説明

駆動装置

【課題】扁平で薄型化可能な駆動装置を提供する。
【解決手段】駆動装置10は、回転軸43に軸止される外径の異なる円盤状のローター4
1a,41b,41cを有するローター車40と、交流電圧を印加することにより面内振
動し、ローター車40を回転する板状の振動体130と、ローター41a,41b,41
cのいずれかの外周側面に振動体130を一定の付勢力で当接させる振動体付勢部材70
と、振動体130の駆動制御を行う制御回路部60と、ローター車40と、振動体130
と、振動体付勢部材70と、制御回路部60とを収納する第1機枠20と第2機枠30と
からなる筐体とを備えている。複数のローターのいずれかを選択し、振動体130を当接
させることにより、ローター車40の回転速度を切換えることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ローターを振動体の振動により回転する駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、回転力を取り出す駆動装置としては、電磁モーターを駆動源として減速ギアまた
は増速ギアとを組み合わせた駆動装置が一般的であった。
【0003】
このような駆動装置に対して、近年、超音波モーターを利用してローターを回転する超
音波モーターが開発されている。このような超音波モーターとしては、ローターに軸方向
の振動を与える第1の圧電素子と、接線方向に振動を与える第2の圧電素子を備え、第1
の圧電素子と第2の圧電素子とを同時に振動することによって、ローターを回転するとい
うものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、面内振動をする板状の振動体をローター外周側面に当接させて、振動体の振動に
よりローターを回転させる駆動装置というものが提案されている(例えば、特許文献2参
照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5−207764号公報
【特許文献2】特開2005−73465号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の電磁モーターを用いた駆動装置では、減速ギアまたは増速ギアを有しているため
小型化が困難である。また、駆動時に電磁ノイズを発生する他、外部の電磁ノイズの影響
を受けることがあるという課題を有していた。
【0007】
特許文献1の駆動装置は、構成部品数が多く複雑な構造であり、形態も筒形状になり小
型化が困難であり、他の機器への取り付けに関してスペース効率が悪いという課題を有し
ている。
【0008】
また特許文献2の駆動装置は、薄型化が可能であり、電磁ノイズの影響も受けない。し
かしながら、この駆動装置のローター回転速度は振動体の振動周波数とローターの外径に
よって一義的に決定されるため、駆動装置として汎用的に用いるためには、ローターの回
転速度を選択できることが求められる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の
形態または適用例として実現することが可能である。
【0010】
[適用例1]本適用例に係る駆動装置は、回転軸に軸止される円盤状のローターと、交
流電圧を印加することにより面内振動して前記ローターを回転する板状の振動体と、前記
振動体を一定の付勢力で前記ローターの外周側面に当接させる振動体付勢部材と、前記振
動体の駆動制御を行う制御回路部と、前記ローターと、前記振動体と、前記振動体付勢部
材と、前記制御回路部とを収納する筐体と、前記筐体から外部に突設され、且つ前記ロー
ターの回転が伝達される伝達軸と、が備えられていることを特徴とする。
【0011】
本適用例による駆動装置は、振動体の振動によりローターを回転することから、電磁ノ
イズを発生することも、外部の電磁ノイズの影響を受けることがない。
【0012】
また、本適用例の駆動装置は、ローターと振動体と振動体付勢部材と制御回路部とこれ
らを収納する筐体からなり、構成部品数が少なく構造が簡単であり、薄型化、小型化を実
現できる。
【0013】
詳しくは実施の形態で説明するが、ローターは振動体との当接部の摩擦力によって回転
される。従って、振動体付勢部材を用いることによって振動体をローターに一定の付勢力
で当接させることから、ローターを安定した回転速度で回転させることができる。
【0014】
さらに、伝達軸を筐体の外部に突設することにより、ローターの回転力(つまり、動力
)を筐体外部に取出すことができ、他の機器への動力伝達を容易に行うことができる。
【0015】
[適用例2]上記適用例にかかる駆動装置は、外径の異なる複数の前記ローターを有し
、そのいずれかに前記振動体を当接させることが好ましい。
【0016】
振動体の振動周波数を一定にした場合、ローターの回転速度はローターの外径によって
決定される。従って、外径が異なる複数のローターを同一軸に設け、所望の回転速度に対
応するローター外径のものを選択して振動体を当接することにより、所望の回転速度を有
する駆動装置を実現することができる。
【0017】
[適用例3]上記適用例にかかる駆動装置は、前記複数のローターが、前記筐体の底面
方向から外径が小さいものから大きいものに順次積み重ねて配設されていることが望まし
い。
【0018】
このような構成にすれば、ローター以外の構成要素の一部をローター外径の大きいもの
の下部に交差するように筐体の底面に配設できるため、スペースの効率的な活用が可能で
、小型化に有効である。
【0019】
[適用例4]上記適用例にかかる駆動装置は、前記複数のローターのうち選択されたロ
ーターと前記振動体との厚さ方向の当接位置を合わせるスペーサーが設けられていること
が望ましい。
【0020】
このようにすれば、ローター位置に対応した厚さのスペーサーを用意しておくことによ
り、他の構成要素の変更なしに、ローターと振動体との厚さ方向の当接位置を容易に合わ
せることができる。
【0021】
[適用例5]上記適用例にかかる駆動装置は、前記振動体付勢部材が、前記複数のロー
ターそれぞれの外径に合わせて平面方向の位置を移動して配設可能であることが望ましい

【0022】
このようにすれば、複数のローター外径それぞれに対して共通の振動体付勢部材を用い
、ローター外径それぞれに対応して一定の付勢力を付勢させることができる。
【0023】
[適用例6]上記適用例にかかる駆動装置は、前記伝達軸が、前記ローターの回転軸と
共通であることが望ましい。
【0024】
外部に動力を取出す伝達軸とローターの回転軸とを共通にすることで、他の伝達要素が
不要となり、シンプルな構成の駆動装置を実現できる。
【0025】
[適用例7]上記適用例にかかる駆動装置は、前記ローターと前記伝達軸との間に、減
速機構または増速機構を有することが好ましい。
ここで、減速機構及び増速機構としては、例えば、減速ギアまたは増速ギアを採用でき
る。
【0026】
このようにすれば、振動体の振動周波数及びローター外径を一定にした状態で、伝達軸
の回転数の異なる駆動装置を提供できる。減速ギアを用いる場合は、伝達軸の回転速度を
遅くすると共に、伝達軸の回転トルクを大きくすることができる。また、増速ギアを用い
る場合には、伝達軸の回転速度を速くすることができる。
【0027】
[適用例8]上記適用例に係る駆動装置は、前記振動体が、圧電素子と、前記圧電素子
に設けられる複数の電極とを有し、接続切換手段により前記複数の電極を2状態に接続切
換えすることで前記振動体の振動方向を切換え、前記ローターの回転方向を切換えること
が好ましい。
ここで、接続切換手段としては、例えば、2状態切換えスイッチを採用することができ
る。
【0028】
振動体は、圧電素子の伸縮により振動が励起される。従って、圧電素子に設けられる複
数の電極を選択的に接続することにより、圧電素子の伸縮方向が変わり、そのことにより
振動体の振動方向が変わる。振動体の振動方向を切換えることによって、ローターの回転
方向を容易に変えることができ、正逆回転可能な駆動装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】実施形態1に係る駆動装置の構成を示す平面図。
【図2】実施形態1に係るローターと振動体の関係を示す断面図。
【図3】実施形態1に係る振動体の保持構造を示す部分断面図。
【図4】実施形態1に係るローターと振動体との当接部を示す部分断面図。
【図5】実施形態1に係る振動体付勢部材を示す部分断面図。
【図6】実施形態1に係る振動体の構成を示す斜視図。
【図7】実施形態1に係る振動体の作用を模式的に示す説明図。
【図8】実施形態2に係る駆動装置を示す平面図。
【図9】実施形態2の実施例1に係る駆動装置を示す部分断面図。
【図10】実施形態2の実施例2に係る駆動装置のローターと振動体との関係を示す部分断面図。
【図11】実施形態2の実施例2に係る振動体付勢部材の固定構造について示す部分断面図。
【図12】実施形態2の実施例3に係る駆動装置のローターと振動体との関係を示す部分断面図。
【図13】実施形態2の実施例3に係る振動体付勢部材の固定構造について示す部分断面図。
【図14】実施形態3の実施例1に係る駆動装置の平面図。
【図15】実施形態3の実施例1に係る駆動装置の部分断面図。
【図16】実施形態3の実施例2に係る駆動装置を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
なお、以下の説明で参照する図は、図示の便宜上、部材ないし部分の縦横の縮尺は実際
のものとは異なる模式図である。
(実施形態1)
【0031】
図1は、実施形態1に係る駆動装置の構成を示す平面図、図2はローターと振動体の関
係を示す断面図、図3は振動体の保持構造を示す部分断面図、図4はローターと振動体と
の当接部を示す部分断面図、図5は振動体付勢部材を示す部分断面図である。
【0032】
まず、図1を参照して駆動装置10の構成について説明する。駆動装置10は、円盤状
のローター41を有するローター車40と、板状の振動体130と、ローター41の外周
側面に振動体130の端部に形成される突起部133aを一定の付勢力で当接させる振動
体付勢部材70と、振動体130の駆動制御を行う制御回路部60と、これらを収納する
筐体としての第1機枠20及び第2機枠30とから構成されている。なお、図1は、第2
機枠30を透視した状態を表している。
【0033】
ローター車40、振動体130、振動体付勢部材70及び制御回路部60は、第1機枠
20の底面22に分散して配設されている。なお、振動体130は振動体保持部材50に
よって保持されている。
【0034】
次に、ローター41と振動体130との関係について図1、図2を参照して説明する。
ローター車40は、回転軸43に円盤状のローター41が軸止されて構成されており、第
1機枠20に設けられる軸受97と第2機枠30に設けられる軸受96によって軸支され
ている。
【0035】
振動体130は、振動体保持部材50に腕部133bを振動体固定軸55,56に固定
された状態で、突起部133aがローター41の外周側面に当接されている。なお、振動
体130の保持構造については、図3を参照して後述する。
【0036】
制御回路部60は、第1機枠20の底面22に固着された回路基板62(平面形状の図
示は省略する)の表面に接続固定されている。
【0037】
制御回路部60には、電圧制御回路や発振回路等(共に図示せず)が含まれる。電圧制
御回路は電源リード61に接続され、外部の電源からの供給電圧の安定化制御を行う。ま
た、発振回路は振動体130の複数の電極(図6、参照)と接続される。
【0038】
ローター車40、振動体130、振動体付勢部材70及び制御回路部60は、第1機枠
20と第2機枠30によって形成される空間21内に収容されている。第2機枠30は蓋
部材であって、第1機枠20の縁部23に密接するよう固定螺子92によって固定され(
図5も参照する)、駆動装置10が完成される。
【0039】
ローター41の回転軸43は、第1機枠20を貫通して外部に突設される。従って、本
実施形態では、回転軸43は回転力(動力)を外部に取出すための伝達軸である。図1、
図2では、駆動装置10を他の機器に取り付ける場合の1例を例示している。ここでは、
機器の駆動装置取り付け部材110に、固定螺子91を用いて羅着可能な構造としている

【0040】
回転軸43には、一部が平面でカットされた連結部44が形成されており、回転力を歯
車等に伝達可能な構成である。なお、連結部の形状としては、軸方に垂直な断面形状を多
角形、またはローレット形状としてもよい。
【0041】
次に、振動体の保持構造について図1、図3を参照して説明する。振動体130には、
一対の腕部133bが突設されている。振動体130は、この腕部133bの先端部にお
いて振動体固定軸55,56によって振動体保持部材50に圧入固定される。
【0042】
なお、振動体固定軸55は、振動体保持部材50から突出しない。また、振動体固定軸
56は振動体保持部材50に圧入され振動体130を固定すると共に、先端部の回動軸部
57が振動体保持部材50を貫通して第1機枠20内に突設される。ここで、回動軸部5
7は第1機枠20に対して回動可能である。従って、振動体130は振動体保持部材50
と共に振動体保持部材50に固定された状態で、回動軸部57を回転軸として回動可能で
ある。
【0043】
次に、ローター41と振動体130との当接部について図4を参照して説明する。ロー
ター41の外周側面には溝42が形成されている。溝42は図示したように正面視略円弧
形状をしている。この円弧形状部分が振動体(突起部133a)との当接面である。
【0044】
突起部133aは、ローター41の厚さの略中央に配設される。そして、突起部133
aは、溝42の当接面の断面方向中央に当接される。なお、振動体130の総厚さは、ロ
ーター41の厚さよりも薄くすることがより好ましい。
【0045】
次に、振動体付勢部材の構造について図1、図5を参照して説明する。図1に示すよう
に、振動体付勢部材70は、固定部71と、固定部71に連続するばね部72と、ばね部
72の先端に形成される付勢部73とから構成されている。
【0046】
振動体付勢部材70は、固定部71において、第1機枠20に植立された案内軸75に
よって位置規制されると共に、固定螺子93によって第1機枠20の底面22に固定され
ている。ばね部72は、湾曲した梁形状をしており平面方向に撓むことが可能であり、先
端部には曲げ起こされた付勢部73が形成されている。付勢部73は、振動体固定軸55
の外周側面に当接する高さに設定されている。
【0047】
続いて、振動体付勢部材70の作用について図1を参照して説明する。振動体付勢部材
70は、第1機枠20に固定された状態で、付勢部73が振動体固定軸55に当接する。
この際、ばね部72が撓むよう形状設定されていることから、付勢部73は、ばね部72
の弾性力で振動体固定軸55を押動する。
【0048】
ここで、振動体130は振動体保持部材50に固定された状態で、回動軸部57を回転
軸として反時計回りに回動される。こうして、振動体130(突起部133a)は、ロー
ター41の外周側面(溝42の当接面)に一定の付勢力で付勢される。
【0049】
続いて、本実施形態に係る駆動装置10の駆動について説明する。まず、振動体130
の構成と、作用について図6、図7を参照して説明する。
図6は、振動体の構成を示す斜視図である。図6に示すように、振動体130は、ほぼ
長方形の薄板形状をしている。振動体130は、補強板133の表面に板状の圧電素子1
34、圧電素子134の表面に電極131a,131b,131c,131d,131e
が密着形成されている。
【0050】
補強板133の裏面には、板状の圧電素子135が密着され、圧電素子135の表面に
電極132が密着されている。電極131aは、圧電素子134の幅方向中央に長さ方向
全体にわたって形成され、電極131b,131cは電極131aを挟んで対角方向に配
設形成される。また、電極131d,131eは電極131aを挟んで対角方向に、電極
131b,131cに相対するように配設形成される。
【0051】
図示は省略するが、電極132は、補強板133を挟んで電極131a,131b,1
31c,131d,131eに対して面対称となるように形成されている。なお、電極1
31a、132は省略してもよい。
【0052】
圧電素子134,135の材料としては特に限定されず、チタン酸ジルコン酸鉛(PZ
T)、水晶、ニオブ酸リチウム、チタン酸バリウム、チタン酸鉛、メタニオブ酸鉛、ポリ
弗化ビニリデン、亜鉛ニオブ酸鉛、スカンジウムニオブ酸鉛等を用いることができる。
【0053】
補強板133は、圧電素子134,135に対する共通電極としての機能と、振動体1
30の全体を補強する機能を有しており、振動体130が過振幅または外力等によって損
傷することを防止する。補強板133の材料としては特に限定されないが、例えば、ステ
ンレス鋼、アルミニウムまたはアルミニウム合金、チタンまたはチタン合金、銅または銅
系合金等の金属材料であることが望ましい。
【0054】
圧電素子134,135は、補強板133よりも厚いものであることが好ましい。これ
により、振動体130をより高い効率で振動させることができる。
【0055】
補強板133の長手方向端部には、突起部133aが一体的に形成されている。なお、
突起部133aは、補強板133の中央部(中心線G:図7参照)に略半円形状に形成さ
れている。
【0056】
また、補強板133の長さ方向の中央両側には、一対の腕部133bが突設されており
、腕部133bの先端部には固定部133cが形成されている。振動体130は、この固
定部133cを振動体保持部材50に振動体固定軸55,56を用いて固定される(図3
、参照)。つまり、振動体130は、腕部133bによって支持されている。これにより
、振動体130は自由に面内振動することができ、比較的大きい振幅で振動する。
なお、電極131bと電極131c、電極131dと電極131eは、それぞれ電気的
に接続されている。
【0057】
次に、振動体130の作用について図6、図7を参照して説明する。
図6に示すように、電極131a,131b,131cと、補強板133との間に交流
電圧を印加すると、電極131aの下面範囲の圧電素子134は矢印Xで表すように長手
方向に伸縮し、縦振動を行う。
【0058】
そして、電極131b,131cの下面範囲の圧電素子134も長手方向に伸縮するが
、それぞれが圧電素子134の対角方向に配設されているため、矢印Yに示すような面内
の屈曲振動を行う。なお、図6では、電極131d,131eには電圧が印加されていな
い場合を表している。
【0059】
なお、圧電素子135においても、電極132(電極131a,131b,131cと
面対称で形成された)に同様の交流電圧が印加される。
【0060】
従って、振動体130は、主に長手方向に縦振動するが、縦振動と屈曲振動とを共振さ
せ、突起部133aを楕円振動させる。以下、この点について説明する。
【0061】
図7は振動体の作用を模式的に示す説明図である。
図7に示すように、振動体130がローター41を回転駆動するとき、突起部133a
は、ローター41から反力fを受ける。従って、振動体130は、この反力fによって面
内方向に屈曲するように変形、振動する。なお、図7は、振動体130の変形を誇張して
表している。
【0062】
印加電圧の周波数、振動体130の形状・大きさを適宜選択することで、この屈曲振動
の周波数と縦振動の周波数とが共振し、振幅が大きくなると共に、突起部133aは、図
7中の矢印rにて表すように、ほぼ楕円に沿って変位(楕円振動)する。
【0063】
これにより、振動体130の1回の振幅において、突起部133aが伸張しローター4
1を回転方向に送るときには、突起部133aがローター41により強い力で圧接される
。また、突起部133aが収縮し戻るときには、ローター41との摩擦力を低減または消
滅させることができるため、振動体130の振動をローター41の回転運動により高い効
率で変換することができる。
【0064】
なお、振動体130は、振動体付勢部材70の弾性力によって、突起部133aがロー
ター41の外周側面に付勢されている。そこで、圧電素子134,135に前述したよう
な交流電圧を印加して振動体130を振動させると、ローター41が時計回り方向(矢印
R方向)に回転する。
【0065】
つまり、突起部133aの振動変位Bの径方向成分B1によって、突起部133aとロ
ーター41の接触部との間に大きな摩擦力が与えられ、振動変位Bの周方向成分B2によ
って、ローター41が時計回り方向に回転する。
【0066】
圧電素子134,135に印加する周波数は特に限定されないが、振動体130の振動
(縦振動)の共振周波数とほぼ同程度であることが好ましい。これにより、振動体130
の振幅が大きくなり、高い効率、高トルクでローター41を回転駆動することができる。
【0067】
従って、上述した本実施形態によれば、圧電素子134,135の伸縮に伴う振動体1
30の振動によりローター41(つまり、ローター車40)を回転することから、電磁ノ
イズを発生することがなく、外部の電磁ノイズの影響を受けることもない。
【0068】
また、駆動装置10は、ローター車40と振動体130と振動体付勢部材70と制御回
路部60とこれらを収納する筐体(第1機枠20と第2機枠30)からなり、構成部品数
が少なく構造が簡単で薄型化、小型化を実現できる。
【0069】
具体的には、ローター41の外径を4mm、厚さ0.4mm、振動体の平面サイズを2
mm×7mmとしたときに、駆動装置の平面サイズ15mm×15mm、厚さ1.5mm
程度の大きさで、筐体から突出物がない箱型の駆動装置を実現できる。
【0070】
また、ローター41は振動体130との当接部の摩擦によって回転される。従って、振
動体付勢部材70によって振動体130をローター41に一定の付勢力で圧接することに
より、ローター41を安定した回転速度で回転させることができる。
【0071】
また、ローター41の回転軸43の先端部と外部に動力を取り出す伝達軸とを共通にす
ることで、他の伝達要素が不要となり、シンプルな構成の駆動装置を実現できる。
【0072】
また、回転軸43の一部(伝達軸)を筐体の外部に突設することにより、ローター41
の回転力(つまり、動力)を筐体外部に取出すことができ、他の機器の回転伝達機構への
連結を容易に行うことができる。さらに、第1機枠20と第2機枠30をプラスチック製
とすれば、軽量化も実現できる。
(実施形態2)
【0073】
続いて、実施形態2に係る駆動装置について図面を参照して説明する。実施形態2は、
ローター車が、回転軸と外径の異なる複数のローターを有し、複数のローターのいずれか
を選択して振動体を当接させ、複数の回転速度を得ることを特徴とする。実施形態1と異
なる箇所を中心に説明する。なお、同じ機能を有する構成要素には同じ符号を付して説明
する。
【0074】
図8は、実施形態2に係る駆動装置を示す平面図である。なお、図8は第2機枠を透視
した状態を表し、以降説明する実施例1〜実施例3を併せて図示している。
(実施形態2の実施例1)
【0075】
図9は、実施例1に係る駆動装置を示す部分断面図である。図8、図9において、ロー
ター車40は、3個のローター41a,41b,41cと回転軸43とから構成されてい
る。そして、3個のローターそれぞれが筐体の一部である第1機枠20の底面22方向か
ら外径が小さいものから大きいものに順次積み重ねて配設されている。本実施例では、各
ローターの外径は、41a<41b<41cとなるように設定され、第1機枠20の底面
22からローター41a,41b,41cの順に回転軸43に軸止されている。
【0076】
実施例1は、最も外径が小さいローター41aに振動体130を当接させた状態である
。ローター41aの外周側面には振動体130の突起部133a(図示133a‐1)が
当接されている。ここで、振動体130と振動体保持部材50の形状、及び固定構造は実
施形態1(図1,3、参照)と同じであり、ローター41a,41b,41cの外周部に
は、実施例1と同様な溝42(図4、参照)が形成されている。
【0077】
また、振動体付勢部材70(図示70‐1)の各部は、実施形態1とはスペースを有効
に活用するために形状は異なるが、同様な機能を有している。具体的には、振動体付勢部
材70は、固定部71と、固定部71に連続するばね部72と、ばね部72の先端に形成
される付勢部73(図示73‐1)とから構成されている。
【0078】
振動体付勢部材70の固定構造は実施形態1(図5、参照)と同じであり説明を省略す
るが、固定部71において、第1機枠20に植立された案内軸75(図示75‐1)によ
って位置規制されると共に、固定螺子93(図示93‐1)によって第1機枠20に固定
されている。
【0079】
そして、振動体付勢部材70の付勢部73(図示73‐1)が振動体固定軸55(図示
55‐1)に押動して振動体130を、振動体固定軸56(図示56−1)を回転軸とし
て回動し、ローター41aに付勢する。
つまり、この実施例1は、前述した実施形態1と同じ構成といえる。
【0080】
なお、図示したように、制御回路部60の一部は、ローター41cの下部に交差する位
置に配設されているが、このように配設すれば駆動装置10の厚さには影響させることが
なく、スペースを有効に活用でき、小型化に寄与する。
(実施形態2の実施例2)
【0081】
図10は、実施例2に係る駆動装置のローターと振動体との関係を示す部分断面図であ
る。図8,10を参照して説明する。実施例2は、ローター外径が中間サイズのローター
41bに振動体130の突起部133a(図示133a‐2)を当接させた状態を例示し
ている。振動体130と振動体保持部材50の構成、及び両者の固定構造は実施形態1と
同じであるため説明を省略する。
【0082】
実施例2では、複数のローターのうち選択されたローター41bと振動体130との厚
さ方向の当接位置を合わせるためのスペーサー100が設けられている。このスペーサー
100を設けることにより、ローター41bと振動体130との当接高さを調整する。
【0083】
スペーサー100は板部材であって、2本の案内軸95によってローターに対する平面
位置を正確に規制し、2本の固定螺子94によって第1機枠20に固定されている(図1
1も参照する)。
【0084】
また、ローターの外径は、41a<41bの関係にあるため、実施例1と同じ付勢力を
得るために、振動体130はその径差に相当する分移動させる。具体的には、振動体13
0は振動体保持部材50と共に、振動体130の中心線Gがローターの回転中心P方向に
向かう直線上に移動させる。従って、振動体付勢部材70(図示70‐2)も振動体13
0と同じ方向に同じ距離を平行移動させることで、振動体130のローター付勢力を実施
例1の場合と同じにすることができる。
【0085】
振動体130及び振動体保持部材50とは、実施形態1と共通に用いることができ、ス
ペーサー100の上面に載置され、振動体固定軸56(図示56−2)においてスペーサ
ー100に固定される。この際、振動体130及び振動体保持部材50は、振動体固定軸
56(回動軸部57)に対して回動可能である。
【0086】
次に、振動体付勢部材について説明する。
図11は、振動体付勢部材の固定構造について示す部分断面図である。図8、図11に
おいて、本実施例における振動体付勢部材70は、上述した実施例1と共通使用が可能で
あって、スペーサー100の上面に載置された状態で、付勢部73(図示73−2)は振
動体固定軸55(図示55−2)の側面に当接している。
【0087】
そして、第1機枠20に植立された案内軸75(図示75−2)によって位置規制され
たうえ、固定螺子93(図示93−2)にて第1機枠20に固定されている。
続いて、本実施形態の実施例3について図面を参照して説明する。
(実施形態2の実施例3)
【0088】
図12は、実施例3に係る駆動装置のローターと振動体との関係を示す部分断面図であ
る。実施例3は、外径の大きさが最大のローター41cに振動体130の突起部133a
(図示133a‐3)を当接させた状態である。図8,12を参照して説明する。振動体
130と振動体保持部材50の構成、及び両者の固定構造は実施形態1と同じであるため
説明を省略する。
【0089】
実施例3では、複数のローターのうち選択されたローター41cと振動体130との厚
さ方向の当接位置を合わせるためのスペーサー101が設けられている。このスペーサー
101を設けることにより、ローター41cと振動体130との当接高さを調整する。
【0090】
スペーサー101は、実施例2のスペーサー100に対して厚さのみが異なる板部材で
あって、実施例2と同様に、2本の案内軸95によってローターに対する平面位置を正確
に規制し、2本の固定螺子94によって第1機枠20に固定されている(図13も参照す
る)。
【0091】
また、ローターの外径は、41a<41b<41cの関係にあるため、実施例1と同じ
付勢力を得るために、振動体130はその径差に相当する分移動させる。具体的には、振
動体130は振動体保持部材50と共に、振動体130の中心線Gがローターの回転中心
P方向に向かう直線上に移動させる。従って、振動体付勢部材70(図示70‐3)も振
動体130と同じ方向に同じ距離を平行移動させることで、振動体130のローター付勢
力を実施例1の場合と同じにすることができる。
【0092】
振動体130及び振動体保持部材50とは、実施形態1と共通に用いることができ、ス
ペーサー101の上面に載置され、振動体固定軸56(図示56−3)においてスペーサ
ー101に固定される。この際、振動体130及び振動体保持部材50は、振動体固定軸
56(回動軸部57)に対して回動可能である。
【0093】
次に、振動体付勢部材について説明する。
図13は、振動体付勢部材の固定構造について示す部分断面図である。図8、図13に
おいて、本実施例における振動体付勢部材70は、上述した実施例1、実施例2と共通使
用が可能であって、スペーサー101の上面に載置された状態で、付勢部73(図示73
−3)は振動体固定軸55(図示55−3)の側面に当接している。
【0094】
そして、第1機枠20に植立された案内軸75(図示75‐3)に位置規制されたうえ
、固定螺子93(図示93−3)にて第1機枠20に固定されている。
【0095】
以上説明した実施形態2では、外径の異なる3個のローター41a,41b,41cを
有し、そのいずれかのローターを選択して振動体130にて回転する構成である。ここで
、ローター41aの外径を4mm、ローター41bの外径を6mm、ローター41cの外
径を8mmとしたときに、振動体の振動周波数を一定にした場合において、ローター41
cの回転速度=(4/8)×ローター41aの回転速度=(6/8)×ローター41bの
回転速度の関係となる。
【0096】
また、実施形態2による駆動装置10のサイズは、実施形態1のサイズに対して、外径
の異なるローター3個で構成されていることから若干大きくなるものの、平面サイズは2
0mm×20mm、厚さ2.3mm程度にすることが可能である。
【0097】
従って、実施形態2による駆動装置10は、ローター車40が、回転軸43と、外径の
異なる複数のローター41a,41b,41cとを有し、ローター41a,41b,41
cのいずれかに振動体130を当接させる構成である。
【0098】
振動体130の振動周波数を一定にした場合、ローターの回転速度はローターの外径に
よって決定される。従って、外径が異なる複数のローターを同一回転軸に設け、所望の回
転速度に対応するローターを選択して振動体130を当接することにより、所望の回転速
度を有する駆動装置10を実現することができる。
【0099】
振動体の振動周波数は、振動体の縦振動の共振周波数に合わせるため、発振回路の構成
にも影響することから簡単に変更することは難しい。従って、ローターの外径寸法を変え
ることでローターの回転速度を変えられることは駆動装置として有効な手段である。
【0100】
また、ローター車40は、複数のローター41a,41b,41cを、第1機枠20の
底面22方向から外径が小さいものから大きいものに順次積み重ねて配設している。この
ような構成にすれば、ローター以外の構成要素(例えば、制御回路部60)の一部をロー
ター外径の大きいものの下部に交差するよう配設できるため、スペースの効率的な活用が
可能で、小型化に有効である。
【0101】
また、スペーサー100(またはスペーサー101)により、複数のローター41a,
41b,41cのうち選択されたローターと振動体130との厚さ方向の当接位置を合わ
せている。具体的には、ローター41aの場合はスペーサーを必要とせず、ローター41
bの場合はスペーサー100、ローター41cの場合はスペーサー101というように、
平面形状は同じで、厚さのみ異なるスペーサーを使用すればよい。このことにより、他の
構成要素の変更なしに、ローターと振動体との厚さ方向の当接位置を容易に合わせること
ができる。
【0102】
また、振動体付勢部材70を、複数のローター41a,41b,41cそれぞれの外径
寸法に対応して、その径差分だけ移動させた位置に配設可能な構成としている。従って、
複数のローター外径に対して共通の振動体付勢部材を用い、ローター外径それぞれに対応
して一定の付勢力を付勢させることができる。
【0103】
さらに、駆動装置10の外部の回転力(駆動力)を取り出すための伝達軸を、ローター
車40の回転軸43と共通軸とすることにより、他の伝達要素が不要となり、シンプルな
構成の駆動装置を実現できる。
【0104】
このように、本実施形態によれば、スペーサーにより振動体130及び振動体付勢部材
70の高さ、及び平面位置を調整でき、複数のローター回転速度に切換え可能な、扁平で
小型の駆動装置10を提供することができる。
【0105】
なお、本実施形態では、3個の外径の異なるローターを有する駆動装置を例示して説明
したが、ローターの数はこれに限定されず、2個でも3個以上であってもよい。
また、ローターの回転軸への配設順序もローター外径小から大へ順次配設しなくても任
意の順序に配設することができる。
(実施形態3)
【0106】
続いて、実施形態3に係る駆動装置について図面を参照して説明する。実施形態3は、
ローター車と伝達軸との間に、減速機構または増速機構を有することを特徴としている。
実施形態3は、減速機構及び増速機構に係る構成以外は前述した実施形態1及び実施形態
2の構造に適合可能であるが、実施形態1を例示して説明する。
(実施形態3の実施例1)
【0107】
図14は、本実施形態の実施例1に係る駆動装置の平面図、図15は部分断面図であり
、減速機構として減速ギアを用いた1実施例である。実施形態1との相違箇所を中心に説
明する。図14、図15において、ローター車40は、回転軸45とローター41とから
構成されている。そして、回転軸45には、ピニオン45aが形成されている。
【0108】
ローター車40は、ピニオン45aが、第1機枠20の貫通孔31を貫通して突設され
、第1機枠20の裏面側に設けられる第3機枠36に設けられる軸受97と第2機枠30
に設けられる軸受96により軸支されている。貫通孔31は、実施形態1(図2、参照)
に図示する軸受97を第1機枠20から取り除くことで開口できる。
【0109】
さらに、ローター車40に隣接して駆動車102が設けられている。駆動車102は、
駆動車軸104と、駆動車軸104に軸止される駆動歯車103とから構成されている。
そして、第1機枠20に設けられる軸受99と第3機枠36に設けられる軸受98によっ
て軸支されている。
【0110】
ピニオン45aと駆動歯車103とは互いに歯合して、ローター41の回転力を駆動車
102に伝達する。駆動車軸104には、一部が平面でカットされた連結部105が形成
され第3機枠36から突出されている。そして、駆動車軸104は駆動装置10から外部
の歯車等の伝達機構に回転力を伝達するための連結部となる伝達軸である。なお、連結部
の形状としては、断面形状を多角形、またはローレット形状であってもよい。
なお、第3機枠36は、図示しない固定螺子によって第1機枠20の周縁部に固定され
る。
【0111】
ここで、仮にピニオン45aのピッチ円径に対して駆動歯車103のピッチ円径を3倍
にすれば、駆動車102の回転速度はローター41の回転速度に対して1/3減速となる

なお、ピニオン45aと駆動歯車103の減速比は任意に設定することができる。また
、ローター41と駆動車102の間に複数の減速ギアを設ける構造とすることができる。
(実施形態3の実施例2)
【0112】
続いて、ローターと伝達軸との間に増速ギアを用いた1実施例について図面を参照して
説明する。
図16は、実施例2に係る駆動装置を示す断面図である。上述した実施例1との相違箇
所を中心に説明する。図16において、ローター車40は、回転軸45とローター41と
ローター歯車46とから構成されている。
【0113】
ローター歯車46は、回転軸45の段部とEリング47(またはCリング)によって回
転軸45に軸止されている。Eリング47は、回転軸45の段部からローター歯車46の
厚さ分離間した位置に形成される溝45bに嵌着することでローター歯車46の軸方向の
位置規制を行う。
【0114】
また、回転軸45とローター歯車46には互いに嵌着し合う凹凸が設けられており、回
転軸45にローター歯車46を嵌着することで、回転軸45とローター歯車46とは一体
で回転する。なお、回転軸45とローター歯車46とは軸方向に着脱可能である。つまり
、回転軸45にEリング47を取り付け、または取り外しすることで着脱可能である。
【0115】
そして、ローター車40は、第2機枠30に設けられる軸受96と、第3機枠36に設
けられる軸受97によって軸支されている。
【0116】
さらに、ローター車40に隣接して駆動車102が設けられている。駆動車102は、
駆動車軸104と、駆動車軸104に形成されるピニオン106とから構成されている。
そして、第1機枠20と第3機枠36に設けられる軸受98によって軸支されている。
【0117】
ローター歯車46とピニオン106とは互いに歯合して、ローター41の回転力を駆動
車102に伝達する。駆動車軸104には、一部が平面でカットされた連結部105が形
成され第3機枠36から突出されている。従って、駆動車軸104は駆動装置10から外
部の歯車等の伝達機構に回転力を伝達するための連結部となる伝達軸である。なお、連結
部の形状としては、断面形状を多角形、またはローレット形状であってもよい。
【0118】
ここで、仮にローター歯車46のピッチ円径に対してピニオン106のピッチ円径を(
1/3)倍にすれば、駆動車102の回転速度はローター41の回転速度に対して3倍の
増速となる。
なお、ローター歯車46とピニオン106の増速比は任意に設定することができる。ま
た、ローター歯車46とピニオン106の間に複数の増速ギアを設ける構造とすることが
できる。
【0119】
本実施形態によれば、振動体130の振動周波数及びローター外径を一定にした状態で
、伝達軸(駆動車軸104)の回転数の異なる駆動装置10を提供できる。減速ギアを用
いる場合は、伝達軸の回転速度を遅くすると共に、伝達軸の回転トルクを大きくすること
ができる。また、増速ギアを用いる場合には、伝達軸の回転速度を速くすることができる

【0120】
また、実施形態1に比べ、駆動車102及び第3機枠36を加えた分だけ厚さが増すが
、平面サイズは実施形態1と同等の15mm×15mm、厚さは2.5mm程度の扁平で
小型の駆動装置を実現できる。
(実施形態4)
【0121】
続いて、実施形態4に係る駆動装置について図6、図7を参照して説明する。実施形態
4は、圧電素子の表面に設けられる複数の電極を選択的に2状態に接続する接続切換手段
により、振動体の振動方向を切換えることでローターの回転方向を切換えることを特徴と
する。
【0122】
図6に示すように、圧電素子134の表面には、電極131a,131b,131c,
131d,131eが形成されている。電極131bと電極131c、電極131dと1
31e、は、それぞれ電気的に接続されている。そして、各電極の接続を切換えるための
接続切換手段80を備えられている。
【0123】
接続切換手段80は、本実施形態では2状態切換えスイッチを例示しており、交流電源
(具体的には、制御回路部60の発振回路)に接続される端子81を共通端子として、ス
イッチ85,86とを有している。スイッチ85は端子82,83との接続を、スイッチ
86は端子83,84との接続を切換えることができる。
【0124】
なお、電極131aは端子83に接続、電極131bは端子82に接続、電極131e
は端子84に接続されている。
【0125】
実施形態1で説明したように、スイッチ85が端子82,83に接続された状態では、
電極131a,131b,131cと、補強板133との間に交流電圧が印加される。す
ると、電極131aの下面範囲の圧電素子134は矢印Xで表すように長手方向に伸縮し
、縦振動を行う。
【0126】
そして、電極131b,131cの下面範囲の圧電素子134も長手方向に伸縮するが
、それぞれが圧電素子134の対角方向に配設されているため、矢印Yに示すような面内
の屈曲振動を行う。
【0127】
このような状態では、実施形態1(図7、参照)に示すように、振動体130の振動に
よりローター41は図示R方向に回転する。
【0128】
次に、接続切換手段80にてスイッチ86を端子83,84に接続する。この際、スイ
ッチ85と端子82,83との接続は切断される。このような状態では、電極131a,
131d,131eと、補強板133との間に交流電圧が印加される。すると、電極13
1aの下面範囲の圧電素子134は矢印Xで表すように長手方向に伸縮し、縦振動を行う

【0129】
そして、電極131d,131eの下面範囲の圧電素子134も長手方向に伸縮するが
、それぞれが圧電素子134の対角方向に配設されているため、矢印yに示すような面内
の屈曲振動を行う。なお、このとき、電極131b,131cには電圧が印加されていな
い場合を表している。
【0130】
このような状態では、振動体130の振動によりローター41は実施形態1(図7、参
照)に示すよう方向とは逆方向(反時計回り)に回転する。
【0131】
振動体130は、圧電素子の伸縮により振動が励起される。従って、電極131a、3
1b、131cの接続と、電極131a、131d,131eの接続を選択的に接続する
ことで、圧電素子134(圧電素子135も含む)の伸縮方向を変えることにより振動方
向が変わる。このように振動体130の振動方向を切換えることによって、回転方向を容
易に変えることができ、正逆回転可能な駆動装置10を実現することができる。
【0132】
なお、ローター41の正転、逆転の切換えは、筐体外部に操作部材を設けて随時切換え
る構成とすることができる。または、タイマーを備え、まず正転させ、一定時間経過後に
逆転させること、または正転と逆転とを一定の時間間隔で繰り返すことも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0133】
本発明の駆動装置は、薄型化及び小型化が可能であり、精密機器の駆動源として活用で
きる他、電磁ノイズを発生しないこと、電磁ノイズの影響を受けないことから、通信機器
との組み合わせ、医療機器として使用することに高い利便性を有する。
【符号の説明】
【0134】
10…駆動装置、20…第1機枠、30…第2機枠、40…ローター車、41a,41
b,41c…ローター、43…回転軸、60…制御回路部、70…振動体付勢部材、13
0…振動体。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸に軸止される円盤状のローターと、
交流電圧を印加することにより面内振動して前記ローターを回転する板状の振動体と、
前記振動体を一定の付勢力で前記ローターの外周側面に当接させる振動体付勢部材と、
前記振動体の駆動制御を行う制御回路部と、
前記ローターと、前記振動体と、前記振動体付勢部材と、前記制御回路部とを収納する
筐体と、
前記筐体から外部に突設され、且つ前記ローターの回転が伝達される伝達軸と、
が備えられていることを特徴とする駆動装置。
【請求項2】
請求項1に記載の駆動装置において、
外径の異なる複数の前記ローターを有し、そのいずれかに前記振動体を当接させること
を特徴とする駆動装置。
【請求項3】
請求項2に記載の駆動装置において、
前記複数のローターが、前記筐体の底面方向から外径が小さいものから大きいものに順
次積み重ねて配設されていることを特徴とする駆動装置。
【請求項4】
請求項2または請求項3に記載の駆動装置において、
前記複数のローターのうち選択されたローターと、前記振動体との厚さ方向の当接位置
を合わせるスペーサーが設けられていることを特徴とする駆動装置。
【請求項5】
請求項2ないし請求項4のいずれか一項に記載の駆動装置において、
前記振動体付勢部材は、前記複数のローターそれぞれの外径に合わせて平面方向の位置
を移動して配設可能であることを特徴とする駆動装置。
【請求項6】
請求項1に記載の駆動装置において、
前記伝達軸が、前記ローターの回転軸と共通であることを特徴とする駆動装置。
【請求項7】
請求項1に記載の駆動装置において、
前記ローターと前記伝達軸との間に、減速機構または増速機構を有することを特徴とす
る駆動装置。
【請求項8】
請求項1に記載の駆動装置において、
前記振動体が、圧電素子と、前記圧電素子に設けられる複数の電極とを有し、
接続切換手段により前記複数の電極を2状態に接続切換えすることで前記振動体の振動
方向を切換え、前記ローターの回転方向を切換えることを特徴とする駆動装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate


【公開番号】特開2010−246177(P2010−246177A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−88869(P2009−88869)
【出願日】平成21年4月1日(2009.4.1)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】