説明

駐車支援システム

【課題】タイヤ空気圧検出装置の車輪位置検出で用いられる通信機能を応用することで、後付け製品として容易に装備・利用可能な態様にて駐車支援システムを実現する。
【解決手段】駐車支援システム1a,1bは、駐車スペース近傍で車両が駐車可能な範囲を規定する箇所に設置されるトリガ送信機20,60と、車両100の各車輪200に取り付けられる送信機10と、制御装置40とを備える。送信機10は、トリガ送信機20,60から送信されたトリガ信号に対する応答として、当該トリガ信号の受信強度を示す応答信号を送信する。制御装置40は、各送信機10からの応答信号を受信し、この受信した応答信号が示す受信強度に基づいて各トリガ送信機20,60と各送信機10との距離を特定する。そして、この特定した距離が所定の警報領域内である場合、警報機50あるいは警報機付のトリガ送信機60に警報を報知させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤ空気圧検出装置の車輪位置検出機能を応用する技術に関するものであり、特に、駐車スペースからの車両の逸脱に対して警報を報知することで、駐車しようとする車両に対する駐車支援を行うための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、タイヤ空気圧検出装置(TPMS:Tire Pressure Monitoring System)の1つとして、ダイレクト式のものが知られている(例えば、特許文献1参照)。このタイプのタイヤ空気圧検出装置では、タイヤが取り付けられた車輪側に、圧力センサが備えられた送信機が直接取り付けられている。また、車体側には受信機が設けられており、圧力センサからの検出信号が車輪側の送信機から送信されると、車体側の受信機にその検出信号が受信され、タイヤ空気圧の検出が行われるようになっている。
【0003】
このようなダイレクト式のタイヤ空気圧検出装置では、各送信機がどの位置の車輪についているものなのかを判別するために、電界強度の検出により送受信者間の距離を推定することで車輪位置の特定を行っている。より具体的には、特許文献1に記載のように、各車輪に取り付けられた送信機にて、車体側に設けられたトリガ機からのトリガ信号の受信時における電界強度(以下、受信強度)を取得し、この取得した受信強度を示すデータを受信機へ送信する。受信機側では、この受信強度からトリガ機と各送信機との距離を特定することで、各送信機がどの位置の車輪についているものなのかを判別している。
【特許文献1】特開2007−15491号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述のようなタイヤ空気圧検出装置の車輪位置検出で用いられる通信機能を応用した種々の追加機能をタイヤ空気圧検出装置に付加することで、更なる普及拡大を狙うことができると考えられる。
【0005】
そこで、駐車スペースに駐車しようとする車両に対する支援を行うための駐車支援システムへの応用を検討した。従来の駐車支援システムでは、車両と駐車スペースとの位置関係を検出・報知するために、例えば車載カメラ及びモニタや、レーダセンサ等の大掛かりな追加設備を必要とする。しかしながら、これらの追加設備を後付け製品として車両に装備することは実現しにくく、このことが駐車支援システムの更なる普及拡大への問題点となっていた。よって、タイヤ空気圧検出装置の車輪位置検出で用いられる通信機能を応用することで、タイヤ空気圧検出装置の追加機能としての駐車支援システムが実現すれば、より付加価値の高い製品として更なる普及拡大が見込まれる。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、タイヤ空気圧検出装置の車輪位置検出で用いられる通信機能を応用することで、後付け製品として容易に装備・利用可能な態様にて駐車支援システムを実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するためになされた請求項1に記載の駐車支援システムは、車両が駐車可能な範囲を規定する箇所に設置されるトリガ送信機と、トリガ送信機から送信されたトリガ信号に対する応答として、当該トリガ信号の受信強度を示す応答信号を送信する車載送信機と、車両の駐車可能範囲からの逸脱に対する警告をする旨の警報を報知する警報手段と、受信した応答信号が示す受信強度に基づいてトリガ送信機と車載送信機との距離を特定し、この特定した距離が所定の警報領域内である場合、警報手段に警報を報知させる警報制御手段とを備えることを特徴とする。
【0008】
このように構成された駐車支援システムによれば、トリガ送信機からのトリガ信号に対する応答信号を送信する車載送信機を車両側に備えるだけで、車載カメラ及びモニタや、レーダセンサ等の大掛かりな設備がなくても外部からの駐車支援を受けることができる。よって、後付け製品として容易に装備・利用可能な態様にて駐車支援システムを実現できる。また、本発明におけるトリガ送信機、車載送信機及び応答受信手段間の通信は、上述のタイヤ空気圧検出装置の車輪位置検出で用いられる通信機能から応用可能なものである。よって、請求項7に記載のように、本発明の車載送信機を、タイヤの空気圧を測定する空気圧測定手段を備えたタイヤ空気圧測定装置の送信機として兼用することで、タイヤ空気圧検出装置の追加機能としての駐車支援システムが実現し、より付加価値の高い製品として更なる普及拡大が見込まれる。
【0009】
また、駐車場側の設備として、トリガ送信機を例えば駐車スペースの境界線上や壁際、障害物際等の駐車可能な範囲を規定する箇所に適宜配置することで、駐車スペースの形状や障害物の位置に応じた必要な箇所について、駐車可能範囲からの逸脱に対して効果的に警報を報知することができる。このような構成にすることで、トリガ送信機を必要箇所に配置すること自体は後付け施工でも容易に行える。特に、請求項6に記載のように、駐車可能範囲の形状や障害物の位置に応じて任意の箇所に任意の個数で配置可能なユニットで構成することで、駐車場側の設備についても後付け製品として容易に装備・利用可能な態様にて駐車支援システムを構築できる。
【0010】
つぎに、請求項2に記載の駐車支援システムは以下のような特徴を有する。警報制御手段は、各トリガ送信機に所定の順序で順次トリガ信号を送信させ、この送信順と各車載送信機からの応答信号の受信順とに基づく個々のトリガ送信機と各応答信号との対応関係から個々のトリガ送信機ごとに各車載送信機との距離を特定する。そして、この特定した個々のトリガ送信機ごとの距離の何れかが警報領域内である場合、当該箇所のトリガ送信機を対象とする警報を警報手段に報知させることを特徴とする。
【0011】
このように構成することで、トリガ信号の送信順とそのトリガ信号に対する応答信号の受信順との対応から、受信した応答信号がどのトリガ送信機から送信されたトリガ信号に対応するものかを特定することができる。よって、複数設置されたトリガ送信機に対して、個別に車載送信機との距離を特定することが可能になり、車載送信機との距離が警戒範囲内にあるトリガ送信機を対象とする警報を個別に報知でき、より効果的な運転支援を行える。
【0012】
なお、警報の対象となるトリガ送信機を明示する態様にて警報を報知する方法としては、請求項3に記載のように、1箇所で集中して報知する方法が挙げられる。具体的には、例えば駐車スペース近傍の車両の運転者から見やすい位置に表示装置や音声出力装置を配置し、警報の対象となる箇所を表示したり、音声によって通知することが考えられる。
【0013】
あるいは、請求項4に記載のように、警報手段を個々のトリガ送信機にそれぞれ一体に設け、個々のトリガ送信機を対象とする警報について個別に警報を報知可能に構成することが考えられる。具体的には、例えば個々のトリガ送信機に表示灯や音声出力装置を設け、ある箇所に配置されたトリガ送信機と車載送信機との距離が警戒範囲内になった場合、当該箇所の表示灯や音声出力装置のみを作動させることが考えられる。このようにすることで、どこで駐車スペースからの逸脱するおそれがあるのかが運転者にとって一目瞭然となり、効果的な駐車支援を行うことができる。
【0014】
つぎに、請求項5に記載の駐車支援システムは、トリガ送信機と車載送信機との接近度合に応じて警報手段に報知させる警報の態様を変更することを特徴とする。
このようにすることで、例えば、トリガ送信機と車載送信機との距離が近い程、表示の強調具合や警報音の音量等といった警報の強度を大きくするという具合に、車両の状況をより具に反映した駐車支援を行うことができ、好適である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、図中に同一符号を付してある。
[駐車支援システムの構成の説明]
図1(a)は、本発明の第1実施形態である駐車支援システム(集中警報型)1aの概略構成を示すブロック図である。
【0016】
駐車支援システム(集中警報型)1aは、図1(a)に示すように、車両100に取り付けられる送信機10a〜10d、車両100が駐車する駐車スペースの境界線近傍に設置されるトリガ送信機20a〜20c及び入庫センサ30、制御装置40、及び警報機50を備える。
【0017】
送信機10a〜10dは、車両100に搭載されるタイヤ空気圧測定装置(例えば、特許文献1参照)の送信機として機能するものであり、車両100の各車輪200にそれぞれ取りつけられ、各車輪に取り付けられたタイヤの空気圧を検出し、その検出結果を示すデータを車両100に搭載された受信機(図示なし)へ送信する。なお、タイヤ空気圧測定装置の構成については本発明の本質ではないため、詳しい説明は省略する。
【0018】
さらに、送信機10a〜10dは、本発明の特徴的な構成として次のような機能を有する。まず、LF(Low Frequency)電波によるトリガ信号を受信し、その受信強度を計測する。そして、受信したトリガ信号に対する応答として、この計測した受信強度を示すデータを含む応答信号をRF(Radio Frequency)電波によって外部へ送信する。なお、以下の説明において、個々の送信機10a〜10dを特に区別しない場合、単に送信機10と表記する。
【0019】
トリガ送信機20a〜20cは、制御装置40から送信されてくる制御信号に従って所定の電界強度のトリガ信号(LF電波)を出力するものである。このトリガ送信機20a〜20cは、例えば、可搬式の自立型ユニットや壁掛型ユニットとして構成され、駐車スペースの形状や障害物の位置に応じて適宜配置されるものである。配置箇所としては、駐車スペースの境界線上や障害物の近傍等の車両が駐車可能な範囲を規定する箇所が挙げられる。図1(a)に示す事例では、駐車スペースの入口側の両端にそれぞれ1つずつ(20a,20b)と、駐車スペースの突当り側の中央部に1つ(20c)が配置されている。なお、以下の説明において、個々のトリガ送信機20a〜20cを特に区別しない場合、単にトリガ送信機20と表記する。
【0020】
入庫センサ30は、例えば赤外線センサ等によって構成され、駐車スペースへの車両100の進入を検知し、その検知結果を制御装置40へ入力するものである。
制御装置40は、駐車場側の設備として設置されるものであり、各トリガ送信機20a〜20cからのトリガ信号の送信タイミングを制御し、送信されたトリガ信号に対する応答として各送信機10a〜10dから送信されてくる応答信号(RF電波)を受信する。そして、応答信号で示されるトリガ信号の受信強度に基づいて個々のトリガ送信機20a〜20cごとに各送信機10a〜10dとの距離を特定し、この特定した距離が所定の警戒範囲内である場合、警報機50を介して警報を報知する。
【0021】
警報機50は、駐車をしようとする車両100の運転者から見える位置で駐車スペース近傍に配置され、駐車スペースからの逸脱を警告する旨の警報を、警報の対象なる箇所を明示しつつ車両100の運転者に対して報知するものである。ここで、警報の対象となる箇所とは、各トリガ送信機20a〜20cのうち、送信機10との距離が所定の警報範囲内であると判定されたトリガ送信機20が配置されている箇所のことである。警報機50は、これらの各箇所を対象とする警報を1箇所にて集中して報知可能に構成されている。警報機50の具体的な構成としては、例えば、警報及びこの警報の対象となる箇所を表示する表示装置や、警告ランプ、警報及びこの警報の対象となる箇所を音声により出力する音声出力装置、あるいはそれらを組み合わせたユニットとして構成したものが挙げられる。
【0022】
つぎに、図1(b)は、本発明の第2実施形態である駐車支援システム(個別警報型)1bの概略構成を示すブロック図である。
第2実施形態の駐車支援システム(個別警報型)1bは、上記第1実施形態の駐車支援システム(集中警報型)1aにおける警報機50及び各トリガ送信機20a〜20cの代わりに、個々のトリガ送信機に警報機を一体に組み込んだトリガ送信機(警報機付)60a〜60cが駐車スペースの境界線近傍に設置されている点が異なる。送信機10a〜10d、入庫センサ30及び制御装置40については、上記第1実施形態における構成と同一もしくは均等であるので詳しい説明は省略する。
【0023】
トリガ送信機60a〜60cは、制御装置40から送信されてくる制御信号に従って所定の電界強度のトリガ信号(LF電波)を出力する機能に加え、駐車スペースからの逸脱を警告する旨の警報を運転者に対して報知する機能を有する。そして、制御装置40は、各トリガ送信機60a〜60cのうち送信機10との距離が所定の警報範囲内であると判定された箇所において個別に警報を報知させることで、この警報の対象となる箇所を車両100の運転者に対して明示できる。なお、以下の説明において、個々のトリガ送信機60a〜60cを特に区別しない場合、単にトリガ送信機60と表記する。
【0024】
つぎに、図2の(a)は、送信機10の概略構成を示すブロック図(第1,2実施形態共通)であり、(b)は、第1実施形態におけるトリガ送信機20の概略構成を示すブロック図であり、(c)は、第2実施形態におけるトリガ送信機(警報機付)60の概略構成を示すブロック図であり、(d)は、制御装置40の概略構成を示すブロック図(第1,2実施形態共通)である。
【0025】
送信機10は、図2(a)に示すように、LF受信部11と、RF送信部12と、制御部13と、空気圧センサ14と、アンテナ15,16とを備える。
LF受信部11は、アンテナ15を介してトリガ送信機20,60からのトリガ信号(LF電波)を受信し、この受信したトリガ信号を制御部13へ送るためのものである。RF送信部12は、制御部13から送られてきた応答信号を、アンテナ16を介して外部の制御装置40へRF電波によって送信するためのものである。なお、LF受信部11及びRF送信部12は、送信機10が車両100に搭載されるタイヤ空気圧測定装置の送信機として機能する場合には、図示しない車両100側のトリガ送信機及び受信機との間で各種信号の送受信を行う。
【0026】
制御部13は、CPU,ROM,RAM,I/O及びこれらを接続するバスライン等からなる周知のマイクロコンピュータを中心に構成されており、ROM内に記憶されたプログラムに従って、実施形態の駐車支援システム1a,1bやタイヤ空気圧測定装置に係る所定の処理を実行する。
【0027】
制御部13は、実施形態の駐車支援システム1a,1bに係る処理として、次のような処理を実行する。まず、LF受信部11を介して受信したトリガ信号の受信強度を計測する。そして、この計測した受信強度を示すデータを含む応答信号を生成し、この生成した応答信号を、RF送信部12を介して外部の制御装置40へ送信する。
【0028】
空気圧センサ14は、例えばダイアフラム式の圧力センサを備え、タイヤの空気圧に応じた検出信号を制御部13へ出力する。この空気圧センサ14による検出結果は、制御部13によってRF送信部12を通じてタイヤ空気圧測定装置の受信機へ送信される。
【0029】
第1実施形態のトリガ送信機20は、図2(b)に示すように、LF送信部21と、アンテナ22とを備える。
LF送信部21は制御装置40と通信可能に接続されており、制御装置40から所定のタイミングで送信されてくる制御信号に従い、アンテナ22を介してトリガ信号を所定の電界強度で送信する。
【0030】
第2実施形態のトリガ送信機60は、図2(c)に示すように、LF送信部61と、アンテナ62と、警報出力部63とを備える。
LF送信部61とアンテナ62については、第1実施形態のトリガ送信機20におけるLF送信部21とアンテナ22と同等のものであるので説明は省略する。警報出力部63は、制御装置40と通信可能に接続されており、制御装置40からの制御信号に従って警報を報知する。この警報出力部63の具体的な構成としては、例えば、駐車スペースからの逸脱を警告する旨の警報を表示する表示装置や、警告ランプ、前記警報を音声により出力する音声出力装置、あるいはそれらを組み合わせたものが挙げられる。
【0031】
制御装置40は、図2(d)に示すように、RF受信部41と、制御部42と、アンテナ43とを備える。
RF受信部41は、アンテナ43を介して各トリガ送信機20,60からの応答信号(RF電波)を受信し、この受信した応答信号を制御部42へ送るためのものである。
【0032】
制御部42は、CPU,ROM,RAM,I/O及びこれらを接続するバスライン等からなる周知のマイクロコンピュータを中心に構成されており、ROM内に記憶されたプログラムに従って、所定の処理を実行する。なお、第1実施形態においては、制御部42には各トリガ送信機20a〜20c、入庫センサ30及び警報機50が接続される。一方、第2実施形態においては、各トリガ送信機(警報機付)60a〜60c及び入庫センサ30が接続される。なお、制御部42は、複数のトリガ送信機20,60を同時に接続可能な接続インタフェースを備え、接続するトリガ送信機20,60の個数を1から所定の最大数までの間で任意の個数にすることができるように構成されている。
【0033】
制御部42は、各トリガ送信機20,60に対してトリガ信号を出力させるための制御信号を出力し、その後、各送信機10から送信されてきた応答信号をRF受信部41を介して受信する。そして、各応答信号に含まれる受信強度を示すデータに基づいて、個々のトリガ送信機20,60ごとに各送信機10との距離を特定する。特定した距離の何れかが所定の警報範囲内であった場合、これに該当するトリガ送信機20,60を警報の対象として、第1実施形態であれば警報機50に、第2実施形態であれば該当するトリガ送信機60の警報出力部63に警報を報知させる。制御部42による上記一連の処理については後に詳細に説明する。
【0034】
つぎに、図3は、トリガ送信機20,60の駐車スペースへの配置方法のバリエーションを示す図である。
各実施形態の駐車支援システム1a,1bにおいては、駐車スペースの形状や障害物の位置に応じて、トリガ送信機20,60の配置箇所や配置数を任意にアレンジすることができる。例えば、図3(a)に示すように、駐車スペースの境界の四隅にそれぞれトリガ送信機20,60を配置し、駐車スペースからの逸脱を4方向から警戒可能な構成とすることもできる。また、図3(b)に示すように、駐車スペースの長手側から進入する形状の場合でも、駐車スペースの長手側に設けられた入り口の両端部にそれぞれトリガ送信機20,60を配置し、さらに駐車スペースの突当り中央部にトリガ送信機20,60を配置する構成とすることもできる。さらには、図3(c)に示すように、駐車スペース内に存在する障害物に隣接してトリガ送信機20,60を配置することで、障害物への接近を警戒可能な構成とすることもできる。
【0035】
以上、各実施形態の駐車支援システム1a,1bの構成について説明したが、実施形態における駐車支援システム1a,1bの構成と、特許請求の範囲に記載した構成との対応は次のとおりである。実施形態における送信機10が特許請求の範囲における車載送信機に相当する。このうち、LF受信部11がトリガ受信手段に相当し、RF送信部12が送信手段に相当し、制御部13が受信強度取得手段に相当する。また、制御装置40におけるRF受信部41が応答受信手段に相当する。また、制御装置40における制御部42が警報制御手段及びトリガ制御手段に相当する。また、警報機50又はトリガ送信機60における警報出力部63が警報手段に相当する。
【0036】
[制御装置40による処理の説明]
つぎに、制御装置40の制御部42で実行される処理について、図4,5を参照しながら説明する。
【0037】
図4は、制御装置40の制御部42が実行する「警報処理」の手順を示すフローチャートである。なお、図4のフローチャートに示す手順は第1実施形態と第2実施形態とで共通のものであるので、以下においては両実施形態について一括して説明することとし、細かい相違点については、その都度説明する。
【0038】
制御部42は、まず、入庫センサ30により駐車スペースへ進入する車両の検出を行う(S100)。そして、入庫センサ30からの検出信号に基づき、車両を検出したか否かを判定する(S110)。ここで、入庫センサ30が車両を検出していない判定した場合(S110:NO)、S100の処理へ戻る。
【0039】
一方、入庫センサ30が車両を検出したと判定した場合(S110:YES)、各トリガ送信機20,60に対して、所定の電界強度でトリガ信号を送信させるための制御信号を所定のタイミングで順次送信し(S120)、この制御信号に応じて各トリガ送信機20,60から送信されたトリガ信号に対する各送信機10からの応答信号を受信する(S130)。
【0040】
ここで、個々のトリガ送信機20,60からトリガ信号を送信させるタイミングについて、図5に基づいて説明する。ここでは、制御装置40に接続されているトリガ送信機20,60が3つの場合を想定しており、それぞれをトリガ送信機A,B,Cと称することにする。
【0041】
図5に示すように、制御部42は、プログラムで定められた順序に従って、まずトリガ送信機Aにトリガ信号を送信させる。すなわち、トリガ送信機Aに対して制御信号を送信する。そして、トリガ送信機Aから送信されたトリガ信号に対する各送信機10からの応答信号を受信するために必要な所定の間隔を空けた後に、トリガ送信機Bにトリガ信号を送信させる。すなわち、トリガ送信機Bに対して制御信号を送信する。そして、トリガ送信機Bから送信されたトリガ信号に対する各送信機10からの応答信号を受信するために必要な所定の間隔を空けた後に、トリガ送信機Cにトリガ信号を送信させる。すなわち、トリガ送信機Cに対して制御信号を送信する。
【0042】
このように、予め決められた順序及び間隔で各トリガ送信機20,60からトリガ信号を順次送信させることで、トリガ信号の送信順と応答信号の受信順との対応が明らかになる。これにより、制御部42は、受信した応答信号がどのトリガ送信機20,60から送信されたトリガ信号に対するものであるかを対応付ける。
【0043】
図4の説明に戻る。S130にて各送信機10から応答信号を受信した後、この受信した応答信号に含まれる受信強度のデータから、個々のトリガ送信機20,60ごとに、各送信機10との距離を特定する(S140)。
【0044】
ここで、トリガ信号の送信に用いられるLF電波の電界強度は、距離に応じて減衰することが知られている。このLF電波の特性を利用することで、制御部42は、各送信機10から送信されてくる受信強度のデータからLF電波の減衰度合を判定し、トリガ送信機20,60と送信機10との距離をそれぞれ推定する。具体的には、トリガ送信機Aからのトリガ信号に対する応答として各送信機10a〜10dから送信されてきた各応答信号で示される受信強度から、トリガ送信機Aと各送信機10a〜10dとの距離を特定する。同様にして、トリガ送信機B,Cについても各送信機10a〜10dとの距離を特定する。
【0045】
つぎに、S140にて特定した距離の何れかが、所定の警戒範囲内であるか否かを判定する(S150)。ここで、所定の警戒範囲とは、予め制御部42のメモリ等に登録しておくものであり、トリガ送信機20,60の位置を基準として、車両の駐車スペースからの逸脱を未然に防ぐのに十分な距離に設定することが望ましい。また、個々のトリガ送信機20,60について個別に警戒範囲を設定するような構成であってもよいし、各トリガ送信機20,60に対して共通の警戒範囲を設定するような構成であってもよい。
【0046】
S140にて何れの距離も警戒範囲内ではないと判定した場合(S150:NO)、S190の処理へ移行する。一方、何れかの距離が警戒範囲内であると判定した場合(S150:YES)、その距離に該当するトリガ送信機20,60を警報の対象として特定する(S160)。
【0047】
つづいて、警戒範囲内であると判定された距離に応じた警報強度を設定する(S170)。具体的には、警戒範囲内であると判定された距離が短い程、警報強度を大きく、すなわち、より強調された態様の警報を報知するように設定し、警戒範囲内であると判定された距離が長い程、強調されない態様の警報を報知するように設定する。
【0048】
そして、第1実施形態の駐車支援システム1aの場合は警報機50に対して、あるいは、第2実施形態の駐車支援システム1bの場合は、複数のトリガ送信機60のうち、警報の対象であるトリガ送信機60の警報出力部63のみに対して、S170で設定された警報強度に応じた態様にて警報を出力させる(S180)。
【0049】
これに対して、第1実施形態の駐車支援システム1aにおける警報機50は、駐車スペースからの逸脱を警告する旨の警報や、この警報の対象となる箇所を示す情報を画面に表示したり、音声によって出力する。また、警告ランプの点滅や警報音の音量、音程、テンポ等によって警報の強度を表現してもよい。
【0050】
一方、第2実施形態の駐車支援システム1bにおける警報出力部63は、駐車スペースからの逸脱を警告する旨の警報を画面に表示したり、音声によって出力する。また、第1実施形態の警報機50と同様に、警告ランプの点滅や警報音の音量、音程、テンポ等によって警報の強度を表現してもよい。
【0051】
つぎに、S190では、車両の入庫が完了したか否かを判定する。具体的には、各トリガ送信機20,60と各送信機10との距離が一定時間以上変化していないかどうかを判定したり、車両の動きを検知するセンサ等を別途設けて、その検出結果から車両が一定時間以上停止しているかどうかを判定することによって、入庫が完了したかどうかを判断すればよい。
【0052】
ここで、車両の入庫が完了していないと判定した場合(S190:NO)、S120の処理へ戻り、S120〜S190の処理を順次繰り返す。一方、S190で車両の入庫が完了したと判定した場合(S190:YES)、「警報処理」を終了する。
【0053】
[効果]
上記実施形態の駐車支援システム1a,1bによれば、以下のような効果を奏する。
(1)トリガ送信機20,60からのトリガ信号に対する応答信号を送信する送信機10を車両100に備えることで、車載カメラ及びモニタや、レーダセンサ等の大掛かりな設備がなくても外部からの駐車支援を受けることができる。よって、後付け製品として容易に装備・利用可能な態様にて駐車支援システムを実現できる。
【0054】
(2)送信機10を、タイヤの空気圧を測定する空気圧センサ14を備えたタイヤ空気圧測定装置の送信機として兼用することで、タイヤ空気圧検出装置の追加機能としての駐車支援システムが実現し、より付加価値の高い製品として更なる普及拡大が見込まれる。
【0055】
(3)トリガ送信機20,60を駐車スペースの境界線上や壁際、障害物際等の駐車可能な範囲を規定する箇所に適宜配置することで、駐車スペースの形状や障害物の位置に応じた必要な箇所について、駐車可能範囲からの逸脱に対して効果的に警報を報知することができる。また、トリガ送信機20,60を可搬式の自立型ユニットや壁掛型ユニットで構成し、駐車可能範囲の形状や障害物の位置に応じて任意の箇所に任意の個数で配置可能とすることで、駐車場側の設備についても後付け製品として容易に装備・利用可能な駐車支援システムを提供できる。
【0056】
(4)各トリガ送信機20,60に所定の順序で順次トリガ信号を送信させ、その送信順とトリガ信号に対する応答信号の受信順との対応から、受信した応答信号がどのトリガ送信機20,60に対応するものかを特定できる。よって、複数設置されたトリガ送信機20,60に対して、個別に送信機10との距離を特定することが可能になり、送信機10との距離が警戒範囲内にあるトリガ送信機20,60を対象とする警報を個別に報知でき、より効果的な運転支援を行える。
【0057】
(5)トリガ送信機20,60と送信機10との接近度合に応じて報知する警報の強度を変更できる。これにより、例えば、トリガ送信機20,60と送信機10との距離が近い程、警報表示の強調具合を大きくしたり、警報音の音量・音程・テンポ等をより強調するといった具合に、車両の状況をより具に反映した駐車支援を行うことができる。
【0058】
[変形例]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に何ら限定されるものではなく、様々な態様にて実施することが可能である。
【0059】
例えば、上記各実施形態の駐車支援システム1a,1bにおいては、車両100に取り付けられる送信機10がタイヤ空気圧測定装置の送信機として兼用される構成となっている。これに対して、送信機10を駐車支援システム専用の送信機とするような構成であってもよい。この場合、上記各実施形態の駐車支援システム1a,1bにおける送信機10の構成(図2(a)参照)から空気圧センサ14を省略できる。さらに、各送信機を必ずしも車輪に取り付ける必要はなく、車両の車体各所に適宜取り付け可能である。具体的な取り付け箇所としては、車体の前端部及び後端部にそれぞれ取り付けたり、前端部及び後端部のそれぞれ左右両端に取り付けるといった具合に、車体の外縁に沿って取り付けることが望ましい。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】(a)は、第1実施形態の駐車支援システム1aの概略構成を示すブロック図であり、(b)は、第2実施形態の駐車支援システム1bの概略構成を示すブロック図である。
【図2】送信機10、トリガ送信機20,60及び制御装置40の概略構成を示すブロック図である。
【図3】トリガ送信機20,60の駐車スペースへの配置方法のバリエーションを示す図である。
【図4】「警報処理」の手順を示すフローチャートである。
【図5】トリガ送信機20,60からのトリガ信号の送信タイミング及び、各トリガ信号に対する各送信機10からの応答信号の受信順を模式的に示すタイミングチャートである。
【符号の説明】
【0061】
1a…駐車支援システム(集中警報型)、1b…駐車支援システム(個別警報型)
10…送信機、11…LF受信部、12…RF送信部、13…制御部、14…空気圧センサ、15,16…アンテナ
20…トリガ送信機、21…LF送信部、22…アンテナ、60…トリガ送信機(警報機付)、61…LF送信部、62…アンテナ、63…警報出力部
30…入庫センサ
40…制御装置、41…RF受信部、42…制御部、43…アンテナ
50…警報機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両が駐車可能な範囲を規定する1又は複数箇所にそれぞれ設置され、受信側における受信強度に基づいて送信箇所と受信箇所との距離を特定可能なトリガ信号を送信するトリガ送信機と、
前記トリガ送信機から送信されたトリガ信号を受信するトリガ受信手段と、前記トリガ受信手段により受信されたトリガ信号の受信強度を取得する受信強度取得手段と、前記トリガ受信手段により受信されたトリガ信号に対する応答として、前記受信強度取得手段によって取得された当該トリガ信号の受信強度を示す応答信号を外部へ送信する送信手段とを備え、車両の複数箇所にそれぞれ取り付けられる車載送信機と、
車両の駐車可能範囲からの逸脱に対する警告をする旨の警報を、当該車両の運転者に対して報知する警報手段と、
前記車載送信機から送信された応答信号を受信する応答受信手段と、
前記応答受信手段により受信された応答信号が示す受信強度に基づいて前記トリガ送信機と前記車載送信機との距離を特定し、この特定した距離が所定の警報領域内である場合、前記警報手段に警報を報知させる警報制御手段とを備えること
を特徴とする駐車支援システム。
【請求項2】
請求項1に記載の駐車支援システムにおいて、
前記警報手段は、警報の対象となる前記トリガ送信機を明示する態様にて警報を報知可能に構成されており、
前記警報制御手段は、前記トリガ送信機が複数設置されている場合、前記各トリガ送信機に所定の順序で順次トリガ信号を送信させるトリガ制御手段を更に備え、前記トリガ制御手段による前記トリガ信号の送信順と各車載送信機からの応答信号の受信順とに基づく個々の前記トリガ送信機と前記各応答信号との対応関係から、個々の前記トリガ送信機ごとに前記各車載送信機との距離を特定し、この特定した個々の前記トリガ送信機ごとの距離の何れかが警報領域内である場合、当該箇所の前記トリガ送信機を対象とする警報を前記警報手段に報知させること
を特徴とする駐車支援システム。
【請求項3】
請求項2に記載の駐車支援システムにおいて、
前記警報手段は、個々の前記トリガ送信機を対象とする警報について、1箇所で集中して報知可能に構成されていること
を特徴とする駐車支援システム。
【請求項4】
請求項2に記載の駐車支援システムにおいて、
前記警報手段は、個々の前記トリガ送信機にそれぞれ一体に設けられており、個々の前記トリガ送信機を対象とする警報について個別に警報を報知可能に構成されていること
を特徴とする駐車支援システム。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4の何れか1項に記載の駐車支援システムにおいて、
前記警報制御手段は、前記トリガ送信機と前記車載送信機との接近度合に応じて、前記警報手段に報知させる警報の態様を変更すること
を特徴とする駐車支援システム。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5の何れか1項に記載の駐車支援システムにおいて、
前記トリガ送信機は、駐車可能範囲の形状や障害物の位置に応じて任意の箇所に任意の個数で配置可能なユニットで構成されていること
を特徴とする駐車支援システム。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6の何れか1項に記載の駐車支援システムにおいて、
前記車載送信機は、複数のタイヤ付き車輪にそれぞれ設置され、前記タイヤの空気圧を測定する空気圧測定手段を更に備えており、前記空気圧測定手段により測定されたタイヤの空気圧を示す空気圧信号を、前記送信手段を介してタイヤ空気圧測定装置を構成する受信機へ送信するタイヤ空気圧測定装置の送信機として兼用されること
を特徴とする駐車支援システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−51473(P2009−51473A)
【公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−222800(P2007−222800)
【出願日】平成19年8月29日(2007.8.29)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】