説明

食品成型方法

【課題】食材本来の味や香りを損なうことなしに、結着性に優れた食品成型物を成型する食品成型方法を提供する。
【解決手段】本発明による食品成型方法は、成型すべき食材を第1の小片の形態にカットする工程と、成型すべき食材を微塵と汁液の形態にすりおろす工程と、第1の小片の形態の食材、微塵及び汁液の形態の食材、及び多糖類の粉末を混合する工程と、混合した食材を圧縮成型する工程と、を有する。好ましくは、成型すべき食材を、第1の小片よりも小さい第2の小片の形態にカットする工程を有し、上記混合する工程は、第2の小片を混合する工程を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品の成型方法に関し、更に詳細には、カットした食材を一定形状に成型する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
豚肉片と、切断した幾つかの玉葱片とを交互に串に刺してから、豚肉片と玉葱片に衣をつけて揚げることによって、串かつが作られる。豚肉片と玉葱片を串に刺す作業は、人手によって、又は、串刺し機によって行われている。切断後の玉葱片は、ばらばらになるので、いずれの方法であっても、玉葱片をある程度人手で並べ揃えたり、整列させたりする必要がある。従って、串刺し作業の工程は低生産性を余儀なくされている。
【0003】
玉葱片を並べ揃えたり整列させたりする代わりに、玉葱片を予め結着材によって結着(結合)させておく方法がある(特許文献1参照)。特許文献1では、多糖類を水で膨潤させ、粘稠なペースト状にして、固形食品を結着する。
【0004】
【特許文献1】特開平6−189697号公報(段落[0008]及び[0012]参照)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の方法で玉葱片を結着させても、結着力が不十分な場合があった。また、水で膨潤させた多糖類を用いるため、食材本来の味や香りが水で希薄になることがあった。
【0006】
そこで、本発明は、食材本来の味や香りを損なうことなしに、結着性に優れた食品成型物を成型する食品成型方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明による食品成型方法は、成型すべき食材を小片にカットする工程と、成型すべき食材を微塵と汁液にすりおろす工程と、小片の形態の食材、微塵及び汁液の形態の食材、及び多糖類の粉末を混合する工程と、混合した食材を圧縮成型する工程と、を有することを特徴としている。
【0008】
このように構成された食品成型方法では、上記混合する工程において、小片の形態の食材の隙間に、微塵及び汁液の形態の食材が入り込む。また、多糖類の粉末が汁液に溶解され、微塵及び汁液が粘着性を有するようになる。従って、小片の形態の食材の間の隙間に入り込んだ微塵及び汁液の形態の食材が結着材となって、小片の形態の食材を効果的に結着させる。その結果、成型後の食材の結着性を確保して、食材がばらばらになることを防止することができる。
【0009】
また、多糖類の粉末を、水で溶解させるのではなく、食材の汁液で溶解させるので、食材の味や香りが水で薄められることが防止される。
【0010】
本発明による食品成型方法において、好ましくは、更に、圧縮成型した食材の表面に、カルシウムの2価イオンを含む溶液を付着させる工程を有する。
【0011】
このように構成された食品成型方法では、圧縮成型した食材の表面をゲル化させて固化させるので、成型後の食材の結着性を向上させることができる。
【0012】
本発明による食品成型方法において、好ましくは、更に、圧縮成型した食材を、カルシウムの2価イオンを含む溶液に浸す工程を有する。
【0013】
このように構成された食品成型方法では、溶液が、成型後の食材の表面から内部に浸透し、食材をゲル化させて固化させるので、成型後の食材の結着性を向上させることができる。
【0014】
本発明による食品成型方法において、好ましくは、更に、成型すべき食材を、第1の小片よりも小さい第2の小片の形態にカットする工程を有し、上記混合する工程は、更に、第2の小片を混合する工程を含む。
【0015】
このように構成された食品成型方法では、第1の小片の間の隙間に、第2の小片が入り込み、更に、第2の小片の間の隙間に微塵及び汁液が入り込むことにより、成型後の食材の決着性を向上させることができる。
【0016】
好ましくは、成型すべき食材が、玉葱である。
【発明の効果】
【0017】
上述したように、本発明による食品成型方法によれば、食材本来の味や香りを損なうことなしに、結着性に優れた食品成型物を成型することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明による食品成型方法が対象とする食材は、例えば、玉葱、キャベツ等の野菜、りんご、マンゴー等果物、魚の切り身などである。本発明の方法は、特に玉葱を使用した時に多糖類の粉末と混合した時に結着作用が生じて好ましい成型品とすることができる。
【0019】
本発明による食品成型方法は、まず、食材を、ダイスカッター、カッター等で小片の形態にする。また、食材を、磨砕機、おろし金等ですりおろし、微塵及び汁液の形態にする。
【0020】
小片の形態の食材の寸法、及び、小片の形態の食材と微塵及び汁液の形態の食材の配合割合は、成型後の食材に応じて異なるのがよい。野菜、果物等の歯ざわりや食感を残すために、小片の形態の食材の大きさは、1辺が7mmの立方体の大きさと1辺が10mmの立方体の大きさの間の範囲内にあることが好ましい。また、小片の形態の食材と微塵及び汁液の形態の食材の配合割合は、小片の形態の食材を均等、均一に密着させるために、微塵及び汁液の形態の食材が、小片の形態の食材の隙間に十分入り込む程度の割合であることが好ましく、例えば、8:2〜9:1である。
【0021】
上記小片(第1の小片)よりも小さい第2の小片の形態の食材を更に準備してもよい。この場合、第2の小片の形態の食材の大きさは、1辺が2mmの立方体の大きさと1辺が7mmの立方体の大ききの間の範囲内にあることが好ましい。また、第1の小片の形態の食材と、第2の小片の形態の食材と、微塵及び汁液の形態の食材の配合割合は、例えば、4:4:2〜4.5:4.5:1である。
【0022】
次いで、小片の形態の食材、及び、微塵及び汁液の形態の食材に、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸カリウム等の多糖類の粉末を添加し、それらを混合する。汁液の形態の食材は、多糖類の粉末を溶解する媒体として働く。出来た多糖類の溶液は、小片の形態の食材及び微塵の形態の食材を互いに結着させる。
【0023】
多糖類の粉末を溶解させるのに、別途、水等の溶液を添加する必要がないので、成型後の食材の味や香りが希薄になることが防止される。
【0024】
次いで、混合した食材を、ドラム成型機、型抜き等で定型に圧縮成型する。
【0025】
成型後、1〜2%の塩化カルシウム、乳酸カルシウム等の溶液を、スプレー乃至は浸漬させることが好ましい。スプレー又は比較的短時間(例えば、5秒)の浸漬により、上記溶液に含まれるカルシウム(Ca)の2価イオンが、成型した食材の表面に付着して、かかる表面をゲル転移させ、成型後の食材の結着性を向上させることができる。また、比較的長時間(例えば、30分)の浸漬により、上記溶液に含まれるカルシウム(Ca)の2価イオンが、成型した食材の内部まで浸透して、成型した食材の内部をゲル転移させ、成型後の食材の結着性を更に向上させることができる。
【0026】
〔実施例〕
単にカットしただけの数枚の玉葱片の代わりに、本発明による食品成型方法によって成型した一口大の成型玉葱を使用して、串かつを生産した。
【0027】
玉葱を、7〜10mmの大きさの第1の小片の形態にカットした。また、玉葱を2〜7mmの大きさの第2の小片にカットした。また、玉葱をすりおろして、微塵及び汁液の形態にした。
【0028】
次いで、第1の小片4kg(40%)と、第2の小片を4kg(40%)と、微塵及び汁液2kg(20%)を混合して、食材の混合物10kgを得た。更に、食材の混合物に、アルギン酸カリウムの粉末75gを添加して、十分に攪拌した。
【0029】
次いで、ドラム式成型機で、食材を直径30mm、高さ15mmの円柱形に圧縮成型した。
【0030】
次いで、圧縮成型した食材を成型機から取り出し、コンベアによって搬送した。食材の上から、1%の塩化カルシウム液をスプレーした。それにより、食材の表面をゲル化させた。
【0031】
次いで、食材を1%の塩化カルシウム液の入ったタンクの中に所定時間(例えば、5分)、浸漬させた。それにより、食材をその中心まで完全に固化させた。
【0032】
次いで、食材の表面を軽く水で洗った後、串かつの具材として串刺し機にて串にさした。
【0033】
成型品を串でさしたときに、くずれた成形品は無かった。すなわち、成型品の結着性を向上させることができた。また、串かつの玉葱の食感は、カットした数枚の玉葱片を用いる従来の串かつの玉葱の食感とほぼ同じであった。その結果、串刺し機による生産性を向上させることができた。
【0034】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は、以上の実施の形態に限定されることなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることはいうまでもない。
【0035】
本発明による食品成型方法を使用することができる食材は、玉葱に限らず、野菜、果物、魚肉・肉端材等不定形な食材である。本発明による食品成型方法により、かかる食材を一定の形状及び均一の重量に成型する際、結着性を向上させることができる。その結果、食材の取扱いの間、成型した食材がくずれることが防止され、製品の規格均一化を図ることができる。また、食材の取扱いが容易になり、整列、計量等、人手を要する作業の軽減化、生産性の向上をもたらすことができる。
【0036】
上述した実施例では、2種類の大きさの小片の形態の玉葱片を準備したけれども、1辺が7mmの立方体大きさと1辺が10mmの立方体の大きさの間の範囲内にある大きさの小片だけを準備してもよい。即ち、8kg(80%)と、微塵及び汁液20%を混合して、混合物10kgを準備してもよい。
【0037】
上述した実施例において、食材が取扱い中にくずれなければ、圧縮成型した食材の表面に、カルシウムの2価イオンを含む溶液を付着させる工程、又は、圧縮成型した食材をかかる溶液に浸漬させる工程を省略してもよい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
食品成型方法であって、
成型すべき食材を第1の小片の形態にカットする工程と、
成型すべき食材を微塵と汁液の形態にすりおろす工程と、
第1の小片の形態の食材、微塵及び汁液の形態の食材、及び多糖類の粉末を混合する工程と、
混合した食材を圧縮成型する工程と、を有することを特徴とする食品成型方法。
【請求項2】
更に、圧縮成型した食材の表面に、カルシウムの2価イオンを含む溶液を付着させる工程を有することを特徴とする、請求項1に記載の食品成型方法。
【請求項3】
更に、圧縮成型した食材を、カルシウムの2価イオンを含む溶液に浸す工程を有することを特徴とする、請求項1に記載の食品成型方法。
【請求項4】
更に、成型すべき食材を、第1の小片よりも小さい第2の小片の形態にカットする工程を有し、
前記混合する工程は、第2の小片を混合する工程を含むことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の食品成型方法。
【請求項5】
成型すべき食材が、玉葱であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の食品成型方法。

【公開番号】特開2010−63436(P2010−63436A)
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−235317(P2008−235317)
【出願日】平成20年9月12日(2008.9.12)
【出願人】(000000066)味の素株式会社 (887)
【Fターム(参考)】