説明

駆動力伝達機構及びマニピュレータシステム

【課題】湾曲動作時に動力伝達部材の伝達効率が低下しない(伝達特性が悪化しない)駆動力伝達機構及び該駆動力伝達機構を具備するマニピュレータシステムを提供すること。
【解決手段】駆動源からの駆動力を伝達する駆動力伝達機構1を次のように構成する。すなわち、線状或いは棒状で可撓性を有する操作ワイヤ95,96と、操作ワイヤ95,96が挿通された可撓性を有する案内部材である内側パイプ2と、内側パイプ2の径方向外側に設けられ、内側パイプ2の変形を抑制する外側パイプ3と、を駆動力伝達機構1に具備させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動源からの駆動力を伝達する駆動力伝達機構及び該駆動力伝達機構を具備するマニピュレータシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
駆動力伝達機構及びマニピュレータシステムに関する技術としては、例えば特許文献1に次のような技術が開示されている。すなわち、特許文献1には、駆動力伝達機構として、可撓管の先端側に連結された湾曲部を屈曲させる為の可撓性を有する伝達部材である湾曲操作ワイヤと、該湾曲操作ワイヤを案内する密巻きコイルから成る可撓性を有するガイド管と、を具備する内視鏡の湾曲装置が開示されている。
【0003】
この特許文献1に開示されている技術を適用した場合、湾曲操作時に湾曲操作ワイヤの張力により密巻きコイルから成るガイド管が座屈することがある。座屈が生じてしまうと、当該座屈に起因するガイド管の長さ変化分だけ、湾曲部の湾曲長に損失を生じる。
【0004】
このような座屈に起因して生じる問題を鑑みて、特許文献2には、可撓管の湾曲操作を行う動力伝達部材である形状記憶合金ワイヤを、座屈しにくい超弾性パイプから成る管状部材で案内する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開平6−81503号公報
【特許文献2】特開平6−300975号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献2に開示されている技術を適用した場合であっても、前記形状記憶合金ワイヤに張力が加わると、超弾性パイプから成る管状部材が圧縮変形し(うねり)、当該超弾性パイプに径方向における変形が生じ、張力の伝達が妨げられる(動力伝達の伝達効率が低下する)。
【0007】
本発明は、前記の事情に鑑みて為されたものであり、湾曲動作時に動力伝達部材の伝達効率が低下しない(伝達特性が悪化しない)駆動力伝達機構及び該駆動力伝達機構を具備するマニピュレータシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の目的を達成するために、本発明の第1の態様による駆動力伝達機構は、
駆動源からの駆動力を伝達する線状或いは棒状で可撓性を有する伝達部材と、前記伝達部材が挿通された可撓性を有する管状部材である案内部材と、を具備する駆動力伝達機構であって、
前記案内部材の径方向外側に設けられ、前記案内部材の変形を抑制する拘束部材を具備することを特徴とする。
【0009】
前記の目的を達成するために、本発明の第2の態様によるマニピュレータシステムは、
駆動源からの駆動力を伝達する駆動力伝達機構と、
前記駆動力伝達機構によって伝達された駆動力によって動作する複数の関節部を有する湾曲管と、
前記関節部を動作させる為の操作部と、
前記操作部の操作に基づいて前記関節部の動作制御を行う制御部と、
を具備し、
前記駆動力伝達機構は、
前記駆動力を伝達する線状或いは棒状で可撓性を有する伝達部材と、
前記伝達部材が挿通された可撓性を有する管状部材である案内部材と、
前記案内部材の径方向外側に設けられ、前記案内部材の変形を抑制する拘束部材と、
を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、湾曲動作時に動力伝達部材の伝達効率が低下しない(伝達特性が悪化しない)駆動力伝達機構及び該駆動力伝達機構を具備するマニピュレータシステムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施形態に係る駆動力伝達機構が適用されたマニピュレータシステムの一構成例を示す図。
【図2】マニピュレータの挿入部の一構成例を示す図。
【図3A】挿入部の湾曲部の側面断面図。
【図3B】湾曲部を構成する駆動力伝達機構の側面断面図。
【図4】駆動力伝達機構を図3に示すA−A´で切断した断面図。
【図5】第1変形例に係る駆動力伝達機構を図3に示すA−A´に相当する部位で切断した断面図。
【図6】第2変形例に係る駆動力伝達機構の一構成例を示す側面図。
【図7】第3変形例に係る駆動力伝達機構の一構成例を示す側面断面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態に係る駆動力伝達機構及び該駆動力伝達機構を具備するマニピュレータシステムについて説明する。なお、本一実施形態においては、マニピュレータシステムとして、例えば内視鏡下外科手術に用いられる処置用マニピュレータシステムを想定している。
【0013】
図1は、本一実施形態に係る駆動力伝達機構が適用されたマニピュレータシステムの一構成例を示す図である。図1に示すように、マニピュレータシステムは、操作入力装置65と、モータコントロールユニット66と、マニピュレータ67と、を具備する。
【0014】
前記操作入力装置65は、術者の手68の位置、姿勢、及び把持に係る情報を読み取り、それらの情報をモータコントロールユニット66に出力する。
前記モータコントロールユニット66は、操作入力装置65から出力された位置、姿勢、及び把持に係る情報に基づいて、マニピュレータ67を制御する。
【0015】
前記マニピュレータ67は、患者70の患部の処置を行う為のマニピュレータである。このマニピュレータ67の挿入部74は、手術台69上に固定された患者70の体内に挿入されたトラカール71に挿通されている。
より詳細には、マニピュレータ67は、円筒座標系に基づいて動作する3自由度のロボットアーム72と、上下方向及び回転方向に動作する2自由度の自在関節73と、患者70の体内に挿入される挿入部74と、挿入部74を回転させるホルダ75と、を有する。
【0016】
以下、マニピュレータ67の挿入部74について詳細に説明する。図2は、マニピュレータ67の挿入部74の一構成例を示す図である。
マニピュレータ67の挿入部74は、鉗子109を有する先端部91と、複数の関節を有する関節部としての湾曲部92と、挿入パイプ100を含む駆動部93と、を有する。
【0017】
前記湾曲部92は、上下方向及び左右方向に動作する2自由度に湾曲する関節としての湾曲管94と、湾曲管94を上下方向に操作する為の可撓性を有する線状の伝達部材である2本の操作ワイヤ95と、湾曲管94を左右方向に操作する為の可撓性を有する線状の伝達部材である2本の操作ワイヤ96と、を備える。
【0018】
前記操作ワイヤ95,96は、それぞれ一端が最先端の湾曲管94及び/または先端部91において周方向に互いに90°間隔を有する位置に接続固定されており、且つ、他端がプーリ106とボールネジナット108とを含む直動アクチュエータ107のボールネジナット108に接続固定されている。これら操作ワイヤ95,96は可撓性を有している。
【0019】
なお、詳細は図面を参照して後述するが、操作ワイヤ95,96は、案内部材である内側パイプに挿通されている。また、内側パイプは、拘束部材である外側パイプ内に挿通されている。
ここで、術者が操作入力装置65を操作することでマニピュレータ67を動作させて患者70の処置を行う際に、マニピュレータ67の各部は次のように動作する。すなわち、操作入力装置65から出力された術者の手68の位置、姿勢、及び把持に係る情報は、モータコントロールユニット66に入力され、ロボットアーム72の操作量、自在関節73による挿入部74の回転量、挿入部74における湾曲部92の湾曲量及び鉗子109の開閉角度に変換される。
【0020】
前記駆動部93は、モータ(不図示)の回転によりボールネジナット108が進退し、その進退に応じて操作ワイヤ95,96が差動的に駆動され、湾曲部92が上下左右方向に湾曲する。同様に、モータ(不図示)の回転により鉗子109が開閉する。
以下、湾曲部92に適用された本一実施形態に係る駆動力伝達機構について説明する。図3Aは、湾曲部92の側面断面図である。
【0021】
前記湾曲部92は、互いに連結された複数の湾曲管94と、動力伝達部材である操作ワイヤ95,96と、操作ワイヤ95,96の案内部材である内側パイプ2と、内側パイプ2の径方向における変形を抑制(阻止、規制)する拘束部材(変形防止部材)である外側パイプ3と、を備える。ここで、操作ワイヤ95,96と内側パイプ2と外側パイプ3とが駆動力伝達機構1を構成している。
【0022】
前記複数の湾曲管94は、互いに隣り合う湾曲管94の連結部94a同士の位置関係が周方向に互いに90°ずれるように配置された状態で、当該連結部94aにおいてピン94bにより回動自在に連結されている。各々の湾曲管94がこのように連結されることで、湾曲部92全体として上下方向及び左右方向に湾曲することが可能となる。
【0023】
そして、各々の湾曲管94の内周面においては、駆動力伝達機構1を軸方向への移動を許容しつつ保持する保持部94cが、周方向に90°間隔で、当該湾曲管94の内周面に対して取り付けられている。
詳細には、これら保持部94cには、外側パイプ3の外径よりも若干大きい径の貫通孔94dが設けられている。これら貫通孔94dを介して、各駆動力伝達機構1は、その軸方向への移動が許容されている。
【0024】
ここで、一対の操作ワイヤ95に対する一対の駆動力伝達機構1と、一対の操作ワイヤ96に対する一対の駆動力伝達機構1とは、湾曲管94の周方向に互いに90°間隔を有して位置している。
なお、本例では、湾曲部92内に配設された各駆動力伝達機構1は、挿入パイプ100内まで延びて配設されている。
【0025】
以下、駆動力伝達機構1について詳細に説明する。駆動力伝達機構1は、2本一組の操作ワイヤである操作ワイヤ95及び操作ワイヤ96を構成する一本一本の操作ワイヤに対応して設けられているので、本例では計4個配設されている。
図3Bは、湾曲部92に適用された駆動力伝達機構1の側面断面図である。図4は、駆動力伝達機構1を図3に示すA−A´で切断した場合の断面図である。
【0026】
前記内側パイプ2は、操作ワイヤ95,96を案内する案内部材である。詳細には、内側パイプ2は、次のような部材である。
(1)可撓性を有し且つ断面略円環形状を呈する管状部材である。
(2)操作ワイヤ95或いは操作ワイヤ96が挿通されている。換言すれば、操作ワイヤ95或いは操作ワイヤ96の径方向外側に配設されている。
(3)内側パイプ2の材料としては、可撓性を有する金属材料が適しており、例えばNi−Ti等を挙げることができる。
(4)内側パイプ2の内周面は、操作ワイヤ95,96の動作による操作ワイヤ95,96との摩擦を低減する為に、研磨加工が施されていることが好ましい。
【0027】
前記外側パイプ3は、内側パイプ2の径方向における変形を抑制(阻止、規制)するように内側パイプ2を拘束する拘束部材である。詳細には、外側パイプ3は、次のような部材である。
(1)可撓性を有し且つ断面略円環形状を呈する管状部材である。
(2)内側パイプ2との間にクリアランスCを有するように内側パイプ2が挿通されている。詳細には、クリアランスCは、内側パイプ2が当該外側パイプ3内において軸方向に移動可能な程度のクリアランスである。
(3)内側パイプ2の外径と外側パイプ3の内径とは略同径である。
(4)外側パイプ3の材料としては、可撓性(或いは弾性)を有する金属材料が適しており、例えばSUSやNi−Ti等を挙げることができる。
【0028】
なお、挿入パイプ100内においても、湾曲部92内における構成と同様に保持部94cを用いて各駆動力伝達機構1を保持しても良いし、保持部94cを用いずに単純に挿入パイプ100内に各駆動力伝達機構1を挿通させる構成としても良い。逆に、湾曲部92内部の空間が狭い場合には、湾曲部92内に保持部94cを設けなくとも良い。
【0029】
本例においては、内側パイプ2は、湾曲部92の先端から挿入パイプ100の基部まで配設されている。そして、外側パイプ3は、内側パイプ2の全長に亘って設けられている。つまり、各駆動力伝達機構1は、湾曲部92内の先端から挿入パイプ100の基部に亘って配設されている。
【0030】
上述したように操作ワイヤ95,96、内側パイプ2、及び外側パイプ3は、上述したようにそれぞれ可撓性(或いは弾性)を有しており、術者の手68による操作入力装置65の操作に従って湾曲動作する。
従来の技術であれば、この湾曲動作時に湾曲した内側パイプ2が径方向に変形(例えば座屈)することで、内側パイプ2内の操作ワイヤ95,96の伝達効率が低下(伝達特性が悪化)してしまう。
【0031】
一方、本一実施形態に係る駆動力伝達機構1によれば、湾曲動作時に内側パイプ2の径方向への変形が外側パイプ3によって抑制(阻止、規制)されるので、湾曲状態に起因した駆動力の伝達効率の低下(伝達特性の悪化)が防止される。
以上説明したように、本一実施形態によれば、湾曲動作時に動力伝達部材の伝達効率が低下しない(伝達特性が悪化しない)駆動力伝達機構及び該駆動力伝達機構を具備するマニピュレータシステムを提供することができる。
【0032】
より具体的には、本一実施形態に係る駆動力伝達機構及びマニピュレータシステムによれば、例えば次のような格別な効果を得ることができる。
・操作ワイヤ95,96の案内部材である内側パイプ2の径方向外側に、内側パイプ2の径方向の変形を拘束する外側パイプ3を設けたことで、操作ワイヤ95,96の操作時に内側パイプ2に張力が加わった場合でも、内側パイプ2の圧縮変形(径方向への変形)が外側パイプ3よる拘束で抑制される。つまり、湾曲動作時において、操作ワイヤ95,96に対して、その伝達効率を低下させるような外力が加わらない。
・操作ワイヤ95,96の経路長の変化を防ぐことができるので、内側パイプ2の圧縮変形(うねり)に伴う操作ワイヤ95,96と内側パイプ2との接触面積の増大を防ぐことができ、内側パイプ2の径方向の変形に起因する操作ワイヤ95,96と内側パイプ2の内周面との摩擦による減衰を抑制することができる。これにより、ヒステリシス特性の少ない良好な伝達特性を得ることができる。
・操作ワイヤ95,96に張力が加わったときの内側パイプ2の圧縮変形に対する径方向の変形に限らず、他の要因による内側パイプ2の径方向の変形をも抑制する。
・内側パイプ2及び外側パイプ3を金属材料で構成することで、駆動力伝達機構1の強度が高まる。
・内側パイプ2の外径と外側パイプ3の内径とを略同径として構成し、且つ、外側パイプ3内を内側パイプ2が軸方向に移動可能とするクリアランスCを設けた構成とすることで、外側パイプ3内で内側パイプ2が軸方向へ移動可能となり、このことが内側パイプ2の径方向への変形抑制効果を更に高めている。
・外側パイプ3を内側パイプ2の全長に亘って設けることで、その全長に亘って内側パイプ2の径方向への変形を抑制できる。
【0033】
なお、上述の例では外側パイプ3を金属材料で構成しているが、内側パイプ2の径方向の変形を規制することが可能であれば、例えば硬質の樹脂で外側パイプ3を構成しても勿論良い。
上述の例では外側パイプ3を断面略円環形状として構成しているが、断面多角形状として構成してもよい。この場合には、内側パイプ2の断面形状も外側パイプ3の断面形状と同様の断面形状とすることが好ましい。
【0034】
外側パイプ3を内側パイプ2の全長に亘って設けているが、部分的(一部)に設けても良い。例えば、特に湾曲しやすい部分や大きく湾曲する部分のみに、外側パイプ3を設ける構成としても良い。
上述の例では、伝達部材としてワイヤ(操作ワイヤ95,96)を用いているが、例えば形状記憶合金で構成したワイヤを用いても良いし、単純な棒状部材として構成したワイヤを用いても良い。
【0035】
上述の例では、マニピュレータとして、鉗子109を具備するマニピュレータ67を例に説明しているが、これに限られるものではなく、本一実施形態は、例えば内視鏡を具備する観察マニピュレータ等にも適用可能である。つまり、本一実施形態は、処置用マニピュレータや観察マニピュレータ(内視鏡)等を含む種々のマニピュレータに対して適用できる。
【0036】
さらには、医療用のマニピュレータシステムだけでなく、産業用のマニピュレータシステムや手動のマニピュレータシステムにも本一実施形態を適用できることは勿論である。
以上、一実施形態に基づいて本発明を説明したが、本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で、種々の変形及び応用が可能なことは勿論である。
《第1変形例》
以下、上述の一実施形態に係る駆動力伝達機構及びマニピュレータシステムの第1変形例について説明する。説明の重複を避ける為、一実施形態に係る駆動力伝達機構及びマニピュレータシステムとの相違点を説明する。前記一実施形態においては、外側パイプ3を断面略円環形状を呈する管状部材として構成していたが、本第1変形例では次のように構成する。
【0037】
図5は、本第1変形例に係る駆動力伝達機構を図3に示すA−A´に相当する部位で切断した場合の断面図である。同図に示すように、本第1変形例では外側パイプ3を、断面C字形状を呈するように切り欠き部(スリット)を形成する。
以上説明したように、本第1変形例によれば、前記一実施形態に係る駆動力伝達機構及びマニピュレータシステムと同様の効果を奏する駆動力伝達機構及びマニピュレータシステムを提供することができる。
《第2変形例》
以下、上述の一実施形態に係る駆動力伝達機構及びマニピュレータシステムの第2変形例について説明する。説明の重複を避ける為、一実施形態に係る駆動力伝達機構及びマニピュレータシステムとの相違点を説明する。前記一実施形態においては、外側パイプ3を、一本の操作ワイヤ95,96に対して一本の管状部材(一つの駆動力伝達機構1に対して一本の外側パイプ3)として構成しているが、本第2変形例では次のように構成する。
【0038】
図6は、本第2変形例に係る駆動力伝達機構の一構成例を示す側面図である。同図に示すように、本第2変形例においては、外側パイプ3を、内側パイプ2の長手方向に対して複数に分割した態様で設ける。
換言すれば、複数の短パイプ3−1,3−2,3−3,・・・を、図6に示すように内側パイプ2に対して直列に配設することで、外側パイプ3を構成する。より詳細には、この短パイプ3−1,3−2,3−3,・・・の各々の長さは、例えば外側パイプ3の全長を1mとした場合に5mm程度である。
【0039】
このように外側パイプ3の全長に対して充分に短い短パイプ3−1,3−2,3−3,・・・を直列的に数珠繋ぎ態様で配設することで、一つ一つの短パイプ3−1,3−2,3−3,・・・に可撓性(或いは弾性)がなくとも、外側パイプ3全体としては充分に撓む(湾曲する)ことができる。
【0040】
以上説明したように、本第2変形例によれば、前記一実施形態に係る駆動力伝達機構及びマニピュレータシステムと同様の効果を奏する上に、外側パイプ3の材料選択の幅が広がる駆動力伝達機構及びマニピュレータシステムを提供することができる。
《第3変形例》
以下、上述の一実施形態に係る駆動力伝達機構及びマニピュレータシステムの第3変形例について説明する。説明の重複を避ける為、一実施形態に係る駆動力伝達機構及びマニピュレータシステムとの相違点を説明する。前記一実施形態においては、外側パイプ3を、可撓性を有し且つ断面略円環形状を呈する一本の管状部材として構成しているが、本第3変形例では次のように構成する。
【0041】
図7は、第3変形例に係る駆動力伝達機構の一構成例を示す側面断面図である。同図に示すように、本第3変形例においては、外側パイプ3を密巻コイルで構成する。すなわち、密巻コイルから成る管状部材を外側パイプ3として用いる。
以上説明したように、本第3変形例によれば、前記一実施形態に係る駆動力伝達機構及びマニピュレータシステムと同様の効果を奏する駆動力伝達機構及びマニピュレータシステムを提供することができる。
【0042】
さらに、上述した実施形態には種々の段階の発明が含まれており、開示した複数の構成要件の適当な組み合わせにより種々の発明が抽出され得る。例えば、実施形態に示す全構成要件からいくつかの構成要件が削除されても、発明が解決しようとする課題の欄で述べた課題が解決でき、発明の効果の欄で述べられている効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成も発明として抽出され得る。
【符号の説明】
【0043】
1…駆動力伝達機構、 2…内側パイプ、 3…外側パイプ、 3−1,3−2,3−3…短パイプ、 65…操作入力装置、 66…モータコントロールユニット、 67…マニピュレータ、 69…手術台、 70…患者、 71…トラカール、 72…ロボットアーム、 73…自在関節、 74…挿入部、 75…ホルダ、 91…先端部、 92…湾曲部、 93…駆動部、 94…湾曲管、 94a…連結部、 94b…ピン、 94c…保持部、 94d…貫通孔、 95,96…操作ワイヤ、 100…挿入パイプ、 106…プーリ、 107…直動アクチュエータ、 108…ボールネジナット、 109…鉗子。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動源からの駆動力を伝達する線状或いは棒状で可撓性を有する伝達部材と、前記伝達部材が挿通された可撓性を有する管状部材である案内部材と、を具備する駆動力伝達機構であって、
前記案内部材の径方向外側に設けられ、前記案内部材の変形を抑制する拘束部材を具備することを特徴とする駆動力伝達機構。
【請求項2】
前記案内部材の外径と前記拘束部材の内径とは略同径であり、
前記案内部材が前記拘束部材内において軸方向に移動することを可能とするクリアランスが、前記拘束部材と前記案内部材との間に設けられている
ことを特徴とする請求項1に記載の駆動力伝達機構。
【請求項3】
前記拘束部材は、可撓性或いは弾性を有する管状部材である
ことを特徴とする請求項2に記載の駆動力伝達機構。
【請求項4】
前記拘束部材は、複数の管状部材が直列に配設されて成り、当該拘束部材全体として可撓性を有する
ことを特徴とする請求項2に記載の駆動力伝達機構。
【請求項5】
前記拘束部材は、密巻きコイルで構成された管状を呈する部材である
ことを特徴とする請求項2に記載の駆動力伝達機構。
【請求項6】
駆動源からの駆動力を伝達する駆動力伝達機構と、
前記駆動力伝達機構によって伝達された駆動力によって動作する複数の関節部を有する湾曲管と、
前記関節部を動作させる為の操作部と、
前記操作部の操作に基づいて前記関節部の動作制御を行う制御部と、
を具備し、
前記駆動力伝達機構は、
前記駆動力を伝達する線状或いは棒状で可撓性を有する伝達部材と、
前記伝達部材が挿通された可撓性を有する管状部材である案内部材と、
前記案内部材の径方向外側に設けられ、前記案内部材の変形を抑制する拘束部材と、
を有することを特徴とするマニピュレータシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−250880(P2011−250880A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−125152(P2010−125152)
【出願日】平成22年5月31日(2010.5.31)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】