説明

駐車車両検知方法及び駐車車両検知システム

【課題】 駐車車両の調査を、走行する調査車両を使用して効率的で精度良く行う。
【解決手段】 路上を走行する車両から路上の対象物を水平方向に複数回ラインスキャンしてエピポーラ平面画像(EPI画像)を取得する工程と、前記取得したEPI画像から、撮像した対象物に関する一以上の特徴軌跡を抽出する工程と、抽出した対象物の特徴軌跡の傾きを演算する工程と、演算した特徴軌跡の傾きと前記移動体の移動速度とに基づいて、対象物までの距離を演算する工程と、演算した対象物までの距離に基づいて駐車車両の有無を判別する工程とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駐車車両を自動的に検知する駐車車両検知方法及び駐車車両検出システムに関する。
【背景技術】
【0002】
路上に駐車されている車両(以下「駐車車両」という)は、渋滞や交通事故を招来し、消防活動や救急活動を阻害する要因ともなり得るものである。そのため、従来より、国や地方自治体などによって駐車車両の台数を調査して渋滞等に与える影響を分析することが行われている。
【0003】
このような駐車車両の調査は、一般に、車両や自転車に搭乗した調査員の手作業によって行われていた。しかし、この調査方法では、作業に手間がかかって効率が悪いと共に駐車車両のカウントや集計にミスが生じ易く、調査精度の面でも問題があった。
【0004】
この問題を解決するため、CCDカメラ等で駐車車両を撮像し、この撮像データを画像処理することで、駐車車両を識別してカウントすることも考えられる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記した駐車車両の計測方法では、画像処理に時間とコストがかかる割に駐車車両の検知精度が良くないという問題がある。例えば、撮像データの画像処理において、エッジの抽出や2値化処理などの単純な処理だけでは、駐車車両とその背景にある建物や街路樹とを精度良く識別することは困難である。特に、駐車車両は路側に複数台が連続して駐車されるという傾向があるため、個々の駐車車両を検知することができないと、駐車車両の台数をカウントできないことになる。
【0006】
さらに、調査の高速化・効率化のために調査車両を移動させながら駐車車両の画像データを取得する場合には、画像処理がより一層困難になる。
【0007】
本発明は上記の課題を解決するためになされたもので、駐車車両の調査を効率的で精度良く行うことができる駐車車両検知方法及び駐車車両検知システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の主要な観点によれば、路上を走行する車両から路上の対象物を水平方向に複数回ラインスキャンしてエピポーラ平面画像(EPI画像)を取得する工程と、前記取得したEPI画像から、撮像した対象物に関する一以上の特徴軌跡を抽出する工程と、抽出した対象物の特徴軌跡の傾きを演算する工程と、演算した特徴軌跡の傾きと前記移動体の移動速度とに基づいて、対象物までの距離を演算する工程と、演算した対象物までの距離に基づいて駐車車両の有無を判別する工程とを備えたことを特徴とする駐車車両検知方法が提供される。
【0009】
このような構成によれば、複数回のラインスキャンによって取得したEPI画像(撮像データ)を解析して駐車車両を判別するようにしたので、駐車車両を確実に判別できる。また、駐車車両の周囲のデータも同時に取得することで、駐車車両の規制等の道路行政に有益なデータを提供することができる。このようなEPI画像は、ラインスキャンカメラによる撮像の他、レーザスキャナが水平方向に複数回ラインスキャンを繰り返すことでも取得することができる。
【0010】
また、本発明の第2の主要な観点によれば、路上を走行する車両から路上の対象物を水平方向に複数回ラインスキャンしてエピポーラ平面画像(EPI画像)を取得する画像データ取得部と、前記対象物のEPI画像を時系列に沿って合成することで水平方向のEPI画像を取得する路上撮像部と、前記取得したEPI画像から前記対象物に関する一以上の特徴軌跡を抽出する特徴軌跡抽出部と、抽出した対象物の特徴軌跡の傾きを演算する傾き演算部と、演算した特徴軌跡の傾きと前記移動体の移動速度とに基づいて、移動体から対象物までの距離を演算する距離演算部と、演算した対象物までの距離に基づいて駐車車両の有無を判別する駐車車両有無判別部とを備えたことを特徴とする駐車車両検知システムが提供される。
【0011】
このような構成によれば、上記した第1の主要な観点における駐車車両検知方法を好適に実現可能な駐車車両検知システムを得ることができる。
【発明の効果】
【0012】
以上説明したように、本発明によれば、駐車車両の調査を効率的で精度良く行うことができる駐車車両検知方法、検知システム及び駐車車両検知装置を得ることができる。
【0013】
特に、走行する調査車両から撮像データを取得しながら駐車車両の判別やカウントを行うことができ、駐車車両の調査を効率良く行うことができる駐車車両検知方法等を得ることができる。
【0014】
なお、この発明の他の特徴と顕著な効果は、次の発明の実施の形態の項の記載と添付した図面とを参照することで、より明確に理解される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。以下においては、まず、本発明の参考となる実施形態を説明してから、本発明の実施形態を説明する。
(参考となる実施形態)
図1は、この実施形態にかかる駐車車両検知システムの概略説明図である。この図で符号1で示す駐車車両検知装置は、レーザスキャナ2によって路上の駐車車両3を含む撮像データを取得するものであり、道路4を走行する計測車両5に搭載されている。前記駐車車両検知装置1は、駐車車両3及び背景の街路樹6や建物7などの対象物までの距離情報、すなわち奥行きに基づいて、前記レーザスキャナ2が撮像した路上データから駐車車両3の側面データを抽出するものである。この実施形態では、前記撮像データの取得、駐車車両3の判別、カウント及び出力の各処理を走行する計測車両5上においてリアルタイムで実行するようにしている。これにより、駐車車両の調査を効率良く行うことができるようになる。
【0016】
ここで、本実施形態における路上撮像手段である前記レーザスキャナ2の概略構成を図2を参照して説明する。
【0017】
このレーザスキャナ2は、主として、対象物に対してレーザ光を送出するレーザ光送出部8と、対象物から反射されたレーザ光を受信するレーザ光受信部9とからなる。前記レーザ光送出部8は、半導体レーザダイオード10と、一対のプリズム11、11と、送出用レンズ12と、回転可能なポリゴンミラー13と、スキャンライン調整用ミラー14とを備えている。また、前記レーザ光受信部9は、複数の受信用ミラー15、15と、受信用レンズ16と、フォトダイオード17とを備えている。なお、符号18は、レーザ光の送受信用の窓である。
【0018】
このような構成において、前記半導体レーザダイオード10からレーザ光を発振するとポリゴンミラー13の回転によって水平方向に1次元的なスキャンラインを描き、ラインスキャンが可能となる。さらに、前記ミラー14の回転を加えることで、このスキャンラインを微小角度ずつ垂直方向に変化させ、2次元のエリアスキャンが可能となる。鉛直方向にラインスキャンする場合は、このレーザスキャナ2を90度傾けて設置すれば良い。
【0019】
前記レーザスキャナ2を使用して対象物までの距離を計測する方法として、例えば時間差計測法と位相差計測法がある。ここでは、時間差計測法の例を、図3を参照して説明する。この方法は、パルスレーザ光の飛行時間(time-of-flight;TOF)を直接計測することにより、対象物までの距離を求める方法である。この計測法では、対象物までの距離D[m]は、計測された時間差Δt[sec]から次式で求められる。
【0020】
2D=cΔt(ただし、光速度c=3.0×10[m/sec])
時間差計測法を採用する場合、光の速度が速いため、測定精度を上げるには短い時間間隔を正確に計測しなければならない。例えば、測定精度が1mの場合には6.7×10−9sec(=6.7ns)、さらに1cmでは0.067nsの時間分解能を必要とする。なお、この方法の測定精度は原理的に測定距離の大小には依存しないという特性を有する。
【0021】
このような距離計測と、図2で説明した2次元のエリアスキャン機構とを組み合わせることで、路上の対象物を3次元的に計測することが可能となる。このとき、対象物の3次元形状は、高精度な3次元位置情報をもつ点の集合、すなわちレンジポイントとして表されることになる。
【0022】
このレンジポイントで駐車車両3を表わした例を図4に示す。図中の無数の点がレンジポイントである。この図から明らかなように、駐車車両3の車体はレンジポイントが密集している部分(集合)として示されており、このような集合を抽出することで、駐車車両3の存在はもとより、車体の大きさ等を判別することができるものである。
【0023】
また、駐車車両3の後方(y軸方向)には、レンジポイントが全く現れない領域、すなわち駐車車両3によってレーザ光が遮蔽された領域(影)が存在する。この遮蔽領域を抽出することによっても駐車車両3の有無を容易に判別できるものである。
【0024】
次に、図5のブロック図を参照して、駐車車両検知装置1の構成を説明する。
この装置1は、前記計測車両5に搭載されたコンピュータシステムに設けられており、CPU20とRAM21とモデム等の通信デバイス22と入出力装置23が接続されたバス24に、データ格納部25とプログラム格納部26とを備えて構成されている。
【0025】
前記データ格納部25は、レーザスキャナ2が撮像したデータを格納する撮像データ格納部27と、後述する駐車車両有無判別部36によって判別された駐車車両3の側面データ等を格納する駐車車両データ格納部28と、駐車車両3の計測条件・計測環境等を格納する計測条件格納部29とを備えている。ここで、計測条件格納部29には、例えば、計測の日時・計測時の気象条件・計測車両5の平均速度・設定された閾値などが格納される。
【0026】
前記プログラム格納部26は、メインプログラム32の他、前記レーザスキャナ2が撮像した路上の画像データを受取って前記撮像データ格納部27に格納する撮像データ取得部33と、本発明の要旨である側面データ抽出部34及び遮蔽領域抽出部35と、駐車車両有無判別部36と、駐車車両台数算出部37と、駐車領域占有率演算部38と、例えば、計測車両5のタイヤの回転数等から計測時の速度や距離の条件を取得して前記計測条件格納部29に格納する速度・距離情報取得部39と、算出された駐車車両3の台数や駐車領域占有率等の処理結果を前記入出力装置23のディスプレイ等に出力する処理結果出力部40とを備えている。
【0027】
前記側面データ抽出部34は、路上の対象物を撮像した撮像データから路上に駐車した駐車車両3の側面データを抽出するものであり、図6に示す構成を備えている。
【0028】
すなわち、この側面データ抽出部34は、取得した撮像データのノイズ除去等の前処理を行う撮像データ前処理部41と、前記撮像データに含まれるレンジポイントの高さの情報(図4のz軸の値)に基いて前記対象物の高さを演算する高さ演算部42と、車両の一般的な車高若しくはタイヤ径の少なくとも何れかに基づいて対象物の高さの閾値を設定する高さ閾値設定部43と、前記駐車車両有無判別部36で判別された駐車車両3の所定台数毎若しくはレーザ光の所定の走査周期毎の高さ情報をランダムに抽出する高さデータ抽出部44と、抽出された複数の高さ情報に基づいて前記設定された閾値を動的に更新する閾値更新部45と、演算した対象物の高さが所定の閾値以上のフレームが所定数連続する場合に、その連続するフレームを駐車車両3の側面データとして出力する側面データ出力部46と、前記移動体の移動速度に基づいて、前記フレームが連続する所定数の基準値を設定する基準フレーム数設定部47とを備えている。
【0029】
ここで、前記撮像データ前処理部41は、主として、前記レーザスキャナ2から取得した撮像データのセンサ座標系の変換及び撮像された対象物の三次元形状の復元と、前記高さ演算部42が演算した車体側面点集合の平滑化の各処理を行うものである。
【0030】
また、前記高さデータ抽出部44は、前記のように高さデータをランダムに抽出して閾値更新部45に送出するものである。これにより、閾値を動的に更新して検知精度の向上を図ることができ、また更新した閾値に基づいて再度側面データの抽出処理を行うことで、側面データの抽出漏れを検証することができる。
【0031】
なお、前記撮像データ前処理部41及び高さ演算部42が行う各処理の詳細については後述する。
【0032】
次に、図5に示す前記遮蔽領域抽出部35は、前記撮像データから、対象物によってレーザ光が遮蔽された領域(オクルージョン)を抽出するものである(図4参照)。この遮蔽領域抽出部35は、本実施形態では、前記側面データ抽出部34を補完する機能を備えている。すなわち、対象物が黒色の場合はレーザ光の反射率が極端に低いため、黒色の駐車車両3については側面データを抽出できないおそれがある。そのため、遮蔽領域の抽出による駐車車両3の判別を併用することで、判別精度の向上を図るものである。なお、遮蔽領域抽出部35の機能等は、後に詳しく説明する。
【0033】
前記駐車車両有無判別部36は、前記側面データ抽出部34が抽出した駐車車両3の側面データ若しくは遮蔽領域抽出部35が抽出した遮蔽領域データに基づいて、駐車車両3の有無を判別するものである。
【0034】
前記駐車車両台数算出部37は、前記駐車車両有無判別部36で判別された駐車車両3の台数をリアルタイムでカウントするものである。
【0035】
前記駐車領域占有率演算部38は、前記駐車車両有無判別部36で駐車車両3が存在すると判別されたフレームの数を、前記撮像データの総フレーム数で除算することで、駐車可能な領域に占める駐車車両の比率を算出するものである。この占有率の具体的な考え方を図7に示す。
【0036】
この図において、右下がりの斜線で示すのが駐車車両3によって占有されたフレーム数であり、右上がりの斜線で示すのが計測対象の全フレーム数である。この図から明らかなように、車両の長さの固定値(例えば3m)に駐車車両3の台数を乗じて画一的に算出するのではなく、駐車車両3のフレーム数(すなわち、車両の全長)を基礎とすることで占有率をより正確に算出できるものである。
【0037】
このように、駐車領域における占有率という新たな指標を提供することで、渋滞の解消等の道路行政の種々の課題解決への有効活用が期待できる。
【0038】
上記の各構成要素等は、実際には、コンピュータシステムにインストールされたコンピュータソフトウエアプログラム若しくは1つのプログラム中のサブルーチンである。そして、前記CPU20によってRAM21上に呼び出され実行されることで、この発明の各機能を奏するものである。
【0039】
次に、図8〜図10を参照して前記撮像データ前処理部41が行う各処理を説明する。
【0040】
まず、センサ座標系の変換について説明する。
前記レーザスキャナ2が撮像したデータでは、1つのレンジポイントについて以下の情報を得ることができる。
【0041】
フレーム番号:m(その点が属するフレームの番号;m=1、2、3、L)
スキャン番号:n(フレーム内でのその点の番号;n=1、2、3…165)
点までの距離:r
スイング角:α(一定値;α=0°)
スキャン角:β(−50°≦β≦+20°)
計測時刻:t(n=1の時のみ)
ここで、本実施形態では、対象物を鉛直(縦)方向に走査するラインスキャンを行うようにしており、水平方向の計測角を示す前記スイング角αは0°に固定されている。また、前記スキャン角βは垂直方向の計測角を示している。これらの計測角は、図8に示すように、計測車両5と計測対象である駐車車両3との距離や車高、レーザスキャナ2の設置高さ等を参照して設定される。
【0042】
また本実施形態では、計測車両5が走行しながらレーザスキャナ2で路上の対象物をスキャンしており、レーザスキャナ2の位置が時々刻々と変化している。そのため、「センサ座標系」上の値である「点までの距離r、スイング角α及びスキャン角β」を夫々ワールド座標系に変換してレンジポイントの位置を実空間上で正確に表現する必要がある。このような座標系の変換は図9に示す工程で行う。また、ワールド座標系(p)とセンサ座標系(p’)との関係を図10に示す。
【0043】
前記レンジポイントは、全てが特定のスキャンラインに属し、その中でも何番目にスキャンされた点であるかという情報を持っているため、m、nのIDタグが付加される。従って、対象物の三次元形状を以下のように表わすことができる。
【0044】
【数1】

【0045】
上記のような座標変換を行うことで、駐車車両3の三次元形状を復元したのが前記した図4の状態である。このような処理は、換言すれば、レーザスキャナで2で取得されたデータは計測点から対象物までの距離情報を有し、極座標系モデルによって記述される。このデータを直交座標系モデルに変換することで、前記三次元形状への復元を行うものである。
【0046】
また、この撮像データ前処理部41は、車体側面点集合の平滑化も行う。この平滑化処理は、前記高さ演算部42が作成した後述する高さ曲線について、所定の幅でフィルタ処理を行い、所定の重み係数を適用することで、この高さ曲線に含まれるノイズを除去するものである。
【0047】
次に、前記高さ演算部42が、撮像データに含まれる対象物の高さを演算する工程を詳細に説明する。
【0048】
まず、この高さ演算部42は、撮像データから車体側面を示す点の集合(B)を以下の式に従って抽出する。
【0049】
【数2】

【0050】
この式では、以下の式で抽出した路面点集合(A)に属さない点のうち、y座標が適当な範囲におさまっているレンジポイントを車体側面点集合(B)に属するとみなしている。なお、次式は遮蔽領域の抽出の際にも用いる。
【0051】
【数3】

【0052】
また、上記の「適当な範囲」の例を図11に示す。この図では、煩雑さを避けるため、レンジポイントが密集した部分を右上がりの斜線で示し、レンジポイントの密度が小さい部分を左上がりの斜線で示している。この例では、最小値を1.0mの固定値とし、最大値については、ypeakなる奥行き位置を決めてそれよりも1.0m奥までを最大値とした。このypeakは、「前記路面点集合に属さない点集合内において、y軸方向に沿って点の個数のヒストグラムをとり、最初の極大値を与えるy座標」と定義できる。これにより、ypeakは縦列駐車された駐車車両の車体右側付近に存在することになり、車体側面の点集合を正確に抽出することができる。また、レーザスキャナ2の測定精度(0.5m等)を考慮して駐車車両の側面を含む領域を抽出するのが好ましい。なお、この図で、駐車車両の奥側に現れているレンジポイントの密集部分は、ガードレール若しくは建物の壁等の背景と考えられる。
【0053】
このようにして抽出した車体側面点集合(B)の内の各スキャンラインについて、座標が最大となる点を結ぶことによって図12に示す高さ曲線が得られる。なお、この高さ曲線については、前記撮像データ前処理部41が平滑化フィルタにより高周波ノイズを除去することで車体側面の稜線(輪郭線)を表わす線を取得するようにする。一例として、フィルタの幅は3(前後1近傍)、各重み係数は何れも1に設定する。
【0054】
また、この高さ曲線の主変数はスキャンライン番号nであり、次式で表わすことができる。
【0055】
【数4】

【0056】
図12(A)は前記撮像データ前処理部41による平滑化処理前、(B)は平滑化処理後の高さ曲線である。この図に示す撮像データからは、車体側面データが3台分抽出されることが分かる。
【0057】
次に、前記駐車車両有無判別部36が、前記高さ曲線に基づいて駐車車両の有無を判別する工程を詳細に説明する。
【0058】
この駐車車両有無判別部36は、図12に示した高さ曲線に所定の閾値を与えて、高さ曲線の交点から交点までを駐車車両の候補が存在する部分、あるいは存在しない部分と判断するものである。
【0059】
高さ曲線に与える閾値をzthとすると、車両候補の存在判定は次式で表現される。
【0060】
【数5】

【0061】
ここで、Eは、第m番目のフレームに駐車車両の候補が存在しているかどうかを表す0/1変数である。1は車両候補が存在することを、0は存在しないことを意味する。
【0062】
また、閾値zthは、例えば次式で与えることができる。
【0063】
【数6】

【0064】
0.5mという固定値は、駐車車両3のタイヤ径よりも高い位置にある車両本体を考慮して前記高さ閾値設定部43が設定したものである。
【0065】
前記Eは1本のスキャンラインにのみ関する情報である。そこで、E、E、E、…のシーケンスから、「0111…1110」のように1が連続するパターンを検索する。また、ノイズや突出値の影響を取り除くため、予め「011110」や「100001」のように幅が4以内の1若しくは0は、すべて0若しくは1に変換してEを修正しておく。
【0066】
検索されたパターンのうち、「111L111」の幅がF以上であるものを1台の駐車車両と識別する。Fの値は、前記基準フレーム数設定部47が計測車両5の走行速度vに応じて設定するものである。ここでは、長さが2m以上のものを1車両と識別することにし、次式のように与えることにした。
【0067】
【数7】

【0068】
このような処理を行うことで、図12(B)に示すように、適切な位置に閾値線を引くことができ、高さ曲線に基づいて駐車車両を正確に識別することができる。
【0069】
以下、この駐車車両検知装置1の詳細な機能を実際の動作と共に、図13を参照して説明する。なお、これらの図のS1〜S12は処理順序を示す符号であり、以下の説明のステップS1〜S12に対応する。
【0070】
まず、前記撮像データ取得部33が、レーザスキャナ2が路上を撮像した撮像データを取得して、前記撮像データ格納部27に格納する(ステップS1)。
【0071】
ついで、取得した撮像データについて、前記撮像データ前処理部48が所定の前処理を実行する。具体的には、上記したように「センサ座標系」をワールド座標系に変換し(ステップS2)、図11に示すように、IDタグ付き点集合によって対象物の3次元形状を復元する(ステップS3)。
【0072】
ついで、前記高さ演算部42が車体側面の点集合を抽出する(ステップS4)。抽出した点集合にはノイズが多く含まれていることから、前記撮像データ前処理部48が平滑化処理によってノイズを除去する(ステップS5)。
【0073】
ついで、前記高さ演算部42が、対象物の高さ曲線を演算すると共に(ステップS6)、前記高さ閾値設定部43が、車高やタイヤ径に基づいて対象物の高さ曲線に対する閾値線(この例では0.5m)を算出する(ステップS7)。この状態で、高さが閾値線よりも大きいフレームを前記側面データ出力部46が抽出して前記駐車車両有無判別部36に送出する(ステップS8)。抽出された高さのデータが車両の候補となる。
【0074】
抽出された高さ(車両候補)のデータを受取った駐車車両有無判別部36は、対象物の高さが閾値線よりも大きい「E=1」フレームが所定数以上連続しているかを判断し、連続していないフレームについては「E=0」に補正する(ステップS9)。補正した結果、「E=1」が所定数連続するフレームを駐車車両3と判別する(ステップS10)。そして、前記駐車車両台数算出部37が、前記駐車車両3と判別された台数をカウントして出力する(ステップS11)。また、前記駐車領域占有率演算部38が、図7に示すように、駐車車両3と判別されたフレームの数に基づいて駐車車両3の占有率を演算する(ステップS12)。
【0075】
次に、前記遮蔽領域抽出部35について説明する。
本の実施形態では、上記したように前記側面データ抽出部34が抽出する側面データと、遮蔽領域抽出部35が抽出するレーザ光の遮蔽エリア(路面点集合)とに基づいて駐車車両3の有無を判別する点に特徴を有している。
【0076】
図14に示すように、この実施形態にかかる遮蔽領域抽出部35は、撮像データ前処理部50と、前記撮像データに含まれるレンジポイントの奥行きの情報(図4のyの値)に基いて前記対象物の奥行きを演算する奥行き演算部51と、車両の全幅に基づいて対象物の奥行きの閾値を設定する奥行き閾値設定部52と、奥行きデータ抽出部53と、閾値更新部54と、演算した対象物の奥行きが所定の閾値以下のフレームが所定数連続する場合に、その連続するフレームを駐車車両3による遮蔽領域として出力する遮蔽領域出力部55と、基準フレーム数設定部56とを備えている。
【0077】
前記奥行き演算部51は、まず、次式によって撮像データから路面を示す点の集合(A)を抽出する。この路面点集合の抽出は、レンジポイントの垂直位置(路面からの高さ)に着目して行う。この例では、駐車車両の前後のタイヤの間(車体の底面)はレーザ光が車体側面よりも奥側に到達することから、タイヤ径よりも高い位置のレンジポイントを基準にするため、高さを0.5mに設定した。この場合も、レーザスキャナ2の測定精度を考慮して路面点集合を抽出する領域を決定するのが好ましい。
【0078】
【数8】

【0079】
次に、抽出した路面点集合から、図15に示す奥行き曲線を作成する。具体的には、抽出した路面点集合の内の各スキャンラインについて、y座標が最大となる点を結ぶことによって得られる。この奥行き曲線はスキャンライン番号nを主変数とし、以下のように表される。
【0080】
【数9】

【0081】
この奥行き曲線は、レーザスキャナ2から離れた位置の少ないレンジポイントに基づいて作成することになり、ノイズを多く含むことから、前記撮像データ前処理部50によってフィルタをかけて平滑化しておく。具体的には、路面データの分布領域は、レーザによる路面上の可視領域を意味し、その奥行き(y軸)方向の境界は、スキャン毎のyの最大値から構成することができることになる。この奥行き方向の境界線から、平滑化フィルタによって高周波ノイズを除去することで、路上駐車車両による遮蔽部分を表わす奥行き曲線を好適に取得できる。一例として、フィルタの幅は9(前後4近傍)、各重み係数は何れも1に設定した。
【0082】
これにより図15の奥行き曲線が得られる。図15(A)は前記撮像データ前処理部50による平滑化処理前、(B)は平滑化処理後の奥行き曲線である。この図に示す撮像データからは、遮蔽領域データが3台分抽出されることが分かる。
【0083】
また、この状態の遮蔽領域データが前記駐車車両有無判別部36に送出されると、この駐車車両有無判別部36は、図15に示した奥行き曲線に所定の閾値を与えて、奥行き曲線の交点から交点までを駐車車両の候補が存在する部分、あるいは存在しない部分と判断する。
【0084】
奥行き曲線に与える閾値をythとすると、車両候補の存在判定は次式で表現される。なお、この閾値は、前記奥行き閾値設定部52が設定するものである。
【0085】
【数10】

【0086】
ここで、Eは、第m番目のフレームに駐車車両の候補が存在しているかどうかを表す0/1変数である。1は車両候補が存在することを、0は存在しないことを意味する。
【0087】
また、閾値ythは、例えば次式で与えることができる。
【0088】
【数11】

【0089】
このように、駐車車両と識別された若しくは識別される可能性が高いデータに基づいて閾値を設定することで、駐車車両の判別精度を向上させることができる。また、1.5mという固定値は、駐車車両3の全幅が通常3m程度であることを考慮したものである。
【0090】
このようにして設定された閾値線(この例では約5.5m)を適用すると共に、第1の実施形態と同様にEを修正することで、図15(B)のように、駐車車両3台分の遮蔽領域を出力することができる。
【0091】
以下、この実施形態にかかるシステム1の詳細な機能を実際の動作と共に、図16を参照して説明する。なお、これらの図のS13〜S26は処理順序を示す符号であり、以下の説明のステップS13〜S26に対応する。また、上記した第1の実施形態と共通の処理工程は詳細説明を省略する。
【0092】
まず、前記撮像データ取得部33が撮像データを取得して前記撮像データ格納部27に格納する(ステップS13)。ついで、取得した撮像データについて、前記撮像データ前処理部48が所定の前処理を実行する(ステップS14、S1
5)。
【0093】
ついで、前記奥行き演算部51が、前記撮像データのレンジポイントの高さ情報に基いて路面点集合(A領域)を抽出する(ステップS16)。また、前記撮像データ前処理部50が路面点情報を平滑化してノイズを除去する(ステップS17)。
【0094】
ついで、前記奥行き演算部51が、対象物の奥行き曲線を演算すると共に(ステップS17)、奥行き閾値設定部52が駐車車両の全幅などに基づいて奥行き曲線の閾値を設定する(ステップS18、S19)。この状態で、奥行きが閾値線よりも小さいフレームを前記遮蔽領域出力部55が抽出して前記駐車車両有無判別部36に送出する(ステップS21)。抽出された高さのデータが車両の候補となる。
【0095】
前記駐車車両有無判別部36は、奥行きが閾値線よりも低いフレームが所定数以上連続しているかを判断し、連続していないフレームについて補正する(ステップS22)。
【0096】
ついで、抽出された路面点データに基づいて前記駐車車両有無判別部36が、駐車車両3と判別する(ステップS23)。判別した結果に基づいて、前記駐車車両台数算出部37が駐車車両の台数を出力し、前記駐車領域占有率演算部38が駐車車両3の占有率を演算する(ステップS24、S25)。
【0097】
(本発明の実施形態)
次に、図17乃至図22を参照して、本発明の実施形態を説明する。この実施形態は、ラインスキャンカメラを使用して3次元のエピポーラ平面画像(EPI画像)を取得し、取得した画像データの特徴軌跡の傾きに基づいて駐車車両を判別する点に特徴を有する。
【0098】
この実施形態にかかる駐車車両検知装置60は、図17に示すように、路上を走行する計測車両5から路上の対象物を水平方向に複数回ラインスキャンしてエピポーラ平面画像(EPI画像)を取得するラインスキャンカメラ61と、前記対象物のEPI画像を時系列に沿って合成することで水平方向のEPI画像を取得する路上撮像部62と、前記取得したEPI画像から前記対象物に関する一以上の特徴軌跡を抽出する特徴軌跡抽出部63と、抽出した対象物の特徴軌跡の傾きを演算する傾き演算部64と、演算した特徴軌跡の傾きと前記計測車両5の走行速度とに基づいて、計測車両5から対象物までの距離を演算する距離演算部65と、演算した対象物までの距離に基づいて駐車車両3の有無を判別する駐車車両有無判別部66とを備えている。
【0099】
実際の駐車車両3の画像データを図18(A)に、前記ラインスキャンカメラ61によって取得された画像を図18(B)に、前記特徴軌跡抽出部63や傾き演算部64等によって画像処理した結果を図18(C)に夫々示す。
【0100】
まず、図18(B)の画像は、縦一列の画像が1ライン分であり、スキャンを繰り返すたびに横に右方向にライン画像を並べていくことで生成される.このことから、左から右へ向かう方向が時間を、縦方向は空間を意味する時空間画像、すなわちエピポーラ平面画像(EPI画像)と考えることができる。
【0101】
この画像中には、対象物の特徴点の軌跡67が右下がりの直線として現れている。この画像を処理することで、特徴軌跡(feature path)を抽出し、それらの直線の傾きからその特徴点までの奥行き距離を求めることができる。
【0102】
以下に、具体的な画像処理の工程を説明する。
【0103】
(前処理工程)
まず、前記時空間画像を、時間方向に一定のライン数ずつ、重複することなく分割する。この各分割画像に対して、Cannyのエッジ検出アルゴズムでエッジを検出することで、図19に示すように2値化する。この図から、直線が鮮明に現れていることが分かる。
【0104】
(直線抽出工程)
次に、得られた2値化画像中の直線を抽出するために、ハフ変換処理を行う。分割画像中の直線は、図20のように原点Oから直線へ下ろした垂線の足をRとすれば、r=ORと法線ベクトル角度φによって一意に表せる。また、上の分割画像に対してハフ変換を適用して得られたハフ空間像を図21に示す。r=−500、φ=145度付近にピークがあり、これが最も強い特徴軌跡を意味する。したがって分割画像中での特徴軌跡の傾きは、145−90=55°である。
【0105】
(奥行き計算工程)
抽出された直線の傾きmに対して、それに対応する特徴点までの奥行距離Lが次式にしたがって計算される。
【0106】
【数12】

【0107】
したがって、奥行き距離LとEPI画像中の直線の傾きmは比例する。そこで時間方向に200本ずつのライン数で分割した画像にハフ変換を適用し、各分割画像に対して得られたハフ空間像における最大のピークに対応する直線だけを抽出する。この直線はEPI中の最もエッジの強い特徴軌跡を意味する。このようにして抽出された直線の法線方向の角度φを、分割画像の時系列にしたがってプロットしたものが図18(C)のグラフである。この図から、法線方向角度φ=145°、つまり、EPI中で傾き145−90=55°をもつ特徴軌跡の奥行き距離が最も短いことを分かる。これが駐車車両の奥行き距離に相当する。
【0108】
(閾値設定工程)
EPI画像から抽出された直線の法線方向角度の時間変化は図18(C)のようなグラフとして得られる。また、法線方向角度と奥行距離とが比例することから、駐車車両3の検出には、図18(C)のグラフのように閾値を利用するのが簡便である。このときの閾値φthは次式のように、カメラ(=計測車両)の速度Vと奥行距離Lthに依存することが分かる。
【0109】
【数13】

【0110】
なお、計測車両5の速度Vは計測可能であるが、計測車両5と駐車車両3との距離Lthは計測環境、特に道路の車線の幅や計測車両5の横方向運動軌跡に依存するため、その値を特定することは困難である。そこで、車線の幅、駐車車両の例としてセダンタイプの車両の全幅、及び計測車両5の全幅に基づいてLthを算出する工程を図22に示す。
【0111】
(正規化)
この例では、分割画像のサイズは約1:7の縦横比を持つ画像としているため、同程度に強いエッジを持つ直線であっても、縦の直線の長さは横に比してかなり短くなる。そこで、抽出における直線の強さの指標をその直線の長さに対する相対的な強さとして扱って正規化している。これにより、ノイズを低減できる。
【0112】
(実施形態の効果)
上記した各実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
【0113】
1)路上の対象物を撮像したデータから駐車車両の側面データを抽出する側面データ抽出工程と、前記抽出した側面データに基づいて、駐車車両の有無を判別する駐車車両有無判別工程と、路上を走行する車両から前記対象物にレーザ光を走査しながら送出し、その反射レーザ光を検出することで前記対象物の撮像データを取得する路上撮像工程を実行するようにした。これにより、撮像データから抽出した駐車車両の側面データに基づいて駐車車両の有無を判別することができるようになる。また、側面データを参照することで、駐車車両の整列状況による影響が少なく、検知精度を向上させることができる。さらに、レーザ光で走査することで、天候や影、屋外光などの影響を受けずに撮像データを取得することができる。この方法では、対象物までの距離を直接計測できるため、取得したデータの解析に要するコスト及び時間を低減できる。さらに、レーザ光を反射したレンジポイントの密度が高い車体の側面を参照することになるので、ノイズの影響を最小限に抑えることができ、検知精度をより向上させることができる。
【0114】
2)前記駐車車両有無判別工程で判別された駐車車両の台数をカウントして出力する駐車車両台数算出工程を実行することで、レーザ光による撮像データを取得しながら、駐車車両の台数をカウントすることができるようになる。
【0115】
3)前記路上撮像工程で、前記レーザ光を水平方向に走査し、このレーザ光を、撮像データの各フレームに属するスキャンラインとそれに連続する1以上のフレームに属するスキャンラインとをオーバーラップさせて走査したり、さらに、前記レーザ光を路上の対象物に対して水平方向に複数回走査することで、対象物までの距離の情報を有するエピポーラ平面距離画像データを取得するようにした。これにより、ラインスキャンによって駐車車両の判別に有益な撮像データを得ることができる。
【0116】
4)前記路上撮像工程で、レーザ光の送出から反射光の検出までの時間差若しくは照射したレーザ光と検出した反射光との位相差に基づいて、路上の対象物までの距離データを有する撮像データを取得することにより、取得した撮像データに基づいて車両の側面データを確実に抽出することができる。
【0117】
5)前記側面データ抽出工程で、前記撮像データに含まれるレンジポイントの高さの情報に基いて前記対象物の高さを演算する高さ演算工程と、演算した対象物の高さが所定の閾値以上のフレームを駐車車両の側面データとして出力する側面データ出力工程とを実行するようにした。また、前記側面データ抽出工程で、車両の車高に基づいて対象物の高さの閾値を設定する高さ閾値設定工程を実行することにした。また、前記高さ閾値設定工程において、前記駐車車両有無判別工程で判別された駐車車両の所定台数毎若しくはレーザ光の所定の走査周期毎の高さ情報を抽出する高さ情報抽出工程と、抽出された複数の高さ情報に基づいて前記設定された閾値を更新する閾値更新工程とを実行するようにした。さらに、前記側面データ出力工程で、対象物の高さが所定の閾値以上のフレームが所定数連続する場合に、その連続するフレームを駐車車両の側面データとして出力するようにした。このような構成により、撮像データから側面データを抽出する際の閾値を適切な値に設定・更新できる。
【0118】
6)前記側面データ抽出工程で、前記撮像データに含まれるレンジポイントの奥行きの情報に基いて前記対象物の奥行きを演算する奥行き演算工程と、演算した対象物の奥行きが所定の閾値以下であるフレームを駐車車両の側面データとして出力する側面データ出力工程を実行するようにした。また、この側面データ出力工程で、車両の全幅に基づいて対象物の奥行きの閾値を設定する奥行き閾値設定工程を実行したり、対象物の奥行きが所定の閾値以下のフレームが所定数連続する場合に、その連続するフレームを駐車車両の側面データとして出力するようにしたり、前記車両の移動速度に基づいて、前記フレームが連続する所定数の基準値を設定する基準フレーム数設定工程を実行するようにした。また、前記奥行き閾値設定工程において、前記駐車車両有無判別工程で判別された駐車車両の所定台数毎若しくはレーザ光の所定の走査周期毎の奥行き情報を抽出する奥行き情報抽出工程と、抽出された複数の奥行き情報に基づいて前記設定された閾値を更新する閾値更新工程とを実行するようにした。このような構成により、撮像データに含まれる奥行きの情報に基づいて、この撮像データかた側面データを抽出することができる。
【0119】
7)前記撮像データから、対象物によってレーザ光が遮蔽された領域(オクルージョン)を抽出する遮蔽領域抽出工程をさらに実行し、前記駐車車両有無判別工程で、前記抽出された駐車車両の側面データ若しくは遮蔽領域データの少なくとも何れかに基づいて駐車車両の有無を判別することにより、側面データの抽出が困難な場合でも遮蔽領域に基づいて駐車車両を判別することができる。
【0120】
8)前記駐車車両有無判別工程で駐車車両が存在すると判別されたフレームの数を、前記撮像データの総フレーム数で除算し、駐車可能な領域に占める駐車車両の比率を算出する駐車領域占有率演算工程を実行することにより、駐車車両の規制等に有益で客観的な情報を提供することができる。
【0121】
9)路上を走行する計測車両に搭載される駐車車両検知装置を、前記対象物にレーザ光を照射し、対象物から反射されたレーザ光を受信して撮像データを取得する路上撮像部と、取得した撮像データから駐車車両の側面データを抽出する側面データ抽出部と、抽出された側面データに基づいて駐車車両の有無を判別する駐車車両有無判別部と、判別された駐車車両の台数をカウントして出力する駐車車両カウント部とで構成した。これにより、撮像データの取得や駐車車両の判別及び判別した駐車車両のカウントの各処理を、計測車両で走行しながらリアルタイムで行うことができる。
【0122】
なお、この発明は上記した各実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を変更しない範囲で種々変形可能である。
【0123】
例えば、上記実施形態においては、計測車両5に搭載した駐車車両検知装置1を搭載し、路上を走行しながらリアルタイムで駐車車両3を検知するようにしたがこれに限定されない。例えば、計測車両5にはレーザスキャナ2と撮像データ格納部27だけを搭載し、取得した撮像データを後刻一括して処理するようにしても良い。これにより、計測車両5に搭載する機器を簡素化できると共に、撮像データの処理速度を考慮して計測車両5の走行速度を加減する必要がない。
【0124】
また、レーザスキャナ2が取得した撮像データを情報処理センタのサーバに随時送信して、複数の計測車両5が取得した撮像データを集中的に処理するようにしても良い。
【0125】
また、本発明は路上の駐車車両3の検知に限らず、種々の駐車場における駐車車両3の検知にも適用できる。また、レーザスキャナ等を搭載する移動体も計測車両5に限らず、駐車場や特定の道路の路側等の所定のエリアに予め敷設された軌道上で移動可能な計測装置でも良い。この場合は、計測装置を所定の周期で移動させてエリア内の駐車車両を定期的に検知するようにするのが好ましい。
【0126】
さらに、撮像データを取得するセンサの種類や撮像データの解析方法、アルゴリズム等は上記した例に限定されず、種々変更可能である。レーザスキャナの走査方向も、鉛直方向・水平方向・斜め方向の何れでも良い。
【0127】
また、計測車両5が非等速で走行した場合でも、GPS(global positioning system)やINS(inertial navigational system「慣性航法装置)を用いて計測車両5(レーザスキャナ2等)の自己位置を同時に記録することで、検知精度を維持することができる。
【0128】
また、上記した参考実施形態のレーザスキャナ2を使用して、本発明の実施形態のようなEPI画像を取得することも可能である。例えば、図23に示すように、水平方向のスキャンラインをラインスキャンカメラのように時間軸に沿って層のように縦方向に並べる(図23(a))。この層を走行速度に応じて横にスライドさせたのが図23(b)である。これを平面状に投射すると図23(c)(d)の画像になる。この図から、4台の駐車車両が存在することがわかる。この手法では、(b)の画像を導く再の処理にEPI解析の手法を応用することで、レーザスキャナ(計測車両)の移動速度が未知の場合であっても、適切な位置併せを行うことができるものである。
【実施例1】
【0129】
以下に、上記実施形態として説明した駐車車両検知装置を使用して行った駐車車両の検知結果について説明する。
【0130】
(実施例1)
まず、計測車両に搭載したレーザスキャナが撮像したデータから車両の側面データ若しくは遮蔽領域を抽出して駐車車両の有無を判別した例を説明する。
【0131】
計測条件を図24に、計測結果を図25に夫々示す。
これらの図から明らかなように、走行する計測車両に搭載したレーザスキャナで撮像したデータから、駐車車両の存在を正確に判別することができている。また、レーザスキャナによる撮像データの解析に要する時間がわずか数秒であることを考えると、高速で走行しながら、路側の駐車車両を判別してリアルタイムでカウントすることが可能であることが容易に理解できる。さらに、車体側面データを抽出する方法と、遮蔽領域を抽出する方法の何れにおいても、良好な計測結果が得られた。
【0132】
(実施例2)
次に、計測車両に搭載したラインスキャンカメラが撮像したEPI画像から車両の特徴軌跡を抽出し、その傾きによって駐車車両の有無を判別した例を説明する。
【0133】
計測条件を図26に、計測結果を図27に夫々示す。
これらの図から理解できるように、駐車車両はほぼ全数を検出できたが、一方で誤検出した台数も若干あった。走行速度による精度の相違は認められなかった。
【0134】
誤検出の原因としては、例えば、駐車車両からの反射光や駐車車両への周囲の映り込み、及び特殊構造の駐車車両などが挙げられる。これらの原因に対しては、レンズにフードを装着したり、円偏向フィルタを利用したり、複数のラインスキャンカメラを使用することによって何れも容易に除去することができるものであった。
【図面の簡単な説明】
【0135】
【図1】本発明の参考となる実施形態にかかる駐車車両検知システムの概略説明図。
【図2】レーザスキャナの概略構成図。
【図3】時間差計測法を説明するための図。
【図4】レンジポイントで駐車車両を表わした図。
【図5】駐車車両検知装置の概略構成を示すブロック図。
【図6】側面データ抽出部の概略構成を示す図。
【図7】駐車領域占有率の考え方を説明するための図。
【図8】スキャン角β(垂直方向の計測角)を示す図。
【図9】座標系の変換工程を示す図。
【図10】ワールド座標系(p)とセンサ座標系(p’)との関係を示す図。
【図11】車両側面を示すレンジポイントを示す図。
【図12】対象物の高さデータとフレームとから作成した高さ曲線のグラフ。
【図13】車体側面データを抽出して駐車車両を判別する工程を示すフローチャート。
【図14】遮蔽領域抽出部の概略構成を示す図。
【図15】抽出した路面点集合から作成した奥行き曲線のグラフ。
【図16】遮蔽領域を抽出して駐車車両を判別する工程を示すフローチャート。
【図17】本発明の一実施形態にかかる駐車車両検知システムの概略構成を示す図。
【図18】ラインスキャンカメラによる駐車車両の撮影画面と、特徴軌跡と、解析結果をそれぞれ示す図。
【図19】時空間画像を分割した後の分割画像を2値化した状態を示す図。
【図20】原点からの特徴軌跡までの距離と法線の傾きとの関係を説明する図。
【図21】ハフ空間像を示す図。
【図22】閾値を設定する工程を示す図。
【図23】レーザスキャナを使用して、第3の実施形態のようなEPI画像を取得する例を示す図。
【図24】実施例1における計測条件を示す表図。
【図25】実施例1における計測結果を示す図。
【図26】実施例2における計測条件を示す表図。
【図27】実施例2における計測結果を示す図。
【符号の説明】
【0136】
1…駐車車両検知装置
2…レーザスキャナ
3…駐車車両
4…道路
5…計測車両
25…データ格納部
26…プログラム格納部
27…撮像データ格納部
28…駐車車両データ格納部
29…計測条件格納部
32…メインプログラム
33…撮像データ取得部
34…側面データ抽出部
35…遮蔽領域抽出部
36…駐車車両有無判別部
37…駐車車両台数算出部
38…駐車領域占有率演算部
39…速度・距離情報取得部
40…処理結果出力部
41…撮像データ前処理部
42…高さ演算部
43…高さ閾値設定部
44…高さデータ抽出部
45…閾値更新部
46…側面データ出力部
47…基準フレーム数設定部
48…撮像データ前処理部
50…撮像データ前処理部
51…奥行き演算部
52…奥行き閾値設定部
53…奥行きデータ抽出部
54…閾値更新部
55…遮蔽領域出力部
56…基準フレーム数設定部
60…駐車車両検知装置
61…ラインスキャンカメラ
62…路上撮像部
63…特徴軌跡抽出部
64…傾き演算部
65…距離演算部
66…駐車車両有無判別部
67…特徴軌跡

【特許請求の範囲】
【請求項1】
路上を走行する車両から路上の対象物を水平方向に複数回ラインスキャンしてエピポーラ平面画像(EPI画像)を取得する工程と、
前記取得したEPI画像から、撮像した対象物に関する一以上の特徴軌跡を抽出する工程と、
抽出した対象物の特徴軌跡の傾きを演算する工程と、
演算した特徴軌跡の傾きと前記移動体の移動速度とに基づいて、対象物までの距離を演算する工程と、
演算した対象物までの距離に基づいて駐車車両の有無を判別する工程と
を備えたことを特徴とする駐車車両検知方法。
【請求項2】
路上を走行する車両から路上の対象物を水平方向に複数回ラインスキャンしてエピポーラ平面画像(EPI画像)を取得する画像データ取得部と、
前記対象物のEPI画像を時系列に沿って合成することで水平方向のEPI画像を取得する路上撮像部と、
前記取得したEPI画像から前記対象物に関する一以上の特徴軌跡を抽出する特徴軌跡抽出部と、
抽出した対象物の特徴軌跡の傾きを演算する傾き演算部と、
演算した特徴軌跡の傾きと前記移動体の移動速度とに基づいて、移動体から対象物までの距離を演算する距離演算部と、
演算した対象物までの距離に基づいて駐車車両の有無を判別する駐車車両有無判別部と
を備えたことを特徴とする駐車車両検知システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【公開番号】特開2006−12178(P2006−12178A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−206656(P2005−206656)
【出願日】平成17年7月15日(2005.7.15)
【分割の表示】特願2002−174204(P2002−174204)の分割
【原出願日】平成14年6月14日(2002.6.14)
【出願人】(501198039)国土交通省国土技術政策総合研究所長 (23)
【Fターム(参考)】