説明

風力発電システム及びその制御装置

【課題】複数の風力発電装置を主変圧器1台で系統に連系する場合、メンテナンスや故障停止などで停止(解列)した風力発電装置を再度運転開始できる状態に復旧する際に、風力発電装置が備える変圧器を接続すると、風力発電機定格の数倍の励磁突入電流が個々の変圧器に流れ、主変圧器で電圧降下が生じる。この電圧降下影響による他の風力発電装置の停止を避ける点にある。
【解決手段】風力発電装置の変圧器を投入する場合、時間差で投入することとした。また、変圧器投入時の主変圧器による電圧歪が運転している発電装置へ影響を与えた際、コンバータが過電流になりにくいように、発電電力を低下することとした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の風力発電装置を備えた風力発システムに関し、個々の風力発電装置の動作影響を互いに低減した風力発電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の技術においては、複数の風力発電装置を系統に連系する場合、各風力発電装置が備える変圧器で数十kVまで一旦昇圧し、主変圧器1台で複数の風力発電システムを一括して100kV級の送電線に接続する。
【0003】
複数の風力発電装置を主変圧器1台で系統に連系する場合、各風力発電装置が備える変圧器を接続すると、風力発電機定格の数倍の励磁突入電流が流れる。この励磁突入電流により主変圧器で電圧降下が生じ、他の風力発電装置に影響を与える恐れがある。
【0004】
近年の風力発電装置はコンバータを備えており、個々の風力発電装置の運転開始時には突入電流が小さく制御されるため、常時の運転停止による突入電流による主変圧器のインピーダンスによる電圧歪の影響は小さい。しかし、風力発電システムのうち、例えば1台の風力発電装置をメンテナンスのため停止させ、運転再開を行う前の準備段階で、風力発電装置が持つトランスを投入すると、トランスの励磁突入電流によって主変圧器で発生する電圧歪の影響により他の風力発電装置が備えるコンバータが過電流や電圧歪を検出して停止してしまう恐れがある。コンバータは半導体素子で構成されるため、過電流に対して壊れやすく、過渡的な過電流であっても運転を継続できない。
【0005】
従来、コンバータを備えない誘導発電機を有する風力発電装置による突入電流による影響を緩和する方法は〔特許文献1〕に開示されている。また、常時の運転停止のスケジュール管理の方法が〔特許文献2〕に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−109569号公報
【特許文献2】特開2004−88824号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
複数の風力発電装置を主変圧器1台で系統に連系する場合、メンテナンスや故障停止などで停止(解列)した風力発電装置を再度運転開始できる状態に復旧する際に、風力発電システムが備える変圧器を接続すると風力発電機定格の数倍の励磁突入電流が変圧器に流れ、主変圧器で電圧降下が生じる。この時の影響が他の風力発電装置に影響を与えて停止することを避ける風力発電システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を達成するために、本発明は風力発電システムの変圧器を投入する場合、時間差で投入することとした。また、変圧器投入時の主変圧器による電圧歪が運転している発電システムへ影響を与えた際、コンバータが過電流になりにくいように、発電電力を低下することとした。
【0009】
より、具体的には、本発明は電力系統連系用の第1の変圧器と第1の遮断器を備え、発電電力を調整する複数の風力発電装置を備えた風力発電システムにおいて、前記第一の遮断器へ投入指令を出力する遮断器投入制御手段を備え、前記風力発電システム群内の少なくとも1台以上の風力発電装置が運転状態の時、複数の前記第1の遮断器の投入に時間差を設定することを特徴とするものである。
【0010】
更に、本発明は風力発電システムにおいて、前記風力発電システムの少なくとも1台以上の風力発電装置が運転状態の時、前記複数の風力発電装置を少なくとも2台以上で構成されるグループに分け、各グループ毎に遮断器投入に時間差を設定することを特徴とするものである。
【0011】
更に、本発明は風力発電システムにおいて、前記風力発電システム内の少なくとも1台以上の風力発電装置が運転状態で、停止状態の風力発電装置の遮断器を投入する際、運転状態の風力発電装置の発電量を低下させた後、前記停止状態の風力発電装置の遮断器を投入することを特徴とするものである。
【0012】
更に、本発明は風力発電システムにおいて、前記風力発電装置は、風車の軸に接続された二次励磁発電機と、該二次励磁発電機の回転子巻線に接続された変換器と、前記二次励磁発電機の固定子巻線は前記電力系統に接続され、前記変換器を制御する制御装置とを備えて、該制御装置は、前記二次励磁発電機からの発電量を、出力発電指令に追従して制御することを特徴とするものである。
【0013】
更に、本発明は風力発電システムにおいて、前記遮断器の投入時間差として、30秒以上を設定したことを特徴とするものである。
【0014】
また、上記課題を達成するために、本発明は電力系統連系用の第1の変圧器と第1の遮断器を備え、発電電力を調整する複数の風力発電装置を備えた風力発電システム用の制御装置において、前記第一の遮断器へ投入指令を出力する遮断器投入制御手段を備え、前記風力発電システム群内の少なくとも1台以上の風力発電装置が運転状態の時、複数の前記第1の遮断器の投入に時間差を設定することを特徴とするものである。
【0015】
更に、本発明は風力発電システム用の制御装置において、前記風力発電システムの少なくとも1台以上の風力発電装置が運転状態の時、前記複数の風力発電装置を少なくとも2台以上で構成されるグループに分け、前記遮断器投入制御手段は各グループ毎に遮断器投入に時間差を設定することを特徴とするものである。
【0016】
更に、本発明は風力発電システム用の制御装置において、前記風力発電システム内の少なくとも1台以上の風力発電装置が運転状態で、停止状態の風力発電装置の遮断器を投入する際、前記遮断器投入制御手段は運転状態の風力発電装置の発電量を低下させた後、前記停止状態の風力発電装置の遮断器を投入することを特徴とするものである。
【0017】
更に、本発明は風力発電システム用の制御装置において、前記風力発電装置は、風車の軸に接続された二次励磁発電機と、該二次励磁発電機の回転子巻線に接続された変換器と、前記二次励磁発電機の固定子巻線は前記電力系統に接続され、前記変換器を制御する制御装置とを備えて、該制御装置は、前記二次励磁発電機からの発電量を、出力発電指令に追従して制御することを特徴とするものである。
【0018】
更に、本発明は風力発電システム用の制御装置において、前記遮断器の投入時間差として、30秒以上を設定したことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0019】
本発明の風力発電システムによれば、個々の風力発電装置の動作影響を互いに低減した風力発電システムを提供することが実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】風力発電システム群の説明図。
【図2】風力発電装置の回路構成。
【図3】系統側コンバータの制御構成。
【図4】発電機側コンバータの制御構成。
【図5】遮断器1台毎順次投入する方法の説明図。
【図6】遮断器1台毎順次投入した場合の説明図。
【図7】遮断器複数台をグループ化してグループ毎に順次投入する方法の説明図。
【図8】遮断器複数台をグループ化してグループ毎に順次投入した場合の説明図。
【図9】運転中の風力発電システムの発電電力を低下させて遮断器を投入する方法の説明図。
【図10】運転中の風力発電システムの発電電力を低下させて遮断器を投入した場合の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の一実施例を図面を用いて説明する。
【実施例1】
【0022】
図1を用いて、本発明の一実施例である風力発電システム100の構成を説明する。
【0023】
複数の風力発電装置200−1,200−2…200−mは、昇圧用変圧器209および遮断器250により系統の発電設備110に接続される。前記風力発電装置は主に、交流励磁型発電機202,翼204,風車制御装置206,ギア212,コンバータ208,発電機同期遮断器220,各風車の連系用トランス216,各風車の遮断器214から構成される。
【0024】
風車制御装置206は、風速検出や翼の翼角度指令値,発電電力指令値の作成や、無効電力指令の作成,運転停止指令信号を作成し伝送する。
【0025】
前記風車制御装置206で作成された各種指令値は、それぞれコンバータ208や翼角度変更装置(図示せず)に伝送される。
【0026】
コンバータ208は、発電指令値に従うようにコンバータ208の出力する電圧を調整し、発電機から発電する発電量をコントロールし、発電した電力を系統の発電設備110に出力するように制御する。
【0027】
風力発電装置200−1,200−2…200−mの各風車の遮断器214の投入/開放,故障リセットなどの動作は遮断器投入制御装置211にて行われ、人間が直接操作したり、遠方からの指令で動作することができる。
【0028】
次に、図2を用いて、本発明の風力発電装置の詳細な構成を説明する。なお、図2は多相交流回路を単線結線図で示したものである。
【0029】
風力発電システム群200は、送電線を介して系統の発電設備110に接続される。風力発電システム群200は主に、交流励磁型発電機202,翼204,風車制御装置206,コンバータ(励磁装置)208,コンバータ制御装置210から構成される。
【0030】
翼204は、交流励磁型発電機202の回転子にギア212を介して機械的に接続される。交流励磁型発電機202の回転子巻線はコンバータ208と電気的に接続される。
【0031】
風車制御装置206は、風速検出や翼204の角度制御,有効電力指令値Prefの作成や、運転/停止などの指令値Runの出力,無効電力指令値Qrefなどの運転指令信号OPSを演算する。
【0032】
前記風車制御装置206で作成された無効電力指令値Qrefや、有効電力指令値Pref,前記運転/停止指令値Run,翼角度指令値などの各種運転信号OPSは、コンバータ制御装置210や翼角度変更装置に伝送される。
【0033】
コンバータ制御装置210は、指令値に従うようにコンバータ208の出力する電圧を調整し、交流励磁型発電機202と系統の発電設備110との間の電力(発電電力,無効電力)を制御する。
【0034】
前記コンバータ制御装置210の電源は、トランス218を介して供給される。
【0035】
次に、コンバータ(励磁装置)208,コンバータ制御装置210について説明する。交流励磁型発電機202の固定子側の3相出力は、外部信号SG1によって開閉可能な例えば発電機同期遮断器220と連系用トランス216と遮断器214を介して系統の発電設備110に接続される。また連系用トランス216は、遮断器222,交流フィルタ回路224を介して、系統側のコンバータ208−1に接続される。
【0036】
コンバータ208−1の直流回路226はコンバータ208−2の直流回路にも接続され、前記コンバータ208−2の交流出力は、dv/dt抑制用のリアクトル228を介して交流励磁型発電機202の回転子巻線に接続される。
【0037】
前記遮断器214は、例えば、風力発電システム群200を保護するため、電流過大が継続する時に遮断器214を開放して電流を遮断する機能や、風力発電システム群200を完全停止させて系統の発電設備110から電気的に切り離すために使用される。
【0038】
発電機側コンバータ208−2および系統側コンバータ208−1は、例えば半導体のスイッチング素子(サイリスタ,GTO,IGBT,MOS,SiCなど)を用いて構成されており、交流を直流に変換または直流を交流に変換する機能を備える。
【0039】
また、前記系統側コンバータ208−1の交流入力端子には、リアクトルやコンデンサで構成された、高調波電流,高調波電圧を減衰させる交流フィルタ回路224が設置される。
【0040】
交流励磁型発電機202の回転部分には、ギア212を介して風力発電用の翼204に接続されており、風の力を受けて回転する。また、回転部分には、回転位置を検出する、例えばエンコーダなどの位置検出器が接続され、回転数信号ωが出力される。検出した回転数信号ωは、風車制御装置206とコンバータ制御装置210に入力される。
【0041】
次に、発電電力を制御するための配線および装置について説明する。連系用トランス216の二次側の三相電圧および三相電流は、それぞれ電圧センサ232a,電流センサ234aによりその値を低電圧の系統電圧検出値VSY,低電圧の電流検出値ISYに変換され、前記低電圧の系統電圧検出値VSYおよび電流検出値ISYはコンバータ制御装置210に入力される。前記コンバータ制御装置210は、系統電圧検出値VSYと電流検出値ISYからシステムが出力する電力を演算し、有効電力指令値Pref,無効電力指令値Qrefと一致するようにコンバータ208を制御する。
【0042】
前記コンバータ208−1,208−2の直流回路226に接続されたコンデンサCdの電圧は、電圧センサにより低電圧の直流電圧信号VDCに変換され、直流電圧信号VDCはコンバータ制御装置210に入力される。
【0043】
また、コンバータ208−2の出力電流IRは電流センサ234dにより検出され、コンバータ208−1の入力電流IGは電流センサ234cにより検出され、出力電流IRおよび入力電流IGはコンバータ制御装置210に伝送される。
【0044】
また、コンバータ制御装置210は、遮断器220,222を、それぞれ開閉指令信号SG1,SG2で制御し、また、半導体スイッチング素子で構成されるコンバータ208−1,208−2のそれぞれを駆動制御するパルス信号P1,P2を出力する。
【0045】
前記コンバータ制御装置210の発電機側コンバータ208−2の制御は、出力電流IRを制御するための電流制御系を備え、コンバータ208−2をパルス信号P2で駆動して、出力電流IRを制御する。
【0046】
次に、図3から図4を用いてコンバータ制御装置210の系統側コンバータ208−1の制御機能について説明する。
【0047】
図3はコンバータ208−1の制御構成を示す。コンバータ208−1は、平滑コンデンサCdの直流電圧信号VDCを一定に制御する機能を持つ。このため、コンバータ208−1は、系統電圧検出値VSYの位相を検出し、検出した電圧位相を用いて電流を有効分,無効分に分けてベクトル制御して、系統と有効電力をやり取りし、直流電圧を制御する。
【0048】
発電機励磁用コンバータ208−2が直流電力を使用して平滑コンデンサCdのエネルギーを消費して直流電圧信号VDCが低下すれば、系統側コンバータ208−1の直流電圧制御DCAVRは有効分電流Ipn(有効電力成分)を調整して平滑コンデンサCdを充電して直流電圧信号VDCを一定に保つように動作し、逆に電力変換器208−2が直流電力を充電して直流電圧信号VDCが上昇する場合には電力変換器208−1の直流電圧制御DCAVRは直流電力を交流電力に変換して電力系統に放電するため有効分電流Ipn(有効電力成分)を調整し、直流電圧信号VDCを一定に保つように動作する。
【0049】
コンバータ208−1が運転を開始する前に、直流電圧の初充電回路(図示していない)から直流電圧信号VDCを充電し、その後、遮断器222の投入指令の開閉指令信号SG2が出力され、コンバータ208−1は系統に接続される。
【0050】
前記系統電圧検出値VSYは、位相検出器THDETと3相2相変換器32TRSに入力される。前記位相検出器THDETは、系統の電圧に追従する位相信号THS(THS:系統U相電圧を正弦波としたときの位相信号)を演算し、前記位相信号THSを3相DQ座標変換器3DQ,2DQ,2相3相回転座標変換器DQ23に出力する。
【0051】
直流電圧指令値VDCREFと前記直流電圧信号VDCは直流電圧調整器DCAVR(たとえば比例積分制御器PIにより構成)に入力される。前記直流電圧調整器DCAVRは入力された指令値VDCREFと直流電圧信号VDCの偏差が零になるように出力のp軸電流指令値(有効分電流指令値)Ipnstrを調整し、電流調整器ACR2に出力する。
【0052】
3相DQ座標変換器3DQは入力された入力電流IGから〔数1〕に示す3相2相変換式および〔数2〕に示す回転座標変換式を用いて、p軸電流検出値Ipn(有効電流)とq軸電流検出値Iqn(無効電流)を演算し、p軸電流検出値Ipnを電流調整器ACR2に、q軸電流検出値Iqnを電流調整器ACR1に出力する。なお、図3中の入力電流IGは単線で記載してあるが、実際はIGU,IGV,IGWの三相交流成分である。系統電圧検出値VSYも同様に三相の信号である。
【0053】
ここで、添え字U,V,Wは三相交流の各相を表し、例えば、入力電流IGのU相電流はIGUと表記する。以降電圧なども同様(系統電圧検出値VSYのU相はVSYUなど)である。
【0054】
【数1】

【0055】
【数2】

【0056】
前記電流調整器ACR2は、前記p軸電流指令値Ipnstrと前記p軸電流検出値Ipnの偏差を零にするように出力のp軸電圧指令値Vpn0を調整し、加算器300に出力する。同様に、前記電流調整器ACR1は、q軸電流指令値(=0)と前記q軸電流検出値Iqnの偏差を零にするように出力のq軸電圧指令値Vqn0を調整し、加算器302に出力する。ここで前記電流調整器(ACR1,ACR2)はたとえば比例積分(PI)制御器により構成できる。
【0057】
前記3相2相変換器32TRSは入力された系統電圧検出値VSYから〔数3〕に示した変換式を用いて、α成分Vsαとβ成分Vsβを演算し、さらに〔数4〕を用いてp軸電圧検出値(系統電圧ベクトルに一致する位相成分)Vpsとq軸電圧検出値(前記p軸電圧検出値Vpsと直交する成分)Vqsを演算し、それぞれを前記加算器300,302に出力する。
【0058】
【数3】

【0059】
【数4】

【0060】
前記加算器302は、前記p軸電圧指令値Vpn0と前記p軸電圧検出値Vpsを加算して2相3相座標変換器DQ23に出力する。同様に前記加算器302は、前記q軸電圧指令値Vqn0と前記q軸電圧検出値Vqsを加算して2相3相座標変換器DQ23に出力する。
【0061】
前記2相3相座標変換器DQ23は、前記位相信号THSと、前記各加算器の結果Vpn,Vqnを入力し、〔数5〕および〔数6〕に示した変換式により前記変換器DQ23の出力する電圧指令値Vun,Vvn,Vwnを演算し、パルス演算器PWMに出力する。パルス演算器PWMは電圧指令値Vun,Vvn,Vwnを三角波を代償比較して、パルスP1_U,P1_V,P1_Wを作成し、系統側コンバータ208−1を制御する。
【0062】
【数5】

【0063】
【数6】

【0064】
次に、図4を用いてコンバータ制御装置210の系統側コンバータ208−1の制御機能について説明する。
【0065】
交流励磁型発電機202の回転数および位置を示す回転数信号ωは、回転位相検出器ROTDETに入力される。回転位相検出器ROTDETは、回転数信号ωのパルスを計数して位相信号に換算するとともに、位相信号を一回転に一回のパルス(例えばABZ方式のエンコーダではZ相パルス)で0にリセットし、0から360度の位相信号RTHを加算器400に出力する。
【0066】
位相信号RTHと同期制御器SYNCの出力位相信号LTHは加算器400で加算されて位相信号THとなり、位相信号THは前記位相信号THS(コンバータ208−1の制御で説明した)とともに励磁位相演算器SLDETに入力される。
【0067】
前記励磁位相演算器SLDETは、前記位相信号THとTHSを減算し、さらに発電機の極対数k倍(THR=THS−k×TH)、換算して発電機の回転子の電気角周波数の位相信号THRを出力する。
【0068】
電力演算器PQCALは、電流検出値ISYを前記数1と同じ変換行列により変換し、得られたα軸電流Isαと、β軸電流Isβと、前記式3により計算されたα軸電圧検出値Vsαと、β軸電圧検出値Vsβとを入力し、数7により、システムの有効電力Psと無効電力Qsを演算する。
【0069】
【数7】

【0070】
有効電力調整器APRは、有効電力Psと風力発電装置の有効電力指令Prefを入力し、前記有効電力指令値Prefと前記電力検出値Psの偏差を零にするように出力の有効分電流指令値Ip0を出力する。ここでは、有効電力指令の例で説明するが、トルク指令の場合は、トルク指令に発電機の回転数を乗じて有効電力指令に変換して制御することが可能である。有効電力制御はトルク制御と異なり、回転数が変化してもその影響を受けずに出力電力を一定に制御できる。
【0071】
また、無効電力調整器AQRは、無効電力検出値Qsと風力発電装置の無効電力指令値Qrefを入力し、前記無効電力指令値Qrefと前記無効電力検出値Qsの偏差を零にするように出力の励磁電流指令値Iq0を出力する。ここで前記電力調整器APR,AQRはたとえば比例積分器により構成できる。
【0072】
前記有効/無効電力調整器の各出力の電流指令値Ip0およびIq0は切り換え器SWに入力される。
【0073】
次に、電圧調整器AVRについて説明する。電圧調整器AVRは、発電機固定子電圧VSTの振幅値Vpkをフィードバック値とし、系統電圧検出値VSYの振幅値にフィルタFILを通した値Vrefを指令値として入力し、前記発電機VSTの振幅値と前記指令値の偏差を零にするような励磁電流指令値Iq1を前記切り換え器SWに出力する。ここで前記電圧調整器AVRはたとえば比例積分制御器により構成できる。この電圧調整器AVRは、発電機同期遮断器220が開状態で動作させ、系統電圧の振幅値に交流励磁型発電機202の固定子電圧の振幅値を一致させるために、コンバータ208−2から交流励磁型発電機202の二次側に流す励磁電流指令値を調整する。
【0074】
図5に、本発明による風力発電装置が複数台あるときの遮断器214投入動作のフローを示す。
【0075】
このフローでは、各風力発電装置の遮断器214の投入タイミングに所定時間差を設けることを目標としている。
【0076】
まずステップS101では、1台の昇圧用変圧器209に接続されるm台の風力発電システムで構成される風力発電システム群の全台数mが運転しているかどうかを判定し、全台数運転中の時には何もせずに終了する。
【0077】
ステップS102では、停止台数n(n≦m)を検出し、ステップS103で停止中風車に割り付けたナンバーa(a=1,2,…n)を1に初期化する。ステップS104で現在のナンバーaに従って、停止中風車のトランスの投入を指令し、ステップS105に移行する。
【0078】
ステップS105では、タイマーを初期化した後、タイマー動作を開始し、ステップS106にて時間計測(ここでは、トランスの過渡現象が終了する30秒とした)を開始し、所定時間経過後にステップS107に移行する。
【0079】
ステップS107では、ナンバーaの値を変更(ここでは1を加算して作成)し、次の停止中風車の遮断器投入の準備を行うステップS108では、ナンバーaが停止中の全台数を超えているか(風車全台数が遮断器投入を終えたか)を判定し、全台数の投入を終えていない場合は、ステップS104に戻り、次の遮断器投入動作に移行する。
【0080】
以上の動作により、各風力発電装置の遮断器214の投入タイミングに所定時間差を設けることができる。
【0081】
図6に図5に示した本発明による風力発電装置が複数台あるときの遮断器214の投入動作を示した図面を示す。
【0082】
この図面では風力発電装置200−1から風力発電装置200−3の3台の風力発電装置が遮断機投入動作するときの遮断器動作602,604,606を示したものである。
【0083】
時刻t0で風力発電装置200−1の遮断器214が投入される。そして、トランスの過渡現象が終了する30秒後の時刻t1において、風力発電装置200−2の遮断機投入が行われる。
【0084】
そして、トランスの過渡現象が終了する30秒後の時刻t1において、風力発電装置200−3の遮断機投入が行われる。
【0085】
このような、一連の装置の構成,動作を行うことで、本発明の風力発電システムによれば、個々の風力発電装置の動作影響を互いに低減した風力発電システムを提供することが実現できる。
【実施例2】
【0086】
図7は、風力発電装置が複数台あるときの遮断器投入動作を複数台まとめて実施する場合のフローを示す。まずステップS201では、1台の昇圧用変圧器209に接続されるm台の風力発電システムで構成される風力発電システム群の全台数mが運転しているかどうかを判定し、全台運転中の時には何もせずに終了する。
【0087】
ステップS202では、停止台数n(n≦m)を検出し、ステップS203で停止中風車に割り付けたナンバーa(a=1,2,…n)を1からnに初期化する。ステップS204で現在のナンバーKaに従って、停止中の風力発電装置のトランスの投入指令を複数台(ここでは3台分:Ka,Ka+1,Ka+2)作成し、ナンバー1〜3の風力発電装置のトランスに投入を指令してステップS205に移行する。
【0088】
ステップS205では、タイマーを初期化した後、タイマー動作を開始し、ステップS206にて時間計測(ここでは、トランスの過渡現象が終了する30秒とした)を開始し、所定時間経過後に処理007に移行する。
【0089】
ステップS207では、ナンバーaの値を変更(ここでは3台ごとに投入するので3を加算して作成)し、ナンバー4〜6の次の停止中風車の遮断器投入の準備を行う。ステップS208では、風車全台数が遮断器投入を終えたかを判定し、全台数の投入を終えていない場合は、ステップS204に戻り、次の遮断器投入動作に移行する。
【0090】
以上の動作により、複数台毎の風力発電装置の各遮断器214の投入タイミングに所定時間を設けて投入することができる。
【0091】
図8に図7に示した本発明による風力発電装置が複数台あるときの遮断器214の投入動作を示した図面を示す。
【0092】
この図面では風力発電装置200−1から風力発電装置200−3、及び風力発電装置200−4から風力発電装置200−6の計6台の風力発電装置が同時に3台ずつ遮断機投入動作するときの遮断器動作801から806の動作を示したものである。
【0093】
時刻t0で風力発電装置200−1から200−3の3台のコンバータ208が投入される(遮断機動作801,802,803)。そして、トランスの過渡現象が終了する30秒後の時刻t1において、風力発電装置200−4から200−6の遮断機投入が行われる(遮断器動作804,805,806)。
【0094】
本発明の実施例では、このような、一連の構成,動作を行うことで、本発明の風力発電システムによれば、個々の風力発電装置の動作影響を互いに低減した風力発電システムを提供することが実現できる。
【実施例3】
【0095】
図9は、停止中風力発電システムの遮断器を投入する動作の前に、運転中の風力発電システムの発電電力を低下させる実施例を示す。図2,図3との違いは、ステップS303の後にステップS304,S305,S306を追加した点、およびステップS311の後にステップS312を追加した点にある。
【0096】
図9では、図5を例に説明するが、ここで説明する処理は図7にも同様に追加できる。
【0097】
以下、前記図5,図7で説明した部分と重複する説明は省略し、追加した部分を主に説明する。ステップS304は、発電運転中の風力発電システム(Kn+1,Kn+2…Km)に対し、発電電力の低下を指令する処理である。この低下指令は、各風力発電装置の風車制御装置206に伝送され、各風力発電システムは発電電力を例えば10%程度まで低下させるため、発電機出力指令、及び翼角度などを調整する。
【0098】
具体的には、前述したように風車制御装置206は、風速検出や翼204の角度制御,有効電力指令値Prefの作成や、運転/停止などの指令値Runの出力,無効電力指令値Qrefなどの運転指令信号OPSを演算するが、前記風車制御装置206で作成する無効電力指令値Qrefや、有効電力指令値Prefを発電電力が例えば10%程度まで低下するようにし、前記運転/停止指令値Run,翼角度指令値などの各種運転信号OPSは、コンバータ制御装置210や翼角度変更装置に伝送される。
【0099】
コンバータ制御装置210は、指令値に従うようにコンバータ208の出力する電圧を調整し、これにより、高速に交流励磁型発電機202と系統の発電設備110との間の発電電力が例えば10%程度まで低下するように制御することが可能になる。
【0100】
遮断器制御装置は、ステップS305で風力発電装置(Kn+1,Kn+2…Km)の出力が低下したかを各風力発電装置からの出力電力のデータを通信で監視し、低下したらステップS306に移行する。
【0101】
ステップS306では、これから遮断器投入および運転開始する風力発電システム(K1,K2…Kn)の発電電力指令を低下させておくように指令値低下を伝送する。
【0102】
ステップS312は、ステップS311の全台数運転終了後に実施される。ステップS312は発電電力低下指令を解除するための指令を各風力発電装置に伝送する。
【0103】
以上の動作により、遮断器投入時に運転中の風力発電装置の発電電力を低下させておき、系統電圧の過渡的な歪により風力発電装置が過電流になることを防止できる。
【0104】
図10に図9の風力発電システムの遮断器を投入する動作の前に、運転中風力発電システムの発電電力を低下させた実施例の図面を示す。
【0105】
この図面では風力発電装置200−1の遮断機投入動作するときの動作を示したものである。
【0106】
時刻t0で風力発電装置200−1の遮断器214が投入される。そして、この遮断器214が投入される前に、風力発電装置200−2,200−3のそれぞれの発電出力指令904,906を減少させる。
【0107】
そして、トランスの過渡現象が終了する30秒後の時刻t1において、風力発電装置200−2,200−3の発電出力指令904,906は通常の発電動作時の指令値に戻される。
【0108】
このような、一連の装置の構成,動作を行うことで、遮断器投入時に運転中の風力発電装置の発電電力を低下させておき、系統電圧の過渡的な歪により風力発電装置が過電流になることを防止することを実現している。
【産業上の利用可能性】
【0109】
本発明は風力発電や太陽光発電など複数台の発電装置で構成される発電設備に適用できる。
【符号の説明】
【0110】
110 系統の発電設備
200 風力発電システム群
202 交流励磁型発電機
204 翼
206 風車制御装置
208 コンバータ
209 昇圧用変圧器
210 コンバータ制御装置
212 ギア
214 各風車の遮断器
216 各風車の連系用トランス
220 発電機同期遮断器
250 風車群の遮断器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力系統連系用の第1の変圧器と第1の遮断器を備え、発電電力を調整する複数の風力発電装置を備えた風力発電システムにおいて、
前記第一の遮断器へ投入指令を出力する遮断器投入制御手段を備え、
前記風力発電システム群内の少なくとも1台以上の風力発電装置が運転状態の時、複数の前記第1の遮断器の投入に時間差を設定することを特徴とする風力発電システム。
【請求項2】
請求項1の風力発電システムにおいて、
前記風力発電システムの少なくとも1台以上の風力発電装置が運転状態の時、前記複数の風力発電装置を少なくとも2台以上で構成されるグループに分け、各グループ毎に遮断器投入に時間差を設定することを特徴とする風力発電システム。
【請求項3】
請求項1の風力発電システムにおいて、
前記風力発電システム内の少なくとも1台以上の風力発電装置が運転状態で、停止状態の風力発電装置の遮断器を投入する際、運転状態の風力発電装置の発電量を低下させた後、前記停止状態の風力発電装置の遮断器を投入することを特徴とする風力発電システム。
【請求項4】
請求項3の風力発電システムにおいて、
前記風力発電装置は、風車の軸に接続された二次励磁発電機と、
該二次励磁発電機の回転子巻線に接続された変換器と、
前記二次励磁発電機の固定子巻線は前記電力系統に接続され、
前記変換器を制御する制御装置とを備えて、
該制御装置は、前記二次励磁発電機からの発電量を、出力発電指令に追従して制御することを特徴とする風力発電装置。
【請求項5】
請求項1の風力発電システムにおいて、
前記遮断器の投入時間差として、30秒以上を設定したことを特徴とする風力発電システム。
【請求項6】
電力系統連系用の第1の変圧器と第1の遮断器を備え、発電電力を調整する複数の風力発電装置を備えた風力発電システム用の制御装置において、
前記第一の遮断器へ投入指令を出力する遮断器投入制御手段を備え、
前記風力発電システム群内の少なくとも1台以上の風力発電装置が運転状態の時、複数の前記第1の遮断器の投入に時間差を設定することを特徴とする風力発電システム用の制御装置。
【請求項7】
請求項6の風力発電システム用の制御装置において、
前記風力発電システムの少なくとも1台以上の風力発電装置が運転状態の時、前記複数の風力発電装置を少なくとも2台以上で構成されるグループに分け、前記遮断器投入制御手段は各グループ毎に遮断器投入に時間差を設定することを特徴とする風力発電システム。
【請求項8】
請求項6の風力発電システム用の制御装置において、
前記風力発電システム内の少なくとも1台以上の風力発電装置が運転状態で、停止状態の風力発電装置の遮断器を投入する際、前記遮断器投入制御手段は運転状態の風力発電装置の発電量を低下させた後、前記停止状態の風力発電装置の遮断器を投入することを特徴とする風力発電システム用の制御装置。
【請求項9】
請求項8の風力発電システムにおいて、
前記風力発電装置は、風車の軸に接続された二次励磁発電機と、
該二次励磁発電機の回転子巻線に接続された変換器と、
前記二次励磁発電機の固定子巻線は前記電力系統に接続され、
前記変換器を制御する制御装置とを備えて、
該制御装置は、前記二次励磁発電機からの発電量を、出力発電指令に追従して制御することを特徴とする風力発電装置。
【請求項10】
請求項6の風力発電システム用の制御装置において、
前記遮断器の投入時間差として、30秒以上を設定したことを特徴とする風力発電システム用の制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−211817(P2011−211817A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−76568(P2010−76568)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】