説明

骨インプラントおよび骨インプラントを製造するためのセット

本発明は、骨インプラントおよび骨インプラントを作製するためのセットに関する。それらは、中実又は多孔質の物質として、連続気孔系を有する開放セル金属構造の中に導入され、場合によっては硬化されるペースト状若しくはセメント状調製物からなり、ここで、金属構造はそれ自体、生物条件下で生体適合性があり、安定であっても又は腐食性であってもよい。本発明による骨インプラントは、気孔系に少なくとも1つの骨代替材料からなる調製物が少なくとも部分的に充填されている連続気孔系を有する少なくとも1つの開放セル金属構造を含み、ここで、開放セル金属構造の剛性は、同じ金属からなる中実の材料の剛性より著しく低い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、骨インプラントおよび骨インプラントを製造するためのセットに関する。これらは、連続気孔系を有する開放セル金属構造の中に中実又は多孔質の物質として導入され、場合によっては硬化されるナノ結晶性リン酸カルシウムをベースにする骨代替材料からなり、ここで、金属構造はそれ自体、生物条件下で生体適合性があり、安定であるか、または腐食性であることができる。
【背景技術】
【0002】
欠損した骨構造を再建するための骨代替材料として、依然として大量の生物由来骨材料−自家骨およびドナーの骨−が使用されているが、これらの材料を得るには相当な副作用とリスクが伴い、それらは全く規格化されていない。合成の代替製品は、確かに医療品法の品質要求又は欧州以外の対応する規則に適合するが、−当然又は不当に−生物由来材料と比較して十分でないと見なされることが多い。特に、プロテーゼ交換の際に起こるような、大きくて機械的荷重がかかる骨欠損の再建に必要とされるドナーの骨に代わる質的に価値の高い代替材料に対する要求が最も多い。このような製品の好結果を決定する特性は、高い機械的安定性(密な海綿骨から皮質骨までに匹敵する)、骨代謝における再構築性(Remodellierbarkeit)又は骨構造への一体化性(Integriebarkeit)、および骨再生の促進、および、とりわけ競争力のある製造費用である。
【0003】
前述の特性の組み合わせを有する製品は、現在、市販されておらず、このような開発は文献にも記載されていない。それに対して、多数の骨代替製品が当業者に周知であり、それらは大部分、部分的に又は完全にリン酸カルシウムからなるが、特に炭酸イオン、ケイ酸イオン、フッ化物イオン、硫酸イオン、マグネシウムイオン、ストロンチウムイオン、又はアルカリイオンのような、他の元素又はその化合物の部分も含み得る。他の成分は、一般に非常に少量存在し、汚染物と見なされる。このような調製物は、中実又は多孔質の成形体若しくは顆粒として使用可能であるか、又は、最近ではまたセメント状配合物としての使用が増加しており、セメント状配合物は、手術中に、粉末と液体を混合してペーストにされ、骨欠損の中に導入された後、比較的短時間で硬化される。
【0004】
物理的形状とは無関係に、このような既知の全ての製品(リン酸カルシウムセメント、多孔質成形体、および顆粒)は十分な且つ生理学的な機械的耐荷重性がなく、それに対応して、荷重に耐える用途に認可されていない、および/又は適していない。焼結した中実のリン酸カルシウムセラミックは、確かに、圧縮強度が非常に高いが(HAでは約200MPa、皮質骨は約150MPaの圧縮強度および曲げ強度)、同時に非常に硬質且つ脆性であり、骨の剛性(HAでは弾性率(E−Modul)約100GPaであり、皮質骨の最大20GPaおよび海綿骨の最大約1.5〜3GPa(上の値は健康な椎体に対応する)と対照的である)、特に小柱又は海綿骨の剛性をかなり上回る非常に高い剛性を有し、従って骨の生体力学と非常に異なる。更に、このような材料は、生体活性が僅かに過ぎず、大部分、吸収性ではない。
【0005】
それに対して、市販のリン酸カルシウム顆粒、成形体、およびセメント状配合物−大部分は強度が比較的小さい−の幾つかは、生体活性および吸収性であり、即ち、理想的な場合、これらの材料は骨代謝に取り入れられ、最後に新しい骨に置換される(再構築:Remodelling)。
【0006】
使用者は、整形外科、災害外科、脊椎外科、口腔、顎および顔面外科、並びに神経外科で、機械的により高い荷重のかかる欠損を安定化させ、充填しなければならないところに金属インプラント(引張強度は>1000MPaであることが多く、弾性率>100GPa(TiAlV)である)を用い、中実の材料として皮質の強度値を有する(安価な)機械的耐荷重性のある充填および修復材料としてドナーの骨を使用することが多い。
【0007】
最近、まず技術的用途のために開放セル金属構造が開発され、その後、骨インプラントとしての適性も研究されている。このような製品は、整形外科企業Zimmer(前Implex)により「小柱金属(trabecular metal)」(前Hedrocel)の名称で、生体適合性のある金属タンタルをベースにしてプロテーゼ被膜としても、単独のインプラント材料としても市販された。「海綿状構造を有する形状安定、開放気孔又は開放セル成形体を特徴とする海綿骨の代替としてのインプラント」がまた既に特許文献1にも記載されている。対応する開放気孔インプラント構造は、また、ESKA社(Luebeck)により単独のインプラントとして、又は中実のベース材料上に開放気孔被膜を設けたものとして市販されている。但し、骨代替材料の組み合わせ又は骨代替材料を補強するための使用は記載されていない。
【0008】
開放セル金属構造としては、金属が骨格構造を形成し、その残存する空隙(気孔)に別の材料、一般に空気又はガスが充填されている全ての構造が考えられる。その場合、気孔系の形態は非常に多様であり、海綿骨を想起させる構造を有する完全な開放気孔系(「小柱金属」の場合のような)から、残存する連続気孔系を有する中空球構造、閉鎖セル構造までにわたり得るが(非特許文献1を参照)、従来技術の継続(weiterfuehrende)文献として非特許文献2および非特許文献3を参照されたい。
【0009】
骨インプラントとして使用するために、とりわけ、海綿構造、および残存する気孔系を有する中空球構造を有する開放セル材料が重要である。開放セル金属構造の大きな利点は、比較的低密度で機械的特性の適合性が高いことである。セル構造(気孔サイズ、ブリッジ部の厚さ(Stegdicke)、球殻の厚さ、気孔分布、材料選択)を適切に選択することによって、ほぼ全ての関連する強度パラメータを、修復すべき骨に最適な機械的修復条件および再生条件を提供する値に調節することができる。
【0010】
但し、使用可能な金属の欠点は、それらがせいぜいよくても、許容できる程度に生体適合性であり、是認できない拒絶反応は引き起こさない程度だということである。骨が気孔系の中に侵入することによって開放セル金属インプラントを一体化させるように骨を刺激する十分な生体活性が金属にはない。
【0011】
例えば、セメントで固定されない関節プロテーゼのように、骨に永久固定されることを目的とした従来の金属インプラントでは、表面をリン酸カルシウムおよび/又は生体活性分子(例えば、接着性ペプチド、コラーゲン、ECM成分、モルフォゲンタンパク質など)で被覆することによって、生体活性を高めることができる。しかしこのような生体活性金属構造では、また、骨再生の生理学的要求に十分に適合しないか、又は骨再構築の生物学的機構が十分に認められず、大きい骨欠損を再建するために身体の再生能力を完全に利用することができない。更に、前述の被膜は原則的に金属構造の機械的補強に寄与できない。しかし、更に考察して見ると、これらの補強は多くの使用領域に特に重要であるが、その理由は、一方では埋め込まれる物質ができるだけ金属で支持されないようにしければならず(それは長時間安定な合金にも、特に生体腐食性金属にも当てはまる)、他方、早期の十分な耐荷重性の趣旨で複合インプラントの初期安定性ができるだけ高くなければならないからである。
【0012】
従来技術
特許文献2には、(明確に)剛性の発泡金属からなり、気孔に異物が充填されてもよい骨代替インプラント又は椎間板インプラントが記載されている。異物としては骨セメント、海綿状材料およびプラスチックが挙げられる。請求された発泡金属の気孔サイズは、0.5〜5mmの範囲を含み、材料としてチタンおよびTi合金TiAl6V4、TiNb6Al7、TiAl5Fe2.5、コバルト合金およびISO5832−9による鋼合金が挙げられる。この特許出願の主態様は明らかに放射線診断に関する椎間板インプラントの改善である。この趣旨で、また明らかに、低い材料要求(Materialbedarfs)にもかかわらず非常に高い剛性を有する剛性の発泡金属からなるインプラントが記載され、請求されている。発泡金属の機械的特性を骨の生体力学的要求に適合させること、および特に対応する中実の金属(合金)の剛性より著しく低い値に剛性を低下させることは言及されていない。特許文献2によれば、原則的に中実の金属の剛性(Steifigkeit)(又は剛さ(Starrheit))は維持され、人為構造の形成およびMRTおよびレントゲン法で視覚を妨げる障害を減少させるため、発泡金属の気孔率は質量減少のためだけに使用される。それに対応して、明らかに多孔質インプラントが中実のインプラントと同様の支持機能を果たすことを指摘している。
【0013】
特許文献3には、骨代替物が2つの材料成分から構成されており、そのうち「強度」の第1の材料成分が、1000N/cmより大きい機械的強さを保証し、「一体化」の第2の材料成分が、骨伝導作用を促進するために1.5m/gを超える比表面積を有する成形体の形態で存在することを特徴とする骨代替物が記載されている。特許請求の範囲にも明細書にも骨代替物の詳細な材料組成に詳細に言及していないが、明細書から発明者が最終的に「強度」の材料成分についてバイオセラミックス構成要素を考慮に入れていることが分かる。海綿状金属又は発泡金属には言及しておらず、特に、剛性が骨の剛性に合わせられているものには言及していない。
【0014】
特許文献4には、インプラント、管状骨欠損を処置するためのそれに合う特定の平面状形成物、およびインプラントの製造方法が記載されている。この特許出願には、平面状形成物を少なくとも2層組み合わせることによって管状骨欠損のための多孔質骨インプラントに加工できる多孔質構造が記載されている。インプラントは、形状および機能に応じて、とりわけ、細胞コロニーの形成後に多層配置により管状骨欠損の中に嵌合できるように、骨細胞の培養のための平面状担体の役割をすることができるように設計されている。本発明によるインプラント材料を用いるような荷重のかかる用途には、特許文献4に記載されているインプラント材料は使用できない。
【0015】
特許文献5には、非金属無機マトリックスおよび物質的結合によって(stoffschluessig)結合した三次元金属網目構造からなる、技術的用途のための複合材料が記載されている。そのために、網目構造にマトリックス材料又はその前駆体が充填され、マトリックス材料および網状構造は>600℃の温度に加熱される。可能な適用領域として骨インプラントとしての使用も言及されているが、記載されている材料、および、特に記載されている製造方法は、記載されている特性を有する骨インプラントの開発および製造に全く適していない。この場合、製造時に必要な高温により、必然的に前述のマトリックス材料(水酸アパタイト、TCP)が過度に焼結し、その結果、生体活性(ナノ構造を伴う)が著しく低下する。他の欠点は、マトリックスが焼結した水酸アパタイトの場合、吸収性が不十分なこと、金属とマトリックスからなる物質的に結合した化合物の組成が不明確なこと(これは医療に使用する場合、非常に重大であると思われる)、並びに、生体力学的適合性の欠如である(請求された製造方法により、焼結した製品から常に、焼結した水酸アパタイトの場合のように骨の何倍かに達する極めて高い剛性を有する材料が得られる)。前述の材料は、従って、骨インプラントに関して、より古い従来技術(中実の金属インプラント)と比較して、利点ではなくむしろ欠点を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】独国特許出願公開第3106917A1号明細書
【特許文献2】独国特許出願公開第19858579A1号明細書
【特許文献3】独国特許出願公開第4101526A1号明細書
【特許文献4】独国特許出願公開第102005018644A1号明細書
【特許文献5】独国特許第102004016874B4号明細書
【非特許文献】
【0017】
【非特許文献1】CellMet−Conference, Dresden, 2005
【非特許文献2】Adler et al., Sintered Open−Celled Metal Foams Made by Replication Method−“Manufacturing and Properties on Example of 316L Stainless Steel Foams”, in Cellular Metals and Polymers 2004, edited by R.F.Singer, et al.
【非特許文献3】John Banhart“Manufacture, characterisation and application of cellular metals and metal foams”; in Progress in Materials Science 46(2001)559−632
【非特許文献4】Transforming growth factor−1 incorporated during setting in calcium phosphate cement stimulates bone cell differentiation in vitro E.J.Blom, J.Klein−Nulend, C.P.A.T.Klein, K.Kurashina, M.A.J.van Waas, E.H.Burger. Journal of Biomedical Materials Research Volume 50, Issue 1, Pages 67−74 Published Online: 24 Jan 2000
【非特許文献5】Del Real RP, Wolke JCM, Vallet Regi M, Jansen JA(2002)A new method to produce macropores in calcium phosphate cements. Biomaterials 23:3673−3680
【非特許文献6】Adler et al.,Sintered Open−Celled Metal Forms Made by Replication method−”Manufacturing and Properties on Example of 316L Stainless Steel Foams”,in Cellular Metals and Polymers 2004, edited by R.F.Singer, et al.
【非特許文献7】John Banhart“Manufacture, characterisation and application of celllar metals and metal foams”;in Progress in Materials Science 46(2001)559−632
【非特許文献8】Mat.−wiss. Werkstofftech. 35, No.4, 229−233
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
従って、本発明の目的は、一方では機械的性能を有し、特に骨再生の生体力学的要求に対する多孔性(zellulaerer)金属構造の機械的適合性が大きく、他方ではナノ構造の骨ミネラルの再生促進能力を利用する骨代替材料を提供することである。
【0019】
本発明の課題は、一方では、骨に合った生体力学を有し、骨に埋め込まれた直後に機械的に十分な荷重をかけることができ、他方、ナノ結晶性骨ミネラル又はその合成類似物の骨刺激能力を十分利用することができる骨インプラント、並びに骨インプラントを作製するためのセットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明に従って、本発明の課題は、請求項1に記載の特徴による骨インプラントおよび請求項19に記載のセットによって解決される。他の形態は、請求項2〜18および19〜23を含む。
【0021】
本発明による骨インプラントは、開放セル金属構造と、少なくとも1つの骨代替材料(ナノ結晶性骨ミネラル(骨ミネラルのナノ結晶性類似物)からなる)からなる調製物との組み合わせを含む。この組み合わせにより、初めて、骨代替構造が高い構造的生体適合性(即ち、埋め込む部位における骨構造との生体力学的適合性)および、同時にナノ結晶性骨ミネラルに特有の高い生体活性を併せ持つ可能性がもたらされる。そのために、本発明による骨インプラントは、少なくとも1つの骨代替材料からなる調製物が少なくとも部分的に噛み合うように(formschluessig)充填されている連続気孔系を有する少なくとも1つの開放セル金属構造を含み、開放セル金属構造の剛性は、同じ金属からなる中実の材料の剛性より著しく低い。好ましくは、開放セル金属構造の剛性はヒトの健康な皮質骨の剛性を超えるがその2倍以下である。
【0022】
開放セル金属構造の例としては、整形外科企業Zimmerの製品「Trabecular Metal」、整形外科企業ESKAの多孔質骨インプラント、m−pore社の開放セル金属構造、Fraunhofer Instituts IFAMの様々な実験的粉末冶金法で製造された開放セル金属構造、および、Fraunhofer Instituts ILTのレーザー焼結によって製造された金属構造などがある。
【0023】
本発明に従って、適切な材料選択、気孔率、気孔サイズ、ブリッジ部の厚さの調整などにより、中実の金属の剛性値より著しく(>2倍、好ましくは>5倍、特に好ましくは>10倍)低い剛性値に調節され、剛性の上限が、人体内の健康な皮質骨の剛性を超えるがその2倍以下である値に制限されている開放セル発泡金属を使用する。本発明による骨インプラントは主に海綿骨に使用され、対応して、海綿骨のより低い剛性値に調整されるため、一般に、調整された剛性値は明らかに低くなる。
【0024】
使用される発泡金属の本発明による主な機能は、本発明では、骨自体を支持する機能だけでなく、固有の生体力学的特性を意図した使用目的に十分ではない骨代替材料の補強(増強(Augmentierung))および場合によっては付形である。健康な骨の範囲にある(インプラント術中又は製品の選択中に場合によっては起こり得る誤使用(Anwendungsfehler)に対する十分な予備を持った)値に発泡金属の剛性を制限することによって、一方では骨インプラント(発泡金属およびナノ構造の骨代替材料からなる)が、インプラント術中および治癒中に適応症に合った耐荷重性を有し、他方では骨再構築時の他のプロセス中に、処置された骨欠損の十分な生理学的機械的刺激を可能にし、この時、ナノ構造の充填材が吸収され、新しい骨に置換されることが保証される。この場合、剛性の発泡金属では顕著な「応力遮蔽(Stress Shielding)」が起こる可能性があり、従って、気孔系の中に望ましい骨形成が起こることを妨げる可能性があり、本発明の趣旨で逆効果となり得る。
【0025】
導入される骨代替材料は、複合骨インプラントの初期剛性に著しく寄与し、特に埋め込み時の初期剛性を高い機械的荷重に耐えるものにする。この初期剛性は、骨代替材料の吸収過程で、発泡金属の値まで(生体腐食性発泡金属では最後にゼロに)減少するが、このとき、侵入した骨は強度および構造的剛性に応分の寄与をする。
【0026】
開放セル金属構造および導入される骨代替材料の詳細な形状および組成は、臨床の使用目的に適切に合うように、非常に多様な選択がなされていてもよい。しかし、本質的に開放セル金属構造では、どの場合も開放連続気孔系があり、それは単独インプラントの場合はインプラント全体に延びており、複合インプラントの場合は多孔性の構成要素全体に延びている。後者は、例えば、多孔性の金属構造からなる表面層を有するプロテーゼに、又は、多孔性の金属構造からなる構成要素を含むモジュール式のインプラントに当てはまる。多孔性の金属構造に関する他の基準は、剛性が目的の骨の値に調整され得、その最大値が健康な皮質骨の剛性を超えるがその2倍以下であることである。
【0027】
骨代替材料が貯蔵中、輸送中、およびインプラント術中、確実に開放セル金属構造の中に固定されており、容易に使用できるように、開放セル金属構造に主に無機質骨代替材料からなる調製物が充填される。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】図1は、鉄ベースの充填されていない発泡金属の変形グラフを示す。
【図2】図2はリン酸カルシウムセメント調製物が充填された鉄ベースの発泡金属の変形グラフを示す。
【図3】図3は、圧縮強度約36MPaの市販のリン酸カルシウムセメントの変形グラフを示す。
【0029】
本発明は、2つの態様を実現する。
【0030】
一方では、開放セル金属構造による骨欠損の機械的安定化は、骨刺激効果が得られるように最適化された充填材が気孔系に装填され、このとき骨代替材料にあまり荷重がかからず又は特に圧力がかからず、同時に、開放セル金属構造がまた、とりわけ引張荷重を受けることができる範囲内で保証される。複合材料は、従って、同様にコンクリートマトリックスが圧縮強度と剛性を決定し、鉄筋が引張強度を改善する、鉄筋コンクリートと比較できる特性を有することができる。
【0031】
他方では、開放セル金属構造と生体活性なセメント状充填材からなる結合により、単独の構成要素だけでは達成され得ない機械的特性が達成される。特に、金属構造および骨代替材料を適切に選択することにより、埋め込み後の時間経過中に、医学的/生物学的に望ましい方法で動力学的骨構造の変化する要求に適合する強度の経時変化(Festigkeitsverlauf)が起こり得る。このために、骨代替材料が骨代謝に取り入れられ、細胞の骨再構築の調整機構に支配されること(再構築)により、骨代替材料が連続的に骨に置換されることが必要である。長時間安定な金属の場合、これらは、また、生体活性および吸収性であり機械的耐荷重性(耐圧性)のある充填材の吸収後、生体力学的荷重の一部に耐え、一方、侵入した骨は、Wolffの法則に従って機械的刺激で骨が残りの荷重部分に耐えることができるまで形成することが促進される。また、この点で、インプラント内部のいわゆる「応力遮蔽」を最小限にするため、複合インプラントの金属の割合が最小限になるようにする。
【0032】
本発明によれば、開放セル金属構造の剛性は、適応症に応じて、埋め込む部位での骨の再生を機械的に刺激するのに特に有益な値に調整され得る。従って、多孔性の金属構造の剛性の上限は、健康な皮質骨のレベルの値で十分であると見なされるが、誤使用に対する安全性の意味で、且つ、生体腐食性金属の剛性が変化することに鑑みて上限が考えられ、上限は、健康な皮質骨の値を超えるがその2倍以下である。また、これらの値は、密な形態の関連する最も重要なインプラント金属の値より著しく低い。本発明によるインプラントは主に海綿骨の代替として使用され、インプラントの初期構造剛性に著しく寄与するナノ構造のリン酸カルシウム調製物が骨代替材料として使用されるため、実際、多孔性の金属構造の剛性はかなり小さい値に調整される。骨代替材料の吸収が起こった後、その剛性が周囲の骨より低い値に減少することが絶対に望ましい。生体腐食性金属では、他の態様として、特に、必要なインプラントの容積に関して厳しい制限を受けないように(主に容積の大きい骨代替物用に考えられているこれらの製品について)、生体適合性金属に関して分解生成物の量をできるだけ少なく保つことが更に追加される。
【0033】
本発明の有利な形態によれば、開放セル金属構造は生体適合性金属からなる。このために、開放セル金属構造はニチノール又はチタン、タンタル、マグネシウム、鉄、コバルト、ニオブ、レニウム、ハフニウム、金、銀、又はそれらの互いの合金、又は他の元素との合金からなってもよく、これらの合金は前述の元素をそれぞれ少なくとも60質量%含む。
【0034】
開放セル金属構造は、原則的に生物条件下で長時間安定な又は生体腐食性の金属又はその合金からなってもよい。長時間安定な金属の場合、これらは、好ましくはステンレス鋼、コバルトベースの合金、純粋なチタン、チタン合金、ニチノール、タンタル、タンタル合金、ニオブ、金、銀からなる。生体腐食性金属又はその合金の場合、生物条件下で生じるその腐食生成物が、成分が脊椎動物の体内で自然に生じる化合物からなるものが好ましく、特に鉄、又は、主体となる合金元素として鉄若しくはマグネシウムを有する合金が好ましい。
【0035】
本発明の他の有利な形態によれば、開放セル金属構造は、合金の成分ではない他の金属、又は無機非金属材料若しくは有機無機質材料で被覆されている。
【0036】
拒絶が起こらない治癒のための骨インプラントの前提条件は、使用される材料の生体適合性である。近年、チタンおよびその様々な合金(例えば、Ti6Al4V、Ti5Al4Nb、Ti5Al2.5Fe、ニチノール)は、直接骨と接触させて埋め込むのに(永久に埋め込むのに)特に適合性のある金属材料であることが分かった。同様に適合性が非常に良いのは、タンタル、ニオブ、モリブデン、レニウム、ハフニウムのような他の幾つかの金属、およびその合金である。しかし、依然として特殊鋼合金およびコバルトベースの合金も広く使用され、それらは部分的に、生体適合性を改善するために、(有毒な)金属イオンの拡散を妨げる皮膜(例えば、窒化ケイ素)を備える。骨インプラントに現在一般に使用されている金属および合金と同様、特に骨に使用される開放セル金属インプラントとして製造し、使用することに関して考慮に入れられるものも、並びに、これらの被覆された変形および被覆されていない変形も、機械的前提条件を満たす限り、本発明により吸収性骨代替材料と組み合わせることに関して考慮に入れられるが、それは特に(特殊)鋼、チタン合金、およびコバルト合金に当てはまる。他の前述の金属は、合金相手又は被膜として考慮に入れられるのと同様、タンタルの場合のように、合金の主成分であってもよい。更に、現在あまり一般に使用されていないが、骨インプラントとしての使用について研究で既に様々な試験が行われた他の材料および変更も考慮に入れられる。特に強調すべきなのは、ここでは、特に鉄およびマグネシウムベースの合金のような生体腐食性金属、並びに、異物に関連する感染を防止するために銀又は別の感染防止物質で被覆されている金属である。
【0037】
従って、開放セル金属構造は、長期安定性がある(例えば、インプラント用鋼、コバルトベースの合金、チタン/チタン合金、タンタル、ニオブ、ニチノール、レニウム、ハフニウム、金、銀など)、又は埋め込み後に生理学的に許容される方法で体内で腐食し得る(身体適合性分解生成物の遊離下)(例えば、マグネシウム/マグネシウム合金、鉄/鉄合金、亜鉛/亜鉛合金など)、生体適合性金属又は合金からなる。それは、本質的に全て(気孔の>90%)の気孔が連続気孔系を形成している多孔質構造(金属製の中空球構造の場合、これは、球と球の間の気孔だけに関し、球自体の中の空隙に関しない)、および、中実の金属の剛性より著しく低く、最大値が、健康な皮質骨の剛性を上回るがその2倍以下である剛性を特徴とする。その場合、気孔又はセルの形状およびサイズ並びにブリッジ部又は球殻の厚さは、漸変する(gradierte)構造が得られるように、適切にインプラント内で変化していてもよい。
【0038】
本発明による骨インプラントの特別な実施形態では、インプラント又はインプラントの開放セル構成要素を通る少なくとも1つの断面で気孔径、気孔形状および/又は気孔容積を変化させることによって、気孔率を適切に調節することにより、埋め込む部位の条件にインプラントを最適に機械的に適合させる。
【0039】
この漸変する構造は、骨の生物学的構造にならって作られており、骨代替材料とその補強を独自の方法で組み合わせることで(中実のインプラント材料および全くランダムな気孔配置および構造を有するものの場合とは異なる)、大きい骨欠損の修復および再生に生物学的および生体力学的に適切に適合したインプラントの形態における新しい自由度を可能にする。
【0040】
本発明による骨インプラントの他の構成要素は、骨インプラントに含まれ、少なくとも1つの骨代替材料からなる調製物が骨伝導性又は骨誘導性又は骨形成性又はこれらの特性の組み合わせを有し、埋め込み条件下で骨成長を促進する効果を有することである。少なくとも1つの骨代替材料からなる調製物は、開放セル金属構造の連続気孔系を巨視的に均質に充填する無機質充填材であっても又は有機無機質充填材であってもよく、ここで、骨代替材料は、好ましくは気孔(ミクロ又はナノ孔)を含んでもよく、その気孔は、インプラント全体に本質的に均一に分布しているか、又は金属構造の気孔系の場合のように同様に漸変する構成であってもよい。少なくとも1つの骨代替材料からなる調製物は、好ましくは、乾燥物質を基準にして少なくとも30質量%、リン酸カルシウムからなる。骨代替材料はナノ結晶性リン酸カルシウムを含むか、又は、少なくとも1つの骨代替材料は、体内に導入された後、ナノ結晶性リン酸カルシウムを形成する。
【0041】
少なくとも1つの骨代替材料からなる調製物の化学組成は、天然骨のミネラル相にならって作られており、主にカルシウムイオンとリン酸イオンからなり、それらは他の成分として特に炭酸イオン、ケイ酸イオン、フッ化物イオン、硫酸イオン、マグネシウムイオン、ストロンチウムイオン、亜鉛イオン、鉄イオン、およびアルカリイオン、並びに酸化物を含んでもよく、それらの中に微量の他の無機化合物が存在してもよい。少なくとも1つの骨代替材料からなる調製物の成分は、少量の(<50重量%)有機化合物、特にコラーゲン、ゼラチン、他のタンパク質、糖タンパク質、ペプチド、アミノ酸、およびそれらの誘導体、単糖類、オリゴ糖および多糖類、ビタミン、クエン酸、界面活性剤、緩衝物質、生体適合性合成ポリマー、並びに、強度、結合、および、ミネラル相のミクロ構造およびナノ構造に影響を及ぼし得るごく一般的な身体適合性有機化合物であってもよい。
【0042】
少なくとも1つの骨代替材料からなる調製物は、貯蔵中、輸送中、およびインプラント術中にその組成および構造を不利に変化させない(例えば、気孔系から出ない)という要求を満たす限り、開放セル金属構造の気孔系の中に(圧密化した又は結合した)粉末、ペースト状懸濁液(例えば、水溶液中のナノ結晶性水酸アパタイト懸濁液又は非反応性ペースト状懸濁液(例えば、製品Ostim中で実現されているような)として)、凍結乾燥物(Lyophilisat)又はセメント状凝結硬化物質として存在する。充填材の本質的な態様は、その組成および結晶構造の機能である生理学的条件下での吸収性である。
【0043】
導入される−主に無機質の−骨代替材料の特徴は、骨活性生体分子の高い結合能力と同様に、周囲媒体との活発な(intensiv)物質交換、および骨細胞が容易に到達できることも保証するように、骨代替材料によって開放セル金属構造の気孔系が充填されることである。制約(主にミネラルの制約)は、純粋なミネラル組成と均質なマクロ構造を有するナノ結晶性骨代替材料が、骨代謝に重要な血清からの生体分子を結合させ、蓄積し、骨代謝が起こるようにし、さらに破骨細胞のための分解可能な基質の役割をすることによって、原則的に既に本発明の趣旨で骨の侵入(Knocheneinwuchs)を促進できることに関連する。この分解の際、骨ミネラルに結合した生体分子又はその生体活性フラグメントと同様に、破骨細胞によって合成されたシグナル物質も遊離され、それらはまた骨芽細胞の分化および活性を促進する。
【0044】
前述の組成の成分からなるリン酸カルシウムセメントは、一部、非常に様々な機械的特性を有する。その圧縮強度は、通常、約5〜100MPaの範囲である。増強されていない材料の曲げ強度は非常に低い。伝達された力をそれぞれ別の材料に移せることを保証するため、開放セル金属構造とセメント状吸収性骨代替材料の間に結合強度が生じるように、両方の構成要素が広範囲で噛み合って互いに結合していることが必要である。
【0045】
高い生体活性を達成するために、生体活性充填材としてのナノ構造の骨代替材料が高い比表面積を有することが必要である;比表面積とナノ構造は直接互いに相関している、即ち、ナノ構造が微細になるほど、比表面積は大きくなる。生体活性充填材の比表面積は>1m/g、好ましくは>5m/g、特に好ましくは>25m/g、特に非常に好ましくは>50m/gとなるようにする。高温では比表面積が著しく低下するため、この高い比表面積は、好ましくは生体模倣条件下で沈殿反応により達成される。骨代替材料の好ましい合成条件は、従って、骨の自然条件の範囲、特に体温付近にある。従って、骨代替材料はまた、骨代替材料の成分としてのナノ構造のリン酸カルシウムの構造を決定する製造工程が<250℃、好ましくは<150℃、特に好ましくは<100℃、特に非常に好ましくは<80℃の温度で行われることに関して定義される。
【0046】
骨代替材料としては、リン酸カルシウムおよび/又はリン酸マグネシウムをベースにする無機質骨セメントが好ましい。1つには、無機質骨セメントは、典型的には凝結硬化時に、それらが高い生体活性を得るのに必要なナノ構造のリン酸カルシウム相を形成し、もう1つには広範囲でそれらの圧縮強度および気孔率を制御することができ、従って、それらはインプラント材料の機械的強度に著しく寄与する。文献には、添加剤を含まないおよび様々な添加剤を含むリン酸カルシウムセメント(CPC)の多数の組成物が記載されており、それは開放セル発泡金属との本発明による組み合わせに適している。特に好ましいのは、凝結硬化反応後に水酸アパタイト又はカルシウム欠損水酸アパタイトからなるCPCである。またこのCPCも様々な出発物質から製造され得る。特に好ましい変形として、ここでは、α−又はβ−TCP、CaHPO、CaCO、および沈殿法による水酸アパタイトからなり、水又は水性緩衝液と一緒に混合されてセメントになる組成物が考慮に入れられる。特に非常に好ましいのは、粉末の割合が>50%、α−又はβ−TCPからなるセメントである。この群で更に好ましいのは、α−および/又はβ−TCPを50%より多く粉末混合物中に含み、粉末混合物中のカルシウム/リン酸の比が1.3〜1.5となる混合比で他のカルシウム塩を含むセメントである。同様に好ましいのは、粉末成分としてリン酸四カルシウム(TTCP)および/又はリン酸水素カルシウム(CaHPO、DCPD又はDCPA)を含むセメントである。この群で特に好ましいのは、粉末混合物中のカルシウム/リン酸の比が1.5〜1.8となる混合比でTTCPおよびDCPD又はDCPAを含むセメントである。好ましい充填材は、同様に、凝結硬化生成物としてDCPD(ブラッシュ石)を生成し、カルシウム/リン酸比約1.0を有するCPCである。
【0047】
CPCの他に、文献から他のナノ結晶性リン酸カルシウム配合物(ナノHA)も既知であり、又は、ナノ結晶性リン酸カルシウムを得る方法が記載されている。骨代替材料として、本発明によれば、>1m/g、好ましくは>5m/g、特に好ましくは>25m/g、特に非常に好ましくは>50m/gの比表面積を有し、カルシウム/リン酸の比が1.35〜1.8(好ましくは1.4〜1.7)の範囲にある沈殿法による全てのリン酸カルシウムが適している。このリン酸カルシウム配合物は、水又は水溶液中の懸濁液として存在し、この形態で使用することができる(実施例1、3、5、7を参照されたい)。好ましい配合物は、固体の割合が>10%、特に好ましくは>20%、特に非常に好ましくは>30%である。同様に特に好ましいのは、同程度の固体含有量を有するナノHA配合物であり、それはナノ結晶性リン酸カルシウムの他に、タンパク質(例えば、コラーゲン又はゼラチン)のような更に他の成分を含む。同様に特に好ましいのは、このような配合物から乾燥、冷凍乾燥、又は懸濁液媒体の交換により得られる調製物である。
【0048】
純粋な無機質骨代替材料の生物活性を高めるために、ミネラル成分に追加で1つ又は複数の有機物質を含む組成物に関する成功裏な実験を実施した。有機成分として、特にコラーゲンおよびその誘導体(例えば、ゼラチン、P15)、細胞外マトリックスの別のタンパク質(ECMタンパク質、例えば、フィブロネクチン)、合成接着性ペプチド(RGDペプチド)、多糖類(ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、キトサン、デンプン、セルロース、およびそれぞれの誘導体を含む)、モルフォゲンタンパク質(BMP、特にBMP2、およびBMP7、TGF−β)、血管形成成長因子(bFGF、VEGF)、ビタミン(C、B、E、D)、および小さい有機分子(クエン酸、界面活性剤、グリセロリン酸の塩、アミノ酸、およびこれらの誘導体)を使用した。この有機成分は、一部、一方ではそれらがミネラル成分のナノ結晶性に有利な(より微細な構造という意味で)影響を及ぼし、それによって骨の活性生体分子の吸着能力を向上させるという効果を有し、それはまたミネラル相の生体活性を間接的に高める。他方、それらはまた骨細胞の分化および活性に直接影響を及ぼし、これは特に成長因子、モルフォゲンタンパク質、接着性ペプチド、およびECMタンパク質に当てはまる。上記のリストを更に続けることができるが、それは本発明に関して重要ではなく、ここではむしろ、本発明による骨代替材料の生体活性に様々に影響を及ぼし得ること、および、このような組み合わせが開放セル金属構造と前述のように結合している/結合する限り、このような組み合わせは本発明に含まれるということが重要である。
【0049】
骨インプラント又は骨代替材料の生物活性を3つの態様−骨伝導、骨誘導、および骨形成に区分することができ、それらはそれぞれ特有の生物学的基礎を有する。骨伝導は、既に、主に使用されるナノ結晶性リン酸カルシウムの特徴的な特性であるため、本発明による骨インプラントに大きな役割を果たす。しかし、骨伝導性は、リン酸カルシウムに限られたものではなく、ガラス、ポリマー、又は別のセラミックス(リン酸カルシウムベース以外)のような他の種類の材料においても判明している。
【0050】
骨誘導−細胞増殖および骨組織への分化の誘導(骨以外でも)は、モルフォゲンタンパク質(特にBMP2およびBMP7のようなもの、しかしまたTGF−β−スーパーファミリーの他の代表も)の典型的な特性である。しかし、最近、また(再び)骨誘導効果は純粋な無機質材料でも、ここでは特に水酸アパタイトとβ−リン酸三カルシウムからなる二相性リン酸カルシウムでも証明された。骨誘導性を有する他の材料が特定されることが期待できる。
【0051】
骨形成性−分化した骨細胞又は分化する前駆細胞又は幹細胞による骨組織の形成(骨以外でも)−は、骨誘導と並んで、大きい又は複雑な骨欠損の処置の鍵の1つと見なされる。骨形成は、骨−組織工学の基礎である。
【0052】
3つの全ての態様は、本発明による骨インプラントで有利に実現することができ、又は本発明による骨インプラントと有利に組み合わせることができる。骨伝導性は、(有機)無機質充填材の不可欠の構成要素又は特性であり、骨誘導性は二相性リン酸カルシウムの使用によって又は充填材に誘導作用物質(上記参照)を添加することによってもたらされる。リン酸カルシウムセメントとモルフォゲンタンパク質の組み合わせに関して、既に研究成果がある(非特許文献4)。骨形成性と本発明による骨インプラントの組み合わせは、組織工学の方法を用いた非常に大きい骨欠損の処置に特に魅力的な試みである。この場合、本発明による骨インプラントは、組織培養のための機械的耐荷重性があって、同時に骨細胞の培養のための骨伝導マトリックスを提供し、必要な場合に機械的に刺激され得る担体材料の役割をする。とりわけ、埋め込みの直後にそれに十分荷重をかけることができ、それによって骨−組織工学の従来の全ての試みにおいて典型的である、長い固定時間が回避される。
【0053】
少なくとも1つの骨代替材料からなる調製物は、有利には、骨類似ミネラルと(構造)タンパク質又は他の(構造)ポリマーとの複合材料からなり、その場合、従って骨代替材料の有機成分はまた骨代替材料の機械的特性に寄与する。例としては、ここでは、特にコラーゲン、ゼラチン、キチン/キトサン(誘導体)、セルロース(誘導体)、デンプン(誘導体)、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、および合成ポリマーがあり、これらは単独で又は様々な組み合わせで既に骨のインプラント材料として記載されている。本発明の趣旨において、またここでも自然の骨をモデルとして、有機無機質充填材は大部分、骨に類似するミネラル又はミネラル成分からなり、体内に埋め込んだ後、それから骨に類似するミネラルが自然発生的に形成される。これには、リン酸カルシウム(特に、α−およびβ−リン酸三カルシウムおよびリン酸水素カルシウム)と同様に、リン酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、アルカリ又はアルカリ土類元素のケイ酸塩および/又は硫酸塩又はアンモニウム化合物も単独で又は組み合わせて含まれる。前述の全ての物質は、生体活性骨代替材料および骨充填材の成分として既知である。前述の列挙は、多数の組み合わせが可能であることに鑑みて、決して限定的であるべきではなく、本発明と関連して、直接又は間接的に骨に類似するミネラルを構成又は沈着するために使用することができる全てのミネラル成分を含むべきである。
【0054】
タンパク質又はポリマーとミネラル成分の量の比は、組み合わせの相手によって広い範囲で選択することができる。好ましくは、乾燥物質を基準にして少なくとも30質量%、リン酸カルシウムおよび/又はコラーゲンおよび/又は細胞外マトリックスの他のタンパク質からなる組み合わせが使用される。残部は、有機無機質骨代替材料の機械的活性および/又は生物学的活性を促進する他の有機および無機物質(場合によっては作用物質を含む)である。
【0055】
本発明の有利な形態によれば、少なくとも1つの骨代替材料からなる調製物は、生物学的におよび/又は薬学的に活性な作用物質を含む。生体活性な骨代替材料からの薬学的および/又は生物学的に活性な作用物質の遊離は、骨代替材料の構成および構造によって適切に調節できる。またこの点でも、本発明による製品は、単独の製品の場合よりも、かなり良好に臨床必要条件に適合することができる。
【0056】
有効な薬学的に活性な作用物質の例としては、既に予め存在する感染を治癒できる又はその治療に対する措置を促すことができる又は予防的に骨感染の発生を防止することができる抗生物質および抗微生物作用を有する他の作用物質(防腐剤、抗微生物ペプチドなど)がある。これは、特に、本発明による製品が多く使用される大きい骨欠損の場合、臨床的に非常に重要であるが、この理由は、その場合、比較的高い感染の危険性があるからである。
【0057】
別の有効な薬学的作用物質は、順調に骨が治癒するように、インプラントの周囲での炎症反応を一時的に抑制できる物質である。ここでは、本発明による骨インプラントと、特異的に又は非特異的に炎症反応を抑制できる全ての作用物質、特に、炎症細胞の酸分泌に直接、抑制作用をするものとの組み合わせが含まれる。
【0058】
原則的に、適した作用物質としては、インプラントの第1の目的−処置される骨欠損の安定化および再生を促進することができ、各臨床状況と関連している可能性がある望ましくない事象や経過が発生することを最小限にすることができる全ての物質が考慮に入れられる。
【0059】
従って、特に、正常な骨治癒の前提条件が損なわれている場合、薬学的作用物質、特に骨刺激機能、抗微生物機能、および炎症抑制機能を有する薬学的作用物質を、その作用物質を臨床的に妥当な時間にわたって有効な濃度で遊離するのに適切な濃度で任意に添加することによって、特に、インプラントの作用を促進する機能がもたらされる。
【0060】
請求項14によれば、本発明の有利な形態では、骨代替材料は多孔質である。有利には、請求項15によれば、また、少なくとも1つの骨代替材料からなる調製物は、開放セル金属構造の気孔系を、理論的に/計算上可能な充填度に基いて、および乾燥物質で計算して、到達可能な気孔容積を5〜80質量%充填する。
【0061】
特に、大きい骨欠損の充填に関して、均質に構成された骨代替材料の代わりに多孔質材料を使用することが、より迅速な一体化又は侵入(Durchbauung)および吸収に有利であることが分かった。多孔性は使用可能な表面を増加させ、従って、侵食面(Angriffsflaeche)の増大により破骨細胞の吸収能を向上させると同様、血清成分の吸着を容易にする。但し、従来の組成の多孔質材料の欠点は、既に低い機械的耐荷重性と骨との生体力学的適合性が更に低下していることである。従って、より大きい骨欠損の処置では、まさに開放セル金属構造と多孔質(有機)無機質充填材の組み合わせが有利であり、明確に本発明の一部と見なすことができる。臨床で生じる骨欠損が非常に多様であることに鑑みて、同様に、本発明による骨インプラントの設計に対する広い要求プロファイルが生じる。その場合、骨代替材料の気孔率は、特に生体活性および吸収速度に(および、作用物質との組み合わせで、その遊離速度にも)影響を及ぼすことができるパラメータである。
【0062】
調製物に発泡剤又は可溶性粒子を添加することによって、又は、セメント状配合物の場合、セメント反応自体が発泡を伴っていることによって(非特許文献5)、多孔質骨代替材料を達成できる。特に有利であり、上記説明の趣旨で本発明に好ましいのは、開放セル金属構造の気孔系を理論的に可能な充填度の80%未満、好ましくは70%未満、特に好ましくは50%未満充填するセメント状充填材である。同様に好ましいのは、セメント状充填材内部に残存する気孔系の連続性である。これは、例えば、開放セル金属構造にセメントスラリーを浸透させ、その後、余分な材料を吹いて出すことによって達成可能であり、残存する充填材はその後、制御された条件下で硬化される。セメントスラリーのコンシステンシーおよび余分な材料を除去するときの条件を適切に調整することにより、残存する気孔容積を広い枠内で、特に好ましい範囲(上記参照)で調整することができる。その場合、本発明の趣旨で、迅速な骨一体化のためには、残存する気孔系の約50%の連続性で全く十分である。従って、残存する気孔系の連続性は>25%、好ましくは>40%、特に好ましくは>50%である。
【0063】
密なセラミックインプラント材料とは対照的に、および体液との高度の物質交換を保証するという目的に鑑みて、骨代替材料の気孔率は好ましくは>20%、特に好ましくは>50%であり、その結果、少なくとも1つの骨代替材料からなる調製物は、開放セル金属構造の気孔系を、理論的に/計算上可能な充填度に基いておよび乾燥物質で計算して、到達可能な気孔容積を80質量%未満、特に好ましくは50%未満充填する。
【0064】
他方、本発明の好ましい実施は、少なくとも1つの骨代替材料からなる調製物が、理論的に/計算上可能な充填度に基いておよび乾燥物質で計算して、開放セル金属構造の到達可能な気孔容積の少なくとも1%、特に好ましくは少なくとも5%を充填する組成物である。
【0065】
請求項16によれば、開放セル金属構造は、>1MPa且つ<50MPaの圧縮強度を有し、少なくとも1つの吸収性骨代替材料からなる調製物は単独で>2MPaの圧縮強度を有し、両方の構成要素の組み合わせの圧縮強度は、両方の構成要素の圧縮強度の合計より大きい。
【0066】
本発明の特別な形態では、充填材はそれ自体、比較的高い固有強度(Eigenfestigkeit)(圧縮強度>20MPa)を有し、同時に骨細胞によって吸収可能であり、再構築可能である。この場合、開放セル金属構造は、鉄筋コンクリートと同様に、補強材(Armierung)の役割に適しており、その結果、セメント状の骨代替材料(低い固有曲げ強度を有する)の圧縮強度と金属構造(気孔率が高いため、比較的低い圧縮強度を有する)の曲げ強度を有利に組み合わせることができる。特に生体腐食性金属を補強材として使用する場合、初めて、高い機械的(即座の)耐荷重性と高い生物活性および完全な再構築性又は吸収性を併せ持つように骨代替材料を提供することができる。更に、セメント状(リン酸カルシウム)骨代替材料と全ての関連する作用物質の優れた適合性によって、インプラントを同時に骨治癒および骨形成を促進するための、および副作用(上記参照)を回避するための作用物質の局所ドラッグデリバリーシステムとして使用することが可能になる。
【0067】
従って、本発明により、この実施形態では、目的とする使用領域に応じて、場合によっては漸変する気孔率を有する、即ち、>1MPa且つ<10MPaの圧縮強度を有する開放セル金属構造を骨代替材料と組み合わせるが、骨代替材料はそれ自体、>2MPaの圧縮強度を有し、その場合、両方の構成要素の組み合わせの圧縮強度は>12MPaである。この実施形態は、特に、比較的低い密度および強度を有する海綿骨欠損の充填に適しており、その場合、とりわけ迅速な再生が起こる。
【0068】
他の好ましい実施形態では、目的とする使用領域に応じて、場合によっては漸変する気孔率を有する、即ち、>1MPa且つ<20MPaの圧縮強度を有する開放セル金属構造を骨代替材料と組み合わせるが、骨代替材料はそれ自体、>5MPaの圧縮強度を有し、その場合、両方の構成要素の組み合わせの圧縮強度は>25MPaである。この実施形態は、原則的に、全ての海綿骨欠損、特に比較的高い密度および強度を有するものの修復および充填に適している。この趣旨で、この実施形態は、荷重がかかる海綿骨中の骨欠損のための万能の充填材と見なすことができる。
【0069】
他の好ましい実施形態では、目的とする使用領域に応じて、場合によっては漸変する気孔率を有する、即ち、>5MPa且つ<45MPaの圧縮強度を有する開放セル金属構造を骨代替材料と組み合わせるが、骨代替材料はそれ自体、>5MPaの圧縮強度を有し、その場合、両方の構成要素の組み合わせの圧縮強度は>50MPaである。この実施形態は、また、皮質骨欠損、又は海綿および皮質部分を有する骨欠損の修復に適している。
【0070】
請求項17に記載の本発明の他の有利な形態によれば、開放セル金属構造は、巨視的に均質な又は漸変する気孔系からなり、その場合、気孔系の一部だけに少なくとも1つの吸収性骨代替材料からなる調製物が充填されており、気孔系の残りの部分は充填されていないか又は気孔系の残りの部分は金属、セラミック又はポリマーをベースにする材料で全部又は部分的に充填されている。
【0071】
既に他に前述したように、生体活性充填材を有する開放セル金属構造は、巨視的に均質に構成されていてもよく、漸変する構造を有してもよく、又はより複雑に構成されたインプラントの構成要素であってもよい。本発明によれば、全ての場合、開放セル金属構造の少なくとも一部に、少なくとも1つの骨代替材料からなる調製物が前述の方法の1つで装填されている。生体活性充填材を有する開放セル金属構造は、また、例えば、関節プロテーゼのように複雑な構成のインプラントの構成要素としても、骨侵入の生物学的および生体力学的刺激の機能を果たし、従って、耐久性のあるインプラント一体化のための前提条件を改善する。
【0072】
請求項18によれば、骨インプラントは、更に、少なくとも部分的に充填された金属構造と、それと確実に結合した他の構造を含み、他の構造は本質的に密であり又は開放セル金属構造のものよりも>10倍小さい気孔率を有し、金属、セラミック又はポリマーベースの材料からなる。
【0073】
最も簡単な場合、このような複雑な構成のインプラントは、巨視的に均質な又は漸変する気孔系を有する開放セル金属構造からなり、その場合、気孔系の一部だけに少なくとも1つの骨代替材料からなる調製物が充填されており、気孔系の残りの部分は充填されていないままであるか、又は気孔系のこの部分には、部分的に又は全部、非吸収性および/又は生体不活性材料からなる金属、セラミック又はポリマーベースの材料が充填されている。
【0074】
変更された実施形態では、開放セル金属構造および生体活性充填材からなる本発明による骨インプラントは、全てのインプラント構成要素が埋め込みの時点で互いに確実に結合しているように、本質的に密であり又は開放セル金属構造の気孔率より少なくとも>10倍小さい気孔率を有し、金属、セラミック、又はポリマーベースの材料からなる他のインプラント構造と組み合わせられる。この組み合わせおよび確実な結合は、既に、工業的製造の枠内で、又は埋め込む直前に行うことができる。後者の場合、このようにしてモジュラー式のインプラント構成の可能性がもたらされ、その場合、使用者は個々の状況に対応して、特に充填される骨欠損のサイズおよび形状に対応して、例えば、関節プロテーゼの変更の枠内で、開放セル金属構造および生体活性充填材からなる適切な要素を選択し、適した結合装置で残りのインプラント構成要素と結合させる。結合は、例えば、ねじ締めで行うことができ、この場合、開放セル金属構造は、有利には、ねじ締め中の開放セル金属構造の損傷を防ぐ補強を含む。
【0075】
特定の臨床状況では、更に、本発明によるインプラントをまず手術の直前に又は手術中に最終的な形状にする又は組み立てることが非常に有効である。手術者が開放セル金属構造又は組み立てられたインプラント全体を骨欠損の形状およびサイズに対応するように適合させたい場合又は適合させなければならない場合、および場合によってはインプラントをこの目的に機械的に加工し、その後、清浄にしなければならない場合、この態様は特に重要である。加工と同様、特にその後の清浄化工程も生体活性充填材に悪影響を及ぼす可能性があり、作用物質が組み込まれている場合、そのうえ完全に使用不能になる可能性がある。更に、手術前に又は手術中に開放セル金属構造を、少なくとも1つの骨代替材料からなる特に選択された調製物と組み合わせることが有効で必要な可能性がある。これは機械的理由から生じる可能性があるが、その理由は、手術者が術中に初めて、インプラントに対する機械的要求がどのようになるかを認識できるからである。別の理由は、インプラントの機能を促進するために、特定の薬学的に活性な作用物質と組み合わせることが必要な可能性があるからである。工業的には、少しの骨代替材料と作用物質しか組み合わせて提供されない。他方、本発明による生体活性充填材は、多数の作用物質と適合するように且つ簡単に組み合わせることができる。
【0076】
本発明の本質的な態様は、従って、少なくとも1つの開放セル金属構造と、ペースト状若しくはセメント状に調合された生体活性骨代替材料、又は少なくとも1つの骨代替材料からなるペースト状若しくはセメント状調製物を作製できる組成物を含む構成要素からなるセットの提供であり、手術前又は手術中に先行する請求項の1つによる骨インプラントを作製できる。これらのペースト状又はセメント状の生体活性調製物の中に適した作用物質を臨床上の必要に応じて混入することができる。
【0077】
請求項19によれば、このセットは、少なくとも1つの開放セル金属構造、又は開放セル金属構造を含む骨インプラント、および、少なくとも1つの骨代替材料からなるペースト状又はセメント状に調合された調製物、又は少なくとも1つの骨代替材料からなるペースト状若しくはセメント状調製物を作製できる組成物からなる構成要素からなる。請求項20による有利な形態によれば、このセットは滅菌された形態で提供される。
【0078】
開放セル金属構造に少なくとも1つの骨代替材料からなる調製物を簡単に且つ再現可能に装填するために、他の補助手段が必要な可能性がある。これは、粉末と液体からなるセメント状組成物を混合する(および場合によっては作用物質を添加混合する)ための装置から、金属構造を加工するのにおよび確実に保持するのに適した機器、場合によっては、加工した後に清浄するための容器および装置、開放セル金属構造の中にペースト又はセメントを導入するための注射器およびカニューレ(又は別の種類の適用装置)までにわたる。従って、後で開放セル金属構造に装填される生体活性充填材を適切に調製するための特別なセットの提供は、同様に本発明の本質的な構成要素であり、特にこれらのセットが互いに適合した構成要素を含むときは、一緒に包装されるか、および/又は滅菌された形態で提供される。
【0079】
請求項21に記載の本発明の有利な形態によれば、開放セル金属構造は、手術前又は手術中により簡単に本発明による骨インプラントを作製できるように、非金属成分の少なくとも1つの吸収性骨代替材料からなる調製物を充填するための注入口および/又は他の装置を有する。
【0080】
開放セル金属構造に装填するための特殊な装置の他に、開放セル金属構造自体の特別な構造も、手術前又は手術中に少なくとも1つの骨代替材料からなる調製物を装填することを容易にするか又はそもそも初めて可能にする。それは、特に気孔の小さい発泡金属、(中空)球構造を有するもの、および比較的小さい全気孔率を有するものに適用されるが、一般に容積の大きいインプラントにも適用される。生体活性充填材を装填するのに有用な構造は、とりわけ、注射器による調製物の導入又は外からの装填を可能にする穿孔又はそれ以外の窪みからなる。その場合、対応する支持構造および装填方法は、(本発明による骨インプラント自体および骨代替材料の組成物のように)非常に多様であってもよい。但し、対応する構造を有する開放セル金属構造が、この構造を主に少なくとも1つの骨代替材料からなる調製物を装填する目的で含むことが、本発明の趣旨で重要である。
【0081】
本発明の構成要素は、また、本発明による骨インプラントを製造するために連続気孔系を有する開放セル金属構造を使用すること、および、本発明による骨インプラントを製造するために少なくとも1つの吸収性骨代替材料からなる調製物を開放セル金属構造と組み合わせて使用することである。開放セル金属構造および少なくとも1つの吸収性骨代替材料からなる調製物は、このために前述のように構成されている。
【実施例】
【0082】
添付の図を参照して本発明の実施例を説明する。図1は、鉄ベースの充填されていない発泡金属の変形グラフを示し、図2はリン酸カルシウムセメント調製物が充填された鉄ベースの発泡金属の変形グラフを示し、ここで、使用されるリン酸カルシウムセメント調製物の固有の圧縮強度は2MPaである。図3は、圧縮強度約36MPaの市販のリン酸カルシウムセメントの変形グラフを示す。図1〜図3は、試験体が多数の個々の破片に砕解することによって、市販のリン酸カルシウムセメントが非常に小さい変形で破滅的に破壊することを示す。それに対して、本発明による複合材料は、鉄ベースの発泡金属と比較して、単独の構成要素の圧縮強度がかなり低いにも関わらず、明らかに高い圧縮強度を示し、劇的な強度低下がなく高い変形性を示す。
【0083】
実施例1
ナノ結晶性水酸アパタイトが充填された発泡金属をベースにする骨インプラント
粉末冶金法に従って製造された、Fraunhofer Institut fuer Verfahrenstechnik und angewandte Materialforschung(IFAM−Dresden;非特許文献6および非特許文献7)によって製造されたインプラント用鋼(316L)からなる発泡金属(気孔サイズ約45ppi/「1インチ当たりの気孔」)を使用する。ナノ結晶性水酸アパタイト調製物として、35%の固体含有量(水性配合物中)を有するペースト状調製物を使用する。
【0084】
発泡金属(Φ3cm、高さ1cm)を密接したプラスチック管(高さ3cm)内のガラスフリット上の濾紙上に配置する。発泡金属上にナノ結晶性水酸アパタイト(ナノHA)からなる調製物を、発泡金属の気孔容積を僅かに超え、発泡金属−シリンダ上に均一に分布する量で塗布する。その後、密閉するピストン(排気装置を有する)をプラスチック管に嵌め込み、ナノHA調製物が濾紙に到達するまでナノHA調製物を発泡金属の中に圧入する。充填された発泡金属シリンダを取り出し、濾紙および余分なナノHA調製物を除去する。その後、シリンダをプラスチックフィルムの中に真空包装し、このように準備された骨インプラントは、滅菌後、使用の準備が整った状態になっている。
【0085】
補強されていない水酸アパタイト調製物は全く固有強度を有しておらず、開放セル金属構造は生体不活性であるが、組み合わせた製品は、特に骨粗鬆症の骨に対する優れた生体力学的適合を示し、埋め込んだ後にすぐ荷重をかけることができる生体活性の高い材料である。目的とする使用領域は、欠損骨折(Defectfrakturen)および骨粗鬆症の骨の骨形成であるが、その場合、生体不活性インプラントは十分確実に骨に組み込まれず、剛性のインプラントは隣接する骨に機械的損傷を与え得る。好ましい使用領域は、顕著な骨粗鬆症の場合の椎体固定(Wirbelkoerperfusionen)である。
【0086】
実施例2
リン酸カルシウムセメントが充填された発泡金属をベースにする骨インプラント
実施例1と同じ発泡金属を使用する。充填材として、次の組成物を用いて独自に製造されるリン酸カルシウムセメントを使用し:
粉末成分:
・α−TCP(1300℃で焼成、粒度<20μmに粉砕)、60%
・リン酸水素カルシウム(CaHPO−無水)、26%
・炭酸カルシウム(CaCO)、10%
・水酸アパタイト(沈殿法)、4%
全ての成分を十分混合し、一緒に粉砕する。
【0087】
混和液として、2%のリン酸水素ナトリウム(NaHPO)溶液にホスホセリンを50mmol/lの濃度で添加し、その後、pH値を8.5に調整する。その後、粉末成分をこの混和液と粉末/液体比0.7で10℃の温度に調整して均質に混合する。得られたペーストを実施例1に類似の実験配置で(濾紙およびガラスフリットなしで気密に密閉できるプラスチック管内で)発泡金属上に均一に塗布し、その後、篩い分け機の振動板上でプラスチックシリンダの排気下に発泡金属の中に導入する。1分後、発泡金属シリンダの全気孔容積には、巨視的に目に見える気孔がないように、リン酸カルシウムセメントが充填されている。装填された発泡金属をプラスチック管から取り出した後、余分なリン酸カルシウムセメントを除去し、リン酸カルシウムセメントを最終的に硬化させるために発泡金属を37℃のインキュベータ内で、水蒸気飽和状態で72時間硬化させる。その後、装填された発泡金属を一定重量になるまで40℃、0.1バールで乾燥させ、包装し、滅菌し、装填された発泡金属はそれによって使用の準備が整った状態になっている。
【0088】
このようにして得られたインプラント材料は、同様に高い生体活性とともに、実施例1の材料より高い機械的耐荷重性を有する。好ましい使用領域は、ここでも椎体固定、および、更に、周囲骨に対する生体力学的適合性がある椎体置換である。この場合、セメント状充填材は初期強度に寄与し、吸収の進行および骨置換時に、再び骨からますます機械的荷重を受ける。
【0089】
実施例3
ナノ結晶性水酸アパタイトが充填された金属中空球構造をベースにする骨インプラント
多孔質金属構造として、個々の球のサイズが1mmΦの一緒に焼結された金属中空球からなる、寸法Φ3cm、高さ1cmのシリンダを使用する。使用される材料は、粉末冶金法に従って、Fraunhofer Institut fuer Verfahrenstechnik und angewandt Materialforschung(IFAM−Dresden)によって製造されたインプラント用鋼(316L)である。1と同様の実験配置で、35%の固体含有量を有するナノ結晶性水酸アパタイトからなるペーストを金属シリンダの気孔系の中に導入する。装填後、実施例1のように実施する。
【0090】
実施例4
リン酸カルシウムセメントが充填された金属中空球構造をベースにする骨インプラント
多孔質金属構造として、実施例3と同じ金属構造を使用する。その後、実施例2と同じリン酸カルシウムセメントを金属中空球構造の気孔の中に導入し、更に実施例2に記載のように実施する。
【0091】
実施例3および4によるインプラント材料は、先の実施例のものより高い機械的耐荷重性を有する。生体活性は同程度である。好ましい使用領域は、軽度の骨粗鬆症の患者の骨欠損である。
【0092】
実施例5
ナノ結晶性水酸アパタイトが充填された純粋なチタン製の多孔質金属構造をベースにする骨インプラント
7mmΦ、高さ10mmで、規則的な気孔配置(気孔サイズ約350μm)を有する純粋なチタン製の多孔質金属構造を、Fraunhofer Institut fuer Lasertechnik(ILT、在Aachen)の直接レーザー成形法により純粋なチタン粉末から製造し、装填実験に使用する。ナノ結晶性水酸アパタイトの充填は、実施例1と同様に行う。その結果、巨視的には完全に均質な装填が得られる。
【0093】
実施例6
リン酸カルシウムセメントが充填された純粋なチタン製の多孔質金属構造をベースにする骨インプラント
多孔質金属構造として、実施例6による純粋なチタン製のシリンダを使用する。リン酸カルシウムセメントの装填は実施例2と同様に行う。結果は実施例2のものと同程度である。
【0094】
実施例5および6は、骨外科で広く使用されている他の典型的な金属インプラント材料に適用できることを示す。
【0095】
実施例7
ナノ結晶性水酸アパタイトが充填された鉄ベースの発泡金属をベースにする骨インプラント
粉末冶金法に従って製造された、Fraunhofer Institut fuer Verfahrenstechnik und angewandte Materialforschung(IFAM−Dresden)製の鉄ベースの発泡金属(気孔サイズ約45ppi)を使用する。
【0096】
ナノ結晶性水酸アパタイトの装填は実施例1と同様に行われ、同じ装填結果が得られる。
【0097】
実施例8
リン酸カルシウムセメントが充填された鉄ベースの発泡金属をベースにする骨インプラント
粉末冶金法に従って製造された、Fraunhofer Institut fuer Verfahrenstechnik und angewandte Materialforschung(IFAM−Dresden)製の鉄ベースの発泡金属(気孔サイズ約45ppi)を使用する。
【0098】
充填材として、次の組成:α−TCP60重量%、リン酸水素カルシウム26重量%、炭酸カルシウム10重量%、水酸アパタイト4重量%のリン酸カルシウムセメントを使用し、細粉に粉砕し、均質に混合する。この粉末混合物10gを2%のリン酸水素ナトリウム溶液7mlと10℃に温度制御して均質に混合し、低粘度のペーストにする。得られたペーストを1に類似の実験配置で(濾紙およびガラスフリットなしで気密に密閉できるプラスチック管内で)発泡金属上に均一に塗布し、その後、篩い分け機の振動板上でプラスチックシリンダの排気下に発泡金属の中に導入する。1分後、発泡金属シリンダの全気孔容積には、巨視的に目に見える気孔がないように、リン酸カルシウムセメントが充填されている。装填された発泡金属をプラスチック管から取り出した後、余分なリン酸カルシウムセメントを除去し、リン酸カルシウムセメントを最終的に硬化させるために発泡金属を37℃のインキュベータ内で、水蒸気飽和状態で72時間硬化させる。その後、装填された発泡金属を一定重量になるまで40℃、0.1バールで乾燥させる。寸法Φ10mmおよび高さ20mmの各3つのシリンダを充填されていない状態と充填された状態の両方で、Fa.Instronの材料試験機、Typ 5566(10kN)で1mm/分の送りで圧縮強度を試験する。充填されていない試料は平均して約3.0MPaから弾性変形性の限界(図1を参照)までの圧縮強度に達したが、リン酸カルシウムセメントが充填された試料は約12〜20MPaの比較値に達した(図2を参照)。
【0099】
図1から、充填されていない発泡金属の弾性変形は約3MPaの圧縮強度で塑性変形に移行することが明白である。図2は、リン酸カルシウムセメント調製物が充填されている発泡金属の弾性変形が、約12MPaの圧縮強度でようやく塑性変形に移行することを示す。圧縮強度は広い変形範囲でほぼ一定の状態を維持した後、さらに増加する。それと対照的に、補強されていない市販のリン酸カルシウムセメントからなる成形体の圧縮強度は、破壊限界に達した後、破局的に低下する(図3を参照)。
【0100】
図3は、約36MPaの比較的高い最大圧縮強度を有する、典型的なリン酸化カルシウムセメント(補強材のない)の圧縮変形を示す。約0.3mm(<2%に相当)の小さい変形でも既に破局的な強度損失が起こり、試験体が完全に破壊する。塑性変形範囲は、実際上存在しない。それに対応して、補強されていないリン酸カルシウムセメントは荷重のかかる用途に適していない。同様のことが焼結した骨セラミックスに当てはまるが、その場合、このような材料が生理学的な力の伝達に全く追従できないことがもっと重要である。
【0101】
実施例8により充填された試料は、充填されていない発泡金属の圧縮強度が比較的小さいにもかかわらず、補強されていないリン酸カルシウムセメントの典型的な変形挙動とは非常に明らかに異なるという変形挙動を示した(比較のため、典型的なリン酸カルシウムセメントの圧縮変形;図3を参照されたい)。従って、この実験結果は、開放気孔発泡金属で骨代替材料を補強することによって新規な生体力学的特性を有する組み合わせ製品が得られることを例示的に示す。
【0102】
鉄ベースの発泡金属は埋め込み条件下で腐食性と見なされるが、このとき、腐食生成物は生体適合性がなければならない。好ましい使用領域は、とりわけ、インプラント材料の完全な吸収が目指される若い患者である。調整可能な吸収時間(ナノ結晶性水酸アパタイトからなる懸濁液の場合は非常に速く、セメント状調製物の場合は比較的緩速で調整可能である)に対応して、まず、充填材が吸収され、骨に置換され、その後で発泡鉄が腐食し、6ヶ月〜約3年の期間で分解する。機械的荷重の増加により、侵入した骨が、他の骨物質の合成、強化を促進する。組み合わせ材料は、従って、(初めて)インプラントの即時の耐荷重性、高い生体活性(純粋な金属構造にはない)、および、同時に生体力学的な骨刺激の増加を伴う完全な吸収性の目標設定を実現する。
【0103】
実施例9
石灰化コラーゲン(mineralisiertem Kollagen)が充填された発泡金属をベースにする骨インプラント
実施例1による発泡金属に実施例1に記載されているのと同じ実験配置で石灰化コラーゲンを装填する。石灰化コラーゲンは、Gelinskyらの非特許文献8に記載の方法により製造される。石灰化コラーゲンからなる懸濁液を発泡金属に装填した後、試験体を−20℃で凍結させ、その後、凍結乾燥させる。その後、得られた試験体には、石灰化コラーゲンからなる凍結乾燥物が巨視的に均質に充填されている。
【0104】
固有の構造強度を有していない石灰化コラーゲンからなる原則的に生体活性の高い材料を開放セル発泡金属と組み合わせることによって、機械的耐荷重性のあるインプラント材料に更に発展させることができ、従って、特に、細胞担体として組織工学に適している。
【0105】
実施例10
リン酸カルシウムセメントが充填された発泡金属と残りの気孔率をベースにする骨インプラント
実施例2、6および8と同様に約90%の気孔率と約30ppiの気孔サイズを有する鉄ベースの発泡金属(Fraunhofer Institut fuer Verfahrenstechnik und angewandte Materialforschung(IFAM−Dresden)製)にリン酸カルシウムセメントを浸透させる。試料(Φ30mm、高さ10mm)を気密に密閉された装置内で一面だけゆっくりと(空気)超過圧力を加え(水蒸気飽和空気)、このようにしてセメントペーストの一部を気孔系から押し出す。残存するセメントの量は、重量分析で決定され、実施例8と類似の方法で同じリン酸カルシウムセメントおよびこの気孔率の発泡金属で完全に装填する場合に達成される値の約50%である。
【0106】
実施例11
リン酸カルシウムセメントが充填された発泡金属と残存する気孔率をベースにする骨インプラント
実施例2、6および8と同様に約90%の気孔率と約30ppiの気孔サイズを有する鉄ベースの発泡金属(Fraunhofer Institut fuer Verfahrenstechnik und angewandte Materialforschung−IFAM−Dresden製)にリン酸カルシウムセメントを浸透させる。ぴったりと密閉された装置内で、試料(Φ30mm、高さ10mm)にゆっくりと中性油(Migliol)を圧入する。セメントの硬化(37℃で72時間)後、一定重量になるまで試料を乾燥させ、付着した中性油を除去するため、複数回アセトンで洗浄する。重量分析で、残存する充填材は元の値の60%および理論的に可能な充填度の41%と算定される。気孔系の連続性は顕微鏡で約70%の値であると測定される。
【0107】
実施例10および11では、生体活性の高い充填材を含み、同時に連続した気孔系を有する材料が得られる。このようにして、骨は特に迅速にインプラント材料の中に侵入する。この組み合わせは、連続気孔系(周囲の媒体との活発な物質交換を可能にする)と組み合わされたナノ結晶性リン酸カルシウムの高い生体活性の適切な利用、および、同時に完全な吸収性を有し使用領域に適合した生体力学を初めて可能にする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続気孔系を有する開放セル金属構造を少なくとも含む骨インプラントであって、前記開放セル金属構造の剛性が同じ金属からなる中実の材料の剛性より著しく低いこと、前記開放セル金属構造の気孔系に少なくとも1つの骨代替材料からなる調製物が少なくとも部分的に充填されていること、前記骨代替材料が粉末、ペースト状懸濁液、凍結乾燥物として、又は、セメント状凝結硬化物質として前記開放セル金属構造のセルの中に存在することを特徴とする、骨インプラント。
【請求項2】
前記開放セル金属構造の剛性が、ヒトの健康な皮質骨の剛性を超えるがその2倍以下であることを特徴とする、請求項1に記載の骨インプラント。
【請求項3】
前記開放セル金属構造がチタン、タンタル、マグネシウム、鉄、コバルト、ニオブ、レニウム、ハフニウム、金、又は銀、又は、これらの互いの合金又は他の元素との合金からなり、前記合金が前述の元素をそれぞれ少なくとも60質量%含むことを特徴とする、請求項1又は2に記載の骨インプラント。
【請求項4】
前記開放セル金属構造が、ステンレス鋼、コバルトベースの合金、純粋なチタン、チタン合金、タンタル、タンタル合金、ニオブ、ニチノール、金又は銀から選択される、生物条件下で長時間安定な金属又はその合金からなることを特徴とする、請求項1又は2に記載の骨インプラント。
【請求項5】
前記開放セル金属構造が、生物条件下で腐食性の(生体腐食性の)金属又はその合金からなること、および生物条件下で起こるこれらの金属又は合金の主成分の腐食によって、脊椎動物の体内で自然に生じる化合物が生成することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の骨インプラント。
【請求項6】
前記開放セル金属構造が、合金の成分ではない他の金属、又は無機非金属若しくは有機無機質材料で被覆されていることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の骨インプラント。
【請求項7】
前記開放セル金属構造が、前記インプラント又は前記インプラントの開放セル構成要素を通る少なくとも1つの断面で気孔径、気孔形状および/又は気孔容積が変化している、漸変する気孔系を有することを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の骨インプラント。
【請求項8】
前記骨インプラント中に含まれる少なくとも1つの骨代替材料からなる調製物が、骨伝導性又は骨誘導性又は骨形成性、又はこれらの特性の組み合わせを有し、埋め込み条件下で骨成長促進効果を有することを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載の骨インプラント。
【請求項9】
前記骨代替材料がナノ結晶性リン酸カルシウムを含むこと、又は、少なくとも1つの骨代替材料が、体内に導入された後、ナノ結晶性リン酸カルシウムを形成することを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一項に記載の骨インプラント。
【請求項10】
前記少なくとも1つの骨代替材料からなる調製物が、乾燥物質を基準にして少なくとも30質量%リン酸カルシウムからなることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか一項に記載の骨インプラント。
【請求項11】
前記少なくとも1つの骨代替材料からなる調製物が、コラーゲン、ゼラチン、および/又は骨の有機細胞外マトリックスの他のタンパク質、およびミネラル成分としてアルカリ元素およびアルカリ土類元素のリン酸塩、ケイ酸塩、炭酸塩又は硫酸塩、又はアンモニウム化合物、又はこれらの組み合わせを含む複合材料からなることを特徴とする、請求項1〜10のいずれか一項に記載の骨インプラント。
【請求項12】
前記少なくとも1つの骨代替材料からなる調製物が、乾燥物質を基準にして少なくとも30質量%のリン酸カルシウムを含む複合材料からなることを特徴とする、請求項11に記載の骨インプラント。
【請求項13】
前記少なくとも1つの骨代替材料からなる調製物が、生物学的におよび/又は薬学的に活性な作用物質を含むことを特徴とする、請求項1〜12のいずれか一項に記載の骨インプラント。
【請求項14】
前記少なくとも1つの骨代替材料からなる調製物が、多孔質であることを特徴とする、請求項1〜13のいずれか一項に記載の骨インプラント。
【請求項15】
前記少なくとも1つの骨代替材料からなる調製物が、前記開放セル金属構造の気孔系を、理論的に/計算上可能な充填度を基準にして、および乾燥物質で計算して、到達可能な気孔容積を5〜80質量%充填することを特徴とする、請求項1〜14のいずれか一項に記載の骨インプラント。
【請求項16】
前記開放セル金属構造が>1MPa且つ<50MPaの圧縮強度を有すること、前記少なくとも1つの骨代替材料からなる調製物が単独で>2MPaの圧縮強度を有すること、および、両方の構成要素の組み合わせが両方の構成要素の圧縮強度の合計より大きい圧縮強度を有することを特徴とする、請求項1〜15のいずれか一項に記載の骨インプラント。
【請求項17】
前記開放セル金属構造が、前記気孔系の一部だけに請求項1〜16のいずれか一項に記載の少なくとも1つの骨代替材料からなる調製物が充填されている巨視的に均質な又は漸変する気孔系を有すること、および前記気孔系の残部が充填されていないか又は前記気孔系の残部に金属、セラミック又はポリマーをベースにする材料が全部又は部分的に充填されていることを特徴とする、請求項1〜16のいずれか一項に記載の骨インプラント。
【請求項18】
前記骨インプラントがそれと確実に結合した他の構造を含み、前記他の構造が本質的に密であるか又は前記開放セル金属構造の気孔率より>10倍小さい気孔率を有し、金属、セラミック又はポリマーをベースにする材料からなることを特徴とする、請求項1〜17のいずれか一項に記載の少なくとも部分的に充填された金属構造を含む骨インプラント。
【請求項19】
少なくとも1つの開放セル金属構造、又は請求項1〜18のいずれか一項に記載の開放セル金属構造を含む骨インプラント、および少なくとも1つの骨代替材料からなるペースト状又はセメント状に調合された調製物、又は少なくとも1つの骨代替材料からなるペースト状又はセメント状調製物を作製できる組成物を含み、手術前又は手術中に請求項1〜18のいずれか一項に記載の骨インプラントを作製できる構成要素からなるセット。
【請求項20】
このセットが滅菌された形態で提供されることを特徴とする、請求項19に記載の構成要素からなるセット。
【請求項21】
前記開放セル金属構造が注入口および/又は請求項1〜20のいずれか一項に記載の少なくとも1つの骨代替材料からなる調製物を充填するための他の装置を有することを特徴とする、少なくとも1つの開放セル金属構造からなる骨インプラント。
【請求項22】
骨インプラントを製造するための連続気孔系を有する開放セル金属構造の使用又は請求項1〜21のいずれか一項に記載の骨インプラントのためのセットの使用。
【請求項23】
開放セル金属構造と組み合わせられるおよび/又は骨インプラントを作製するための少なくとも1つの吸収性骨代替材料からなる調製物の使用又は請求項1〜22のいずれか一項に記載の骨インプラントのためのセットの使用。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公表番号】特表2010−510817(P2010−510817A)
【公表日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−537481(P2009−537481)
【出願日】平成19年11月27日(2007.11.27)
【国際出願番号】PCT/DE2007/002185
【国際公開番号】WO2008/064672
【国際公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【出願人】(509147776)
【Fターム(参考)】