説明

風力発電装置

【課題】複数のブレードに付着した水滴を飛散させる。
【解決手段】複数のブレード43を垂直回転軸41の外周面に沿って略等角度間隔で取り付けた垂直軸型風車40を用いて発電機20により発電を行なう風力発電装置10において、複数のブレード43の近傍に設置され、複数のブレード43が水濡れしたか否かを検出する水濡れセンサ60と、水濡れセンサ60で水濡れを検出したときに、振動を発生させて、この振動を複数のブレード43に加振して複数のブレード43に付着した水滴を飛散させる加振機50と、を備えたことを特徴とする風力発電装置10を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のブレードを回転軸の外周面に沿って略等角度間隔で取り付けた風車を用いて発電機により発電を行なう風力発電装置において、複数のブレードが海水や雨水などにより水濡れしたときに、複数のブレードに付着した水滴を飛散させることができる風力発電装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
最近、地球温暖化対策に伴って、太陽エネルギー,バイオエネルギー,風力など各種の自然エネルギーを利用して発電を行う発電装置が盛んに開発されているが、自然エネルギーのうちで風力を利用した風力発電装置がコスト的に安価であり、且つ、風力発電装置の設置場所は地上だけでなく、洋上(海上)での設置も可能であることから見直されている。
【0003】
この種の風力発電装置は、風車の回転軸が水平に設けられた水平軸型風車、又は、風車の回転軸が垂直に設けられた垂直軸型風車のいずれか一方を適用しているが、風の方向により発電の可否が左右される水平軸型風車に対して、風向きに関係なく微風から強風に亘って発電できる垂直軸型風車が注目されている。
【0004】
更に、風力発電装置を浮体上に設置して洋上で浮かせる場合に、垂直軸型風車の垂直回転軸の下方に発電機を連結して重心位置を低く設定できるので、垂直軸型風車の方が浮体全体の安定性を高める点で有利である。
【0005】
上記した垂直軸型風車を適用した風力発電用の風車がある。(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
この特許文献1に開示された風力発電用の風車は、ここでの図示を省略するものの、複数のブレードが垂直回転軸から放射状に延出させた支持ストラットを介して円周方向に沿って略等角度間隔で取り付けられており、この風車はコンパクトな構造であるために、一般家庭用やビル用として設けられる他に、海上に設置されたブイなどに設けることが可能である旨が開示されている。
【0007】
一方、海岸部に設置された風車や洋上風車では海水に含まれる塩分が複数のブレードに付着し、この塩分によって複数のブレードが腐食すると共に、複数のブレードの絶縁耐力が低下するので、一定の使用後に複数のブレードを洗浄できるブレード洗浄装置付き風車がある(例えば、特許文献2参照)。
【0008】
この特許文献2に開示されたブレード洗浄装置付き風車では、ここでの図示を省略するものの、タワーの上方に水平軸型風車が取り付けられており、水平軸型風車に取り付けられたプロペラ状の複数のブレードに対して1枚のブレードの軸回りを環状に配管して、タンクからポンプを介して吸い上げた洗浄液を配管に形成した複数のノズルからブレードに向けて噴出させる旨が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2004−108330号公報
【特許文献2】特開2008−309098号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、上記した特許文献1に開示された風力発電用の風車を、例えば、海上に設置されたブイなどに設けた際に、海上で波の波高が高いときに、波が複数のブレードにかかってしまうために、前述したように、海水に含まれる塩分が複数のブレードに付着し、この塩分によって複数のブレードが腐食すると共に、複数のブレードの絶縁耐力が低下するが、これに対する対策については何等の開示がなされていない。
【0011】
一方、上記した特許文献2に開示されたブレード洗浄装置付き風車では、この風車を海岸部や洋上に設置したときに海水に含まれる塩分が複数のブレードに付着しても、洗浄液でブレードを洗浄することができるものの、配管だけでなくタンクやポンプの設置が必要であり、且つ、洗浄液を補充するなどの保守も必要であるので、ブレード洗浄装置付き風車及び保守費用が高価になってしまうなどの問題がある。
【0012】
そこで、複数のブレードを回転軸の外周面に沿って略等角度間隔で取り付けた風車を用いて発電機により発電を行なう風力発電装置において、複数のブレードが海水や雨水などにより水濡れしたときに、洗浄液を用いることなく、複数のブレードに付着した水滴を飛散させることができる風力発電装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、第1の発明は、複数のブレードを回転軸の外周面に沿って略等角度間隔で取り付けた風車を用いて発電機により発電を行なう風力発電装置において、
前記複数のブレードの近傍に設置され、前記複数のブレードが水濡れしたか否かを検出する水濡れセンサと、
前記水濡れセンサで前記水濡れを検出したときに、振動を発生させて、この振動を前記複数のブレードに加振して該複数のブレードに付着した水滴を飛散させる加振機と、
を備えたことを特徴とする風力発電装置である。
【0014】
また、第2の発明は、複数のブレードを回転軸の外周面に沿って略等角度間隔で取り付けた風車を用いて発電機により発電を行なう風力発電装置において、
前記複数のブレードが水濡れした場合に対応して設けられ、回転可能に支持した回転軸に固着させた偏心錘の回転により振動を発生させて、この振動を前記複数のブレードに加振して該複数のブレードに付着した水滴を飛散させる加振機と、
前記風車の回転軸と前記発電機の回転軸とを選択的に連結する第1の電磁クラッチと、
前記風車の回転軸と前記加振機の回転軸とを選択的に連結する第2の電磁クラッチと、
前記複数のブレードの近傍に設置され、前記複数のブレードが水濡れしたか否かを検出する水濡れセンサと、
前記水濡れセンサで水濡れなしを検出したときに、前記風車の回転軸と前記発電機の回転軸とを連結するように前記第1の電磁クラッチをONさせ、且つ、前記風車の回転軸と前記加振機の回転軸とを切り離すように前記第2の電磁クラッチをOFFさせ、
一方、前記水濡れセンサで水濡れ有りを検出したときに、前記風車の回転軸と前記発電機の回転軸とを切り離すように前記第1の電磁クラッチをOFFさせ、且つ、前記風車の回転軸と前記加振機の回転軸とを連結するように前記第2の電磁クラッチをONさせる制御部と、
を備えたことを特徴とする風力発電装置である。
【0015】
また、第3の発明は、複数のブレードを回転軸の外周面に沿って略等角度間隔で取り付けた風車を用いて発電機により発電を行なう風力発電装置において、
前記複数のブレードが水濡れした場合に対応して設けられ、回転可能に支持した回転軸に固着させた偏心錘の回転により振動を発生させて、この振動を前記複数のブレードに加振して該複数のブレードに付着した水滴を飛散させる加振機と、
前記風車の回転軸と前記発電機の回転軸とを選択的に連結する第1の電磁クラッチと、
前記風車の回転軸と前記加振機の回転軸とを選択的に連結する第2の電磁クラッチと、
前記複数のブレードの近傍に設置され、前記複数のブレードが水濡れしたか否かを検出する水濡れセンサと、
前記水濡れセンサで水濡れなしを検出したときに、前記風車の回転軸と前記発電機の回転軸とを連結するように前記第1の電磁クラッチをONさせ、且つ、前記風車の回転軸と前記加振機の回転軸とを切り離すように前記第2の電磁クラッチをOFFさせ、
一方、前記水濡れセンサで水濡れ有りを検出したときに、前記第1の電磁クラッチをONさせ且つ前記第2の電磁クラッチをOFFさせる第1の所定期間と、前記第1の電磁クラッチをOFFさせ且つ前記第2の電磁クラッチをONさせる第2の所定期間とを交互に繰り返すように制御する制御部と、
を備えたことを特徴とする風力発電装置である。
【発明の効果】
【0016】
上記した第1の発明の風力発電装置によると、複数のブレードを回転軸の外周面に沿って略等角度間隔で取り付けた風車を用いて発電機により発電を行なう際に、複数のブレードが海水や雨水などにより水濡れしたことを水濡れセンサにより検出したときに、加振機からの振動で複数のブレードを加振させて複数のブレードに付着した水滴を飛散させているので、第1の発明の風力発電装置を例えば洋上の浮体上に設置した場合に海水に含まれる塩分によって複数のブレードが腐食するのを防止できると共に、複数のブレードの絶縁耐力の低下も発生せず、更に、雨水などに対しても複数のブレードの耐候性を向上させることができる。
【0017】
また、上記した第2の発明の風力発電装置によると、複数のブレードを回転軸の外周面に沿って略等角度間隔で取り付けた風車を用いて発電機により発電を行なう際に、複数のブレードが水濡れした場合に対応して設けられた加振機と、風車の回転軸と発電機の回転軸とを選択的に連結する第1の電磁クラッチと、風車の回転軸と加振機の回転軸とを選択的に連結する第2の電磁クラッチと、複数のブレードが水濡れしたか否かを検出する水濡れセンサと、制御部とを備え、とくに、制御部は、水濡れセンサで水濡れなしを検出したときに、風車の回転軸と発電機の回転軸とを連結するように第1の電磁クラッチをONさせ、且つ、風車の回転軸と加振機の回転軸とを切り離すように第2の電磁クラッチをOFFさせ、一方、水濡れセンサで水濡れ有りを検出したときに、風車の回転軸と発電機の回転軸とを切り離すように第1の電磁クラッチをOFFさせ、且つ、風車の回転軸と加振機の回転軸とを連結するように第2の電磁クラッチをONさせているので、水濡れセンサで水濡れなしを検出したときに、風力を受けて複数のブレードの回転により発電機を回転させて電力が得られる一方、水濡れセンサで水濡れ有りを検出したときに、発電機を回転させずに、加振機からの振動で複数のブレードを加振させて複数のブレードに付着した水滴を飛散させているので、第2の発明の風力発電装置を例えば洋上の浮体上に設置した場合に海水に含まれる塩分によって複数のブレードが腐食するのを防止できると共に、複数のブレードの絶縁耐力の低下も発生せず、更に、雨水などに対しても複数のブレードの耐候性を向上させることができる。
【0018】
また、上記した第3の発明の風力発電装置によると、複数のブレードを回転軸の外周面に沿って略等角度間隔で取り付けた風車を用いて発電機により発電を行なう際に、複数のブレードが水濡れした場合に対応して設けられた加振機と、風車の回転軸と発電機の回転軸とを選択的に連結する第1の電磁クラッチと、風車の回転軸と加振機の回転軸とを選択的に連結する第2の電磁クラッチと、複数のブレードが水濡れしたか否かを検出する水濡れセンサと、制御部とを備え、とくに、制御部は、水濡れセンサで水濡れなしを検出したときに、風車の回転軸と発電機の回転軸とを連結するように第1の電磁クラッチをONさせ、且つ、風車の回転軸と加振機の回転軸とを切り離すように第2の電磁クラッチをOFFさせ、一方、水濡れセンサで水濡れ有りを検出したときに、第1の電磁クラッチをONさせ且つ第2の電磁クラッチをOFFさせる第1の所定期間と、第1の電磁クラッチをOFFさせ且つ第2の電磁クラッチをONさせる第2の所定期間とを交互に繰り返すように制御しているので、水濡れ有りを連続して検出している間に加振機で間欠的に発生させた振動により複数のブレードに付着した海水や雨水などの水滴を飛散させることができる共に、加振機で振動を発生させていないときに発電機で発電できるので発電効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係る実施例1の風力発電装置の使用形態を示した外観斜視図である。
【図2】本発明に係る実施例1の風力発電装置の構成を断面して示した構成図である。
【図3】本発明に係る実施例1の風力発電装置において、図1に示した制御部を説明するための図である。
【図4】本発明に係る実施例1の風力発電装置における動作タイミングの一例を説明するための図である。
【図5】本発明に係る実施例1の風力発電装置における動作タイミングの他例を説明するための図である。
【図6】本発明に係る実施例2の風力発電装置の構成を断面して示した構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に本発明に係る風力発電装置の一実施例について図1〜図6を参照して、実施例1,実施例2の順に詳細に説明する。
【0021】
本発明に係る風力発電装置は、複数のブレードを回転軸の外周面に沿って略等角度間隔で取り付けた風車を用いて発電機により発電を行なう際に、複数のブレードが海水や雨水などにより水濡れしたことを水濡れセンサにより検出したときに、加振機からの振動で複数のブレードを加振させて複数のブレードに付着した水滴を飛散させるように構成されている。
【0022】
この際、実施例1では、垂直軸型風車を適用した風力発電装置を洋上に浮かせた浮体上に固定設置した例を示し、一方、実施例2では、水平軸型風車を適用した風力発電装置を海岸部に固定設置した例を示して以下説明するが、本発明に係る風力発電装置の設置場所は洋上や海岸部に限られるものでなく、適宜な地上に設置しても良いものである。
【実施例1】
【0023】
図1及び図2に示した如く、本発明に係る実施例1の風力発電装置10は、例えば洋上に浮かせた浮体11上に不図示のボルトなどにより固定設置されており、且つ、装置10の基台となるフレーム11に、発電機20と、制御部30と、垂直軸型風車40と、加振機50と、水濡れセンサ60とが取り付けられている。
【0024】
そして、実施例1の風力発電装置10では、通常時に風力を受けて垂直軸型風車40を回転させて発電機20により発電を行なうように構成されているが、水濡れセンサ60で水濡れを検出したときに水平軸型風車40のブレード43に付着した水滴を加振機50からの振動により飛散するように構成されている。
【0025】
ここで、実施例1の風力発電装置10の各構成部材について具体的に説明すると、上記したフレーム11は、剛性,耐候性,耐食性を有するアルミ合金などを用いて直方枠状に形成されており、底板11aと中板11bと天板11cとによって鉛直方向が区画化されている。
【0026】
そして、フレーム11の底板11aと中板11bとで区切られた内部の底板11a上に発電機20及び制御部30並びにバッテリ35(図3のみ図示)が取り付けられており、且つ、この区間は周囲の各側面が側面板12で覆われている。
【0027】
また、フレーム11の中板11bと天板11cとで区切られた内部に垂直軸型風車40が取り付けられており、且つ、この区間は周囲の各側面が開口されて風が通り抜けることができるようになっている。
【0028】
上記した垂直軸型風車40は、鉛直方向に垂設した垂直回転軸41の外周面の上下からそれぞれ放射状に延出させた上下のブレード支持アーム42にブレード43が垂直回転軸41の外周面に沿って略等角度間隔で合計4枚取り付けられている。
【0029】
この際、垂直軸型風車40の垂直回転軸41及びブレード支持アーム42並びにブレード43は、剛性,耐候性,耐食性を有するアルミ合金などを用いて各部材41〜43同士が溶接されている。
【0030】
また、垂直軸型風車40の垂直回転軸41の一端部となる下端部は、フレーム11の中板11bの上面に取り付けた軸受けホルダ44内の軸受け45(図2のみ図示)に嵌合した後に発電機20側に突出している。そして、発電機20の回転軸21と垂直軸型風車40の垂直回転軸41の下端部とを選択的に連結するための第1の電磁クラッチ(以下、発電機側電磁クラッチと記す)22が両回転軸21,41に取り付けられている。
【0031】
また、垂直軸型風車40の垂直回転軸41の他端部となる上端部は、フレーム11の天板11cの下面に取り付けた軸受けホルダ46(図2のみ図示)内の軸受け47(図2のみ図示)に嵌合した後に後に下記する加振機50側に突出している。
【0032】
上記した加振機50は、垂直軸型風車40に設けた複数のブレード43が海水や雨水などにより水濡れした場合に対応して、フレーム11の天板11cの上面側に設けられており、この加振機50で発生させた振動を複数のブレード43に加振する機能を備えている。
【0033】
即ち、加振機50では、略円筒状の軸受けホルダ51がフレーム11の天板11cの上面に取り付けられており、且つ、軸受けホルダ51は内部を凹カップ状に肉抜きした凹カップ部51aが形成されていると共に、後述する加振機側電磁クラッチ56の配線を外部に引き出すための開口部51bが外周の一部に形成されている。
【0034】
また、軸受けホルダ51の中心部に嵌め込まれた軸受け52(図2のみ図示)に回転軸53が回転自在に嵌合し、且つ、軸受けホルダ51の外側に突出した回転軸53の上端部にカラー54が固着されている。
【0035】
また、軸受けホルダ51の凹カップ部51a内で回転軸53の中間部位にこの回転軸53の回転に伴って振動を発生させるための偏心錘55が固着されている。この際、偏心錘55の回転に伴って発生する振動の大きさは、複数のブレード43に付着した水滴を振り落すことができるように偏心錘55の外形サイズが設定されている。
【0036】
そして、垂直軸型風車40の垂直回転軸41の上端部と加振機50の回転軸53の下端部とを選択的に連結するための第2の電磁クラッチ(以下、加振機側電磁クラッチと記す)56が両回転軸41,53に取り付けられている。
【0037】
更に、垂直軸型風車40に設けた複数のブレード43が海水や雨水などにより水濡れしたことを検出するための水濡れセンサ60がフレーム11の中板11bの外側に取り付けられているが、水濡れセンサ60は複数のブレード43の近傍に固定して取り付けることができる場所ならどこでもかまわない。
【0038】
上記した水濡れセンサ60は、ここでの図示を省略するものの、一対の検知電極と、これら一対の検知電極間に水滴が介在してリーク電流が流れた場合に所定レベルの水濡れ検出信号を出力する水濡れ検出素子とがケース内に設けられている。
【0039】
ここで、上記のように構成した本発明に係る実施例1の風力発電装置10において、図3に示した如く、発電機20と、発電機側電磁クラッチ22と、加振機側電磁クラッチ56と、水濡れセンサ60とが制御部30に接続されている。
【0040】
上記した制御部30は、水濡れセンサ60の検出結果に応じて発電機側電磁クラッチ22及び加振機側電磁クラッチ56をそれぞれON/OFFさせる第1,第2の電子スイッチ31,32と、第1,第2の電子スイッチ31,32の切り換えタイミングを必要に応じて間欠的に制御するタイマ33とを有している。
【0041】
更に、発電機20で得られた電力はバッテリ35に充電され、且つ、バッテリ35に充電した電力を制御部30に供給していると共に、不図示の海底ケーブル用の通信機などにも供給している。
【0042】
そして、図3及び図4に示した如く、実施例1における動作タイミングの一例として、制御部30は、水濡れセンサ60で検出した水濡れなしの検出信号を受信した場合に、第1の電子スイッチ31を端子a側に切り換えて発電機側電磁クラッチ22をONさせて、この発電機側電磁クラッチ22により発電機20の回転軸21と垂直軸型風車40の垂直回転軸41とを連結することで、風力を受けて複数のブレード43の回転により発電機20を回転させて電力を得ていると共に、第2の電子スイッチ32を端子b側に切り換えて加振機側電磁クラッチ56をOFFさせて、垂直軸型風車40の垂直回転軸41と加振機50の回転軸53とを切り離すことで、この回転軸53に固着した偏心錘55が回転を停止しているので、発電機20に偏心錘55による振動が付加されることはない。
【0043】
一方、制御部30は、水濡れセンサ60で検出した水濡れ有りの検出信号を受信した場合に、上記とは逆に、第1の電子スイッチ31を端子b側に切り換えて発電機側電磁クラッチ22をOFFさせて、この発電機側電磁クラッチ22により発電機20の回転軸21と垂直軸型風車40の垂直回転軸41とを切り離すことで、複数のブレード43の回転が垂直回転軸41を介して発電機20に伝達できずに発電機20は回転を停止するが、第2の電子スイッチ32を端子a側に切り換えて加振機側電磁クラッチ56をONさせて、垂直軸型風車40の垂直回転軸41と加振機50の回転軸53とを連結することで、複数のブレード43の回転に伴って垂直回転軸41を介して加振機50の回転軸53が回転し、この回転軸53に固着した偏心錘55の回転により振動が発生する。
【0044】
そして、偏心錘55の回転で生じた振動により複数のブレード43に付着した海水や雨水などの水滴を飛散させることができるので、海水に含まれる塩分によって複数のブレード43が腐食するのを防止できると共に、複数のブレード43の絶縁耐力の低下も発生せず、更に、雨水などに対しても複数のブレード43の耐候性を向上させることができる。
【0045】
この際、水濡れセンサ60で水濡れ有りを検出したときに、水濡れ有りの期間が長時間に亘る場合に、図4に示した実施例1における一例のタイミング動作では、この水濡れ有りの期間に発電機20による発電が停止されるので発電効率が悪くなるために、これを解決した実施例1における他例のタイミング動作を図5に示す。
【0046】
図5に示した如く、実施例1における他例のタイミング動作では、水濡れセンサ60で水濡れなしと検出したときに図4に示した実施例1における一例のタイミング動作と同じであるが、水濡れセンサ60で水濡れ有りを検出したときに一例のタイミング動作と異なって、制御部30は、水濡れ有りを検出した検出開始時点でタイマ33を作動させる。
【0047】
そして、水濡れ有り検出開始時点からタイマ33で計測した予め設定した第1の所定期間H1までの間は、発電機側電磁クラッチ22をONさせると共に加振機側電磁クラッチ56をOFFさせ、この後、第1の所定期間H1を経過して予め設定した第2の所定期間H2までの間で、発電機側電磁クラッチ22をOFFさせると共に加振機側電磁クラッチ56をONさせ、以下、水濡れ有りを連続して検出している間では第1の所定期間H1における上記動作と第2の所定期間H2における上記動作とを交互に繰り返している。
【0048】
これにより、水濡れ有りを連続して検出している間に加振機50で間欠的に発生させた振動により複数のブレード43に付着した海水や雨水などの水滴を飛散させることができる共に、加振機50で振動を発生させていないときに発電機20で発電できるので発電効率を向上させることができる。
【実施例2】
【0049】
図6に示した如く、本発明に係る実施例2の風力発電装置110は、例えば海岸部に設置されており、且つ、装置110の基台となる支柱111に、発電機120と、制御部130と、水平軸型風車140と、加振機150と、水濡れセンサ160とが取り付けられている。
【0050】
そして、実施例2の風力発電装置110では、通常時に風力を受けて水平軸型風車140を回転させて発電機120により発電を行なうように構成されているが、水濡れセンサ160で水濡れを検出したときに水平軸型風車140のブレード143に付着した水滴を加振機150からの振動により飛散するように構成されている。
【0051】
ここで、実施例2の風力発電装置110の各構成部材について具体的に説明すると、上記した支柱111は、剛性,耐候性,耐食性を有するアルミ合金などを用いて底板111aと天板111b,111cとの間の高さが高く形成されており、且つ、天板111b,111cは後述する発電機120側と加振機150側とに二股に分かれて形成されている。
【0052】
そして、支柱111の一方の天板111b上に発電機120及び水平軸型風車140側の軸受けホルダ144が取り付けられていると共に、支柱111の底板111a上に制御部130が取り付けられている。
【0053】
また、支柱111の一方の天板111bと他方の天板111cとの間に水平軸型風車140が取り付けられている。
【0054】
上記した水平軸型風車140は、水平方向に横設した水平回転軸141に固着させたカラー142からそれぞれ放射状に延出させたブレード143が水平回転軸141の外周面に沿って略等角度間隔で合計3枚取り付けられている。
【0055】
この際、水平軸型風車140の水平回転軸141及びカラー142並びにブレード143は、剛性,耐候性,耐食性を有するアルミ合金などを用いて各部材141〜143同士が溶接されている。
【0056】
また、水平軸型風車140の水平回転軸141の一端部となる右端部は、支柱111の一方の天板111b上に取り付けた軸受けホルダ144内の軸受け145に嵌合した後に発電機120側に突出している。そして、発電機120の回転軸121と水平軸型風車140の水平回転軸141の右端部とを選択的に連結するための第1の電磁クラッチ(以下、発電機側電磁クラッチと記す)122が両回転軸121,141に取り付けられている。
【0057】
また、水平軸型風車140の水平回転軸141の他端部となる左端部は、支柱111の他方の天板111c上に設けた下記する加振機150側に突出している。
【0058】
上記した加振機150は、水平軸型風車140に設けた複数のブレード143が海水や雨水などにより水濡れした場合に対応して、支柱111の他方の天板111cの上面側に設けられており、この加振機150で発生させた振動を複数のブレード143に加振する機能を備えている。
【0059】
即ち、加振機150では、軸受けホルダ151が支柱111の他方の天板111c上に取り付けられており、且つ、軸受けホルダ151に嵌め込まれた軸受け152に水平回転軸153が回転自在に嵌合し、且つ、軸受けホルダ151の外側に突出した回転軸153の左端部にカラー154が固着されている。
【0060】
また、加振機150の回転軸153の中間部位にこの回転軸153の回転に伴って振動を発生させるための偏心錘155が固着されている。
【0061】
そして、水平軸型風車140の水平回転軸141の左端部と加振機150の回転軸153の右端部とを選択的に連結するための第2の電磁クラッチ(以下、加振機側電磁クラッチと記す)156が両回転軸141,153に取り付けられている。
【0062】
更に、水平軸型風車140に設けた複数のブレード143が海水や雨水などにより水濡れしたことを検出するための水濡れセンサ160が支柱111の外壁に取り付けられているが、水濡れセンサ160は複数のブレード143の近傍に固定して取り付けることができる場所ならどこでもかまわない。
【0063】
ここで、上記のように構成した本発明に係る実施例2の風力発電装置110でも、実施例1と同様に、発電機120と、発電機側電磁クラッチ122と、加振機側電磁クラッチ156と、水濡れセンサ160とが制御部130に接続されている。
【0064】
そして、実施例1で説明したと同様に、制御部130は、水濡れセンサ160の検出結果に応じて発電機側電磁クラッチ122及び加振機側電磁クラッチ156をそれぞれON/OFFさせることで、先に図4を用いて説明した一例のタイミング動作、又は、図5を用いて説明した他例のタイミング動作を実施例1と略同様に行なうことができ、且つ、実施例1と略同様の効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0065】
10…実施例1の風力発電装置、
11…フレーム、11a…底板、11b…中板、11c…天板、12…側面板、
20…発電機、21…回転軸、22…第1の電磁クラッチ(発電機側電磁クラッチ)、
30…制御部、31,32…第1,第2の電子スイッチ、33…タイマ、
35…バッテリ、
40…垂直軸型風車、
41…垂直回転軸、42…ブレード支持アーム、43…ブレード、
44…軸受けホルダ、45…軸受け、46…軸受けホルダ、47…軸受け、
50…加振機、51…軸受けホルダ、51a…凹カップ部、51b…開口部、
52…軸受け、53…回転軸、54…カラー、55…偏心錘、
56…第2の電磁クラッチ(加振機側電磁クラッチ)、60…水濡れセンサ、
110…実施例2の風力発電装置、
111…支柱、111a…底板、111b…一方の天板、111c…他方の天板、
120…発電機、121…回転軸、
122…第1の電磁クラッチ(発電機側電磁クラッチ)、
130…制御部、
140…水平軸型風車、
141…水平回転軸、142…カラー、143…ブレード、
144…軸受けホルダ、145…軸受け、
150…加振機、151…軸受けホルダ、152…軸受け、153…回転軸、
154…カラー、155…偏心錘、
156…第2の電磁クラッチ(加振機側電磁クラッチ)、160…水濡れセンサ、
H1…第1の所定期間、H2…第2の所定期間。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のブレードを回転軸の外周面に沿って略等角度間隔で取り付けた風車を用いて発電機により発電を行なう風力発電装置において、
前記複数のブレードの近傍に設置され、前記複数のブレードが水濡れしたか否かを検出する水濡れセンサと、
前記水濡れセンサで前記水濡れを検出したときに、振動を発生させて、この振動を前記複数のブレードに加振して該複数のブレードに付着した水滴を飛散させる加振機と、
を備えたことを特徴とする風力発電装置。
【請求項2】
複数のブレードを回転軸の外周面に沿って略等角度間隔で取り付けた風車を用いて発電機により発電を行なう風力発電装置において、
前記複数のブレードが水濡れした場合に対応して設けられ、回転可能に支持した回転軸に固着させた偏心錘の回転により振動を発生させて、この振動を前記複数のブレードに加振して該複数のブレードに付着した水滴を飛散させる加振機と、
前記風車の回転軸と前記発電機の回転軸とを選択的に連結する第1の電磁クラッチと、
前記風車の回転軸と前記加振機の回転軸とを選択的に連結する第2の電磁クラッチと、
前記複数のブレードの近傍に設置され、前記複数のブレードが水濡れしたか否かを検出する水濡れセンサと、
前記水濡れセンサで水濡れなしを検出したときに、前記風車の回転軸と前記発電機の回転軸とを連結するように前記第1の電磁クラッチをONさせ、且つ、前記風車の回転軸と前記加振機の回転軸とを切り離すように前記第2の電磁クラッチをOFFさせ、
一方、前記水濡れセンサで水濡れ有りを検出したときに、前記風車の回転軸と前記発電機の回転軸とを切り離すように前記第1の電磁クラッチをOFFさせ、且つ、前記風車の回転軸と前記加振機の回転軸とを連結するように前記第2の電磁クラッチをONさせる制御部と、
を備えたことを特徴とする風力発電装置。
【請求項3】
複数のブレードを回転軸の外周面に沿って略等角度間隔で取り付けた風車を用いて発電機により発電を行なう風力発電装置において、
前記複数のブレードが水濡れした場合に対応して設けられ、回転可能に支持した回転軸に固着させた偏心錘の回転により振動を発生させて、この振動を前記複数のブレードに加振して該複数のブレードに付着した水滴を飛散させる加振機と、
前記風車の回転軸と前記発電機の回転軸とを選択的に連結する第1の電磁クラッチと、
前記風車の回転軸と前記加振機の回転軸とを選択的に連結する第2の電磁クラッチと、
前記複数のブレードの近傍に設置され、前記複数のブレードが水濡れしたか否かを検出する水濡れセンサと、
前記水濡れセンサで水濡れなしを検出したときに、前記風車の回転軸と前記発電機の回転軸とを連結するように前記第1の電磁クラッチをONさせ、且つ、前記風車の回転軸と前記加振機の回転軸とを切り離すように前記第2の電磁クラッチをOFFさせ、
一方、前記水濡れセンサで水濡れ有りを検出したときに、前記第1の電磁クラッチをONさせ且つ前記第2の電磁クラッチをOFFさせる第1の所定期間と、前記第1の電磁クラッチをOFFさせ且つ前記第2の電磁クラッチをONさせる第2の所定期間とを交互に繰り返すように制御する制御部と、
を備えたことを特徴とする風力発電装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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