説明

飲料殺菌方法および飲料殺菌装置

【課題】加熱時に気体が発生する飲料が充填された容器が配置された圧力室の温度昇降時であっても容器を変形・破損させることなしに、容器内の飲料を加熱殺菌する方法および製造装置を提供する。
【解決手段】殺菌するのに必要な温度まで加熱すると内部から気体が発生する飲料が充填された状態で密封された容器を圧力室に配置し、容器の圧力(M2)と圧力室の圧力(M1)との間の圧力差(M2−M1)が所定の範囲内に在るように圧力室の圧力を上昇させると共に、圧力室内の温度(L1)を所定の温度まで上昇させて容器の温度(L2)を上昇させ、圧力室内の容器を所定の温度で所定の時間だけ保持することにより容器内の飲料を殺菌し、容器の圧力と圧力室の圧力との間の圧力差が所定の範囲内に在るように圧力室の圧力を下降させると共に、圧力室内の温度を下降させて容器の温度を下降させるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、殺菌するのに必要な温度まで加熱すると内部から気体が発生する飲料、例えばアルコールなどの低沸点成分を含んだ飲料または炭酸ガスを含んだ炭酸飲料を殺菌するための飲料殺菌方法およびこの方法を実施する飲料殺菌装置に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、容器に充填されて密封された飲料は殺菌可能な所定の温度において所定時間だけ維持されることによって殺菌されている。また、加熱すると内部から気体が発生する飲料、例えばアルコールなどの低沸点成分を含んだ飲料または炭酸ガスを含んだ炭酸飲料であって、且つ植物の組織成分を含有しない飲料の場合には、炭酸ガスの作用、すなわちpH値の低下や酸素量低下などの作用によって微生物の増殖を抑制できるので、加熱殺菌処理は行われていない。ところが、加熱すると内部から気体が発生する飲料であっても、植物の組織成分を含んでいる場合には加熱殺菌が必要とされる場合があり、このような場合には、前述した飲料が充填されて密封された複数の容器に大気圧下で熱水を連続的に散布することにより容器の加熱殺菌を行うパストライザ装置が使用されている。このパストライザ装置は大気圧下で加熱殺菌を行っているので、容器を加熱できる上限温度は比較的低い。このため、パストライザ装置の加熱上限温度よりも高い温度で殺菌することが必要となる場合には、容器を配置するための密閉空間を内部に形成できるレトルト装置が用いられている。レトルト装置は、この密閉空間内で熱水を容器に散布できるので、パストライザ装置の場合よりもさらに高温下で加熱殺菌することが可能となっている。
【0003】
ところが、このような加熱殺菌処理が必要な飲料が密封された容器を殺菌可能な所定の温度まで加熱すると、例えば低沸点成分の気化または炭酸ガスの発生によって容器内の圧力が急激に上昇する。図4は容器として250ml用アルミ缶を採用した場合の容器の温度と容器の内圧との関係を示す図である。この250ml用アルミ缶の限界圧は破線で示すように例えば約630kPa(ゲージ圧)である。図4に示されるように例えば容器内に充填した飲料が2.5vol%の炭酸を含んでいる場合には大気圧下において缶を約65℃程度よりも高い温度まで昇温すると、缶の内圧と大気圧との間の圧力差が缶の限界圧(ゲージ圧)を越えるので缶が変形・破損する。従って、容器の加熱時に容器内外の圧力差が限界圧(ゲージ圧)を越えないように、比較的低温下で加熱殺菌処理を行う必要がある。このため、加熱殺菌処理が必要で加熱時に内部から気体が発生する飲料がアルコールなどの低沸点成分を含む場合には低沸点成分の含有量が多いほど、また、このような飲料が炭酸ガスを含んだ炭酸飲料である場合には炭酸ガスの含有量が多いほど、加熱温度を低くする必要がある。従って、このような飲料を加熱殺菌する際には加熱処理時間が延長されるために、生産性が著しく低下する。また、加熱温度は飲料の殺菌可能温度以上にする必要があるが、低沸点成分および/または炭酸ガスの含有量によっては加熱温度を殺菌可能温度よりも下げざるを得ない場合も生じ、このような場合には飲料を加熱したとしても飲料を殺菌することにはならない。さらに、加熱処理時間を延長することによって飲料内の香味成分が熱劣化してその風味が損なわれる可能性もある。
【0004】
このような問題を解決するために、特許文献1においては飲料が充填された容器をレトルト装置の圧力室内に配置し、飲料から気体が発生する温度以上に加熱された液状熱媒を容器に散布しつつ、圧縮空気を供給することによって圧力室内の圧力を加圧することが開示されている。これにより、殺菌するのに必要な温度まで容器を加熱することにより飲料から気体が発生して容器の圧力が上昇したとしても容器の圧力と圧力室の圧力との間の圧力差は限界圧を越えないので、容器が変形・破損することなしに当該飲料を加熱殺菌することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−221062号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示されるレトルト装置においては、実際に殺菌を行っているときには容器の変形・破損は生じないものの、圧力室の温度を殺菌可能な温度まで上昇させるとき、および/または容器を圧力室から取出すために圧力室の温度を下降させるときには圧力室に配置された容器が変形・破損しうるという問題が残っている。
【0007】
そこで本発明者は上記課題を克服すべく鋭意研究を重ねた結果、容器の圧力と圧力室の圧力との間の圧力差が限界圧を越えないように圧力室の温度昇降作用を制御することによって上記課題を解決できるとの知見を得て、飲料殺菌方法および飲料殺菌装置を構築し、本発明を完成するに至った。
【0008】
従って、本発明は、飲料、特に殺菌するのに必要な温度まで加熱すると内部から気体が発生する飲料が充填された容器が配置された圧力室の温度昇降時であっても容器を変形・破損させることなしに、容器内の飲料を加熱殺菌することのできる飲料殺菌方法およびこの殺菌方法を実施する飲料殺菌装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前述した目的を達成するために1番目の発明によれば、飲料が充填された状態で密封された容器を圧力室に配置し、前記圧力室の圧力を第一の圧力まで上昇させ、第一の温度における前記容器の圧力と前記圧力室の前記第一の圧力との間の圧力差が所定の範囲内に在るように前記圧力室内の温度を前記第一の温度まで上昇させて前記容器の温度を上昇させ、前記圧力室を前記第一の温度で所定の時間だけ保持することにより前記容器内の飲料を殺菌し、前記第一の温度よりも低い第二の温度における前記容器の圧力と前記圧力室の前記第一の圧力との間の圧力差が所定の範囲内に在るように前記圧力室内の温度を前記第二の温度まで下降させて前記容器の温度を下降させ、前記圧力室の圧力を前記第一の圧力よりも低い第二の圧力まで下降させるようにした飲料殺菌方法が提供される。
【0010】
すなわち1番目の発明においては、容器周りの圧力、つまり圧力室の圧力を第一の圧力まで予め高めた後で圧力室の温度を上げている。このため、圧力室の温度上昇に伴って容器内部の圧力が上昇しても圧力室内における容器の内圧と外圧との間の圧力差が容器の限界圧(ゲージ圧)を越えることはなくなるので、圧力室の温度上昇時であっても容器が変形・破損するのを避けられる。さらに、1番目の発明によれば、圧力室の温度を第二の温度まで低くすることにより容器内部の圧力を予め低くした後で圧力室の圧力を下降させている。つまり、圧力室内における容器の内圧と外圧との間の圧力差を予め小さくしてから圧力室の圧力を下降させているので、圧力室内における容器の内圧と外圧との間の圧力差が容器の限界圧(ゲージ圧)を越えることはなく、従って、圧力室の温度下降時であっても容器が変形・破損するのを避けられる。つまり、1番目の発明においては、飲料が充填された容器が配置された圧力室の温度昇降時であっても容器を変形・破損させることなしに、容器内の飲料を加熱殺菌することが可能となる。
【0011】
2番目の発明によれば、飲料が充填された状態で密封された容器を圧力室に配置し、前記容器の圧力と前記圧力室の圧力との間の圧力差が所定の範囲内に在るように前記圧力室の圧力を上昇させると共に前記圧力室内の温度を所定の温度まで上昇させて前記容器の温度を上昇させ、前記圧力室を前記所定の温度で所定の時間だけ保持することにより前記容器内の飲料を殺菌し、前記容器の圧力と前記圧力室の圧力との間の圧力差が所定の範囲内に在るように前記圧力室の圧力を下降させると共に前記圧力室内の温度を下降させて前記容器の温度を下降させるようにした飲料殺菌方法が提供される。
【0012】
すなわち2番目の発明においては、圧力室内の圧力と容器の圧力との間の圧力差が所定の範囲内にあるように圧力室内の圧力を上昇および下降させているので、圧力室の温度を昇降しているときであっても、容器の内圧と外圧との間の圧力差が限界圧(ゲージ圧)を越えることはなく、これにより、飲料が充填された容器が配置された圧力室の温度昇降時であっても容器を変形・破損させることなしに、容器内の飲料を加熱殺菌することが可能となる。さらに、2番目の発明においては、圧力室の圧力上昇作用と温度上昇作用とを同時に行うと共に、圧力室の圧力下降作用と温度下降作用とを同時に行うようにしているので、1番目の発明の場合よりも短時間で飲料の殺菌処理を行うのが可能となる。
【0013】
3番目の発明によれば、1番目または2番目の発明において、前記飲料は、当該飲料を殺菌するのに必要な温度まで加熱すると内部から気体を生じさせる飲料である。
すなわち3番目の発明においては、このような飲料が充填されている容器の温度上昇時に容器内部の圧力が通常の飲料の場合よりも大幅に上昇しうるので、容器の温度を上昇させるときに圧力室の圧力を高めることは極めて有利となりうる。また、殺菌するのに必要な温度まで加熱すると内部から気体を生じさせる飲料は、アルコールなどの低沸点成分を含んだ飲料または炭酸ガスを含んだ炭酸飲料でありうる。
【0014】
4番目の発明によれば、1番目または3番目の発明において、前記圧力室内の温度を下降させてから所定の時間が経過した後に、前記圧力室の圧力を下降させるようにした。
すなわち4番目の発明においては、前記圧力差が前記所定の範囲を越えない程度に容器の圧力が低下するのに十分な時間が経過した後に圧力室の圧力を下降させているので、容器の圧力と圧力室の圧力との間の圧力差が前記所定の範囲または限界圧(ゲージ圧)を越えるのを確実に妨げることができる。
【0015】
5番目の発明によれば、1番目から4番目のいずれかの発明において、前記容器に機械的な力を加えて前記容器の圧力を上昇させることを含む。
すなわち5番目の発明においては、容器の圧力を上昇させるために圧力室の圧力を上昇させることに加えて、容器に機械的な力を加えているので、圧力室の圧力によって容器の圧力を上昇させるのを補助することが可能となる。従って、例えば圧力室の圧力を圧縮空気の供給によって高めている場合には、使用される圧縮空気量を低減することができる。また、圧縮空気の供給のみによって圧力室の圧力を高めていると共に加熱水を圧力室に供給することにより容器の温度を高めている場合には、圧力室の圧力が或る値を越えると加熱水を圧力室内に供給するのが困難となるので、高圧力下でも加熱水を供給可能とするために比較的高揚程のポンプが必要とされる。しかしながら、5番目の発明においては容器に機械的な力を加える分だけ圧力室内における圧縮空気量は少なくて済み、その結果、加熱水を圧力室に比較的容易に供給できるようになるので、加熱水を供給するためのポンプは揚程が比較的低いもので足りる。
【0016】
6番目の発明によれば、飲料が充填された状態で密封された容器を配置する圧力室と、前記圧力室の圧力を昇降させられる圧力昇降手段と、前記圧力室の温度を昇降して前記容器の温度を昇降させられる温度昇降手段と、前記圧力昇降手段と前記温度昇降手段とを制御して前記容器内の飲料を殺菌する制御手段とを具備し、前記制御手段は、前記圧力室の圧力を前記圧力昇降手段によって第一の圧力まで上昇させて、第一の温度における前記容器の圧力と前記圧力室の前記第一の圧力との間の圧力差が所定の範囲内に在るように前記圧力室内の温度を前記温度昇降手段によって前記第一の温度まで上昇させて、前記圧力室を前記第一の温度で所定の時間だけ保持して前記容器内の飲料を殺菌した後に、前記第一の温度よりも低い第二の温度における前記容器の圧力と前記圧力室の前記第一の圧力との間の圧力差が所定の範囲内に在るように前記圧力室内の温度を前記温度昇降手段によって前記第二の温度まで下降させて、前記圧力室の圧力を前記圧力昇降手段によって前記第一の圧力よりも低い第二の圧力まで下降させるようにした飲料殺菌装置が提供される。
【0017】
すなわち6番目の発明においては、容器周りの圧力、つまり圧力室の圧力を第一の圧力まで予め高めた後で圧力室の温度を上げている。このため、圧力室の温度上昇に伴って容器内部の圧力が上昇しても圧力室内における容器の内圧と外圧との間の圧力差が容器の限界圧(ゲージ圧)を越えることはなくなるので、圧力室の温度上昇時であっても容器が変形・破損するのを避けられる。さらに、6番目の発明によれば、圧力室の温度を第二の温度まで低くすることにより容器内部の圧力を予め低くした後で圧力室の圧力を下降させている。つまり、圧力室内における容器の内圧と外圧との間の圧力差を予め小さくしてから圧力室の圧力を下降させているので、圧力室内における容器の内圧と外圧との間の圧力差が容器の限界圧(ゲージ圧)を越えることはなく、従って、圧力室の温度下降時であっても容器が変形・破損するのを避けられる。つまり、6番目の発明においては、飲料が充填された容器が配置された圧力室の温度昇降時であっても容器を変形・破損させることなしに、容器内の飲料を加熱殺菌することが可能となる。
【0018】
7番目の発明によれば、飲料が充填された状態で密封された容器を配置する圧力室と、前記圧力室の圧力を昇降させられる圧力昇降手段と、前記圧力室の温度を昇降して前記容器の温度を昇降させられる温度昇降手段と、前記圧力昇降手段と前記温度昇降手段とを制御して前記容器内の飲料を殺菌する制御手段とを具備し、前記制御手段は、前記容器の圧力と前記圧力室の圧力との間の圧力差が所定の範囲内に在るように前記圧力室の圧力を前記圧力昇降手段によって上昇させつつ前記温度昇降手段によって前記圧力室内の温度を所定の温度まで上昇させた状態で前記容器を所定時間だけ保持して殺菌した後に、前記容器の圧力と前記圧力室の圧力との間の圧力差が所定の範囲内に在るように前記圧力室の圧力を前記圧力昇降手段によって下降させつつ前記温度昇降手段によって前記圧力室内の温度を下降させるようにした飲料殺菌装置が提供される。
【0019】
すなわち7番目の発明においては、圧力室内の圧力と容器の圧力との間の圧力差が所定の範囲内にあるように圧力室内の圧力を上昇および下降させているので、圧力室の温度を昇降しているときであっても、容器の内圧と外圧との間の圧力差が限界圧(ゲージ圧)を越えることはなく、これにより、飲料が充填された容器が配置された圧力室の温度昇降時であっても容器を変形・破損させることなしに、容器内の飲料を加熱殺菌することが可能となる。さらに、7番目の発明においては、圧力室の圧力上昇作用と温度上昇作用とを同時に行うと共に、圧力室の圧力下降作用と温度下降作用とを同時に行うようにしているので、6番目の発明の場合よりも短時間で飲料の殺菌処理を行うのが可能となる。
【0020】
8番目の発明によれば、6番目または7番目の発明において、前記飲料は、当該飲料を殺菌するのに必要な温度まで加熱すると内部から気体を生じさせる飲料である。
すなわち8番目の発明においては、このような飲料が充填された容器の温度上昇時に容器内部の圧力が通常の飲料の場合よりも大幅に上昇しうるので、容器の温度を上昇させるときに圧力室の圧力を高めることは極めて有利となりうる。また、殺菌するのに必要な温度まで加熱すると内部から気体を生じさせる飲料は、アルコールなどの低沸点成分を含んだ飲料または炭酸ガスを含んだ炭酸飲料でありうる。
【0021】
9番目の発明によれば、6番目または8番目の発明において、前記温度昇降手段によって前記圧力室内の温度を下降させて所定の時間が経過した後に、前記圧力昇降手段によって前記圧力室の圧力を下降させるようにした。
すなわち9番目の発明においては、前記圧力差が前記所定の範囲を越えない程度に容器の圧力が低下するのに十分な時間が経過した後に圧力室の圧力を下降させているので、容器の圧力と圧力室の圧力との間の圧力差が前記所定の範囲または限界圧を越えるのを確実に妨げることができる。
【0022】
10番目の発明によれば、6番目から9番目のいずれかの発明において、前記圧力昇降手段が、前記圧力室内の容器に機械的な力を加えることにより前記容器を加圧する機械的加圧部を含む。
すなわち10番目の発明においては、容器の圧力を上昇させるために圧力室の圧力を上昇させることに加えて、容器に機械的な力を加えているので、圧力室の圧力によって容器の圧力を上昇させるのを補助することが可能となる。従って、例えば圧力室の圧力を圧縮空気の供給によって高めている場合には、使用される圧縮空気量を低減することができる。また、圧縮空気の供給のみによって圧力室の圧力を高めていると共に加熱水を圧力室に供給することにより容器の温度を高めている場合には、圧力室の圧力が或る値を越えると加熱水を圧力室内に供給するのが困難となるので、高圧力下でも加熱水を供給可能とするために比較的高揚程のポンプが必要とされる。しかしながら、10番目の発明においては容器に機械的な力を加える分だけ圧力室内における圧縮空気量は少なくて済み、その結果、加熱水を圧力室に比較的容易に供給できるようになるので、加熱水を供給するためのポンプは揚程が比較的低いもので足りる。
【0023】
11番目の発明によれば、飲料が充填された状態で密封された容器を配置するための室と、前記室内に配置された前記容器に機械的な力を加えることにより前記容器を加圧する機械的加圧手段と、前記圧力室の温度を昇降して前記容器の温度を昇降させられる温度昇降手段とを具備し、前記機械的加圧手段により加圧された前記容器を前記温度昇降手段により昇温された前記室内において所定の時間だけ保持することによって前記容器内の飲料を殺菌する飲料殺菌装置が提供される。
【0024】
すなわち11番目の発明においては、機械的加圧手段により容器に力を直接的に加えることによって容器の圧力を上昇させているので、容器の圧力を間接的に高めるような場合、例えば容器周りの空気の圧力を上昇させることにより容器の圧力を高める場合と比較して、容器の圧力を迅速かつ確実に上昇させられる。
【0025】
12番目の発明によれば、11番目の発明において、前記飲料は、当該飲料を殺菌するのに必要な温度まで加熱すると内部から気体を生じさせる。
すなわち12番目の発明においては、容器の温度上昇時に容器内部の圧力が通常の飲料の場合よりも大幅に上昇しうるので、容器の温度を上昇させるときに圧力室の圧力を高めることは極めて有利となりうる。また、殺菌するのに必要な温度まで加熱すると内部から気体を生じさせる飲料は、アルコールなどの低沸点成分を含んだ飲料または炭酸ガスを含んだ炭酸飲料でありうる。
【発明の効果】
【0026】
各発明によれば、飲料が充填された容器が配置された圧力室の温度昇降時であっても容器を変形・破損させることなしに、容器内の飲料を加熱殺菌することができるという共通の効果を奏しうる。
【0027】
さらに、2番目の発明によれば、殺菌処理を短時間で完了できるという効果を奏しうる。
さらに、3番目の発明によれば、容器の温度を上昇させるときに圧力室の圧力を高めることは極めて有利となるという効果を奏しうる。
さらに、4番目の発明によれば、容器の圧力と圧力室の圧力との間の圧力差が前記所定の範囲を越えるのを確実に妨げることができるという効果を奏しうる。
さらに、5番目の発明によれば、圧力室の圧力によって容器の圧力を上昇させるのを補助することが可能となるという効果を奏しうる。
【0028】
さらに、7番目の発明によれば、殺菌処理を短時間で完了できるという効果を奏しうる。
さらに、8番目の発明によれば、容器の温度を上昇させるときに圧力室の圧力を高めることは極めて有利となるという効果を奏しうる。
さらに、9番目の発明によれば、容器の圧力と圧力室の圧力との間の圧力差が前記所定の範囲を越えるのを確実に妨げることができるという効果を奏しうる。
さらに、10番目の発明によれば、圧力室の圧力によって容器の圧力を上昇させるのを補助することが可能となるという効果を奏しうる。
【0029】
さらに、11番目の発明によれば、容器の圧力を迅速かつ確実に上昇させられるという効果を奏しうる。
さらに、12番目の発明によれば、容器の温度を上昇させるときに圧力室の圧力を高めることは極めて有利となるという効果を奏しうる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の第一の実施形態に基づく飲料殺菌装置の略図である。
【図2】(a)圧力室および容器の温度と時間との関係を示す図である。(b)圧力室および容器の圧力と時間との関係を示す図である。
【図3】(a)本発明の第二の実施形態に基づく飲料殺菌装置の部分拡大図である。 (b)本発明の他の実施形態に基づく飲料殺菌装置の部分拡大図である。
【図4】容器の温度と内圧との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態を説明する。以下の図面において同一の部材には同一の参照符号が付けられている。理解を容易にするために、これら図面は縮尺を適宜変更している。
図1は本発明の第一の実施形態に基づく飲料殺菌装置の略図である。図1に示されるように飲料殺菌装置10は圧力室20を具備しており、圧力室20内には支持ベース21が設けられている。飲料が充填された状態で密封された複数の容器(図1には示さない)を担持するコンテナ22が図示されるように支持ベース21上に設置できるようになっている。ここで、容器内に充填される飲料は殺菌するのに必要な温度まで加熱すると内部から気体が発生する飲料、例えばアルコールなどの低沸点成分を含む飲料または炭酸ガスを含む炭酸飲料であって、例えば植物の組織成分を含むために加熱殺菌処理が必要とされるものとする。また、図1には示さない容器はアルミ缶、スチール缶、ペットボトル、ガラス瓶、紙缶、パウチなどを含んでいる。なお、コンテナ22を用いることなしに、複数の容器を支持ベース21上に直接的に設置するようにしてもよい。
【0032】
図1に示されるようにエアタンク12から延びる配管51は減圧弁群15の下流において二つの配管52、56に分岐しており、一方の配管52が圧力室20内部に通じている。配管56に設けられている開閉弁45は通常は閉鎖されているので、エアタンク12内の空気はコンプレッサ11によって圧縮された状態で配管51および配管52を通って圧力室20内に供給されうる。
【0033】
また、給水槽13Aから延びる配管53Aはポンプ19Aおよび弁17Aの下流において二つに分岐しており、それぞれが圧力室20内においてシャワーノズル23、24に接続されている。給水槽13A内に貯蔵される液体、例えば水はポンプ19Aを駆動することによってシャワーノズル23、24から圧力室20内に供給される。一方、給水槽13Bから延びる配管53Bはポンプ19Bおよび弁17Bの下流において、前記管53Aの弁15Aの下流に連接されている。給水槽13B内に貯蔵される液体、例えば前記給水槽13A内の水よりも低温の水はポンプ19Bを駆動することによってシャワーノズル23、24から圧力室20内に供給される。後述するように圧力室20内部は高圧にされるので、ポンプ19A、19Bの揚程は従来使用されていたポンプの揚程(約20mから29m)よりも高くされており、これにより高圧の圧力室20内に水を供給することが可能となる。好ましい実施形態においては、ポンプ19A、19Bの揚程は約40mから約51mでありうる。
【0034】
さらにスチームアキュムレータ31から延びる配管54は減圧弁32および自動弁33の下流において圧力室20に接続されており、スチームアキュムレータ31により形成された蒸気が圧力室20内に供給されるようになっている。飲料殺菌装置10の使用時には図示されるように支持ベース21の下方付近まで水が貯められているので、配管54は水を加熱するために圧力室20の下部に接続されているのが好ましい。
【0035】
また、圧縮空気を供給するための配管51から分岐した配管56は開閉弁45を介して排出室41に接続されている。配管56は圧力室20内に供給される圧縮空気を排出する際に用いられる。さらに、圧力室20内に貯められた水を排出するための配管55Aが排出室41に接続されている。一旦、排出室41に排出された圧縮空気および水は配管58を通じて排水タンク42まで排出されるようになっている。さらに、図示されるように、排水タンク42は減圧弁43Aを介して給水槽13Aまで接続されている。また、圧力室20内に貯められた水を排出するための配管55Bが減圧弁43Bを介して給水槽13Aに接続されている。
【0036】
さらに、圧力室20の下部から延びる配管50はポンプ19Cを介して圧力室20の上部に接続している。ポンプ19Cを駆動させることによって圧力室20に貯まった水Aが配管50を循環して圧力室20の上部に供給される。配管50の先端は多孔板14の上方に位置決めされているので、水を多孔板14全体からコンテナ22に向かって散布することができる。
【0037】
さらに、図1に示されるように圧力室20には安全弁27、28、29が設けられており、圧力室20内の圧力が過剰に上昇した場合に圧力室20内の容器が自動的に保護されうるようになっている。
【0038】
飲料殺菌装置10を使用する際には、飲料が充填されて密封された複数の容器をコンテナ22内に投入し、このコンテナ22を支持ベース21上に配置した後に、圧力室20を密封閉鎖する。以下、本発明の一つの実施形態における飲料殺菌装置10の圧力室20内における加熱作用および加圧作用について説明する。図2(a)は圧力室20および容器の温度と時間との関係を示す図であり、図2(b)は圧力室20および容器の圧力と時間との関係を示す図である。図2(a)においては破線L1は圧力室20内部の温度を示しており、実線L2は容器内部の温度を示している。さらに、図2(b)においては破線M1は圧力室20内部の圧力、つまり容器の外圧を示しており、実線M2は容器の圧力、つまり容器の内圧を示している。
【0039】
図2(a)に示されるように、複数の容器を担持したコンテナ22を圧力室20内に配置して圧力室20を閉鎖した時間を0とする。図2(a)に示される時間0から約3分の間の期間T0においては、ポンプ19Aを駆動させると共に弁17Aを開放することにより給水槽13A内の液体、例えば水をシャワーノズル23、24から圧力室20内に供給する。これにより、水Aを圧力室20の下方に貯める。水Aの液面Lが支持ベース21に到達しない程度に水Aが貯まると、ポンプ19Aを止めると共に弁17Aを閉鎖することにより水の供給を停止する。後述するように水Aは加熱されるので、水Aの液面Lが支持ベース21上まで到達してコンテナ22内の複数の容器が水により浸漬される場合には容器間に存在する空気溜まりのために加熱斑が容器表面に生じる可能性があるが、水Aの液面Lを前述したように調節することによって、コンテナ22内の容器に加熱斑が生じるのを避けられる。次いで、ポンプ19Cを駆動させることにより圧力室20内に貯まった水Aを循環させる。これにより、水Aは圧力室20の上部から供給され、多孔板14を通過することによってコンテナ22全体に散布されるようになる。なお、図2(b)を参照して分かるように、期間T0においては圧力室20内の圧力は0kPaであり、飲料が充填されて密封されている容器の圧力は所定の圧力、図2(b)においては約400kPaまで予め高くなっている。
【0040】
次いで、期間T0後の期間T1(時間約3分から15分の間)においては減圧弁32および自動弁33を開放させた後にスチームアキュムレータ31を駆動させて水蒸気を発生させる。次いで、これら水蒸気は配管54を通じて圧力室20内に供給される。水蒸気は圧力室20に貯まった水A内を通過するので、水Aが加熱されるようになる。次いで、水Aは配管50を通じて多孔板14から散布されるので、コンテナ22内に配置された容器が加熱される。このため、図2(a)に示されるように期間T1においてはまず圧力室20内の温度L1が上昇し、次いで、コンテナ22内の容器の温度L2が温度L1に追従して上昇するようになる。そして、容器が加熱されることにより容器内の飲料も加熱されるので、容器内の飲料がアルコールなどの低沸点成分を含む場合には低沸点成分が気化するようになり、また容器内の飲料が炭酸飲料である場合には炭酸ガスが発生するようになる。従って、容器の温度L2が上昇するのに伴って、容器の圧力(内圧)M2も次第に上昇するようになる。
【0041】
また、期間T1においては、後述する減圧弁群15の設定を行った後にコンプレッサ11を駆動させ、それにより、エアタンク12内の空気を圧縮した状態で配管52に通して圧力室20内に供給するようになる。このため、図2(b)から分かるように圧力室20内の圧力M1が0kPaから所定の圧力P1(図2(b)においては約380kPaまで)まで上昇する。次いで、圧力室20内の圧力M1がこの所定の圧力P1で維持されるようにコンプレッサ11が制御される。
【0042】
次いで、期間T2(時間約15分から32分の間)においては、圧力室20内の温度L1が容器および容器内飲料に対応した殺菌可能な所定の温度(図2(a)においては約65℃)に到達すると、圧力室20内の温度がこの所定の温度で維持されるようにスチームアキュムレータ31が制御される。この所定の温度は容器内の飲料を殺菌することが可能な温度であり、容器内の飲料の成分の種類および量に応じて異なる。例えば飲料が前述した低沸点成分および/または炭酸ガスを含む場合には低沸点成分および/または炭酸ガスの含有量が多いほど所定の温度も大きくなる。また、例えば飲料内に殺菌すべき植物の組織成分を含んでいる場合には、これら組織成分を殺菌するのに必要な温度が高いほど、所定の温度も大きくなる。そして、この殺菌可能な所定の温度が高い場合には、圧力室における所定の圧力M1もその分だけ高くする必要がある。
【0043】
一方、図2(b)に示されるように、期間T2においては圧力室の圧力M1は所定の圧力P1において維持されている。また、前述したように期間T2においては圧力室の温度L1が所定の温度で維持されるので容器の温度L2も圧力室の温度L1に追従するようになり、容器の温度L2が一定であるために容器内において気体が発生するのが停止するので、容器の圧力M2も一定の値に漸近するようになる。
【0044】
次いで、期間T2後の期間T3においてはスチームアキュムレータ31およびポンプ19Bを停止させた後、給水槽13A内の液体、例えば水をシャワーノズル23、24から圧力室20内に供給する。この水は、ポンプ19Cを駆動させることにより圧力室20内を循環し、圧力室20の上部から供給され、多孔板14を通過することによりコンテナ22全体に散布され、圧力室20の温度L1を低下させる。
【0045】
そして、期間T3の開始から所定の時間が経過した後に、配管55Aに設けられている弁(図示しない)を開放して、圧力室20内の水Aを排出室41まで排水する。このときには、圧力室20内の圧縮空気が水Aを配管55Aに通して排出室41まで押し出す役目を果たしうるので、排水用のポンプを設ける必要はない。排水された水は配管58を通じて排水タンク42まで供給される。
【0046】
また、排水とほぼ同時に、給水槽13B内の液体、例えば給水槽13A内の水よりも低温の水をシャワーノズル23、24から圧力室20内に供給する。この水は、ポンプ19Cを駆動させることにより圧力室20内を循環し、圧力室20の上部から供給され、多孔板14を通過することによりコンテナ22全体に散布され、圧力室20の温度L1を更に低下させる。複数の給水槽内の水を用いることによって、圧力室20の温度L1を急激な温度変化を避けつつ低下させている。このため、期間T3においては容器の温度L2も圧力室20の温度L1に追従するように低下する。これにより、容器内の気体であって容器の温度L2の上昇時に発生した気体が、容器の飲料内に再び溶け込むようになるので、容器の圧力M2も徐々に低下する(図2(b)を参照されたい)。そして、更に所定の時間が経過した後に、配管55Bに設けられている弁(図示しない)を開放して、圧力室20内の水Aを給水槽13Aまで排水する。この時にも、圧力室20内の圧縮空気が水Aを配管55Bに通して給水槽13Aまで押し出す役目を果たしうるので、排水用のポンプを設ける必要はない。
【0047】
このように排水タンク42に貯蔵された水は、配管59を通じて給水槽13Aに回収されて、再利用される。また、配管55Bを通じて排水された水も、給水槽13Aに回収されて、再利用される。配管59や配管55Bにおいても或る程度の圧縮空気が混入しうるので、配管59や配管55Bには図示されるように減圧弁43A、43Bがそれぞれ設けられている。このため、配管59や配管55B内の圧縮空気および水は減圧弁43A、43Bにおいて減圧された状態で、それぞれ給水槽13Aに供給される。このように、本発明においては圧力室20内の圧縮空気の排気処理および水Aの排水処理を容易にすることができると共に、圧力室20内の水Aの再利用を図ることも可能となっている。
【0048】
そして、期間T3の開始から所定の時間Qが経過した後に、開閉弁45を開放して圧力室20内の圧縮空気を排出室41まで排気することにより、圧力室20の圧力M1を低下させる。最終的に圧力室20の圧力M1が概ね常温となった後に、圧力室20を開放してコンテナ22を取り出す。当然のことながら、常圧よりもわずかながら高い圧力および/または常温よりもわずかながら高い温度において圧力室20を開放するようにしてもよい。圧縮空気は排出室41において或る程度まで減圧された後に、配管58を通じて排水タンク42まで供給される。次いで、空気は配管57を通じて排出される。
【0049】
ここで再び図2(b)を参照すると、本発明においては容器の圧力M2と圧力室20の圧力M1との間の圧力差を期間T0においてはΔP0、期間T1においてはΔP1、期間T2においてはΔP2としている。さらに期間T3の圧力室20内の圧力M1が高い状態(所定の圧力P1)における前述した圧力差をΔP31、期間T3において圧力室20内の圧力M1を低下させた後の圧力差をΔP32としている。前述したように、飲料が充填されて密封された容器の内圧と外圧との間の圧力差が容器の限界圧PL(ゲージ圧)を越えるとき、つまり、M2−M1=ΔP>PLとなったときに、容器は変形・破損する。当然のことながら、飲料を殺菌する前の期間T0における圧力差ΔP0は限界圧PLよりも小さくなっている。そして、容器の圧力M2が最も高くなる期間T2における圧力差ΔP2が限界圧PLよりも小さくなっているので、容器内飲料の殺菌時に容器が変形・破損することはない。この圧力差ΔP2は限界圧PLよりも小さいものの、限界圧PLに比較的近い値である。
【0050】
ところで、期間T1において圧力室20の圧力M1を上昇させない場合、例えば圧力室20の圧力M1が0kPaのままである場合には容器の圧力M2と圧力室20の圧力M1との間の圧力差ΔP1が限界圧PLを越えて、容器が変形・破損する可能性がある。これに対し、本発明においては、期間T1における容器の圧力M2と圧力室20の圧力M1との間の圧力差ΔP1が限界圧PLを越えない程度に、圧力室20の圧力M1を上昇させているので、容器を殺菌可能な温度まで上昇して容器の圧力M2が上昇しても前述した圧力差ΔP1が限界圧PLを越えることはなく、容器も変形・破損しない。従って、本発明においては殺菌するのに必要な温度まで加熱すると内部から気体が発生する飲料が充填された容器が配置された圧力室の温度上昇時(期間T1)であっても容器を変形・破損させることなしに、容器内の飲料を加熱殺菌できる。
【0051】
また、図2(b)に示されるように、圧力室20の圧力M1は迅速に低下させられるのに対し、容器の圧力M2は容器の温度低下に伴って容器内の気体が飲料内に再び溶け込むことにより低下するので、容器の温度L2を下降させるための期間T3の開始直後に圧力室20の圧力M1を低下させた場合には、容器の内圧と外圧との間の圧力差ΔPが限界圧PLを越えて容器が破損・変形することも想定される。しかしながら、本発明においては容器の温度L2を下げることにより容器の圧力M2を低下させて圧力差ΔP31を予め小さくしているので、この後に圧力室20の圧力M1を低下させたとしても圧力差ΔP32が限界圧PLを越えることはない。このため、本発明においては、圧力室の温度を下降させているとき(期間T3)であっても、容器が変形・破損するのを避けることができる。また、図2(b)に示されるように容器の温度を下降させる期間T3の開始から、圧力差が限界圧を越えない程度に容器の圧力が低下するのに十分な所定の時間Qが経過した後に、圧力室20内の圧力M1を下降させることによって、圧力室の温度下降時(期間T3)に容器が変形・破損するのを確実に避けることができる。さらに、期間T3における圧力室20の温度L1と容器の圧力M2との間の関係をマップ等の形で予め求めておき、容易にモニタリング可能な圧力室20の温度L1から容器の圧力M2を算出し、容器の圧力M2が所定の値になったときに圧力室20の圧力M1を低下させるようにしてもよい。同様に、期間T3における容器の温度L2と容器の圧力M2との間の関係をマップの形で同様に予め求めておき、容器の温度L2から容器の圧力M2を求め、容器の圧力M2が所定の値になったときに圧力室20の圧力M1を低下させるようにしてもよい。いずれの場合においても、圧力室の温度下降時(期間T3)に容器が変形・破損するのを避けることができる。
【0052】
ここで、配管51に設けられた減圧弁群15について説明する。減圧弁群15は複数、図1においては四つの減圧弁15Aから15Dを含んでいる。図示されるように、これら減圧弁15Aから15Dは、配管51から四つに分岐した分岐管52Aから52D上にそれぞれ設けられている。飲料が充填されて密封された容器を殺菌するのに必要とされる圧力室20内の圧力は、容器自体の限界圧、ならびに飲料内の内容物および内容物の量に応じて異なる。例えば容器の限界圧が比較的大きい場合には圧力室20の圧力は小さくて足り、容器の限界圧が比較的小さい場合は圧力室20内の圧力を大きくする必要がある。また、図4を参照して分かるように、殺菌するのに必要な温度まで加熱すると内部から気体が発生する飲料が例えば炭酸飲料である場合には炭酸ガスの含有量が大きい場合ほど容器の内圧が増すので、圧力室20内の圧力を大きくする必要がある。このため、本発明における複数の減圧弁15Aから15Dは、圧力室20内の圧力が各減圧弁15Aから15Dに応じた異なる値になるように予め設定されている。これにより、殺菌すべき容器に必要とされる圧力室20内の圧力に応じて、減圧弁15Aから15Dより一つの減圧弁を選択することができる。一つのみの減圧弁しか備えていない飲料殺菌装置によって内容物の異なる飲料が充填された複数種類の容器を殺菌する必要がある場合には、それぞれの容器を殺菌する毎に減圧弁を調整する必要があるが、本発明の場合には各容器に対応するよう予め設定された減圧弁を減圧弁群15から単に選択すれば足りるので、減圧弁の調整に伴う煩雑さを回避することが可能となる。また、図示されるように、各減圧弁に対して直列となるように自動弁、例えば自動弁16B、16Cを適宜設けるようにしてもよい。
【0053】
図3(a)は、本発明の第二の実施形態に基づく飲料殺菌装置の部分拡大図である。理解を容易にするために、図3(a)においては圧力室20に接続される配管等を省略している。図3(a)においては圧縮空気を供給するための配管52が接続されておらず、その代わりに、容器を機械的に加圧するための機械的加圧手段60を含んでいる。図3(a)に示されるように、複数の容器からなる第一の容器群91を整列して支持ベース21上に配置する。さらに、第一の容器群91上にプレート71を載置した後に、複数の容器からなる第二の容器群92をプレート71上に同様に配置する。第一および第二の容器群91、92は同一内容の容器を含んでいる。さらに、別のプレート72を第二の容器群92上に載置する。次いで、図3(a)における機械的加圧手段60に含まれる錘61をプレート72上に配置する。これにより、錘61の荷重がプレート72、71を通じて容器群91、92に加えられ、容器群91、92内の各容器がほぼ均等に加圧されるようになる。錘61の重量は容器群91、92内の各容器の内圧と外圧との間の圧力差が限界圧を越えることのないように定められており、容器群の群数(段数)および容器群内の容器の数に応じて異なる。そして、前述したように圧力室の温度を制御することによって、圧力室の温度昇降時であっても容器を変形・破損させることなしに、容器内の飲料を加熱殺菌するのが可能となる。さらに、このような図3(a)に示される実施形態においては、例えば圧縮空気を圧力室20に供給することにより圧力室20内の容器の内圧を間接的に高めるような場合よりも、容器の圧力を迅速かつ確実に上昇させられると共に、圧縮空気のためのエアタンク12を排除することも可能となる。
【0054】
図3(b)は、本発明の他の実施形態に基づく飲料殺菌装置の部分拡大図である。理解を容易にするために、図3(b)においては圧力室20に接続される配管等を省略している。図3(b)における機械的加圧手段60は支持ベース21に対応した形状の押さえ板67と、この押さえ板67の一側から延びる軸部68とを含んでいる。ネジ山が設けられている軸部68の先端には調節部材66が螺合しており、バネ69が調節部材66と押さえ板67との間に配置されている。図3(a)の場合と同様に容器群91、92を配置し、次いで、調節部材66を容器群91、92に向かって移動させることにより、バネ69の付勢力を押さえ板67を通じて容器群91、92に伝達する。これにより、容器群91、92内の各容器がほぼ均等に加圧されるようになる。従って、本実施形態においても、前述したように圧力室の温度を制御することによって、圧力室の温度昇降時であっても容器を変形・破損させることなしに、容器内の飲料を加熱殺菌するのが可能となる。さらに、本実施形態においては容器群91、92に伝達される付勢力を調節部材66によって容易に調整できるので、容器群の群数(段数)および容器群内の容器の数が変化する場合であっても、容易に対応することが可能となり、また加熱作用に応じて容器に加える圧力を調節してもよい。図3(a)および/または図3(b)に示したプレート71、72、錘61、押さえ板67、および支持ベース21等は多孔性材料から形成されているか、または多数の孔がその形成されているのが好ましく、これにより、加熱された水Aを容器群91、92全体に散布することが可能となる。
【0055】
さらに、圧縮空気の供給のみによって圧力室20の圧力を高めていると共に加熱水を圧力室20内に供給することにより容器の温度を高めている場合には、圧力室20の圧力M1が或る値を越えると、加熱水を圧力室20内に供給するのが困難となるので、高圧力下では加熱水を供給可能とするために比較的高揚程のポンプが必要とされる。ところが、図3(a)および図3(b)に示される実施形態においては、機械的加圧手段60によって容器に機械的な力を加える分だけ、圧力室20における圧縮空気量は少なくて足りる。これにより、加熱水を圧力室20に比較的容易に供給できるようになるので、本実施形態において加熱水を供給するためのポンプは揚程が比較的低いもの、例えば従来のポンプと前述したポンプ19Aとの間の揚程を有するポンプ、例えば揚程29mから40m程度のポンプで足りる。
【0056】
当然のことながら、本発明においては容器に力を機械的に加えることのできるあらゆる機械的加圧手段60を採用できる。また、図3(a)および図3(b)では二つの容器群の場合が示されているが、容器群の数および容器群内の容器の数についてはこれらに限定されるものではなく、また適宜、コンテナ22を併用するようにしてもよい。さらに、前述した実施形態のいくつかを任意に組み合わせることが本発明の範囲に含まれるのは明らかである。さらに、図2に示されるように圧力室20の圧力M1の上昇作用と圧力室20の温度L1の上昇作用とを概ね同時に行うと共に、圧力室20の圧力M1の下降作用と圧力室20の温度L1の下降作用とを概ね同時に行ってもよく、また、圧力室20の圧力M1を所定の圧力まで上昇させた後に圧力室の温度L1を上げて容器の温度L2を上げるようにすると共に、圧力室の温度L1を所定の温度まで下げて容器の温度L2を低下させた後に圧力室の圧力M1を低下させるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0057】
10 飲料殺菌装置
11 コンプレッサ
12 エアタンク
13 給水槽
14 多孔板
15 減圧弁群
19A、19B ポンプ
20 圧力室
21 支持ベース
22 コンテナ
23、24 シャワーノズル
27、28、29 安全弁
31 スチームアキュムレータ
41 排出室
42 排水タンク
60 機械的加圧手段
61 錘
66 調節部材
67 押さえ板
69 バネ
91、92 容器群

【特許請求の範囲】
【請求項1】
飲料が充填された状態で密封された容器を圧力室に配置し、
前記圧力室の圧力を第一の圧力まで上昇させ、
第一の温度における前記容器の圧力から前記圧力室の前記第一の圧力を減算した第一の圧力差がゼロより大きくて且つ前記容器の限界圧よりも小さいように前記圧力室内の温度を前記第一の温度まで上昇させて前記容器の温度を上昇させ、
前記圧力室を前記第一の温度で所定の時間だけ保持することにより前記容器内の飲料を殺菌し、
前記第一の温度よりも低い第二の温度における前記容器の圧力から前記圧力室の前記第一の圧力を減算した第二の圧力差がゼロより大きくて且つ前記容器の限界圧よりも小さいように前記圧力室内の温度を前記第二の温度まで下降させて前記容器の温度を下降させ、
前記圧力室の圧力を前記第一の圧力よりも低い第二の圧力まで下降させるようにした飲料殺菌方法。
【請求項2】
前記飲料は、当該飲料を殺菌するのに必要な温度まで加熱すると内部から気体を生じさせる飲料である請求項1に記載の飲料殺菌方法。
【請求項3】
前記圧力室内の温度を下降させてから所定の時間が経過した後に、前記圧力室の圧力を下降させるようにした請求項1に記載の飲料殺菌方法。
【請求項4】
前記容器に機械的な力を加えて前記容器の圧力を上昇させることを含む請求項1から3のいずれか一項に記載の飲料殺菌方法。
【請求項5】
飲料が充填された状態で密封された容器を配置する圧力室と、
前記圧力室の圧力を昇降させられる圧力昇降手段と、
前記圧力室の温度を昇降して前記容器の温度を昇降させられる温度昇降手段と、
前記圧力昇降手段と前記温度昇降手段とを制御して前記容器内の飲料を殺菌する制御手段とを具備し、
前記制御手段は、前記圧力室の圧力を前記圧力昇降手段によって第一の圧力まで上昇させて、第一の温度における前記容器の圧力から前記圧力室の前記第一の圧力を減算した第一の圧力差がゼロより大きくて且つ前記容器の限界圧よりも小さいように前記圧力室内の温度を前記温度昇降手段によって前記第一の温度まで上昇させて、前記圧力室を前記第一の温度で所定の時間だけ保持して前記容器内の飲料を殺菌した後に、前記第一の温度よりも低い第二の温度における前記容器の圧力から前記圧力室の前記第一の圧力を減算した第二の圧力差がゼロより大きくて且つ前記容器の限界圧よりも小さいように前記圧力室内の温度を前記温度昇降手段によって前記第二の温度まで下降させて、前記圧力室の圧力を前記圧力昇降手段によって前記第一の圧力よりも低い第二の圧力まで下降させるようにした飲料殺菌装置。
【請求項6】
前記飲料は、当該飲料を殺菌するのに必要な温度まで加熱すると内部から気体を生じさせる飲料である請求項5に記載の飲料殺菌装置。
【請求項7】
前記温度昇降手段によって前記圧力室内の温度を下降させて所定の時間が経過した後に、前記圧力昇降手段によって前記圧力室の圧力を下降させるようにした請求項5に記載の飲料殺菌装置。
【請求項8】
前記圧力昇降手段が、前記圧力室内の容器に機械的な力を加えることにより前記容器を加圧する機械的加圧部を含む請求項5から7のいずれか一項に記載の飲料殺菌装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−5488(P2012−5488A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−163543(P2011−163543)
【出願日】平成23年7月26日(2011.7.26)
【分割の表示】特願2004−299986(P2004−299986)の分割
【原出願日】平成16年10月14日(2004.10.14)
【出願人】(309007911)サントリーホールディングス株式会社 (307)
【Fターム(参考)】