駆動装置
【課題】凝着の発生を抑制しつつ、異音の発生を抑制する
【解決手段】駆動装置1は、振動を発生させるアクチュエータ本体4とアクチュエータ本体4に設けられてアクチュエータ本体4の振動に伴って周回運動することにより駆動力を出力する駆動子3,3とを有する超音波アクチュエータ2と、駆動子3,3が当接していて、超音波アクチュエータ2に対して相対移動する移動体13とを備えている。移動体13における、駆動子3,3と当接する当接面13bは、平滑部13c,13c,…と、平滑部13cよりも凹んだ凹部13d,13d,…とが混在している。
【解決手段】駆動装置1は、振動を発生させるアクチュエータ本体4とアクチュエータ本体4に設けられてアクチュエータ本体4の振動に伴って周回運動することにより駆動力を出力する駆動子3,3とを有する超音波アクチュエータ2と、駆動子3,3が当接していて、超音波アクチュエータ2に対して相対移動する移動体13とを備えている。移動体13における、駆動子3,3と当接する当接面13bは、平滑部13c,13c,…と、平滑部13cよりも凹んだ凹部13d,13d,…とが混在している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動型アクチュエータと相対移動部材とを備えた駆動装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、駆動装置として、振動型アクチュエータと相対移動部材とを備えたものが知られている。詳しくは、振動型アクチュエータは、圧電素子を含んで構成されたアクチュエータ本体と、該アクチュエータ本体に設けられた駆動子とを有している。この振動型アクチュエータは、駆動子が相対移動部材に当接するように配置されている。そして、駆動装置は、アクチュエータ本体に振動を発生させて、その振動に伴って駆動子を楕円運動させることによって、相対移動部材又は振動型アクチュエータを相対移動させる。
【0003】
このように、振動型アクチュエータは、駆動子と相対移動部材との間の摩擦力を介して駆動力を出力するため、相対移動部材のうち、駆動子が当接する当接面の摩耗が問題となる。その一方で、当接面の摩耗を抑制すべく、当接面を鏡面加工すると、駆動子と当接面との間でビビリ音が発生してしまい、実用上、好ましくない。
【0004】
そこで、特許文献1に係る駆動装置においては、相対移動部材のうち、駆動子が当接する当接面に研磨条痕を形成して、当接面の中心線平均粗さが0.05μm以上1.0μmとなるようにしている。こうすることで、当接面の摩耗を抑えつつ、当接面でのビビリ音の発生を抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−331687号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、前述のように、駆動子と相対移動部材との間の摩擦力を介して駆動力を出力する駆動装置においては、当接面における凝着の発生が問題となる。当接面上には微小な凹凸部が存在するが、この凹凸部のうち凸部に極めて大きな圧力が作用することによって、凸部が塑性変形したり、凸部が摩耗して摩耗粉が生成される。この塑性変形した部分や摩耗粉にさらに圧力が作用することによって、塑性変形した部分や摩耗粉が当接面で凝着してしまう。凝着が発生すると、摩擦係数が異常に高くなり、駆動性能が著しく悪化する。
【0007】
前記特許文献1に係る駆動装置では、当接面における摩耗を抑制すべく、当接面の表面粗さを規定しているものの、凝着を抑制する点においては不十分である。
【0008】
ただし、当接面において凸部をなくすべく、前述の如く、当接面を鏡面加工すると、駆動子と当接面との間で異音が発生してしまい、実用上、好ましくない。
【0009】
ここに開示された技術は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、異音の発生を抑制しつつ、凝着の発生を抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
ここに開示された駆動装置は、振動を発生させるアクチュエータ本体と該アクチュエータ本体に設けられて該アクチュエータ本体の振動に伴って周回運動することにより駆動力を出力する駆動子とを有する振動型アクチュエータと、前記駆動子が当接していて、前記振動型アクチュエータに対して相対移動する相対移動部材とを備えている。そして、前記相対移動部材における、前記駆動子と当接する当接面は、平滑部と、該平滑部よりも凹んだ凹部とが混在しているものとする。
【発明の効果】
【0011】
前記駆動装置によれば、当接面は、凹部の存在により適度な粗さを有する一方で、平滑部の存在により凸状に突出する部分が少ない形状となる。その結果、当接面での異音の発生を抑制しつつ、当接面での凝着の発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態に係る駆動装置の斜視図である。
【図2】駆動装置の分解斜視図である。
【図3】アクチュエータ本体の分解斜視図である。
【図4】アクチュエータ本体の概略構成を示す概略正面図である。
【図5】1次モードの伸縮振動によるアクチュエータ本体の変位を示す概念図である。
【図6】2次モードの屈曲振動によるアクチュエータ本体の変位を示す概念図である。
【図7】1次モードの伸縮振動及び2次モードの屈曲振動の合成振動によるアクチュエータ本体の変位を示す概念図である。
【図8】超音波アクチュエータによる移動体の駆動を説明するための概念図であって、(A)は駆動前の状態、(B)はアクチュエータ本体が長手方向に伸張することで一方の駆動子によって移動体を駆動する状態、(C)はアクチュエータ本体が長手方向に収縮することで他方の駆動子によって移動体を駆動する状態を示す。
【図9】当接面の概略断面図であって、(A)は従来の当接面を、(B)は本実施形態に係る当接面を示す。
【図10】当接面の画像を取得するための撮影装置の概略説明図である。
【図11】平滑パラメータが1%の当接面の、(A)輝度分布と、(B)表面画像である。
【図12】平滑パラメータが15%の当接面の、(A)輝度分布と、(B)表面画像である。
【図13】平滑パラメータが20%の当接面の、(A)輝度分布と、(B)表面画像である。
【図14】平滑パラメータが30%の当接面の、(A)輝度分布と、(B)表面画像である。
【図15】検査運転時に観測される位相差を表すグラフである。
【図16】その他の実施形態に係る駆動装置の斜視図である。
【図17】別のその他の実施形態に係る駆動装置の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の例示的な実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0014】
《発明の実施形態》
図1は、本発明の実施形態に係る駆動装置1の斜視図であり、図2は、駆動装置1の分解斜視図である。駆動装置1は、移動体13と、超音波アクチュエータ2と、該超音波アクチュエータ2を駆動制御する制御装置(図示省略)とを備えている。
【0015】
移動体13は、固定体としての基台(図示省略)上に固定されたガイド12に摺動可能に取り付けられている。つまり、移動体13は、ガイド12が延びる方向に沿って移動可能に構成されている。これらガイド12の延びる方向が移動体13の可動方向となる。この移動体13にはアルミナからなる当接部材13aが接着固定されていている。尚、移動体13に接着される当接部材13aの材質は、アルミナに限られるものではなく、任意の材質を用いて形成することができる。そして、前記超音波アクチュエータ2は、この当接部材13aの当接面13bに後述する駆動子3,3が当接する状態で配設されている。この移動体13は、前記超音波アクチュエータ2が発生する駆動力を受け、前記超音波アクチュエータ2に対して相対的に移動可能に構成された相対移動部材を構成する。
【0016】
前記超音波アクチュエータ2は、図1,2に示すように、振動を発生させるアクチュエータ本体4と、該アクチュエータ本体4に設けられて該アクチュエータ本体4の駆動力を移動体13に伝達する駆動子3,3と、アクチュエータ本体4を保持するホルダ5と、ホルダ5を支持する支持体6と、アクチュエータ本体4を移動体13へ付勢するための板バネ7とを有している。この超音波アクチュエータ2が振動型アクチュエータを構成する。
【0017】
前記アクチュエータ本体4は、圧電素子で構成されていて、略長方形状の互いに対向する一対の主面と、この主面と直交して該主面の長手方向に延びる、互いに対向する一対の長辺側面と、これら主面及び長辺側面の両方と直交して該主面の短手方向に延びる、互いに対向する一対の短辺側面とを有する略直方体状をしている。
【0018】
図3に、アクチュエータ本体4の分解斜視図を示す。アクチュエータ本体4は、図3に示すように、圧電体層(圧電素子)41,41,…と内部電極層42,44,43,44とを交互に積層して構成される。内部電極層42,44,43,44は、積層方向に圧電体層41を介して交互に配された、第1給電電極層42と共通電極層44と第2給電電極層43と共通電極層44とを含んでいる。これら第1給電電極層42と共通電極層44と第2給電電極層43と共通電極層44とを1セットとして、複数セットの内部電極層42,44,43,44が圧電体層41を介在させた状態で繰り返し積層されている。尚、積層方向の両端には、圧電体層41,41が位置するようになっている。これら第1給電電極層42、第2給電電極層43及び共通電極層44,44のそれぞれは、各圧電体層41の主面上に印刷されている。
【0019】
前記各圧電体層41は、例えばチタン酸ジルコン酸鉛などのセラミック材料からなる絶縁体層であって、前記アクチュエータ本体4と同様に、一対の主面と、一対の長辺側面と、一対の短辺側面とを有する略直方体状をしている。また、各圧電体層41のそれぞれの長辺側面には、長手方向両端部に第1及び第2外部電極46,47が形成され、該第1及び第2外部電極46,47よりも長手方向内側には2つの共通外部電極48,48が形成されている。すなわち、圧電体層41の各長辺側面には、第1外部電極46、共通外部電極48、共通外部電極48、第2外部電極47が、長手方向に沿ってこの順で、互いに間隔を空けて並んでいる。
【0020】
前記各共通電極層44は、圧電体層41の主面の略全面に亘って設けられた略長方形状をしている。また、各共通電極層44のそれぞれの長辺部からは、圧電体層41の長辺側面に形成された共通外部電極48,48まで延びる引出電極44a,44aが形成されている。
【0021】
前記第1及び第2給電電極層42,43は、図4に示すように、圧電体層41の主面をその長手方向及び短手方向にそれぞれ2等分してなる4つの領域のうち該主面の対角線方向に位置する2対の領域のうち一方の対の領域にそれぞれ形成された一対の第1電極42a,42bと、他方の対の領域にそれぞれ形成された一対の第2電極43a,43bとを有する。これら第1電極42a,42b及び第2電極43a,43bは、圧電体層41を挟んで共通電極層44と対向している。そして、第1給電電極層42においては、第1電極42a,42bが第1導通電極42cを介して導通している。また、第2給電電極層43においては、第2電極43a,43bが第2導通電極43cを介して導通している。また、第1電極42a,42bのそれぞれからは、圧電体層41の近接する長辺側面に形成された第1外部電極46,46まで延びる引出電極42d,42dが形成されている。第2電極43a,43bのそれぞれからは、圧電体層41の近接する長辺側面に形成された第2外部電極47,47まで延びる引出電極43d,43dが形成されている。
【0022】
これら圧電体層41,41,…と内部電極層42,44,43,44とを交互に積層することで構成されたアクチュエータ本体4の各長辺側面においては、各圧電体層41の共通外部電極48,48が積層方向に並んで一まとまりに形成されている。この外部電極48には、前記共通電極層44,44に形成された引出電極44a,44aが電気的に接続されている。こうして、異なる圧電体層41,41,…に設けられた共通電極層44,44,…は、共通外部電極48,48を介して互いに導通している。
【0023】
同様に、アクチュエータ本体4の各長辺側面においては、各圧電体層41の第1外部電極46が積層方向に並んで一まとまりに形成されていると共に、各圧電体層41の第2外部電極47が積層方向に並んで一まとまりに形成されている。第1外部電極46,46には、前記第1電極42a,42bからの引出電極42d,42dが電気的に接続されている。また、第2外部電極47,47には、前記第2電極43a,43bからの引出電極43d,43dが電気的に接続されている。こうして、第1電極42a,42bは、第1導通電極42c及び第1外部電極46,46を介して、異なる圧電体層41,41,…に設けられた第1電極42a,42bと互いに導通している。また、第2電極43a,43bは、第2導通電極43c及び第2外部電極47,47を介して、異なる圧電体層41,41,…に設けられた第2電極43a,43bと互いに導通している。これら外部電極46,47,48には、制御装置からの信号線が接続される。アクチュエータ本体4は、外部電極46,47,48を介して給電される。
【0024】
そして、アクチュエータ本体4の一方の長辺側面(すなわち、後述する屈曲振動の振動方向を向く一対の面のうちの一方の面。以下、設置面ともいう)40aには、2個の駆動子3,3が設けられている。
【0025】
これら駆動子3,3は、円柱状の部材であって、ジルコニア、アルミナ、窒化ケイ素、炭化ケイ素、タングステンカーバイド等で形成されている。駆動子3,3は、その軸方向がアクチュエータ本体4の厚み方向を向くように配設されている。駆動子3,3は、設置面40aに対して接着剤を介して線接触状に取り付けられている。接着剤としては、アクチュエータ本体4の材料及び駆動子3の材料よりも柔らかいことが望ましい。具体的には、合成樹脂、特にエポキシ樹脂、シリコーン樹脂が挙げられる。このような材料を用いることによりアクチュエータ本体4の後述する振動をできるだけ阻害せずに駆動子3,3と設置面40aとの間の固定を実現することができる。
【0026】
また、駆動子3,3が設けられた位置は、設置面40aにおいて、アクチュエータ本体4の長手方向両端部から該設置面40aの全長の30〜35%距離だけ内側に入った位置であり、即ち、アクチュエータ本体4の後述する屈曲振動の2次モードの腹の位置であって、振動が最も大きくなる位置である。
【0027】
このように構成されたアクチュエータ本体4は、前記外部電極48をグランドに接続し、前記第1及び第2外部電極46,47に所定周波数の交流電圧を位相が90°ずれた状態で印加することによって、圧電体層41の主面の対角線方向に位置する一方の対の第1電極42a,42bと、他方の対の第2電極43a,43bとに互いに位相が90°ずれた交流電圧が印加され、その長手方向への縦振動(いわゆる、伸縮振動)とその短手方向への屈曲振動(いわゆる、横振動)とが誘起される。
【0028】
縦振動の共振周波数及び屈曲振動の共振周波数はそれぞれ、アクチュエータ本体4、即ち、アクチュエータ本体4の材料、形状等により決定される。さらに、両共振周波数は、アクチュエータ本体4を支持する力及び支持する部分によっても影響を受ける。これらを考慮して、両共振周波数を略一致させ、その近傍の周波数の交流電圧を位相を90°ずらした状態で第1及び第2外部電極46,47のそれぞれに印加する。例えば、縦振動の1次モード(図5参照)の共振周波数と屈曲振動の2次モード(図6参照)の共振周波数とが一致するようにアクチュエータ本体4の形状等を設計して、該共振周波数近傍の交流電圧を前述の如く、位相を90°ずらして印加することによって、アクチュエータ本体4には、縦振動の1次モードと屈曲振動の2次モードとが調和的に誘起され、図7(A)、(B)、(C)、(D)に示す形状の変化を順番に起こす。
【0029】
その結果、アクチュエータ本体4に設けられた各駆動子3が該アクチュエータ本体4の主面と平行な平面(図7における紙面と平行な面)、即ち、長手方向と短手方向とを含む平面(さらに換言すれば、縦振動の振動方向と屈曲振動の振動方向とを含む平面)内で略楕円運動、即ち、周回運動を行う。
【0030】
このように構成されたアクチュエータ本体4は、複数の振動の腹を有する。ここで、振動の腹とは振動の変位が極大となる箇所であり、本実施形態においては振動の腹の部分はアクチュエータ本体4の両短辺側面に位置する計2箇所の縦振動の腹と、アクチュエータ本体4の一方の長辺側面及び他方の長辺側面の両端部の4箇所、さらに一方の長辺側面及び他方の長辺側面における両端部からアクチュエータ本体4の長手方向の30〜40%内側の部分の4箇所の計8箇所の屈曲振動の腹とがある。すなわち、この超音波アクチュエータ2は、伸縮振動の腹と屈曲振動の腹とを合わせて10箇所の振動の腹がある。そして、前記駆動子3,3は、一方の長辺側面である設置面40aにおける長手方向両端部から内側へ30〜35%入った腹の部分に設けられている。
【0031】
ホルダ5は、ポリカボネート(ガラス繊維入り)で形成されている。このホルダ5は、図1,2に示すように、アクチュエータ本体4の、駆動子3,3が設けられていない方の長辺側面に取り付けられている。詳しくは、ホルダ5は、アクチュエータ本体4の該長辺側面の長手方向中央部において、該アクチュエータ本体4を厚み方向から挟持するように取り付けられている。このアクチュエータ本体4の長辺側面の長手方向中央部は、アクチュエータ本体4の縦振動の節の部分である。また、ホルダ5は、アクチュエータ本体4よりも、該アクチュエータ本体4の厚み方向に突出している。
【0032】
支持体6は、板状に形成されている。この支持体6は、基台に固定されたベース部材14に取り付けられている。詳しくは、支持体6には、2つの貫通孔62,62が厚み方向に貫通形成されている。支持体6は、この貫通孔62,62に挿通されたビス16,16によってベース部材14に取り付けられる。また、支持体6の中央には、ホルダ5を支持するための開口部61が厚み方向に貫通形成されている。ホルダ5の、アクチュエータ本体4の厚み方向に突出する端部が、この開口部61に挿入される。尚、ホルダ5の、アクチュエータ本体4からの突出量によっては、開口部61は支持体6を貫通していなくてもよい。こうして、ホルダ5が取り付けられたアクチュエータ本体4が支持体6,6に支持される。アクチュエータ本体4は、駆動子3,3が移動体13の当接面13bに当接した状態で支持体6,6に支持される。この開口部61は、アクチュエータ本体4の短手方向に延びる長孔形状をしており、ホルダ5は、開口部61内を長孔形状に沿って移動することができる。これにより、アクチュエータ本体4は、支持体6,6によってアクチュエータ本体4の短手方向に移動可能に支持されている。
【0033】
板バネ7は、アクチュエータ本体4の、ホルダ5が取り付けられた長辺側面と対向する位置に設けられている。詳しくは、板バネ7は、アクチュエータ本体4の、ホルダ5が取り付けられた長辺側面と、ベース部材14との間に設けられている。また、板バネ7の長手方向両端部には、ベース部材14に設けられたネジ15,15の先端が嵌る開口部71,71が形成されている。詳しくは、ベース部材14にはアクチュエータ本体4の短手方向と平行にネジ孔が貫通形成されており、このネジ孔にネジ15,15が螺合されている。これらネジ15,15の先端部は、ベース部材14よりもアクチュエータ本体4側に突出するようになっている。そして、ベース部材14からアクチュエータ本体4側に突出したネジ15,15の先端部は、板バネ7の開口部71,71に嵌っている。このように構成された板バネ7は、長手方向中央部においてアクチュエータ本体4に取り付けられたホルダ5に当接している。つまり、ベース部材14のネジ15,15をアクチュエータ本体4側へ突き出すことによって、板バネ7がホルダ5を介してアクチュエータ本体4を移動体13側へ押圧するようになっている。
【0034】
次に、超音波アクチュエータ2の組み立てについて説明する。
【0035】
まず、アクチュエータ本体4の、駆動子3,3が設けられていない方の長辺側面の長手方向中央部にホルダ5を接着固定する。次に、一方の支持体6をベース部材14にビス16,16により取り付ける。その後、アクチュエータ本体4に取付けたホルダ5の一端部を支持体6の開口部61に挿入し、さらに、ホルダ5の他端部に他方の支持体6の開口部61を嵌め込み、該支持体6をベース部材14にビス16,16により取り付ける。こうして、アクチュエータ本体4を支持体6,6で支持する。続いて、アクチュエータ本体4とベース部材14の間に板バネ7を配設する。そして、ベース部材14のネジ孔にネジ15,15を螺合させ、ネジ15,15の先端部を板バネ7の開口部71,71に嵌め込む。その状態から、ネジ15,15をアクチュエータ本体4側にさらに突出させることによって、板バネ7でホルダ5を押圧して、アクチュエータ本体4を移動体13側へ付勢する。その結果、駆動子3,3が移動体13に押し付けられる。
【0036】
このように組み立てられた超音波アクチュエータ2の外部電極46、47、48に制御装置からの信号線が接続される。
【0037】
制御装置は、外部からの動作指令を受けて、その動作指令に応じた周波数の交流電圧を動作指令に応じた位相差で第1及び第2外部電極46,47に印加する。こうして、制御装置は、アクチュエータ本体4に縦振動と屈曲振動とを調和的に発生させて、駆動子3,3を図7に示すような周回運動させることで、移動体13を移動させる。さらに詳しくは、制御装置は、アクチュエータ本体4の異常発熱を防止すべく、アクチュエータ本体4の縦振動と屈曲振動との共通の共振周波数よりも少し高い周波数の交流電圧を第1及び第2外部電極46,47に印加する。このとき、かかる交流電圧は、互いに位相が90°ずれた状態で第1及び第2外部電極46,47に印加される。
【0038】
アクチュエータ本体4が、縦振動と屈曲振動との合成振動を行うと、駆動子3,3はアクチュエータ本体4の長手方向と短手方向とを含む平面内において略楕円運動を行う。こうすることで、駆動子3,3は、移動体13の当接面13bとの摩擦力の増減を周期的に繰り返しながら、アクチュエータ本体4の長手方向への駆動力を摩擦力を介して移動体13に付与しており、移動体13はガイド12に沿って移動する。このアクチュエータ本体4の長手方向(ガイド12が延びる方向と一致する)が、駆動子3,3が駆動力を出力する方向である駆動方向に相当する。
【0039】
以下に、超音波アクチュエータ2による移動体13の駆動を、図8を参照してさらに詳しく説明する。アクチュエータ本体4が長手方向(縦振動の振動方向)に伸張するとき、一方(例えば、図8の左側)の駆動子3は、図8(B)に示すように、移動体13の当接面13bとの間の摩擦力を駆動前の状態(即ち、単に設置しただけの状態)よりも増大させながら変位するため、この摩擦力によって移動体13を該長手方向における該一方の駆動子3が変位する側(図8の左側)へ移動させる。このとき、他方(図8の右側)の駆動子3は、該長手方向において一方の駆動子3とは逆向きに変位するが、該駆動子3は移動体13から離れた状態で変位するか、又は移動体13の当接面13bとの間の摩擦力を駆動前の状態よりも減少させながら変位するため、移動体13の移動にはほとんど影響を与えない。
【0040】
一方、アクチュエータ本体4が長手方向に収縮するときは、他方(図8の右側)の駆動子3は、図8(C)に示すように、移動体13の当接面13bとの間の摩擦力を駆動前の状態(即ち、単に設置しただけの状態)よりも増大させながら変位するため、この摩擦力によって移動体13を該長手方向における該他方の駆動子3が変位する側(図8の左側)へ移動させる。この移動方向は、前述した、アクチュエータ本体4の伸張時における一方の駆動子3による移動体13の移動方向と同じである。このとき、一方(図8の左側)の駆動子3は、該長手方向において他方の駆動子3とは逆向きに変位するが、該駆動子3は移動体13から離れた状態で変位するか、又は移動体13の当接面13bとの間の摩擦力を駆動前の状態よりも減少させながら変位するため、移動体13の移動にはほとんど影響を与えない。
【0041】
尚、図8においては、移動体13の移動に影響を与えない方の駆動子3は移動体13から離れているが、必ずしも離れている必要はない。すなわち、駆動子3は、移動体13を移動させない程度の摩擦力で該移動体13に当接している状態であってもよい。
【0042】
こうして、一方の駆動子3と他方の駆動子3とは、位相が180°ずれた状態で交互に移動体13を所定の一方向へ移動させる。尚、前記交流電圧の位相を−90°ずらした状態で第1及び第2外部電極46,47に印加することによって、駆動子3,3が出力する駆動力を逆向きにすることができ、移動体13を他方向へ移動させることができる。
【0043】
ここで当接面13bについてさらに詳しく説明する。
【0044】
当接面13bは、一般的に平面研磨盤や遊離砥粒を用いた機械式ラップによって加工される場合が多い。この当接面13bには、或る程度の平面度及び貼付け基準面(当接面13bと反対側の面)に対する大きなうねりなどがない平行度が要求される。しかしながら、平行度、平面度に関して言えば、最初の加工となる平面研削加工で数μm〜10μm程度に加工をしておけば、その後の加工においてそれほど大きく変化することがないため、大きな問題になることはない。最も問題となるのは最終仕上げ後の面形状である。
【0045】
通常、汎用的な遊離砥粒を用いたラップ加工を行った場合には、図9(A)のような凹凸を有する面形状となる。このときの中心線平均粗さの値は、使用する遊離砥粒の大きさや砥粒の種類で決定されることが一般的であり、中心線平均粗さの値は十分にコントロールすることが可能である。
【0046】
しかしながら、このような通常のラップ加工で形成された面は、必ず凹凸部を有する。この凹凸部のうちの凸部に駆動子3が当接して極めて大きな圧力が作用すると、凸部が塑性変形したり、凸部が摩耗して摩耗粉が生成されたりする。その結果、塑性変形した部分や摩耗粉が当接面13bで凝着してしまう。凝着が発生した部分は、凝着が発生していない部分と比較して、摩擦係数が異常に高くなり、駆動性能が著しく悪化する。
【0047】
例えば、本実施形態のように、駆動子3が柱状に形成され、その軸がアクチュエータ本体4の厚さ方向を向く状態で駆動子3がアクチュエータ本体4の長辺側面に取り付けられている構成の場合、当接面13bにおいて、駆動子3の軸方向の全領域に亘って一様に凝着現象が発生することは少なく、駆動子3の軸方向の一部分だけに凝着が発生する場合が多い。このような状態に陥ると、駆動子3は、その軸方向の全領域に亘って当接面13bと一様に当接するのではなく、部分的に当接面13bと当接する状態になる。そうすると、当接面13bの凸部に作用する圧力がさらに大きくなり、凝着現象がより発生し易くなる。その結果、凝着部分の面積がさらに増大し、超音波アクチュエータ2の駆動性能を大きく低下させる。
【0048】
また、大きな推力が必要な場合にはアクチュエータ本体4への板バネ7による付勢力を大きくする手法が取られるが、この場合には凝着現象が特に発生し易くなる。
【0049】
さらに、移動体13を静止させる際に、電力の供給を停止するのではなく、アクチュエータ本体4に屈曲振動だけ、又は伸縮振動だけを行わせる場合がある。すなわち、移動体13を静止させるべく、駆動子3,3を移動体13の当接面13bの法線方向へのみ振動させる場合がある。かかる場合には、駆動子3,3が当接面13bの同じ部分に当接したまま振動を繰り返すと共に、それに加えて、当接面13bに作用する圧力がさらに大きくなるため、凝着現象がより発生し易くなる。
【0050】
それに対して、本実施形態では、移動体13の当接面13bを図9(B)のような面形状としている。つまり、当接面13bを、平滑部13c,13c,…と凹部13d,13d,…とが混在する状態に形成している。こうすることによって、当接面13bにおける摩耗粉の凝着を抑制することができる。それに加えて、異音の発生も抑制することができる。この平滑部13c及び凹部13dの幅は、少なくとも、駆動子3の幅(詳しくは、駆動方向への幅)よりも狭く、駆動子3の幅に比べて微小である。さらに、これら平滑部13c,13c,…と凹部13d,13d,…とは不規則に混在していることが好ましい。
【0051】
以下に、様々な面形状の当接面13bに関して行った駆動性能比較について説明する。
【0052】
当接面13bは、以下の方法で形成した。まず、平面研削盤等で当接部材13aの平行度および当接面13bの平面度が所定の範囲になるように当接部材13aを加工する。その後、粗い粒度の遊離砥粒、例えば、#100〜#1000程度のダイヤモンド砥粒を用いて当接面13bをラップする。このときには、当接面13bには浅いスクラッチ傷や深いスクラッチ傷が不規則に形成され、その結果、当接面13bには、様々な凹部及び凸部が不規則に形成される。次に、加工能力の低い#15000程度の微細ダイヤモンド砥粒、例えば、平均粒径1μm程度のダイヤモンド砥粒(遊離砥粒)を用いて、当接面13bの最終ラップを行う。平均粒径1μmのダイヤモンドは加工能力が極端に低いため、当接面13bの凹凸部のうち、凸部の先端部分が主に加工される。つまり、粗い砥粒で研磨した後、そのときできた凹部を消さない程度の細かい砥粒でラップする。その結果、当接面13bは、図9(B)に示すように、平滑部13c,13c,…と凹部13d,13d,…とが不規則に混在した面形状となる。つまり、凹部13dの幅は、始めのラップ加工における粗い砥粒の粒径と同程度である。また、平滑部13cとして加工される前の凸部の幅も、始めのラップ加工における粗い砥粒の粒径と同程度であるため、平滑部13cの幅も始めのラップ加工における粗い砥粒の粒径と同程度となる。
【0053】
そして、最終ラップの度合い、例えば、処理時間を調整することによって、当接面13bにおける平滑部13c,13c,…と凹部13d,13d,…との割合を変えることができる。
【0054】
尚、当接面13bのラップは、#100〜#1000程度、平均粒径1μm程度のダイヤモンド砥粒で行ったが、これに限られるものではない。平滑部13c,13c,…と凹部13d,13d,…とが混在した当接面13bを形成できる限りにおいては、他の粒度の組み合わせやGC砥粒やWA砥粒でも構わない。
【0055】
ここで、各当接面13bにおける平滑部13c,13c,…と凹部13d,13d,…との割合を表す指標として平滑パラメータを用いた。平滑パラメータは以下のようにして求めた。まず、マイクロスコープ9で当接面13bの画像を取得し、該取得画像の輝度分布を求める。詳しくは、図10に示すように、当接部材13aをステージ91上に設置する。このとき、当接部材13aは、当接面13bがマイクロスコープ9の鏡筒の光軸と直交するように設置される。そして、光源から光を当接面13bに照射して、その反射光、即ち、当接面13bの表面画像を、マイクロスコープ9の撮像素子で取得する。このとき、光源からの光は、鏡筒内に設けられたハーフミラー等によって、鏡筒の光軸と一致する方向に進んで当接面13bに照射される。光源からの光の入射方向と鏡筒の光軸とが一致しているため、当接面13bのうち、法線が光軸方向を向く(法線と光軸とのなす角が小さい)部分ほど輝度が高く、法線が光軸方向から逸れた(法線と光軸とのなす角が大きい)部分ほど輝度が低くなる。本実施例では、マイクロスコープとしてキーエンス製のVHX−200を用いた。得られた表面画像の輝度分布を、0〜255階調で取得した。そして、0階調を0%とし、輝度の最大値(即ち、255階調の輝度ではなく、得られた輝度分布中の最大値)を100%として、輝度が85%〜100%に該当する部分の面積を求めた。本実施例では、この輝度が85%〜100%に該当する部分を平滑部とし、当接面13bの画像を取得した部分の全面積に対する平滑部の面積比を平滑パラメータとした。
【0056】
例えば、平滑パラメータが1%,15%,20%,30%の当接面13bの輝度分布及び表面画像を図11〜図14に示す。平滑パラメータが1%の当接面13bは、従来のラップ方法で形成された面である。つまり、この当接面13bは、最終ラップ時の微細な砥粒に応じた凹凸部が満遍なく形成された面であり、輝度分布は、或る1つのピーク値を中心とした分布となる。平滑パラメータが15%,20%,30%の当接面13bの当接面13bは、最終ラップ時の砥粒の粒径を、それよりも前のラップ時の砥粒の粒径よりも極端に微細にして形成された面であって、平滑部13c,13c,…と凹部13d,13d,…とが不規則に混在する面である。これらの当接面13bの輝度分布は、平滑部13cに対応する相対的に高いピークと、凹部13dに対応する相対的に低いピークとを有している。つまり、平滑部13cは、その法線方向がマイクロメータ9の鏡筒の光軸と概ね一致する、即ち、法線方向と該光軸とのなす角が小さいため、輝度が高くなる。一方、凹部13dは、その法線方向がマイクロメータ9の鏡筒の光軸に対して大きく逸れる、即ち、法線方向と該光軸とのなす角が大きいため、輝度が低くなる。その結果、輝度分布は、相対的に高いピークと相対的に低いピークとの2つのピークを有するようになる。そして、高いピークは、輝度分布の0階調を0とし、輝度の最高値を100%としたときの、輝度が85%〜100%の領域に含まれている。つまり、当接面13に含まれる、輝度が85%〜100%の部分の割合によって、平滑部13cに相当する部分がどの程度含まれるかがわかる。
【0057】
そして、前記の方法で加工処理した様々な形状の当接面13bについて、凝着及び異音の発生の有無を以下のようにして調べた。まず、超音波アクチュエータ2により移動体13を凝着が発生し得る条件で往復駆動する運転(以下、試運転という)を行った。この試運転の後、超音波アクチュエータ2により移動体13を凝着の発生を調べるための条件で往復駆動する運転(以下、検査運転という)を行った。試運転では、ストロークが20mm、駆動子3,3の移動体13への付勢力が8N、移動速度が20mm/sであって、20mmのストローク中の3mm、10mm、17mmの位置の3箇所でアクチュエータ本体4に屈曲振動だけ発生させる停止モード(2つの交流電圧の位相差は180°)を行った。検査運転では、20mmのストロークを8mm/sで往復させ、その間に、アクチュエータ本体4に実際に印加される2つの交流電圧の位相差を観察した。そして、位相差に変動があったときには、そのとき駆動子3,3が当接している場所に凝着が発生していると判断した。凝着が発生している場合には、図15に示すような位相差が観測される。図15は、20mmのストロークを2往復する間の、2つの交流電圧の位相差である。図15では、20mmのストローク中の3mmと、10mmと、17mmの位置に凝着が発生し、位相変動が生じている。
【0058】
さらに、位相差の変動に加えて、異音が発生するか否かも調べた。異音の有無は、聴覚で聞き取れるか否かで判定した。
【0059】
尚、従来のラップ方法(例えば、#1000、#5000、#15000の順で砥粒の粒径を段階的に細かくしていくラップ方法)でラップ処理した当接面13bについても凝着及び異音の発生の有無を調べた。
【0060】
その結果を、表1に示す。表では、平滑パラメータを百分率で表している。表1中の比較例1は、従来のラップ方法で当接面13bをラップ処理したものである。比較例2,3及び実施例1〜8については、微細ダイヤモンド砥粒による最終ラップ処理時の処理時間、処理圧力、処理速度が異なる。これからわかるように、平滑パラメータが5%から65%の間では凝着が発生せず、5%未満では凝着が発生している。また、従来のラップ方法でも凝着が発生している。また、平滑パラメータが65%以上になると、当接面13bが鏡面に近くなり、駆動子3と当接面13bとの当接により異音が発生している。この異音は、表面粗さが小さい面同士がこすれるときに発生するビビリ音であると考えられる。以上より、当接面13bの平滑パラメータは、5〜60%が適していることがわかった。
【0061】
【表1】
【0062】
したがって、本実施形態によれば、当接部材13の当接面13bを、平滑部13c,13c,…と凹部13d,13d,…と混合させた形状に形成することによって、当接面13bにおける凝着の発生を抑制することができると共に、異音の発生を抑制することができる。つまり、平滑部13c,13c,…を存在させることによって、当接面13bにおける凸部が減少するため、駆動子3と当接面13bとの間の摩擦力が増大する部分を減少させることができる。その結果、当接面13bにおける摩耗粉の発生や凸部の塑性変形を抑制することができるため、ひいては、凝着の発生を抑制することができる。また、凹部13d,13d,…を存在させることによって、当接面13bに適度な表面粗さを確保することができるため、異音の発生を抑制することができる。
【0063】
また、当接面を、平滑パラメータが5%以上且つ60%以下の範囲内となるように形成することが好ましい。こうすることによって、当接面13bにおける凝着の発生を抑制することができると共に、異音の発生を抑制することができる。
【0064】
また、平滑部13c,13c,…と凹部13d,13d,…とを不規則に混在させることによって、平滑部13c,13c,…と凹部13d,13d,…とが混在する当接面13bであっても、アクチュエータ本体4に印加される2つの交流電圧の位相差の変動を抑制することができる。すなわち、平坦部13cと凹部13dが規則的に並んでいると、平坦部13cと凹部13dとの規則的な配列が位相変動に現れてしまう。駆動装置1においては、アクチュエータ本体4に実際に供給される2つの交流電圧の位相差を監視しながら、2つの交流電圧を調節して、超音波アクチュエータ2の制御を行ったり、さらには、2つの交流電圧の位相差を調節することによって、超音波アクチュエータ2の制御を行うことがある。つまり、駆動装置1の制御性においては、2つの交流電圧の位相差は非常に重要なものである。それにもかかわらず、2つの交流電圧の位相差が変動してしまうと、超音波アクチュエータ2を所望の通りに制御することが難しくなる。それに対して、平滑部13c,13c,…と凹部13d,13d,…とを不規則に混在させることによって、平坦部13cと凹部13dとの配列が位相変動に与える影響を抑えることができる。その結果、2つの交流電圧の位相差の変動を抑制することができるため、超音波アクチュエータ2の制御性を向上させることができる。
【0065】
《その他の実施形態》
本発明は、前記実施形態について、以下のような構成としてもよい。
【0066】
すなわち、前記実施形態では、平滑部13c,13c,…と凹部13d,13d,…とを有する当接面13bを遊離砥粒によるラップ処理で形成しているが、これに限られるものではない。平滑部13c,13c,…と凹部13d,13d,…とを有する当接面13bを形成することができる方法であれば、任意の方法を採用することができる。
【0067】
また、超音波アクチュエータ2は、アクチュエータ本体4に1次の伸縮振動と2次の屈曲振動とを発生させているが、これに限られるものではない。アクチュエータ本体4の振動により駆動子3,3から駆動力を出力させることができる構成であれば、任意の次数の、任意の様式の振動を発生させるアクチュエータ本体を採用することができる。
【0068】
さらに、前記実施形態では、超音波アクチュエータ2によって移動体13を移動させているが、これに限られるものではない。例えば、駆動子3,3がベース部材14に当接する状態で超音波アクチュエータ2が移動体13に取り付けられる構成であってもよい。かかる構成の場合、アクチュエータ本体4を振動させて駆動子3,3を周回運動させることによって、超音波アクチュエータ2が取り付けられた移動体13がベース部材14に対して移動することになる。つまり、駆動子3とベース部材14の当接面との間の摩擦力を介して駆動力が出力される。この場合には、ベース部材14の当接面が、平滑部と凹部とが混在した形状に形成される。こうすることで、ベース部材14の当接面における異音の発生を抑制しつつ、凝着の発生を抑制することができる。
【0069】
また、前記実施形態では、駆動子3,3がアクチュエータ本体4の長辺側面に設けられているが、これに限られるものではない。例えば、駆動子3をアクチュエータ本体4の短辺側面に設けてもよい。この場合、アクチュエータ本体4は、その長手方向が移動体13の当接面13bの法線方向に一致するように配設される。
【0070】
さらに、前記実施形態では、アクチュエータ本体4は、圧電素子で構成されているが、これに限られるものではない。例えば、アクチュエータ本体4は、金属製の弾性体に圧電素子を取り付けて構成された共振器であってもよい。
【0071】
また、前記実施形態では、超音波アクチュエータの駆動力が付与されて駆動される相対移動部材としての移動体13は直方体であるが、これに限られるものではなく、相対移動部材の構成としては任意の構成を採用することができる。例えば、図16に示すように、可動体は所定の軸X回りに回動可能な円板体17であり、超音波アクチュエータの駆動子3,3が該円板体17の側周面17aに当接するように構成された駆動装置201を採用してもよい。かかる構成の場合、超音波アクチュエータを駆動すると、駆動子3,3の概略楕円運動によって、該円板体17が所定の軸X回りに回動させられる。また、図17に示すように、可動体は所定の軸X回りに回動可能な円板体18であり、超音波アクチュエータの駆動子3,3が該円板体18の平面部18aに当接するように構成された駆動装置301を採用してもよい。かかる構成の場合、超音波アクチュエータを駆動すると、駆動子3,3の概略楕円運動によって、該円板体18が駆動子3,3と当接部における接線方向に駆動され、結果として該円板体18が所定の軸X回りに回動させられる。
【0072】
尚、以上の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0073】
以上説明したように、本発明は、振動型アクチュエータと相対移動部材とを備えた駆動装置について有用である。
【符号の説明】
【0074】
1 駆動装置
2 超音波アクチュエータ
3 駆動子
4 アクチュエータ本体
13 移動体(相対移動部材)
13b 当接面
13c 平滑部
13d 凹部
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動型アクチュエータと相対移動部材とを備えた駆動装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、駆動装置として、振動型アクチュエータと相対移動部材とを備えたものが知られている。詳しくは、振動型アクチュエータは、圧電素子を含んで構成されたアクチュエータ本体と、該アクチュエータ本体に設けられた駆動子とを有している。この振動型アクチュエータは、駆動子が相対移動部材に当接するように配置されている。そして、駆動装置は、アクチュエータ本体に振動を発生させて、その振動に伴って駆動子を楕円運動させることによって、相対移動部材又は振動型アクチュエータを相対移動させる。
【0003】
このように、振動型アクチュエータは、駆動子と相対移動部材との間の摩擦力を介して駆動力を出力するため、相対移動部材のうち、駆動子が当接する当接面の摩耗が問題となる。その一方で、当接面の摩耗を抑制すべく、当接面を鏡面加工すると、駆動子と当接面との間でビビリ音が発生してしまい、実用上、好ましくない。
【0004】
そこで、特許文献1に係る駆動装置においては、相対移動部材のうち、駆動子が当接する当接面に研磨条痕を形成して、当接面の中心線平均粗さが0.05μm以上1.0μmとなるようにしている。こうすることで、当接面の摩耗を抑えつつ、当接面でのビビリ音の発生を抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−331687号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、前述のように、駆動子と相対移動部材との間の摩擦力を介して駆動力を出力する駆動装置においては、当接面における凝着の発生が問題となる。当接面上には微小な凹凸部が存在するが、この凹凸部のうち凸部に極めて大きな圧力が作用することによって、凸部が塑性変形したり、凸部が摩耗して摩耗粉が生成される。この塑性変形した部分や摩耗粉にさらに圧力が作用することによって、塑性変形した部分や摩耗粉が当接面で凝着してしまう。凝着が発生すると、摩擦係数が異常に高くなり、駆動性能が著しく悪化する。
【0007】
前記特許文献1に係る駆動装置では、当接面における摩耗を抑制すべく、当接面の表面粗さを規定しているものの、凝着を抑制する点においては不十分である。
【0008】
ただし、当接面において凸部をなくすべく、前述の如く、当接面を鏡面加工すると、駆動子と当接面との間で異音が発生してしまい、実用上、好ましくない。
【0009】
ここに開示された技術は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、異音の発生を抑制しつつ、凝着の発生を抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
ここに開示された駆動装置は、振動を発生させるアクチュエータ本体と該アクチュエータ本体に設けられて該アクチュエータ本体の振動に伴って周回運動することにより駆動力を出力する駆動子とを有する振動型アクチュエータと、前記駆動子が当接していて、前記振動型アクチュエータに対して相対移動する相対移動部材とを備えている。そして、前記相対移動部材における、前記駆動子と当接する当接面は、平滑部と、該平滑部よりも凹んだ凹部とが混在しているものとする。
【発明の効果】
【0011】
前記駆動装置によれば、当接面は、凹部の存在により適度な粗さを有する一方で、平滑部の存在により凸状に突出する部分が少ない形状となる。その結果、当接面での異音の発生を抑制しつつ、当接面での凝着の発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態に係る駆動装置の斜視図である。
【図2】駆動装置の分解斜視図である。
【図3】アクチュエータ本体の分解斜視図である。
【図4】アクチュエータ本体の概略構成を示す概略正面図である。
【図5】1次モードの伸縮振動によるアクチュエータ本体の変位を示す概念図である。
【図6】2次モードの屈曲振動によるアクチュエータ本体の変位を示す概念図である。
【図7】1次モードの伸縮振動及び2次モードの屈曲振動の合成振動によるアクチュエータ本体の変位を示す概念図である。
【図8】超音波アクチュエータによる移動体の駆動を説明するための概念図であって、(A)は駆動前の状態、(B)はアクチュエータ本体が長手方向に伸張することで一方の駆動子によって移動体を駆動する状態、(C)はアクチュエータ本体が長手方向に収縮することで他方の駆動子によって移動体を駆動する状態を示す。
【図9】当接面の概略断面図であって、(A)は従来の当接面を、(B)は本実施形態に係る当接面を示す。
【図10】当接面の画像を取得するための撮影装置の概略説明図である。
【図11】平滑パラメータが1%の当接面の、(A)輝度分布と、(B)表面画像である。
【図12】平滑パラメータが15%の当接面の、(A)輝度分布と、(B)表面画像である。
【図13】平滑パラメータが20%の当接面の、(A)輝度分布と、(B)表面画像である。
【図14】平滑パラメータが30%の当接面の、(A)輝度分布と、(B)表面画像である。
【図15】検査運転時に観測される位相差を表すグラフである。
【図16】その他の実施形態に係る駆動装置の斜視図である。
【図17】別のその他の実施形態に係る駆動装置の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の例示的な実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0014】
《発明の実施形態》
図1は、本発明の実施形態に係る駆動装置1の斜視図であり、図2は、駆動装置1の分解斜視図である。駆動装置1は、移動体13と、超音波アクチュエータ2と、該超音波アクチュエータ2を駆動制御する制御装置(図示省略)とを備えている。
【0015】
移動体13は、固定体としての基台(図示省略)上に固定されたガイド12に摺動可能に取り付けられている。つまり、移動体13は、ガイド12が延びる方向に沿って移動可能に構成されている。これらガイド12の延びる方向が移動体13の可動方向となる。この移動体13にはアルミナからなる当接部材13aが接着固定されていている。尚、移動体13に接着される当接部材13aの材質は、アルミナに限られるものではなく、任意の材質を用いて形成することができる。そして、前記超音波アクチュエータ2は、この当接部材13aの当接面13bに後述する駆動子3,3が当接する状態で配設されている。この移動体13は、前記超音波アクチュエータ2が発生する駆動力を受け、前記超音波アクチュエータ2に対して相対的に移動可能に構成された相対移動部材を構成する。
【0016】
前記超音波アクチュエータ2は、図1,2に示すように、振動を発生させるアクチュエータ本体4と、該アクチュエータ本体4に設けられて該アクチュエータ本体4の駆動力を移動体13に伝達する駆動子3,3と、アクチュエータ本体4を保持するホルダ5と、ホルダ5を支持する支持体6と、アクチュエータ本体4を移動体13へ付勢するための板バネ7とを有している。この超音波アクチュエータ2が振動型アクチュエータを構成する。
【0017】
前記アクチュエータ本体4は、圧電素子で構成されていて、略長方形状の互いに対向する一対の主面と、この主面と直交して該主面の長手方向に延びる、互いに対向する一対の長辺側面と、これら主面及び長辺側面の両方と直交して該主面の短手方向に延びる、互いに対向する一対の短辺側面とを有する略直方体状をしている。
【0018】
図3に、アクチュエータ本体4の分解斜視図を示す。アクチュエータ本体4は、図3に示すように、圧電体層(圧電素子)41,41,…と内部電極層42,44,43,44とを交互に積層して構成される。内部電極層42,44,43,44は、積層方向に圧電体層41を介して交互に配された、第1給電電極層42と共通電極層44と第2給電電極層43と共通電極層44とを含んでいる。これら第1給電電極層42と共通電極層44と第2給電電極層43と共通電極層44とを1セットとして、複数セットの内部電極層42,44,43,44が圧電体層41を介在させた状態で繰り返し積層されている。尚、積層方向の両端には、圧電体層41,41が位置するようになっている。これら第1給電電極層42、第2給電電極層43及び共通電極層44,44のそれぞれは、各圧電体層41の主面上に印刷されている。
【0019】
前記各圧電体層41は、例えばチタン酸ジルコン酸鉛などのセラミック材料からなる絶縁体層であって、前記アクチュエータ本体4と同様に、一対の主面と、一対の長辺側面と、一対の短辺側面とを有する略直方体状をしている。また、各圧電体層41のそれぞれの長辺側面には、長手方向両端部に第1及び第2外部電極46,47が形成され、該第1及び第2外部電極46,47よりも長手方向内側には2つの共通外部電極48,48が形成されている。すなわち、圧電体層41の各長辺側面には、第1外部電極46、共通外部電極48、共通外部電極48、第2外部電極47が、長手方向に沿ってこの順で、互いに間隔を空けて並んでいる。
【0020】
前記各共通電極層44は、圧電体層41の主面の略全面に亘って設けられた略長方形状をしている。また、各共通電極層44のそれぞれの長辺部からは、圧電体層41の長辺側面に形成された共通外部電極48,48まで延びる引出電極44a,44aが形成されている。
【0021】
前記第1及び第2給電電極層42,43は、図4に示すように、圧電体層41の主面をその長手方向及び短手方向にそれぞれ2等分してなる4つの領域のうち該主面の対角線方向に位置する2対の領域のうち一方の対の領域にそれぞれ形成された一対の第1電極42a,42bと、他方の対の領域にそれぞれ形成された一対の第2電極43a,43bとを有する。これら第1電極42a,42b及び第2電極43a,43bは、圧電体層41を挟んで共通電極層44と対向している。そして、第1給電電極層42においては、第1電極42a,42bが第1導通電極42cを介して導通している。また、第2給電電極層43においては、第2電極43a,43bが第2導通電極43cを介して導通している。また、第1電極42a,42bのそれぞれからは、圧電体層41の近接する長辺側面に形成された第1外部電極46,46まで延びる引出電極42d,42dが形成されている。第2電極43a,43bのそれぞれからは、圧電体層41の近接する長辺側面に形成された第2外部電極47,47まで延びる引出電極43d,43dが形成されている。
【0022】
これら圧電体層41,41,…と内部電極層42,44,43,44とを交互に積層することで構成されたアクチュエータ本体4の各長辺側面においては、各圧電体層41の共通外部電極48,48が積層方向に並んで一まとまりに形成されている。この外部電極48には、前記共通電極層44,44に形成された引出電極44a,44aが電気的に接続されている。こうして、異なる圧電体層41,41,…に設けられた共通電極層44,44,…は、共通外部電極48,48を介して互いに導通している。
【0023】
同様に、アクチュエータ本体4の各長辺側面においては、各圧電体層41の第1外部電極46が積層方向に並んで一まとまりに形成されていると共に、各圧電体層41の第2外部電極47が積層方向に並んで一まとまりに形成されている。第1外部電極46,46には、前記第1電極42a,42bからの引出電極42d,42dが電気的に接続されている。また、第2外部電極47,47には、前記第2電極43a,43bからの引出電極43d,43dが電気的に接続されている。こうして、第1電極42a,42bは、第1導通電極42c及び第1外部電極46,46を介して、異なる圧電体層41,41,…に設けられた第1電極42a,42bと互いに導通している。また、第2電極43a,43bは、第2導通電極43c及び第2外部電極47,47を介して、異なる圧電体層41,41,…に設けられた第2電極43a,43bと互いに導通している。これら外部電極46,47,48には、制御装置からの信号線が接続される。アクチュエータ本体4は、外部電極46,47,48を介して給電される。
【0024】
そして、アクチュエータ本体4の一方の長辺側面(すなわち、後述する屈曲振動の振動方向を向く一対の面のうちの一方の面。以下、設置面ともいう)40aには、2個の駆動子3,3が設けられている。
【0025】
これら駆動子3,3は、円柱状の部材であって、ジルコニア、アルミナ、窒化ケイ素、炭化ケイ素、タングステンカーバイド等で形成されている。駆動子3,3は、その軸方向がアクチュエータ本体4の厚み方向を向くように配設されている。駆動子3,3は、設置面40aに対して接着剤を介して線接触状に取り付けられている。接着剤としては、アクチュエータ本体4の材料及び駆動子3の材料よりも柔らかいことが望ましい。具体的には、合成樹脂、特にエポキシ樹脂、シリコーン樹脂が挙げられる。このような材料を用いることによりアクチュエータ本体4の後述する振動をできるだけ阻害せずに駆動子3,3と設置面40aとの間の固定を実現することができる。
【0026】
また、駆動子3,3が設けられた位置は、設置面40aにおいて、アクチュエータ本体4の長手方向両端部から該設置面40aの全長の30〜35%距離だけ内側に入った位置であり、即ち、アクチュエータ本体4の後述する屈曲振動の2次モードの腹の位置であって、振動が最も大きくなる位置である。
【0027】
このように構成されたアクチュエータ本体4は、前記外部電極48をグランドに接続し、前記第1及び第2外部電極46,47に所定周波数の交流電圧を位相が90°ずれた状態で印加することによって、圧電体層41の主面の対角線方向に位置する一方の対の第1電極42a,42bと、他方の対の第2電極43a,43bとに互いに位相が90°ずれた交流電圧が印加され、その長手方向への縦振動(いわゆる、伸縮振動)とその短手方向への屈曲振動(いわゆる、横振動)とが誘起される。
【0028】
縦振動の共振周波数及び屈曲振動の共振周波数はそれぞれ、アクチュエータ本体4、即ち、アクチュエータ本体4の材料、形状等により決定される。さらに、両共振周波数は、アクチュエータ本体4を支持する力及び支持する部分によっても影響を受ける。これらを考慮して、両共振周波数を略一致させ、その近傍の周波数の交流電圧を位相を90°ずらした状態で第1及び第2外部電極46,47のそれぞれに印加する。例えば、縦振動の1次モード(図5参照)の共振周波数と屈曲振動の2次モード(図6参照)の共振周波数とが一致するようにアクチュエータ本体4の形状等を設計して、該共振周波数近傍の交流電圧を前述の如く、位相を90°ずらして印加することによって、アクチュエータ本体4には、縦振動の1次モードと屈曲振動の2次モードとが調和的に誘起され、図7(A)、(B)、(C)、(D)に示す形状の変化を順番に起こす。
【0029】
その結果、アクチュエータ本体4に設けられた各駆動子3が該アクチュエータ本体4の主面と平行な平面(図7における紙面と平行な面)、即ち、長手方向と短手方向とを含む平面(さらに換言すれば、縦振動の振動方向と屈曲振動の振動方向とを含む平面)内で略楕円運動、即ち、周回運動を行う。
【0030】
このように構成されたアクチュエータ本体4は、複数の振動の腹を有する。ここで、振動の腹とは振動の変位が極大となる箇所であり、本実施形態においては振動の腹の部分はアクチュエータ本体4の両短辺側面に位置する計2箇所の縦振動の腹と、アクチュエータ本体4の一方の長辺側面及び他方の長辺側面の両端部の4箇所、さらに一方の長辺側面及び他方の長辺側面における両端部からアクチュエータ本体4の長手方向の30〜40%内側の部分の4箇所の計8箇所の屈曲振動の腹とがある。すなわち、この超音波アクチュエータ2は、伸縮振動の腹と屈曲振動の腹とを合わせて10箇所の振動の腹がある。そして、前記駆動子3,3は、一方の長辺側面である設置面40aにおける長手方向両端部から内側へ30〜35%入った腹の部分に設けられている。
【0031】
ホルダ5は、ポリカボネート(ガラス繊維入り)で形成されている。このホルダ5は、図1,2に示すように、アクチュエータ本体4の、駆動子3,3が設けられていない方の長辺側面に取り付けられている。詳しくは、ホルダ5は、アクチュエータ本体4の該長辺側面の長手方向中央部において、該アクチュエータ本体4を厚み方向から挟持するように取り付けられている。このアクチュエータ本体4の長辺側面の長手方向中央部は、アクチュエータ本体4の縦振動の節の部分である。また、ホルダ5は、アクチュエータ本体4よりも、該アクチュエータ本体4の厚み方向に突出している。
【0032】
支持体6は、板状に形成されている。この支持体6は、基台に固定されたベース部材14に取り付けられている。詳しくは、支持体6には、2つの貫通孔62,62が厚み方向に貫通形成されている。支持体6は、この貫通孔62,62に挿通されたビス16,16によってベース部材14に取り付けられる。また、支持体6の中央には、ホルダ5を支持するための開口部61が厚み方向に貫通形成されている。ホルダ5の、アクチュエータ本体4の厚み方向に突出する端部が、この開口部61に挿入される。尚、ホルダ5の、アクチュエータ本体4からの突出量によっては、開口部61は支持体6を貫通していなくてもよい。こうして、ホルダ5が取り付けられたアクチュエータ本体4が支持体6,6に支持される。アクチュエータ本体4は、駆動子3,3が移動体13の当接面13bに当接した状態で支持体6,6に支持される。この開口部61は、アクチュエータ本体4の短手方向に延びる長孔形状をしており、ホルダ5は、開口部61内を長孔形状に沿って移動することができる。これにより、アクチュエータ本体4は、支持体6,6によってアクチュエータ本体4の短手方向に移動可能に支持されている。
【0033】
板バネ7は、アクチュエータ本体4の、ホルダ5が取り付けられた長辺側面と対向する位置に設けられている。詳しくは、板バネ7は、アクチュエータ本体4の、ホルダ5が取り付けられた長辺側面と、ベース部材14との間に設けられている。また、板バネ7の長手方向両端部には、ベース部材14に設けられたネジ15,15の先端が嵌る開口部71,71が形成されている。詳しくは、ベース部材14にはアクチュエータ本体4の短手方向と平行にネジ孔が貫通形成されており、このネジ孔にネジ15,15が螺合されている。これらネジ15,15の先端部は、ベース部材14よりもアクチュエータ本体4側に突出するようになっている。そして、ベース部材14からアクチュエータ本体4側に突出したネジ15,15の先端部は、板バネ7の開口部71,71に嵌っている。このように構成された板バネ7は、長手方向中央部においてアクチュエータ本体4に取り付けられたホルダ5に当接している。つまり、ベース部材14のネジ15,15をアクチュエータ本体4側へ突き出すことによって、板バネ7がホルダ5を介してアクチュエータ本体4を移動体13側へ押圧するようになっている。
【0034】
次に、超音波アクチュエータ2の組み立てについて説明する。
【0035】
まず、アクチュエータ本体4の、駆動子3,3が設けられていない方の長辺側面の長手方向中央部にホルダ5を接着固定する。次に、一方の支持体6をベース部材14にビス16,16により取り付ける。その後、アクチュエータ本体4に取付けたホルダ5の一端部を支持体6の開口部61に挿入し、さらに、ホルダ5の他端部に他方の支持体6の開口部61を嵌め込み、該支持体6をベース部材14にビス16,16により取り付ける。こうして、アクチュエータ本体4を支持体6,6で支持する。続いて、アクチュエータ本体4とベース部材14の間に板バネ7を配設する。そして、ベース部材14のネジ孔にネジ15,15を螺合させ、ネジ15,15の先端部を板バネ7の開口部71,71に嵌め込む。その状態から、ネジ15,15をアクチュエータ本体4側にさらに突出させることによって、板バネ7でホルダ5を押圧して、アクチュエータ本体4を移動体13側へ付勢する。その結果、駆動子3,3が移動体13に押し付けられる。
【0036】
このように組み立てられた超音波アクチュエータ2の外部電極46、47、48に制御装置からの信号線が接続される。
【0037】
制御装置は、外部からの動作指令を受けて、その動作指令に応じた周波数の交流電圧を動作指令に応じた位相差で第1及び第2外部電極46,47に印加する。こうして、制御装置は、アクチュエータ本体4に縦振動と屈曲振動とを調和的に発生させて、駆動子3,3を図7に示すような周回運動させることで、移動体13を移動させる。さらに詳しくは、制御装置は、アクチュエータ本体4の異常発熱を防止すべく、アクチュエータ本体4の縦振動と屈曲振動との共通の共振周波数よりも少し高い周波数の交流電圧を第1及び第2外部電極46,47に印加する。このとき、かかる交流電圧は、互いに位相が90°ずれた状態で第1及び第2外部電極46,47に印加される。
【0038】
アクチュエータ本体4が、縦振動と屈曲振動との合成振動を行うと、駆動子3,3はアクチュエータ本体4の長手方向と短手方向とを含む平面内において略楕円運動を行う。こうすることで、駆動子3,3は、移動体13の当接面13bとの摩擦力の増減を周期的に繰り返しながら、アクチュエータ本体4の長手方向への駆動力を摩擦力を介して移動体13に付与しており、移動体13はガイド12に沿って移動する。このアクチュエータ本体4の長手方向(ガイド12が延びる方向と一致する)が、駆動子3,3が駆動力を出力する方向である駆動方向に相当する。
【0039】
以下に、超音波アクチュエータ2による移動体13の駆動を、図8を参照してさらに詳しく説明する。アクチュエータ本体4が長手方向(縦振動の振動方向)に伸張するとき、一方(例えば、図8の左側)の駆動子3は、図8(B)に示すように、移動体13の当接面13bとの間の摩擦力を駆動前の状態(即ち、単に設置しただけの状態)よりも増大させながら変位するため、この摩擦力によって移動体13を該長手方向における該一方の駆動子3が変位する側(図8の左側)へ移動させる。このとき、他方(図8の右側)の駆動子3は、該長手方向において一方の駆動子3とは逆向きに変位するが、該駆動子3は移動体13から離れた状態で変位するか、又は移動体13の当接面13bとの間の摩擦力を駆動前の状態よりも減少させながら変位するため、移動体13の移動にはほとんど影響を与えない。
【0040】
一方、アクチュエータ本体4が長手方向に収縮するときは、他方(図8の右側)の駆動子3は、図8(C)に示すように、移動体13の当接面13bとの間の摩擦力を駆動前の状態(即ち、単に設置しただけの状態)よりも増大させながら変位するため、この摩擦力によって移動体13を該長手方向における該他方の駆動子3が変位する側(図8の左側)へ移動させる。この移動方向は、前述した、アクチュエータ本体4の伸張時における一方の駆動子3による移動体13の移動方向と同じである。このとき、一方(図8の左側)の駆動子3は、該長手方向において他方の駆動子3とは逆向きに変位するが、該駆動子3は移動体13から離れた状態で変位するか、又は移動体13の当接面13bとの間の摩擦力を駆動前の状態よりも減少させながら変位するため、移動体13の移動にはほとんど影響を与えない。
【0041】
尚、図8においては、移動体13の移動に影響を与えない方の駆動子3は移動体13から離れているが、必ずしも離れている必要はない。すなわち、駆動子3は、移動体13を移動させない程度の摩擦力で該移動体13に当接している状態であってもよい。
【0042】
こうして、一方の駆動子3と他方の駆動子3とは、位相が180°ずれた状態で交互に移動体13を所定の一方向へ移動させる。尚、前記交流電圧の位相を−90°ずらした状態で第1及び第2外部電極46,47に印加することによって、駆動子3,3が出力する駆動力を逆向きにすることができ、移動体13を他方向へ移動させることができる。
【0043】
ここで当接面13bについてさらに詳しく説明する。
【0044】
当接面13bは、一般的に平面研磨盤や遊離砥粒を用いた機械式ラップによって加工される場合が多い。この当接面13bには、或る程度の平面度及び貼付け基準面(当接面13bと反対側の面)に対する大きなうねりなどがない平行度が要求される。しかしながら、平行度、平面度に関して言えば、最初の加工となる平面研削加工で数μm〜10μm程度に加工をしておけば、その後の加工においてそれほど大きく変化することがないため、大きな問題になることはない。最も問題となるのは最終仕上げ後の面形状である。
【0045】
通常、汎用的な遊離砥粒を用いたラップ加工を行った場合には、図9(A)のような凹凸を有する面形状となる。このときの中心線平均粗さの値は、使用する遊離砥粒の大きさや砥粒の種類で決定されることが一般的であり、中心線平均粗さの値は十分にコントロールすることが可能である。
【0046】
しかしながら、このような通常のラップ加工で形成された面は、必ず凹凸部を有する。この凹凸部のうちの凸部に駆動子3が当接して極めて大きな圧力が作用すると、凸部が塑性変形したり、凸部が摩耗して摩耗粉が生成されたりする。その結果、塑性変形した部分や摩耗粉が当接面13bで凝着してしまう。凝着が発生した部分は、凝着が発生していない部分と比較して、摩擦係数が異常に高くなり、駆動性能が著しく悪化する。
【0047】
例えば、本実施形態のように、駆動子3が柱状に形成され、その軸がアクチュエータ本体4の厚さ方向を向く状態で駆動子3がアクチュエータ本体4の長辺側面に取り付けられている構成の場合、当接面13bにおいて、駆動子3の軸方向の全領域に亘って一様に凝着現象が発生することは少なく、駆動子3の軸方向の一部分だけに凝着が発生する場合が多い。このような状態に陥ると、駆動子3は、その軸方向の全領域に亘って当接面13bと一様に当接するのではなく、部分的に当接面13bと当接する状態になる。そうすると、当接面13bの凸部に作用する圧力がさらに大きくなり、凝着現象がより発生し易くなる。その結果、凝着部分の面積がさらに増大し、超音波アクチュエータ2の駆動性能を大きく低下させる。
【0048】
また、大きな推力が必要な場合にはアクチュエータ本体4への板バネ7による付勢力を大きくする手法が取られるが、この場合には凝着現象が特に発生し易くなる。
【0049】
さらに、移動体13を静止させる際に、電力の供給を停止するのではなく、アクチュエータ本体4に屈曲振動だけ、又は伸縮振動だけを行わせる場合がある。すなわち、移動体13を静止させるべく、駆動子3,3を移動体13の当接面13bの法線方向へのみ振動させる場合がある。かかる場合には、駆動子3,3が当接面13bの同じ部分に当接したまま振動を繰り返すと共に、それに加えて、当接面13bに作用する圧力がさらに大きくなるため、凝着現象がより発生し易くなる。
【0050】
それに対して、本実施形態では、移動体13の当接面13bを図9(B)のような面形状としている。つまり、当接面13bを、平滑部13c,13c,…と凹部13d,13d,…とが混在する状態に形成している。こうすることによって、当接面13bにおける摩耗粉の凝着を抑制することができる。それに加えて、異音の発生も抑制することができる。この平滑部13c及び凹部13dの幅は、少なくとも、駆動子3の幅(詳しくは、駆動方向への幅)よりも狭く、駆動子3の幅に比べて微小である。さらに、これら平滑部13c,13c,…と凹部13d,13d,…とは不規則に混在していることが好ましい。
【0051】
以下に、様々な面形状の当接面13bに関して行った駆動性能比較について説明する。
【0052】
当接面13bは、以下の方法で形成した。まず、平面研削盤等で当接部材13aの平行度および当接面13bの平面度が所定の範囲になるように当接部材13aを加工する。その後、粗い粒度の遊離砥粒、例えば、#100〜#1000程度のダイヤモンド砥粒を用いて当接面13bをラップする。このときには、当接面13bには浅いスクラッチ傷や深いスクラッチ傷が不規則に形成され、その結果、当接面13bには、様々な凹部及び凸部が不規則に形成される。次に、加工能力の低い#15000程度の微細ダイヤモンド砥粒、例えば、平均粒径1μm程度のダイヤモンド砥粒(遊離砥粒)を用いて、当接面13bの最終ラップを行う。平均粒径1μmのダイヤモンドは加工能力が極端に低いため、当接面13bの凹凸部のうち、凸部の先端部分が主に加工される。つまり、粗い砥粒で研磨した後、そのときできた凹部を消さない程度の細かい砥粒でラップする。その結果、当接面13bは、図9(B)に示すように、平滑部13c,13c,…と凹部13d,13d,…とが不規則に混在した面形状となる。つまり、凹部13dの幅は、始めのラップ加工における粗い砥粒の粒径と同程度である。また、平滑部13cとして加工される前の凸部の幅も、始めのラップ加工における粗い砥粒の粒径と同程度であるため、平滑部13cの幅も始めのラップ加工における粗い砥粒の粒径と同程度となる。
【0053】
そして、最終ラップの度合い、例えば、処理時間を調整することによって、当接面13bにおける平滑部13c,13c,…と凹部13d,13d,…との割合を変えることができる。
【0054】
尚、当接面13bのラップは、#100〜#1000程度、平均粒径1μm程度のダイヤモンド砥粒で行ったが、これに限られるものではない。平滑部13c,13c,…と凹部13d,13d,…とが混在した当接面13bを形成できる限りにおいては、他の粒度の組み合わせやGC砥粒やWA砥粒でも構わない。
【0055】
ここで、各当接面13bにおける平滑部13c,13c,…と凹部13d,13d,…との割合を表す指標として平滑パラメータを用いた。平滑パラメータは以下のようにして求めた。まず、マイクロスコープ9で当接面13bの画像を取得し、該取得画像の輝度分布を求める。詳しくは、図10に示すように、当接部材13aをステージ91上に設置する。このとき、当接部材13aは、当接面13bがマイクロスコープ9の鏡筒の光軸と直交するように設置される。そして、光源から光を当接面13bに照射して、その反射光、即ち、当接面13bの表面画像を、マイクロスコープ9の撮像素子で取得する。このとき、光源からの光は、鏡筒内に設けられたハーフミラー等によって、鏡筒の光軸と一致する方向に進んで当接面13bに照射される。光源からの光の入射方向と鏡筒の光軸とが一致しているため、当接面13bのうち、法線が光軸方向を向く(法線と光軸とのなす角が小さい)部分ほど輝度が高く、法線が光軸方向から逸れた(法線と光軸とのなす角が大きい)部分ほど輝度が低くなる。本実施例では、マイクロスコープとしてキーエンス製のVHX−200を用いた。得られた表面画像の輝度分布を、0〜255階調で取得した。そして、0階調を0%とし、輝度の最大値(即ち、255階調の輝度ではなく、得られた輝度分布中の最大値)を100%として、輝度が85%〜100%に該当する部分の面積を求めた。本実施例では、この輝度が85%〜100%に該当する部分を平滑部とし、当接面13bの画像を取得した部分の全面積に対する平滑部の面積比を平滑パラメータとした。
【0056】
例えば、平滑パラメータが1%,15%,20%,30%の当接面13bの輝度分布及び表面画像を図11〜図14に示す。平滑パラメータが1%の当接面13bは、従来のラップ方法で形成された面である。つまり、この当接面13bは、最終ラップ時の微細な砥粒に応じた凹凸部が満遍なく形成された面であり、輝度分布は、或る1つのピーク値を中心とした分布となる。平滑パラメータが15%,20%,30%の当接面13bの当接面13bは、最終ラップ時の砥粒の粒径を、それよりも前のラップ時の砥粒の粒径よりも極端に微細にして形成された面であって、平滑部13c,13c,…と凹部13d,13d,…とが不規則に混在する面である。これらの当接面13bの輝度分布は、平滑部13cに対応する相対的に高いピークと、凹部13dに対応する相対的に低いピークとを有している。つまり、平滑部13cは、その法線方向がマイクロメータ9の鏡筒の光軸と概ね一致する、即ち、法線方向と該光軸とのなす角が小さいため、輝度が高くなる。一方、凹部13dは、その法線方向がマイクロメータ9の鏡筒の光軸に対して大きく逸れる、即ち、法線方向と該光軸とのなす角が大きいため、輝度が低くなる。その結果、輝度分布は、相対的に高いピークと相対的に低いピークとの2つのピークを有するようになる。そして、高いピークは、輝度分布の0階調を0とし、輝度の最高値を100%としたときの、輝度が85%〜100%の領域に含まれている。つまり、当接面13に含まれる、輝度が85%〜100%の部分の割合によって、平滑部13cに相当する部分がどの程度含まれるかがわかる。
【0057】
そして、前記の方法で加工処理した様々な形状の当接面13bについて、凝着及び異音の発生の有無を以下のようにして調べた。まず、超音波アクチュエータ2により移動体13を凝着が発生し得る条件で往復駆動する運転(以下、試運転という)を行った。この試運転の後、超音波アクチュエータ2により移動体13を凝着の発生を調べるための条件で往復駆動する運転(以下、検査運転という)を行った。試運転では、ストロークが20mm、駆動子3,3の移動体13への付勢力が8N、移動速度が20mm/sであって、20mmのストローク中の3mm、10mm、17mmの位置の3箇所でアクチュエータ本体4に屈曲振動だけ発生させる停止モード(2つの交流電圧の位相差は180°)を行った。検査運転では、20mmのストロークを8mm/sで往復させ、その間に、アクチュエータ本体4に実際に印加される2つの交流電圧の位相差を観察した。そして、位相差に変動があったときには、そのとき駆動子3,3が当接している場所に凝着が発生していると判断した。凝着が発生している場合には、図15に示すような位相差が観測される。図15は、20mmのストロークを2往復する間の、2つの交流電圧の位相差である。図15では、20mmのストローク中の3mmと、10mmと、17mmの位置に凝着が発生し、位相変動が生じている。
【0058】
さらに、位相差の変動に加えて、異音が発生するか否かも調べた。異音の有無は、聴覚で聞き取れるか否かで判定した。
【0059】
尚、従来のラップ方法(例えば、#1000、#5000、#15000の順で砥粒の粒径を段階的に細かくしていくラップ方法)でラップ処理した当接面13bについても凝着及び異音の発生の有無を調べた。
【0060】
その結果を、表1に示す。表では、平滑パラメータを百分率で表している。表1中の比較例1は、従来のラップ方法で当接面13bをラップ処理したものである。比較例2,3及び実施例1〜8については、微細ダイヤモンド砥粒による最終ラップ処理時の処理時間、処理圧力、処理速度が異なる。これからわかるように、平滑パラメータが5%から65%の間では凝着が発生せず、5%未満では凝着が発生している。また、従来のラップ方法でも凝着が発生している。また、平滑パラメータが65%以上になると、当接面13bが鏡面に近くなり、駆動子3と当接面13bとの当接により異音が発生している。この異音は、表面粗さが小さい面同士がこすれるときに発生するビビリ音であると考えられる。以上より、当接面13bの平滑パラメータは、5〜60%が適していることがわかった。
【0061】
【表1】
【0062】
したがって、本実施形態によれば、当接部材13の当接面13bを、平滑部13c,13c,…と凹部13d,13d,…と混合させた形状に形成することによって、当接面13bにおける凝着の発生を抑制することができると共に、異音の発生を抑制することができる。つまり、平滑部13c,13c,…を存在させることによって、当接面13bにおける凸部が減少するため、駆動子3と当接面13bとの間の摩擦力が増大する部分を減少させることができる。その結果、当接面13bにおける摩耗粉の発生や凸部の塑性変形を抑制することができるため、ひいては、凝着の発生を抑制することができる。また、凹部13d,13d,…を存在させることによって、当接面13bに適度な表面粗さを確保することができるため、異音の発生を抑制することができる。
【0063】
また、当接面を、平滑パラメータが5%以上且つ60%以下の範囲内となるように形成することが好ましい。こうすることによって、当接面13bにおける凝着の発生を抑制することができると共に、異音の発生を抑制することができる。
【0064】
また、平滑部13c,13c,…と凹部13d,13d,…とを不規則に混在させることによって、平滑部13c,13c,…と凹部13d,13d,…とが混在する当接面13bであっても、アクチュエータ本体4に印加される2つの交流電圧の位相差の変動を抑制することができる。すなわち、平坦部13cと凹部13dが規則的に並んでいると、平坦部13cと凹部13dとの規則的な配列が位相変動に現れてしまう。駆動装置1においては、アクチュエータ本体4に実際に供給される2つの交流電圧の位相差を監視しながら、2つの交流電圧を調節して、超音波アクチュエータ2の制御を行ったり、さらには、2つの交流電圧の位相差を調節することによって、超音波アクチュエータ2の制御を行うことがある。つまり、駆動装置1の制御性においては、2つの交流電圧の位相差は非常に重要なものである。それにもかかわらず、2つの交流電圧の位相差が変動してしまうと、超音波アクチュエータ2を所望の通りに制御することが難しくなる。それに対して、平滑部13c,13c,…と凹部13d,13d,…とを不規則に混在させることによって、平坦部13cと凹部13dとの配列が位相変動に与える影響を抑えることができる。その結果、2つの交流電圧の位相差の変動を抑制することができるため、超音波アクチュエータ2の制御性を向上させることができる。
【0065】
《その他の実施形態》
本発明は、前記実施形態について、以下のような構成としてもよい。
【0066】
すなわち、前記実施形態では、平滑部13c,13c,…と凹部13d,13d,…とを有する当接面13bを遊離砥粒によるラップ処理で形成しているが、これに限られるものではない。平滑部13c,13c,…と凹部13d,13d,…とを有する当接面13bを形成することができる方法であれば、任意の方法を採用することができる。
【0067】
また、超音波アクチュエータ2は、アクチュエータ本体4に1次の伸縮振動と2次の屈曲振動とを発生させているが、これに限られるものではない。アクチュエータ本体4の振動により駆動子3,3から駆動力を出力させることができる構成であれば、任意の次数の、任意の様式の振動を発生させるアクチュエータ本体を採用することができる。
【0068】
さらに、前記実施形態では、超音波アクチュエータ2によって移動体13を移動させているが、これに限られるものではない。例えば、駆動子3,3がベース部材14に当接する状態で超音波アクチュエータ2が移動体13に取り付けられる構成であってもよい。かかる構成の場合、アクチュエータ本体4を振動させて駆動子3,3を周回運動させることによって、超音波アクチュエータ2が取り付けられた移動体13がベース部材14に対して移動することになる。つまり、駆動子3とベース部材14の当接面との間の摩擦力を介して駆動力が出力される。この場合には、ベース部材14の当接面が、平滑部と凹部とが混在した形状に形成される。こうすることで、ベース部材14の当接面における異音の発生を抑制しつつ、凝着の発生を抑制することができる。
【0069】
また、前記実施形態では、駆動子3,3がアクチュエータ本体4の長辺側面に設けられているが、これに限られるものではない。例えば、駆動子3をアクチュエータ本体4の短辺側面に設けてもよい。この場合、アクチュエータ本体4は、その長手方向が移動体13の当接面13bの法線方向に一致するように配設される。
【0070】
さらに、前記実施形態では、アクチュエータ本体4は、圧電素子で構成されているが、これに限られるものではない。例えば、アクチュエータ本体4は、金属製の弾性体に圧電素子を取り付けて構成された共振器であってもよい。
【0071】
また、前記実施形態では、超音波アクチュエータの駆動力が付与されて駆動される相対移動部材としての移動体13は直方体であるが、これに限られるものではなく、相対移動部材の構成としては任意の構成を採用することができる。例えば、図16に示すように、可動体は所定の軸X回りに回動可能な円板体17であり、超音波アクチュエータの駆動子3,3が該円板体17の側周面17aに当接するように構成された駆動装置201を採用してもよい。かかる構成の場合、超音波アクチュエータを駆動すると、駆動子3,3の概略楕円運動によって、該円板体17が所定の軸X回りに回動させられる。また、図17に示すように、可動体は所定の軸X回りに回動可能な円板体18であり、超音波アクチュエータの駆動子3,3が該円板体18の平面部18aに当接するように構成された駆動装置301を採用してもよい。かかる構成の場合、超音波アクチュエータを駆動すると、駆動子3,3の概略楕円運動によって、該円板体18が駆動子3,3と当接部における接線方向に駆動され、結果として該円板体18が所定の軸X回りに回動させられる。
【0072】
尚、以上の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0073】
以上説明したように、本発明は、振動型アクチュエータと相対移動部材とを備えた駆動装置について有用である。
【符号の説明】
【0074】
1 駆動装置
2 超音波アクチュエータ
3 駆動子
4 アクチュエータ本体
13 移動体(相対移動部材)
13b 当接面
13c 平滑部
13d 凹部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
振動を発生させるアクチュエータ本体と該アクチュエータ本体に設けられて該アクチュエータ本体の振動に伴って周回運動することにより駆動力を出力する駆動子とを有する振動型アクチュエータと、
前記駆動子が当接していて、前記振動型アクチュエータに対して相対移動する相対移動部材とを備えた駆動装置であって、
前記相対移動部材における、前記駆動子と当接する当接面は、平滑部と、該平滑部よりも凹んだ凹部とが混在している駆動装置。
【請求項2】
請求項1に記載の駆動装置において、
前記平滑部と前記凹部とは、不規則に混在している駆動装置。
【請求項3】
振動を発生させるアクチュエータ本体と該アクチュエータ本体に設けられて該アクチュエータ本体の振動に伴って周回運動することにより駆動力を出力する駆動子とを有する振動型アクチュエータと、
前記駆動子が当接していて、前記振動型アクチュエータに対して相対移動する相対移動部材とを備えた駆動装置であって、
前記相対移動部材における、前記駆動子と当接する当接面は、該当接面に当てた光の反射光の輝度の最大値を100%としたときに、該当接面の面積に対する、該輝度が85%〜100%に該当する部分の面積比が5%以上且つ60%以下の範囲内にある駆動装置。
【請求項1】
振動を発生させるアクチュエータ本体と該アクチュエータ本体に設けられて該アクチュエータ本体の振動に伴って周回運動することにより駆動力を出力する駆動子とを有する振動型アクチュエータと、
前記駆動子が当接していて、前記振動型アクチュエータに対して相対移動する相対移動部材とを備えた駆動装置であって、
前記相対移動部材における、前記駆動子と当接する当接面は、平滑部と、該平滑部よりも凹んだ凹部とが混在している駆動装置。
【請求項2】
請求項1に記載の駆動装置において、
前記平滑部と前記凹部とは、不規則に混在している駆動装置。
【請求項3】
振動を発生させるアクチュエータ本体と該アクチュエータ本体に設けられて該アクチュエータ本体の振動に伴って周回運動することにより駆動力を出力する駆動子とを有する振動型アクチュエータと、
前記駆動子が当接していて、前記振動型アクチュエータに対して相対移動する相対移動部材とを備えた駆動装置であって、
前記相対移動部材における、前記駆動子と当接する当接面は、該当接面に当てた光の反射光の輝度の最大値を100%としたときに、該当接面の面積に対する、該輝度が85%〜100%に該当する部分の面積比が5%以上且つ60%以下の範囲内にある駆動装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図15】
【図16】
【図17】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図15】
【図16】
【図17】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2011−15552(P2011−15552A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−158054(P2009−158054)
【出願日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
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