーム倍率算出部743が算出したズーム倍率でズーム光学系243aの光学ズームが可能でないと駆動制御部745が判断した場合(ステップS207:No)、顕微鏡システム1は、後述するステップS216へ移行する。
【0097】
ステップS208〜ステップS215は、図4のステップS107〜ステップS114にそれぞれ対応する。
【0098】
ステップS216において、駆動制御部745は、観察光L2上に挿入された対物レンズ23が高倍対物レンズ232であるか否かを判断する。具体的には、駆動制御部745は、レボルバ検出部223から出力される対物レンズ23の種類を示す種別信号に基づいて、観察光L2上に光路上に挿入された対物レンズ23が高倍対物レンズ232であるか否かを判断する。観察光L2上に挿入された対物レンズ23が高倍対物レンズ232であると駆動制御部745が判断した場合(ステップS216:Yes)、顕微鏡システム1は、後述するステップS217へ移行する。一方、観察光L2上に挿入された対物レンズ23が高倍対物レンズ232でないと駆動制御部745が判断した場合(ステップS216:No)、顕微鏡システム1は、後述するステップS219へ移行する。
【0099】
ステップS217において、駆動制御部745は、ズーム光学系243aのズーム倍率を限界値に設定する。
【0100】
続いて、トリミング部742は、現在のズーム光学系243aの光学ズームよるズーム倍率と、ズーム倍率算出部743が算出したズーム倍率とに基づいて、デジタルズームを行うトリミング領域を設定する(ステップS218)。その後、顕微鏡システム1は、ステップS208へ移行する。
【0101】
ステップS219において、駆動制御部745は、低倍対物レンズ231から高倍対物レンズ232に切替える切替信号を顕微鏡制御部3に出力する。この場合、顕微鏡制御部3は、駆動制御部745から入力される切替信号に基づいて、レボルバ駆動部222を駆動することにより、マウンタ221を回転させて観察光L2上に挿入された低倍対物レンズ231から高倍対物レンズ232に切替える。
【0102】
続いて、駆動制御部745は、撮像制御部5に撮影指示信号を出力することにより、撮像装置4に標本試料Sを撮像させて画像データを生成させることにより、ライブ画像を取得する(ステップS220)。
【0103】
その後、駆動制御部745は、電動ステージ21をZ方向に昇降させることによって顕微鏡装置2のピント位置を同焦点に補正する補正指示信号を顕微鏡制御部3へ出力する(ステップS221)。この場合、顕微鏡制御部3は、駆動制御部745から入力される補正指示信号に基づいて、モータ212を駆動することにより、電動ステージ21をZ方向に昇降させる。これにより、顕微鏡装置2は、低倍対物レンズ231から高倍対物レンズ232に切り替えた場合であっても、標本試料Sの試料面にピントを合わせることができる。
【0104】
その後、AF処理部52は、制御端末7を介して画像データ記憶部731に記憶されたライブ画像を取得し、取得したライブ画像のコントラストに基づいて、AF処理を行う(ステップS222)。ステップS222の後、顕微鏡システム1は、ステップS207へ移行する。
【0105】
以上説明した本発明の実施の形態2によれば、駆動制御部745がピンチ操作に応じたズーム倍率に基づいて、ズーム駆動部243bおよびレボルバ駆動部222に駆動信号を出力する。これにより、ユーザは、対物レンズ23の切り替えを含めて1つの動作で、1つの動作で標本試料S上における所望の観察位置を拡大または縮小することができる。
【0106】
なお、上述した実施の形態では、駆動制御部がピンチ操作に応じてリアルタイムにズームレンズ部、電動ステージおよびレボルバ駆動部に駆動信号を出力していたが、たとえば、ピンチ操作が開始されてから終了するまでタッチパネルから出力される位置信号を位置信号記憶部に一時的に記憶させ、ピンチ操作の終了時に駆動制御部が位置信号記憶部から位置信号を取得して顕微鏡システムの各種の電動ユニットに駆動信号を出力するようにしてもよい。
【0107】
なお、上記した実施の形態では、拡大して観察する場合について説明したが、縮小して観察する場合についても適用できる。その場合も、拡大して観察する場合と同様、光学ズームが可能であるか否かを判断し、光学ズームが可能であると判断した場合は、光学ズームにより観察する倍率を縮小させ、光学ズームが可能でないと判断した場合は、高倍対物レンズ232から低倍対物レンズ231に切替え可能か判断し、可能であれば、低倍対物レンズ231に切替えるようにしてもよい。
【0108】
なお、上述した実施の形態では、顕微鏡装置、撮像装置、表示入力部および制御端末を備えた顕微鏡システムを例に説明したが、たとえば標本試料を拡大する対物レンズ、対物レンズを介して標本試料を撮像する撮像機能、および画像を表示する表示機能を備えた撮像装置、たとえばビデオマイクロスコープ等であっても、本発明を適用することができる。
【0109】
また、上述した実施の形態では、顕微鏡装置として正立型顕微鏡装置を例に説明したが、たとえば倒立型顕微鏡装置であっても本発明を適用することができる。さらに、顕微鏡装置を組み込んだライン装置といった各種システムにも、本発明を適用することができる。
【0110】
また、上述した実施の形態では、表示入力部と制御端末とが別々に構成されていたが、たとえば表示入力部と制御端末とが一体的に形成された携帯型端末であってもよい。
【0111】
また、上述した実施の形態では、電動ステージ21をモータ212によってZ方向に移動自在としたが、対物レンズ23又は、対物レンズ23を含む観察光学系全体をZ方向に移動自在としてもよい。
【符号の説明】
【0112】
1 顕微鏡システム
2 顕微鏡装置
3 顕微鏡制御部
4 撮像装置
5 撮像制御部
6 表示入力部
7 制御端末
21 電動ステージ
22 レボルバ
23 対物レンズ
24 顕微鏡本体部
25 落射照明用光源
41 撮像素子
51 AE処理部
52 AF処理部
61 表示通信部
62 表示部
63 タッチパネル
71 制御通信部
72 入力部
73 記憶部
74 制御部
211,212 モータ
221 マウンタ
222 レボルバ駆動部
241 照明レンズ
242 ハーフミラー
243 ズームレンズ部
243a ズーム光学系
243b ズーム駆動部
244 結像レンズ
731 画像データ記憶部
732 位置信号記憶部
741 画像処理部
742 トリミング部
743 ズーム倍率算出部
744 移動量算出部
745 駆動制御部
746 表示制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
顕微鏡装置に含まれる複数の電動ユニットの各々を駆動させて標本試料を観察する顕微鏡システムであって、
1または複数のレンズからなり、前記標本試料に対してズーム可能なズーム光学系と、
前記ズーム光学系を光軸に沿って移動させるズーム駆動部と、
前記ズーム光学系を介して前記標本試料の観察像を撮像して、前記標本試料の画像データを生成する撮像部と、
前記撮像部が生成した前記画像データに対応する画像を表示する表示部と、
前記表示部の表示画面上に設けられ、外部からの物体の接触位置に応じた入力を受け付けるタッチパネルと、
前記タッチパネルから異なる前記接触位置の入力に応じた2つの位置信号が出力された場合、該2つの位置信号に対応する前記タッチパネル上における接触位置の中点を、前記ズーム光学系のズーム倍率によらずに固定されるズーム中心位置として前記ズーム光学系のズーム倍率を変更する駆動信号を前記ズーム駆動部に出力する駆動制御部と、
を備えたことを特徴とする顕微鏡システム。
【請求項2】
前記標本試料が載置され、水平方向に移動可能な電動ステージをさらに備え、
前記駆動制御部は、前記ズーム光学系のズームの変更前後において前記画像上で表示される前記ズーム中心位置が略同じ表示位置で表示される位置に、前記電動ステージを駆動する駆動信号を出力することを特徴とする請求項1に記載の顕微鏡システム。
【請求項3】
前記駆動制御部は、前記2つの位置信号にそれぞれ対応する2つの接触位置の距離が時間とともに大きくなる場合、前記ズーム光学系のズーム倍率を拡大する駆動信号を出力する一方、前記2つの位置信号にそれぞれ対応する2つの接触位置の距離が時間とともに小さくなる場合、前記ズーム光学系のズーム倍率を縮小する駆動信号を出力することを特徴とする請求項1または2に記載の顕微鏡システム。
【請求項4】
前記2つの接触位置の距離の変化前後の長さの比および前記2つの接触位置の距離の変化開始直後における前記ズーム光学系のズーム倍率に基づいて、前記ズーム光学系によるズーム倍率を算出するズーム倍率算出部をさらに備え、
前記駆動制御部は、前記ズーム倍率算出部が算出した前記ズーム倍率に応じた駆動信号を前記ズーム駆動部に出力することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の顕微鏡システム。
【請求項5】
互いに倍率が異なる複数の対物レンズを有するレボルバと、
前記標本試料の観察光の光路上から前記複数の対物レンズを択一的に切替えるレボルバ駆動部と、
をさらに備え、
前記駆動制御部は、前記対物レンズの倍率と前記ズーム光学系のズーム倍率との組み合わせによって定まる総合ズーム倍率に対応する駆動信号を、前記ズーム駆動部および前記レボルバ駆動部それぞれに出力することを特徴とする請求項4に記載の顕微鏡システム。
【請求項6】
前記駆動制御部は、前記タッチパネルから出力される前記2つの位置信号のうち少なくとも一方が停止した場合、前記ズーム駆動部、電動ステージおよび前記レボルバ駆動部にそれぞれ駆動信号を出力することを特徴とする請求項5に記載の顕微鏡システム。
【請求項7】
前記中点を識別可能な情報で前記表示部に表示させる表示制御部をさらに備えたことを特徴とする請求項1〜6のいずれか一つに記載の顕微鏡システム。
【請求項8】
前記表示制御部は、前記2つの接触位置の距離の変化量に対応するズーム領域を識別可能な情報で前記表示部に表示させることを特徴とする請求項7に記載の顕微鏡システム。
【請求項9】
前記表示制御部は、前記2つの接触位置の距離の変化量に対応する前記ズーム光学系のズーム倍率を前記表示部に表示させることを特徴とする請求項8に記載の顕微鏡システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2013−72994(P2013−72994A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−211624(P2011−211624)
【出願日】平成23年9月27日(2011.9.27)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】