説明

骨形成促進剤

【課題】 積極的に骨形成を促進して、発育期にあるヒトの骨部の形成を助長し、又、骨疾患のみならず、関節部におけるリウマチなどによる骨の変形を予防・治療することができる顕著な効果を有する骨形成促進剤や、骨形成促進作用と骨吸収抑制作用の両作用を有する骨粗鬆症等の骨疾患の予防・治療薬や、これらの作用を含有する機能性食品、飼料を提供することにある。
【解決手段】 天然産イオン交換体と、ナトリウム塩水溶液、カリウム塩水溶液、カルシウム塩水溶液、マグネシウム塩水溶液、アンモニア水、アンモニウム塩水溶液、無機酸水溶液、有機酸水溶液、海水、塩湖水、温泉水のいずれかとを接触させ、前記天然産イオン交換体の含有成分をイオン交換により溶出し、次いでこの溶出液を天然産イオン交換体から分離することにより得られる特殊塩サルデ・チエラを有効成分とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天然産イオン交換体と、ナトリウム塩水溶液、カリウム塩水溶液、カルシウム塩水溶液、マグネシウム塩水溶液、アンモニア水、アンモニウム塩水溶液、無機酸水溶液、有機酸水溶液、海水、塩湖水、温泉水のいずれかとを接触させ、前記天然産イオン交換体の含有成分をイオン交換により溶出し、次いでこの溶出液を天然産イオン交換体から分離することにより得られる特殊塩サルデ・チエラを有効成分とする骨疾患の予防・治療薬、前記特殊塩サルデ・チエラを含有する骨粗鬆症等の骨疾患の予防・治療用機能性食品又は食品素材や飼料用組成物等に関する。
【背景技術】
【0002】
日本の人口年齢別構成において60歳以上が25%にもなる高齢化社会を迎える今日、健康と医療費の問題が日本経済を左右する大きな鍵となる。つまり、この年齢層が罹りやすい生活習慣病、所謂成人病を如何に最小限に止留めることができるかである。この種の病気には、骨疾患等も含まれ、骨代謝、骨形成不全により、骨中のカルシウム量の減少などが生じて、種々の骨疾患が起こると考えられている。骨疾患の代表として骨折、骨軟化症、骨減少症、骨粗鬆症、腰背痛等がある。特にこれら骨疾患の中でも骨粗鬆症は、加齢による骨吸収と骨形成のバランスが崩れることで、相対的に骨吸収が優位となるために骨量の減少が起こり、骨の微細構造の変化により骨の強度が低下し、骨折が起こりやすくなる病態を示す。特に女性の場合には、閉経や卵巣摘除などにより骨量の減少は急速に起こる。骨粗鬆症になると、骨折したり、激しい痛みなどを伴うだけでなく、特に老人の寝たきりの原因ともなるため、高齢化社会における生活の質の向上という観点からも、有効な治療法が求められている。骨粗鬆症は発症してから治療するのは困難であることから、予防に努めることが重要であり、若年期から骨量を増やすことが不可欠で、日常的に骨形成に必要な栄養成分や、骨形成を促進する食品を積極的に摂取するようにしなければならないことが深く認識されるようになった。骨を強化する食品としては、現在、主にカルシウムやマグネシウム、ビタミンDが利用されている。また、カルシウムの腸管からの吸収を促進するカゼインホスホペプチドなども利用されている。
【0003】
骨粗鬆症等の骨疾患の治療薬としては、活性型ビタミンDや女性ホルモン(エストロゲン)、カルシトニン、イプリフラボン類が臨床に用いられ、最近になって、ビタミンK2に代表されるポリイソプレノイド誘導体の破骨細胞形成抑制作用に基づく抗骨粗鬆症剤(例えば、特許文献1参照。)も開発されている。また、カゼインホスホペプチド及びゲニステインを有効成分として含有する骨強化剤(例えば、特許文献2参照。)、サポニン、ダイジン、ダイゼイン、ゲニスチン及びゲニスティンを主たる有効成分とする骨形成促進及び抗骨粗鬆症組成物(例えば、特許文献3参照。)、ワサビ抽出物を有効成分とし、抗骨粗鬆症作用を発揮する骨量増進組成物(例えば、特許文献4参照。)、アセキサム酸亜鉛を有効成分とする骨疾患治療剤(例えば、特許文献5参照。)、イソフラボンを主たる有効成分とする骨形成促進及び骨塩量減少防止用組成物(例えば、特許文献6参照。)、ビタミンKと亜鉛を共に強化した抗骨粗鬆症組成物(例えば、特許文献7参照。)、骨組織復元システムであって、骨格および、骨形成の増進を促進させるために前記骨格に固定させた生物学的活性分子からなる第1成分、ならびに骨再吸収の低減を促進させるための第2成分を含むシステム(例えば、特許文献7参照。)なども知られている。
【0004】
【特許文献1】特開平7−215849号公報
【特許文献2】特開2001−302539号公報
【特許文献3】特開2000−191526号公報
【特許文献4】特開平10−279492号公報
【特許文献5】特開平10−218767号公報
【特許文献6】特開平10−114653号公報
【特許文献7】特表2003−513682号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
骨粗鬆症に代表される骨疾患において我が国で現在認可されている8種の治療剤は総て骨吸収抑制剤(骨が溶けるのを抑制する)であり、唯一メバロン酸合成阻害剤であるスタチンに骨形成促進作用があると報じられたが、遺伝子レベルの知見であり、実際には、骨形成促進効果は弱いものであった。本発明の課題は、積極的に骨形成を促進して、発育期にあるヒトの骨部の形成を助長し、又、骨疾患のみならず、関節部におけるリウマチや生活習慣病、糖尿病などによる骨の変形・損傷を予防・治療することで老人の一番発症し易い骨粗鬆症による骨折の防止等ができる顕著な効果を有する骨形成促進剤や、骨形成促進作用と骨吸収抑制作用の両作用を有する骨粗鬆症等の骨疾患の予防・治療薬や、これらの作用を含有する医薬、機能性食品、飼料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、天然産イオン交換体をナトリウム塩水溶液を該交換体と分離することにより得られる特殊塩サルデ・チエラ(以下、「特殊塩サルデ・チエラ(ナトリウム塩)」又は、単に「サルデ・チエラ(ナトリウム塩)」と略称する)は、従来の食塩に比べ、食品として或いは飼料用として有用であることを見出し、その製造方法を開発し、特許を得ている(特公平6−18519号、特許第1894604号参照)。さらに、研究を進め、この特殊塩サルデ・チエラ(ナトリウム塩)及びカリウム塩に塩基置換した特殊塩サルデ・チエラ(以下、「特殊塩サルデ・チエラ(カリウム塩)」又は、単に「サルデ・チエラ(カリウム塩)」と略称する。)の両者について、骨形成促進作用及び骨疾患の予防・治療作用があることを見い出した。すなわち、無機組成物である特殊塩サルデ・チエラ(ナトリウム塩)を含む水溶液を成長期及び加齢期のラットに1日1回7日間経口投与した短期間の摂取によるラット大腿骨の骨幹部(皮質量)及び骨幹端部(海綿骨)組織における骨成分の変動からみて、特殊塩サルデ・チエラ(50及び100mg/100g体重)の投与により、骨カルシウム量の有意な増加が引き起こされた。一方、特殊塩サルデ・チエラ(50mg/100g体重)に含有するカルシウム相当量のものを塩化カルシウム溶液として7日間経口投与したときには認められなかった。また、特殊塩サルデ・チエラ(カリウム塩)を含む水溶液を成長期のラットに1日1回7日間経口投与した短期間の摂取によるラット大腿骨の骨幹部(皮質量)及び骨幹端部(海綿骨)組織における骨成分の変動からみて、特殊塩サルデ・チエラ(50及び100mg/100g体重)の投与により、骨カルシウム量の有意な増加が引き起こされた。このような無機組成物が骨成分増加効果を奏するとの知見は現在まで報告されていない。また、ラットにおける骨形成量の増大が確認された効果は、経験的にヒトでもほぼ100%有効性が確認されている。本発明はこれら知見に基づいて完成するに至ったものである。なお、このような有効性の他に、高血圧等の生活習慣病の患者に対しては、サルデ・チエラ(ナトリウム塩)よりもサルデ・チエラ(カリウム塩)が有効であることがわかった。さらに、ナトリウム塩又はカリウム塩以外の溶媒で置換溶出して得た特殊塩サルデ・チエラ(カルシウム塩、塩酸、アンモニウム塩等)においても含有成分はサルデ・チエラ(ナトリウム塩)及びサルデ・チエラ(カリウム塩)と同等であることから同様に有効である。以下、サルデ・チエラ(ナトリウム塩)、サルデ・チエラ(カリウム塩)、サルデ・チエラ(塩酸)、サルデ・チエラ(カルシウム塩)等を総称し特殊塩サルデ・チエラ又は単にサルデ・チエラという。
【0007】
即ち、本発明は、天然産イオン交換体と、ナトリウム塩水溶液、カリウム塩水溶液、カルシウム塩水溶液、マグネシウム塩水溶液、アンモニア水、アンモニウム塩水溶液、無機酸水溶液、有機酸水溶液、海水、塩湖水、温泉水のいずれかとを接触させ、前記天然産イオン交換体の含有成分をイオン交換により溶出し、次いでこの溶出液を天然産イオン交換体から分離することにより得られる特殊塩サルデ・チエラを有効成分とすることを特徴とする骨疾患の予防・治療薬(請求項1)や、天然産イオン交換体として、ゼオライト(モルデナイト)を用いたことを特徴とする請求項1記載の骨疾患の予防・治療薬(請求項2)や、骨疾患が、骨粗鬆症であることを特徴とする請求項1又は2記載の骨疾患の予防・治療薬(請求項3)や、天然産イオン交換体と、ナトリウム塩水溶液、カリウム塩水溶液、カルシウム塩水溶液、マグネシウム塩水溶液、アンモニア水、アンモニウム塩水溶液、無機酸水溶液、有機酸水溶液、海水、塩湖水、温泉水のいずれかとを接触させ、前記天然産イオン交換体の含有成分をイオン交換により溶出し、次いでこの溶出液を天然産イオン交換体から分離することにより得られる特殊塩サルデ・チエラを含有し、骨疾患の改善作用を有するものであることを特徴とし、骨疾患改善のために用いられるものである旨の表示を付した機能性食品又は食品素材(請求項4)や、天然産イオン交換体として、ゼオライト(モルデナイト)を用いたことを特徴とする請求項4記載の機能性食品又は食品素材(請求項5)や、骨疾患が、骨粗鬆症であることを特徴とする請求項4又は5記載の機能性食品又は食品素材(請求項6)や、飲料であることを特徴とする請求項4〜6のいずれか記載の機能性食品又は食品素剤(請求項7)や、飲料が、ミネラルウォーターであることを特徴とする請求項7記載の機能性食品又は食品素剤(請求項8)や、天然産イオン交換体と、ナトリウム塩水溶液、カリウム塩水溶液、カルシウム塩水溶液、マグネシウム塩水溶液、アンモニア水、アンモニウム塩水溶液、無機酸水溶液、有機酸水溶液、海水、塩湖水、温泉水のいずれかとを接触させ、前記天然産イオン交換体の含有成分をイオン交換により溶出し、次いでこの溶出液を天然産イオン交換体から分離することにより得られる特殊塩サルデ・チエラを有効成分とすることを特徴とする骨成分増加剤(請求項9)や、天然産イオン交換体として、ゼオライト(モルデナイト)を用いたことにより得られる特殊塩であることを特徴とする請求項9記載の骨成分増加剤(請求項10)や、天然産イオン交換体と、ナトリウム塩水溶液、カリウム塩水溶液、カルシウム塩水溶液、マグネシウム塩水溶液、アンモニア水、アンモニウム塩水溶液、無機酸水溶液、有機酸水溶液、海水、塩湖水、温泉水のいずれかとを接触させ、前記天然産イオン交換体の含有成分をイオン交換により溶出し、次いでこの溶出液を天然産イオン交換体から分離することにより得られる特殊塩サルデ・チエラを有効成分とすることを特徴とする動物用骨疾患の予防・治療剤(請求項11)や、天然産イオン交換体として、ゼオライト(モルデナイト)を用いたことを特徴とする請求項11記載の動物用骨疾患の予防・治療剤(請求項12)や、天然産イオン交換体と、ナトリウム塩水溶液、カリウム塩水溶液、カルシウム塩水溶液、マグネシウム塩水溶液、アンモニア水、アンモニウム塩水溶液、無機酸水溶液、有機酸水溶液、海水、塩湖水、温泉水のいずれかとを接触させ、前記天然産イオン交換体の含有成分をイオン交換により溶出し、次いでこの溶出液を天然産イオン交換体から分離することにより得られる特殊塩サルデ・チエラを含有し、骨疾患の改善作用を有するものであることを特徴とし、骨疾患改善のために用いられるものである旨の表示を付した飼料用組成物(請求項13)や、天然産イオン交換体として、ゼオライト(モルデナイト)を用いたことを特徴とする請求項13記載の飼料組成物(請求項14)や、天然産イオン交換体をカリウム塩水溶液、カルシウム塩水溶液、マグネシウム塩水溶液、アンモニア水、アンモニウム塩水溶液、無機酸水溶液、有機酸水溶液、海水、塩湖水、温泉水のいずれかとを接触させ、該交換体の含有成分を溶出することにより得られる特殊塩サルデ・チエラ(請求項15)や、天然産イオン交換体として、ゼオライト(モルデナイト)を用いたことを特徴とする請求項15記載の特殊塩サルデ・チエラ(請求項16)に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によると、特殊塩サルデ・チエラを有効成分とすることで、積極的に骨形成を促進して、発育期にある骨部の形成を助長し、また、関節部におけるリウマチや生活習慣病、糖尿病などによる骨の変形・損傷、骨疾患を予防・治療することで老人の一番発症しやすい骨粗鬆症による骨折の防止等ができる顕著な効果を有する骨形成促進剤や、骨形成促進作用と骨吸収抑制作用の両作用を有する骨粗鬆症等の骨疾患の予防・治療薬、特殊塩サルデ・チエラを含有する機能性食品又は食品素材、動物用骨疾患の予防・治療剤等を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の骨疾患の予防・治療薬や骨成分増加剤としては、天然産イオン交換体と、ナトリウム塩水溶液、カリウム塩水溶液、カルシウム塩水溶液、マグネシウム塩水溶液、アンモニア水、アンモニウム塩水溶液、無機酸水溶液、有機酸水溶液、海水、塩湖水、温泉水のいずれかとを接触させ、前記天然産イオン交換体の含有成分をイオン交換により溶出し、次いでこの溶出液を天然産イオン交換体から分離することにより得られる特殊塩サルデ・チエラを有効成分とするものであれば特に制限されるものではなく、また、本発明の骨疾患の予防・治療用機能性食品又は食品素材(すなわち骨疾患改善のために用いられるものである旨の表示を付した機能性食品又は食品素材)としては、天然産イオン交換体と、ナトリウム塩水溶液、カリウム塩水溶液、カルシウム塩水溶液、マグネシウム塩水溶液、アンモニア水、アンモニウム塩水溶液、無機酸水溶液、有機酸水溶液、海水、塩湖水、温泉水のいずれかとを接触させ、前記天然産イオン交換体の含有成分をイオン交換により溶出し、次いでこの溶出液を天然産イオン交換体から分離することにより得られる特殊塩サルデ・チエラ含有し、骨疾患の改善作用を有するものであれば特に制限されるものではなく、さらに、本発明の動物用骨疾患の予防・治療剤や、本発明の骨疾患の予防・治療用飼料組成物(すなわち骨疾患改善のために用いられるものである旨の表示を付した飼料用組成物)としては、天然産イオン交換体と、ナトリウム塩水溶液、カリウム塩水溶液、カルシウム塩水溶液、マグネシウム塩水溶液、アンモニア水、アンモニウム塩水溶液、無機酸水溶液、有機酸水溶液、海水、塩湖水、温泉水のいずれかとを接触させ、前記天然産イオン交換体の含有成分をイオン交換により溶出し、次いでこの溶出液を天然産イオン交換体から分離することにより得られる特殊塩サルデ・チエラを含有し、骨疾患の改善作用を有するものであればどのようなものでもよく、上記骨疾患としては、骨折、骨軟化症、骨減少症、リュウマチ、関節炎、骨粗鬆症、腰背痛、糖尿病性骨量減少症等を挙げることができ、中でも、閉経後骨粗鬆症、エストロゲン欠乏性骨粗鬆症、老人性骨粗鬆症、ステロイド誘発骨粗鬆症等の骨粗鬆症や骨軟化症などの代謝性骨疾患を好適に例示することができる。
【0010】
特殊塩サルデ・チエラの製法としては、天然産イオン交換体と、ナトリウム塩水溶液、カリウム塩水溶液、カルシウム塩水溶液、マグネシウム塩水溶液、アンモニア水、アンモニウム塩水溶液、無機酸水溶液、有機酸水溶液、海水、塩湖水、温泉水のいずれかとを接触させ、前記天然産イオン交換体の含有成分をイオン交換により溶出し、次いでこの溶出液を天然産イオン交換体から分離することにより製造することができる。前記ナトリウム塩水溶液としては、塩化ナトリウム、クエン酸三ナトリウム、グルコン酸ナトリウム、メタリン酸ナトリウム、リンゴ酸ナトリウム、リン酸三ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、亜硝酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、酒石酸ナトリウム、硝酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、乳酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、グルタミン酸ナトリウム等の水溶液を例示することができ、これらのうち、塩化ナトリウムの水溶液を好適に例示することができる。また、前記カリウム塩水溶液としては、前記ナトリウム塩のナトリウムをカリウムと置換したカリウム塩水溶液を例示することができ、これらのうち、塩化カリウムの水溶液を好適に例示することができる。また、前記カルシウム塩水溶液としては、塩化カルシウム、酢酸カルシウム等の水溶液を例示することができ、これらのうち塩化カルシウム水溶液を好適に例示することができる。さらに、マグネシウム塩水溶液としては、塩化マグネシウム、酢酸マグネシウム等の水溶液を例示することができ、これらのうち塩化マグネシウム水溶液を好適に例示することができる。前記アンモニウム塩水溶液としては、塩化アンモニウム、酢酸アンモニウム等の水溶液を例示することができ、これらのうち塩化アンモニウム水溶液を好適に例示することができる。前記無機酸水溶液としては、塩酸、硝酸等を例示することができ、これらのうち塩酸を好適に例示することができる。前記有機酸水溶液としては、酢酸、クエン酸水溶液等を例示することができ、これらのうち酢酸を好適に例示することができる。なお、アンモニア水又はアンモニウム水溶液を使用した場合、溶出液中のアンモニウム等の不要成分を除去することにより特殊塩サルデ・チエラを製造することができる。上記天然産イオン交換体としては、例えば天然に存在する方沸石、魚眼石、菱沸石、グメリン沸石、ソーダ沸石、輝弗石、束沸石、濁沸石、イネサイト等の沸石(ゼオライト)、モンモリロナイトを主成分とする酸性白土、ベントナイト等を挙げることができるが、ゼオライト(モルデナイト)が好ましい。ゼオライトは一般式WmZnO2n・sH2Oで示される含水ケイ酸塩で、WはNa、Ca、KまれにBa、Srで、ZはSi+Al(Si/Al>1)、sは一定しない。またモンモリロナイトは主として含水ケイ酸アルミニウム(SiO/Al=4)で、少量のFe、Mg、Ca、アルカリ金属を含み、ごく少量のMn、Znなどを含むこともある。
【0011】
天然産イオン交換体とナトリウム塩水溶液あるいはカリウム塩水溶液とを接触させ、前記天然産イオン交換体の含有成分をイオン交換により溶出し、次いでこの溶出液を天然産イオン交換体から分離する方法としては、天然産イオン交換体を、好ましくは粉砕し、ナトリウム塩水溶液、カリウム塩水溶液、カルシウム塩水溶液、マグネシウム塩水溶液、アンモニア水、アンモニウム塩水溶液、無機酸水溶液、有機酸水溶液のいずれかに浸漬、接触させ、バッチ法あるいは流動法により、水溶液中に存在する陽イオンとイオン置換させる。これらのうち、Na、Kイオンとの交換反応により溶出させる方法を具体的に挙げることができる。この場合溶出を促進させるため常圧または加圧下で加熱することもできる。また、溶出条件について一例を示せば、流動あるいは浸漬時のナトリウム塩(あるいはカリウム塩)水溶液中のナトリウム塩(あるいはカリウム塩)の濃度および該交換体とナトリウム塩(あるいはカリウム塩)水溶液との重量割合は、使用する交換体の組成および目的とする特殊塩中のナトリウム(あるいはカリウム)と他のミネラルとの含有比率によって異なるが、ナトリウム塩(あるいはカリウム塩)の濃度は0.5N〜飽和溶液が用いられ、濃度が薄いと、置換速度は遅くなる。交換体とナトリウム塩(あるいはカリウム塩)水溶液との割合は容量比で1:1〜1:10程度である。なお、上記ナトリウム塩水に替えて海水または海水濃縮物(折出した無機化合物を除去したものを含む)や、塩水湖の水または塩水湖の水濃縮物(析出した無機化合物を除去したものを含む)を使用することもできる。また、その他にも温泉水を使用することも可能である。なお、浸漬して溶出する方法に比べ流動法で溶出する方法の方が、優れた溶出効率の点で好ましい。
【0012】
溶出液は、ろ過、遠心分離等公知の方法で交換体と分離され、溶液状の特殊塩サルデ・チエラが得られる。さらに必要により、開放容器中での加熱濃縮あるいは密閉容器中での減圧濃縮等公知の方法で濃縮され、加熱又は常圧ないし減圧下で常法により乾燥されて固体状の特殊塩サルデ・チエラが得られる。また、塩酸水溶液、酢酸水溶液、アンモニア水、アンモニウム塩、酢酸塩等の水溶液を置換溶出媒体として使用した場合、塩酸と酢酸の除去は減圧下又は常圧下の乾燥のいずれでもよいが、過剰のアンモニウムイオン又は酢酸イオンを完全に除去するためには、加熱乾燥が好ましい。
【0013】
以上の製造法で得られる特殊塩サルデ・チエラ(ナトリウム塩)中のナトリウム以外のミネラルは、カルシウム、マグネシウム、カリウム、亜鉛、マンガン、ケイ素等であり、ナトリウムとナトリウム以外のミネラルとの割合は、使用する交換体の組成や使用する塩の濃度、使用割合により異なるが100:18〜40(モル比)のものが容易に得られる。また、特殊塩サルデ・チエラ(カリウム塩)中のカリウム以外のミネラルは、カルシウム、マグネシウム、ナトリウム、亜鉛、マンガン、ケイ素等であり、カリウムとカリウム以外のミネラルとの割合は、使用する交換体の組成により異なるが100:24〜40(モル比)のものが容易に得られる。さらに、特殊塩サルデ・チエラ(塩酸、酢酸、酢酸アンモニウム等)では、ナトリウムとそれ以外のミネラルの割合が、100:200以上のものを得ることができる。なお、カリウムでは、カリウム対その他=100:500以上のものが得られる。
【0014】
特殊塩サルデ・チエラあるいは特殊塩サルデ・チエラ含有組成物を、骨疾患、例えば、骨粗鬆症、リウマチ等による骨の変形を伴う関節炎の予防・治療薬等の医薬品として用いる場合は、薬学的に許容される通常の担体、結合剤、安定化剤、賦形剤、希釈剤、pH緩衝剤、崩壊剤、可溶化剤、溶解補助剤、等張剤などの各種調剤用配合成分を添加することができる。また、これらに加えて、上述した公知の骨形成促進作用及び/又は骨吸収抑制作用を有する物質や、カルシウム、マグネシウム、リン等のミネラルを併用することができる。これら予防若しくは治療剤は、経口的又は非経口的に投与することができる。すなわち通常用いられる投与形態、例えば粉末、顆粒、カプセル剤、シロップ剤、懸濁液等の剤型で経口的に投与することができ、あるいは、例えば溶液、乳剤、懸濁液等の剤型にしたものを注射の型で非経口投与することができる他、スプレー剤の型で鼻孔内投与することもできるが、経口的に投与することが好ましい。投与量は、予防か治療かの投与目的、骨疾患の種類や重篤度、患者の年齢等に応じて適宜選定することができるが、成人における治療の場合、サルデ・チエラ(ナトリウム塩)あるいはサルデ・チエラ(カリウム塩)(固体)を1日0.1〜5g、好ましくは1g程度を3ヶ月間経口摂取すればよい。
【0015】
特殊塩サルデ・チエラあるいは特殊塩サルデ・チエラ含有組成物を添加した、骨疾患の予防・治療に用いられる、骨疾患の予防・治療機能を有する食品や食品素材の種類としては特に制限されず、例えば、ミネラルウォーター、スポーツ飲料、ジュース、牛乳、豆乳、酒類、コーヒー、紅茶、煎茶、ウーロン茶等の各種飲料、ヨーグルト、ドリンクヨーグルトや、プリン、クッキー、パン、ケーキ、ゼリー、煎餅などの焼き菓子、羊羹などの和菓子、冷菓、チューインガム等のパン・菓子類や、うどん、そば等の麺類や、かまぼこ、ハム、魚肉ソーセージ等の魚肉練り製品や、みそ、しょう油、ドレッシング、マヨネーズ、甘味料等の調味類や、チーズ、バター等の乳製品や、豆腐、こんにゃく、その他佃煮、餃子、コロッケ、サラダ等の各種総菜を挙げることができる。これら食品や食品素材には、上述した公知の骨形成促進作用及び/又は骨吸収抑制作用を有する物質や、カルシウム、マグネシウム、リン等のミネラルを併用してもよい。
【0016】
特殊塩サルデ・チエラを有効成分とする動物用骨疾患の予防・治療剤や、特殊塩サルデ・チエラあるいは特殊塩サルデ・チエラ含有組成物を配合した飼料組成物は、ブタ、ウシ、ニワトリ等の家畜・家禽や、イヌ、ネコ等のペット、養殖魚介類の飼育等に有利に用いることができ、かかる動物用骨疾患の予防・治療剤や飼料用組成物には、上述したイプリフラボン類等の公知の骨形成促進作用及び/又は骨吸収抑制作用を有する物質や、カルシウム、マグネシウム、リン、鉄、亜鉛、マンガン、銅等のミネラルを併用することができる。例えば、生育期の乳牛の場合、サルデ・チエラ(ナトリウム塩)あるいはサルデ・チエラ(カリウム塩)(固体)を1日1〜10g程度与えることにより、正常な生育と共に骨疾患を予防できる。
【0017】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの例示に限定されるものではない。
【実施例1】
【0018】
(サルデ・チエラ(ナトリウム塩)の製造)
300L容量のステンレス容器に2Nの塩化ナトリウム水溶液133Lを注入し80℃〜90℃に加温し、3mm〜5mm粒径のゼオライト100kgを浸漬した。使用したゼオライトはモルデナイト(モルデンフッ石)で、塩基置換容量(CEC)は170me/100gであった。溶液温度を80℃に保ち、浸漬時間1時間とし、ガラス繊維をろ材としたろ過器を通して浸出液を分離し、平釜で加温して水分を蒸発・濃縮・乾燥して、本発明の特殊塩サルデ・チエラ(ナトリウム塩)約11.5kgを得た。特殊塩サルデ・チエラ(ナトリウム塩)100g中の主要元素の組成は、(財)日本食品分析センターによると、次のとおりである。
【0019】
【表1】

【0020】
さらに、三井化学分析センター等の協力を得て、特殊塩サルデ・チエラ(ナトリウム塩)の元素組成について詳細に分析した。結果は表2のとおりである。表2からもわかるように、本発明のサルデ・チエラ(ナトリウム塩)は、カルシウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、塩素等の主要元素の他に、多くの元素を含有することが明らかとなった。なお、モル比の計算は、[Na含量(g)]/[Naの原子量]:[その他の各ミネラル(H,C,O,N以外)の元素の含量(g)]/[その他の元素の原子量]の総和として計算した。

【表2】

【実施例2】
【0021】
(成長期ラットの骨組織中成分の変動)
実施例1で得られたサルデ・チエラ(ナトリウム塩)の粉末を精製蒸留水に溶解して50及び100mg/mlの濃度の溶液を調整した。この溶液をウイスタ−系の成長期(雄性;4週齢で体重90−100g)ラット、及び加齢期(雌性;50週齢で体重220−250g)ラットに1日1回7日間連続的に経口投与した。ラットは最終投与の24時間目に軽いエーテル麻酔下で心臓せん刺により採血し、大腿骨を摘出した。血液は、室温で30分間放置し、300回転で5分間遠心分離して、血清を得た。この血清中の骨代謝に関係したカルシウムの濃度を定量した。大腿骨組織は、筋肉を除去した骨組織を骨幹端部と骨幹部に分け、ハサミで切断し、骨髄細胞を冷0.25Mショ糖溶液中で洗浄、除去し、骨質を得た。骨幹部と骨幹端部組織中の骨成分として「カルシウム」、「骨石灰化促進酵素アルカリ性ホスファターゼ」、及び骨組織中細胞数の指標としての「DNA」を測定した。サルデ・チエラ(ナトリウム塩)をラットに経口投与した場合を試験区とし、サルデ・チエラ(ナトリウム塩)50mg中に含有するカルシウム量3.155mgに相当する塩化カルシウム溶液(3.155mgカルシウム/ml/100g体重)をラットに経口投与した場合を比較区とし、サルデ・チエラ(ナトリウム塩)を添加しない場合を対照区とし、得られた結果はStudent-t-test(t−検定)により統計処理し、対照区(6匹のラットを使用)と試験区及び比較区(各区6匹のラットを使用)における値を比較して有意差検定を行った。
【0022】
(骨カルシウムの測定)
組織片に濃硝酸を加えて120℃で12時間灰化し、原子吸光分光光度計(パーキンエルマー社製「パーキンエルマー303」)を用いて骨カルシウム量を定量した。
【0023】
(アルカリ性ホスファターゼ活性の測定)
骨の石灰化の促進に関する最も重要な酵素であるアルカリ性ホスファターゼの量を調べた。骨組織片を0.25Mの蔗糖液で洗浄し、6.5mMのバルビタール緩衝液(pH7.4)3ml中で破砕し、超音波処理した。この液を遠心分離して上清を酵素液としてWalter及びSchuttの方法(in Method of Enzymatic Analysis, Vol1-2,p856, Academic Press, New York, 1965)に従って測定した。すなわち、p−ニトロフェニール燐酸を基質として、ジエタノールアミン緩衝液(pH9.8)2mlに酵素液0.05mlを添加し、37℃で30分間インキュベーションし、0.05NのNaOHを10ml添加した後、分光光度計を用いて吸光度(405nm)を測定し、骨に対する治療剤及び骨に対する作用の知られている化合物の骨アルカリ性ホスファターゼ活性を調べた。
【0024】
(DNA量の定量)
骨組織片を0.25Mの蔗糖溶液で洗浄し、湿重量を測定した。その後、0.1NのNaOH4ml中で粉砕して、4℃で24時間浸透させた。この液を遠心分離し、上清を試料としてCeriottiらの方法(J.Biol.Chem., 241: 34-77, 1951)に従って定量した。即ち、試料2mlに濃塩酸1ml及び0.04%のインドール溶液1mlを添加し沸騰水中で100℃に加熱後、急冷して、クロロホルム4mlで抽出し、クロロホルム層を採取して、分光光度計(490nm)を用いて骨中のDNA量を測定した。
【実施例3】
【0025】
(体重と血清成分の変動・毒性的影響の有無)
サルデ・チエラ(ナトリウム塩)を精製蒸留水に溶解した溶液の50mg/及び100mg/mlを成長期のラットの体重100g当たり、1.0mlを1日1回7日間、連続経口投与した。最終投与の24時間目におけるラットの体重と血清カルシウム及び無機リン濃度を表3に示す。その結果、体重、血清中のカルシウム及び無機リンの濃度は、対照群と比較して、サルデ・チエラ(ナトリウム塩)(50及び100mg/ml体重)の投与による有意な変動を引き起こさなかった。さらに、サルデ・チエラ(ナトリウム塩)50mg中に含有するカルシウム量3.155mgに相当する塩化カルシウム溶液(3.155mgカルシウム/ml/100g体重)をラットに経口投与した場合においても有意な変動を引き起こさなかった。この知見から、サルデ・チエラ(ナトリウム塩)(50及び100mg/ml)のラットへの経口投与による毒性的な影響は低いものであることがわかった。また、加齢期(50週齢)ラットにサルデ・チエラ1日1回7日間経口投与した。最終投与の24時間目におけるラットの体重と血清カルシウム及び無機リン濃度を表4に示す。その結果、体重、血清中のカルシウム及び無機リンの濃度は、対照群と比較して有意な変動を引き起こさなかった。
【0026】
【表3】

【0027】
【表4】

【実施例4】
【0028】
(成長期ラットの骨組織中成分の変動)
成長期ラットにサルデ・チエラ(ナトリウム塩)を7日間経口投与したときの大腿骨組織の骨幹部(皮質骨)と骨幹端部(海綿骨)組織における骨成分(カルシウム、アルカリ性ホスファターゼ及びDNA)の変動を調べた。結果を表5に示す。
【0029】
【表5】

【0030】
サルデ・チエラ(ナトリウム塩)(50及び100mg/100g体重)の経口投与により、骨組織中カルシウム量は骨幹部組織において有意に増加された。また、骨幹端部組織においては100mg/100g体重の投与で有意な増加が見出された。なお、対照である塩化カルシウム溶液(3.155mgカルシウム/100g体重)の投与では、骨組織中カルシウム量の有意な増加は見出されなかった。
【0031】
大腿骨組織中の石灰化促進酵素として機能するアルカリ性ホスファターゼ活性と骨組織中の細胞数の指標としてのDNA量の変動を調べた。その結果、サルデ・チエラ(ナトリウム塩)の投与(50及び100mg/100g体重)により、骨幹部のアルカリ性ホスファターゼ活性の有意な上昇がひき起された。また、骨幹端部組織においては100mg/100gの投与量では有意な増加が認められた。一方、塩化カルシウム(3.155mgカルシウム/100g体重)の投与によっては骨組織中アルカリ性ホスファターゼ活性の有意な変動は生じなかった。
【0032】
サルデ・チエラ(ナトリウム塩)(100mg/100g体重)の投与により、骨幹部及び骨幹端部組織中のDNA量の有意な増加がひき起された。塩化カルシウム(3.155mgカルシウム/100g体重)の投与では、有意なDNAの増加は認められなかった。
【0033】
以上の成長期ラットを用いた骨成分に及ぼすサルデ・チエラ(ナトリウム塩)の経口投与実験から、50及び100mg/100g体重の投与は、骨組織中のカルシウム量、アルカリ性ホスファターゼ量、DNA量の有意な増加を示し、骨成分の増加効果をもたらすことが示された。
【実施例5】
【0034】
(加齢期ラットの骨形成増進作用)
サルデ・チエラ(ナトリウム塩)を加齢期((雌性;50週齢で体重220−250g)ラットに7日間経口投与し、骨成分に及ぼす効果について、実施例3と同様に骨組織中のカルシウム量、アルカリ性ホスファターゼ量、DNA量を調べた。その結果を表6に示す。
【0035】
【表6】

【0036】
加齢期ラットの大腿骨組織の骨幹部及び骨幹端部組織中のカルシウム量はサルデ・チエラ(ナトリウム塩)(50mg/100g体重)投与により有意に増加することが見出された。また、骨幹部及び骨幹端部組織におけるアルカリ性ホスファターゼ活性及びDNA量の有意な増加がサルデ・チエラ(ナトリウム塩)の100mg/100g体重の投与で見出された。このように、サルデ・チエラ(ナトリウム塩)の経口投与は、加齢期(雌性)ラットを用いた場合においても骨成分の増加効果をもたらすことが明らかになった。他方、特殊塩サルデ・チエラ(ナトリウム塩)(50mg/100g体重)に含有するカルシウム量に相当する塩化カルシウム溶液(3.155mg/100g体重)を投与した群においては、骨幹部及び骨幹端部組織のカルシウム量の有意な変動は認められなかった。
【実施例6】
【0037】
(特殊塩サルデ・チエラ(カリウム塩)の製造)
100L容量のステンレス容器に2Nの塩化カリウム水溶液85Lを注入し、そこへ2mm〜5mm粒径のゼオライト40kgを浸漬した。使用したゼオライトはモルデナイト(モルデンフッ石)で、塩基置換容量(CEC)は170me/100gであった。浸漬時間2時間とし、ろ過器を通して浸出液を分離し、平釜で加温して水分を蒸発・濃縮・乾燥して、本発明の天然ミネラル含有特殊塩サルデ・チエラ(カリウム塩)約7.76kgを得た。特殊塩サルデ・チエラ(カリウム塩)1kg中の組成は、次のとおりである。なお、モル比の計算は、[K含量(g)]/[Kの原子量]:[その他の各ミネラル(H,C,O,N以外)の元素の含量(g)]/[その他の元素の原子量]の総和として計算した。
【0038】
【表7】

【0039】
(浸出液を取り出した残渣ゼオライトの利用)
塩基置換容量(CEC)170me/100gの99%以上がK塩に置換され、カリ内蔵型の緩効性カリ肥料として、農業に利用出来る。
現在使用されている化学カリ肥料は水溶性であり、使用後土壌のカリ成分が流亡して環境之負荷が大きいが、残渣カリ内蔵ゼオライトは、カリ肥料として植物に効率よく、長期間にわたり供給できる、環境保全型カリ肥料となる。
【実施例7】
【0040】
(成長期ラットの骨組織中成分の変動)
実施例6で得られたサルデ・チエラ(カリウム塩)の粉末を精製蒸留水に溶解して50及び100mg/mlの濃度の溶液を調整した。この溶液をウイスタ−系の成長期(雄性;4週齢で体重90−100g)ラットに1日1回7日間連続的に経口投与した。ラットは最終投与の24時間目に軽いエーテル麻酔下で心臓せん刺により採血し、大腿骨を摘出した。血液は、室温で30分間放置し、3000回転で5分間遠心分離して、血清を得た。この血清中の骨代謝に関係したカルシウムと無機リンの濃度を定量した。大腿骨組織は、筋肉を除去した骨組織を骨幹端部と骨幹部に分け、ハサミで切断し、骨髄細胞を冷0.25Mショ糖溶液中で洗浄、除去し、骨質を得た。骨幹部と骨幹端部組織中の骨成分として「カルシウム」、「骨石灰化促進酵素アルカリ性ホスファターゼ」、及び骨組織中細胞数の指標としての「DNA」を測定した。精製蒸留水にサルデ・チエラ(カリウム塩)を添加しない場合を対照とし、得られた結果はStudent-t-test(t−検定)により統計処理し、対照群(6匹のラットを使用)とサルデ・チエラ(カリウム塩)(各投与群6匹を使用)投与群から得られた値を比較して有意差検定を行った。
【実施例8】
【0041】
(体重と血清成分の変動・毒性的影響の有無)
サルデ・チエラ(カリウム塩)を精製蒸留水に溶解した溶液の50mg/及び100mg/mlを成長期のラットの体重100g当たり、1.0mlを1日1回7日間、連続経口投与した。最終投与の24時間目におけるラットの体重と血清カルシウム及び無機リン濃度を表8に示す。その結果、体重、血清中のカルシウム及び無機リンの濃度は、対照群と比較して、サルデ・チエラ(カリウム塩)(50及び100mg/ml体重)の投与による有意な変動を引き起こさなかった。さらに、対照として精製蒸留水をラットに経口投与した場合においても有意な変動を引き起こさなかった。この知見から、サルデ・チエラ(カリウム塩)(50及び100mg/ml)のラットへの経口投与による毒性的な影響は低いものであることがわかった。
【0042】
【表8】

【実施例9】
【0043】
(成長期ラットの骨組織中成分の変動)
成長期ラットにサルデ・チエラ(カリウム塩)を7日間経口投与したときの大腿骨組織の骨幹部(皮質骨)と骨幹端部(海綿骨)組織における骨成分(カルシウム、アルカリ性ホスファターゼ及びDNA)の変動を調べた。結果を表9に示す。
【0044】
【表9】

各値は、ラット6匹分から得られた値の平均値±標準誤差で表示
*p<0.05(対照と比較して)
p<0.01(対照と比較して)
【0045】
サルデ・チエラ(カリウム塩)(50及び100mg/100g体重)の経口投与により、骨組織中カルシウム量は骨幹部組織において有意に増加された。また、骨幹端部組織においては100mg/100g体重の投与で有意な増加が見出された。なお、対照である精製蒸留水の投与では、骨組織中カルシウム量の有意な増加は見出されなかった。
【0046】
大腿骨組織中の石灰化促進酵素として機能するアルカリ性ホスファターゼ活性と骨組織中の細胞数の指標としてのDNA量の変動を調べた。その結果、サルデ・チエラ(カリウム塩)の投与(50及び100mg/100g体重)により、骨幹部及び骨幹端部のアルカリ性ホスファターゼ活性の有意な上昇がひき起された。
【0047】
サルデ・チエラ(カリウム塩)(100mg/100g体重)の投与により、骨幹部及び骨幹端部組織中のDNA量の有意な増加がひき起された。対照である精製蒸留水の投与では、有意なDNAの増加は認められなかった。
【0048】
以上の成長期ラットを用いた骨成分に及ぼすサルデ・チエラ(カリウム塩)の経口投与実験から、50及び100mg/100g体重の投与は、骨組織中のカルシウム量、アルカリ性ホスファターゼ量、DNA量の有意な増加を示し、骨成分の増加効果をもたらすことが示された。
[比較例1]
【0049】
(サルデ・チエラ類似合成品の製造)
表10に示される、サルデ・チエラ(ナトリウム塩)100mg/ml中に主に含有される相当量の元素の組み合わせ、(A)ナトリウム、カリウム、マグネシウム、及び塩素の混合物、(B)ケイ素、(A+B+C)ナトリウム、カリウム、マグネシウム、塩素、ケイ素、カルシウム、亜鉛及びマンガンの混合物をそれぞれ調製した。サルデ・チエラ類似合成品100mg/ml中に相当する元素含有量を以下の表に示す。
【0050】
【表10】

[比較例2]
【0051】
(成長期ラットの骨組織中成分の変動)
比較例1で得られたサルデ・チエラ類似合成品の各溶液(A,B,A+B+C)を、ウイスタ−系の成長期(雄性;4週齢で体重約90g)ラットに1日1回7日間連続的に経口投与した。ラットは最終投与の24時間目に軽いエーテル麻酔下で心臓せん刺により採血し、大腿骨を摘出した。血液は、室温で30分間放置し、3000回転で5分間遠心分離して、血清を得た。この血清中の骨代謝に関係したカルシウムと無機リンの濃度を定量した。大腿骨組織は、筋肉を除去した骨組織を骨幹端部と骨幹部に分け、ハサミで切断し、骨髄細胞を冷0.25Mショ糖溶液中で洗浄、除去し、骨質を得た。骨幹部と骨幹端部組織中の骨成分として「カルシウム」、「骨石灰化促進酵素アルカリ性ホスファターゼ」、及び骨組織中細胞数の指標としての「DNA」を測定した。精製蒸留水にサルデ・チエラを添加しない場合を対照とし、得られた結果はStudent-t-test(t−検定)により統計処理し、対照群(6匹のラットを使用)とサルデ・チエラ類似合成品(各投与群6匹を使用)投与群から得られた値を比較して有意差検定を行った。
[比較例3]
【0052】
(体重と血清成分の変動・毒性的影響の有無)
上記A組成を1ml中に含む溶液(精製蒸留水に溶解)、B組成を1ml中に含む溶液、A+B+Cの混合物を含む溶液を、成長期ラットの体重100g当り、1.0mlを1日1回7日間連続経口投与した。最終投与の24時間目におけるラットの体重と血清カルシウム及び無機リン濃度を表10にまとめた。
その結果、体重、血清中のカルシウム及び無機リン濃度は、対照群と比較して、各投与群において有意な変動を引き起こさなかった。
【0053】
【表11】

各値は、ラット6匹から得られた値の平均値±標準誤差で表示
[比較例4]
【0054】
(成長期ラットの骨組織中成分の変動)
成長期ラットにサルデ・チエラ類似合成品の各溶液(A,B,A+B+C)を7日間経口投与したときの大腿骨組織の骨幹部(皮質骨)と骨幹端部(海綿骨)組織における骨成分(カルシウム、アルカリ性ホスファターゼ及びDNA)の変動を調べた。結果を表12に示す。なお、アルカリ性ホスファターゼは大腿骨組織中の石灰化促進機能の指標とし、DNA量は骨組織中の細胞数の指標とした。
【0055】
【表12】

各値は、ラット6匹分から得られた値の平均値±標準誤差で表示
*p<0.01(対照と比較して)
【0056】
サルデ・チエラ類似合成品A液の経口投与により、骨組織中カルシウム量には骨幹部及び骨幹端部組織において、有意な変動が見い出されなかった。また、骨組織中のアルカリ性ホスファターゼ活性は、骨幹部と骨幹端部組織において、有意に低下していた。さらに、DNA量は骨幹部組織において、有意に低下していた。同様に、サルデ・チエラ類似合成品A+B+C液の経口投与により、骨組織中カルシウム量には骨幹部及び骨幹端部組織において有意な変動が見い出されなかった。骨幹部と骨幹端部組織におけるアルカリ性ホスファターゼ活性及びDNA量は有意に低下していた。これに対し、サルデ・チエラ類似合成品B液の投与により、骨成分(カルシウム、アルカリ性ホスファターゼ及びDNA)には骨幹部と骨幹端部組織において有意な変動が認められなかった。
【0057】
以上より、サルデ・チエラ類似合成品を調製し、その骨効果について調べたところ、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、塩素、ケイ素、カルシウム、亜鉛、及びマンガンの混合物の投与は骨成分に対する同化効果を発現しなかった。天然サルデ・チエラ(地の塩)には24種類以上の元素が含有されている。サルデ・チエラが含有する元素のうち、確認された元素の数は24種類であるが、ICP−MS等の高感度分析計を使えば、さらに多くの微量金属元素の含有が予想される。したがって、サルデ・チエラの骨量増加効果は、前述の元素の組み合わせ試験に使用した元素以外の元素の効果が重要であると考えられ、特定の単独元素による効果というよりは、複数の元素の共同による効果であると考えられる。いずれにしても、今回の実験から、天然サルデ・チエラ(地の塩)が骨同化効果を発揮するための元素組成は、それに比較的多く含有される元素の組み合わせによる組成物に起因しないことが明らかになった。
【0058】
本発明に係る特殊塩サルデ・チエラは、骨成分を増加させ、骨塩量を保持・増進する効果を発揮し、抗骨粗鬆症因子として機能することが確かめられた。したがって、本発明の特殊塩サルデ・チエラは、骨折、骨軟化症、骨減少症、リュウマチ、関節炎、骨粗鬆症、腰背痛、糖尿病性骨量減少症等の予防及び治療、発育期のヒト・動物の健全な骨の発育を向上させ、或いは、リウマチなど骨の変形の予防・治療等にも効果を発揮することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
天然産イオン交換体と、ナトリウム塩水溶液、カリウム塩水溶液、カルシウム塩水溶液、マグネシウム塩水溶液、アンモニア水、アンモニウム塩水溶液、無機酸水溶液、有機酸水溶液、海水、塩湖水、温泉水のいずれかとを接触させ、前記天然産イオン交換体の含有成分をイオン交換により溶出し、次いでこの溶出液を天然産イオン交換体から分離することにより得られる特殊塩サルデ・チエラを有効成分とすることを特徴とする骨疾患の予防・治療薬。
【請求項2】
天然産イオン交換体として、ゼオライト(モルデナイト)を用いたことを特徴とする請求項1記載の骨疾患の予防・治療薬。
【請求項3】
骨疾患が、骨粗鬆症であることを特徴とする請求項1又は2記載の骨疾患の予防・治療薬。
【請求項4】
天然産イオン交換体と、ナトリウム塩水溶液、カリウム塩水溶液、カルシウム塩水溶液、マグネシウム塩水溶液、アンモニア水、アンモニウム塩水溶液、無機酸水溶液、有機酸水溶液、海水、塩湖水、温泉水のいずれかとを接触させ、前記天然産イオン交換体の含有成分をイオン交換により溶出し、次いでこの溶出液を天然産イオン交換体から分離することにより得られる特殊塩サルデ・チエラを含有し、骨疾患の改善作用を有するものであることを特徴とし、骨疾患改善のために用いられるものである旨の表示を付した機能性食品又は食品素材。
【請求項5】
天然産イオン交換体として、ゼオライト(モルデナイト)を用いたことを特徴とする請求項4記載の機能性食品又は食品素材。
【請求項6】
骨疾患が、骨粗鬆症であることを特徴とする請求項4又は5記載の機能性食品又は食品素材。
【請求項7】
飲料であることを特徴とする請求項4〜6のいずれか記載の機能性食品又は食品素剤。
【請求項8】
飲料が、ミネラルウォーターであることを特徴とする請求項7記載の機能性食品又は食品素剤。
【請求項9】
天然産イオン交換体と、ナトリウム塩水溶液、カリウム塩水溶液、カルシウム塩水溶液、マグネシウム塩水溶液、アンモニア水、アンモニウム塩水溶液、無機酸水溶液、有機酸水溶液、海水、塩湖水、温泉水のいずれかとを接触させ、前記天然産イオン交換体の含有成分をイオン交換により溶出し、次いでこの溶出液を天然産イオン交換体から分離することにより得られる特殊塩サルデ・チエラを有効成分とすることを特徴とする骨成分増加剤。
【請求項10】
天然産イオン交換体として、ゼオライト(モルデナイト)を用いたことにより得られる特殊塩であることを特徴とする請求項9記載の骨成分増加剤。
【請求項11】
天然産イオン交換体と、ナトリウム塩水溶液、カリウム塩水溶液、カルシウム塩水溶液、マグネシウム塩水溶液、アンモニア水、アンモニウム塩水溶液、無機酸水溶液、有機酸水溶液、海水、塩湖水、温泉水のいずれかとを接触させ、前記天然産イオン交換体の含有成分をイオン交換により溶出し、次いでこの溶出液を天然産イオン交換体から分離することにより得られる特殊塩サルデ・チエラを有効成分とすることを特徴とする動物用骨疾患の予防・治療剤。
【請求項12】
天然産イオン交換体として、ゼオライト(モルデナイト)を用いたことを特徴とする請求項11記載の動物用骨疾患の予防・治療剤。
【請求項13】
天然産イオン交換体と、ナトリウム塩水溶液、カリウム塩水溶液、カルシウム塩水溶液、マグネシウム塩水溶液、アンモニア水、アンモニウム塩水溶液、無機酸水溶液、有機酸水溶液、海水、塩湖水、温泉水のいずれかとを接触させ、前記天然産イオン交換体の含有成分をイオン交換により溶出し、次いでこの溶出液を天然産イオン交換体から分離することにより得られる特殊塩サルデ・チエラを含有し、骨疾患の改善作用を有するものであることを特徴とし、骨疾患改善のために用いられるものである旨の表示を付した飼料用組成物。
【請求項14】
天然産イオン交換体として、ゼオライト(モルデナイト)を用いたことを特徴とする請求項13記載の飼料組成物。
【請求項15】
天然産イオン交換体を、カリウム塩水溶液、カルシウム塩水溶液、マグネシウム塩水溶液、アンモニア水、アンモニウム塩水溶液、無機酸水溶液、有機酸水溶液、海水、塩湖水、温泉水のいずれかとを接触させ、該交換体の含有成分を溶出することにより得られる特殊塩サルデ・チエラ。
【請求項16】
天然産イオン交換体として、ゼオライト(モルデナイト)を用いたことを特徴とする請求項15記載の特殊塩サルデ・チエラ。

【公開番号】特開2006−83161(P2006−83161A)
【公開日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−235601(P2005−235601)
【出願日】平成17年8月16日(2005.8.16)
【出願人】(397001282)
【Fターム(参考)】