説明

風車の少なくとも1つのブレードピッチ軸受を潤滑する方法

【課題】風車の運転のための改善された方法を提供する。
【解決手段】風車のブレードピッチ軸受を潤滑する方法において、複数のロータブレードが、ブレードピッチ軸受によりロータハブに支持されており、ロータブレードが、ピッチ調整可能であり、風車がさらにロータブレードピッチ制御装置を有していて、該ブレードピッチ制御装置が、ロータブレードのピッチ調整を制御するようになっていて、ブレードピッチ軸受の電気容量および/または電気抵抗を測定することによって、ブレードピッチ軸受の潤滑の程度を示す潤滑情報信号を生成する潤滑検出装置によってブレードピッチ軸受の潤滑を判定し、ブレードピッチ軸受が十分に潤滑されていないことを潤滑情報信号が示した場合に、ロータブレード潤滑装置を、ブレードピッチ軸受を潤滑するための動作を実行するために作動させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、風力タービンもしくは風車、特に可変ピッチ型風車の少なくとも1つのブレードピッチ軸受を潤滑する方法であって、風車が、複数のロータブレードを備えたロータハブを有しており、各ロータブレードが、少なくとも1つのブレードピッチ軸受によりロータハブに対して支持されており、少なくとも1つのロータブレードが、ロータブレード中心軸線を中心としてピッチ調整可能であり、風車が、さらにロータブレードピッチ制御装置を有していて、該ロータブレードピッチ制御装置が少なくとも1つのロータブレードのピッチ調整を制御するようになっている、風車の少なくとも1つのブレードピッチ軸受を潤滑する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現代の風車は、可変ピッチ制御を利用している。すなわち、ロータブレードは、ロータブレード中心軸線を中心として回転することができる。したがって、ロータブレードは、各ブレードピッチ軸受によってロータハブに対して支持されている。ロータブレードの回転、つまりロータブレードの各ピッチ角の変更は、ロータブレードピッチ制御装置により制御されている。ロータブレードピッチ制御装置は、各ロータブレードのピッチ調整を制御するようになっている。すなわち、ロータブレードピッチ制御装置は、各ロータブレードのピッチ角を調整する。ロータブレードのピッチ調整は、基本的に、現在の風速のような現在の気候条件と、ロータ速度基準および出力またはトルク基準のような制御信号または制御パラメータに関連する。軸受の適切な潤滑は、軸受の寿命を維持するために必要であり、かつロータブレードの所定のピッチ調整を必要とし、風車全体の運転にとって重要であると理解されている。
【0003】
したがって、各軸受を潤滑するための種々の方法が提案されている。
【0004】
米国特許出願公開第2010/0068055号明細書は、風車のブレードピッチ軸受を動的に潤滑する方法を開示している。この方法は、ピッチ調整動作に関連する少なくとも1つの風車運転状態またはパラメータを求め、動作している運転またはピッチ調整動作パラメータに応じて潤滑が必要であるか否かを判定し、前記判定が肯定的である場合にピッチブレード軸受の潤滑を実施することを含んでいる。
【0005】
各軸受を潤滑するための別の方策は、潤滑剤の定期的な噴射である。潤滑剤の定期的な噴射は、予め規定された量の潤滑剤を、所定の期間毎にかつ/またはロータブレードの定期的なピッチ調整毎に供給することである。
【0006】
しかし、各軸受の現在の潤滑の程度は、軸受の潤滑のための公知の方法では考慮されていない。実際に、公知の方法は通常、軸受への潤滑剤の過剰充填につながり、このことは過度の漏れにつながり得る。他方で、軸受が十分に潤滑されていないことも起こり得る。
【0007】
したがって、風車、つまり特にロータハブに対してロータブレードを支持するロータブレードの軸受を潤滑するための与えられた方策は満足できるものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許出願公開第2010/0068055号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、本発明の課題は、風車の運転のための改善された方法を提供することであり、特にロータブレードの各軸受の適切な潤滑を保証することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の課題は、冒頭で述べた方法において、少なくとも1つのブレードピッチ軸受の電気容量および/または電気抵抗を測定することによって、少なくとも1つのブレードピッチ軸受の潤滑の程度を示す少なくとも1つの潤滑情報信号を生成する潤滑検出装置によって、少なくとも1つのブレードピッチ軸受の潤滑の状態を判定し、少なくとも1つのブレードピッチ軸受が十分に潤滑されていないことを前記潤滑情報信号が示した場合に、少なくとも1つのブレードピッチ軸受を潤滑するための少なくとも1つの動作を実行するためのロータブレード潤滑装置を作動させることにより解決される。
【発明の効果】
【0011】
本発明による方法は、各軸受の潤滑の状態を監視する診断システムに関して潤滑情報信号を生成する潤滑検出装置によって、ロータブレードの1つまたは複数のそれぞれの軸受の潤滑の現在の状態を考慮する。つまり、公知先行技術とは異なり、本発明による方法は、各軸受または個別の軸受、または軸受の個別のグループの潤滑の現在の状態の判定を可能にする。これによって、潤滑が必要であることを潤滑情報信号が示した場合に、各軸受の潤滑が実行される。つまり、ロータブレード潤滑装置が作動させられる。すなわち、ロータブレード潤滑装置が、各軸受を潤滑するための少なくとも1つの動作を実行する。その結果、ロータブレード潤滑装置は、少なくとも1つの軸受内に付加的な潤滑剤を噴射し、かつ/またはロータブレードピッチ制御装置を少なくとも1つのロータブレードのピッチ角を変更するために作動させることができる。
【0012】
潤滑の程度を示す潤滑情報信号の生成は、各軸受または複数の軸受の電気容量および/または電気抵抗の測定に基づいている。各軸受の電気容量および/または電気抵抗の測定は、各軸受の潤滑の現在の程度に関する適切な情報を与える、つまり各軸受の潤滑のそれぞれの程度が最大限に推定され得る。
【0013】
少なくとも1つのブレードピッチ軸受の潤滑の状態の判定は、有利には、潤滑剤の量を求めることによって、特に、少なくとも1つのブレードピッチ軸受の、互いに対して相対的に運動する少なくとも2つの構成要素の間の潤滑剤の被覆厚さhを求めることにより達成される。この原理は、潤滑された軸受の電気容量Cを、平板コンデンサの電気容量Cであると仮定することに基づいている。したがって、各軸受の、接点を形成しかつ互いに対して相対的に運動する2つの構成要素の間、つまり外輪または内輪と、玉等のような転動エレメントとの間の潤滑剤の厚さhは、たとえば、以下の方程式(i)により求められる。
【数1】

ここで、εは、真空の誘電率を表し、εは、潤滑剤の比誘電率を表し、Aは、潤滑剤の下の面積を表す。
【0014】
軸受の電気容量Cは、内輪と転動エレメントとの間の電気容量を表す容量Cと、外輪と転動エレメントとの間の電気容量を表す容量Cとにより求められる(以下の方程式(ii)を参照)。
【数2】

【0015】
したがって、例示的な第1の測定設定は、軸受の、互いに接触する潤滑された構成要素の間の電気容量Cを判定するためにAC電圧信号を使用する。電気容量Cは、各軸受が運転しているか、もしくは運転していない場合に判定され得る、つまり、軸受の各構成要素が運動しているか、もしくは停止している場合に判定され得る。
【0016】
例示的で択一的な測定設定によれば、軸受は、潤滑剤の存在下での電気容量Cおよび電気抵抗Rの組合せであると仮定される。公知の電気抵抗Rが、一定のDC電圧を有する各軸受に直列接続される。この公知の電気抵抗Rは、電気回路内の現在の電流を求めるために使用される。軸受の容量Cは極性を有しておらず、したがってDC電流に対して活性ではないので、DC電圧の使用が必須である。したがって可能な電圧降下は、軸受の電気抵抗Rにのみ基づいている。このような形態で、軸受の電気抵抗Rを制御することによって、潤滑剤の量、特に軸受の各構成要素の2つの接点間の潤滑剤の厚さhの量の判定が可能になる。
【0017】
ロータブレード潤滑装置は、電気容量Cおよび/または電気抵抗Rが、各基準値(s)に接近した場合に作動させられる。なぜならば、このことは、軸受の潤滑が十分ではないことを示している、つまり、軸受の各構成要素の間に小量の潤滑剤しか存在しないことを示しているからである。
【0018】
潤滑情報信号が、該潤滑情報信号が少なくとも1つのブレードピッチ軸受の摩耗の程度を示すように処理されていることも可能である。摩擦および摩耗に起因する特に導電性の粒子が潤滑剤内に存在していることにより、測定された変数、つまり電気容量Cおよび/または電気抵抗Rの変化をもたらすので、各軸受の摩耗の程度の判定が可能である。軸受の接点間、つまりたとえば外輪と転動エレメントとの間の導電性の粒子は、測定信号への干渉につながる。測定信号中のこの変化、つまり粒子の影響は、公知の平均化技術により平均化され得る。したがって、各軸受の接点間の粒子に関する情報は、各軸受の摩耗の程度の表示を可能にする。なぜならば、接点間の粒子の量の増大は、電気抵抗Rの低下につながるからである。したがって、各軸受の寿命に関する情報も、潤滑情報信号の処理によって得ることができる。
【0019】
本発明の別の実施形態では、ロータブレード潤滑装置は、少なくとも1つのブレードピッチ軸受を潤滑するための少なくとも1つの動作を実行するために、少なくとも1つの内部パラメータおよび/または少なくとも1つの外部パラメータを考慮する。少なくとも1つの付加的なパラメータからの情報は、ピッチ潤滑を強制して行わせるかまたは停止するために、または潤滑ストラテジーを適合させるために使用されてよく、たとえば少なくとも1つの運転パラメータに基づいてピッチ運動軌道を変更するために使用されてよい。このようにして、各軸受または複数の軸受の正確かつ適切な潤滑が実施され得る。
【0020】
したがって、液圧オイルの温度および/または液圧オイルの圧力および/またはロータハブの速度および/または発電ユニットのロータの速度および/またはピッチ角および/または風車の発電機のような発電ユニットの発電力が内部パラメータとして考慮されてよく、風速および/または周辺温度および/または周辺圧力および/または空気密度が外部パラメータとして考慮され得る。当然ではあるが、別の内部パラメータおよび/または外部パラメータも使用され得る。さらに、風車制御システムの内部状態も同様に使用され得る。
【0021】
有利には、ロータブレード潤滑装置の先行する少なくとも1つの運転に関する潤滑情報信号および/または潤滑パラメータが、記憶ユニット内に保存されている。これによって、ロータブレード潤滑装置は、少なくとも1つのブレードピッチ軸受を潤滑するための少なくとも1つの動作を実行するために、記憶ユニット内に保存されたデータを少なくとも部分的に考慮する。このようにして、履歴データおよび結果が考慮され得る。つまり、ロータブレード潤滑装置は、現在の状態を、先行する運転からの、必要であれば類似の、少なくとも1つの状態と比較するようになっている。したがって、現在の潤滑手順が最適化され得る。
【0022】
特に、ロータブレード潤滑装置が少なくとも1つの軸受を潤滑するための少なくとも1つの動作を既に実行している場合に、少なくとも1つのブレードピッチ軸受における潤滑が不十分であることを少なくとも1つの潤滑情報信号が示したならば、潤滑検出装置が、少なくとも1つの警告信号を生成することが可能である。この警告信号は、各軸受の潤滑の現在の状態が不十分であり、したがって軸受の運転および/または状態が不都合に影響されているか、または影響され得るという示唆を与える。この警告信号は、記録され、かつ風車制御システムによって使用されてもよく、同じく各通信装置によって風車の運転を制御する中央ステーションに伝達され得る。
【0023】
さらに、特にロータブレード潤滑装置が少なくとも1つの軸受を潤滑するための少なくとも1つの動作を既に実行している場合に、少なくとも1つのブレードピッチ軸受の潤滑が不十分であることを少なくとも1つの潤滑情報信号が示したならば、潤滑検出装置が、風車の運転を停止するための停止信号を生成することが考えられる。このようにして、風車は損傷から保護されている。なぜならば、潤滑検出装置が、各軸受のうち少なくとも1つの軸受の不十分な潤滑を検知した場合に、風車の運転が停止されるからである。
【0024】
さらに、本発明は、風車、特に可変ピッチ型風車であって、特に、上述の方法を実施するために適合されている風車に関する。風車は、複数のロータブレードを備えたロータハブを有していて、各ロータブレードが、少なくとも1つのブレードピッチ軸受によりロータハブに対して支持されていて、少なくとも1つのロータブレードが、ロータブレード中心軸線を中心としてピッチ調整可能であり、さらに、風車が、ロータブレードピッチ制御装置と、潤滑検出装置とを有している。この場合、ロータブレードピッチ制御装置は、少なくとも1つのロータブレードの各ピッチ角を制御するようになっている。潤滑検出装置は、少なくとも1つのブレードピッチ軸受の電気容量および/または電気抵抗を測定することによって少なくとも1つのブレードピッチ軸受の潤滑の程度を示す少なくとも1つの潤滑情報信号を生成するようになっている。これにより、少なくとも1つのブレードピッチ軸受を潤滑するための少なくとも1つの動作を実行するようになっているロータブレード潤滑装置は、少なくとも1つのブレードピッチ軸受が十分に潤滑されていないことを潤滑情報信号が示した場合に作動させられる。したがって、ロータブレード潤滑装置とロータブレードピッチ制御装置とは、互いに通信するようになっている。
【0025】
有利には、ロータブレード潤滑装置は、少なくとも1つのブレードピッチ軸受を潤滑するために、少なくとも1つのブレードピッチ軸受内に付加的な潤滑剤を噴射し、かつ/またはロータブレードピッチ制御装置を少なくとも1つのロータブレードのピッチ角を変更するために作動させるようになっている。したがって、付加的な量の潤滑剤の噴射によって、または付加的にまたは択一的に各ピッチ角の変更によって、つまり、ロータブレードおよび各軸受を、ロータブレードの中心軸線を中心として所定の量だけ回転させることによって、各軸受は不十分な潤滑から保護されている。
【0026】
風車は、記憶ユニットを有していてよい。この記憶ユニットは、ロータブレード潤滑装置の先行する少なくとも1つの運転に関する潤滑情報および/または運転データを保存するようになっている。この場合、ロータブレード潤滑装置と、記憶ユニットとは互いに通信するようになっている。このようにして、先行する潤滑動作の履歴データが、各軸受の潤滑の実行前に考慮され得る。したがって、現在の潤滑手順が最適化され得る。
【0027】
さらに、特にロータブレード潤滑装置が少なくとも1つの軸受を潤滑するための少なくとも1つの動作を既に実行している場合に、少なくとも1つのブレードピッチ軸受における潤滑が十分でないことを少なくとも1つの潤滑情報信号が示したならば、潤滑検出装置が、少なくとも1つの警告信号を生成するようになっていることも可能である。したがって、少なくとも1つの軸受が十分に潤滑されていないことは、各制御システム、モニタリングステーションまたは作業員等によって認識可能である。
【0028】
さらに、特にロータブレード潤滑装置が少なくとも1つの軸受を潤滑するための少なくとも1つの動作を既に実行している場合に、少なくとも1つのブレードピッチ軸受における潤滑が十分でないことを少なくとも1つの潤滑情報信号が示したならば、潤滑検出装置が、風車の運転を停止するための停止信号を生成するようになっている。したがって、風車の運転は、各軸受のうち少なくとも1つの軸受が十分に潤滑されていない場合に停止されてよく、つまり軸受内の損傷および風車全体の損傷のリスクが減じられている。
【0029】
以下に本発明を、図面を参照しながら詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明による例示的な実施形態による風車の原理図である。
【図2】本発明による方法を示すブロック図である。
【図3】電気容量を示したロータブレード軸受の原理図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
図1は、本発明の例示的な実施形態に関する風力タービンもしくは風車1の原理図を示している。風車1は、可変ピッチ型風車として形成されている。
【0032】
複数のロータブレード4が、各軸受(ブレードピッチ軸受)5によってロータハブ2に対して支持されている。これらのロータブレード4は、ロータブレード中心軸線を中心としてピッチ調整可能(pitchable)または回転可能である。つまり、各ロータブレード4のピッチ調整、つまり各ピッチ角の変更は、ロータブレードピッチ制御装置6によって制御されている。ロータブレードピッチ制御装置6は、ロータブレードピッチ調整アクチュエータ(図示せず)を有している。ロータブレードピッチ制御装置6は、ロータブレード4のピッチ調整を個別にまたは全体的に実行することができる。
【0033】
さらに、風車1は、潤滑検出装置7を有している。この潤滑検出装置7は、少なくとも1つの潤滑情報信号を生成するようになっている。潤滑情報信号は、各軸受5の電気容量および/または電気抵抗を個別に測定することによって、各軸受5の潤滑の程度を示す。
【0034】
さらに、ロータブレード潤滑装置8が設けられている。ロータブレード潤滑装置8は、各軸受5が十分に潤滑されていないことを潤滑情報信号が示した場合に、少なくとも1つの軸受5を潤滑するための少なくとも1つの動作を実行するようになっている。
【0035】
ロータブレードピッチ制御装置6と、潤滑検出装置7と、ロータブレード潤滑装置8とは互いに通信している。さらに、ロータブレードピッチ制御装置6と、潤滑検出装置7と、ロータブレード潤滑装置8とは、中央制御ユニット9に接続されている。この中央制御ユニット9は、ロータブレードピッチ制御装置6と、潤滑検出装置7と、ロータブレード潤滑装置8とを制御するようになっている。中央制御ユニット9は、有利には、風車1の発電ユニット3にも接続されている。
【0036】
さらに風車1は、記憶ユニット10を有している。記憶ユニット10は、ロータブレード潤滑装置8の、先行する少なくとも1つの運転に関する潤滑情報および/または運転データを保存するようになっている。記憶ユニット10は、ロータブレード潤滑装置8および/または中央制御ユニット9と通信するようになっている。
【0037】
風車1の少なくとも1つの軸受5、特に少なくとも1つのブレードピッチ軸受を潤滑する方法を、図2に関連して説明する。風車1の通常運転中は、ロータブレード4に作用する風速は、ロータハブ2の回転と、さらに発電ユニット3による発電とをもたらす。
【0038】
各軸受5の潤滑の状態は、各軸受5の潤滑の程度を示す潤滑情報信号を生成する潤滑検出装置7により判定される。第1のステップS1では、各軸受5の電気容量Cおよび/または電気抵抗Rが測定される。続くステップS2では、測定された電気容量および/または電気抵抗が、各軸受5の潤滑状態を判定するために処理される。これによって、各軸受5(図3を参照)の、互いに対して運動する少なくとも2つの構成要素(図3を参照)の間の潤滑剤の量、特に潤滑剤の被覆厚さhが、上述のように求められる。一般的に、電気容量Cおよび/または電気抵抗Rの測定と、その結果としての各軸受5の潤滑の状態の判定とは、連続的にまたは断続的に行われ得る。
【0039】
少なくとも1つの軸受5が十分に潤滑されていないことを潤滑情報信号が示した場合に、ロータブレード潤滑装置8は、ステップS3で、各軸受5を潤滑するための少なくとも1つの動作を実行するために作動させられる。つまり、各信号(矢印15,16を参照)が、ロータブレード潤滑装置8に伝達される。したがって、各軸受の適切な潤滑は、有利には、(矢印15により示されたような各信号に一致して)適切かつ付加的な量の潤滑剤を各軸受5内に噴射することにより達成され、かつ/またはロータブレードピッチ制御装置6を(矢印16により示されたような各信号に一致して)各ロータブレード4のピッチ角を変更するために作動させる、つまり、潤滑剤の現在の量を各軸受5内で再び分配させるように、各ロータブレード4を回転させることにより達成される。
【0040】
図1に示された風車1に関して、ロータブレード潤滑装置8の作動は、直接に潤滑検出装置7を介して実行されるか、または中央制御ユニット9を介して実行される。
【0041】
特に、各軸受5の適切な潤滑を得るためにロータブレード4をピッチ調整する場合に、ロータブレード潤滑装置8は、各軸受5を潤滑するための各動作を実行するために、少なくとも1つの内部パラメータおよび/または少なくとも1つの外部パラメータ(矢印17,18を参照)を考慮する。したがって、液圧オイルの温度および/または液圧オイルの圧力および/またはロータハブ2の速度および/または発電ユニット3のロータの速度および/またはロータブレード4のピッチ角および/または風車1の発電ユニット3の発電力が、内部パラメータ(矢印17を参照)として考慮され、風速および/または周辺温度および/または周辺圧力および/または空気密度が、外部パラメータ(矢印18を参照)として考慮され得る。このことは、主に、ロータブレード4のピッチ調整が、風車1の出力に影響するという事実に基づいている。風車1は、内部パラメータおよび/または外部パラメータをそれぞれ測定するために適当なセンサ(図示せず)を有しており、これらのセンサは、中央制御ユニット9と通信するようになっている。
【0042】
さらに潤滑検出装置7は、潤滑情報信号を生成する間に、ロータブレード潤滑装置8の先行する少なくとも1つの運転に関する先行する潤滑情報信号および/または潤滑パラメータを考慮する。したがって、潤滑検出装置7および/または中央制御ユニット9は、ロータブレード潤滑装置8の先行する潤滑動作に関する履歴データを含む記憶ユニット10と通信する。
【0043】
さらに、特にロータブレード潤滑装置8が各軸受5を潤滑するための動作を既に実行している場合に、少なくとも1つの軸受5の潤滑が十分でないことを潤滑情報信号が示した場合に、潤滑検出装置7は、少なくとも1つの警告信号を生成するようになっている。極端な場合には、潤滑検出装置7が、風車1を損傷から保護するために、風車1の運転を停止するための停止信号を生成することが必要となり得る。
【0044】
図3は、容量CおよびCを示された、ロータブレード軸受5の原理図を示している。軸受5は、外輪11と、内輪12と、各レース軌道を転がる玉13の形の転動エレメントとを有している。軸受5の全構成要素は、潤滑剤を設けられている、つまり潤滑剤により被覆されている。軸受5は、当該軸受5の電気容量Cを測定するために複数の測定点14を有している。この場合、軸受5の電気容量Cは、たとえば内輪12と玉13との間の電気容量Cおよび外輪11と玉13との間の電気容量Cにより判定される(式(ii))。したがって、潤滑検出装置7は、軸受5内の電気容量CおよびCのような各測定信号を得るための各電気的なセンサ(図示せず)を有している。この場合、センサからの情報は、潤滑情報信号を得るために処理される。
【0045】
さらに、潤滑情報信号は、該潤滑情報信号が、軸受5の摩耗の程度を示すことができるように処理されていてよい。このことは、摩擦および摩耗に起因する粒子が、センサの各測定信号における変化をもたらすので可能である。つまり、潤滑情報信号は、潤滑剤内の異物の存在に応じて変化する。この変化は、主に潤滑剤の導電性の各変化により生じる、
【0046】
したがって、本発明による方法は、各軸受5の潤滑に関する全ての問題の取扱いを、特に少なくとも1つの軸受5の潤滑がいつ必要であるかを特定することを可能にする。これにより、風車1の発電ユニット3の発電は、可能な限り少ししか影響されない。なぜならば、各軸受の潤滑は、潤滑が本当に必要である場合にしか実行されないからである。さらに、各軸受5の不十分な潤滑により生じる風車1の損傷は阻止される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
風車、特に可変ピッチ型の風車の少なくとも1つのブレードピッチ軸受を潤滑する方法であって、風車が、複数のロータブレードを備えたロータハブを有しており、各ロータブレードが、少なくとも1つのブレードピッチ軸受によりロータハブに対して支持されており、少なくとも1つのロータブレードが、ピッチ調整可能であり、風車が、さらにロータブレードピッチ制御装置を有していて、該ブレードピッチ制御装置が、少なくとも1つのロータブレードのピッチ調整を制御するようになっている、風車の少なくとも1つのブレードピッチ軸受を潤滑する方法において、
少なくとも1つのブレードピッチ軸受の電気容量および/または電気抵抗を測定することによって、少なくとも1つのブレードピッチ軸受の潤滑の程度を示す少なくとも1つの潤滑情報信号を生成する潤滑検出装置によって、少なくとも1つのブレードピッチ軸受の潤滑を判定し、
少なくとも1つのブレードピッチ軸受が十分に潤滑されていないことを前記潤滑情報信号が示した場合に、少なくとも1つのブレードピッチ軸受を潤滑するための少なくとも1つの動作を実行するために、ロータブレード潤滑装置を作動させることを特徴とする、風車の少なくとも1つのブレードピッチ軸受を潤滑する方法。
【請求項2】
少なくとも1つのブレードピッチ軸受の潤滑の状態の測定を、少なくとも1つのブレードピッチ軸受の、互いに対して相対的に運動する少なくとも2つの構成部材の間で、潤滑剤の量、特に潤滑剤の被覆厚さを求めることにより達成する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記潤滑情報信号が少なくとも1つのブレードピッチ軸受の摩耗の程度を示すように、潤滑情報信号を処理する、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
ロータブレード潤滑装置は、少なくとも1つのブレードピッチ軸受を潤滑するために、少なくとも1つのブレードピッチ軸受内に付加的な潤滑剤を噴射し、かつ/またはロータブレードピッチ制御装置を少なくとも1つのブレードピッチ軸受のピッチ角を変更するために作動させる、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
ロータブレード潤滑装置が、少なくとも1つのブレードピッチ軸受を潤滑するための少なくとも1つの動作を実行するために、少なくとも1つの内部パラメータおよび/または少なくとも1つの外部パラメータを考慮する、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
液圧オイルの温度および/または液圧オイルの圧力および/またはロータハブの速度および/または発電ユニットのロータの速度および/またはピッチ角および/または風車の発電ユニットの発電力を、前記内部パラメータとして考慮し、風速および/または周辺温度および/または周辺圧力および/または空気密度を、前記外部パラメータとして考慮する、請求項5記載の方法。
【請求項7】
ロータブレード潤滑装置の先行する少なくとも1つの運転に関する潤滑情報信号および/または潤滑パラメータを記憶ユニット内に保存し、ロータブレード潤滑装置が、少なくとも1つのブレードピッチ軸受を潤滑するための少なくとも1つの動作を実行するために記憶ユニット内に保存されたデータを考慮する、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
特にロータブレード潤滑装置が少なくとも1つのブレードピッチ軸受を潤滑するための少なくとも1つの動作を既に実行している場合に、少なくとも1つのブレードピッチ軸受の潤滑が十分ではないことを少なくとも1つの潤滑情報信号が示したならば、潤滑検出装置が、少なくとも1つの警告信号を生成する、請求項1から7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
特にロータブレード潤滑装置が少なくとも1つのブレードピッチ軸受を潤滑するための少なくとも1つの動作を既に実行している場合に、少なくとも1つのブレードピッチ軸受の潤滑が十分ではないことを少なくとも1つの潤滑情報信号が示したならば、潤滑検出装置が、風車の運転を停止するための停止信号を生成する、請求項1から8までのいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
特に請求項1から9までのいずれか1項記載の方法を実施するための風車、特に可変ピッチ型の風車であって、当該風車(1)が、複数のロータブレード(4)を有するロータハブ(2)を有していて、少なくとも1つのロータブレード(4)が少なくとも1つのブレードピッチ軸受(5)によってロータハブ(2)に対して支持されており、少なくとも1つのロータブレード(4)がロータブレード中心軸線を中心としてピッチ調整可能であり、さらに風車(1)が、ロータブレードピッチ制御装置(6)と、潤滑検出装置(7)とを有しており、ロータブレードピッチ制御装置(6)が、少なくとも1つのロータブレード(4)の各ピッチ角を制御するようになっており、潤滑検出装置(7)が、少なくとも1つのブレードピッチ軸受(5)の電気容量および/または電気抵抗を測定することによって、少なくとも1つのブレードピッチ軸受(5)の潤滑の程度を示す少なくとも1つの潤滑情報信号を生成するようになっており、
潤滑検出装置(7)が、ロータブレード潤滑装置(8)を作動するようになっており、該ロータブレード潤滑装置(8)は、少なくとも1つのブレードピッチ軸受(5)が十分に潤滑されていないことを潤滑情報信号が示した場合に、少なくとも1つのブレードピッチ軸受(5)を潤滑するための少なくとも1つの動作を実行するようになっており、ロータブレード潤滑装置(8)と、ロータブレードピッチ制御装置(6)とが互いに通信するようになっている、請求項1から9までのいずれか1項記載の方法を実施するための風車。
【請求項11】
前記ロータブレード潤滑装置(8)は、少なくとも1つのブレードピッチ軸受(5)を潤滑するために、少なくとも1つのブレードピッチ軸受(5)内に付加的な潤滑剤を噴射するようになっていて、かつ/またはロータブレードピッチ制御装置(6)を少なくとも1つのロータブレード(4)のピッチ角を変更するために作動させるようになっている、請求項10記載の風車。
【請求項12】
ロータブレード潤滑装置(8)の先行する少なくとも1つの運転に関する潤滑情報および/または運転データを保存するようになっている記憶ユニット(10)が設けられており、ロータブレード潤滑装置(8)と、記憶ユニット(10)とが互いに通信するようになっている、請求項10または11記載の風車。
【請求項13】
特にロータブレード潤滑装置(8)が少なくとも1つのブレードピッチ軸受(5)を潤滑するための少なくとも1つの動作を既に実行している場合に、少なくとも1つのブレードピッチ軸受(5)の潤滑が十分でないことを少なくとも1つの潤滑情報信号が示したならば、潤滑検出装置(7)が、少なくとも1つの警告信号を生成するようになっている、請求項10から12までのいずれか1項記載の風車。
【請求項14】
特にロータブレード潤滑装置(8)が少なくとも1つのブレードピッチ軸受(5)を潤滑するための少なくとも1つの動作を既に実行している場合に、少なくとも1つのブレードピッチ軸受(5)の潤滑が十分でないことを少なくとも1つの潤滑情報信号が示したならば、潤滑検出装置(7)が、風車(1)の運転を停止するための停止信号を生成するようになっている、請求項10から13までのいずれか1項記載の風車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−163101(P2012−163101A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−24085(P2012−24085)
【出願日】平成24年2月7日(2012.2.7)
【出願人】(390039413)シーメンス アクチエンゲゼルシヤフト (2,104)
【氏名又は名称原語表記】Siemens Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】Wittelsbacherplatz 2, D−80333 Muenchen, Germany
【Fターム(参考)】