説明

食肉加工食品の品質改良剤

【課題】
食肉を原料とし加工した食品を加熱調理しても、肉質が硬くなることなく、かつ、肉汁の流出も少ないことから優れた食感が得られるとともに、歩留まりを向上させることのできる、食肉加工食品の品質改良剤および品質改良方法を提供する。
【解決手段】
植物を焼成することによって得られるミネラル製剤用原料から選ばれた少なくとも1種を有効成分として含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、畜肉、魚介肉等の食肉加工食品の品質改良剤および品質改良方法に関する。さらに詳しくは、畜肉を原料とし加工した食品における食感の改良および歩留まりの向上が得られる食肉加工食品の品質改良剤および品質改良方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より食肉加工食品の食感向上および歩留まり向上の目的で、ポリリン酸ナトリウム等の重合リン酸塩が専ら使用されている(特許文献1)。重合リン酸塩は金属封鎖作用によって肉タンパク質中で結びついているカルシウムイオンを除去し、肉タンパク質に構造的変化を与えて食感の軟化をもたらし、また肉タンパク質のpHを上昇させ、保水力を増強させて歩留まりを向上させる。しかしながら、重合リン酸塩は肉素材の加工時の加熱による水分、油脂分の流出抑制には実質的に効果がなく、加工後の冷めた状態では、上記柔らかい食感を保持できず硬い食感となる欠点や体内カルシウムがリン酸塩により排出する問題、さらにはその使用に伴う廃水問題等が論じられ、重合リン酸塩を含まない加工食品が要望されている。
【0003】
以上のように、従来より畜肉等の食肉加工食品の品質改良のための添加剤として業界の要求を十分に満足させるものは知られておらず、その開発が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特願平6−261710
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この発明は、畜肉等の食肉を原料とし加工した食品を加熱調理しても、肉質が硬くなることなく、かつ、肉汁の流出も少ないことから優れた食感が得られるとともに、歩留まりを向上させることのできる食肉加工食品の品質改良剤および品質改良方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、この発明の発明者らは鋭意研究した結果、植物を焼成することによって得られるミネラル製剤用原料を有効成分として含有する食肉加工食品の品質改良剤であれば、食肉加工食品を加熱調理しても肉質が柔らかく、また、肉汁に富んだジューシーな食感が得られること、さらには歩留まりも顕著に向上できることを見出し、この発明を完成させるに至った。
特に、胡麻の種皮、小豆の種皮、蕎麦の種皮及び椿の葉を焼成した後に水溶性溶媒によって抽出した植物性ミネラルから選ばれたすくなくとも1種を併用した場合に相乗効果が得られ、畜肉を原料とし加工した食品を加熱調理しても肉質が柔らかく、また、肉汁に富んだジューシーな食感が得られること、さらには歩留まりも顕著に向上できることを見出した。
【0007】
本発明は、植物を焼成することによって得られるミネラル製剤用原料を有効成分として含有することを特徴とする食肉加工食品の品質改良剤である。
【0008】
すなわち、本発明は、重合リン酸塩を含まずに、植物を焼成することによって得られるミネラル製剤用原料を含有し、特に前記ミネラル製剤用原料は植物の種子、なかでも胡麻の種皮、小豆の種皮、蕎麦の種皮及び椿の葉から選ばれる少なくとも1種の植物を焼成することによって得られる食肉加工食品の品質改良剤である。
【0009】
かくしてこの発明によれば、植物性ミネラル製剤から選ばれた少なくとも1種を有効成分として含有することを特徴とする食肉加工食品の品質改良剤が得られる。
また、この発明によれば、食肉100重量部に対して、植物性ミネラル製剤が0.1〜50重量部となるように添加することを特徴とする食肉加工食品の品質改良方法が提供される。
【発明の効果】
【0010】
この発明の食肉加工食品の品質改良剤および品質改良方法によれば、畜肉、魚介肉等の食肉加工食品、特に畜肉を原料とし加工した食品に添加することで、該加工食品を加熱調理した場合に肉質が柔らかく肉汁に富んだジューシーな食感が得られ、さらに歩留まりも顕著に向上されることができる。更に肉質の鮮度が維持されるため調理後の外観も良い。この発明の食肉加工食品の品質改良剤は食品衛生上安全であり産業上極めて有用である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
この発明で用いる植物性ミネラル製剤とは、脱脂胡麻などの胡麻の種皮、小豆の種皮、蕎麦の種皮、樹木又は椿の葉などの植物を焼成灰化後、イオン交換水または純水等の溶媒にて抽出したものである。
【0012】
植物性ミネラル製剤は、食肉100重量部に対し、0.5〜50重量部となるように添加することを特徴とする。
【0013】
たとえば、本発明に用いられる胡麻はゴマ科ゴマ属(Sesamum indicum)に属する植物であり、熱帯アフリカ原産地で1年草である。ゴマ科には約16属あって、この中の1つがゴマ属である。ゴマ属では現在約38種が知られているが、ほとんど野生種である。これに対して栽培種はたった1種のみであるが、これをさらに品種や系統に分けると世界に約3000種類あるといわれている。草丈1メートル近くになる春まきの一年草で、高温多湿には非常に強い。茎は四角張っていて、葉は下の方では対生で上の方では互生になり、長い柄があり、長円形である。そして、そのさや状の実の中には種子が多数入っている。種子の色には白、黄色、褐色、黒などがある。尚、黒だね種はSesamum orientalisと分類されることも多いが、本発明ではSesamum indicumに属するものとする。本発明においては、すべての品種の胡麻を使用することが出来る。また本発明は上述の通り胡麻も種皮だけでなく、葉、茎をも含まれる。
【0014】
またたとえば小豆は豆科の一年草で中国が原産といわれ、葉は長い柄をもち三小葉に分かれる。小豆の種皮としては、ダイナゴン、ウズラアズキ、シロアズキなどの種皮が使用できる。
【0015】
またたとえば蕎麦は、タデ科の一年草で世界の温帯各地に栽培される。茎は柔軟で直立し丸く赤く、高さは40〜70cmほどで、葉は三角状心臓形で長い葉をもつ。初秋、茎の先に白色の花を群生し、三陵形の皮の黒い果実を結ぶ。本発明では果実から皮を取って蕎麦の種皮のほか、葉、茎を含める。
【0016】
またたとえば椿は、ツバキ科ツバキ属の植物の総称である樹木を利用できる。狭義には、ヤブツバキ(藪椿、あるいは単にツバキとも称される。学名:Camellia japonica)を指す。照葉樹林の代表的な樹木で花期は冬から春である。
【0017】
本発明は、植物を焼成することによって得られるミネラル製剤用原料を有効成分として含有するものであれば、制限されないが、特に種子植物の灰(焼成物)、中でも胡麻、小豆、蕎麦又は椿の各灰(焼成物)は好ましい。より好ましくは胡麻の種皮、小豆の種皮、蕎麦の種皮又は椿の葉の各灰(焼成物)である。焼成温度は500℃〜900℃である500℃未満では、有機物の分解が不十分により分解物の組成物(特にホ゜リフェノール由来)により変色等による外観および食味等の問題が発生する。一方、900℃を超える場合は食肉のジューシー感を損なうアルカリ土類金属特に多価金属類を封鎖するフィチン酸などキレート能を有する有機酸化合物の分解によりその本来有する効果を減じる。
【0018】
この発明の方法において、食肉加工食品への添加は、食肉加工食品の製造工程において原材料に直接添加してもよいし、製造工程中の水に予め溶解し、添加しても良い。
この発明において、食肉加工食品としては、畜肉や魚肉を加工した食品や挽肉を原料とした食品であるハンバーグ、ミートボール、鶏肉の照り焼き、ミーとローフ、つくね、餃子、シュウマイ、中華まん、春巻き、メンチカツ、魚介フライなどが挙げられる。
【0019】
この発明の品質改良剤は、その効果を阻害しない限りにおいて、上記の成分以外にパン粉、鶏卵、たまねぎなどの食品素材、食塩やグルタミン酸ナトリウム、みりん、料理酒などの調味料、砂糖、ブドウ糖、キシロース、水飴、異性化糖、グリチルリチン、ステビア、アスパルティーム、ソルビット等の甘味料、オールスパイス、ペッパー、メース等の香辛料、ソルビン酸、安息香酸ナトリウム等の保存料、アスコルビン酸ナトリウム、ビタミンC,ミックストコフェロール等の酸化防止剤、レシチン、グリセリン脂肪酸エステルなどの乳化剤、キサンタンガム、グアガム、カラギーナン等の増粘安定剤、大豆タンパクおよび小麦グルテンなどの植物タンパク、リン酸架橋澱粉、澱粉加水分解物および有機酸を付加した加工でんぷんやα化澱粉、着色剤、香料などを併用してもよい。
【実施例】
【0020】
この発明を試験例に以下に説明するが、これらの試験例によりこの発明が限定されるものではない。
【0021】
(植物抽出エキスの調整)
小豆種皮、脱脂胡麻種皮、蕎麦の種皮又は椿の葉を電気炉に投入し800℃まで昇温した後、1時間焼成を行い、焼成物を得た。得られた焼成物100gを室温まで冷却した後、水1Lを加えて15時間攪拌抽出後、エバポレーターにて濃縮を行いエキスとして300mlの各ミネラル抽出液を得た。ミネラル抽出液はミネラル製剤用原料の一態様である。
【0022】
(鶏から唐揚げの品質改良効果確認試験)
各実施例で得られた植物ミネラル抽出液を用いて鶏唐揚げを調整し、食感及び歩留まりを評価した。
【0023】
ピックル液
醤油1部、食塩1.4部、砂糖1.2部、L−グルタミン酸Na0.2部、冷水33.8部、植物ミネラル抽出液20部、合計57.6部
【0024】
上記処方のピックル液を調整し、予め15g〜20gにカットした鶏もも肉(100部)に、調整された合計57.6部の上記ピックル液を添加してタンブリング(25rpm、1時間)した。次いでバッターリング(練りこみタイプのから揚げ粉を肉重量に対して30部使用しフライ170〜180℃4分間後、放冷して唐揚げ製品を得た。
【0025】
比較例
本発明は植物ミネラルエキスに代えてポリリン酸ナトリウム0.5部を水19.5部に溶解して用いて以外は実施例と同様にして比較唐揚げ製品を得た。対象品はこの実施例の品質改良剤を入れず、ピックル液に水20部を足したものとした。
【0026】
試験例1
実施例および比較例のそれぞれで得た唐揚げ製品ならびについて重量測定結果を最初の肉素材重量を100とする相対値で求め、それらを対比して、製品の歩留まりを比較した。結果を表に示す。
【0027】
【表1】

【0028】
表1から本発明の実施品(実施例1)が比較品(比較例1)及び対象品(比較例2)と比べて歩留まり向上効果があきらかである。
【0029】
試験例2
また、食感を無作為に選別した10名のパネラーによる試食試験によって評価した。
食感をソフト感、ジューシー感の項目についてそれぞれ±2段階(+2非常にソフト
+1ソフト、0同じ、−1少し硬い、−2かなり硬い)で評価をおこなった。
【0030】
【表2】

【0031】
表より従来のリン酸塩を利用した比較品(比較例1)と比べてもよりソフトでジューシーな食感を有する製品が得られることが明らかである。
【0032】
試験例3
次に、各実施例で得られた植物ミネラル抽出液を用いて鶏胸肉を調整し、食感及び歩留まりを評価した。鶏胸肉重量に対して塩水(1%濃度)を等重量加えた。検体添加量(各植物抽出液)は塩水を25%置換した。焼成貝カルシウムは0.1%添加とした、前記胡麻で添加量を5%での試験も並行して実施した。
【0033】
浸漬した鶏肉は4日間冷蔵保存した後、外観観察後に蒸し器で10分間蒸したものの重量を測定し歩留まりを求めた。その後、蒸した鶏肉を電子レンジでレンジアップ(500W 2分間)して歩留まりを求めた。
【0034】
【表3】

【0035】
その結果、表中、外観は椿葉は鮮紅色、他はブランクとほぼ同等であった。蒸し後の歩留まりは、検体である蕎麦由来ミネラル抽出液が107%、椿葉由来ミネラル抽出液が102%と元の生肉重量以上となった。また食感は無添加が硬いのに対して蕎麦由来ミネラル抽出液、椿葉由来ミネラル抽出液は非常にソフトであった。
【0036】
次に、海老について試験をした。
その試験方法は、海老の重量に対して25%添加して実施し、1日後に茄で2分での歩留まりと食感を評価した。
その結果を表4に示す、
【0037】
【表4】

【0038】
実施例3は外観はやや椿葉由来ミネラル抽出液が黄色であるが、歩留まりは椿葉由来ミネラル抽出液が優れ、食感もプリプリ感とソフト感に優れていた。
【0039】
次に魚肉について評価した。
マグロのフィレ肉重量を測定後、インジェクター(ミニインジェクターTN−SP18型(株)トーニチ製)注射針外径2.5mmにて植物ミネラル抽出液を塩水(1%)を30ml注入した。その切り身を−40℃で冷凍する。フィレ肉を数枚にカットしその重量を測定しホットプレート(表面温度200℃)で切り身内部温度80℃になるまで加熱しその重量を測定した。
【0040】
焼後歩留(%)=焼後重量/焼前重量×100
【0041】
【表5】

【0042】
その結果、特に蕎麦由来ミネラル抽出液は焼後歩留まりが向上し食感もソフト感に優れていた。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物を焼成することによって得られるミネラル製剤用原料を有効成分として含有することを特徴とする食肉加工食品の品質改良剤。
【請求項2】
前記ミネラル製剤用原料が、胡麻の種皮、小豆の種皮、蕎麦の種皮及び椿の葉の少なくとも1種の焼成物である請求項1記載の食肉加工食品の品質改良剤。
【請求項3】
食肉加工食品が、畜肉を加工した食品である請求項1又は2である品質改良剤。
【請求項4】
請求項1記載の品質改良剤を使用する食肉加工食品の品質改良方法であって、
食肉100重量部に対し、植物性ミネラル製剤が0.5〜50重量部となるように添加することを特徴とする食肉加工食品の品質改良方法。
【請求項5】
食肉加工食品が、畜肉を加工した食品である請求項4記載の食肉加工食品の品質改良方法。


【公開番号】特開2011−130695(P2011−130695A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−292122(P2009−292122)
【出願日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【出願人】(505306348)有限会社サニーヘルツジャパン (2)
【Fターム(参考)】