説明

骨伝導デバイスを用いた携帯電話機

電話機本体の筐体の厚さを増大させることなく、大きな出力を出すことを可能にし、騒音下での使用にも支障を来たさない骨伝導スピーカを用いた携帯電話機を提供することを課題とするものであって、スピーカとして骨伝導スピーカ1を用い、電話機本体の筐体2に前記骨伝導スピーカ1よりも大径の凹陥部3を設け、前記凹陥部3の内側面と前記骨伝導スピーカ1の外側面との間に緩衝材4を配備し、前記緩衝材4にて前記骨伝導スピーカ1を、前記凹陥部3の底面との間に間隙を保持し且つその振動面が前記筐体2の表面と同一か僅かに迫り出す状態に支持させたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は骨伝導デバイスを用いた携帯電話機、より詳細には、スピーカ及び/又はマイクロホンとして骨伝導デバイスを用い、使用時に該骨伝導デバイスを頭部に当てて受話音声を聴取し、また、骨導音をピックアップする携帯電話機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、従来の骨伝導スピーカを用いた携帯電話機における骨伝導スピーカ31は、筐体32の適宜位置に厚さ方向に設けた凹陥部33内に、筐体32との間のアイソレーションを確保するための緩衝材34を介して収納することにより設置する方法が一般的である。緩衝材34は、凹陥部33の底面のみに配置する場合(図10)と、底面から側面にかけて配置する場合(図11)とがある。
【0003】
上記従来の骨伝導スピーカを用いた携帯電話機の場合は、騒音下であっても受話音を明瞭に聴取できて便利であるが、上記のように骨伝導スピーカを収納する凹陥部を設け、少なくともその底面に緩衝材を配置する必要がある関係上、通常の音圧型スピーカを採用する携帯電話機の場合よりも分厚くなる嫌いがある。特に折畳みタイプの機種の場合、この厚みの増加による違和感が顕著となる。
【0004】
また、上記構成の場合、厚みを抑えるために緩衝材は薄手のものが用いられるが、そのために緩衝材による緩衝作用が弱く、筐体と骨伝導スピーカとの間のアイソレーションを十分に確保することができない。その結果、エコーバックが大きくなるので、それを避けるために大きな出力を出すことができないという問題がある。
【0005】
骨伝導スピーカの場合は振動板から出力するのに対し、該振動板を介して骨導音をピックアップするという違いはあるものの、実質的に骨伝導スピーカと同じ構造にて構成することができる骨伝導マイクロホンの場合にも、上記と同じことがいえる。
【0006】
【特許文献1】特開2003−348208
【特許文献2】特願2002−352000
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記従来の骨伝導デバイスを用いた携帯電話機における問題点を解決するためになされたもので、電話機本体の筐体の厚さを増大させることなく、大きな出力を出すことを可能にし、騒音下での使用にも支障を来たさない骨伝導デバイスを用いた携帯電話機を提供することを課題とする。
【0008】
本発明の他の課題は、内蔵した通信用の骨伝導スピーカを、着信報知手段として利用することができる、骨伝導デバイスを用いた携帯電話機を提供するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、スピーカ及び/又はマイクロホンとして骨伝導デバイスを用い、電話機本体の筐体に前記骨伝導デバイスよりも大径の凹陥部を設け、前記凹陥部の内側面と前記骨伝導デバイスの外側面との間に緩衝材を配備し、前記緩衝材にて前記骨伝導デバイスを、前記凹陥部の底面との間に間隙を保持し且つその振動面が前記筐体の表面と同一か僅かに迫り出す状態に支持させたことを特徴とする骨伝導デバイスを用いた携帯電話機、を以て上記課題を解決した。
【0010】
本発明はまた、スピーカ及び/又はマクロホンとして骨伝導デバイスを用い、電話機本体の筐体に前記骨伝導デバイスよりも大径の透孔部を設け、前記透孔部の内側面と前記骨伝導デバイスの外側面との間に緩衝材を配備し、前記緩衝材にて前記骨伝導デバイスを、その振動面が前記筐体の表面と同一か僅かに迫り出す状態に支持させたことを特徴とする骨伝導デバイスを用いた携帯電話機、を以て上記課題を解決した。この場合、前記骨伝導デバイスの両面を振動面とすることができる。
【0011】
更に、上記課題を解決するための本発明に係る骨伝導デバイスを用いた携帯電話機は、筐体が2つの筐体部から成る折り畳み型であって、閉じた状態において前記骨伝導デバイスの振動面が、前記筐体の前記骨伝導デバイスを設置した側と異なる側の筐体部の内側面に当接するようにし、あるいは、筐体が2つの筐体部から成る回転型であって、閉じた状態において前記骨伝導デバイスの振動面が、前記筐体の前記骨伝導デバイスを設置した側と異なる側の筐体部の内側面に当接するようにし、あるいは、筐体が2つの筐体部から成るスライド型であって、閉じた状態において前記骨伝導スピーカの振動面が、前記筐体の前記骨伝導デバイスを設置した側と異なる側の筐体部の内側面に当接するようにしたことを特徴とする。
【0012】
更に、上記課題を解決するための本発明に係る骨伝導デバイスを用いた携帯電話機は、骨伝導デバイスを装填する容体部と、電話機本体の筺体内側面に固定される固定部とから成る弾性資材製デバイスホルダーを用いて、前記骨伝導デバイスを前記筺体に設けたデバイス設置口に設置することを特徴とする。
【0013】
好ましくは、前記骨伝導デバイスに固定されていて前記容体部の表面側を覆う当接板を、前記筺体から僅かに迫り出すように配設し、前記容体部の表面側に、前記当接板の裏面周縁部を受ける円形リブを設ける。
【発明の効果】
【0014】
携帯電話機本体の筐体に設けた凹陥部又は透孔部内に骨伝導デバイスを、その周囲に配した緩衝材のみによって支持するので、筺体に対するアイソレーションが十分であり、従来の凹陥部底面に配した緩衝材が不要となり、その結果、筐体、延いては、電話機全体の厚みを抑えることができる。
【0015】
また、折り畳み型、回転型、スライド型等のタイプの携帯電話機に採用すれば、骨伝導スピーカを、着信音等を放音するためのスピーカとして使用することが可能となるので、音圧型スピーカを併設する必要がない。
【0016】
請求項7乃至9に記載の発明においては、骨伝導デバイスの電話機内への設置が容易で、安定状態に保持でき、円形リブを設けた場合は、塵埃の内部への進入を阻止し得る効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明を実施するための好ましい形態を添付図面に依拠して説明する。なお、以下は、骨伝導デバイスとして骨伝導スピーカについての説明をするが、その説明は、骨伝導マイクロホンについても当てはまる。即ち、両デバイスは、振動板から頭骨に振動を伝達するか、頭骨の振動を振動板でピックアップするかの作用上の違いはあるが、構造上は実質的に同一に構成できるからである。
【0018】
先ず、図1及び図2に示された実施形態について説明する。そこに示された実施形態は、スピーカとして骨伝導スピーカ1を用い、電話機本体の筐体2に骨伝導スピーカ1よりも大径の凹陥部3を設け、凹陥部3の内側面と骨伝導スピーカの外側面との間に緩衝材4を配備し、緩衝材4にて骨伝導スピーカ1を、凹陥部3の底面との間に間隙を保持し且つその振動面が筐体の表面と同一か僅かに迫り出す状態に支持させたことを特徴とするものである。
【0019】
ここで用いる骨伝導スピーカ1は、好ましくは、できるだけ厚みを抑えた円柱形状のユニットケース内に、受信信号を骨伝導音声振動に変換する振動板等を内蔵したものとする。
【0020】
緩衝材4は、骨伝導スピーカ1を凹陥部3の底面及び内側面から離隔させるためのもので、骨伝導スピーカ1の外側面と凹陥部3の内側面との間に配備される。緩衝材4は一連のものであってもよいし、複数に分割された不連続のものであってもよい。その素材は、従来のものと同様の吸振性を有するゴム、プラスチック等でよい。
【0021】
骨伝導スピーカ1は、この緩衝材4により、振動時に凹陥部3の底面に接触することがないよう間隙が保持され、且つ、その振動面が筐体3の表面と同一か僅かに迫り出すように支持される。
【0022】
緩衝材4内には、音声信号伝達のためのスピーカケーブル等が組み込まれる。このスピーカケーブル等は、コネクタを介し、骨伝導スピーカ1内部の音声信号入力端子及び筐体2内部の音声信号出力端子とそれぞれ接続される。
【0023】
図3に示す実施形態は、上記凹陥部3を、筐体2を横に貫く透孔部5としたもので、他の構成は上記実施形態に準ずる。なお、この実施形態の場合、図3に示すように骨伝導スピーカ1の両面が筐体2の外側面と同一か僅かに迫り出すように構成すれば、筐体2の表裏いずれの面においても使用可能となる。
【0024】
携帯電話機の筐体2が2つの筐体部に分かれていて、折り畳み(図1、図4)、回転(図5)、又はスライド(図6)させることによって両筐体部が重なり合うタイプの場合は、別途音圧型スピーカを配備することなく、待受け時に骨伝導スピーカ1を利用して、着信時に着信音が放音されるように構成することができる。
【0025】
即ち、これらのタイプの携帯電話機の筐体2は、重なって当接し合う2つの筐体部から成り、その一方の筐体部2aに骨伝導スピーカ1が内蔵される。従って、待受け時には、骨伝導スピーカ1の振動面を、骨伝導スピーカ1を設置してない他方の筐体部2bの内側面に当接させることができる。その結果、着信時に骨伝導スピーカ1が振動すると、その振動は筐体部2bから筐体2全体に伝わり、筐体2が振動して外部に大きな空気振動音を発することが可能となる。
【0026】
このように構成する場合、図5に示す回転型においては、図3に示す骨伝導スピーカ1の両面を振動面とする実施形態が採用される。図6に示すスライド型の場合は、図2及び図3に示すいずれの実施形態であってもよい。
【0027】
なお、骨伝導スピーカ1の振動面が当たることになる筐体部2bの当接位置には、通常、操作ボタンが配置されているので、その操作ボタンの配置を変更したりして、振動面が操作ボタンを避けて直接筐体面に接するようにすることが好ましい。その場合、骨伝導スピーカ1の振動面の当接位置の素材を変更して、より放音効果を高めるようにすることもできる。
【0028】
上記構成において、着信時の着信音は骨伝導スピーカ1の振動面より骨伝導振動として出力され、電話機本体の筐体2に伝えられる。そして、筐体2が振動板の役目をして振動する結果、空気振動として放音される。この骨伝導スピーカ1のバイブレーション作用と気導音の放音作用とにより、着信が報知される。
【0029】
そして、筐体2を開く等して骨伝導スピーカ1の振動面を他半筐体部2bから離すと、骨伝導スピーカ1は、本来の骨伝導音声伝達機能を果たすことになる。即ち、通話時においては受話音は、骨伝導スピーカ1の振動面より骨伝導振動として出力されるので、振動面を頭部に当てることにより受話することができる。その際、外部に音声が洩れることは殆どなく、通常の携帯電話機のように通話を行なうことが可能となる。
【0030】
図7及び図8に示す実施形態は、骨伝導デバイスを、プラスチック、ゴム等の弾性資材製のデバイスホルダー6によって支持させ、その状態で電話機の筺体2内に組み込み可能にしたものである。
【0031】
そこに示された骨伝導スピーカ1は、ボイスコイル12とマグネット13を担持したヨーク11上に、僅かな間隙を保持して振動板14を定置し、振動板14に形成した中央開口部に臨ませて振動板14上にプレートヨーク15を固定した所謂外磁型のものであるが(図9参照)、マグネットをボイスコイルの内側に配置する所謂内磁型のものであってもよい。
【0032】
デバイスホルダー6は、骨伝導スピーカ1を抱持する容体部7と、容体部7の上下に突設されるネジ孔を有する固定部8とから成る。容体部7の一面(設置時表面側)には横長の開口9が形成され、他面は開口されてその周縁に、骨伝導スピーカ1のヨーク11を係止する環状係止部10が形成される。好ましくは、容体部7の開口9形成面に、当接板16の裏面周縁部に沿う円形リブ17が形成される。
【0033】
骨伝導スピーカ1は、その容体部7装填時において、開口9からプレートヨーク15が露出するようにされ、プレートヨーク15に、円板状の当接板16の脚部が固定される。振動板14の振動は、当接板16から出力されることになる。
【0034】
当接板16を受ける円形リブ17を設ける場合は、その幅及び/又は高さを変えることにより、当接板16の動きを制御することができ(その幅及び高さを増すことによって制動作用を増すことができる。)、その出力特性をある程度コントロールすることが可能となる。また、円形リブ17が存在することにより、デバイスホルダー6と当接板16との隙間から、内部に塵埃が進入することを防止することができる。
【0035】
上記のようにして骨伝導スピーカ1を装填したデバイスホルダー6は、その固定部8のネジ孔内に、筺体2に形成されるデバイス設置口18の周縁部に立設されるネジ筒19を挿入させることにより筺体2内に装着され、座金20を介して止めネジ21をねじ込むことによってそこに固定される。その際、当接板16は、デバイス設置口18から若干迫り出した状態となる。
【0036】
この構成の場合、骨伝導スピーカ1は弾性資材製のデバイスホルダー6を介して筺体2に取り付けられるため、筺体2に対しアイソレートされ、その振動は筺体2に伝わりにくくなる。また、骨伝導マイクロホンの場合には、筺体2の振動を拾いにくくなる。
【0037】
この発明をある程度詳細にその最も好ましい実施態様について説明してきたが、この発明の精神と範囲に反することなしに広範に異なる実施態様を構成することができることは明白なので、この発明は添付請求の範囲において限定した以外はその特定の実施態様に制約されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0038】
[図1]本発明に係る骨伝導デバイスを用いた携帯電話機の要部斜視図である。
[図2]本発明に係る骨伝導デバイスを用いた携帯電話機の一実施形態の要部断面図である。
[図3]本発明に係る骨伝導デバイスを用いた携帯電話機の他の実施形態の要部断面図である。
[図4]本発明に係る骨伝導デバイスを用いた携帯電話機の更に他の実施形態の部分断面図である。
[図5]本発明に係る骨伝導デバイスを用いた携帯電話機の更に他の実施形態の構成図である。
[図6]本発明に係る骨伝導デバイスを用いた携帯電話機の更に他の実施形態の構成図である。
[図7]本発明に係る骨伝導デバイスを用いた携帯電話機の更に他の実施形態の縦断面図である。
[図8]図7に示す実施形態において用いるデバイスホルダーの形状を示す斜視図及び縦断面図である。
[図9]図7に示された骨伝導デバイスの構成を示す図である。
[図10]従来の骨伝導スピーカを用いた携帯電話機の一構成例の要部断面図である。
[図11]従来の骨伝導スピーカを用いた携帯電話機の他の構成例の要部断面図である。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】

【図10】

【図11】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
スピーカ及び/又はマイクロホンとして骨伝導デバイスを用い、電話機本体の筐体に前記骨伝導デバイスよりも大径の凹陥部を設け、前記凹陥部の内側面と前記骨伝導デバイスの外側面との間に緩衝材を配備し、前記緩衝材にて前記骨伝導デバイスを、前記凹陥部の底面との間に間隙を保持し且つその振動面が前記筐体の表面と同一か僅かに迫り出す状態に支持させたことを特徴とする骨伝導デバイスを用いた携帯電話機。
【請求項2】
スピーカ及び/又はマイクロホンとして骨伝導デバイスを用い、電話機本体の筐体に前記骨伝導デバイスよりも大径の透孔部を設け、前記透孔部の内側面と前記骨伝導デバイスの外側面との間に緩衝材を配備し、前記緩衝材にて前記骨伝導デバイスを、その振動面が前記筐体の表面と同一か僅かに迫り出す状態に支持させたことを特徴とする骨伝導デバイスを用いた携帯電話機。
【請求項3】
前記骨伝導デバイスの両面を振動面とした請求項2に記載の骨伝導デバイスを用いた携帯電話機。
【請求項4】
筐体が2つの筐体部から成る折り畳み型であって、閉じた状態において前記骨伝導デバイスの振動面が、前記筐体の前記骨伝導デバイスを設置した側と異なる側の筐体部の内側面に当接するようにした請求項1乃至3のいずれかに記載の骨伝導デバイスを用いた携帯電話機。
【請求項5】
筐体が2つの筐体部から成る回転型であって、閉じた状態において前記骨伝導デバイスの振動面が、前記筐体の前記骨伝導デバイスを設置した側と異なる側の筐体部の内側面に当接するようにした請求項1乃至3のいずれかに記載の骨伝導デバイスを用いた携帯電話機。
【請求項6】
筐体が2つの筐体部から成るスライド型であって、閉じた状態において前記骨伝導スピーカの振動面が、前記筐体の前記骨伝導デバイスを設置した側と異なる側の筐体部の内側面に当接するようにした請求項1乃至3のいずれかに記載の骨伝導デバイスを用いた携帯電話機。
【請求項7】
骨伝導デバイスを装填する容体部と、電話機本体の筺体内側面に固定される固定部とから成る弾性資材製デバイスホルダーを用いて、前記骨伝導デバイスを前記筺体に設けたデバイス設置口に設置した骨伝導デバイスを用いた携帯電話機。
【請求項8】
前記骨伝導デバイスに固定されていて前記容体部の表面側を覆う当接板を、前記筺体から僅かに迫り出すように配設した請求項7に記載の携帯電話機。
【請求項9】
前記容体部の表面側に、前記当接板の裏面周縁部を受ける円形リブを設けた請求項8に記載の携帯電話機。

【国際公開番号】WO2005/069586
【国際公開日】平成17年7月28日(2005.7.28)
【発行日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−517064(P2005−517064)
【国際出願番号】PCT/JP2005/000341
【国際出願日】平成17年1月14日(2005.1.14)
【出願人】(591075892)株式会社テムコジャパン (12)
【Fターム(参考)】