説明

駆動回路

【課題】複数のスイッチ素子を備える装置を小型化すること。
【解決手段】駆動回路1は、キャパシタC21と、充電部を構成する抵抗R21およびダイオードD21と、を備える。キャパシタC21は、スイッチ素子Q11のゲートと、スイッチ素子Q21のゲートと、の間に設けられ、制御部22の端子Y3には、スイッチ素子Q11のゲートが接続されるとともに、キャパシタC21を介してスイッチ素子Q21のゲートが接続される。抵抗R21およびダイオードD21で構成される充電部は、スイッチ素子Q21のゲートとソースとの間に設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動回路に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、複数のスイッチ素子を備える装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1には、複数のスイッチ素子を同期制御することで直流電力を交流電力に変換する、電力変換装置が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−98879号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の図24には、上述の複数のスイッチ素子として、NPN型トランジスタで構成されるスイッチ素子Scp、Scnが示されている。これらスイッチ素子Scp、Scnのそれぞれでは、ベース−エミッタ間電圧に応じてコレクタからエミッタに電流が流れる。
【0005】
ここで、スイッチ素子Scpのエミッタと、スイッチ素子Scnのエミッタとでは、それぞれ異なる部分が接続されているため、電位が異なる。このため、同一の制御信号をスイッチ素子Scp、Scnのそれぞれのベースに印加すると、スイッチ素子Scpとスイッチ素子Scnとでベース−エミッタ間電圧が異なってしまい、同期制御させることができない場合があった。したがって、スイッチ素子Scpとスイッチ素子Scnとで、制御信号を生成する制御信号生成部を別個に設けなくてはならず、スイッチ素子Scp、Scnを備える電力変換装置の小型化の阻害要因となっていた。
【0006】
上述の課題に鑑み、本発明は、複数のスイッチ素子を備える装置を小型化することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上述の課題を解決するために、以下の事項を提案している。
(1) 本発明は、第1端子(例えば、後述のソースに相当)と制御端子(例えば、後述のゲートに相当)との間の電圧に応じて第2端子(例えば、後述のドレインに相当)から当該第1端子に電流を流す第1のスイッチ素子(例えば、図1のスイッチ素子Q11に相当)および第2のスイッチ素子(例えば、図1のスイッチ素子Q21に相当)と、当該第1のスイッチ素子の制御端子と当該第2のスイッチ素子の制御端子とに印加する制御信号を生成する制御信号生成手段(例えば、図1の制御信号生成部20に相当)と、の間に設けられる駆動回路(例えば、図1の駆動回路1に相当)であって、前記第1のスイッチ素子の制御端子と、第1端子の電位が当該第1のスイッチ素子以上である前記第2のスイッチ素子の制御端子と、の間に設けられるキャパシタ(例えば、図2のキャパシタC21に相当)を備えることを特徴とする駆動回路を提案している。
【0008】
この発明によれば、第1端子と制御端子との間の電圧に応じて第2端子から第1端子に電流を流す第1のスイッチ素子および第2のスイッチ素子と、第1のスイッチ素子の制御端子と第2のスイッチ素子の制御端子とに印加する制御信号を生成する制御信号生成手段と、の間に設けられる駆動回路において、第1のスイッチ素子の制御端子と、第1端子の電位が第1のスイッチ素子以上である第2のスイッチ素子の制御端子と、の間にキャパシタを設けた。
【0009】
このため、第1のスイッチ素子の制御端子には、制御信号が印加され、第2のスイッチ素子の制御端子には、キャパシタの端子間電圧の分だけレベルシフトされた制御信号が印加されることとなる。したがって、キャパシタの端子間電圧が第2のスイッチ素子の第1の端子の電圧に略等しければ、第1端子と制御端子との間の電圧は、第1のスイッチ素子と第2のスイッチ素子とで略等しくなる。よって、1つの制御信号で第1のスイッチ素子と第2のスイッチ素子とを制御することができるので、制御信号生成手段が1つで足りることとなり、第1のスイッチ素子および第2のスイッチ素子を備える装置を小型化することができる。
【0010】
(2) 本発明は、(1)の駆動回路について、前記キャパシタを、前記第2のスイッチ素子の第1端子の電圧で充電する充電手段(例えば、図2の抵抗R21およびダイオードD21で構成される後述の充電部に相当)を備えることを特徴とする駆動回路を提案している。
【0011】
この発明によれば、キャパシタを第2のスイッチ素子の第1端子の電圧で充電する充電手段を設けた。このため、キャパシタの端子間電圧を、第2のスイッチ素子の第1端子の電圧と略等しくすることができる。
【0012】
(3) 本発明は、(2)の駆動回路について、前記充電手段は、前記第2のスイッチ素子の制御端子と第1端子との間に設けられた抵抗(例えば、図2の抵抗R21に相当)を備えることを特徴とする駆動回路を提案している。
【0013】
この発明によれば、充電手段に、第2のスイッチ素子の制御端子と第1端子との間に設けられた抵抗を設けた。このため、第2のスイッチ素子の第1端子とキャパシタとが抵抗を介して接続されるため、キャパシタの端子間電圧を、第2のスイッチ素子の第1端子の電圧と略等しくすることができる。
【0014】
(4) 本発明は、(3)の駆動回路について、前記充電手段は、前記抵抗に並列接続された一方向性素子(例えば、図2のダイオードD21に相当)を備え、前記一方向性素子の入力端子(例えば、後述のアノードに相当)には、前記第2のスイッチ素子の第1端子が接続され、当該一方向性素子の出力端子(例えば、後述のカソードに相当)には、当該第2のスイッチ素子の制御端子が接続されることを特徴とする駆動回路を提案している。
【0015】
この発明によれば、充電手段に、抵抗に並列接続された一方向性素子を設けた。そして、一方向性素子の入力端子には、第2のスイッチ素子の第1端子を接続し、一方向性素子の出力端子には、第2のスイッチ素子の制御端子を接続した。このため、第2のスイッチ素子において、制御端子から第1端子に電流が流れてしまうのを防止できる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、第1のスイッチ素子および第2のスイッチ素子を備える装置を小型化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施形態に係る駆動回路を備えるセルバランス回路の概略を示す回路図である。
【図2】前記セルバランス回路の詳細を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下の実施形態における構成要素は適宜、既存の構成要素などとの置き換えが可能であり、また、他の既存の構成要素との組合せを含む様々なバリエーションが可能である。したがって、以下の実施形態の記載をもって、特許請求の範囲に記載された発明の内容を限定するものではない。
【0019】
[セルバランス回路AAの構成]
図1は、本発明の一実施形態に係る駆動回路1、1Aを備えるセルバランス回路AAの概略を示す回路図である。セルバランス回路AAは、直列接続された2次電池BT1〜BT3のそれぞれの充電電圧を均一化する。2次電池BT1〜BT3は、図示しない充電回路に接続されており、この充電回路により充電されるとともに、図示しない負荷に接続されており、この負荷の要求に応じて負荷に電力を供給することで放電される。
【0020】
セルバランス回路AAは、駆動回路1、1Aと、制御信号生成部20と、2次電池BT1〜BT3と対に設けられた巻線W1〜W3を有するトランスTと、NチャネルMOSFETで構成されるスイッチ素子Q11〜Q14、Q21〜Q24、Q31〜Q34と、キャパシタC11、C12と、を備える。巻線W1〜W3のそれぞれは、同一の鉄心に巻回されており、巻線W1〜W3のそれぞれの巻数は等しい。
【0021】
図2は、セルバランス回路AAの詳細を示す回路図である。
【0022】
スイッチ素子Q11〜Q14は、2次電池BT1および巻線W1と対に設けられており、スイッチ素子Q11には、スイッチ素子Q12が直列接続され、スイッチ素子Q13には、スイッチ素子Q14が直列接続される。
【0023】
2次電池BT1には、スイッチ素子Q11とスイッチ素子Q12とを直列接続したものと、スイッチ素子Q13とスイッチ素子Q14とを直列接続したものと、が並列接続される。具体的には、2次電池BT1の一端には、スイッチ素子Q11のドレインと、スイッチ素子Q13のドレインと、が接続される。2次電池BT1の他端には、基準電位源GNDが接続されるとともに、スイッチ素子Q12のソースと、スイッチ素子Q14のソースと、が接続される。スイッチ素子Q11のソースには、スイッチ素子Q12のドレインが接続され、スイッチ素子Q13のソースには、スイッチ素子Q14のドレインが接続される。
【0024】
巻線W1の一端には、スイッチ素子Q11とスイッチ素子Q12との接続点、すなわちスイッチ素子Q11のソースと、スイッチ素子Q12のドレインと、が接続されるとともに、キャパシタC11を介して後述の制御部22の端子Y5が接続される。巻線W1の他端には、スイッチ素子Q13とスイッチ素子Q14との接続点、すなわちスイッチ素子Q13のソースと、スイッチ素子Q14のドレインと、が接続されるとともに、キャパシタC12を介して後述の制御部23の端子Z5が接続される。
【0025】
スイッチ素子Q11〜Q14と同様に、上述のスイッチ素子Q21〜Q24は、2次電池BT2および巻線W2と対に設けられ、スイッチ素子Q31〜Q34は、2次電池BT3および巻線W3と対に設けられる。
【0026】
<制御信号生成部20の構成>
制御信号生成部20は、クロック生成部21と、制御部22、23と、インバータINVと、を備える。クロック生成部21の端子X1と、制御部22の端子Y1と、制御部23の端子Z1とには、基準電位源GNDが接続される。クロック生成部21の端子X2には、制御部22の端子Y2が接続されるとともに、インバータINVを介して制御部23の端子Z2が接続される。
【0027】
<駆動回路1の構成>
駆動回路1は、キャパシタC21、C22、C31、C32と、抵抗R21、R22、R31、R32と、ダイオードD21、D22、D31、D32と、を備える。
【0028】
キャパシタC21は、スイッチ素子Q11のゲートと、スイッチ素子Q21のゲートと、の間に設けられ、キャパシタC31は、スイッチ素子Q21のゲートと、スイッチ素子Q31のゲートと、の間に設けられる。制御部22の端子Y3には、スイッチ素子Q11のゲートが接続されるとともに、キャパシタC21を介してスイッチ素子Q21のゲートが接続され、キャパシタC21、C31を介してスイッチ素子Q31のゲートが接続される。
【0029】
スイッチ素子Q21において、ゲートとソースとの間には、抵抗R21およびダイオードD21で構成される充電部が設けられる。抵抗R21の一端および他端には、それぞれ、スイッチ素子Q21のゲートおよびソースが接続される。この抵抗R21にはダイオードD21が並列接続されており、ダイオードD21のアノードにはスイッチ素子Q21のソースが接続され、ダイオードD21のカソードにはスイッチ素子Q21のゲートが接続される。
【0030】
スイッチ素子Q31において、ゲートとソースとの間には、抵抗R31およびダイオードD31で構成される充電部が設けられる。抵抗R31の一端および他端には、それぞれ、スイッチ素子Q31のゲートおよびソースが接続される。この抵抗R31にはダイオードD31が並列接続されており、ダイオードD31のアノードにはスイッチ素子Q31のソースが接続され、ダイオードD31のカソードにはスイッチ素子Q31のゲートが接続される。
【0031】
キャパシタC22は、スイッチ素子Q12のゲートと、スイッチ素子Q22のゲートと、の間に設けられ、キャパシタC32は、スイッチ素子Q22のゲートと、スイッチ素子Q32のゲートと、の間に設けられる。制御部22の端子Y4には、スイッチ素子Q12のゲートが接続されるとともに、キャパシタC22を介してスイッチ素子Q22のゲートが接続され、キャパシタC22、C32を介してスイッチ素子Q32のゲートが接続される。
【0032】
スイッチ素子Q22において、ゲートとソースとの間には、スイッチ素子Q21、Q31と同様に、抵抗R22およびダイオードD22で構成される充電部が設けられる。また、スイッチ素子Q32において、ゲートとソースとの間には、スイッチ素子Q21、Q22、Q31と同様に、抵抗R32およびダイオードD32で構成される充電部が設けられる。
【0033】
<駆動回路1Aの構成>
駆動回路1Aは、キャパシタC23、C24、C33、C34と、抵抗R23、R24、R33、R34と、ダイオードD23、D24、D33、D34と、を備える。
【0034】
キャパシタC23は、スイッチ素子Q13のゲートと、スイッチ素子Q23のゲートと、の間に設けられ、キャパシタC33は、スイッチ素子Q23のゲートと、スイッチ素子Q33のゲートと、の間に設けられる。制御部23の端子Z3には、スイッチ素子Q13のゲートが接続されるとともに、キャパシタC23を介してスイッチ素子Q23のゲートが接続され、キャパシタC23、C33を介してスイッチ素子Q33のゲートが接続される。
【0035】
スイッチ素子Q23において、ゲートとソースとの間には、スイッチ素子Q21、Q22、Q31、Q32と同様に、抵抗R23およびダイオードD23で構成される充電部が設けられる。また、スイッチ素子Q33において、ゲートとソースとの間には、スイッチ素子Q21〜Q23、Q31、Q32と同様に、抵抗R33およびダイオードD33で構成される充電部が設けられる。
【0036】
キャパシタC24は、スイッチ素子Q14のゲートと、スイッチ素子Q24のゲートと、の間に設けられ、キャパシタC34は、スイッチ素子Q24のゲートと、スイッチ素子Q34のゲートと、の間に設けられる。制御部23の端子Z4には、スイッチ素子Q14のゲートが接続されるとともに、キャパシタC24を介してスイッチ素子Q24のゲートが接続され、キャパシタC24、C34を介してスイッチ素子Q34のゲートが接続される。
【0037】
スイッチ素子Q24において、ゲートとソースとの間には、スイッチ素子Q21〜Q23、Q31〜Q33と同様に、抵抗R24およびダイオードD24で構成される充電部が設けられる。また、スイッチ素子Q34において、ゲートとソースとの間には、スイッチ素子Q21〜Q24、Q31〜Q33と同様に、抵抗R34およびダイオードD34で構成される充電部が設けられる。
【0038】
[セルバランス回路AAの動作]
以上の構成を備えるセルバランス回路AAは、2次電池BT1〜BT3のうち少なくとも1つの充電電圧が他の充電電圧と異なれば、駆動回路1、1Aおよび制御信号生成部20により、これら2次電池BT1〜BT3に電流を流して、2次電池BT1〜BT3のそれぞれの充電電圧を均一化する。具体的なセルバランス回路AAの動作について、以下に詳述する。
【0039】
<制御信号生成部20の動作>
クロック生成部21は、2次電池BT1〜BT3の充電時および放電時において、端子X2から、クロック信号を出力する。
【0040】
制御部22の端子Y2には、クロック生成部21から出力されたクロック信号が入力される。この制御部22は、2次電池BT1〜BT3の充電時および放電時において、入力されたクロック信号を用いて、端子Y3、Y4から、デューティ比が50%のゲート信号を出力する。ここで、端子Y4から出力されるゲート信号は、端子Y3から出力されるゲート信号の極性を反転させたものに等しい。以降では、端子Y3から出力されるゲート信号のことを非反転ゲート信号と呼び、端子Y4から出力されるゲート信号のことを反転ゲート信号と呼ぶこととする。
【0041】
また、制御部22は、2次電池BT1〜BT3の充電時および放電時において、入力されたクロック信号を用いて、端子Y5から、デューティ比が50%の極性信号を出力する。以降では、端子Y5から出力される極性信号のことを非反転極性信号と呼ぶこととする。
【0042】
制御部23の端子Z2には、クロック生成部21から出力された後にインバータINVで極性の反転された反転クロック信号が入力される。この制御部23は、2次電池BT1〜BT3の充電時および放電時において、入力された反転クロック信号を用いて、端子Z3、Z4から、デューティ比が50%のゲート信号を出力する。ここで、端子Z4から出力されるゲート信号は、端子Z3から出力されるゲート信号の極性を反転させたものに等しい。また、制御部23は、制御部22がゲート信号の出力に用いたクロック信号の極性を反転させたものを用いて、ゲート信号を出力する。以上によれば、制御部23の端子Z3から出力されるゲート信号は、制御部22の端子Y4から出力されるゲート信号に等しく、反転ゲート信号と呼ぶことができる。また、制御部23の端子Z4から出力されるゲート信号は、制御部22の端子Y3から出力されるゲート信号に等しく、非反転ゲート信号と呼ぶことができる。
【0043】
また、制御部23は、2次電池BT1〜BT3の充電時および放電時において、入力された反転クロック信号を用いて、端子Z5から、デューティ比が50%の極性信号を出力する。ここで、制御部23は、制御部22が極性信号の出力に用いたクロック信号の極性を反転させたものを用いて、極性信号を出力する。このため、制御部23の端子Z5から出力される極性信号は、制御部22の端子Y5から出力される極性信号の極性を反転させたものに等しい。以降では、端子Z5から出力される極性信号のことを反転極性信号と呼ぶこととする。
【0044】
<駆動回路1の動作>
制御部22の端子Y4から出力された反転ゲート信号は、スイッチ素子Q12のゲートに印加されるとともに、キャパシタC22を介してスイッチ素子Q22のゲートに印加され、キャパシタC22、C32を介してスイッチ素子Q32のゲートに印加される。
【0045】
ここで、スイッチ素子Q22のソースには、2次電池BT1を介して基準電位源GNDが接続される。このため、スイッチ素子Q22のソース電位は、2次電池BT1の充電電圧の分だけ基準電位源GNDより高い電位となる。
【0046】
また、スイッチ素子Q22のソースには、上述のように2次電池BT1が接続されるとともに、抵抗R22を介してキャパシタC22も接続される。このため、キャパシタC22は、2次電池BT1により充電され、キャパシタC22の端子間電圧は、2次電池BT1の充電電圧と略等しくなる。したがって、スイッチ素子Q22のゲート電位は、キャパシタC22の端子間電圧と、反転ゲート信号の電圧と、を加算した分、すなわち2次電池BT1の充電電圧と、反転ゲート信号の電圧と、を加算した分だけ、基準電位源GNDより略高い電位となる。
【0047】
以上より、スイッチ素子Q22のゲート−ソース間電圧は、スイッチ素子Q12のゲート−ソース間電圧と同様に、反転ゲート信号の電圧と略等しくなる。このため、スイッチ素子Q22は、スイッチ素子Q12と同期してスイッチングすることとなる。
【0048】
一方、スイッチ素子Q32のソースには、2次電池BT2および2次電池BT1を介して基準電位源GNDが接続される。このため、スイッチ素子Q32のソース電位は、2次電池BT2の充電電圧と、2次電池BT1の充電電圧と、を加算した分だけ基準電位源GNDより高い電位となる。
【0049】
また、スイッチ素子Q32のソースには、上述のように2次電池BT1、BT2が接続されるとともに、抵抗R32を介してキャパシタC32、C22も接続される。ここで、上述のようにキャパシタC22の端子間電圧が2次電池BT1の充電電圧と略等しいため、キャパシタC32は、2次電池BT2により充電され、キャパシタC32の端子間電圧は、2次電池BT2の充電電圧と略等しくなる。このため、スイッチ素子Q32のゲート電位は、キャパシタC32の端子間電圧と、キャパシタC22の端子間電圧と、反転ゲート信号の電圧と、を加算した分、すなわち2次電池BT2の充電電圧と、2次電池BT1の充電電圧と、反転ゲート信号の電圧と、を加算した分だけ、基準電位源GNDより略高い電位となる。
【0050】
以上より、スイッチ素子Q32のゲート−ソース間電圧は、スイッチ素子Q12、Q22のそれぞれのゲート−ソース間電圧と同様に、反転ゲート信号の電圧と略等しくなる。このため、スイッチ素子Q32は、スイッチ素子Q12、Q22と同期してスイッチングすることとなる。
【0051】
一方、制御部22の端子Y3から出力された非反転ゲート信号は、スイッチ素子Q11のゲートに印加されるとともに、キャパシタC21を介してスイッチ素子Q21のゲートに印加され、キャパシタC21、C31を介してスイッチ素子Q31のゲートに印加される。
【0052】
ここで、スイッチ素子Q12、Q22、Q32が上述のようにスイッチングしてオン状態になると、スイッチ素子Q11のソースには基準電位源GNDが接続され、スイッチ素子Q21のソースには2次電池BT1を介して基準電位源GNDが接続され、スイッチ素子Q31のソースには2次電池BT2および2次電池BT1を介して基準電位源GNDが接続される。すると、キャパシタC21は、キャパシタC22と同様に、2次電池BT1により充電され、キャパシタC22の端子間電圧は、2次電池BT1の充電電圧と略等しくなる。また、キャパシタC31は、キャパシタC32と同様に、2次電池BT2により充電され、キャパシタC31の端子間電圧は、2次電池BT2の充電電圧と略等しくなる。
【0053】
以上より、スイッチ素子Q21のゲート−ソース間電圧と、スイッチ素子Q31のゲート−ソース間電圧とは、スイッチ素子Q11のゲート−ソース間電圧と同様に、非反転ゲート信号の電圧と略等しくなる。このため、スイッチ素子Q21、Q31は、スイッチ素子Q11と同期してスイッチングすることとなる。
【0054】
<駆動回路1Aの動作>
駆動回路1Aにおいても、上述の駆動回路1と同様に、キャパシタC23、C24のそれぞれの端子間電圧は、2次電池BT1の充電電圧と略等しくなり、キャパシタC33、C34のそれぞれの端子間電圧は、2次電池BT2の充電電圧と略等しくなる。このため、スイッチ素子Q23、Q33は、スイッチ素子Q13と同期してスイッチングし、スイッチ素子Q24、Q34は、スイッチ素子Q14と同期してスイッチングすることとなる。
【0055】
以上によれば、クロック生成部21から出力されるクロック信号に同期して、スイッチ素子Q11、Q14、Q21、Q24、Q31、Q34と、スイッチ素子Q12、Q13、Q22、Q23、Q32、Q33とは、2次電池BT1〜BT3の充電時および放電時において交互にオン状態になる。
【0056】
また、端子Y5から出力される非反転極性信号は、巻線W1の一端に印加され、端子Z5から出力される反転極性信号は、巻線W1の他端に印加される。このため、クロック生成部21から出力されるクロック信号に同期して、巻線W1の一端の電位と他端の電位とが反転する。
【0057】
以上のセルバランス回路AAでは、2次電池BT1〜BT3の充電時および放電時において、スイッチ素子Q11〜Q14、Q21〜Q24、Q31〜Q34が上述のようにスイッチングすると、巻線W1〜W3のそれぞれには、2次電池BT1〜BT3のそれぞれの充電電圧が印加される。巻線W1に2次電池BT1の充電電圧が印加されると、巻線W1で磁束が発生し、この磁束が巻線W2および巻線W3を貫くこととなる。この磁束をΦ、巻線W2の巻数をNとすると、巻線W2には、以下の式(1)に示す起電力εが発生することとなる。また、巻線W1〜W3のそれぞれの巻数は上述のように等しいため、巻線W3にも、以下の式(1)に示す起電力εが発生することとなる。
【0058】
【数1】

【0059】
ここで、巻線W1で発生する磁束Φは、巻線W1に印加される電圧に応じて変化する。このため、巻線W2および巻線W3に発生する起電力は、2次電池BT1の充電電圧に応じて変化することとなる。
【0060】
巻線W2においても、上述の巻線W1と同様に、2次電池BT2の充電電圧が印加されると磁束が発生し、この磁束が巻線W3および巻線W1を貫くため、巻線W3および巻線W1には、上述の式(1)で示したものと同様の起電力が発生することとなる。そして、巻線W3および巻線W1に発生する起電力は、2次電池BT2の充電電圧に応じて変化することとなる。
【0061】
また、巻線W3においても、上述の巻線W1、W2と同様に、2次電池BT3の充電電圧が印加されると磁束が発生し、この磁束が巻線W1および巻線W2を貫くため、巻線W1および巻線W2には、上述の式(1)で示したものと同様の起電力が発生することとなる。そして、巻線W1および巻線W2に発生する起電力は、2次電池BT3の充電電圧に応じて変化することとなる。
【0062】
ここで、2次電池BT1の充電電圧をVBT1、2次電池BT2の充電電圧をVBT2、巻線W1の抵抗成分をRW1、巻線W2の抵抗成分をRW2とする。すると、2次電池BT1の充電電圧VBT1と2次電池BT2の充電電圧VBT2との関係に応じて巻線W1を流れる電流IW1は、以下の式(2)のように表され、2次電池BT1の充電電圧VBT1と2次電池BT2の充電電圧VBT2との関係に応じて巻線W2を流れる電流IW2は、以下の式(3)のように表されることとなる。
【0063】
【数2】

【0064】
【数3】

【0065】
2次電池BT1の充電電圧と2次電池BT2の充電電圧とが等しい場合には、上述の式(2)のように、巻線W1を電流が流れないとともに、上述の式(3)のように、巻線W2を電流が流れないため、2次電池BT1および2次電池BT2には、電流が流れない。
【0066】
一方、2次電池BT1の充電電圧が2次電池BT2の充電電圧より低い場合には、2次電池BT1の充電電圧と2次電池BT2の充電電圧とが等しくなるまで、上述の式(2)で定まる電流が巻線W1から2次電池BT1に流れて、2次電池BT1が充電される。また、2次電池BT1の充電電圧と2次電池BT2の充電電圧とが等しくなるまで、上述の式(3)で定まる電流が2次電池BT2から巻線W2に流れて、2次電池BT2が放電される。
【0067】
また、2次電池BT1の充電電圧が2次電池BT2の充電電圧より高い場合には、2次電池BT1の充電電圧と2次電池BT2の充電電圧とが等しくなるまで、上述の式(2)で定まる電流が2次電池BT1から巻線W1に流れて、2次電池BT1が放電される。また、2次電池BT1の充電電圧と2次電池BT2の充電電圧とが等しくなるまで、上述の式(3)で定まる電流が巻線W2から2次電池BT2に流れて、2次電池BT2が充電される。
【0068】
上述の2次電池BT1の充電電圧と2次電池BT2の充電電圧との関係と同様に、2次電池BT2の充電電圧と2次電池BT3の充電電圧と、および、2次電池BT3の充電電圧と2次電池BT1の充電電圧と、においても、それぞれの充電電圧の関係に応じた電流が各2次電池を流れて、各2次電池が充電または放電される。そして、その結果、2次電池BT1〜BT3のそれぞれの充電電圧が等しくなる。
【0069】
以上の駆動回路1、1Aによれば、以下の効果を奏することができる。
【0070】
例えばスイッチ素子Q12、Q22に着目する。スイッチ素子Q22のソース電位は、2次電池BT1の充電電圧の分だけ基準電位源GNDより高い電位となる。一方、スイッチ素子Q22のゲート電位は、キャパシタC22の端子間電圧と、反転ゲート信号の電圧と、を加算した分、すなわち2次電池BT1の充電電圧と、反転ゲート信号の電圧と、を加算した分だけ、基準電位源GNDより略高い電位となる。このため、スイッチ素子Q22のゲート−ソース間電圧は、スイッチ素子Q12のゲート−ソース間電圧と同様に、反転ゲート信号の電圧と略等しくなる。したがって、1つの制御信号でスイッチ素子Q12とスイッチ素子Q22とを制御することができる。よって、スイッチ素子Q11とスイッチ素子Q12とで、制御信号を生成する制御信号生成部を別個に設ける必要がないため、セルバランス回路AAを小型化することができる。
【0071】
スイッチ素子Q32と、スイッチ素子Q12、Q22と、についても、上述のスイッチ素子Q12と、スイッチ素子Q22と、と同様に、1つの制御信号で制御することができる。また、スイッチ素子Q11、Q21、Q31や、スイッチ素子Q13、Q23、Q33や、スイッチ素子Q14、Q24、Q34についても、それぞれ、1つの制御信号で制御することができる。このため、セルバランス回路AAを小型化することができる。
【0072】
また、例えばキャパシタC22および抵抗R22に着目する。キャパシタC22は、抵抗R22を介して2次電池BT1に接続されるため、キャパシタC22は、2次電池BT1により充電される。このため、キャパシタC22の端子間電圧を、2次電池BT1の充電電圧と略等しくすることができる。
【0073】
キャパシタC21、C23、C24、C31〜C34のそれぞれの端子間電圧についても、上述のキャパシタC22と同様に、抵抗R21、R23、R24、R31〜R34のそれぞれにより、対応する2次電池の充電電圧と略等しくすることができる。
【0074】
また、例えばダイオードD22に着目する。ダイオードD22のアノードには、スイッチ素子Q22のソースが接続され、ダイオードD22のカソードには、スイッチ素子Q22のゲートが接続される。このため、スイッチ素子Q22において、ゲートからソースに電流が流れてしまうのを防止できる。
【0075】
スイッチ素子Q21、Q23、Q24、Q31〜Q34のそれぞれにおいても、上述のスイッチ素子Q22と同様に、ダイオードD21、D23、D24、D31〜D34のそれぞれにより、ゲートからソースに電流が流れてしまうのを防止できる。
【0076】
また、以上の駆動回路1、1Aを備えるセルバランス回路AAによれば、以下の効果を奏することができる。
【0077】
2次電池BT1〜BT3の充電時および放電時において、2次電池BT1〜BT3のそれぞれの充電電圧を等しくすることができる。このため、2次電池BT1〜BT3の充電時だけでなく放電時においても、これら2次電池BT1〜BT3のそれぞれの充電電圧を均一化させて、セルバランスを安定させることができる。
【0078】
また、2次電池BT1〜BT3の充電時および放電時においてスイッチ素子Q11〜Q14、Q21〜Q24、Q31〜Q34をスイッチングさせるため、これら2次電池BT1〜BT3の充電電圧に差が生じるのを抑制できるので、一時的に劣化領域に達してしまうのを防止して、これら2次電池BT1〜BT3の劣化を抑制できる。
【0079】
また、スイッチ素子Q11〜Q14、Q21〜Q24、Q31〜Q34のデューティ比が50%であるため、2次電池BT1〜BT3のそれぞれの充電電圧をより正確に均一化させることができる。
【0080】
本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲内で様々な変形や応用が可能である。
【0081】
例えば、上述の実施形態では、2次電池BT1〜BT3の3つの2次電池が直列接続されている場合ついて説明したが、これに限らない。例えば、4つの2次電池が直列接続されている場合や、5つの2次電池が直列接続されている場合に対しても、本発明の駆動回路を適用することができる。
【0082】
また、上述の実施形態では、巻線W1〜W3のそれぞれが同一の鉄心に巻回されているものとしたが、これに限らず、例えば鉄心がないものとしてもよい。
【0083】
また、上述の実施形態では、本発明の駆動回路を、セルバランス回路AAに適用したが、これに限らず、複数のスイッチ素子を備える種々の装置に適用することができる。
【0084】
また、上述の実施形態では、本発明の駆動回路が接続されるスイッチ素子を、NチャネルMOSFETで構成されるものとしたが、これに限らず、例えばIGBTやBJTなどの他のスイッチ素子で構成してもよい。
【符号の説明】
【0085】
1、1A;駆動回路
20;制御信号生成部
21;クロック生成部
22、23;制御部
AA;セルバランス回路
BT1、BT2、BT3;2次電池
C11、C12、C21〜C24、C31〜C34;キャパシタ
D21〜D24、D31〜D34;ダイオード
Q11〜Q14、Q21〜Q24、Q31〜Q34;スイッチ素子
R21〜R24、R31〜R34;抵抗
T;トランス
W1、W2、W3;巻線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1端子と制御端子との間の電圧に応じて第2端子から当該第1端子に電流を流す第1のスイッチ素子および第2のスイッチ素子と、当該第1のスイッチ素子の制御端子と当該第2のスイッチ素子の制御端子とに印加する制御信号を生成する制御信号生成手段と、の間に設けられる駆動回路であって、
前記第1のスイッチ素子の制御端子と、第1端子の電位が当該第1のスイッチ素子以上である前記第2のスイッチ素子の制御端子と、の間に設けられるキャパシタを備えることを特徴とする駆動回路。
【請求項2】
前記キャパシタを、前記第2のスイッチ素子の第1端子の電圧で充電する充電手段を備えることを特徴とする請求項1に記載の駆動回路。
【請求項3】
前記充電手段は、前記第2のスイッチ素子の制御端子と第1端子との間に設けられた抵抗を備えることを特徴とする請求項2に記載の駆動回路。
【請求項4】
前記充電手段は、前記抵抗に並列接続された一方向性素子を備え、
前記一方向性素子の入力端子には、前記第2のスイッチ素子の第1端子が接続され、当該一方向性素子の出力端子には、当該第2のスイッチ素子の制御端子が接続されることを特徴とする請求項3に記載の駆動回路。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−222954(P2012−222954A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−86087(P2011−86087)
【出願日】平成23年4月8日(2011.4.8)
【出願人】(000002037)新電元工業株式会社 (776)
【Fターム(参考)】