説明

顕微鏡観察装置

【課題】 対物レンズを小径化して、低侵襲で生体等の試料内部を観察することができ、しかも、それを低コストで実現する。
【解決手段】 対物レンズユニット15を着脱可能に装着する対物レンズ装着部3と、対物レンズ装着部3を光軸方向に沿って移動可能に支持する装置本体2と、装置本体2と対物レンズ装着部3との間に配置され、装置本体2に対して対物レンズ装着部3を対物レンズユニット14の先端方向に向けて付勢する付勢手段4とを備える顕微鏡観察装置1を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、顕微鏡観察装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、顕微鏡観察装置としては、例えば、特許文献1に示される構造のものが知られている。
この顕微鏡観察装置は、スプリング緩衝機構を有する対物レンズを備えている。スプリング緩衝機構は、対物レンズの先端が外力によって押圧されたときに、外力に倣って対物レンズの先端を変位させる機構である。このスプリング緩衝機構を採用することにより、作動距離(WD:Working Distance)が短い対物レンズを用いて、スライドガラス上に配置されカバーガラスによって覆われた試料を観察する場合に、誤ってカバーガラスに対物レンズの先端が接触してしまっても、カバーガラスや試料に損傷を与えることを回避できる利点がある。
【特許文献1】特開平11−167066号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1に開示された顕微鏡観察装置においては、対物レンズの外枠内に設けられた光学系の少なくとも一部が外枠に対して光軸方向に移動可能な内部光学系となっている。このため、内部光学系を先端方向に付勢するスプリング緩衝機構を設けると、外枠を含めた対物レンズ全体の外径寸法が大きくなってしまう。
【0004】
特許文献1においては、そもそも試料の外部に対物レンズを配置し、あるいは対物レンズの先端面のみを試料に接触させて観察する方式のものであるため、対物レンズ全体の外径寸法が大型化しても不都合はない。しかしながら、例えば、マウスのような実験動物等の生体の体内を生きたまま(in vivo)観察する場合には、対物レンズの先端を生体の体内に挿入する必要がある。このような場合に、対物レンズの外径寸法が大きくなると、生体を大きく切開しなければならず、生体に与える負荷が過大となって、生きたままの観察を長期に安定して行うことが困難になるという不都合が生ずる。
【0005】
また、特許文献1に示されるように、対物レンズにスプリング緩衝機構を備える方式であると、倍率の異なる対物レンズを切り替えて使用する場合には、全ての対物レンズにそれぞれスプリング緩衝機構を備えることが必要となり、コストが高く付くという不都合もある。
さらに、対物レンズにスプリング緩衝機構を備える場合には、可動部を防水構造とする必要があり、構造が複雑になって、さらに大径化および高コスト化するという不都合が考えられる。
【0006】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、対物レンズを小径化して、低侵襲で生体等の試料内部を観察することができ、しかも、それを低コストで実現することができる顕微鏡観察装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は、以下の手段を提供する。
本発明は、対物レンズユニットを着脱可能に装着する対物レンズ装着部と、該対物レンズ装着部を光軸方向に沿って移動可能に支持する装置本体と、該装置本体と前記対物レンズ装着部との間に配置され、装置本体に対して対物レンズ装着部を対物レンズユニットの先端方向に向けて付勢する付勢手段とを備える顕微鏡観察装置を提供する。
【0008】
本発明によれば、対物レンズユニットを対物レンズ装着部に装着して試料の観察を行う際に、対物レンズユニットの先端が試料に当接し、試料側から受ける外力が付勢手段の付勢力を超えると、対物レンズユニットが対物レンズ装着部ごと装置本体方向に押し戻されることになる。これにより、対物レンズユニットおよび試料に過大な押圧力がかかることが防止され、対物レンズユニットまたは試料の損傷が回避されることになる。
【0009】
この場合において、本発明においては、対物レンズユニットではなく、対物レンズユニットを取り付ける対物レンズ装着部と装置本体とが相対変位するように設けられているので、対物レンズユニット自体はその外径寸法を可能な限り小さくすることができる。したがって、生体等の試料の内部を観察する際に、切開する範囲を必要最小限に止めて、試料にかかる負担を低減し、試料の健全性を長期にわたって維持することが可能となる。
【0010】
また、対物レンズユニット毎にスプリング緩衝機構を設けていた従来の方法と比較すると、全ての対物レンズユニットに対する緩衝機構を共通化することができ、装置のコストを低減することができる。さらに、緩衝機構における可動部を対物レンズユニットに設けないので、対物レンズユニットの防水構造を容易に構築することができ、生体等の内部にまで対物レンズユニットの先端を挿入する生きたままの観察の用途に適した顕微鏡観察装置を提供することができる。
【0011】
上記発明においては、前記装置本体に、前記対物レンズ装着部において、光源からの光を平行光にする結像レンズを備えることが好ましい。
このようにすることで、光源からの光が結像レンズによって平行光にされた位置において対物レンズユニットを装置本体に着脱することができる。したがって、無限遠の光学系を有する通常の対物レンズユニットを取り付けることも可能となる。また、光束が平行光となる領域において対物レンズユニットと装置本体の結像レンズとの光軸に沿う距離を変化させるので、結像関係に影響を与えることがないという利点がある。すなわち、対物レンズユニットが試料の内部において試料と当接することにより装置本体に対して光軸方向に相対的に変位させられても、焦点が合致したままの鮮明な画像を取得し続けることができる。
【0012】
また、上記発明においては、前記装置本体と前記対物レンズ装着部との周方向に沿う相対回転を係止する回り止め機構を備えることとしてもよい。
回り止め機構の作動により、装置本体と対物レンズユニットとの周方向に沿う相対回転が係止されるので、光学部材の相対回転によって装置全体の光学特性が変動することが防止される。また、対物レンズ装着部の着脱機構がネジである場合には、対物レンズ装着部と装置本体との相対回転を係止することにより、対物レンズユニットを対物レンズ装着部に締結する際の作業性を向上することができる。
【0013】
さらに、上記発明においては、前記装置本体または対物レンズ装着部のいずれかに一方に着脱可能に固定される固定部材を備え、該固定部材が、前記装置本体または対物レンズ装着部のいずれかに一方に固定されたときに、装置本体または対物レンズ装着部の他方に当接して、装置本体に対する対物レンズ装着部の光軸方向に沿う相対変位を係止することが好ましい。
【0014】
固定部材を装置本体または対物レンズ装着部に固定することにより、装置本体に対して対物レンズ装着部が光軸方向に変位しないように固定されるので、対物レンズ装着部に対する対物レンズユニットの装着作業を容易にすることができる。また、対物レンズユニットの先端に試料からの比較的大きな外力が加わっても、それに抗して対物レンズユニットをさらに挿入し続けたい用途、例えば、内視鏡的な用途に使用することも可能となる。
【0015】
さらに、上記発明においては、前記装置本体に対する前記対物レンズ装着部の光軸方向に沿う相対変位が生じたことを検出するセンサを備えることが好ましい。
対物レンズ装着部に装着されている対物レンズユニットの先端が、試料の内部に挿入されていて外部から目視できない状態においても、センサが装置本体に対するレンズ装着部の光軸方向に沿う相対変位を検出することにより、対物レンズユニットの先端が試料等に押し付けられている状態であることを確認することができる。
【0016】
また、上記発明においては、前記センサが、所定値以上の相対変位が生じたことを検出することとしてもよい。
このようにすることで、対物レンズ装着部に装着した対物レンズユニットの先端が試料によって押圧されても、所定の相対変位量の範囲においては検出されることなく、相対変位が許容される。したがって、付勢手段の付勢力により、対物レンズユニットの先端によって試料を押圧状態としたまま、試料の観察を行うことができる。例えば、試料が脈動する場合には、その脈動に対物レンズユニットを追従させて、ブレのない鮮明な画像による観察を行うことが可能となる。そして、装置本体と対物レンズ装着部との間に所定値以上の相対変位が生じたときに、それを検出することにより、対物レンズユニットや試料に損傷を生じないように保護することができる。
【0017】
また、上記発明においては、前記装置本体が、光軸に沿って配置される第1の円筒部を備え、前記対物レンズ装着部が、前記第1の円筒部に、光軸方向に移動可能に嵌合される第2の円筒部を備え、これら第1の円筒部と第2の円筒部の内、内側に配される円筒部に設けられ、これら円筒部に光軸方向に沿う相対変位が生じたときに外側に配される円筒部の下から露出する相対変位表示を備えることとしてもよい。
【0018】
このようにすることで、対物レンズ装着部に装着された対物レンズユニットの先端が試料によって押圧されたときに、装置本体と対物レンズ装着部との間に光軸方向に沿う相対変位が生ずると、第1の円筒部と第2の円筒部の内、内側に配される円筒部に設けられた相対変位表示が外側に配される円筒部の下から露出する。これにより、外部に対して相対変位を表示することが可能となる。すなわち、顕微鏡観察装置の操作者は、露出した相対変位表示を確認することにより、対物レンズユニットの先端が試料に当接して押し戻されていることを認識でき、これを考慮してその後の操作を行うことで、対物レンズユニットや試料の破損を防止することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、対物レンズユニットを装着する対物レンズ装着部と装置本体との間に付勢手段を設けることにより、緩衝機構を構成しているので、対物レンズユニット自体はその外径寸法を可能な限り小さくすることができる。したがって、生体等の試料の内部を観察する際に、切開する範囲を必要最小限に止めて、試料にかかる負担を低減し、試料の健全性を長期にわたって維持しつつ観察することができるという効果を奏する。
【0020】
また、対物レンズユニット毎にスプリング緩衝機構を設けていた従来の方法と比較すると、全ての対物レンズユニットに対する緩衝機構を共通化することができ、装置のコストを低減することができる。さらに、緩衝機構における可動部を対物レンズユニットに設けないので、対物レンズユニットの防水構造を容易に構築することができ、生体等の内部にまで対物レンズユニットの先端を挿入する生きたままの観察の用途に適した顕微鏡観察装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の第1の実施形態に係る顕微鏡観察装置1について、図1〜図8を参照して説明する。
本実施形態に係る顕微鏡観察装置1は、マウス等の実験動物のような生体を試料として、その内部を観察するのに適した装置である。
【0022】
本実施形態に係る顕微鏡観察装置1は、図1に示されるように、装置本体2と、該装置本体2に光軸C方向に移動可能に備えられた対物レンズ装着部3、装置本体2と対物レンズ装着部3との間に配置された付勢手段4とを備えている。
装置本体2は、本体ケース5と、該本体ケース5に固定されたコリメートユニット6と、該コリメートユニット6によって平行光にされた光を2次元的に走査する光走査部7と、該光走査部7により走査された光を集光して中間像を結像させる瞳投影レンズユニット8と、中間像を結像した光を集光して平行光にする結像レンズユニット9とを備えている。
【0023】
コリメートユニット6には、図示しない光源からの光を導く光ファイバ10の先端がコネクタ11によって固定されている。コネクタ11はコリメートユニット6に、光軸に対して若干傾斜して斜めに固定されている。これにより、光ファイバ10の出射端面10aを、長さ方向に対して斜めに形成し、該出射端面10aにおける光ファイバ10内の反射光が、光源側に設けられている光検出器(図示略)に戻ることを防止するように構成されている。光ファイバ10の出射端面10aから出射された光は、コリメートユニット6のレンズ6Aを通過することによって集光され、平行光に変換されるようになっている。
【0024】
光走査部7は、例えば、直交する2つの軸線回りにそれぞれ揺動可能に支持された2枚のガルバノミラー(図示略)を近接配置してなる、いわゆる近接ガルバノミラーにより構成されている。各ガルバノミラーは、ケーブル12を介して外部の図示しない制御装置から送られてきた制御信号によって、図示しないアクチュエータにより、所定の速さで往復揺動させられるようになっている。これにより、平行光は2次元的に走査されるようになっている。
【0025】
瞳投影レンズユニット8のレンズ8aを支持する枠体8bは、結像レンズユニット9のレンズ9aを支持する枠体9bに固定され、結像レンズユニット9の枠体9bは、前記本体ケース5に固定されている。結像レンズユニット9の枠体9bは、略円筒状の固定側円筒部13を備えている。
【0026】
前記対物レンズ装着部3は、前記固定側円筒部13の外側に軸線方向に沿って移動可能に嵌合される可動側円筒部14を備えている。可動側円筒部14の一端には、半径方向外方に延びる鍔部14aが設けられている。また可動側円筒部14の他端には、対物レンズユニット15を固定するネジ部16が設けられている。
【0027】
前記結像レンズユニット9の枠体9bには、前記対物レンズ装着部3の鍔部14aに係合するホルダ17が固定されている。また、固定側円筒部13の外面には、半径方向に沿ってネジ孔18が形成されている。また、可動側円筒部14の前記ネジ孔18に対応する位置には、軸線方向に沿って所定の長さにわたって延びる長孔19が形成されている。前記ネジ孔18には前記長孔19を介してボルト20が締結されている。長孔19はボルト20の頭部の直径より若干大きな幅寸法を有している。したがって、図5に示されるように、長孔19内においてボルト20の頭部が軸線方向に(実線と鎖線との間で矢印に示されるように)相対移動可能にされるとともに、長孔19とボルト20との周方向に沿う相対移動が禁止されている。これにより、回り止め機構21が構成されている。
【0028】
図1中、符号22は、ボルト20の頭部および長孔19を覆うカバー部材である。カバー部材22は、例えば、ゴム製であり、対物レンズユニット15の着脱時に把持することにより、対物レンズユニット15を取り付ける対物レンズ装着部3を滑らないように保持可能として着脱を容易にするようになっている。また、カバー部材22は、可動側円筒部14に設けられた長孔19全体を被覆して、長孔19内に塵埃が入り込むことを防止している。さらに、長孔19やボルト20を覆うことで外観を見栄えよくしている。
【0029】
前記固定側円筒部13の外面および可動側円筒部14の内面には、全周にわたって、相互に軸線方向に対向配置される段部13a,14bが形成されている。これらの段部13a,14bの間には、前記付勢手段4を構成するコイルスプリング(以下、コイルスプリング4という。)が挟まれている。コイルスプリング4は、段部13a,14b間の距離が最も広がった状態においても、ある程度圧縮された状態とされ、段部13a,14b間の距離を広げる方向に常に付勢している。
【0030】
すなわち、対物レンズ装着部3は、図2に示されるように、コイルスプリング4の弾発力によって、その先端に向かう方向に付勢され、後端に設けた鍔部14aがホルダ17に突き当たることによって、光軸Cに沿って先端に向かう方向へのそれ以上の変位を規制され、かつ、その位置に精度よく位置決めされるようになっている。また、対物レンズユニット15の先端15aが、試料Aその他の物体に当接して光軸C方向に押圧され、その押圧力がコイルスプリング4の弾発力を上回ると、対物レンズ装着部3が、結像レンズユニット9の枠体9bに対して相対的に、光軸Cに沿って後端側に押し戻されるように移動させられるようになっている。
【0031】
この場合において、対物レンズ装着部3の結像レンズユニット9の枠体9bに対する光軸C方向に沿う相対変位は、結像レンズユニット9から出射された平行光の位置Bにおいて光路長を変化させるように行われるようになっている。
【0032】
また、本実施形態に係る顕微鏡観察装置1は、図6に示されるように、可動側円筒部14を半径方向に貫通して雌ネジ23が形成され、固定側円筒部13には、対物レンズ装着部3が最前端に配置されているときに前記雌ネジ23に一致する位置に凹部24が形成されている。そして、雌ネジ23と凹部24とが一致した状態で、外部から固定部材25を雌ネジ23に締結し、その先端を前記凹部24内に配置することができるようになっている。固定部材25は、図6に示されるように、先端に前記雌ネジ23に締結される雄ネジ25aと、該雄ネジ25aを締結するために把持するつまみ部25bとを有し、チェーン26等によって本体ケース5に取り付けられている。
【0033】
図6に示されるように、固定部材25の雄ネジ25aを可動側円筒部14の雌ネジ23に締結し、固定部材25の先端を固定側円筒部13の凹部25内に配置することによって、対物レンズユニット15の装置本体2に対する相対変位が係止されるようになっている。すなわち、対物レンズユニット15が、コイルスプリング4を圧縮するのに十分な押圧力によって押圧されても、固定部材25の先端を凹部24の内面に光軸C方向に係合させて、対物レンズユニット15の装置本体2に対する相対変位が禁止されるようになっている。なお、貫通孔を可動側円筒部14に設け、固定側円筒部13に形成した雌ネジ23に固定部材25の雄ネジ25aを締結することにしてもよい。
【0034】
このように構成された本実施形態に係る顕微鏡観察装置1の作用について以下に説明する。
本実施形態に係る顕微鏡観察装置1を使用するには、まず、装置本体2を支持する図示しないアームを動作させて装置本体2を任意の位置および姿勢に設定する。そして、実験動物のような生体からなる試料Aを切開して、その開口部に対物レンズユニット14の先端15aを挿入していく。そして、所望の位置において装置本体2を固定し、図示しない光源から、例えば、レーザ光のような励起光を供給し、光走査部7を作動させる。
【0035】
光源から発せられた励起光は、光ファイバ10を伝播した後、コネクタ11を介して装置本体2内に導かれる。装置本体2にはコリメートユニット6が固定されているので、光ファイバ10の出射端面10aから本体ケース5内に出射された励起光はコリメートユニット6のレンズ6aを通過することによって平行光に変換される。
【0036】
平行光に変換された励起光は光走査部7に入射される。光走査部7は近接ガルバノミラーを往復揺動させることにより、励起光を90°(図1中、水平に入射された励起光を鉛直方向に)偏向し、かつ、2次元的に走査する。走査された励起光は瞳投影レンズユニット8を通過させられることにより中間像を結像し、その後、結像レンズユニット9を通過することによって平行光に変換される。そして、結像レンズユニット9から出射された平行光は対物レンズユニット15に入射され、その先端15aの前方の所定の作動距離をあけた焦点位置に再結像させられる。
【0037】
試料Aに励起光が入射されると、試料A内部に存在する蛍光物質が励起されて蛍光が発せられる。発生した蛍光は、対物レンズユニット15の先端15aから対物レンズユニット15内に戻り、結像レンズユニット9、瞳投影レンズユニット8,光走査部7およびコリメートユニット6を介して光ファイバ10に入射され、光源側に戻る。光源側において、蛍光は、図示しないダイクロイックミラーによって励起光から分離され図示しない光検出器、例えば、光電子増倍管(PMT)によって検出される。そして、検出された蛍光は画像化されてモニタに表示されることになる。
【0038】
光ファイバ10が、シングルモードファイバのように十分に細いコア径を有している場合には、光ファイバ10の先端が対物レンズユニット15の先端15aの結像位置と共役な位置関係となって共焦点光学系が構成される。したがって、対物レンズユニット15の先端15aの結像位置近傍において発生した蛍光のみが光ファイバ10内に入射されることになり、解像度の高い画像を得ることができる。また、光ファイバ10がそれよりも太いコア径を有する場合には、解像度は低くなるが、明るく、奥行きのある画像を得ることができる。
【0039】
そして、得られた画像を見ながら、所望の観察位置を探すために装置本体2および対物レンズユニット15をその光軸C方向に移動させると、励起光の結像位置が光軸C方向に移動する結果、深さ方向の観察位置を変化させることができる。
この場合に、対物レンズユニット15の先端15aが試料Aの内部において、比較的固い組織等の何らかの物体に当接すると、対物レンズユニット15の先端15aに押圧力が加わることになる。
【0040】
そして、その押圧力が、コイルスプリング4の弾発力を上回ると、図3および図4に示されるように、コイルスプリング4が圧縮される方向に変形させられて、対物レンズユニット15よび対物レンズ装着部3が装置本体2に対して光軸C方向に相対的に変位させられる。したがって、対物レンズユニット15の先端15aに過大な押圧力が加わることが防止され、対物レンズユニット15および相手方の試料Aの損傷を防止することができる。
【0041】
この場合において、本実施形態に係る顕微鏡観察装置1によれば、上述したコイルスプリング4を含む緩衝機構が対物レンズユニット15の先端15a近傍に設けられているのではなく、装置本体2側に設けられているので、対物レンズユニット15の先端15a近傍の構造を簡素化して、細径化することが可能となる。したがって、生体等の試料Aの内部を観察する際に、対物レンズユニット15の先端15aを挿入するために切開する範囲を必要最小限に止めることができる。
【0042】
その結果、試料Aにかかる負担を低減し、試料Aの健全性を長期にわたって維持することができる。すなわち、対物レンズユニット15の先端15aを生体等の試料Aに挿入した状態で、長期間にわたり、生体を生きたままの状態で観察し続けることが可能となる。
【0043】
また、対物レンズユニット15に緩衝機構を設けない本実施形態に係る顕微鏡観察装置1によれば、倍率や、先端形状の異なる対物レンズユニット15を対物レンズ装着部3に交換して取り付ける場合に、対物レンズユニット15毎に緩衝機構を設ける必要がないので、装置全体のコストを低減することができるという利点もある。さらに、緩衝機構における可動部を対物レンズユニット15に設けないので、対物レンズユニット15の防水構造を容易に構築することができ、体液等の液体を含む試料Aの内部にまで対物レンズユニット15の先端15aを挿入して行う観察に適した顕微鏡観察装置1を提供することができる。
【0044】
また、本実施形態に係る顕微鏡観察装置1によれば、対物レンズユニット15が装置本体2に対して変位する際に、結像レンズユニット9から出射された平行光の位置Bにおいて光路長が変化させられる。したがって、対物レンズユニット15が光軸C方向に変位しても、その結像関係が変化しない。
【0045】
すなわち、対物レンズユニット15の先端15aを試料Aに押し付けた状態で、その押圧力によって対物レンズユニット15が光軸C方向に押し戻されても、モニタに表示されている画像の焦点がずれることがない。したがって、装置本体2に対する対物レンズユニット15の相対変位量を十分に確保しておくことにより、対物レンズユニット15を装置本体2に対して相対変位させながら同一箇所の観察を行うことが可能となる。
【0046】
例えば、試料Aが、マウス等の生体である場合には、生体を生きたまま観察しようとすると、心臓の拍動、血管の脈動、呼吸動等によって試料Aの表面が変動する。この場合に、本実施形態に係る顕微鏡観察装置1を用いることによって、対物レンズユニット15の先端15aを試料Aに押し付けて、対物レンズユニット15を装置本体2方向に少し押し戻した位置で観察を行う。
【0047】
これにより、試料Aを対物レンズユニット15の押圧力によって押さえるとともに、それ以上の力で脈動等する場合には、対物レンズユニット15を脈動等に合わせて変位させながら観察することができる。この場合に、対物レンズユニット15が変位しても結像関係が変化しないので、ピントのあった鮮明な画像を表示し続けることができる。
【0048】
また、本実施形態に係る顕微鏡観察装置1においては、結像レンズユニット9から出力される平行光の位置Bにおいて、対物レンズユニット15を着脱することとしているので、着脱される対物レンズユニット15は無限遠光学系となる。したがって、対物レンズ装着部3のネジ部16を通常の顕微鏡に用いられるネジ部の規格に設定しておくことにより、図8に示されるように、通常の顕微鏡の対物レンズユニット15Aを着脱することもできる。
【0049】
さらに、本実施形態に係る顕微鏡観察装置1によれば、図5に示されるように、固定側円筒部13に固定したボルト20の頭を可動側円筒部14に形成した長孔19の内部に配置して、対物レンズ装着部3の装置本体2に対する周方向の回転を防止しているので、結像レンズユニット9に対して対物レンズユニット15が相対回転してしまうことによって装置全体の光学特性が変動することを防止できる。また、対物レンズ装着部3に設けられたネジ部16に対して対物レンズユニット15を着脱する際に、対物レンズ装着部3が回り止めされているので、着脱作業の作業性がよいという利点がある。
【0050】
また、本実施形態に係る顕微鏡観察装置1においては、固定部材25の雄ネジ25aを可動側円筒部14に設けた雌ネジ23に締結することにより、対物レンズユニット15を装置本体2に対して光軸C方向に相対変位しないように固定することができる。
このようにすることで、対物レンズユニット15が大きな押圧力によって押圧されても装置本体2に対して相対変位しないので、緩衝機構は作動しない。しかしながら、緩衝機構を作動させないことが好ましい用途には都合がよい。
【0051】
例えば、本実施形態に係る顕微鏡観察装置1を硬性内視鏡のように使用する場合である。対物レンズユニット15の先端15aが当接している相手が硬いものではなく、無理に押しても対物レンズユニット15を損傷するおそれがない場合に、あえて対物レンズユニット15をさらに前進させたい場合には、緩衝機構が作動しない方が便利である。
また、図7および図8に示されるように、対物レンズ装着部3に対して対物レンズユニット15,15Aを着脱する場合、特に、対物レンズユニット15,15Aを締結する場合には、緩衝機構の作動を停止して、対物レンズ装着部3を固定しておいた方が締結作業の作業性がよい。
【0052】
なお、本発明においては、図9に示されるように、結像レンズユニット9の枠体9bに固定したホルダ17と、可動側円筒部14の鍔部14aとの当接位置に、マイクロスイッチ27を配置してもよい。図9に示す例では、マイクロスイッチ27は、ホルダ17と鍔部14aとが当接した状態でON状態であり、対物レンズユニット15が押し戻されてホルダ17と鍔部14aとの係合が外れるとOFF状態となるように設定されている。
【0053】
このように構成することによって、対物レンズユニット15の先端15aに何らかの押圧力が作用して、コイルスプリング4が圧縮されると、可動側円筒部14の鍔部14aとホルダ17との係合が外れるのでマイクロスイッチ27がON状態からOFF状態に変化し、それによって、対物レンズユニット15の先端15aが何らかの押圧状態であることを検出することができる。マイクロスイッチ27の出力は、例えば、モニタ表示、ランプの点灯あるいは消灯、あるいは音声による報知を発生させることにすればよい。
【0054】
また、マイクロスイッチ27のストロークを大きくして、装置本体2に対して対物レンズユニット15を所定距離だけ変位させた後にこれを検出することにしてもよい。また、リニアスケールのように対物レンズユニット15の位置を常に検出することにして、変位が所定距離以上になったときに、モニタ表示等を行うことにしてもよい。このようにすることで、対物レンズユニット15の装置本体2に対する相対変位をある程度許容し、上述したような脈動を押さえつつ行う観察を可能とすることができる。
【0055】
また、図10に示されるように、結像レンズユニット9の枠体9bに固定したホルダ(第1の円筒部)17に、半径方向に貫通する表示窓28を設けるとともに、前記可動側円筒部(第2の円筒部)14の鍔部14aの外面に、赤色や蛍光色等の目立つ色で着色した相対変位表示29を設けることにしてもよい。
図10に示される状態においては、鍔部14aがホルダ17に係合しているので、対物レンズユニット15の先端15aには押圧力が作用しておらず、相対変位表示29は、表示窓28から見えないように隠れている。これに対して、対物レンズユニット15の先端15aに押圧力が作用して、コイルスプリング4が圧縮されると、鍔部14aの外面に設けられた相対変位表示29が表示窓28から露出して、外部から目視できるようになる。
【0056】
したがって、対物レンズユニット15の先端15aが、試料の内部に完全に埋まって見えない状態においても、この表示窓28内に相対変位表示29が現れているか否かを確認することにより、対物レンズユニット15の先端15aが押圧状態であるか否かを知ることができる。なお、表示窓28と相対変位表示29とは、ホルダ17と可動側円筒部14との位置関係により、いずれか外側に配される円筒部に表示窓28を、内側に配される円筒部に相対変位表示29を設けることにすればよい。また、可動側円筒部14に表示窓28を設け、固定側円筒部13に相対変位表示29を設けることにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の一実施形態に係る顕微鏡観察装置を示す縦断面図である。
【図2】図1の顕微鏡観察装置の部分的な拡大図である。
【図3】図1の顕微鏡観察装置の対物レンズユニット15が押圧されている状態を示す縦断面図である。
【図4】図3の状態の顕微鏡観察装置の部分的な拡大図である。
【図5】図1の顕微鏡観察装置の回り止め機構を示す正面図である。
【図6】図1の顕微鏡観察装置の固定部材を説明する部分的な拡大図である。
【図7】図1の顕微鏡観察装置に細径の対物レンズユニットを取り付ける状態を説明する縦断面図である。
【図8】図1の顕微鏡観察装置に通常の顕微鏡の対物レンズユニットを取り付ける状態を説明する縦断面図である。
【図9】本発明に係る顕微鏡観察装置の変形例を示す部分的な拡大縦断面図である。
【図10】本発明に係る顕微鏡観察装置の他の変形例を示す部分的な拡大立て断面図である。
【符号の説明】
【0058】
C 光軸
1 顕微鏡観察装置
2 装置本体
3 対物レンズ装着部
4 コイルスプリング(付勢手段)
9 結像レンズユニット(結像レンズ)
14 可動側円筒部(第2の円筒部)
15 対物レンズユニット
17 ホルダ(第1の円筒部)
19 長孔(回り止め機構)
20 ボルト(回り止め機構)
21 回り止め機構
25 固定部材
27 マイクロスイッチ(センサ)
29 相対変位表示

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対物レンズユニットを着脱可能に装着する対物レンズ装着部と、
該対物レンズ装着部を光軸方向に沿って移動可能に支持する装置本体と、
該装置本体と前記対物レンズ装着部との間に配置され、装置本体に対して対物レンズ装着部を対物レンズユニットの先端方向に向けて付勢する付勢手段とを備える顕微鏡観察装置。
【請求項2】
前記装置本体に、前記対物レンズ装着部において、光源からの光を平行光にする結像レンズを備える請求項1に記載の顕微鏡観察装置。
【請求項3】
前記装置本体と前記対物レンズ装着部との周方向に沿う相対回転を係止する回り止め機構を備える請求項1または請求項2に記載の顕微鏡観察装置。
【請求項4】
前記装置本体または対物レンズ装着部のいずれかに一方に着脱可能に固定される固定部材を備え、
該固定部材が、前記装置本体または対物レンズ装着部のいずれかに一方に固定されたときに、装置本体または対物レンズ装着部の他方に当接して、装置本体に対する対物レンズ装着部の光軸方向に沿う相対変位を係止する請求項1から請求項3のいずれかに記載の顕微鏡観察装置。
【請求項5】
前記装置本体に対する前記対物レンズ装着部の光軸方向に沿う相対変位が生じたことを検出するセンサを備える請求項1から請求項4のいずれかに記載の顕微鏡観察装置。
【請求項6】
前記センサが、所定値以上の相対変位が生じたことを検出する請求項5に記載の顕微鏡観察装置。
【請求項7】
前記装置本体が、光軸に沿って配置される第1の円筒部を備え、
前記対物レンズ装着部が、前記第1の円筒部に、光軸方向に移動可能に嵌合される第2の円筒部を備え、
これら第1の円筒部と第2の円筒部の内、内側に配される円筒部に設けられ、これら円筒部に光軸方向に沿う相対変位が生じたときに外側に配される円筒部の下から露出する相対変位表示を備える請求項1から請求項6のいずれかに記載の顕微鏡観察装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−139210(P2006−139210A)
【公開日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−330955(P2004−330955)
【出願日】平成16年11月15日(2004.11.15)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】