説明

駆動装置

【課題】圧電素子などを樹脂材からなる支持部材により支持することにより、移動対象物を精度良く移動できる駆動装置及び駆動装置の製造方法を提供すること。
【解決手段】圧電素子12に駆動軸14が取り付けられ、駆動軸14の長手方向に沿って移動可能に被駆動部材16が取り付けられ、圧電素子12と静止部材10の間に樹脂材を充填し硬化させて圧電素子12を支持する支持部材5が設けられている。このため、圧電素子12及び駆動軸14を所定の位置に配置した後に樹脂材を充填し硬化させることにより、圧電素子12及び駆動軸14を正確な位置に配置することができ、被駆動部材16や被駆動部材16に取り付けられる移動レンズ70を精度良く移動させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はアクチュエータを用いた駆動装置に関し、特に小型デジタルカメラやウェブカメラ又はカメラ付き携帯電話機等に搭載する比較的小型のレンズなど光学部材を駆動する駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
デジタルカメラ等のレンズの駆動装置として、圧電素子を用いたアクチュエータが知られている。例えば特許文献1のアクチュエータは、圧電素子、駆動部材、及び、台座で構成される。前記圧電素子の伸縮方向の一方の端面には駆動部材が固着され、この駆動部材に被駆動部材が摩擦係合される。また、圧電素子の伸縮方向の他方の端面には、台座が固着される。このような構成で前記圧電素子にパルス状の電圧が印加されると、圧電素子の伸び方向と縮み方向との動きが駆動部材に伝達される。圧電素子が遅い速度で変形した場合には、被駆動部材が駆動部材とともに移動し、圧電素子が速い速度で変形した場合には、被駆動部材がその質量の慣性によって同じ位置に停まる。したがって、パルス状の電圧の印加を繰り返すことによって、被駆動部材を細かなピッチで間欠的に移動させることができる。
【0003】
このような構成のアクチュエータは、台座と、圧電素子と、駆動部材との間で共振するという問題を発生する。また、本体との取り付け時に共振の影響が出ないように特許文献1のアクチュエータは、台座を本体にゴム系接着剤で固着することにより、アクチュエータを本体に弾性的に支持している。ところがこのような駆動方式は台座と、圧電素子と、駆動部材との構成のバラツキのコントロールが非常に困難となる。
【0004】
このような共振を利用すると、駆動部材の移動量が増加するという利点がある。例えば特許文献2には、この共振を利用したアクチュエータが記載されている。このアクチュエータによれば、共振時の圧電素子の変位に合わせてパルス状の電圧を印加することによって、被駆動部材の変位量を大きくしている。
【0005】
しかし、特許文献1、2のアクチュエータにおいて、圧電素子、駆動部材、台座から成るアクチュエータの内部で生じる共振状態を利用しようとすると、共振による悪影響を受けて、駆動部材が圧電素子の伸縮方向以外にも変位するという問題を生じる。例えば図27(A)、図27(B)に示すように、駆動部材2は、前記共振の影響を受けて、圧電素子の伸縮方向以外に変位するという問題を生じる。このため、圧電素子1の伸縮による駆動力が被駆動軸14に正確に伝わらず、被駆動軸14を圧電素子1の伸縮方向に正確に移動させることが困難となる。
【0006】
このような問題を解消するためには、アクチュエータを本体(固定枠)に対して共振の影響が少なくなるように支持することが必要になる。アクチュエータの支持方法としては例えば特許文献3に、圧電素子以外の駆動軸や被駆動部材でアクチュエータを支持する方法が提案されている。
【特許文献1】特開2002−142470号公報
【特許文献2】特許第3171187号公報
【特許文献3】特開2002−95274号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献3のアクチュエータは、圧電素子の一方側に駆動軸が取り付けられ、他方側がフリーになっているため、圧電素子に高周波の電圧をかけて伸縮させると、フリーの他方側が大きく変位し、駆動軸側は殆ど変位せず、被駆動部材の推力を十分に得ることができないという問題が発生する。このため、圧電素子の他方側に錘部材を取り付ける必要があるが、この場合には、上述したように、圧電素子、錘部材、及び、駆動軸との間に共振が生じるため、被駆動部材を正確に移動させることができないという問題が発生する。
【0008】
本発明はこのような事情に鑑みて成されたもので、共振の影響が少なく、且つ、被駆動部材の推進力を確実に得ることのできる駆動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち、本発明に係る駆動装置は、電気機械変換素子とこの電気機械変換素子の伸縮に応じて動く駆動部材を有し、前記駆動部材に摩擦係合された被駆動部材を前記駆動部材に沿って移動させるアクチュエータを備え、前記アクチュエータは前記電気機械変換素子の伸縮方向に対して側方で筐体に支持されることを特徴とする。
【0010】
この発明によれば、アクチュエータが電気機械変換素子の伸縮方向に対する側方から支持されることにより、アクチュエータと外部の部材との間で振動が伝達しにくくなり、共振の影響を低減することができる。従って、被駆動部材を正確に移動させることができる。尚、前記アクチュエータが側方から支持される場合、前記アクチュエータを安定的に支持できるという意味で、前記アクチュエータの側方全周で支持されるのがより好ましいが、側方三方向で支持された場合でも、また対向する二方向で支持されても同様に実施可能であり、さらに、ある程度の接触面積を確保できれば側方一方向で支持しても同様である。
【0011】
また本発明に係る駆動装置において、前記アクチュエータは、支持部材によって前記筐体に支持されることが好ましい。尚、ここで言うところの支持部材とは前記アクチュエータと前記筐体との位置関係を保つために、その一部が前記アクチュエータ及び前記筐体の少なくとも一部と接触している部材のことを意味する。
【0012】
また本発明に係る駆動装置において、前記アクチュエータは、充填材によって前記筐体に支持されることが好ましい。尚、ここで言うところの充填材とは、液体又はゲル状のものに限らず広く間隙を埋めるために供する部材を意味し、前記アクチュエータと前記筐体との位置関係を保つために、その一部が前記アクチュエータ及び前記筐体の一部とある面積を持って接触している部材のことを意味する。
【0013】
また本発明に係る駆動装置において、前記充填材は、接着剤により構成されていることが好ましい。また本発明に係る駆動装置において、前記充填材は、複数の接着剤により構成されていることが好ましい。
【0014】
また本発明に係る駆動装置において、前記支持部材は、弾性特性を備えていることが好ましい。また本発明に係る駆動装置において、前記充填材は、弾性特性を備えていることが好ましい。
【0015】
また本発明に係る駆動装置において、前記筐体は、前記充填材の流出を防止する仕切り壁を備えることが好ましい。
【0016】
また本発明に係る駆動装置において、前記駆動部材を前記筐体に支持するための第一の充填部と、前記電気機械変換素子を前記筐体に支持するための第二の充填部を備えることが好ましい。また本発明に係る駆動装置において、前記第一の充填部は仮止め用であることが好ましい。また本発明に係る駆動装置において、前記第一の充填部は、前記駆動部材を前記電気機械変換素子近傍で支持する軸受け部であって、前記第二の充填部に隣接する部分に設けられていることが好ましい。
【0017】
また本発明に係る駆動装置において、前記電気機械変換素子は、電気信号入力のための配線部材が接続される端子を外表面に有し、前記支持部材又は充填材は、前記端子と前記配線部材との接続部分を被覆することが好ましい。
【0018】
また本発明に係る駆動装置において、前記駆動部材は、先端側及び基端側の一方又は双方で前記電気機械変換素子の伸縮方向に移動可能に支持されていることが好ましい。
【0019】
また本発明に係る駆動装置において、前記アクチュエータは、前記電気機械変換素子の伸縮方向に移動可能に支持されていることが好ましい。
【0020】
また本発明に係る駆動装置において、前記電気機械変換素子に対し前記駆動部材と反対側に錘部材が取り付けられたことが好ましい。
【0021】
また本発明に係る駆動装置において、前記電気機械変換素子を駆動するために伸びと縮み方向において非対称の信号を発生させる駆動手段を有していることが好ましい。
【0022】
また本発明に係る駆動装置において、前記被駆動部材は、前記駆動部材に対し面接触していることが好ましい。
【0023】
また本発明に係る駆動装置において、前記被駆動部材の移動位置を検出する検出手段を備えたことが好ましい。
【0024】
また本発明に係る駆動装置において、前記電気機械変換素子は可聴周波数を超える駆動周波数で駆動されることが好ましい。
【0025】
また本発明に係る駆動装置において、前記被駆動部材は、光学部材又は光学部材に取り付けられる部材であり、撮影光学系に用いられることが好ましい。この場合、光学部材とはレンズのみに限られず、被駆動部材は絞りやシャッター又はNDフィルターなどにも用いられる。
【0026】
また本発明に係る駆動装置において、前記アクチュエータは、携帯電話に搭載される撮影光学系に用いられることが好ましい。この場合、このアクチュエータは携帯電話に搭載される撮影光学系のみに限られず、ウェブカメラや小型のデジタルカメラなど比較的小型の撮影光学系に用いられることも可能である。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、共振の影響の少ない方法でアクチュエータを支持するようにしたので、アクチュエータと外部の部材との間で振動が伝達されることを抑制することができ、被駆動部材を正確に移動させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、添付図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
(第一実施形態)
【0029】
まず本発明の第一実施形態に係る駆動装置について説明する。
【0030】
図1は第一実施形態に係る駆動装置を示す構成概要図である。同図に示す駆動装置は、アクチュエータ10と、アクチュエータ10を固定枠24に支持する支持部材22とを備える。
【0031】
アクチュエータ10は、圧電素子(電気機械変換素子に相当)12、駆動軸(駆動摩擦部材に相当)14、被駆動部材16、及び、錘部材18を備えている。圧電素子12は矢印方向に積層されて構成されており、電圧を印加することによって積層方向に変形(伸縮)するように構成される。したがって、圧電素子12は、長手方向の端面12A、12Bが変位するようになっている。
【0032】
圧電素子12の端面12A、12Bのうち、一方の端面12Aには、駆動軸14の基端が固着されている。駆動軸14は例えば円柱状に形成されており、その軸が矢印方向(すなわち、圧電素子の伸縮方向)に配置されている。駆動軸14の材質は、軽く高剛性のものが適しており、その条件を満たすものとしてはベリリウムが理想的であるが、この材料は稀少金属であるため高価で且つ加工性が悪いという欠点を持っている。そこで本実施形態においては、黒鉛結晶を強固に複合させた黒鉛複合体、例えばカーボングラファイトが用いられる。(ここで、黒鉛複合体とは炭素の六角板状結晶体であるグラファイトとグラファイト以外の物質との複合体を意味し、カーボングラファイトとはグラファイトと無定形炭素からなる物質を意味する。また、グラファイトは黒鉛とも言われる。)この黒鉛複合体であるカーボングラファイトは、ベリリウムと似た特性を有しながら(ベリリウムの比重は約1.85、カーボングラファイトの比重は約1.8である)、ベリリウムと異なって比較的安価であり加工しやすいという特性を有している。なお、駆動軸14の形状は円柱状に限定されるものではなく、角柱状でもよい。
【0033】
被駆動部材16はレンズ枠(不図示)に連結される部材であり、駆動軸14に所定の摩擦力で係合され、駆動軸14に沿ってスライド自在に支持される。被駆動部材16と駆動軸14との摩擦力は、圧電素子12に緩やかな変化の電圧を印加した際に、その駆動力よりも静摩擦力が大きくなるように、且つ、圧電素子12に急激な変化の電圧を印加した際に、その駆動力よりも静摩擦力が小さくなるように設定される。なお、駆動軸14と被駆動部材16の摺動接触部分には動作を安定させ、且つ繰り返し駆動した時の耐久性を向上させるために潤滑剤が塗布される。この潤滑剤は低温下でも駆動軸14と被駆動部材16の摺動駆動抵抗が増加しないように、温度によって性能が変化し難いものが好ましい。また、光学部品や機構部品に悪影響を与える塵埃を発生させないタイプのものがよい。
【0034】
錘部材18は、圧電素子12の端面12Bに接着剤20によって固着されている。この錘部材18は圧電素子12の端面12Bに負荷を与えることによって、端面12Bが端面12Aよりも大きく変位することを防止するものであり、駆動軸14よりも重量の大きいものが好ましい。また駆動軸14よりも質量の大きい錘部材18を設けることによって、圧電素子12の伸縮を効率よく駆動軸14側に伝えることが可能である。例えば、駆動軸14が8mg、圧電素子12が30mgの場合に、20mgの錘部材18が用いられる。
【0035】
また、錘部材18は、軟性材料によって形成されている。錘部材18の材質は、圧電素子12及び駆動軸14よりもヤング率の小さい材料のものが用いられる。錘部材18のヤング率としては、10Pa以下が好ましく、300MPa以下がより好ましい。このような錘部材18は、ゴム等の弾性体に比重の大きい金属粉を混ぜ合わせることによって形成され、例えばウレタンゴムやウレタン樹脂にタングステンの粉末を混合することによって製造される。錘部材18の比重は、装置の小型化のためにできるだけ高いことが好ましく、例えば8〜12程度に設定される。また、ウレタンゴムやウレタン樹脂にタングステンの粉末を混合することによって製造される錘部材18のヤング率は60MPa程度、比重は11.7程度となる。したがって、錘部材18を出来るだけ小さい体積で設計する場合は、出来るだけ比重が大きく且つヤング率の小さい組み合わせが最適となるが、錘部材18は駆動軸14の比重より大きく(比重1.8以上)、且つヤング率が1GPa以下のものであれば利用可能である。すなわち、比重をヤング率で除した数値(比重/ヤング率)が1.8×10−9 以上であれば錘部材18として適している。なお、錘部材18と圧電素子12とを固着する接着剤としては、弾性接着剤を用いることが好ましい。
【0036】
前述した圧電素子12には不図示の駆動パルス供給装置が電気的に接続されており、この駆動パルス供給装置によって、図2(A)、図2(B)に示す波形の電圧が印加される。
【0037】
図2(A)、図2(B)は圧電素子12に印加するパルス波形の一例を示したものである。図2(A)は、図1の被駆動部材16を矢印の左方向に移動させる際のパルス波形であり、図2(B)は図1の被駆動部材16を矢印の右方向に移動させる際のパルス波形である。
【0038】
図2(A)の場合、圧電素子12には、時刻α1から時刻α2にかけて緩やかに立ち上がり、時刻α3で急激に立ち下がる略鋸歯状の駆動パルスを印加している。したがって、時刻α1から時刻α2では、圧電素子12が緩やかに伸長する。その際、駆動軸三4が緩やかな速度で移動するので、被駆動部材16は駆動軸14とともに移動する、これにより、被駆動部材16を図1の左方向に移動させることができる。階刻α3では、圧電素子12が急激に縮まるので、駆動軸14は図1の右方向に移動する。その際、駆動軸14が急激に移動するので、被駆動部材16は慣性によってその位置に停止したまま、駆動軸14だけが移動する。したがって、図2(A)に示した鋸歯状の駆動パルスを繰り返し印加することによって、図1の被駆動部材16は左方向への移動と停止を繰り返すので、左方向へ移動させることができる。
【0039】
図2(B)の場合、圧電素子12には、時刻β1で急激に立ち上がり、時刻β2から時刻β3にかけて緩やかに立ち下がる略鋸歯状の駆動パルスを印加している。したがって、時刻β、1では圧電素子12が急激に伸長し、駆動軸14は図1の左方向に移動する。その際、駆動軸14が急激に移動するので、被駆動部材16は慣性によってその位置に停止したまま、駆動軸14だけが移動する。時刻β2から時刻β3では、圧電素子12が緩やかに縮まる。その際、駆動軸14が緩やかに変位するので、被駆動部材16は駆動軸14とともに移動する。これにより、被駆動部材16を図1の右方向に移動させることができる。したがって、図2(B)に示した鋸歯状の駆動パルスを繰り返し印加することによって、図1の被駆動部材16は右方向への移動と停止を繰り返すので、右方向へ移動させることができる。なお、前記鋸状の駆動パルスは説明のために模式的に用いられるものであって、実際には図13のような回路によって図14、図15に示す信号が入出力される。その出力信号は前記鋸状の駆動パルスと等価のものとなる。また、使用される駆動周波数としては、駆動周波数が異音として認識される可聴周波数域を避け、且つ電力消費量が少ないことを考慮して選定すれば20〜200kHz程度が好ましく、より好ましくは50〜100kHzが用いられる。
【0040】
アクチュエータ10は、圧電素子12の端面12Bに固着された錘部材18が、ヤング率の小さい軟性材料で形成されている。このような錘部材18を用いることによって、圧電素子12と駆動軸14とを質量として、錘部材18を弾性体とした等価1自由系の共振周波数fを大幅に下げることができる、換言すると、錘部材18は、共振周波数を低減させる共振周波数低減部材として機能する。また、ヤング率の小さい軟性材料等で形成された錘部材18を用いることによって、剛性材料から成る錘部材を設ける場合よりも、アクチュエータ10の共振周波数が低いものとなる。このことは、その共振周波数fを求めるための次の式(1)からも明らかである。この式(1)において、Eは錘部材18のヤング率、Aは錘部材18の圧電素子12側の面積、hは錘部材18の厚さ、Maは圧電素子12の質量、Mbは駆動部材14の質量、Mcは錘部材18の質量を示す。
【数1】

【0041】
この式(1)から明らかなように、錘部材18のヤング率Eを小さくすると、等価1自由系の共振周波数fは小さくなる。本実施の形態では、錘部材18のヤング率を1GPa以下としたことによって、共振周波数fを約70kHz以下にすることができる。また、本実施の形態において、錘部材18のヤング率を300MPa以下とすれば、前記共振周波数fを35kHz以下にすることができる。さらに、本実施の形態において、錘部材18をヤング率が60MPa程度のウレタンゴムにタングステン粉末を混合したものを使用した場合は、共振周波数fは15kHz程度となる。(図3に計算例を示す。図3の番号1を参照。なお、例えば、図3中のE+07は、×10を意味する。)
【0042】
これに対して、錘に相当する部材がヤング率の大きい硬質材料で形成されると、共振周波数fが大きくなる。例えば、本実施の形態において、錘部材18の材質をヤング率が200〜400GPaのステンレスとした場合は、共振周波数fは1GHz以上となる。また、金属の中でも比較的ヤング率の小さいアルミニウム(ヤング率は120GPa程度)を使用した場合であっても共振周波数fは約700kHzとなる。(図3の番号5参照。)
【0043】
前述したように本実施の形態のアクチュエータ10は、錘部材18が共振周波数低減部材により形成されているので、前記等価1自由系の共振周波数fを著しく低下させることができる。なお、錘部材18を弾性体や粘弾性材料とした場合も同様な作用を奏する。
【0044】
ここで一般に、振動する機械や構造物から、それを支える基礎や床に振動が伝わらないようにするためには、振動伝達率(Vibration Transmissibility)が小さいほうが良く、等価1自由系においては、振動伝達率λは次の式(2)で示される。
【数2】

【0045】
この式(2)において、λは等価1自由系の振動伝達率、fは使用される駆動周波数、fは等価1自由系の共振周波数、ζは等価1自由系の減衰比である。
【0046】
そして、等価1自由系では、この振動伝達率λが1以下の場合には、ζの値に無関係に機械の振動が基礎や床に伝わりにくいとされる。
【0047】
従って、次の式(3)、及びその式(3)を変形した式(4)で示されるように、振動伝達率λが1以下の範囲、すなわちf≧21/2・fを満たす範囲(図4の範囲P)は、圧電素子12の振動がアクチュエータ10の支持部材(例えば図1の固定枠24)に伝わりにくく、共振による影響が非常に小さい防振領域である。したがって、発明を実施するための最良の実施形態である周波数の組み合わせ、すなわちアクチュエータの共振周波数が70kHz以下、駆動周波数が50〜100kHzとするものはこの防振領域を満たすことになる。なお、防振領域については、例えば、「モード解析入門、長松昭男著、コロナ社」に記載されている。因みに、f≧21/2・fの関係は、他の実施形態に対しても勿論適用可能である。
【数3】


【数4】

【0048】
上記の如く構成されたアクチュエータ10は、支持部材22を介して固定枠24(本体)に取り付けられている。支持部材22は、金属や樹脂によって板状に形成されており、その中央部には、駆動軸14が挿通される円形の孔22Aが形成されている。支持部材22は、この孔22Aに駆動軸14を挿通させた状態で、且つ、圧電素子12の端面12Aに当接した状態で、接着剤26によって圧電素子12の端面12Aに接着されている。また、支持部材22は、固定枠24の段差部24Bに当接した状態で、接着剤28によって強固に接着固定されている。これにより、圧電素子12、駆動軸14、及び錘部材18から成るアクチュエータ10が、圧電素子12の端面12Aで固定枠24に支持される。なお、接着剤26、28としては、弾性接着剤を用いることが好ましい。
【0049】
固定枠24は、携帯電話等の本体(不図示)に取り付けられる部材であり、二つの貫通孔24A、24Aを備えている。貫通孔24A、24Aは駆動軸14よりも若干大きな径で形成されており、駆動軸14を貫通孔24A、24Aに挿通させることによって、駆動軸14が矢印方向にスライド自在に支持される。
【0050】
固定枠24の端部には保護板30が取り付けられている。保護板30は、薄板を屈曲させることによってコ状に形成されており、錘部材18に非接触状態で固定枠24に取り付けられている。この保護板30を取り付けることによってアクチュエータ10が補強され、落下時の損傷を防止することができる。なお、本実施形態では、保護板30を錘部材18に非接触で取り付けたが、錘部材18に接触させた状態で取り付けてもよい。
【0051】
上述したように第1の実施形態の駆動装置は、アクチュエータ10を圧電素子12の端面12Aで支持したので、アクチュエータ10を中空に吊設した理想状態に近い状態でアクチュエータ10が支持されることになる。よって、アクチュエータ10と固定枠24との問で振動が伝わりにくくなり、共振の影響が小さくなるので、被駆動部材16を正確に移動させることができる。
【0052】
特に上述した第1の実施形態では、錘部材18として軟性材料を用いたので、アクチュエータ10そのもので発生する共振を抑制することができ、さらに上記の如くアクチュエータ10を支持することによってアクチュエータ10と固定枠24との間の共振をより効果的に抑制することができる、すなわち、軟性材料から成る錘部材18を用いた場合には、圧電素子12、駆動軸14、及び、錘部材18から成る系の共振周波数が低くなる。具体的には圧電素子12と駆動軸14とを質量として、錘部材18を弾性体とした等価1自由系の共振周波数fを大幅に下げることができる。共振周波数fが低くなることで、駆動周波数fは、f≧21/2・f、となる防振領域に設定しやすくなり、共振の影響が少なくなる。したがって、図27(A)、図27(B)に示すように、錘部材18を硬性材料で構成した場合に発生する、圧電素子12の伸縮方向以外の振れを防止することができる。これにより、駆動軸14が圧電素子12の伸縮方向に変位するので、圧電素子12の伸縮による駆動力が被駆動部材16に正確に伝わり、被駆動部材16を圧電素子12の伸縮方向に正確に駆動制御することができる。また、共振周波数fが低くなることで圧電素子12、駆動軸14、及び、錘部材18の構成のバラツキによる影響が少なくなり、安定した駆動力を得ることができる。
【0053】
なお、防振領域とは、アクチュエータ10側から固定枠24側への振動伝達の振動伝達率が1以下となる領域である。f≧21/2・fが成立する場合、振動伝達率が1以下となるため、共振の影響を低く抑えることができる。
【0054】
このように軟性の錘部材18を用いることによって、アクチュエータ10の内部での共振が抑制されるので、アクチュエータ10を圧電素子12の端面12Aで支持することによってアクチュエ一タ10は共振のない理想的な状態で動作することになり、被駆動部材16をより正確に移動させることができる。
【0055】
なお、上述した第1の実施形態は、硬質の支持部材22によって圧電素子12と固定枠24とを連結するようにしたが、これに限定するものではなく、図5に示すように、圧電素子12の端面12Aと固定枠24とをゴム等の弾性体からなる支持部材36を介して支持するようにしてもよい。支持部材36は、筒状に形成されており、駆動軸14を挿通させた状態で、圧電素子12の端面12Aと固定枠24とに固着されている。この弾性の支持部杉36によって、固定枠24とアクチュエータ10との間で振動が伝達することをより効果的に抑制することができ、特にアクチュエータ10に外部から振動が伝わることを防止できる。
【0056】
なお、図5の固定枠24には、保護板32が取り付けられている。保護板32は、板状に形成されており、駆動軸14の先端面に接触した状態で両面テープ34によって固定枠24に取り付けられている。この保護板32を取り付けることによってアクチュエータ10が補強され、落下時の損傷を防止することができる。なお、本実施形態では、保護板32を駆動軸14に接触させた状態で取り付けたが、これに限定するものではなく、保護板32を駆動軸14に非接触で取り付けてもよい。
【0057】
図6に示すように、支持部材38を用いて、アクチュエータ10を固定枠24に支持するようにしてもよい。この支持部材38は、シリコンゴム等の弾性部材によって形成されており、圧電素子12が圧入される矩形状の孔38Aと、駆動軸14が遊挿される円形の孔38Bとを備える。そして、支持部材38は、圧電素子14を孔38Aに圧入し、且つ、駆動軸14を孔38Bに挿通させた状態で、弾性の接着剤39によって圧電素子14の端面14Aに固着される。
【0058】
また、支持部材38の外形は、固定枠24の内側形状と同じ形状で形成されており、固定枠24の内側に支持部材38を圧入できるようになっている。支持部材38は、固定枠24の内側に圧入した状態で、弾性の接着剤37によって固定枠24に接着される。
【0059】
上記の如く構成された駆動装置は、圧電素子14が支持部材38に圧入され、さらに支持部材38が固定枠24に圧入されているので、圧電素子14の側面が支持部材によって保持されている。したがって、落下等の衝撃を受けた際に、支持部材38が衝撃を吸収することができ、耐衝撃性能が向上する。
(第二実施形態)
【0060】
次に本発明の第二実施形態に係る駆動装置を図7に基づいて説明する。
【0061】
図7に示すように、第2の実施形態では、アクチュエータ10が一対の支持板40、42によって、圧電素子12の伸縮方向に両側から押圧された状態で支持されている。支持板40は、薄い金属板によってコ状に形成されており、錘部材18を押圧した状態で固定枠24に取りつけられている。支持板42は、薄い金属板から成り、駆動軸14の先端面を抑圧した状態で、接着剤44によって固定枠24に固着されている。
【0062】
上記の如く構成された第2の実施形態によれば、アクチュエータ10が一対の支持板40、42によって圧電素子12の伸縮方向に挟持されており、中に浮いた状態に近い状態で支持されている。このような状態で支持されたアクチュエータ10は、固定枠24との固着部分がないので、アクチュエータ10と固定枠24との間で振動が伝達しにくくなり、アクチュエータ10と固定枠24との間で共振が生じにくくなる、よって、第2の実施の形態のアクチュエータ10は、共振による影響が少なくなるように支持されるので、被駆動部材16を正確に移動させることができる。特に錘部材18が軟性材料から成る場合には、上述したようにアクチュエータ10の内部で共振が生じにくいので、上記の如く両側から押圧して支持することによって、アクチュエータ10を共振のない状態に保つことができる。
(第三実施形態)
【0063】
次に本発明の第三実施形態に係る駆動装置を図8に基づいて説明する。
【0064】
図8に示すように第3の実施形態のアクチュエータ10は、一対の支持部材50、50によって圧電素子12の側面が両側から押圧された状態で支持されている。支持部材50、50は、金属、樹脂、或いはゴム等から成り、固定枠24に取りつけられている。なお、支持部材50、50の先端と圧電素子12の側面とを弾性の接着剤によって接齎してもよい。また、一対の支持部材50、50の代わりに筒状の支持部材を用い、圧電素子12の側面を全周において抑圧して支持するようにしてもよい。
【0065】
上記の如く構成された第3の実施形態によれば、一対の支持部材50、50で圧電素子12の側面を両側から押圧してアクチュエータ10を支持するようにしたので、アクチュエータ10は、中に浮いた理想状態に近い状態で支持される。よって、アクチュエータ10と固定枠24との問で振動が伝達しにくいので、アクチュエータ10は共振の影響が少なくなり、被駆動部材16を正確に移動させることができる。特に錘部材18が軟性材料から成る場合には、上述したようにアクチュエータ10の内部で共振が生じにくいので、上記の如く圧電素子12の側面を両側から抑圧して支持することによって、アクチュエータ10を共振のない状態に保つことができる。
【0066】
なお、上述した第1〜3の実施形態では、軟性材料から成る錘部材18を用いたが、これに限定するものではなく、硬性材料から成る錐部材を用いてもよい。この場合にも、上記の如くアクチュエータ10を支持することによって、共振の影響を小さくすることができ、被駆動部材16を正確に移動させることができる。
【0067】
なお、本発明に係るアクチュエータ10の用途としては、例えばデジタルカメラや携帯電話機等の小型精密機器に適用することができる。特に携帯電話機は、3V以下の低い電圧で駆動する必要があるが、本発明のアクチュエータ10を用いることによって、20kHz程度の高周波で駆動することができ、被駆動部材16を2mm/s以上の高速度で移動させることができる。よって、10mm程度の移動が必要となるズームレンズであっても、迅速に移動させることができる。また、本発明に係るアクチュエータ10の用途としてはフォーカスレンズやズームレンズ等の移動レンズを移動する用途に限定されず、CCDを移動する用途等に用いてもよい。
(第四実施形態)
【0068】
次に本発明の第四実施形態に係る駆動装置について説明する。
【0069】
図9は本発明の第四実施形態に係る駆動装置の断面図である。
【0070】
図9に示すように、本実施形態に係る駆動装置は、移動レンズ70を移動対象物とし移動レンズ70の駆動を行うものであり、圧電素子12、駆動軸14及び被駆動部材16を有するアクチュエータ10と、そのアクチュエータ10を支持する支持部材60とを備えて構成されている。圧電素子12は、電気信号の入力により伸縮可能な電気機械変換素子であり、所定の方向へ伸長及び収縮可能となっている。この圧電素子12は、制御部71に接続され、その制御部71により電気信号を入力されることにより伸縮する。例えば、圧電素子12には、二つの入力端子72A、72Bが設置される。この入力端子72A、72Bに印加される電圧を繰り返して増減させることにより、圧電素子12が伸長及び収縮を繰り返すこととなる。
【0071】
駆動軸14は、圧電素子12の伸縮方向に長手方向を向けて圧電素子12に取り付けられている。例えば、駆動軸14の一端が圧電素子12に当接され接着剤27を用いて接着されている。この駆動軸14は、長尺状の部材であり、例えば円柱状のものが用いられる。駆動軸14は、固定枠24から内側へ延びる仕切り部24B、仕切り部24Cにより長手方向に沿って移動可能に支持されている。仕切り部24B、仕切り部24Cは、被駆動部材16の移動領域を仕切るための部材であり、駆動軸14の支持部材としても機能している。固定枠24は、アクチュエータ10を収容するための筐体として機能する。
【0072】
仕切り部24B、仕切り部24Cには、駆動軸14を貫通させる貫通孔24Aがそれぞれ形成されている。仕切り部24Bは、駆動軸14の圧電素子12取付部分の近傍箇所、すなわち駆動軸14の基端箇所を支持している。仕切り部24Cは、駆動軸14の先端箇所を支持している。固定枠24は、アクチュエータ10を組み付けるための枠体若しくはフレーム部材として機能するものである。駆動軸14は、圧電素子12に取り付けられることにより、圧電素子12の伸長及び収縮の繰り返し動作に応じて、その長手方向に沿って往復移動する。
【0073】
なお、図9では、駆動軸14を仕切り部24B、24Cによりその先端側と基端側の二箇所で支持する場合を示しているが、駆動軸14をその先端側又は基端側の一方で支持する場合もある。例えば、仕切り部24Bの貫通孔24Aを駆動軸14の外径より大きく形成することにより、駆動軸14が仕切り部24Cにより先端箇所のみで支持されることとなる。また、仕切り部24Cの貫通孔24Aを駆動軸14の外径より大きく形成することにより、駆動軸14が仕切り部24Bにより基端箇所のみで支持されることとなる。
【0074】
また、図9では、駆動軸14を支持する仕切り部24B、24Cが固定枠24と一体になっている場合について示したが、これらの仕切り部24B、24cは固定枠24と別体のものを固定枠24に取り付けて設けてもよい。別体の場合であっても、一体となっている場合と同様な機能、効果が得られる。
【0075】
被駆動部材16は、駆動軸14に移動可能に取り付けられている。この被駆動部材16は、駆動軸14に対し摩擦係合されて取り付けられ、その長手方向に沿って移動可能となっている。例えば、被駆動部材16は、駆動軸14に対し所定の摩擦係数で係合しており、一定の押圧力で駆動軸14に押し付けられることによってその移動の際に一定の摩擦力が生ずるように取り付けられている。被駆動部材16にこの摩擦力を超える移動力が付与されることにより、摩擦力に抗して被駆動部材16が駆動軸14に沿って移動する。
【0076】
アクチュエータ10は、支持部材60により固定枠24に支持されている。支持部材60は、アクチュエータ10を圧電素子12の伸縮方向に対して側方から支持するものであり、アクチュエータ10を収容する固定枠24と圧電素子12と間に配設されている。この場合、アクチュエータ10を圧電素子12の伸縮方向と直交する方向から支持することが好ましい。この支持部材60は、アクチュエータ10を側方から支持して取り付ける取付部材として機能している。
【0077】
支持部材60は、所定以上の弾性特性を有する弾性体により形成され、例えばシリコーン樹脂により形成される。支持部材60は、圧電素子12を挿通させる挿通孔60Aを形成して構成され、その挿通孔60Aに圧電素子12を挿通させた状態で固定枠24に組み付けられている。支持部材60の固定枠24への固着は、接着剤61による接着により行われる。また、支持部材60と圧電素子12の間の固着も、接着剤による接着により行われる。この支持部材60を弾性体によって構成することにより、アクチュエータ10を圧電素子12の伸縮方向に移動可能に支持することができる。図9において、支持部材60が圧電素子12の両側に二つ図示されているが、この支持部材60、60は一つの連続する支持部材60の断面をとることによって二つに図示されたものである。
【0078】
なお、支持部材60の固定枠24への固着及び圧電素子12への固着は、固定枠24と圧電素子12の間に支持部材60を圧入し、支持部材60の押圧によって行ってもよい。例えば、支持部材60を弾性体により構成し、かつ、固定枠24と圧電素子12の間より大きく形成して、その間に圧入して設置する。これにより、支持部材60は、固定枠24及び圧電素子12に密着して配設される。この場合、圧電素子12は、支持部材60により伸縮方向に直交する方向の両側から押圧される。これによって、アクチュエータ10が支持される。
【0079】
また、ここでは支持部材60をシリコーン樹脂で形成する場合について説明したが、支持部材60をバネ部材により構成してもよい。例えば、固定枠24と圧電素子12の間にバネ部材を配置し、このバネ部材によってアクチュエータ10を固定枠24に対し支持してもよい。
【0080】
被駆動部材16には、レンズ枠68を介して移動レンズ70が取り付けられている。移動レンズ70は、カメラの撮影光学系を構成するものであり、駆動装置の移動対象物となるものである。この移動レンズ70は、被駆動部材16と一体的に結合され、被駆動部材16と共に移動するように設けられている。移動レンズ70の光軸O上には、図示しない固定レンズなどが配設され、カメラの撮影光学系を構成している。また、光軸O上には、撮像素子65が配設されている。撮像素子65は、撮影光学系により結像された画像を電気信号に変換する撮像手段であり、例えばCCDにより構成される。撮像素子65は、制御部71と接続されており、画像信号を制御部71に出力する。
【0081】
圧電素子12の端部には、錘部材18が取り付けられている。錘部材18は、圧電素子12の伸縮力を駆動軸14側へ伝達させるための部材であって、圧電素子12の駆動軸14が取り付けられる端部と反対側の端部に取り付けられている。錘部材18としては、駆動部材14より重いものが用いられる。また、錘部材18として、弾性変形可能な部材に金属粉を混入させたものを用いることが好ましい。金属粉を混入させることにより重量を大きくすることができ、弾性変形可能な部材を用いることにより圧電素子12の作動時における不要な共振を減衰させることができる。
【0082】
また、錘部材18を軟性部材により構成することにより、アクチュエータ10における共振周波数を圧電素子12の駆動周波数に対し十分に小さくすることができ、共振の影響を低減できる。
【0083】
また、錘部材18は、固定枠24に対し支持固定されない状態で設けられている。すなわち、錘部材18は、固定枠24に対し直接支持されたり固定されておらず、また接着剤や樹脂材を介して固定枠24に対し動きを拘束されるように支持されたり固定されていない状態で設けられている。
【0084】
駆動装置には、被駆動部材16の移動位置を検出する検出器75が設けられている。検出器75としては、例えば光学式の検出器が用いられ、フォトリフレクタ、フォトインタラプタなどが用いられる。具体的には、検出器75としてリフレクタ75A、検出部75Bを備えたものを用いる場合、被駆動部材16と一体に形成されるレンズ枠68にリフレクタ75Aを取り付け、検出部75Bからリフレクタ75A側へ検出光を出射し、リフレクタ75A側で反射してくる反射光を検出部75Bで検出することにより被駆動部材16及び移動レンズ70の移動位置を検出する。
【0085】
検出器75は、制御部71に接続されている。検出器75の出力信号は制御部71に入力される。制御部71は、駆動装置全体の制御を行うものであり、例えばCPU、ROM、RAM、入力信号回路、出力信号回路などにより構成される。また、制御部71は、圧電素子12を作動させるための駆動回路を備えており、圧電素子12に対し駆動のための電気信号を出力する。
【0086】
図10、11は、本実施形態に係る駆動装置における検出器の具体例を示した図である。
【0087】
図10に示すように、検出器75は、例えば、リフレクタ75A、検出部75B、インタラプタ75C、検出部75Dを備えて構成されている。リフレクタ75A及びインタラプタ75Cは、レンズ枠68に取り付けられており、レンズ枠68及び移動レンズ70と共に移動する。リフレクタ75Aに対向する位置には、検出部75Bが配置されている。検出部75Bは、移動レンズ70の移動に伴って変化するリフレクタ75Aからの光の反射量を検知し、移動レンズ70の移動量を検出する。インタラプタ75Cが通過する位置には、検出部Dが配置されている。検出部Dは、インタラプタ75Cの通過を検知し、移動レンズ70の所定位置の通過を検出する。
【0088】
また、図11に示すように、移動レンズ70の移動に応じてリフレクタ75Aが検出部75Bに対し接近又は離間するようにリフレクタ75A及び検出部75Bを配置し、検出部75Bに対するリフレクタ75Aの相対距離に応じて移動レンズ70の移動位置を検出するようにしてもよい。この場合、移動レンズ70の位置がリニアに検出することができる。
【0089】
また、移動レンズ70の移動制御する手法として、撮像素子65の出力信号に基づいて移動レンズ70を移動させてもよい。例えば、撮像素子65から出力される映像信号の高周波成分を検出し、そのレベルが最大となる位置に移動レンズ70を移動させる。このように移動レンズ70の移動制御を行うことにより、検出器75による位置検出が不要となる。
【0090】
図12は、図9のVIII−VIIIにおける被駆動部材16の断面図である。
【0091】
図12に示すように、被駆動部材16は、例えば、本体部16A、押圧部16B及び摺動部16Cを備えて構成される。本体部16Aは、押圧部16Bにより駆動軸14に一定の力で押圧されている。本体部16Aには、V字状の溝16Dが形成されている。この溝16Dの内には、二つの摺動部16C、16Cに挟持された状態で駆動軸14が収容されている。摺動部16C、16Cは、断面V字状の板体であり、互いに凹部側を向き合わせて配置され、駆動軸14を挟んで設けられている。このようにV字状の溝16D内に駆動軸14を収容することにより、被駆動部材16を安定して駆動軸14に取り付けることができる。
【0092】
押圧部16Bとしては、例えば、断面L字状の板バネ材が用いられる。押圧部16Bの一辺を本体部16Aに掛止させ、他の一辺を溝16Dの対向位置に配することにより、他の一辺により溝16Dに収容される駆動軸14を本体部16A及び摺動部16Cと共に挟み込むことができる。これにより、本体部16Aを駆動軸14側へ押圧することができる。
【0093】
このように、被駆動部材16は、押圧部16Bにより本体部16Aを駆動軸14側に一定の力で押圧して取り付けられることにより、駆動軸14に対し摩擦係合される。すなわち、被駆動部材16は、駆動軸14に対し本体部16A及び押圧部16Bが一定の押圧力で押し付けられ、その移動に際し一定の摩擦力が生ずるように取り付けられる。
【0094】
また、断面V字状の摺動部16C、16Cにより駆動軸14を挟み込むことにより、被駆動部材16が駆動軸14に複数箇所で線接触することになり、駆動軸14に対し安定して摩擦係合させることができる。また、複数箇所の線接触状態により被駆動部材16が駆動軸14に係合しているため、実質的に被駆動部材16が駆動軸14に面接触状態で係合していると同様な係合状態となり、安定した摩擦係合が実現できる。
【0095】
なお、図12においては摺動部16Cが断面V状の板体で構成されているが、摺動部16Cを断面円弧状の板体として構成して、駆動軸14に面接触させてもよい。この場合、被駆動部材16が駆動軸14に面接触状態で係合するため、被駆動部材16を駆動軸14に対しより安定して摩擦係合することができる。
【0096】
図13は、圧電素子12を作動させる駆動回路の回路図である。
【0097】
図13に示すように、駆動回路77は、制御部71内に配置されて設けられている。この駆動回路77は、圧電素子12のドライブ回路として機能するものであり、圧電素子12に対し駆動用の電気信号を出力する。駆動回路77は、制御部71の制御信号生成部(図示なし)から制御信号を入力し、その制御信号を電圧増幅又は電流増幅して圧電素子12の駆動用電気信号を出力する。駆動回路77は、例えば入力段を論理回路U1〜U3により構成し、出力段に電界効果型のトランジスタ(FET)Q1、Q2を備えたものが用いられる。トランジスタQ1、Q2は、出力信号として、H出力(高電位出力)、L出力(低電位出力)及びOFF出力(オープン出力)を出力可能に構成されている。
【0098】
図14に駆動回路77に入力される入力信号、図15に駆動回路77から出力される出力信号を示す。図14(A)は、被駆動部材16を圧電素子12に接近させる方向(図9において右方向)に移動させる際に入力される入力信号であり、図14(B)は、被駆動部材16を圧電素子12から離間させる方向(図9において左方向)に移動させる際に入力される入力信号である。また、図15(A)は、被駆動部材16を圧電素子12に接近させる方向(図9において右方向)に移動させる際に出力される出力信号であり、図15(B)は、被駆動部材16を圧電素子12から離間させる方向(図9において左方向)に移動させる際に出力される出力信号である。
【0099】
図15(A)、(B)の出力信号は、図14(A)、(B)の入力信号と同一タイミングでオンオフするパルス信号となっている。図15(A)、(B)における二つの信号は、圧電素子12の入力端子72A、72Bに入力される。この入力端子72A、72Bには、図2に示すような台形波形からなる信号を入力してもよいが、図15に示す矩形状のパルス信号を入力して圧電素子12を作動させることができる。この場合、圧電素子12の駆動信号が矩形状のパルス信号でよいため、信号生成が容易となる。
【0100】
図15(A)、(B)の出力信号は、同一周波数となる二つの矩形状のパルス信号により構成されている。この二つのパルス信号は、互いの位相を異ならせることにより、互いの信号の電位差が段階的に大きくなり急激に小さくなる信号又は電位差が急激に大きくなって段階的に小さくなる信号となっている。このような二つの信号を入力することにより、圧電素子12の伸長速度と収縮速度を異ならせることができ、被駆動部材16を移動させることができる。
【0101】
例えば、図15(A)、(B)において、一方の信号がH(ハイ)となりL(ロー)に低下した後に他方の信号がHとなるように設定されている。それらの信号において、一方の信号がLになった際に一定のタイムラグtOFFの経過後、他方の信号がHとなるように設定される。また、二つの信号が両方ともLの場合には、出力としてはオフ状態(オープン状態)とされる。
【0102】
この図15の(A)、(B)の出力信号、すなわち圧電素子12を作動させる電気信号は、可聴周波数を超える周波数の信号が用いられる。図15(A)、(B)において、二つの信号の周波数は、可聴周波数を超える周波数信号とされ、例えば、30〜80kHzの周波数信号とされ、より好ましくは40〜60kHzとされる。このようは周波数の信号を用いることにより、圧電素子12の可聴領域における作動音を低減することができる。
【0103】
次に、本実施形態に係る駆動装置の動作について説明する。
【0104】
図9において、圧電素子12に電気信号が入力され、その電気信号の入力により圧電素子12が伸長及び収縮を繰り返す。この伸長及び収縮に応じて駆動軸14が往復運動する。このとき、圧電素子12の伸長速度と収縮速度を異ならせることにより、駆動軸14が一定の方向へ移動する速度とその逆方向へ移動する速度が異なることとなる。これにより、被駆動部材16及び移動レンズ70を所望の方向へ移動させることができる。
【0105】
圧電素子12が伸縮する際に、その伸縮による振動が生ずるが、圧電素子12を含むアクチュエータ10が支持部材60によって伸縮方向に対し側方から支持されているため、圧電素子12の伸縮により生ずる振動がアクチュエータ10の外部へ伝達されにくい。このため、アクチュエータ10が固定枠24などの外部の部材と共振することが抑制され、その共振の影響を低減することができる。従って、被駆動部材16及び移動レンズ70を正確に移動させることができる。
【0106】
以上のように、本実施形態に係る駆動装置によれば、アクチュエータ10を圧電素子12の伸縮方向に対し側方から支持することにより、アクチュエータ10と外部の部材との間で振動が伝達しにくくなり、共振の影響を低減することができる。従って、被駆動部材16及び移動レンズ70を正確に移動させることができる。
(第五実施形態)
【0107】
次に本発明の第五実施形態に係る駆動装置について説明する。
【0108】
図16は、本発明の第五実施形態に係る駆動装置を示す縦断面図であり、この第五実施形態の駆動装置101は、デジタルカメラやカメラ付き携帯電話等のレンズを例えばフォーカス駆動するものである。
【0109】
駆動装置101は、電気機械変換素子である圧電素子102と、この圧電素子102の軸線方向に沿った一端側に設けられる駆動軸(駆動部材)103と、圧電素子102及び駆動軸103を支持する静止部材104と、圧電素子2の軸線方向に沿った他端側に設けられる錘部材(錘)105と、駆動軸103にその軸方向に移動可能で摩擦係合する摩擦部材106と、この摩擦部材106に固定された移動レンズ(被駆動部材)107とを備え、オートフォーカスの際に移動レンズ107の焦点を調整するため、圧電素子102によって例えば1mm程度まで移動レンズ107をその光軸方向に沿って駆動するものである。
【0110】
圧電素子102は例えばセラミック等を積層して成るもので、この圧電素子102にはリード線108が電気的に接続されている。そして、この圧電素子102は、制御部(不図示)からリード線108を介して後述の電気信号が印加されることで、軸線方向に伸縮する(以下、軸線方向を「伸縮方向A」という)。
【0111】
駆動軸103は、軽量で硬く且つ高強度である例えばカーボングラファイトやベリリウム合金等により形成され、円柱形状を呈している。この駆動軸103は、圧電素子102と同軸に配置されて、圧電素子102の伸縮方向Aの一方の端面102aに当接され、接着剤109によって固着されている。なお、駆動軸103の形状は円柱状に限定されるものではなく、角形状等でも良い。
【0112】
静止部材104は圧電素子102及び駆動軸103を組み付けるための筐体若しくは枠体(フレーム部材)として機能するものである。この静止部材104は枠体を構成する図示左側の前壁104a及び伸縮方向Aの中程の中間壁104bを有し、前壁104aには孔104cが設けられ、中間壁104bには孔104cと同軸位置に孔104dが設けられ、これらの孔104c及び孔104dに、駆動軸103が移動可能に挿入されている。ここで、孔104dは、圧電素子102と駆動軸103との接合部を形成する接着剤109との干渉を避けるため、圧電素子102側がテーパ面とされている。この静止部材104の図示右側の後端は開放され、この後端には薄板を屈曲させることにより形成された保護板110が取り付けられている。
【0113】
錘部材105は、静止部材104及び保護板110と非接触状態で圧電素子102の伸縮方向Aの他方の端面102bに当接され、接着剤112によって固着されている。この錘部材105は、圧電素子102の他方の端面102bに付加を与えることによって、駆動軸103が伸縮方向Aに移動せずに圧電素子102が移動することを防止すると共に、共振周波数を下げ且つ周波数特性に凹凸状の乱れを無くして圧電素子102から駆動軸103に対して良好な変位やインパクトを伝えるためのものである。従って、錘部材105は駆動軸103よりも質量が大きく且つ軟らかいものが用いられる。
【0114】
重い錘部材としては、具体的には、例えば、駆動軸103が8mg、圧電素子102が32mgの場合に、32mgの錘部材が用いられる。また、軟らかい錘部材としては、軟性材料によるものが採用され、圧電素子102及び駆動軸103よりもヤング率の小さいものが用いられている。ヤング率は、1GPa以下が好ましく、300MPa以下がより好ましい。このような軟性材料は、例えばゴムやエラストマー等の弾性体に比重の大きい金属粉を混ぜ合わせることによって製造され、例えばウレタンゴムやウレタン樹脂等にタングステン等の粉末を混合することによって製造される。錘部材105の比重は、装置の小型化のためにできるだけ高いことが好ましく、例えば8〜12程度とされる。
【0115】
摩擦部材106は、駆動軸103に所定の摩擦力で摺動自在に摩擦係合されている。具体的には、図17に示すように、摩擦部材本体113に設けられたV状の溝114に駆動軸103が進入し、この駆動軸103を摩擦部材本体113側に付勢するように板バネ115が取り付けられている。この摩擦部材106と駆動軸103との間の所定の摩擦力は、後述するように、圧電素子102が比較的緩やかに伸縮する際の駆動軸103の駆動力よりも大きく、且つ、圧電素子2が急激に伸縮する際の駆動軸103の駆動力よりも小さいように設定されている。
【0116】
移動レンズ107は駆動装置101の移動対象物となるものであり、図16に示すように、その光軸方向が駆動軸103の軸線方向と平行を成すように摩擦部材106の摩擦部材本体113に固定されている。これにより、摩擦部材106及び移動レンズ107が一体で駆動される。この移動レンズ107の光軸方向に沿った前側と後側には、図示を省略した固定レンズがそれぞれ静止部材104に固定されて配置され、これらの移動レンズ107及び固定レンズによりカメラの撮影光学系が構成される。
【0117】
特に本実施形態では、圧電素子102の伸縮方向Aの中程から駆動軸3側の端面までの範囲とこれより外方の静止部材104の内面との間に弾性接着剤111が充填され、圧電素子102がその駆動軸103側で弾性接着剤111を介して静止部材104に弾性支持されている。この弾性接着剤111としては、例えば軟らかくて比重が軽く且つ比較的粘性の高いシリコン系の接着剤が用いられている。具体的には、ショア硬度が50以下のものが好ましく、30〜40のものがより好ましい。これにより、弾性接着剤111は圧電素子102の伸縮に追従しながら圧電素子102を支持することになる。なお、弾性接着剤111は弾性を有していれば良く、例えば弾性を有する瞬間接着剤や、UV接着剤を用いても良い。
【0118】
圧電素子102、駆動軸103及び被駆動部材106を備えて構成されるアクチュエータは、弾性接着剤111により圧電素子102の伸縮方向に対し側方から支持されている。この場合、アクチュエータを圧電素子102の伸縮方向と直交する方向から支持することが好ましい。この弾性接着剤111は、アクチュエータを側方から支持して取り付ける取付部材として機能している。
【0119】
そして、このような駆動装置101は、駆動軸103を圧電素子102の一方の端面102aに接着剤109によって固着すると共に錘部材105を圧電素子102の他方の端面102bに接着剤112によって固着し、圧電素子102及び錘部材105を静止部材104内に進入させながら駆動軸3を静止部材104の孔104c及び孔104dに挿入し、移動レンズ107を装着した摩擦部材106を駆動軸103に取り付け、前述した静止部材104内の圧電素子102の駆動軸103側に弾性接着剤111を上方から注入して充填し、最後に、静止部材104に保護板110を取り付けることで得られる。
【0120】
このような駆動装置101において、移動レンズ107を移動する場合には、例えば、上述した図2(A)、図2(B)に示すような略鋸歯状のパルス電圧を連続して圧電素子102に印加する。
【0121】
具体的には、図2(A)に示すパルス電圧を印加すると、時刻α1から時刻α2では、圧電素子102が比較的緩やかに伸長し、駆動軸103が比較的緩やかな速度で図示左側に移動(以下「前進」という)する。このとき、摩擦部材106と駆動軸103との間の摩擦力よりも摩擦部材106及び移動レンズ107に働く慣性力が小さいので、この摩擦力によって摩擦部材106及び移動レンズ107は駆動軸103と共に一体に前進する。時刻α3では、圧電素子102が急激に縮まり、駆動軸103は速い速度で図示右側に移動(以下「後退」という)する。このとき、摩擦部材106及び移動レンズ107に働く慣性力が摩擦部材106と駆動軸103との間の摩擦力よりも大きいので、駆動軸103のみが後退して摩擦部材106及び移動レンズ107は実質的にほとんど動かない。従って、図2(A)に示すパルス電圧を連続して印加することによって、これらの運動が繰り返されて移動レンズ107が前進する。
【0122】
一方、図2(B)に示すパルス電圧を印加すると、このパルス電圧の波形は図2(A)に示すパルス電圧の波形と緩急が逆にされていることより、時刻β1では駆動軸103のみが後退して摩擦部材106及び移動レンズ107が実質的にほとんど動かなく、時刻β2から時刻β3では摩擦部材106及び移動レンズ107が駆動軸103と共に一体に後退する。従って、図2(B)に示すパルス電圧を連続して印加することによって、これらの運動が繰り返されて移動レンズ107が後退する。
【0123】
このような駆動を行う第五実施形態における駆動装置101にあっては、圧電素子102は弾性接着剤111によって静止部材104に弾性支持される。従って、例えば駆動装置101を落下してしまい駆動装置101に衝撃力が負荷された場合でも、弾性接着剤111が有する弾性力によってこの衝撃力を緩衝して駆動装置101における各部位及びこれらの接合部の破損を防止することが可能である。また、このような弾性接着剤111が有する弾性力によって静止部材104と圧電素子102との間で振動が伝播することを抑制することができ、共振の影響を抑制できるため、駆動軸103を伸縮方向Aに確実且つ正確に移動することが可能である。
【0124】
また、圧電素子102がその駆動軸103側で弾性支持されているため、圧電素子102の駆動軸103側の反りや撓みをより効果的に抑制でき、駆動軸103が確実且つ正確に移動することが可能である。さらに、この場合、圧電素子102の全体を弾性接着剤によって静止部材104に弾性支持するのに比べ、圧電素子102の伸縮が弾性接着剤11によって阻害されることが無いため、駆動軸103をより確実且つ正確に移動することが可能である。
【0125】
また、駆動装置101では、圧電素子102がその駆動軸103側で弾性支持されていることに加え、錘部材105が静止部材104及び保護板110と非接触状態とされている。すなわち、圧電素子102の伸縮方向Aにおける他端側は自由端とされている。従って、圧電素子102が支持されていないと駆動軸103が移動せずに圧電素子102が移動してしまうという虞が圧電素子102の駆動軸103側を弾性支持することで解消され、駆動軸103が確実且つ正確に移動することが可能である。
【0126】
また、このように圧電素子102がその駆動軸103側で弾性支持されると共に圧電素子102の他方側が自由端とされているため、静止部材104の駆動軸103及び圧電素子102に対する過拘束も防止することができる。その結果、静止部材104と駆動軸103との接合部に生じる不要な応力の作用を防止することができ、この接合部の破損を防止することが可能である。
【0127】
また、駆動装置101では、錘部材105が圧電素子102の他端側に設けられているため、駆動軸103が移動せずに圧電素子102が移動してしまうことが一層無く、駆動軸103が一層確実且つ正確に移動することが可能である。さらに、この錘部材105が軟らかく且つ重いため、駆動装置101の共振周波数を低下させて共振による悪影響が無い範囲で圧電素子102を駆動することができると共に、周波数特性に凹凸状の乱れが無くされ圧電素子102が伸縮方向A以外の方向に変位する反りや撓みを一層抑制でき、駆動軸103が一層確実且つ正確に移動することが可能である。また、弾性接着剤111が錘部材105を支持していないため、上述の錘部材105による作用及び効果を効果的に発揮することが可能である。
【0128】
なお、弾性接着剤111に代えて例えばゴム等の弾性環状体を圧電素子102に嵌合して静止部材104に弾性支持することも考えられるが、この場合には、駆動装置101の部品点数が増えてしまうことや、圧電素子102と弾性環状体との間及び弾性環状体と静止部材104との間における接着がさらに必要になるため、好ましくない。
【0129】
図18は、本実施形態に係る駆動装置の変形例を示す概略断面図である。この変形例の駆動装置101aが第五実施形態の駆動装置101と違う点は、弾性接着剤111を静止部材104の中間壁104bに至るまで充填した点である。
【0130】
このように構成された駆動装置101aにあっても、第五実施形態と同様な効果を得ることができるというのはいうまでも無く、加えて、弾性接着剤111が中間壁104bに至るまで充填されているため、圧電素子102と駆動軸103との接合部をも弾性支持でき、この接合部の強度を増大することが可能である。その結果、当該部位の破損をより一層防止することが可能である。
【0131】
また、圧電素子102の一方の端面102aと静止部材104の中間壁104bとの間に隙間を設ける必要が無いため、製造が容易になり、製造性を高めることが可能である。
【0132】
図19は、本発明の第五実施形態に係る駆動装置の他の変形例を示す概略断面図である。この変形例の駆動装置101bが第五実施形態の駆動装置101と違う点は、静止部材104に代えて、圧電素子102を取り囲む外壁から圧電素子102へ向かって突出すると共に伸縮方向Aに沿って並設される仕切壁116a及び仕切壁116bを備えた静止部材124を用い、弾性接着剤111をこれらの仕切壁116aと仕切壁116bとの間に充填するように設けて、圧電素子102の駆動軸103側を弾性支持するようにした点である。
【0133】
このような駆動装置101bであっても、第五実施形態と同様な効果を得ることができるのに加えて、仕切壁116a及び仕切壁116bが設けられているため、圧電素子102の伸縮方向Aに弾性接着剤111が流出するのが防止され、例えば駆動軸103が、硬化前に流出する弾性接着剤によって汚れて駆動不良になるのを防止することが可能であると共に、弾性接着剤111の充填が簡易になり且つその充填位置が一定し、製造性の向上及び品質の安定化を図ることが可能である。
【0134】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態では、特に好ましいとして、圧電素子2の伸縮方向Aにおける他端側を自由端としているが、この他端側の端部を静止部材104や保護板110に固定して固定端としても良い。
【0135】
また、上記実施形態では、圧電素子102の伸縮方向Aにおける他端側に錘部材105を設け、この錘部材105を特に好ましいとして軟らかく且つ重いものとしているが、これに限定されない。また、この錘部材105により、駆動軸103の伸縮方向Aに対する移動性を一層高めるようにしているが、錘部材105は無くても良い。
【0136】
また、上記実施形態では、圧電素子102に印加するパルス電圧の周波数を移動レンズ107が前進する場合と後退する場合とで等しくしているが、異なっていても良い。
【0137】
また、電気機械変換素子として圧電素子102を用いているが、電気信号の入力により伸縮可能なものであれば、例えば人工筋肉ポリマー等でも良い。
【0138】
また、上記実施形態では、被駆動部材を移動レンズ107としているが、移動レンズ107を保持するレンズ枠でも良く、さらに別のものであっても良い。
【0139】
さらにまた、上記実施形態においては、電気機械変換素子102の駆動軸103側を、特に好ましいとして、弾性接着剤111を介して静止部材104,124に弾性支持するようにしているが、多少効果は低減するが、電気機械変換素子102の駆動軸103側を硬い接着剤を介して静止部材104,124に支持するようにしても良い。
(第六実施形態)
【0140】
次に本発明の第六実施形態に係る駆動装置について説明する。
【0141】
図20は本発明の第六実施形態に係る駆動装置を示す縦断面図であり、この第六実施形態の駆動装置101cは、デジタルカメラやカメラ付き携帯電話等のレンズを例えばフォーカス駆動するものである。なお、図20においては、紙面手前が上方とされている。
【0142】
駆動装置101cは、電気機械変換素子である圧電素子102と、この圧電素子102の軸線方向に沿った一端側に設けられる駆動軸(駆動部材)103と、圧電素子102及び駆動軸103を支持する静止部材104と、圧電素子102の軸線方向に沿った他端側に設けられる錘部材(錘)105と、駆動軸103にその軸方向に移動可能で摩擦係合する摩擦部材106と、この摩擦部材106に固定された移動レンズ(被駆動部材)107とを備え、オートフォーカスの際に移動レンズ107の焦点を調整するため、圧電素子102によって例えば1mm程度まで移動レンズ107をその光軸方向に沿って駆動するものである。
【0143】
圧電素子102は例えばセラミック等を積層して成るもので、この圧電素子102にはリード線108が電気的に接続されている。そして、この圧電素子102は、制御部(不図示)からリード線108を介して後述の電気信号が印加されることで、軸線方向に伸縮する(以下、軸線方向を「伸縮方向A」という)。なお、本実施形態では電気機械変換素子として圧電素子102を用いているが、電気信号の入力により伸縮可能なものであれば、例えば人工筋肉ポリマー等でも良い。
【0144】
駆動軸103は、軽量で硬く且つ高強度である例えばカーボングラファイトやベリリウム合金等により形成され、円柱形状を呈している。この駆動軸103は、圧電素子102と同軸に配置されて、圧電素子102の伸縮方向Aの一方の端面102aに当接され、接着剤109によって固着されている。なお、駆動軸103の形状は円柱状に限定されるものではなく、角形状等でも良い。
【0145】
静止部材104は圧電素子102及び駆動軸103を組み付けるための枠体(フレーム部材)として機能するものである。この静止部材104は枠体を構成する図示左側の前壁104a及び伸縮方向Aの中程の中間壁104bを有し、前壁104aには孔104cが設けられ、中間壁104bには孔104cと同軸位置に孔104dが設けられ、これらの孔104c及び孔104dに、駆動軸103が移動可能に挿入されている。ここで、孔104dは、圧電素子102と駆動軸103との接合部を形成する接着剤109との干渉を避けるため、圧電素子102側がテーパ面とされている。この静止部材104の図示右側の後端は開放され、この後端には薄板を屈曲させることにより形成された保護板110が取り付けられている。
【0146】
錘部材105は、静止部材104及び保護板110と非接触状態で圧電素子102の伸縮方向Aの他方の端面102bに当接され、接着剤112によって固着されている。この錘部材105は、圧電素子102の他方の端面102bに付加を与えることによって、駆動軸103が伸縮方向Aに移動せずに圧電素子102が移動することを防止すると共に、共振周波数を下げ且つ周波数特性に凹凸状の乱れを無くして圧電素子102から駆動軸103に対して良好な変位やインパクトを伝えるためのものである。従って、錘部材105は駆動軸103よりも質量が大きく且つ軟らかいものが用いられる。
【0147】
重い錘部材としては、具体的には、例えば、駆動軸103が8mg、圧電素子102が32mgの場合に、32mgの錘部材が用いられる。また、軟らかい錘部材としては、軟性材料によるものが採用され、圧電素子102及び駆動軸103よりもヤング率の小さいものが用いられている。ヤング率は、1GPa以下が好ましく、300MPa以下がより好ましい。このような軟性材料は、例えばゴムやエラストマー等の弾性体に比重の大きい金属粉を混ぜ合わせることによって製造され、例えばウレタンゴムやウレタン樹脂等にタングステン等の粉末を混合することによって製造される。錘部材105の比重は、装置の小型化のためにできるだけ高いことが好ましく、例えば8〜12程度とされる。
【0148】
摩擦部材106は、駆動軸103に所定の摩擦力で摺動自在に摩擦係合されている。具体的には、図17に示すように、摩擦部材本体113に設けられたV状の溝114に駆動軸103が進入し、この駆動軸103を摩擦部材本体113側に付勢するように板バネ115が取り付けられている。この摩擦部材106と駆動軸103との間の所定の摩擦力は、後述するように、圧電素子102が比較的緩やかに伸縮する際の駆動軸103の駆動力よりも大きく、且つ、圧電素子2が急激に伸縮する際の駆動軸103の駆動力よりも小さいように設定されている。
【0149】
移動レンズ107は駆動装置101cの移動対象物となるものであり、図20に示すように、その光軸方向が駆動軸103の軸線方向と平行を成すように摩擦部材106の摩擦部材本体113に固定されている。これにより、摩擦部材106及び移動レンズ107が一体で駆動される。この移動レンズ107の光軸方向に沿った前側と後側には、図示を省略した固定レンズがそれぞれ静止部材104に固定されて配置され、これらの移動レンズ107及び固定レンズによりカメラの撮影光学系が構成される。
【0150】
特に本実施形態では、静止部材104内であって圧電素子102の伸縮方向Aの中程から静止部材104の中間壁104bに至るまでの範囲に、自然硬化接着剤111a及びUV接着剤111bが充填され、これらにより圧電素子102が静止部材104に弾性支持されている。具体的には、図21に示すように、自然硬化接着剤111aは静止部材104内の下側で圧電素子102の略半分より下側が浸るようにして充填され、UV接着剤111bは静止部材104内の上側で圧電素子102の略半分より上側を覆うように自然硬化接着剤111aに積層して充填されている。
【0151】
自然硬化接着剤111aとしては、例えば時間の経過により自然に硬化する特性を有すると共に軟らかくて比重が軽く且つ比較的粘性の高いシリコン系の接着剤が用いられている。具体的には、ショア硬度が50以下のものが好ましく、30〜40のものがより好ましい。また、UV接着剤111bとしては、紫外線が照射されることで速硬化する特性を有し比較的軟らかい弾性を有するものが用いられている。従って、自然硬化接着剤111a及びUV接着剤111bは圧電素子102の伸縮に追従しながら圧電素子102を支持することになる。
【0152】
圧電素子102、駆動軸103及び被駆動部材106を備えて構成されるアクチュエータは、接着剤111により圧電素子102の伸縮方向に対し側方から支持されている。この場合、アクチュエータを圧電素子102の伸縮方向と直交する方向から支持することが好ましい。この接着剤111は、アクチュエータを側方から支持して取り付ける取付部材として機能している。
【0153】
そして、このような駆動装置101cを得るには、まず、駆動軸103を圧電素子102の一方の端面102aに接着剤109によって固着すると共に錘部材105を圧電素子102の他方の端面102bに接着剤112によって固着し、圧電素子102及び錘部材105を静止部材104内に進入させながら駆動軸103を静止部材104の孔104c及び孔104dに挿入し、移動レンズ107を装着した摩擦部材106を駆動軸103に取り付ける。
【0154】
次に、自然硬化接着剤111aの充填領域を位置決めして画成するように治具(不図示)を配置し、前述した静止部材104内の下側に所定量の自然硬化接着剤111aを上方から注入して充填し、この自然硬化接着剤111aに積層するように、静止部材104内に所定量のUV接着剤111bを注入して充填し、この充填したUV接着剤111bに紫外線を上方から照射して速硬化させる。ここで、未だ硬化せず硬化に長時間を要する自然硬化接着剤111aは、UV接着剤111bが速硬化することで仮止めされ、その充填領域に充填が保たれることになる。そして、このようにUV接着剤111bが速硬化したら前述した冶具を取り外して次の駆動装置に供し、冶具を取り外した装置に対しては保護板110を静止部材104に取り付けて駆動装置101cを得る。
【0155】
このような駆動装置101cにおいて、移動レンズ107を移動する場合には、例えば図2(A)、図2(B)に示すような略鋸歯状のパルス電圧を連続して圧電素子102に印加する。
【0156】
具体的には、図2(A)に示すパルス電圧を印加すると、時刻α1から時刻α2では、圧電素子102が比較的緩やかに伸長し、駆動軸103が比較的緩やかな速度で図示左側に移動(以下「前進」という)する。このとき、摩擦部材106と駆動軸103との間の摩擦力よりも摩擦部材106及び移動レンズ107に働く慣性力が小さいので、この摩擦力によって摩擦部材106及び移動レンズ107は駆動軸103と共に一体に前進する。時刻α3では、圧電素子102が急激に縮まり、駆動軸103は速い速度で図示右側に移動(以下「後退」という)する。このとき、摩擦部材106及び移動レンズ107に働く慣性力が摩擦部材106と駆動軸103との間の摩擦力よりも大きいので、駆動軸103のみが後退して摩擦部材106及び移動レンズ107は実質的にほとんど動かない。従って、図2(A)に示すパルス電圧を連続して印加することによって、これらの運動が繰り返されて移動レンズ107が前進する。
【0157】
一方、図2(B)に示すパルス電圧を印加すると、このパルス電圧の波形は図2(A)に示すパルス電圧の波形と緩急が逆にされていることより、時刻β1では駆動軸3のみが後退して摩擦部材106及び移動レンズ7が実質的にほとんど動かなく、時刻β2から時刻β3では摩擦部材106及び移動レンズ107が駆動軸103と共に一体に後退する。従って、図2(B)に示すパルス電圧を連続して印加することによって、これらの運動が繰り返されて移動レンズ107が後退する。
【0158】
このような駆動を行う第六実施形態における駆動装置101cにあっては、圧電素子102は自然硬化接着剤111a及びUV接着剤111bによって静止部材104に弾性支持される。従って、例えば駆動装置101cを落下してしまい駆動装置101cに衝撃力が負荷された場合でも、自然硬化接着剤111a及びUV接着剤111bが有する弾性力によってこの衝撃力を緩衝して駆動装置101cにおける各部位及びこれらの接合部の破損を防止することが可能である。また、この弾性力によって静止部材104と圧電素子102との間で振動が伝播することを抑制することができ、共振の影響を抑制できるため、駆動軸103を伸縮方向Aに確実且つ正確に移動することが可能である。また、このように圧電素子102が弾性支持されているため、圧電素子102の駆動軸103側の反りや撓みを効果的に抑制でき、駆動軸103が一層確実且つ正確に移動することが可能であると共に、圧電素子102が支持されていないと駆動軸103が移動せずに圧電素子102が移動してしまうという虞が解消され、駆動軸103が一層確実且つ正確に移動することが可能である。
【0159】
また、このように圧電素子102が静止部材104に固定されずに自然硬化接着剤111a及びUV接着剤111bにより弾性支持されているため、静止部材104の駆動軸103及び圧電素子102に対する過拘束を防止することができる。その結果、静止部材104と駆動軸103との接合部に生じる不要な応力の作用を防止することができ、この接合部の破損を防止することが可能である。
【0160】
また、圧電素子102を弾性支持する接着剤として自然硬化接着剤111a及びUV接着剤111bが用いられるため、UV接着剤111bにより自然硬化接着剤111aを仮止めすることができ、この仮止めにより、自然硬化接着剤111aの充填領域を位置決めする治具を取り外して次の装置に対して使用することができ、製造性を高めることが可能であると共に、例えば全体をUV接着剤とした場合に圧電素子102より下側の接着剤に紫外線が届かずに硬化せず、この硬化しないUV接着剤が流出してしまうという虞が紫外線の届かない領域に自然硬化接着剤111aを充填していることで解消可能であり、流出する接着剤により例えば駆動軸103が汚れて駆動不良になるということが無く所望の駆動特性を得ることが可能である。
【0161】
さらに、本実施形態によれば、以下の作用・効果も奏する。すなわち、圧電素子102がその駆動軸103側で弾性支持されているため、圧電素子102の駆動軸103側の反りや撓みを一層効果的に抑制でき、駆動軸103が一層確実且つ正確に移動することができる。さらに、この場合、圧電素子102の全体を静止部材104に弾性支持するのに比べ、圧電素子102の伸縮が阻害されることが無いため、駆動軸103を一層確実且つ正確に移動することができる。
【0162】
また、自然硬化接着剤111a及びUV接着剤111bが中間壁104bに至るまで充填されているため、圧電素子102と駆動軸103との接合部をも弾性支持でき、この接合部の強度を増大することが可能である。その結果、当該部位の破損を防止することができる。
【0163】
また、圧電素子102の伸縮方向Aの他端側に錘部材105が設けられているため、駆動軸103が圧電素子102の伸縮方向Aに移動せずに圧電素子102が移動してしまうことが一層無く、駆動軸103が一層確実且つ正確に移動することができる。また、この錘部材105が軟らかく且つ重いため、駆動装置101cの共振周波数を低下させて共振による悪影響が無い範囲で圧電素子102を駆動することが可能であると共に、周波数特性に凹凸状の乱れが無くされ圧電素子102が伸縮方向A以外の方向に変位する反り・撓みが一層抑制され、駆動軸3が一層確実且つ正確に移動することができる。また、自然硬化接着剤111a及びUV接着剤111bが錘部材105を支持していないため、上述の錘部材105による作用及び効果を効果的に発揮することができる。
【0164】
なお、本実施形態では、自然硬化接着剤111a及びUV接着剤111bを静止部材104の中間壁104bに至るまで充填しているが、圧電素子102と静止部材104の中間壁104bとの間に隙間があっても良い。
【0165】
因みに、自然硬化接着剤111a及びUV接着剤111bに代えて例えばゴム等の弾性環状体を圧電素子102に嵌合して静止部材104に弾性支持することも考えられるが、この場合には、駆動装置101cの部品点数が増えてしまうことや、圧電素子102と弾性環状体との間及び弾性環状体と静止部材104との間における接着がさらに必要になるため、好ましくない。
【0166】
図22は、第六実施形態に係る駆動装置の変形例を示す横断面図である。この変形例の駆動装置101dが第六実施形態の駆動装置101cと違う点は、自然硬化接着剤111aを圧電素子102の外形に沿って覆うように充填し、UV接着剤111bを自然硬化接着剤111aに積層して充填した点である。
【0167】
このように構成された駆動装置101dにあっても、第六実施形態と同様な効果を得ることができるというのはいうまでも無く、加えて、弾性力が大きい自然硬化接着剤111aが圧電素子102の外形に沿って覆うように充填されているため、より確実に圧電素子102を弾性支持することが可能であると共に、UV接着剤111bが薄くて済み、UV接着剤111bの硬化時間の短縮を図ることが可能である。
【0168】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態では、特に効果的であるとして先に充填する接着剤をシリコン系の自然硬化接着剤とし、後に充填する接着剤をUV接着剤としているが、例えば先に充填する接着剤をシリコン系の自然硬化接着剤、後に充填する接着剤を弾性を有する瞬間接着剤としても良く、用いる接着剤としては、硬化時間が異なるものの組み合わせや、硬化方法が異なるものの組み合わせが挙げられる。具体的には、硬化時間が異なる接着剤としては、例えば、自然硬化接着剤、瞬間接着剤、UV接着剤等が挙げられ、硬化方法が異なる接着剤としては、例えば、紫外線が与えられるUV接着剤、熱が与えられる熱硬化接着剤、放置される自然硬化接着剤等が挙げられる。
【0169】
また、上記実施形態では、複数の接着剤として2種類の接着剤を用いているが、3種類以上でも良い。
【0170】
また、上記実施形態では、特に好ましいとして、複数の接着剤により圧電素子102の駆動軸103側を支持しているが、複数の接着剤により錘部材105を支持するようにしても良く、複数の接着剤により圧電素子102の全体を支持するようにしても良い。
【0171】
また、上記実施形態では、圧電素子102の伸縮方向Aにおける他端側を自由端としているが、この他端側の端部を静止部材4や保護板110に固定して固定端としても良い。
【0172】
また、上記実施形態では、圧電素子102の伸縮方向Aにおける他端側に錘部材105を設け、この錘部材105を特に好ましいとして軟らかく且つ重いものとしているが、これに限定されない。また、この錘部材105により、駆動軸103の伸縮方向Aに対する移動性を一層高めるようにしているが、錘部材105は無くても良い。
【0173】
また、上記実施形態では、圧電素子102に印加するパルス電圧の周波数を移動レンズ107が前進する場合と後退する場合とで等しくしているが、異なっていても良い。
【0174】
また、上記実施形態では、被駆動部材を移動レンズ107としているが、移動レンズ107を保持するレンズ枠でも良く、さらに別のものであっても良い。
【0175】
さらにまた、上記実施形態においては、電気機械変換素子102を、特に好ましいとして、弾性を有する接着剤を介して静止部材104に弾性支持するようにしているが、多少効果は低減するが、硬い接着剤を介して静止部材104に支持するようにしても良い。
(第七実施形態)
【0176】
次に本発明の第七実施形態に係る駆動装置について説明する。
【0177】
図23は本発明の第七実施形態に係る駆動装置を示す縦断面図であり、この第七実施形態の駆動装置101eは、デジタルカメラやカメラ付き携帯電話等のレンズを例えばフォーカス駆動するものである。
【0178】
駆動装置101eは、電気機械変換素子である圧電素子102と、この圧電素子102の軸線方向に沿った一端側に設けられる駆動軸(駆動部材)103と、圧電素子102及び駆動軸103を支持する静止部材104と、圧電素子102の軸線方向に沿った他端側に設けられる錘部材(錘)105と、駆動軸103にその軸方向に移動可能で摩擦係合する摩擦部材106と、この摩擦部材106に固定された移動レンズ(被駆動部材)107とを備え、オートフォーカスの際に移動レンズ107の焦点を調整するため、圧電素子102によって例えば1mm程度まで移動レンズ107をその光軸方向に沿って駆動するものである。
【0179】
圧電素子102は例えばセラミック等を積層して成るもので、この圧電素子102にはリード線108が電気的に接続されている。そして、この圧電素子102は、制御部(不図示)からリード線108を介して後述の電気信号が印加されることで、軸線方向に伸縮する(以下、軸線方向を「伸縮方向A」という)。なお、本実施形態では電気機械変換素子として圧電素子102を用いているが、電気信号の入力により伸縮可能なものであれば、例えば人工筋肉ポリマー等でも良い。
【0180】
駆動軸103は、軽量で硬く且つ高強度である例えばカーボングラファイトやベリリウム合金等により形成され、円柱形状を呈している。この駆動軸103は、圧電素子102と同軸に配置されて、圧電素子102の伸縮方向Aの一方の端面102aに当接され、接着剤109によって固着されている。なお、駆動軸103の形状は円柱状に限定されるものではなく、角形状等でも良い。
【0181】
静止部材104は圧電素子102及び駆動軸103を組み付けるための枠体(フレーム部材)として機能するものである。この静止部材104は枠体を構成する図示左側の前壁である前側軸受部104a及び伸縮方向Aの中程の中間壁である中間軸受部104bを有し、前側軸受部104aには孔104cが設けられ、中間軸受部104bには孔104cと同軸位置に孔104dが設けられ、これらの孔104c及び孔104dに、駆動軸103が移動可能に挿入され支持されている。ここで、孔104dは、圧電素子102と駆動軸103との接合部を形成する接着剤109との干渉を避けるため、圧電素子102側がテーパ面116とされている。この静止部材104の図示右側の後端は開放され、この後端には薄板を屈曲させることにより形成された保護板110が取り付けられている。
【0182】
錘部材105は、静止部材104及び保護板110と非接触状態で圧電素子2の伸縮方向Aの他方の端面102bに当接され、接着剤112によって固着されている。この錘部材105は、圧電素子102の他方の端面102bに付加を与えることによって、駆動軸103が伸縮方向Aに移動せずに圧電素子102が移動することを防止すると共に、共振周波数を下げ且つ周波数特性に凹凸状の乱れを無くして圧電素子102から駆動軸103に対して良好な変位やインパクトを伝えるためのものである。従って、錘部材105は駆動軸103よりも質量が大きく且つ軟らかいものが用いられる。
【0183】
重い錘部材としては、具体的には、例えば、駆動軸103が8mg、圧電素子102が32mgの場合に、32mgの錘部材が用いられる。また、軟らかい錘部材としては、軟性材料によるものが採用され、圧電素子102及び駆動軸103よりもヤング率の小さいものが用いられている。ヤング率は、1GPa以下が好ましく、300MPa以下がより好ましい。このような軟性材料は、例えばゴムやエラストマー等の弾性体に比重の大きい金属粉を混ぜ合わせることによって製造され、例えばウレタンゴムやウレタン樹脂等にタングステン等の粉末を混合することによって製造される。錘部材105の比重は、装置の小型化のためにできるだけ高いことが好ましく、例えば8〜12程度とされる。
【0184】
摩擦部材106は、駆動軸103に所定の摩擦力で摺動自在に摩擦係合されている。具体的には、図17に示すように、摩擦部材本体113に設けられたV状の溝114に駆動軸3が進入し、この駆動軸103を摩擦部材本体113側に付勢するように板バネ115が取り付けられている。この摩擦部材106と駆動軸103との間の所定の摩擦力は、後述するように、圧電素子102が比較的緩やかに伸縮する際の駆動軸103の駆動力よりも大きく、且つ、圧電素子102が急激に伸縮する際の駆動軸103の駆動力よりも小さいように設定されている。
【0185】
移動レンズ107は駆動装置101eの移動対象物となるものであり、図23に示すように、その光軸方向が駆動軸103の軸線方向と平行を成すように摩擦部材106の摩擦部材本体113に固定されている。これにより、摩擦部材106及び移動レンズ107が一体で駆動される。この移動レンズ107の光軸方向に沿った前側と後側には、図示を省略した固定レンズがそれぞれ静止部材104に固定されて配置され、これらの移動レンズ107及び固定レンズによりカメラの撮影光学系が構成される。
【0186】
特に本実施形態では、静止部材104の中間軸受部104bにおけるテーパ面と駆動軸103との間に第一の接着部117が設けられ、この第一の接着部117により駆動軸103が静止部材104に弾性支持され、静止部材104内であって圧電素子102の伸縮方向Aの中程から静止部材104の中間軸受部104bに至るまでの範囲に第二の接着部118が設けられ、この第二の接着部118により圧電素子102が静止部材104に弾性支持されている。
【0187】
第一の接着部117は駆動軸103を支持する第一の充填材として機能し、第二の接着部118は圧電素子102を支持する第一の充填材として機能する。
【0188】
圧電素子102、駆動軸103及び被駆動部材106を備えて構成されるアクチュエータは、第二の接着剤118により圧電素子102の伸縮方向に対し側方から支持されている。この場合、アクチュエータを圧電素子102の伸縮方向と直交する方向から支持することが好ましい。この第二の接着剤118は、アクチュエータを側方から支持して取り付ける取付部材として機能している。
【0189】
第一の接着部117は、例えば速硬化性を有し且つ弾性を有する瞬間接着剤を充填することで形成され、第二の接着部118は、例えば軟らかくて比重が軽く且つ比較的粘性の高いシリコン系の接着剤を充填することで形成される。このシリコン系の接着剤としては、ショア硬度が50以下のものが好ましく、30〜40のものがより好ましい。
【0190】
このような駆動装置101eは、駆動軸103を圧電素子102の一方の端面102aに接着剤109によって固着すると共に錘部材105を圧電素子102の他方の端面102bに接着剤112によって固着し、圧電素子102及び錘部材105を静止部材104内に進入させながら駆動軸103を前側軸受部104aの孔104c及び中間軸受部104bの孔104dに挿入し、移動レンズ107を装着した摩擦部材106を駆動軸103に取り付け、第一の接着部117を設けた後、第二の接着部118を設けて圧電素子102を弾性支持し、最後に、静止部材104に保護板110を取り付けることで得られる。
【0191】
ここで、第一の接着部117及び第二の接着部118の形成方法についてより詳細に説明すると、まず、前述した静止部材104の中間軸受部104bにおけるテーパ面と駆動軸103との間に所定量の接着剤を上方から充填する。この接着剤はその速硬化性によりすぐに硬化し、第一の接着部117を形成する。これにより、駆動軸103が静止部材104に仮止めされ且つ弾性支持される。
【0192】
そして、第一の接着部117を形成した後、前述した静止部材104内であって圧電素子102の駆動軸103側に所定量の接着剤を上方から注入して充填し第二の接着部118を形成する。従って、第一の接着部117及び第二の接着部118は、圧電素子102の伸縮に追従しながら圧電素子102を支持することになる。
【0193】
このような駆動装置101eにおいて、移動レンズ107を移動する場合には、例えば図2(A)、図2(B)に示すような略鋸歯状のパルス電圧を連続して圧電素子102に印加する。
【0194】
具体的には、図2(A)に示すパルス電圧を印加すると、時刻α1から時刻α2では、圧電素子102が比較的緩やかに伸長し、駆動軸103が比較的緩やかな速度で図示左側に移動(以下「前進」という)する。このとき、摩擦部材106と駆動軸103との間の摩擦力よりも摩擦部材106及び移動レンズ107に働く慣性力が小さいので、この摩擦力によって摩擦部材106及び移動レンズ107は駆動軸103と共に一体に前進する。時刻α3では、圧電素子102が急激に縮まり、駆動軸103は速い速度で図示右側に移動(以下「後退」という)する。このとき、摩擦部材106及び移動レンズ107に働く慣性力が摩擦部材106と駆動軸103との間の摩擦力よりも大きいので、駆動軸103のみが後退して摩擦部材106及び移動レンズ107は実質的にほとんど動かない。従って、図2(A)に示すパルス電圧を連続して印加することによって、これらの運動が繰り返されて移動レンズ107が前進する。
【0195】
一方、図2(B)に示すパルス電圧を印加すると、このパルス電圧の波形は図2(A)に示すパルス電圧の波形と緩急が逆にされていることより、時刻β1では駆動軸103のみが後退して摩擦部材106及び移動レンズ107が実質的にほとんど動かなく、時刻β2から時刻β3では摩擦部材106及び移動レンズ107が駆動軸103と共に一体に後退する。従って、図2(B)に示すパルス電圧を連続して印加することによって、これらの運動が繰り返されて移動レンズ107が後退する。
【0196】
このような駆動を行う第七実施形態における駆動装置101eにあっては、圧電素子102は第一の接着部117及び第二の接着部118によって静止部材104に弾性支持される。従って、例えば駆動装置101eを落下してしまい駆動装置101eに衝撃力が負荷された場合でも、第一の接着部117及び第二の接着部118が有する弾性力によってこの衝撃力を緩衝して駆動装置101eにおける各部位及びこれらの接合部の破損を防止することが可能である。また、この弾性力によって静止部材104と圧電素子102との間で振動が伝播することを抑制することができ、共振の影響を抑制できるため、駆動軸103を伸縮方向Aに確実且つ正確に移動することが可能である。また、このように圧電素子102が弾性支持されているため、圧電素子102の駆動軸103側の反りや撓みを効果的に抑制でき、駆動軸103が一層確実且つ正確に移動することが可能であると共に、圧電素子102が支持されていないと駆動軸103が移動せずに圧電素子102が移動してしまうという虞が解消され、駆動軸103が一層確実且つ正確に移動することが可能である。
【0197】
また、このように圧電素子102が静止部材104に固定されずに弾性支持されているため、静止部材104の駆動軸103及び圧電素子102に対する過拘束を防止することができる。その結果、静止部材104と駆動軸103との接合部に生じる不要な応力の作用を防止することができ、この接合部の破損を防止することが可能である。
【0198】
また、第一の接着部117を設けた後に第二の接着部118を設けることが可能であるため、第一の接着部117により駆動軸103を仮止めすることができ、この仮止めにより、第二の接着部118の形成が容易とされ、製造性が高めることが可能であると共に、第二の接着部118に隣接する中間軸受部104bに第一の接着部117を設けているため、圧電素子102の伸縮方向Aへの第二の接着部118からの硬化前の接着剤の流出を止めることが可能であり、駆動軸103が汚れて駆動不良になるということが無く所望の駆動特性を得ることが可能である。
【0199】
さらに、本実施形態によれば、以下の作用・効果も奏する。すなわち、圧電素子102がその駆動軸103側で弾性支持されているため、圧電素子102の駆動軸103側の反りや撓みを一層効果的に抑制でき、駆動軸103が一層確実且つ正確に移動することができる。さらに、この場合、圧電素子102の全体を静止部材104に弾性支持するのに比べ、圧電素子102の伸縮が阻害されることが無いため、駆動軸103を一層確実且つ正確に移動することができる。
【0200】
また、第二の接着部118が中間軸受部104bに至るまで設けられているため、圧電素子102と駆動軸103との接合部をも弾性支持でき、この接合部の強度を増大することが可能である。その結果、当該部位の破損を防止することができる。
【0201】
また、圧電素子102の伸縮方向Aの他端側に錘部材105が設けられているため、駆動軸103が圧電素子102の伸縮方向Aに移動せずに圧電素子102が移動してしまうことが一層無く、駆動軸103が一層確実且つ正確に移動することができる。また、この錘部材105が軟らかく且つ重いため、駆動装置101eの共振周波数を低下させて共振による悪影響が無い範囲で圧電素子102を駆動することが可能であると共に、周波数特性に凹凸状の乱れが無くされ圧電素子102が伸縮方向A以外の方向に変位する反り・撓みが一層抑制され、駆動軸103が一層確実且つ正確に移動することができる。また、第二の接着部118が錘部材105を支持していないため、上述の錘部材105による作用及び効果を効果的に発揮することができる。
【0202】
なお、本実施形態では、第二の接着部118を静止部材104の中間軸受部104bに至るまで設けているが、圧電素子102と中間軸受部104bとの間に隙間があっても良い。
【0203】
また、仮止めである第一の接着部117が駆動軸103を駆動中又は駆動後に脱落する虞があるが、この場合でも圧電素子102が第二の接着部118により弾性支持されているため問題無い。
【0204】
因みに、本実施形態では、第二の接着部118に代えて例えばゴム等の弾性環状体を圧電素子102に嵌合して静止部材104に弾性支持することも考えられるが、この場合には、駆動装置101eの部品点数が増えてしまうことや、圧電素子102と弾性環状体との間及び弾性環状体と静止部材104との間における接着がさらに必要になるため、好ましくない。
【0205】
図24は、第七実施形態に係る駆動装置の変形例の縦断面図である。この変形例の駆動装置101fが上述した駆動装置101eと違う点は、静止部材104に代えて、中間軸受部104bの孔104dにおける摩擦部材106側(図示左側)にテーパ面121を設けた静止部材124を用い、第一の接着部117に代えて、このテーパ面121と駆動軸103との間に接着剤を充填して第一の接着部127とした点である。
【0206】
このように構成された駆動装置101fにあっても、駆動装置101eと同様に、第一の接着部127が仮止めとして機能すると共に第二の接着部118からの接着剤の流出を防止するため、駆動装置101eと同様な効果を得ることができる。勿論、他の作用効果は駆動装置101eと同様である。
【0207】
図25は、第七実施形態に係る駆動装置の他の変形例を示す縦断面図である。この変形例の駆動装置101gが上述した駆動装置101eと違う点は、静止部材104に代えて、前側軸受部104aの孔104cにおける摩擦部材106側(図示右側)にテーパ面131を設けた静止部材134を用い、第一の接着部117に代えて、このテーパ面131と駆動軸103との間に接着剤を充填して第一の接着部137とした点である。
【0208】
このように構成された駆動装置101gにあっても、駆動装置101eと同様に第一の接着部137が仮止めとして機能するため、第二の接着部118の形成が容易とされて製造性を高めることが可能である。勿論、他の作用効果は駆動装置101eと同様である。
【0209】
図26は、第七実施形態に係る駆動装置の他の変形例を示す縦断面図である。この変形例の駆動装置101hが駆動装置101gと違う点は、静止部材34に代えて、前側軸受部104aの孔104cにおける摩擦部材106とは反対側(図示左側)にテーパ面141を設けた静止部材144を用い、第一の接着部137に代えて、このテーパ面141と駆動軸103との間に接着剤を充填して第一の接着部147とした点である。
【0210】
このように構成された駆動装置101hにあっても、駆動装置101gと同様な効果を得ることができる。
【0211】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態では、特に好ましいとして、軸受部の孔にテーパ面を設け、このテーパ面と駆動軸103との間に第一の接着部を設けるようにしているが、テーパ面を設けずに軸受部端面と駆動軸3の周面とに共に接触するような隅肉形状に設けても良い。
【0212】
また、上記実施形態では、特に好ましいとして第一の接着部及び第二の接着部を静止部材内に各々1箇所設けているが、第一の接着部を静止部材内に複数箇所設けても良く、第二の接着部を静止部材内に複数箇所設けても良い。
【0213】
また、上記実施形態では、特に好ましいとして、第二の接着部により圧電素子102の駆動軸103側を支持しているが、第二の接着部により錘部材105を支持するようにしても良く、第二の接着部により圧電素子102の全体を支持するようにしても良い。
【0214】
また、上記実施形態では、第二の接着部を形成する接着剤を注入する際に、その粘性により充填を保たせるようにしているが、例えば治具を用いたり静止部材に仕切壁を設ける等して充填しても良い。これにより、圧電素子102の伸縮方向Aへの第二の接着部からの接着剤の流出を一層防止することができる。
【0215】
また、上記実施形態では、圧電素子102の伸縮方向Aにおける他端側を自由端としているが、この他端側の端部を静止部材や保護板110に固定して固定端としても良い。
【0216】
また、上記実施形態では、圧電素子102の伸縮方向Aにおける他端側に錘部材105を設け、この錘部材105を特に好ましいとして軟らかく且つ重いものとしているが、これに限定されない。また、この錘部材105により、駆動軸3の伸縮方向Aに対する移動性を一層高めるようにしているが、錘部材105は無くても良い。
【0217】
また、上記実施形態では、圧電素子102に印加するパルス電圧の周波数を移動レンズ7が前進する場合と後退する場合とで等しくしているが、異なっていても良い。
【0218】
また、上記実施形態では、被駆動部材を移動レンズ107としているが、移動レンズ107を保持するレンズ枠でも良く、さらに別のものであっても良い。
【0219】
さらにまた、上記実施形態においては、電気機械変換素子102、駆動軸103を、特に好ましいとして、弾性を有する接着剤を介して静止部材104に弾性支持するようにしているが、多少効果は低減するが、硬い接着剤を介して静止部材104に支持するようにしても良い。
【0220】
因みに、第二の接着部の接着を行わない場合もある。この場合には、第一の接着部が第二の接着部を兼用することになる。
【0221】
上述した第五実施形態、第六実施形態及び第七実施形態に係る駆動装置において、接着剤などの充填材によりアクチュエータを支持する場合、圧電素子102とリード線108などの配線部材との接続部分を被覆するように充填材を充填することが好ましい。この場合、配線部材の接続強度を向上させることができる。このため、圧電素子102とリード線108の接続部分に大きなストレスが加わった場合でも、リード線108が外れ落ちることが抑制される。また、リード線108が極端に折れ曲がって断線してしまうことが抑制される。さらに、リード線108の接続部分に大きなストレスが加わった場合であっても、その接続部分において半田やフラックス等の飛散物が発生することが抑制される。一方、接続部分が被覆されていない場合では、接続部分に大きなストレスが加わった場合には、飛散物が、駆動部材103と摩擦部材106との間の摩擦係合部分に付着して正確な駆動を妨げる事態や移動レンズ107に付着して光学性能を劣化させる事態が生じるおそれがある。これに対し、充填材で配線部材の接続部分を被覆することにより、そのような事態の発生が有意に抑えられる。
【0222】
なお、上述した各実施形態は本発明に係る駆動装置の一例を示すものである。本発明に係る駆動装置は、これらの実施形態に係る駆動装置に限られるものではなく、各請求項に記載した要旨を変更しない範囲で、実施形態に係る駆動装置を変形し、又は他のものに適用したものであってもよい。例えば、本実施形態では、移動レンズを駆動する駆動装置に適用した装置について説明したが、移動レンズ以外の物を駆動する駆動装置に適用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0223】
【図1】本発明に係る駆動装置の第一実施形態を示す断面図である。
【図2】圧電素子に印加される駆動パルスの波形図である。
【図3】共振周波数の計算例を示した図である。
【図4】共振周波数の範囲を示した図である。
【図5】図1の駆動装置の変形例を示す断面図である。
【図6】図1の駆動装置の変形例を示す断面図である。
【図7】第二実施形態に係る駆動装置を示す断面図である。
【図8】第三実施形態に係る駆動装置を示す断面図である。
【図9】第四実施形態に係る駆動装置を示す断面図である。
【図10】第四実施形態に係る駆動装置における位置検出器を示す斜視図である。
【図11】第四実施形態に係る駆動装置における位置検出器の変形例を示す図である。
【図12】第四実施形態に係る駆動装置における被駆動部材を示す断面図である。
【図13】第四実施形態に係る駆動装置における駆動回路を示す回路図である。
【図14】図13の駆動回路に入力される入力信号の波形図である。
【図15】図13の駆動回路から出力される出力信号の波形図である。
【図16】本発明の第五実施形態に係る駆動装置を示す縦断面図である。
【図17】図16中の摩擦部材を示す拡大横断面図である。
【図18】本発明の第五実施形態に係る駆動装置の変形例を示す縦断面図である。
【図19】本発明の第五実施形態に係る駆動装置の変形例を示す縦断面図である。
【図20】本発明の第六実施形態に係る駆動装置を示す縦断面図である。
【図21】図20中のXIX−XIX線に沿った横断面図である。
【図22】本発明の第六実施形態に係る駆動装置の変形例を図21に対応する横断面で示した図である。
【図23】本発明の第七実施形態に係る駆動装置を示す縦断面図である。
【図24】本発明の第七実施形態に係る駆動装置の変形例を示す縦断面図である。
【図25】本発明の第七実施形態に係る駆動装置の変形例を示す縦断面図である。
【図26】本発明の第七実施形態に係る駆動装置の変形例を示す縦断面図である。
【図27】従来のアクチュエータの不具合を説明する説明図である。
【符号の説明】
【0224】
10…アクチュエータ、12…圧電素子、14…駆動軸、16…被駆動部材、18…錘部材、22…支持部材、24…固定枠、40、42…支持板、50、50…支持部材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気機械変換素子とこの電気機械変換素子の伸縮に応じて動く駆動部材を有し、前記駆動部材に摩擦係合された被駆動部材を前記駆動部材に沿って移動させるアクチュエータを備え、
前記アクチュエータは前記電気機械変換素子の伸縮方向に対して側方で筐体に支持されること、
を特徴とする駆動装置。
【請求項2】
前記アクチュエータは、支持部材によって前記筐体に支持されることを特徴とする請求項1に記載の駆動装置。
【請求項3】
前記アクチュエータは、充填材によって前記筐体に支持されることを特徴とする請求項1に記載の駆動装置。
【請求項4】
前記充填材は、接着剤により構成されていることを特徴とする請求項3に記載の駆動装置。
【請求項5】
前記充填材は、複数の接着剤により構成されていることを特徴とする請求項3に記載の駆動装置。
【請求項6】
前記支持部材は、弾性特性を備えていることを特徴とする請求項2に記載の駆動装置。
【請求項7】
前記充填材は、弾性特性を備えていることを特徴とする請求項3〜5のいずれか一項に記載の駆動装置。
【請求項8】
前記筐体は、前記充填材の流出を防止する仕切り壁を備えることを特徴とする請求項3〜5、7のいずれか一項に記載の駆動装置。
【請求項9】
前記駆動部材を前記筐体に支持するための第一の充填部と、前記電気機械変換素子を前記筐体に支持するための第二の充填部を備えることを特徴とする請求項1、3、4、5、7、8のいずれか一項に記載の駆動装置。
【請求項10】
前記第一の充填部は仮止め用であることを特徴とする請求項9に記載の駆動装置。
【請求項11】
前記第一の充填部は、前記駆動部材を前記電気機械変換素子近傍で支持する軸受け部であって、前記第二の充填部に隣接する部分に設けられていることを特徴とする請求項9又は10に記載の駆動装置。
【請求項12】
前記電気機械変換素子は、電気信号入力のための配線部材が接続される端子を外表面に有し、
前記支持部材又は充填材は、前記端子と前記配線部材との接続部分を被覆すること、
を特徴とする請求項2〜11のいずれか一項に記載の駆動装置。
【請求項13】
前記駆動部材は、先端側及び基端側の一方又は双方で前記電気機械変換素子の伸縮方向に移動可能に支持されていることを特徴とする請求項1〜12のいずれか一項に記載の駆動装置。
【請求項14】
前記アクチュエータは、前記電気機械変換素子の伸縮方向に移動可能に支持されていることを特徴とする請求項1〜13のいずれか一項に記載の駆動装置。
【請求項15】
前記電気機械変換素子に対し、前記駆動部材と反対側に錘部材が取り付けられたことを特徴とする請求項1〜14のいずれか一項に記載の駆動装置。
【請求項16】
前記電気機械変換素子を駆動するために伸びと縮み方向において非対称の信号を発生させる駆動手段を有していることを特徴とする請求項1〜15のいずれか一項に記載の駆動装置。
【請求項17】
前記被駆動部材は、前記駆動部材に対し面接触していることを特徴とする請求項1〜16のいずれか一項に記載の駆動装置。
【請求項18】
前記被駆動部材の移動位置を検出する検出手段を備えたことを特徴とする請求項1〜17のいずれか一項に記載の駆動装置。
【請求項19】
前記電気機械変換素子は可聴周波数を超える駆動周波数で駆動されることを特徴とする請求項1〜18のいずれか一項に記載の駆動装置。
【請求項20】
前記被駆動部材は、光学部材又は光学部材に取り付けられる部材であり、撮影光学系に用いられることを特徴とする請求項1〜19のいずれか一項に記載の駆動装置。
【請求項21】
前記アクチュエータは、携帯電話に搭載される撮影光学系に用いられることを特徴とする請求項1〜20のいずれか一項に記載の駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【公開番号】特開2007−174882(P2007−174882A)
【公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−26244(P2006−26244)
【出願日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【出願人】(000005430)フジノン株式会社 (2,231)
【Fターム(参考)】