説明

風力発電設備のパイロンのパイロンセグメントプレキャストコンクリート部材の製造方法、及びコンクリート部材を製造するための型枠ユニット

【課題】風力発電設備のパイロンのパイロンセグメントプレキャストコンクリート部材を製造する方法を提供すること。
【解決手段】型枠が準備され、当該型枠にコンクリートが充填される。低粘度材料がプレキャストコンクリート部材のフランジ部に平準化層として施される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、風力発電設備のパイロン(タワー)のパイロンセグメントプレキャスト(既成形)コンクリート部材の製造方法、当該製造方法によって製造されたプレキャストコンクリート部材、型枠上に取り付ける型枠カバー、プレキャストコンクリート部材を製造するための型枠ユニット、及び低粘度樹脂の使用に関する。また、本発明は、風力発電設備に関する。
【背景技術】
【0002】
組み立て式(プレキャスト)コンクリート部材を用いて(特に風力発電設備用の)高塔又はパイロンを建造する際、製造公差のために、積み重ねるプレキャストコンクリート部材を最適に組み合わせられない場合がある。コンクリート建造において、このような公差の大きさは±10mmである。
【0003】
背景技術の文献として、特許文献1が挙げられる。
【0004】
特許文献2は、プレキャストコンクリート部材を製造する方法を開示する。コンクリートは、平坦な下面を形成するための平坦な底面を有する成形型に流し込まれる。コンクリートが所定の最低強度に達した後、補正層が、下面と対向するプレキャストコンクリート部材の接合面に施される。補正層が所定の最低強度に達するとすぐに、プレキャストコンクリート部材は、正確な水平面上に載置され、上面の補正層が平面平行に除去される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】独国特許公報19841047号
【特許文献2】国際公開2009/121581号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特に、超高層タワー又はパイロンに関して、それら自体に顕出する製造公差に加えて、一般的に、負荷の負担(ないし吸収 Lastabtrag)には全フランジ部表面が必要とされる。しかしながら、非平坦性のために(例えば、製造公差の結果として)、例えば隆起した小さな面としてフランジ部(継ぎ目面)のその他の部分から突出した少数の表面部分に負荷の力線(の流れ)が集中して掛かる場合がある。小さすぎる表面部分への負荷の集中は、必然的にコンクリート剥離や欠損等の損傷を発生させる。そのようなダメージには、ダメージを受けた部分(セグメント)の交換を必要とする構造的ダメージも存在し、あらゆる経済的及び技術的問題が発生する。これについては、解体及び再建造用クレーン、作業員及び、相当長時間継続する風力発電設備の発電機能停止が挙げられるであろう。そのような補修は、ケーシングチューブ内に圧入された引張ワイヤを有するパイロンの場合、特に複雑であり、かつ費用が高くつく。
【0007】
このような問題を避けるため、プレキャストコンクリート部材パイロンを建造する際、セグメントを配置する前に、建造現場において、平準化層(ないし補償層 Ausgleichsschicht)をプレキャストコンクリート部材の各フランジ部に適用することができる。平準化層は硬化しなければならず、特に、平準化層の材料に依存する最低限の気象学的要求に従わなければならない。これらの最低限の要求が満たされないのであれば、又は平準化層が不適切にもしくは不注意に適用されるのであれば、ひびが生じたり、平準化層が不適切に設置されたりするおそれがある。
【0008】
本発明の目的は、高精度を維持しながらもプレキャストコンクリート部材からパイロンをより容易にかつ迅速に建造することが可能な風力発電設備のパイロンのパイロンセグメントプレキャストコンクリート部材を製造する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的は、請求項1に記載の方法、請求項7に記載の型枠カバー、請求項11に記載の型枠ユニット、及び請求項14に記載の風力発電設備によって達成される。
【0010】
風力発電設備のパイロンのパイロンセグメントプレキャストコンクリート部材、特にパイロンセグメント、の製造方法が提供される。このとき、平準化層用の低粘度材料がプレキャストコンクリート部材のフランジ部(継ぎ目面)に施される。コンクリートが所定の最低強度に達すると、それを適宜施行することができる。
【発明の効果】
【0011】
上記視点において、本発明は、パイロン建設の間、建設現場での継ぎ目(接合部)の「モルタル施工(グラウチング Vermoerteln)」作業を製造工場建屋内に移すことができるという知見に基づいている。また、コンクリート建設における通常の約10mmの精度ではなく、0.1mmの公差で作業することができる。これは100倍の精度向上である。同時に、例えば、充填材を混合する際の欠陥を大幅に減少させることによって高い製造信頼度が達成されると共に、建設現場で樹脂を処理する際の固有の健康リスクもこの方法によって回避される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、第1実施例におけるプレキャストコンクリート部材を製造する方法のフローチャートを示す。
【図2】図2は、第2実施例におけるパイロンセグメントプレキャストコンクリート部材製造時の概略断面図を示す。
【図3】図3は、第3実施例における型枠カバーの斜視図を示す。
【図4】図4は、第4実施例における型枠カバー及びシールの使用を示す。
【図5】図5は、第5実施例におけるシールの使用を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の一視点において、平準化層(ないし補償層 Ausgleichsschicht)の厚さは10mm以下であり、好ましくは5mm以下である。コンクリート建造における通常の公差範囲内のばらつき(比較的大きな非平坦性)さえも補償(ないし吸収)することができる。
【0014】
本発明の別の一視点において、型枠上に型枠カバーを載置することによって型枠はふさがれ、平準化層用の材料が型枠カバーの少なくとも1つの充填口から所定の圧力で供給される。これにより、明確に区画された平準化層が形成されるように、プレキャストコンクリート部材のフランジ部上に、樹脂が充填される空洞を明確に区画することができる。
【0015】
フランジ部の所定の領域、例えば、ケーシングチューブ用の開口又は接合点のためのねじ切りされたブッシュを平準化層から(平準化層が流入しないよう)自由に確保するために、型枠カバーの取り付け前に、フランジ部の所定の領域は所定の厚さのシールで覆われ、このシールは型枠カバーによって押さえつけられる。
【0016】
建築工学の法則に基づけば、平準化層は、コンクリートの弾性率の少なくとも70%に相当する弾性率(E-Modul)を有する。所定の層厚を超えないのであれば、弾性率が5,000MPa〜10,000MPaの範囲にあるときに、平準化層の要求される機械的性質を達成できることは驚くべきことである。
【0017】
プレキャストコンクリート部材相互の相対的移動を伴うことなく、発生したねじり力を拡散するためには、所定の面粗度(表面粗度)が要求される。面粗度は、好ましくは60μm〜150μmの範囲である。
【0018】
また、本発明は、プレキャストコンクリート部材の製造の際、型枠上に取り付ける型枠カバーに関する。型枠カバー(Schalungsdeckel)は、カバーの半径方向に所定の幅及び所定の深さを有する少なくとも1つの凹部を有する下面を備える。型枠カバーは、平準化層の材料を注入するための少なくとも1つの充填口も有する。
【0019】
正確に画定された平準化層を再現性よく実施するために、型枠カバーは、型枠カバーの下面に設けられた凹部を有し、当該凹部は、型枠方向に面し、型枠カバーの半径方向に所定の幅を有すると共に所定の深さを有し、並びに平準化層の材料用の少なくとも1つの充填口を有する。
【0020】
この点、型枠カバーの半径方向の幅は、平準化層が設けられるフランジ部の幅に対応させることができる。平準化層の厚さも(凹部の)当該所定の深さによって正確に画定することができる。型枠カバーが、フランジ部が形成される型枠の上側開口を完全に覆うので、平準化層の材料用の少なくとも1つの充填口を備えることができる。十分な量の材料が充填口から供給されたことを確認するために、平準化層の材料用の少なくとも1つの排出口が備えられる。平準化層の材料が排出口を通じて型枠カバーから排出されるとき、平準化層の材料は十分に分配・供給されている。また、型枠に流入している材料によって置換された空気が排出口から排出され、平準化層の材料によって押し出された空気を逃がすことができるので空隙又は空洞(すなわち材料中の不所望な空気混入)を確実に回避することができる。
【0021】
型枠カバー、型枠及び周辺領域の不所望な付着物(汚染物)を避けるため、充填口及び/又は排出口はホース用の接続管部として構成されている。したがって、ホースが接続管部に接続され、平準化層の材料がきれいに(汚れなく)供給されると共に、ホースを通じて排出される。
【0022】
特に好ましくは、型枠カバーは上面に(垂直に)立設された側壁、及び側壁に接続されたカバープレートを有する。このように設けられた箱形状は、型枠カバーに高水準の曲げ剛性(強さ)を与え、これにより高精度の形状に寄与する。
【0023】
特に好ましい一発展形態において、曲げ剛性をさらに増大させ、これにより形状に関する安定性をさらに増大させる補強手段(複数)が、型枠カバーの上面とカバープレートの下面との間の側壁に実質的に平行に配される。
【0024】
また、本発明は、上述の型枠カバーと共に使用するシール(マスク)に関する。シールは、可撓性部材(変形可能部材 verformbarer Teil)と非可撓性部材(非変形可能部材 nicht verformbarer Teil)の2つの部材からなる構成を含む。可撓性部材は、プレキャストコンクリート部材のシールする位置上に配され、非可撓性部材は、所定の高さを得るために可撓性部材の上に載置される。
【0025】
シールは、所定の理由によって開放(露出)状態に保持する必要があるフランジ部の領域を平準化層によって覆われないように保持することができる。したがって、平準化層の低粘度材料がその位置に流入しないように、型枠カバーはシールを押さえる付けることができ、シールをコンクリートに対して確実に押圧することができる。
【0026】
特に好ましい一実施形態において、シールの発展形態は、可撓性部材が環状形状を有し、非可撓性部材が置かれる所定幅の接触面を備える。この実施形態は、平準化層が施される際、プレキャストコンクリート部材において、プレキャストコンクリート部材間に通ずるケーシングチューブをシールするために使用されるシールの使用を可能にする。
【0027】
また、本発明は、プレキャストコンクリート部材を製造するための型枠ユニットに関する。型枠ユニットは、コンクリートを受容する型枠、上述の型枠カバー及び上述のシールを有する。
【0028】
また、本発明は、プレキャストコンクリート部材の製造時に平準化層を製造するための低粘度樹脂の使用に関し、樹脂はプレキャストコンクリート部材のフランジ部に施される。このようにして、建設現場でのモルタル接合(モルタル継ぎ目)の製造に代替可能な平準化層は、プレキャストコンクリート部材の製造時に、制御された条件下の工場で製造することができる。
【0029】
また、本発明は、本発明の方法によって製造された又は製造することができる複数のプレキャストコンクリート部材を備えるパイロン(タワー)を有する風力発電設備に関する。このようなパイロンの建設は、天候にかかわりなく、簡単かつ短時間に実施されるので、考えられる多くのミス(ないし誤差)の原因を除去しながら非常に短時間で風力発電設備を建造することができる。同時に、これにより、個々の組立工程に掛かる時間が短縮されると共に、より早くクレーンを他の作業に利用可能となるので、必要とされるクレーン作業時間が短くなり、コスト削減できる。
【0030】
本発明によれば、建設現場において平準化層として樹脂モルタルの施工(ないし塗布)を回避することができる。使用される樹脂又は樹脂モルタルはアレルギー誘因物質と知られ、そのような樹脂を扱う人々の健康に悪影響を及ぼす可能性があるので、このことには利点がある。つまり、樹脂モルタルに代わり樹脂を使用することができる。
【0031】
本発明のさらなる実施形態は、従属請求項の内容である。
【0032】
本発明の利点及び実施例について、図面を参照しながらより詳細に以下に説明する。
【実施例】
【0033】
図1は、第1実施例におけるプレキャストコンクリート部材を製造する方法のフローチャートを示す。プレキャストコンクリート部材は、風力発電設備のパイロン(タワー)のパイロンセグメント(タワーセグメント)である。このために、まず、工程S1において、プレキャストコンクリート部材用の型枠又は型が提供される。工程2において、コンクリートを型枠に充填する。工程3において、コンクリートは所定の最低強度に達するか、又はコンクリートは研磨(abreiben)され、工程S4において、低粘度樹脂(niedrigviskoses Harz)がプレキャストコンクリート部材のフランジ部(継ぎ目面ないし端面)の領域に供給され、その場で(dort in situ)硬化する。平準化層用の材料である樹脂を注入する作業は、型枠へのコンクリートの充填工程の後、約2時間で実施することができる。この場合、樹脂は3l/minで型枠に圧入され、この作業は、各型枠の大きさ、すなわち型枠から得られる体積に依存するが、約3分〜10分間継続する。
【0034】
樹脂が低粘度であるので、樹脂はプレキャストコンクリート部材のフランジ部上を十分に覆うことができ、一方では、プレキャストコンクリート部材に存在する凹凸(非平坦性)を平準化することができ、他方では、それ自体の低粘性によって(正確に)水平化されるので、正確な水平面を形成することができる。反対側のフランジ部も正確に水平方向に面し、かつ平坦であるならば、両側のフランジ部は正確な平面平行関係となる。
【0035】
図2は、第2実施例におけるプレキャストコンクリート部材20製造時の概略断面図である。プレキャストコンクリート部材は、風力発電設備のパイロンのパイロンセグメントである。第2実施例に係るプレキャストコンクリート部材20の製造は、実質的には、第1実施例に係るプレキャストコンクリート部材20の製造に対応する。コンクリートは、現行の型枠10に充填される。プレキャストコンクリート部材20のフランジ部(端部ないし端面)の領域に、充填口31及び凹部32を有する型枠カバー30が設けられる。この場合、凹部32は、型枠カバー30の下面に設けられると共に、型枠カバー30を型枠10上に載置することによって、プレキャストコンクリート部材20のフランジ部上に配置される。
【0036】
型枠カバー30を型枠10上に載置した後、低粘度樹脂が充填口31を通じて凹部32に注入される。樹脂の低粘性によって、樹脂はプレキャストコンクリート部材20のフランジ部(端面)に沿って容易に広がり、これにより、存在する凹凸(非平坦性)が平準化される。また、樹脂の低粘性によって、樹脂は、水平化された表面を形成すると共に、プレキャストコンクリート部材20の下面が水平に延在しているならば、その面と平面平行な平面を形成する。好ましくは、平準化層は、厚さ10mm以下、特に好ましくは3mm〜4mm以下の低粘度樹脂を有する。この層厚によれば、平準化層は、5,000MPa〜10,000MPaの範囲という比較的低い弾性率を有する材料を使用することができるという有利な機械的性質も有する。
【0037】
平準化層が厚すぎると、平準化層は、掛かる荷重によって接合(継ぎ目)部分から外側に押し出されてしまう。平準化層とコンクリートとの間に結合があるので、対応する力がコンクリートに作用する。この際、パイロンの縦軸に対して横方向に、横(方向)引張応力という引張応力が掛かる。この横引張応力は、コンクリートが比較的高い圧縮強さを有するが比較的低い引張強さのみを有するので、コンクリートにとって問題となる。しかしながら、最大4mmの層厚であれば、コンクリートに作用する横引張応力は問題とならない。
【0038】
樹脂は、コンクリートを型枠に充填後、約2時間で型枠カバーに注入される。一方で、コンクリートは所定の最低強度に達するが、他方で、樹脂がコンクリートに結合できるように完全には硬化していない。約3〜4時間後、プレキャストコンクリート部材及び樹脂は十分な強度に達し、型枠を取り除くことができる。
【0039】
図3は、本発明の第3実施例に係る型枠カバー30の斜視図を示す。この型枠カバー30は、環状形状を有する。型枠カバー30上に取り付けられた側壁(複数)34及び側壁34に配されたカバープレート35は、全体として型枠ボックス38という箱状構造を提供する。型枠ボックス38をリフト手段を使用して移動させるための固定用リング部材33がカバープレート35に(任意的に)適宜配される。
【0040】
また、開口(複数)31がカバープレート35に設けられ、型枠ボックス38を貫通し、平準化層の材料用の流入口及び流出口として機能することができ、型枠ボックス38が型枠上に置かれたときに当該材料を型枠ボックス38を通じて型枠(図3において不図示)に供給することができる。
【0041】
図4は、第4実施例において、シール及び型枠の使用を示す。図4は、型枠10及び型枠10にすでに充填されたコンクリート20を示す。コンクリート20又はプレキャストコンクリート部材20の(フランジ部の)端面は、型枠10の上端と同一面を形成する。本発明の型枠ボックス38が型枠10上に取り付けられる。型枠ボックス38は、型枠カバー30、2つの側壁34、及び2つの側壁34を接続するカバープレート35から形成された箱状断面を有し、曲げ剛性及び形状精度を向上させる。さらに、曲げ剛性をより増大させる補強手段36を適宜設けることができる。
【0042】
(型枠10に面する)下面に、型枠カバー30は凹部32を有する。凹部32は、図4から見てとれるように、型枠10の内径、すなわちプレキャストコンクリート部材20の幅に対応する所定の幅をもって半径方向に延在する。凹部32の両側に、型枠10に対して型枠カバー30ないしは型枠ボックス38を確実に密閉するための密閉シール着座部(Dichtungssitze)としての凹部37が適宜設けられる。
【0043】
型枠カバー30の下面の凹部32は、平準化層(図4において不図示)の所定の高さに適宜(正確に)対応する所定の高さを有する。平準化層の材料は、型枠カバー30とカバープレート35との間に延在し、図4において破線で示してある充填口31を通じて外部から型枠カバー30の凹部32へ注入することができ、これにより凹部32によって形成された空洞を完全に埋めることができる。
【0044】
図3に示されている本発明の型枠カバー30は、4つの開口31を有し、例えば、そのうち2つは充填口として使用され、2つは流出口として使用することができる。型枠カバー30の凹部32の全体が満たされ、さらに材料が供給されると、材料は流出口から流出するので、凹部32が材料で今完全に充満されたことを明確に知覚的に示すことができる。材料が硬化すると、プレキャストコンクリート部材20に固定的に結合された平準化層が形成される。
【0045】
図5は、第5実施例におけるシールの使用を示す。特に、図5は、プレキャストコンクリート部材20を有する型枠10及びその上に取り付けられ、側壁34及び密閉シート37を有する型枠カバー30の拡大図を示す。型枠10の方を指向する型枠カバー30の下面において凹部32が明らかに拡大されたスケールで示されている。凹部32(の両端面)は、正確な直角をなしておらず、型枠10から上方に向かって狭くなっており、台形状を有する。これにより、平準化層の側端に斜角が形成される。
【0046】
凹部32の中心付近に、第1可撓性部材40及び第2非可撓性部材41で形成された本発明のシールが示されている。第1可撓性部材40は、平準化層によって覆わないプレキャストコンクリート部材20の領域上に置かれる。例えば、図5は、後に引張ワイヤを通すので露出している必要がある、ケーシングチューブ漏斗部45を有するケーシングチューブ46を破線で示す。この場合、プレキャストコンクリート部材20を取り扱う吊り上げ手段のための固定点(図5に不図示)又はプレキャストコンクリート部材20の表面上の他の所定の位置も覆ってもよい。
【0047】
このため、まず、第1可撓性部材40は、被覆する位置上に置かれ、第2非可撓性部材41はその上に置かれる。2つのシール部材40,41は所定の厚さを有し、型枠カバー30の凹部32の深さよりも全体としていくらか大きい所定の高さを有する。シール上側の第2非可撓性部材41は、定位置に取り付けられた型枠カバー30によって、下側の第1可撓性部材40上に押圧され、シール40,41は、型枠カバー30によって押さえつけられると共に、プレキャストコンクリート部材20の表面に対して押圧される。これにより、シール40,41によって覆われたプレキャストコンクリート部材20の表面の一部には平準化層が形成されない。
【0048】
型枠カバー30又は型枠ボックス38によって押さえつけられるシール40,41によって開口31も自然に閉止されることになるので、充填口及び流出口31は、シール40,41上には位置付けられてなく、それにより材料の注入及び/又は凹部の通気が少なくとも妨げられるか、そうでなければむしろ完全に妨げられる。
【0049】
上述の型枠カバーを使用すると、樹脂が型枠カバーに対して押圧されるまで、所定の充填口を通じて型枠カバー内に樹脂を注入することによって、樹脂の水平化(平準化)が達成される。
【0050】
また、本発明は、プレキャストコンクリート部材を製造する型枠ユニットに関する。型枠ユニットは、型枠10及び例えば図3に示すような型枠カバーを有する。シール40も適宜設けることができる。
【0051】
また、本発明は、本発明によって製造されたパイロンセグメント又はプレキャストコンクリート部材からなるパイロン(タワー)を有する風力発電設備に関する。
【0052】
上述の実施例の1つに基づく本発明の別の一実施形態によれば、ドライ接合部(乾いた継ぎ目)が、積層されたパイロンセグメント間に使用される。このため、さらなる継ぎ目用接着材を省略することができる。さらに、さらなる平準化層を設けることを省略することができる。
【0053】
本発明は、上記実施形態ないし実施例に基づいて説明されているが、上記実施形態ないし実施例に限定されることなく、本発明の範囲内において、かつ本発明の基本的技術思想に基づいて、種々の開示要素(各請求項の各要素、各実施形態ないし実施例の各要素、各図面の各要素等を含む)に対し種々の変形、変更及び改良を含むことができることはいうまでもない。また、本発明の請求の範囲の枠内において、種々の開示要素(各請求項の各要素、各実施形態ないし実施例の各要素、各図面の各要素等を含む)の多様な組み合わせ・置換ないし選択が可能である。
【0054】
本発明のさらなる課題、目的及び展開形態は、請求の範囲を含む本発明の全開示事項からも明らかにされる。
【符号の説明】
【0055】
10 型枠
20 プレキャストコンクリート部材
30 型枠カバー
31 開口(充填口)
32 凹部
33 固定用リング部材(Anschlagoese)
34 側壁
35 カバープレート
36 補強手段
37 密閉シート
38 型枠ボックス
40 第1可撓性部材
41 第2非可撓性部材
45 ケーシングチューブ漏斗部
46 ケーシングチューブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのフランジ部を有する、風力発電設備のパイロンのパイロンセグメントプレキャストコンクリート部材を製造する方法であって、
型枠を準備する工程と、
前記型枠にコンクリートを充填する工程と、
前記プレキャストコンクリート部材の前記フランジ部に、平準化層として低粘度材料を施す工程と、を含むことを特徴とする製造方法。
【請求項2】
前記型枠上に型枠カバーを載置して前記型枠をふさぐ工程と、
前記型枠カバーの少なくとも1つの充填口から所定の圧力で前記平準化層用の前記材料を供給する工程と、をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記型枠カバーを取り付ける前に、所定の厚さのシールで前記フランジ部の所定の領域を覆う工程と、
前記型枠カバーで前記シールを押さえつける工程と、をさらに含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法によって製造された又は製造することができるパイロンセグメントプレキャストコンクリート部材。
【請求項5】
前記コンクリートの弾性率は25,000MPa〜50,000MPaであり、
前記平準化層の弾性率は5,000MPa〜10,000MPaであることを特徴とする請求項4に記載のプレキャストコンクリート部材。
【請求項6】
前記プレキャストコンクリート部材は所定の面粗度、特に60μm〜150μmの面粗度を有することを特徴とする請求項4又は5に記載のプレキャストコンクリート部材。
【請求項7】
風力発電設備のパイロンのパイロンセグメントプレキャストコンクリート部材を製造する際に型枠上に取り付けられる型枠カバーであって、
前記型枠カバーの半径方向に所定の幅を有すると共に所定の深さを有する少なくとも1つの凹部を有する下面と、
平準化層の材料を注入するための少なくとも1つの充填口と、を備えることを特徴とする型枠カバー。
【請求項8】
前記平準化層の前記材料用の少なくとも1つの排出口をさらに備えることを特徴とする請求項7に記載の型枠カバー。
【請求項9】
前記充填口及び/又は前記排出口はホース用の接続管部として構成されていることを特徴とする請求項7又は8に記載の型枠カバー。
【請求項10】
環状のカバープレートと、
前記カバープレートに設けられた側壁と、をさらに備えることを特徴とする請求項7〜9のいずれか一項に記載の型枠カバー。
【請求項11】
風力発電設備のパイロンのパイロンセグメントプレキャストコンクリート部材を製造するための型枠ユニットであって、
コンクリートを受容するための型枠と、
請求項7〜10のいずれか一項に記載の型枠カバーと、
それぞれ所定の厚さを有する第1可撓性部材及び第2非可撓性部材と、を備え、
前記第1可撓性部材は、プレキャストコンクリート部材においてシールする位置上に配され、
前記第2非可撓性部材は、所定の高さを得るために前記第1可撓性部材の上に載置されることを特徴とする型枠ユニット。
【請求項12】
前記第1可撓性部材は、前記第2非可撓性部材が載置される所定幅の接触面を有する環状の可撓性部材として構成されていることを特徴とする請求項11に記載の型枠ユニット。
【請求項13】
風力発電設備のパイロンのパイロンセグメントプレキャストコンクリート部材を製造する際に平準化層を製造する低粘度樹脂の使用であって、
前記樹脂は、プレキャストコンクリート部材のフランジ部に施されることを特徴とする使用。
【請求項14】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法によって製造された又は製造することができる複数のプレキャストコンクリート部材を備えるパイロンを用いて製造された風力発電設備。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2013−507277(P2013−507277A)
【公表日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−533612(P2012−533612)
【出願日】平成22年10月12日(2010.10.12)
【国際出願番号】PCT/EP2010/065284
【国際公開番号】WO2011/045319
【国際公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【出願人】(500017944)アロイス・ヴォベン (107)
【Fターム(参考)】