説明

食材の処理方法、並びに、アルデヒド発生抑制材

【課題】畜肉又は魚介類の調理への適用が容易で、畜肉又は魚介類の不快臭を抑制又はマスキングできる技術を提供する。
【解決手段】白麹清酒又は白麹みりんを畜肉又は魚介類に接触させることにより、アルデヒドの発生を抑制し、前記畜肉又は魚介類の不快臭を低減又はマスキングすることを特徴とする食材の処理方法が提供される。当該の食材の処理方法に用いられ、白麹清酒又は白麹みりんを含有することを特徴とするアルデヒド発生抑制材も提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食材の処理方法、並びに、アルデヒド発生抑制材に関する。本発明は、畜肉又は魚介類の不快臭の低減やマスキングに有用なものである。
【背景技術】
【0002】
畜肉又は魚介類の中には、例えば鶏肉、サバなど調理したときに不快臭を有する食材がある。食材の不快臭を低減する、あるいはマスキングするために広く一般的に調理に用いられているのは、清酒や有機酸を多く含有する料理清酒である。
【0003】
清酒中の有機酸濃度、特にクエン酸濃度を高めるために、クエン酸などの有機酸を高生産する、いわゆる生酸性麹を用いて清酒を製造する方法が提案されている(特許文献1〜6)。特に、特許文献6に開示されている調理用清酒は、クエン酸を30重量/容量mg%(3000mg/L)以上の高濃度で含有する臭み消し機能に優れたものである。また、清酒と同様にみりんにおいても、生酸性麹を用いてみりんを製造する方法が提案されている(特許文献7〜9)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭47−28195号公報
【特許文献2】特開昭48−8994号公報
【特許文献3】特開昭57−2676号公報
【特許文献4】特開昭57−58879号公報
【特許文献5】特開昭58−149672号公報
【特許文献6】特開2004−242518号公報
【特許文献7】特開昭57−105183号公報
【特許文献8】特開昭63−152970号公報
【特許文献9】特開2004−180567号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
畜肉又は魚介類を対象とする場合も、料理清酒のクエン酸含量が高いほど不快臭の抑制効果は向上するが、一方で、畜肉又は魚介類に意図しない酸味などを付与してしまうおそれがある。このように、畜肉又は魚介類を調理したときに、酸味などの意図しない風味を付与することなく不快臭を低減等するための技術開発が求められている。
【0006】
本発明の目的は、前記した従来技術が抱える問題点を踏まえ、畜肉又は魚介類の調理への適用が容易で、畜肉又は魚介類の不快臭を抑制等できる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、畜肉又は魚介類を調理したときに生じる不快臭は、畜肉又は魚介類に含まれる脂質が酸化し過酸化物となり、その過酸化物がさらに酸化、重合、分解してアルデヒドをはじめとした2次生成物を生じるものによると考えた。そして本発明者らは、適度なクエン酸濃度を有する白麹清酒又は白麹みりんを用いることにより、畜肉又は魚介類の不快臭を抑制等することができること、並びに、その作用が脂質の酸化抑制によるアルデヒドの発生抑制によるものであることを見出し、本発明を完成した。
【0008】
請求項1に記載の発明は、白麹清酒又は白麹みりんを畜肉又は魚介類に接触させることにより、アルデヒドの発生を抑制し、前記畜肉又は魚介類の不快臭を低減又はマスキングすることを特徴とする食材の処理方法である。
【0009】
本発明は食材の処理方法に係るものであり、食材たる畜肉又は魚介類に白麹清酒又は白麹みりんを接触させることにより、アルデヒドの発生を抑制し、当該畜肉又は魚介類の不快臭を低減又はマスキングするものである。本発明の食材の処理方法では、白麹を用いたことによりクエン酸を適度に多く含有する酒類を用いるので、少量の使用でアルデヒドの発生を抑制することができる。その結果、畜肉又は魚介類に意図しない風味を付与することなく不快臭の抑制又はマスキングを行うことができる。
【0010】
ここで「白麹清酒」とは、酒税法上の清酒であり、白麹を用いた清酒のことである。また「白麹みりん」とは、酒税法でいう混成酒類の中のみりんであり、白麹清酒と同様に、白麹を用いたみりんのことである。例えば以下に掲げる酒類でアルコール分が15度(15v/v%)未満のもの(エキス分が40度以上のものその他政令で定めるものに限る。)である。
(1)米及び米こうじにしょうちゅう又はアルコールを加えて、こしたもの。
(2)米、米こうじ及びしょうちゅう又はアルコールにみりんその他政令で定める物品を加えて、こしたもの。
(3)みりんにしょうちゅう又はアルコールを加えたもの。
(4)みりんにみりんかすを加えて、こしたもの。
【0011】
アルデヒドとしては、ペンタナール、ヘキサナール、ヘプテナール、2−ヘプテナール、オクテナール、等が例示される。
【0012】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の食材の処理方法に用いられ、白麹清酒又は白麹みりんを含有することを特徴とするアルデヒド発生抑制材である。
【0013】
本発明はアルデヒド発生抑制材に係るものであり、本発明の食材の処理方法に用いられ、白麹清酒又は白麹みりんを含有するものである。すなわち、畜肉や魚介類に対して本発明のアルデヒド発生抑制材を接触させる処理を予め行うことにより、当該畜肉や魚介類の不快臭を低減又はマスキングすることができる。本発明のアルデヒド発生抑制材は白麹清酒又は白麹みりんを含有するものであるので、クエン酸を適度に多く含有し、少量の使用でアルデヒドの発生を抑制することができる。その結果、畜肉又は魚介類に意図しない風味を付与することなく不快臭の抑制又はマスキングを行うことができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の食材の処理方法によれば、少量の酒類を用いるだけで畜肉又は魚介類のアルデヒド発生を抑制することができる。その結果、畜肉又は魚介類に意図しない風味を付与することなく不快臭の抑制又はマスキングを行うことができる。
【0015】
本発明のアルデヒド発生抑制材についても同様であり、少量の使用で畜肉又は魚介類のアルデヒド発生を抑制することができる。その結果、畜肉又は魚介類に意図しない風味を付与することなく不快臭の抑制又はマスキングを行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の食材の処理方法は、白麹清酒又は白麹みりんを畜肉又は魚介類に接触させることにより、アルデヒドの発生を抑制し、前記畜肉又は魚介類の不快臭を低減又はマスキングすることを特徴とするものである。
【0017】
前述したように、本発明における「白麹清酒」とは酒税法上の清酒であり、白麹を用いた清酒のことである。清酒の原料は、米、米麹及びその他通常清酒に用いられているものであれば特に限定はなく、また、発酵方法にも特に限定はない。用いる白麹清酒のクエン酸濃度と酸度としては、クエン酸濃度1000mg/L以上が好ましく、酸度として2.0以上あればよい。すなわち、クエン酸濃度1000mg/L未満では畜肉又は魚介類のアルデヒド発生を抑制する効果は小さい。また、クエン酸濃度の上限としては、2000mg/L以下であることが好ましい。すなわち、クエン酸濃度が2000mg/Lを超えると、畜肉又は魚介類に意図しない酸味を付与してしまうおそれがある。さらに、意図しない風味等を食材に付与しないために、アミノ酸度は1.7以下のものが好ましい。
【0018】
なお上記の特許文献6には、クエン酸濃度が30重量/容量mg%以上、アミノ酸濃度が300〜500重量/容量mg%である調理用清酒が記載されているが、これはプロテアーゼを併用してアミノ酸濃度を高めたものであるので、本発明でいうアミノ酸度1.7以下となる白麹清酒とは異なるものである。
【0019】
また前述したように、本発明における「白麹みりん」とは酒税法でいう混成酒類の中のみりんであり、白麹清酒と同様に白麹を用いたみりんのことである。その製造方法は、酒税法に則ったみりんの製造方法であれば特に限定はない。一般的なみりんの製造方法は、まず、搗精、洗米等の原料処理を行い、麹などを添加して仕込醪となし、糖化・熟成する。次に、糖化・熟成を終えた醪を圧搾機で上槽して搾汁液と粕に分離する。最後に、得られた搾汁液に対して精製工程で火入れし、滓下げして清澄な製品みりんとなる。ここでいう原料処理には、精白、洗米、浸漬、水切り、蒸煮、放冷の各工程があるが、更に掛原料の液化及び/又は糖化工程も含んでいる。原料として、米、米麹、醸造用アルコール又は焼酎以外に、デンプン部分加水分解物を使用してもよい。また、必要に応じて酵素製剤を掛原料の処理の液化及び/又は糖化工程並びに醪へ添加してもよい。
【0020】
用いる白麹みりんは、クエン酸濃度1000mg/L以上のものが好ましく、酸度として1.6以上あればよい。すなわち、クエン酸濃度1000mg/L未満では畜肉又は魚介類のアルデヒド発生を抑制する効果は小さい。一方、クエン酸濃度が高すぎると畜肉又は魚介類に意図しない酸味を付与してしまうおそれがあるので、白麹みりんのクエン酸濃度の上限は2000mg/L以下とすることが好ましい。
【0021】
本発明の食材の処理方法では、白麹清酒又は白麹みりんを畜肉又は魚介類に接触させる。接触させる方法としては浸漬が代表的であるが、塗布あるいは噴霧によって接触させてもよい。白麹清酒又は白麹みりんの使用量としては特に限定はなく、クエン酸濃度に応じて意図しない酸味を付与しないように適宜設定すればよい。対象の畜肉又は魚介類にもより、一概には決められないが、例えば、畜肉又は魚介類100部に対して1〜2000部の白麹清酒又は白麹みりんの使用が好ましい。なお、白麹清酒又は白麹みりんの使用量が高いほど、不快臭の低減とマスキングに顕著な効果を示す。また本発明の食材の処理方法では、白麹清酒と白麹みりんを併用してもよい。
【0022】
処理対象となる畜肉としては、食用できる肉であれば特に限定はなく、例えば獣肉類では、牛、豚、馬、羊、山羊、鹿、猪、熊などが挙げられ、鳥肉類では、鶏、アヒル、七面鳥、雉、鴨などが挙げられる。同様に、処理対象となる魚介類としては、食用できる魚介類であれば特に限定はなく、魚類及び貝類などの水中にすむ水産動物が例として挙げられる。さらに、エビ、カニなどの節足動物、イカ、タコなどの軟体動物、クラゲなどの腔腸動物、ウニ、ナマコなどの棘皮動物、ホヤなどの原索動物なども対象となる。
【0023】
本発明のアルデヒド発生抑制材は、本発明の食材の処理方法に用いられ、白麹清酒又は白麹みりんを含有することを特徴とするものである。白麹清酒又は白麹みりんの含量としては、畜肉又は魚介類に対するアルデヒド発生抑制作用を発揮できるものであれば特に限定はないが、アルデヒド発生抑制作用に影響を与える要素を含まない「本質的に白麹清酒からなるアルデヒド発生抑制材」あるいは「本質的に白麹みりんからなるアルデヒド発生抑制材」の態様が好ましい。白麹清酒と白麹みりんの両方を含有するものでもよい。
【0024】
本発明のアルデヒド発生抑制材における好ましいクエン酸濃度、酸度、アミノ酸度としては、上述した白麹清酒と白麹みりんにおける各々の値をそのまま適用することができる。すなわち、白麹清酒を含有するものであれば、クエン酸濃度が1000mg/L〜2000mg/Lであることが好ましく、酸度として2.0以上あればよい。また白麹みりんを含有するものであれば、クエン酸濃度が1000mg/L〜2000mg/Lであることが好ましく、酸度として1.6以上あればよい。
【0025】
本発明のアルデヒド発生抑制材は、そのまま畜肉又は魚介類の不快臭の低減材あるいは不快臭のマスキング材として使用することができる。
【0026】
以下に、実施例をもって本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、以下の実施例において「アルコール」と記載した場合は、特に断らない限りエチルアルコール(エタノール)を指す。
【実施例1】
【0027】
黄麹の代わりに白麹を用い、掛原料として精白米を常法に従って洗米、浸漬、水切り、蒸きょうして蒸米を得て、白麹清酒の製造を行った。なお、酵母は多酸性酵母を用いた。白麹清酒の成分分析値は、アルコール分13.9v/v%、酸度3.8、アミノ酸度1.5(但し、酸度、アミノ酸度は、0.1N NaOH mL/10mL)であった。有機酸の分析値は、クエン酸1527mg/L、コハク酸614mg/L、乳酸260mg/L、リンゴ酸229mg/L、ピログルタミン酸180mg/L、酢酸58mg/Lであった。
【0028】
製造した白麹清酒を希釈するか、クエン酸を添加することにより、クエン酸濃度が100mg/L、500mg/L、1000mg/L、1500mg/L、2000mg/L、2500mg/Lである6種の白麹清酒を調製した。但し、アルコール濃度はすべて13.5v/v%になるようにした。鶏肉ミンチを用いて、各種白麹清酒を鶏肉重量の15%練り込んだ鶏肉団子を調製した。熟練したパネラー11名により鶏肉団子の官能評価試験を行った。なお、対照1として水、対照2として13.5v/v%アルコール水溶液を同時に評価した。試験結果を表1に示す。
【0029】
【表1】

【0030】
表1に示すように、白麹清酒のクエン酸濃度が1000mg/L以上の場合には、鶏肉の生臭みが「少ない」か「感じられない」という評価となり、生臭みの低減とマスキングの効果が認められた。しかし、白麹清酒のクエン酸濃度が2000mg/L以上になると、酸味を感じるようになり、意図しない風味等を食材に付与してしまう結果となった。以上より、クエン酸濃度が1000mg/L〜2000mg/Lの白麹清酒を用いることにより、鶏肉に酸味を付与することなく生臭みを低減・マスキングすることができた。
【0031】
白麹清酒のクエン酸濃度が1000、1500、2000、2500mg/Lで調製した鶏肉団子に対して5倍量の水を添加してホモジナイズし、GC/MSによりアルデヒドを測定した。分析は、キャピラリーカラムDB−WAX(J&W社製)を接続したガスクロマトグラフ6890A〔アジレント社製〕に質量検出器5973〔横河アナリティカルシステムズ(株)製〕を連結したもので、ヘッドスペース部分を固相マイクロ抽出法により常法通り行った。得られたアバンダンス(イオン存在量)より、対照1を0%としてペンタナールとヘキサナールの消臭率を求めた。結果を表2に示す。
【0032】
【表2】

【0033】
表2に示すように、白麹清酒のクエン酸濃度が1000mg/L以上であると、ペンタナール、ヘキサナールといったアルデヒドの発生を抑制する効果があることがわかった。白麹清酒のクエン酸濃度が1500mg/L以上では、ペンタナール、ヘキサナールともによく抑制しているという結果であり、官能評価試験の結果(表1)とも呼応していた。
【実施例2】
【0034】
冷凍鯖70gに白麹清酒(クエン酸濃度1500mg/L)を含む調味液200mL(濃口醤油25mL、上白糖25g、食塩2.4g,白麹清酒20mL、水残量)を加え、10分間加熱し、鯖の煮つけを得た(実施例2)。対照は、市販の料理清酒(クエン酸濃度61mg/L)を含む調味液を用いて、同様に調理したものとした(比較例2)。実施例2と比較例2の鯖の煮つけについて、鯖のアルデヒドに由来する不快臭を、熟練したパネラー11名により官能評価試験を行った。その結果、11名中11名が、比較例2より実施例2の方が、冷凍鯖特有のアルデヒドに由来する不快臭がマスキングされていると回答した。
【実施例3】
【0035】
黄麹の代わりに白麹を用い、常法に従って白麹みりんの製造を行った。白麹みりんの成分分析値は、アルコール分13.1v/v%、酸度1.7(但し、酸度は、0.1N NaOH mL/10mL)であった。有機酸の分析値は、クエン酸1442mg/L、コハク酸7mg/L、乳酸36mg/L、リンゴ酸11mg/L、ピログルタミン酸127mg/L、酢酸22mg/Lであった。
【0036】
クエン酸濃度を1000、1500、2000mg/Lとなるように希釈もしくはクエン酸を添加して、各種白麹みりんを調製した。但し、アルコール濃度はすべて13.0v/v%になるようにした。鶏肉ミンチを用いて、各種白麹みりんを鶏肉重量の15%練り込んだ鶏肉団子を調製した。熟練したパネラー11名により鶏肉団子の官能評価試験を行った。なお、比較例3としてクエン酸濃度60mg/Lの市販の本みりんを用いたものを評価した。その結果、11名中11名が、鶏肉の不快臭がマスキングされていると回答した。
【0037】
白麹みりんのクエン酸濃度が1000、1500、2000mg/Lで調製した鶏肉団子に対して5倍量の水を添加してホモジナイズし、実施例1と同様の方法でGC/MSによりアルデヒドを測定した。得られたアバンダンス(イオン存在量)より、対照3(水)を0%としてペンタナールの消臭率を求めた。結果を表3に示す。
【0038】
【表3】

【0039】
表3に示すように、白麹みりんのクエン酸濃度が1000mg/L以上であると、畜肉の酸化臭であるペンタナールといったアルデヒド発生の抑制に効果があることがわかった。これは、官能評価試験の結果とも呼応していた。
【実施例4】
【0040】
冷凍鯖70gに白麹みりん(クエン酸濃度1500mg/L)を含む調味液200mL(10%食塩水100mL、白麹みりん100mL)を加え、5℃で24時間浸漬した後、冷蔵庫に4日間入れ乾燥させ、鯖のみりん干しを得た(実施例4)。対照は、市販の本みりん(クエン酸濃度60mg/L)を含む調味液を用いて、同様に調理したものとした(比較例4)。実施例4と比較例4の鯖のみりん干しについて、鯖のアルデヒドに由来する不快臭を、熟練したパネラー11名により官能評価試験を行った。その結果、11名中11名が、比較例4より実施例4の方が、冷凍鯖特有のアルデヒドに由来する不快臭がマスキングされていると回答した。
【0041】
実施例4で得られた鯖のみりん干しの過酸化物価(POV)を測定した。POVの測定は、Ishidaらによる方法〔日本調理科学会誌、第38巻、第6号、第486〜490頁、(2005年)〕を若干改変して行った。すなわち、鯖のみりん干しの腹部を2g採取し、水1.5mLを加え、15分静置した後、90%メタノール(0.04%ブチルヒドロキシアニソール含有)5mL、クロロホルム2.5mLを加え、混合した。混合物に、水2.5mL、90%メタノール(0.04%ブチルヒドロキシアニソール含有)5mL、ヘキサン(0.001%ブチルヒドロキシアニソール含有)10mLを順に加え、混合した後、2000rpmで5分間遠心処理した。上層から適当量の測定試料を採取し、一方は試験管に採り油量の測定に供し、もう一方はPOV測定に供した。油量の測定は窒素を吹き付けて溶媒を除去し、残った油の重量を秤量することにより行った。
【0042】
採取したPOV測定試料に合計が2mLとなるようにクロロホルム(0.02%ブチルヒドロキシアニソール含有)を加え、更に氷酢酸(0.02%ブチルヒドロキシアニソール含有)4mL、50%ヨウ化カリウム0.4mLを加え、窒素置換してから密封し、5分間暗所に静置した。2%酢酸カドミウム溶液で10mLまでフィルアップし、40℃の水浴に1分間浸け、2層に分離後、上層を採取し、分光光度計にて波長410nmの吸光度を10mmセルで測定した。ブランクは、POV測定試料を加えず同様に測定を行い、次式によりPOVを算出した。
POV(meq/kg)={(サンプルのOD410nm−ブランクのOD410nm)×60.14+0.69}/{0.008×油の重量(mg)}
結果を表4に示す。
【0043】
【表4】

【0044】
表4に示すように、実施例4のPOVは比較例4の約2/3となっており、実施例4ではPOVの上昇が抑制されていた。これは、白麹みりんによるアルデヒドの発生抑制が、鯖に含まれている魚油等の脂質の酸化が抑制されることによるものであることを裏づける結果であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
白麹清酒又は白麹みりんを畜肉又は魚介類に接触させることにより、アルデヒドの発生を抑制し、前記畜肉又は魚介類の不快臭を低減又はマスキングすることを特徴とする食材の処理方法。
【請求項2】
請求項1に記載の食材の処理方法に用いられ、白麹清酒又は白麹みりんを含有することを特徴とするアルデヒド発生抑制材。

【公開番号】特開2010−233460(P2010−233460A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−82159(P2009−82159)
【出願日】平成21年3月30日(2009.3.30)
【出願人】(302026508)宝酒造株式会社 (38)
【Fターム(参考)】