説明

飛行経路特定方法およびプログラム

【課題】複数の航空機が衝突を回避しつつ、迅速かつ効率的にそれぞれの目標位置に移動する。
【解決手段】飛行経路特定方法では、複数の航空機のうち任意の1の航空機が、他の航空機の目標位置と飛行経路とを受信し(S200)、他の航空機の目標位置を除く複数の目標位置から、到達までの時間が最短となる、または、到達に要するエネルギーが最小となる目標位置を選択し(S202)、自機の飛行状態に基づいて現地点から目標位置までの飛行経路を導出し(S204)、導出された飛行経路と他の航空機の飛行経路とを比較して、自機と他の航空機とが衝突するか否か判定し(S206)、衝突すると判定した場合、衝突しない飛行経路となるまで、飛行速度または飛行経路自体を変更する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の航空機が相異なる複数の目標位置にそれぞれ移動するための飛行経路を特定する飛行経路特定方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
共通の目的を有する複数の航空機が、その目的に応じて定められる相異なる複数の目標位置にそれぞれ移動し、協働して共通の目的の遂行を試みることがある。そのような飛行目的の1つとして、例えば、複数の航空機が所定の間隔および隊形を維持しつつ、集団で飛行する、所謂、編隊飛行が挙げられる。
【0003】
かかる編隊飛行では、それぞれ独立して飛行している航空機を、所定の隊形に迅速かつ効率的に移動させることが望まれ、また、所定の隊形が形成された後も、各航空機間の距離や上下方向の間隔を維持するのに高度な技術が要求される。
【0004】
そこで、このような編隊飛行において、操縦者の負担を軽減すべく、レーザ測距装置を用いて他航空機との相対位置関係を一定に保持する技術が知られている(例えば、特許文献1)。また、複数の航空機を一括して制御すべく、第1航空機と第2航空機との所定の位置関係が確立された後、第2航空機の移動に関するコマンドを第1航空機にも送信することで、第1航空機を第2航空機に同期させる技術も公開されている(例えば、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−45099号公報
【特許文献2】特開2004−25971号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
編隊飛行を遂行する際、所望する隊形が形成された後は、上記の技術を用いることで、操縦者の負担が軽減される。しかし、特許文献1に示した相対位置関係を一定に保持する技術は、所望する隊形を形成する途中段階には用いることができない。また、特許文献2に示されるように、1の航空機が複数の航空機の移動に関するコマンド全てを把握し、自機や他の航空機の飛行経路まで導出するとなると、その処理負荷が膨大になり、安定した飛行に支障を来すおそれもある。
【0007】
また、航空機は、基本的に、地上設備で取得した飛行位置および飛行経路に従って飛行する。航空機のうちでも有人機の場合、たとえその飛行経路が他の航空機と衝突する可能性があったとしても、操縦者によって飛行経路の変更ができ、衝突を回避することが可能である。しかし、無人機の場合、最初に取得した飛行位置および飛行経路に忠実に従って飛行するので、飛行状態の変動によっては、他の航空機と接触してしまう可能性がある。したがって、複数の無人機を同時に並行して飛行させることは困難であり、有人機と無人機、または、無人機同士の編隊飛行は実現性に乏しかった。
【0008】
さらに、複数の航空機がそれぞれ独立して飛行している場合に、実際の飛行状態の違いまで配慮して各航空機の飛行経路を相対的に判定する技術はなく、隊形を形成する際の衝突を回避する適切な処理が構築されていなかった。
【0009】
そこで本発明は、このような課題に鑑み、複数の航空機が、衝突を回避しつつ、迅速かつ効率的にそれぞれの目標位置に移動することが可能な飛行経路特定方法およびプログラムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、複数の航空機が相異なる複数の目標位置にそれぞれ移動するための飛行経路を特定する、本発明の飛行経路特定方法では、複数の航空機のうち任意の1の航空機が、他の航空機の目標位置と飛行経路とを受信する受信工程と、他の航空機の目標位置を除く複数の目標位置から、到達までの時間が最短となる、または、到達に要するエネルギーが最小となる目標位置を選択する目標位置選択工程と、自機の飛行状態に基づいて現地点から目標位置までの飛行経路を導出する飛行経路導出工程と、導出された飛行経路と他の航空機の飛行経路とを比較して、自機と他の航空機とが衝突するか否か判定する衝突判定工程と、を有し、衝突すると判定した場合、衝突しない飛行経路となるまで、飛行速度または飛行経路自体を変更して、飛行経路導出工程、および、衝突判定工程を繰り返すことを特徴とする。
【0011】
複数の航空機には目標位置と飛行経路とを特定する順番が予め定められており、任意の1の航空機は、自機より順番が早い全ての航空機の目標位置と飛行経路とを受信して自機の目標位置と飛行経路とを特定してもよい。
【0012】
上記課題を解決するために、本発明のプログラムは、複数の航空機のうち任意の1の航空機に設けられたコンピュータに、他の航空機の目標位置と飛行経路とを受信する受信工程と、他の航空機の目標位置を除く複数の目標位置から、到達までの時間が最短となる、または、到達に要するエネルギーが最小となる目標位置を選択する目標位置選択工程と、自機の飛行状態に基づいて現地点から目標位置までの飛行経路を導出する飛行経路導出工程と、導出された飛行経路と他の航空機の飛行経路とを比較して、自機と他の航空機とが衝突するか否か判定する衝突判定工程と、衝突すると判定した場合、衝突しない飛行経路となるまで、飛行速度または飛行経路自体を変更して、飛行経路導出工程、および、衝突判定工程を繰り返させる工程と、を実行させる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、複数の航空機が、衝突を回避しつつ、迅速かつ効率的にそれぞれの目標位置に移動することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】複数の航空機の編隊飛行の一例を示した説明図である。
【図2】航空機の概略的な構成を述べた機能ブロック図である。
【図3】飛行経路特定方法の処理の流れを示したフローチャートである。
【図4】飛行経路特定方法の所定の処理を説明するための説明図である。
【図5】飛行経路特定方法の所定の処理を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値等は、発明の理解を容易とするための例示にすぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0016】
(複数の航空機100による編隊飛行)
図1は、複数の航空機100(100x、100a、100b、100c)の編隊飛行の一例を示した説明図である。ここでは、航空機100が4機示され、仮に、航空機100xを有人機、航空機100a、100b、100cを無人機とする。かかる4機の航空機100x、100a、100b、100cは、図1(a)のように、それぞれに与えられた飛行目的に基づいて独立して飛行しているとする。
【0017】
ここで、偵察対象の状態や、他の航空機の状態に応じて所定の隊形を形成する編隊飛行を遂行する契機が生じると、まず、無人機同士である航空機100a、100b、100cが図1(b)の如く、航空機100aを先頭にして編隊飛行を実行する。そして、航空機100a、100b、100cは、有人機である航空機100xとの距離を縮め、図1(c)の如く、航空機100xを先頭にした編隊飛行を実行する。こうして4機の航空機100による編隊飛行の隊形が形成される。編隊飛行においては、先頭に位置する航空機(ここでは航空機100x)がリーダーシップを有し、他の航空機(ここでは航空機100a、100b、100c)は、その先頭の航空機100aとの相対距離や方向を維持する。
【0018】
このような編隊飛行では、それぞれ独立して飛行している航空機を、所定の隊形に、迅速かつ効率的に移動させることが望まれる。本実施形態のように、複数の航空機100が、それぞれ独立して制御されている場合、所定の隊形に移動する際に、その飛行経路が交差する可能性がある。そこで、各航空機100では、独立した飛行制御を継続しつつ、他の航空機100との衝突を回避しながら、迅速かつ効率的にそれぞれの目標位置に移動しなければならない。ここで、目標位置は、経度、緯度、高度等から特定される目標となる空中の絶対位置である。例えば、編隊飛行においては、最終的に所望する隊形を形成する位置であり、10km先のそれぞれが20m離間した複数の地点等を指す。
【0019】
このように各航空機100が独立して制御されることで、仮に、複数の航空機100のうち1機が制御不能になったとしても、他の航空機100が、それに追従してしまい、全ての航空機100が制御不能に陥る事態を回避することができる。以下、航空機100の構成を簡単に述べ、その後、飛行経路特定方法を説明する。
【0020】
(航空機100)
図2は、航空機100の概略的な構成を述べた機能ブロック図である。ここでは、本実施形態の目的である目標位置や飛行経路を特定するために必要な構成のみを説明し、本実施形態に関係のない構成については説明を省略する。
【0021】
飛行機構110は、翼が機体に固定されている固定翼と、推進力を得る内燃機関(例えばジェットエンジンやレシプロエンジン)とで構成され、推進力により翼周りに揚力を生じさせることで、機体が大気中に浮上した状態を維持する。ただし、揚力を生じさせる機構はかかる場合に限らず、回転可能に設けられた回転翼(ローター)により揚力を得たり、推進力を得ることも可能である。また、飛行機構110では、バンク角、機首角、内燃機関の出力等を調整することで、方位、高度、姿勢を制御することも可能である。
【0022】
飛行状態センサ112は、航空機100に設けられた様々なセンサを通じて、飛行位置(経度、緯度、高度を含む)、機体速度、機体姿勢、機体が受ける風力、風向き、天候、機体周囲の気圧、温度、湿度等の現在の飛行状態を検出する。
【0023】
中央制御部114は、中央処理装置(CPU)、プログラム等が格納されたROM、ワークエリアとしてのRAM等を含む半導体集積回路で構成され、航空機100全体を管理および制御する。ここでRAMには、現在の飛行位置、機体速度、機体姿勢、機体が受ける風力、風向き、天候、機体周囲の気圧、温度、湿度等の飛行状態が保持されている。中央制御部114は、例えば、飛行状態センサ112で検出された飛行状態に基づき、所望する目標位置に到達すべく、バンク角、機首角、内燃機関の出力等を調整したり、その目標位置や飛行経路を計算したりする。
【0024】
通信部116は、放送型自動従属監視(ADS−B:Automatic Dependent Surveillance-Broadcast)等のデータリンク手法を用い、飛行中または陸上において、地上設備や他の航空機100との通信を行う。かかる通信では、自機の識別子、現在の飛行位置、機体速度、機体姿勢等の情報が伝達される。したがって、各航空機100の飛行目的である目標位置を、航空機100の離陸の際に地上設備から取得することもできるし、任意の航空機100から取得することもできる。
【0025】
(飛行経路特定方法)
図3は、飛行経路特定方法の処理の流れを示したフローチャートであり、図4および図5は、飛行経路特定方法の所定の処理を説明するための説明図である。当該飛行経路特定方法では、独立して飛行している複数の航空機100が集合して、編隊飛行を行うための相異なる複数の目標位置にそれぞれ移動することを前提に、複数の航空機100のうち任意の1の航空機100が、1の目標位置を選択してその飛行経路を求めることを目的としている。ここでは、3機の航空機100d、100e、100fが3つの目標位置A、B、Cを目標にする場合を述べる。
【0026】
例えば、編隊飛行の最終的な隊形を示す複数の目標位置A、B、Cの情報を含む、編隊飛行を実行する旨の指令を受けると、当該飛行経路特定方法が開始され、他の航空機100が目標とする目標位置と、その飛行経路との受信待ち状態となる(S200:受信工程)。目標位置と飛行経路とが受信されるまで(S200におけるNO)、受信待ち状態が維持され、他の航空機100から、目標位置と飛行経路とを受信すると(S200におけるYES)、目標位置選択工程(S202)に移行する。
【0027】
中央制御部114は、複数の目標位置から、他の航空機100から受信した他の航空機100の目標位置を除き、残った1または複数の目標位置から、到達までの時間が最短となる、または、到達に要するエネルギーが最小となる目標位置を選択する(S202:目標位置選択工程)。ただし、目標位置の選択に関し自機が最初である場合には、複数の目標位置全てから1の目標位置を選択できる。以下に、到達までの時間が最短となる目標位置と、到達に要するエネルギーが最小となる目標位置との選択手順を順に説明する。
【0028】
例えば、航空機100dが、3つの目標位置A、B、Cから、到達までの時間が最短となる目標位置を選択する場合、以下のような処理が遂行される。まず、中央制御部114は、以下の数式1を用いて、自機の現在の飛行位置(X,Y,Z)から3つの目標位置A(X,Y,Z)、B(X,Y,Z)、C(X,Y,Z)までの直線距離LdA、LdB、LdCを全て求める(図4参照)。
【数1】

…(数式1)
そして、直線距離LdA、LdB、LdCのうち直線距離が最短となる目標位置を到達までの時間が最短となる目標位置とみなし、自機の目標位置として決定する。
【0029】
また、航空機100dが、3つの目標位置A、B、Cから、到達に要するエネルギーが最小となる目標位置を選択する場合、以下のような処理が遂行される。即ち、中央制御部114は、以下の数式2を用い、仮に、自機の現在の飛行位置(X,Y,Z)から3つの目標位置A、B、Cに移動したとした場合における、各地点の運動エネルギーと位置エネルギーとの総和の差分DdA、DdB、DdCを全て求める(図4参照)。
【数2】

…(数式2)
ただし、gは重力加速度であり、各地点の速度のスカラー量v,v,v,vは、以下の数式3で定義される。
【数3】

…(数式3)
そして、中央制御部114は、差分DdA、DdB、DdCのうちエネルギーが最小となる目標位置を自機の目標位置として決定する。
【0030】
このような目標位置の決定は、航空機100e、100fに関しても同様に求められる。ただし、航空機100eでは、航空機100dで決定された目標位置を除いた目標位置から1の目標位置を選択する。例えば、航空機100dにおいて目標位置Bが選択されると、航空機100eでは、残った目標位置A、Cのいずれかを選択することとなる。そして、航空機100fでは、航空機100d、100eで決定された目標位置、例えば、目標位置B、Cを除く、ここでは、目標位置Aが自動的に自機の目標位置となる。
【0031】
図3に戻って、目標位置が決定されると、中央制御部114は、飛行状態センサ112によって検出された飛行状態に基づいて現地点から目標位置までの飛行経路を導出する(S204:飛行経路導出工程)。
【0032】
ここでは、航空機100dが、自機の現在の飛行位置(X,Y,Z)から目標位置B(X,Y,Z)に移動する場合を例に挙げる。例えば、飛行位置、飛行速度、姿勢が、現在の飛行位置(X,Y,Z)から目標位置Bに移動するのに要する時間tの間に均等に変化するとする。そうすると、飛行位置、飛行速度、姿勢の変化率は以下の数式4で表すことができる(図4参照)。
【数4】

…(数式4)
中央制御部114は、かかる飛行位置、飛行速度、姿勢の変化率を時間tの間、積分して飛行経路を導出する。このように飛行状態の情報を有する航空機100自体で飛行経路を完結的に導出することで、大容量の飛行状態の情報を他の航空機100または地上設備に伝達しないで済み、計算処理の効率化を図ることができる。
【0033】
次に、中央制御部114は、飛行経路導出工程において導出された飛行経路と、他の航空機100の飛行経路とを比較して、航空機同士が衝突するか否か判定する(S206:衝突判定工程)。かかる衝突判定は、自機の飛行経路と他の航空機100の飛行経路とが交差する付近において、他の航空機100が同時刻に自機の保護領域に存在するか否かによって判定する。ここで、保護領域は、複数の航空機100が予定の飛行経路を飛行、または、その飛行経路からの変動範囲内を飛行した場合に自機と衝突する可能性がある領域を示し、本実施形態では、空中衝突防止装置(TCAS:Traffic alert and Collision Avoidance System)で決められている以下の表1を用いることする。
【表1】

…(表1)
(「RAレポートに基づくACAS2のアルゴリズムバージョン7の改訂効果」(電子航法研究所報告 NO.116, 2007.1)より引用)
ここで、距離接近時間閾値は衝突までの時間、保護領域半径は自機と他の航空機100との許容される最小距離、高度閾値は、自機と他の航空機100との許容される最小高度差を示す。したがって、例えば、自機が1000〜2350ftの位置を飛行している際に、自機と他の航空機100との距離が0.20NM(Nautical Mile)以下であり、かつ、高度差が300ft以下となった場合、中央制御部114は、15秒以内に衝突する可能性があると判定することとなる。
【0034】
上記衝突判定工程(S206)において、自機と他の航空機100とが衝突する可能性があると判定した場合(S206におけるYES)、中央制御部114は、他の航空機100と飛行経路が交差する付近の飛行速度を高める、または、低く設定する(S208:飛行速度変更工程)。
【0035】
続いて、中央制御部114は、衝突判定工程(S206)において変更した飛行速度が、飛行経路導出工程(S204)で導出された飛行経路において自機が安定して飛行できる所定範囲内の飛行速度であるか否か判定する(S210)。ここで、飛行速度が所定範囲内であれば(S210におけるYES)、中央制御部114は、変更された速度に基づいて、飛行経路を再導出する(S204)。
【0036】
また、飛行速度が所定範囲を超えていれば(S210におけるNO)、最早、飛行速度の変更のみでは、安定して衝突を回避できないと判定し、飛行経路自体の変更を行う(S212)。具体的に、中央制御部114は、導出された飛行経路以外の飛行経路とすることを指示し、かかる導出された飛行経路以外の飛行経路を再導出する(S204)。例えば、図5(a)に示すように、航空機100eの衝突判定工程において、航空機100eの保護領域150内に航空機100dが存在し、航空機100eと航空機100dとが衝突する可能性があると判定したとする。この場合、中央制御部114は、図5(b)の如く、保護領域150を回避した新たな飛行経路152を導出することとなる。
【0037】
このようにして、衝突判定工程(S206)において、衝突の可能性がないと判定されると(S206におけるNO)、中央制御部114は、自機で選択された目標位置と、導出された飛行経路を、他の航空機100に送信する(S214:目標位置、飛行経路送信工程)。そして、現在の飛行経路を導出された飛行経路に切り換える(S216:移動切換工程)。こうして、各航空機100は、導出された飛行経路に即座に移行することとなる。
【0038】
このように、本実施形態では、自機が他の航空機100と衝突すると判定した場合、衝突しない飛行経路となるまで、飛行速度または飛行経路自体を変更して、飛行経路導出工程、および、衝突判定工程を繰り返すこととなる。
【0039】
また、上記の実施形態では言及していないが、飛行経路を導出する対象となる複数の航空機100には目標位置と飛行経路とを特定する順番が予め定められているとしてもよい。この場合、順番が早い航空機100から目標位置と飛行経路とが特定される。ここで、順番が遅い航空機100は、自機より順番の早い航空機100全てが目標位置と飛行経路を特定した後、自機より順番が早い全ての航空機100の目標位置と飛行経路とを受信して、自機の目標位置と飛行経路を特定することとなる。したがって、順番が最も早い航空機100は、他の航空機100の飛行経路に制限されず、最適な目標位置と飛行経路をとることができる。
【0040】
以上、説明したように本実施形態の飛行経路特定方法によれば、各機体がそれぞれ独立して各目標位置に向かうことを前提に、それぞれ最適な目標位置と飛行経路を、飛行経路の変更要求があったタイミングで、他の航空機100の実際の動向を確認しながらリアルタイムに導出でき、複数の航空機同士の衝突を回避しつつ、迅速かつ効率的(無駄な飛行経路を経由することなく)にそれぞれの目標位置に移動することが可能となる。
【0041】
また、航空機の特に無人機においても、飛行中に他の航空機100の飛行経路を確認しつつ、適切な飛行経路を導出して、衝突を回避することが可能となるので、従来困難であった、複数の無人機を同時に並行して飛行させることや編隊飛行させることも可能となる。
【0042】
また、コンピュータに、受信工程と、目標位置選択工程と、飛行経路導出工程と、衝突判定工程と、衝突すると判定した場合、衝突しない飛行経路となるまで、飛行速度または飛行経路自体を変更して、飛行経路導出工程、および、衝突判定工程を繰り返させる工程と、を実行させるためのプログラムや当該プログラムを記録した、コンピュータで読み取り可能なフレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、EPROM、EEPROM、CD、DVD、BD等の記憶媒体も提供される。ここで、プログラムは、任意の言語や記述方法にて記述されたデータ処理手段をいう。
【0043】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0044】
例えば、上述した実施形態においては、自機と他の航空機100とが衝突する可能性があると判定した場合、飛行経路を直接変更する例を挙げて説明したが、目標位置を変更することによって間接的に飛行経路を変更することもできる。この場合、自機と他の航空機100とが衝突すると判定すると、衝突しない飛行経路となるまで、導出された目標位置を複数の目標位置から順次除いて、目標位置選択工程、飛行経路導出工程、および、衝突判定工程を繰り返すこととなる。このように目標位置から変更することで、変更の許容範囲が広がり、複数の航空機100が総合的に最適となる飛行経路を導出することが可能となる。
【0045】
また、上述した実施形態においては、各航空機100が自機の飛行状態に基づいて飛行経路を導出する例を挙げて説明した。しかし飛行経路の導出位置は、かかる場合に限らず、1の航空機100または地上設備において、各航空機100の飛行状態を抽出し、1カ所で全ての航空機の目標位置と飛行経路を導出して、配信するとしてもよい。
【0046】
また、上述した実施形態では、予め定められた順番に各航空機100が、順次、目標位置や飛行経路を導出する例を挙げたが、複数の航空機100と複数の目標位置との全ての組み合わせについて一度に計算し、その中から所定の条件に基づいて最適な組み合わせを選択することもできる。
【0047】
また、上述した実施形態では、複数の航空機100間の衝突のみを対象としたが、かかる場合に限られず、例えば、飛行経路に山や塔といった障害物が含まれる場合、上記他の航空機100同様、その障害物を回避する飛行経路を導出するとしてもよい。
【0048】
また、想定と異なる飛行状態によって飛行経路が所定の変動範囲から逸脱した場合において、複数の航空機100全機に対して再計算を要求し、校正するとしてもよい。
【0049】
また、上述した飛行経路特定方法は、必ずしもフローチャートとして記載された順序に沿って時系列に処理する必要はなく、並列的あるいはサブルーチンによる処理を含んでもよい。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明は、複数の航空機が相異なる複数の目標位置にそれぞれ移動するための飛行経路を特定する飛行経路特定方法およびプログラムに利用することができる。
【符号の説明】
【0051】
100 …航空機
110 …飛行機構
112 …飛行状態センサ
114 …中央制御部
116 …通信部
150 …保護領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の航空機が相異なる複数の目標位置にそれぞれ移動するための飛行経路を特定する飛行経路特定方法であって、
前記複数の航空機のうち任意の1の航空機が、
他の航空機の目標位置と飛行経路とを受信する受信工程と、
前記他の航空機の目標位置を除く前記複数の目標位置から、到達までの時間が最短となる、または、到達に要するエネルギーが最小となる目標位置を選択する目標位置選択工程と、
自機の飛行状態に基づいて現地点から目標位置までの飛行経路を導出する飛行経路導出工程と、
導出された飛行経路と前記他の航空機の飛行経路とを比較して、自機と該他の航空機とが衝突するか否か判定する衝突判定工程と、
を有し、
衝突すると判定した場合、衝突しない飛行経路となるまで、飛行速度または飛行経路自体を変更して、前記飛行経路導出工程、および、前記衝突判定工程を繰り返すことを特徴とする飛行経路特定方法。
【請求項2】
前記複数の航空機には目標位置と飛行経路とを特定する順番が予め定められており、
前記任意の1の航空機は、自機より順番が早い全ての航空機の目標位置と飛行経路とを受信して自機の目標位置と飛行経路とを特定することを特徴とする請求項1に記載の飛行経路特定方法。
【請求項3】
複数の航空機のうち任意の1の航空機に設けられたコンピュータに、
他の航空機の目標位置と飛行経路とを受信する受信工程と、
前記他の航空機の目標位置を除く複数の目標位置から、到達までの時間が最短となる、または、到達に要するエネルギーが最小となる目標位置を選択する目標位置選択工程と、
自機の飛行状態に基づいて現地点から目標位置までの飛行経路を導出する飛行経路導出工程と、
導出された飛行経路と前記他の航空機の飛行経路とを比較して、自機と該他の航空機とが衝突するか否か判定する衝突判定工程と、
衝突すると判定した場合、衝突しない飛行経路となるまで、飛行速度または飛行経路自体を変更して、前記飛行経路導出工程、および、前記衝突判定工程を繰り返させる工程と、
を実行させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−60123(P2013−60123A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−200158(P2011−200158)
【出願日】平成23年9月14日(2011.9.14)
【出願人】(000005348)富士重工業株式会社 (3,010)
【Fターム(参考)】