説明

風力発電プラントにおける層状上部構造物の使用

本発明は、風力発電プラント用回転翼の製造における層状上部構造物の使用、および風力発電プラント用回転翼に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、風力発電プラント用回転翼の製造における層状構造物の使用、および風力発電プラント用回転翼に関する。
【背景技術】
【0002】
風力エネルギーの重要性はますます増しつつあるので、風力発電プラント、特に回転翼およびその製造方法は、精力的に研究および開発されている。特に、製造される回転翼の品質および安価な製造方法に関心が持たれている。これまでに知られている風力発電プラント用回転翼は、マトリックス材料としての樹脂(例えば、ポリエステル樹脂(UP)、ビニルエステル樹脂(VE)、エポキシ樹脂(EP))に基づく繊維強化プラスチックからなる。回転翼の製造方法では主に、翼の下半割体および上半割体をそれぞれ一体で製造する。次いで、これらの半割体を合わせて接着する。強化のために、支柱またはブレースも接着する。
【0003】
翼の下半割体および上半割体の製造方法では、まず、繊維複合材料を調製する。繊維複合材料は、完全に硬化しなければならない。硬化工程にはかなりの時間がかかるので、製造方法全体の迅速な実施にとっては障害となる。上記樹脂製の風力発電プラント用回転翼は、通常、手動積層法、プレプレグ技術を組み合わせた手動積層法によって、ワインディング法または真空補助注入法によって製造する。手動積層法では、まず、離型剤および任意にゲルコートを型表面に適用することによって、型を準備する。次いで、一方向配向または二方向配向を有する多軸ガラス布を型の中に順次配置する。続いて、樹脂を多軸布に適用し、ローリングによって手動で多軸布に圧入する。この工程は、必要に応じて複数回繰り返してよい。また、強化材料としてのブレース、および他の部材、例えば避雷器を組み込んでもよい。この第一ガラス繊維強化層に、一般にバルサ材製、ポリ塩化ビニル(PVC)製またはポリウレタン(PUR)フォーム製であるいわゆるスペーサー層、および第一ガラス繊維強化層と同様の第二ガラス繊維強化層を適用する。この方法は、設備投資が少なく、不具合を特定して修正しやすいという利点を有するが、非常に労働集約的な製造方法であり、その結果、製造コストが非常に高くなり、長い製造時間によってより多くの不都合が生じ、品質管理費が高くなる。
【0004】
プレプレグ技術を組み合わせた手動積層法は、単純な手動積層法と同様に実施する。しかしながら、この場合、いわゆるプレプレグ(樹脂で含浸した既製ガラスマット)を型の外で製造し、次いで、回転翼の型の中に配置する。単純な手動積層法とは対照的に、プレプレグの製造の部分的な自動化により、製造された回転翼の品質に関する一貫性は向上するが、液状樹脂混合物に含まれる高揮発性化合物から作業者を保護するために、少なからぬ経費(作業場の安全対策費など)がかかる。
【0005】
(樹脂トランスファー成形(RTM)または真空補助樹脂トランスファー成形(VA RTM)としても知られている)樹脂射出法または「SCRIMP法」(Seemann Composites Resin Infusion Moulding Process)では、離型剤および任意にゲルコートの適用によって型を準備する。次いで、正確な生産計画に従って、乾燥繊維マットを型の中に配置する。導入したこの第一層は、後に、外側に位置する回転翼層を形成する。続いて、スペーサー材料を導入し、その上に再び繊維マットを配置する。この繊維マットは、後に、完成した回転翼の半割体/回転翼の半殻の内層を形成する。その後、真空気密フィルムで型全体を密封する。様々な場所から樹脂を型(フィルムと型の間の空間)に注入する前に、このように準備した型から、繊維マットおよびスペーサー材料の中の空気を除去する。先に記載した2つの方法と同様に、この方法は、部材の脱型に必要な硬化時間が12時間までと非常に長く、それによって設備の生産性が著しく制限されるという欠点を有する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明の目的は、上記した欠点を有さない上に、より短い時間で安価に製造することができる回転翼を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
意外なことに、この目的は、上記した樹脂に代えて、プラスチック材料としてポリウレタンを用いて回転翼を製造することによって達成された。特に、回転翼の外側ケーシングにおいて、本発明に従い、プラスチック材料としてポリウレタンを使用する。そこには、外側ケーシングに使用する繊維層が施されている。
【0008】
本発明は、風力発電プラント用回転翼であって、回転翼が、
a)離型剤層、
b)任意にゲルコート層、
c)プラスチック材料で処理された繊維層、
d)任意にスペーサー層、
e)プラスチック材料を含む繊維層、
f)任意にプラスチックフィルム
を有する層状構造物から少なくとも部分的になる外側ケーシングを有し、プラスチック材料としてポリウレタンが使用されていることを特徴とする回転翼を提供する。
【0009】
本発明はまた、回転翼が、
a)離型剤層、
b)任意にゲルコート層、
c)プラスチック材料で処理された繊維層、
d)任意にスペーサー層、
e)プラスチック材料を含む繊維層、
f)任意にプラスチックフィルム
を有する層状構造物から少なくとも部分的になる外側ケーシングを有する、本発明の風力発電プラント用回転翼の製造方法であって、繊維層を、プラスチック材料としてのポリウレタンを調製するための反応混合物で処理することを特徴とする方法も提供する。
【0010】
本発明は更に、風力発電プラント用回転翼の製造における層状構造物の使用であって、層状構造物が、
a)離型剤層、
b)任意にゲルコート層、
c)プラスチック材料で処理された繊維層、
d)任意にスペーサー層、
e)プラスチック材料を含む繊維層、
f)任意にプラスチックフィルム
を有し、プラスチック材料としてポリウレタンが使用されていることを特徴とする使用も提供する。
【発明を実施するための形態】
【0011】
離型剤層に、シリコーン含有離型剤またはワックス含有離型剤を使用することが好ましい。これらの離型剤は、文献から知られている。
【0012】
ゲルコートがポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂またはビニル樹脂からなることが好ましい。
【0013】
繊維層として、好ましくは、ランダム配向ガラス繊維、多軸ガラス織布、切断ガラス繊維または粉砕ガラス繊維または鉱物繊維、並びにポリマー繊維、鉱物繊維、炭素繊維、ガラス繊維またはアラミド繊維およびそれらの混合物に基づく、繊維マット、繊維不織布および編布、特に好ましくはガラス繊維マットまたはガラス繊維不織布の層を使用してよい。スペーサー層として、好ましくは、プラスチックフォーム、木材または金属を使用してよい。
【0014】
任意に使用するプラスチックフィルムは、回転翼の製造の際にケーシングの中に層として残してもよいし、回転翼の半割体を脱型する際に除去してもよい。プラスチックフィルムは特に、液状樹脂混合物の充填前の脱気工程において、上記した層を有する型の半殻をシールするのに役立つ。
【0015】
プラスチック材料として、ポリウレタンを使用する。ポリウレタンは、ポリイソシアネートと、イソシアネートに対して反応性である少なくとも2個の水素原子を有する化合物との反応によって得ることができる。イソシアネート成分と、イソシアネートに対して反応性である少なくとも2個の水素原子を有する化合物の反応混合物を、調製して脱気した層状構造物に注入する。
【0016】
イソシアネートに対して反応性である少なくとも2個の水素原子を有する適当な化合物は一般に、分子内に2個以上の反応性基(例えば、OH基、SH基、NH基、NH基およびCH酸性基)を有する化合物である。ポリエーテルポリオールおよび/またはポリエステルポリオールを使用することが好ましく、ポリエーテルポリオールを使用することが特に好ましい。ポリオール組成物は、ポリオールとして、好ましくは200〜1830mgKOH/g、より好ましくは300〜1000mgKOH/g、特に好ましくは350〜500KOH/gのOH価を有するポリオールを含有する。ポリオールの粘度は、好ましくは(25℃で)800mPas以下である。ポリオールは、好ましくは少なくとも60%の第二級OH基、より好ましくは少なくとも80%の第二級OH基、特に好ましくは90%の第二級OH基を有する。プロピレンオキシドに基づくポリエーテルポリオールが特に好ましい。
【0017】
ポリイソシアネート成分として、通常の脂肪族、脂環式、特に芳香族のジイソシアネートおよび/またはポリイソシアネートを使用する。適当であるそのようなポリイソシアネートの例は、1,4−ブチレンジイソシアネート、1,5−ペンタンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートおよび/または2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ビス(4,4’−イソシアナトシクロヘキシル)メタンまたはそれらの他の異性体との混合物、1,4−シクロヘキシレンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、2,4−トルエンジイソシアネートおよび/または2,6−トルエンジイソシアネート(TDI)、1,5−ナフタレンジイソシアネート、2,2’−ジフェニルメタンジイソシアネートおよび/または2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートおよび/または4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)および/またはそれらの高級同族体(pMDI)、1,3−ビス−(2−イソシアナト−プロプ−2−イル)−ベンゼンおよび/または1,4−ビス−(2−イソシアナト−プロプ−2−イル)−ベンゼン(TMXDI)、1,3−ビス−(イソシアナトメチル)ベンゼン(XDI)である。イソシアネートジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)を使用することが好ましく、ジフェニルメタンジイソシアネートとポリフェニレンポリメチレンポリイソシアネート(pMDI)の混合物を使用することが特に好ましい。ジフェニルメタンジイソシアネートとポリフェニレンポリメチレンポリイソシアネート(pMDI)の混合物は、好ましくは40〜100重量%、より好ましくは50〜90重量%、特に好ましくは60〜80重量%のモノマー含量を有する。使用するポリイソシアネートのNCO含量は、好ましくは25重量%超、より好ましくは30重量%超、特に好ましくは31.4重量%超である。好ましくは、使用するMDIは、少なくとも3重量%、好ましくは少なくとも20重量%、特に好ましくは少なくとも40重量%の、2,2’−ジフェニルメタンジイソシアネートと2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートを合わせた含量を有すべきである。イソシアネートの粘度は、好ましくは250mPas以下(25℃)、より好ましくは100mPas以下(25℃)、特に好ましくは50mPas以下(25℃)である。
【0018】
記載した反応成分に加えて、ポリウレタン反応混合物は、好ましくは添加剤および添加成分、好ましくは充填材、例えば、カーボンナノチューブ、硫酸バリウム、二酸化チタン、ガラス短繊維、天然繊維、または層状鉱物、例えば珪灰石または白雲母を含有してよい。添加剤および添加成分として、消泡剤、触媒および潜触媒を使用することが好ましい。必要に応じて、他の既知の添加剤および添加成分を使用してもよい。
【0019】
適当なポリウレタン系は、特に、透明なポリウレタン系である。より大きい成形品の製造において型を均一に充填するには低い粘度が必要とされるので、5000mPas以下、好ましくは2000mPas以下、特に好ましくは1000mPaの粘度(25℃、成分を混合してから30分後)を有するポリウレタン系が特に適している。イソシアネート成分と、イソシアネートに対して反応性である少なくとも2個の水素原子を有する化合物の転化率は、選択することが好ましいので、反応混合物中のイソシアネート反応性基数に対するイソシアネート基数の比は、0.9〜1.5、好ましくは1.0〜1.2、特に好ましくは1.02〜1.1である。
【0020】
好ましい態様では、イソシアネート成分とイソシアネートに対して反応性である少なくとも2個の水素原子を有する化合物からなる反応混合物は、20〜80℃、特に好ましくは25〜40℃の温度で注入する。
【0021】
反応混合物を導入した後、型を加熱することによってポリウレタンの硬化を促進してもよい。好ましい態様では、注入した、イソシアネート成分とイソシアネートに対して反応性である少なくとも2個の水素原子を有する化合物からなる反応混合物は、40〜160℃、好ましくは60〜120℃、特に好ましくは70〜90℃の温度で硬化する。
【0022】
以下の実施例によって、本発明をより詳細に説明する。
【実施例】
【0023】
種々のポリウレタン系から成形品(シート)を製造し、標準的なエポキシ樹脂系と比較した。シート寸法は17cm×17cm、厚さは4mmであった。
【0024】
脱型時間とは、その時間の後には、変形を伴わずに手動でシート型からPUR試験片を取り出すことができる時間である。
【0025】
粘度は、成分を混合してから30分後に測定した。なぜなら、より大きい成形品の製造では、型を均一に充填するために、暫くの間低い粘度を有することが必要とされるからである。
【0026】
実施例1
70gのBaygal(登録商標) K 55(Bayer MaterialScience AG製のポリエーテルポリオール;OH価:385±15mgKOH/g;25℃での粘度:600±50mPas)を、65.3gのBaymidur(登録商標) K 88(Bayer MaterialScience AGの製品、ジフェニルメタンジイソシアネートとポリフェニレンポリメチレンポリイソシアネートの混合物;NCO含量:31.5±0.5重量%;25℃での粘度:90±20mPas)と一緒に室温で撹拌し、減圧下で脱気した。この溶液をシート型に注入し、室温で1時間保管した。次いで試料を80℃でベークした。ゲル化時間は約70分、脱型時間は2時間であった。
試験片は、76ショアD硬度を有していた。
成分を混合してから30分後の25℃での粘度は、1540mPasであった。
【0027】
実施例2
70gのBaygal(登録商標) K 55(Bayer MaterialScience AG製のポリエーテルポリオール;OH価:385±15mgKOH/g;25℃での粘度:600±50mPas)を、63gのBaymidur(登録商標) VP.KU 3-5009(Bayer MaterialScience AGの製品、ジフェニルメタンジイソシアネートとポリフェニレンポリメチレンポリイソシアネートの混合物;NCO含量:31.5〜33.5重量%;25℃での粘度:15〜30mPas)と一緒に室温で撹拌し、減圧下で脱気した。この溶液をシート型に注入し、室温で1時間保管した。次いで試料を80℃でベークした。脱型時間は2時間であった。
試験片は、76ショアD硬度を有していた。
成分を混合してから30分後の25℃での粘度は、974mPasであった。
【0028】
比較例3
180gのLarit RIM 135(L-135i)注入樹脂(Lange+Ritterの製品)を、60gのLarit RIMH 137硬化剤(Lange+Ritterの製品)と一緒に室温で撹拌し、減圧下で脱気した。この溶液をシート型に注入し、室温で1時間保管した。次いで試料を80℃でベークした。脱型時間は12時間であった。
試験片は、76ショアD硬度を有していた。
【0029】
ポリウレタン系は、有意により短い時間で脱型することができた。ポリウレタン系のより短い脱型時間によって、生産性はより高くなる。なぜなら、成形品が型を占有する時間が著しく短くなり、その結果、より多くの成形品が製造できるからである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
風力発電プラント用回転翼の製造における層状構造物の使用であって、層状構造物が、
a)離型剤層、
b)任意にゲルコート層、
c)プラスチック材料で処理された繊維層、
d)任意にスペーサー層、
e)プラスチック材料を含む繊維層、
f)任意にプラスチックフィルム
を有し、プラスチック材料としてポリウレタンが使用されていることを特徴とする使用。
【請求項2】
風力発電プラント用回転翼であって、回転翼が、
a)離型剤層、
b)任意にゲルコート層、
c)プラスチック材料で処理された繊維層、
d)任意にスペーサー層、
e)プラスチック材料を含む繊維層、
f)任意にプラスチックフィルム
を有する層状構造物から少なくとも部分的になるケーシングを含んでなり、プラスチック材料としてポリウレタンが使用されていることを特徴とする回転翼。
【請求項3】
回転翼が、
a)離型剤層、
b)任意にゲルコート層、
c)プラスチック材料で処理された繊維層、
d)任意にスペーサー層、
e)プラスチック材料を含む繊維層、
f)任意にプラスチックフィルム
を有する層状構造物から少なくとも部分的になるケーシングを含んでなる、請求項2に記載の風力発電プラント用回転翼の製造方法であって、繊維層を、プラスチック材料としてのポリウレタンを調製するための反応混合物で処理することを特徴とする方法。
【請求項4】
反応混合物が、イソシアネートとして、ジフェニルメタンジイソシアネートおよび/または25重量%超のNCO含量を有するポリフェニレンポリメチレンポリイソシアネートを含有することを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
反応混合物が、イソシアネートに対して反応性である少なくとも2個の水素原子を有する化合物として、OH基の少なくとも60%が第二級OH基であり、200〜1830mgKOH/gのOH価を有するポリエーテルポリオールを含有することを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
反応混合物を、20〜80℃の温度で繊維層に適用することを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項7】
反応混合物を、40〜160℃の温度で硬化することを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項8】
反応混合物が、混合してから30分後に、5000mPas以下の粘度を有することを特徴とする、請求項3に記載の方法。

【公表番号】特表2013−513748(P2013−513748A)
【公表日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−542497(P2012−542497)
【出願日】平成22年12月6日(2010.12.6)
【国際出願番号】PCT/EP2010/068992
【国際公開番号】WO2011/069975
【国際公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【出願人】(512137348)バイエル・インテレクチュアル・プロパティ・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング (91)
【氏名又は名称原語表記】Bayer Intellectual Property GmbH
【Fターム(参考)】