説明

高い横方向の耐引裂け伝播性を有する単軸配向したポリプロピレンフィルム

【課題】 横方向の耐引裂け伝播性を有し且つ不透明な裏打ち材フィルム
【解決手段】 本発明は、少なくとも一つの造核剤が裏打ち材フィルム中に不均質に分布した、少なくとも一つのポリプロピレンを含んでなり且つ長さ方向に単軸配向している、裏打ち材フィルムに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリプロピレンで構成される裏打ち材フィルム、その製造法、及びその接着テープへの使用法に関する。
【背景技術】
【0002】
高い長さ方向の強度を有するフィルムは準結晶性の(semicrystalline)熱可塑性物で構成される平板の押出しフィルムを配向させることによって普通得られる。これは主に二軸配向であるが、例外的には更に長さ方向の強度を向上させるためにフィルムを長さ方向だけに配向させる場合がある。しかしながら、普通に市販されている二軸配向したまたは単軸配向したポリプロピレンに基づくフィルムは、ブロー法またはキャスティング法からの未配向フィルムと比べて低い横方向の耐引裂け伝播性を有する。実用上の条件下において、(鈍いナイフによってもたらされる切断中のまたは続く切断端への意図的でない損傷による)フィルムまたは接着テープの損傷された端は、張力下に引裂けまたは破断に至る。
【0003】
引張り強度及び耐引裂け伝播性に対する必要条件が厳しい場合、フィルムまたは接着テープはガラスまたはプラスチックで構成されるフィラメントまたはその網状物で強化される。これらのフィラメント接着テープの製造は工程に関して非常に複雑であり、従って費用がかかり且つ信頼性に欠ける。またベースフィルムと共に、フィラメントや積層接着剤(または付加的な感圧接着剤の塗布)が必要であり、これも製品の価格を上昇させる。これらのフィラメント接着テープに関わる他の欠点は低い耐クリース(crease)破断性、厚い厚さ、きれいな切断端の欠如、及び全面での接着性(through−weldability)及びリサイクル性に対する欠陥である。この製造法は特許文献1に記述されている。
【0004】
特許文献2はポリオレフィン(ポリエチレンまたはポリプロピレン)で構成される接着テープ裏打ち材の製造法を記述する。(好適な具体例によれば)長さ方向の延伸によって320N/mmの長さ方向の引張り強度が達成できるという。しかし延伸比または10%引張り歪で達成される引張り応力値の開示はない。
【0005】
特許文献3の主題は、ポリプロピレンホモポリマーまたはポリプロピレンコポリマーで構成される長さ方向に延伸されたまたは二軸延伸されたポリプロピレンフィルムである。弾性体成分の付加は横方向の耐引張り衝撃性を向上させる。しかしながら、この手段は、フィルムの横方向の負荷中における繊維構造の形成を抑制するから、横方向の引張り強度及び耐引裂け伝播性を損なう。長さ方向の延伸比は1:5.5−1:7である。達成される引張り強度は、12−355N/mmである。10%引張り歪における引張り応力値は開示されていない。
【0006】
特許文献4は、異なる靭性のポリマーの共押出しで製造される長さ方向に配向したフィルムを用いる感破断性を減じた引裂きストリップ(tear strip)を記述する。靭性共押出し層は、製品の切断中におけるミクロクラックの形成を減じ、従って横方向の耐引裂け性を改善する。しかしながら、それは続いて損傷された端での破断を避けることはできない。共押出し層の主成分として記述されるポリマーは、この層の靭性を向上させるのに役立つが、フィルムの長さ方向の引張り強度を著しく減じる。与えられた値の換算では、実施例に記述されたフィルムの引張り強度は215N/mmにすぎない。これは、高々20%のエチレン及び衝撃改良剤を混合仕様で有するPPブロックコポリマーの組合せ物に起因する。LLDPE、EVA、及びSBSゴムが衝撃改変剤として言及されている。これらは、高強靭性を有し且つ比較的良好な強度を保持する層を得るために、種々の割合で2層に存在する。このストリップは高い横方向の耐引裂け伝播性を持たない。延伸比は1:7.5である。10%引張り歪における引張り応力値は84−103N/mmであり、引張り強度は196−214N/mmである。
【0007】
特許文献5は、単軸配向したポリエチレンに基づく耐引裂け性の接着テープに関する。得られる機械的性質はいくつかの観点において、対応するポリプロピレン製品と同様である。しかしながら、ポリエチレンはPPよりも耐熱性が著しく低い。これは接着テープの製造中(接着剤層または他の層の炉での乾燥中)ばかりでなく、グリップテープ、カートン密閉接着テープ、引裂きストリップまたはカートン強化ストリップとして続いて包装に使用する場合にも欠点となりうる。カートン上の接着テープは例えば印刷機の通過中または熱い製品(例えば食品)の封入後にしばしば熱くなる。ポリエチレンフィルム(配向したフィルムを含む)の他の欠点は、10%引張り歪に対する力が同業者には公知のように且つ言及される市販のフィルムをチェックすれば分かるようにポリプロピレンフィルムに比べて著しく低い。与えられた力に対するより高い引張り歪の結果は、それから作られたカートン密閉接着テープまたはグリップテープが引張り負荷を受けたときに剥離しがちで、カートンの引裂けを防げないということである。長さ方向の延伸比または10%引張り歪における引張り応力は開示されていない。達成される引張り強度は102−377N/mmである。
【0008】
上述した製品は、確かに用途が見出されているが、フィラメント接着テープの引張り強度及び耐引裂け伝播性に関して不十分である。それ故に、多数のフィラメント糸を複雑に適用することを避け且つ長さ方向の構造でフィラメント様の性質を配向したフィルムに与える試みがなされてきた。以下にこれを記述する。
【0009】
特許文献6及び7は、強化のためにリブ(rib)構造を有し、但しリブが一部フィルム表面から突き出し、一部が表面中に埋め込まれ、フィルムとリブの間にくぼみのある、単軸配向したフィルムからなる接着テープを記述する。このフィルムは、高い横方向の耐引裂け性を達成するが、これに対し引張り強度及び伸張性は改善が必要である。しかしながら、その重大な欠点はこの種のフィルムを大規模で製造することが不可能なことである。その理由は、通常の幅での貧弱な配向性、更に非常に貧弱な平ら性(layflat)であり、この結果感圧接着剤の不確実な塗布をもたらす。広い幅において欠点をもたらす因子は、続く配向工程における延伸ロール上での不均一な且つ不適切な付着(フィルムの平らに置けないことの結果)である。通常製造される幅での製造では、フィルムの中央部分が横方向で延伸ロール上に保持され、かくしてリブ構造が配向により変化し、製品の全体の品質が不均一となる。他の欠点はカレンダーによる少なくとも50%のリブの埋め込みが必要なことである。これは主たる投資を招き、工程を非常に複雑にする。表面上のリブ構造も、剥離剤またはプライマーを適用して接着テープを作る際に、そのフィルムへの適用工程が平滑な表面を必要とするから、塗布の欠陥をもたらす。強化フィラメントまたはリブ構造のフィルム表面における跡は、予備条件として平滑な表面が必要な印刷にとって欠点である。特に包装接着テープにフィルムを使用する場合、印刷性は顧客にとって重要な基準である。特許文献6では延伸比1:7及び引張り強度157−177N/mmが示されているが、10%引張り歪における引張り応力値は示されていない。特許文献7の場合、延伸比1:6.1−1:7及び引張り強度245N/mmまでが示されているが、10%引張り歪における引張り応力値は示されていない。
【0010】
特許文献8は、リブ構造をフィルムの内部へ配置することによって言及された欠点を回避することを試みている。このフィルムは平らな平行の外面を有し且つ界面が平らでなくて、断面において平らでない積層風に長さ方向に続く境界線を有する異なった組成の少な
くとも2つの共押出し層を含んでなる。このフィルムの特別な内部構造の基本は、一つの層の厚さが横方向において周期的にまたは不規則に変化し、第2の層がこの厚さの変化を相殺して全体の厚さを本質的に一定に保たせることである。言及したフィルムのすべては、通常の接着テープフィルムと比べた場合、改良された引張り強度及び改良された長さ方向の弾性率を有する。延伸比は1:6.7−1:8.7である。達成された引張り強度は202−231N/mm及び10%引張り歪における引張り応力値は103−147N/mmである。
【0011】
特許文献9は、フィルムのフィブリル化の考えを応用している。この場合、接着テープはフィブリル化ポリマーフィルムの互いの層に接着剤で接合された裏打ち材層から製造される。次いでフィブリル化面に接着剤物質を塗布する。好ましくはフィブリル化すべきPPからなるポリマーフィルムを押出し、次いで機械方向に単軸延伸する。この方法も、非常に複雑であり、積層を4つの工程段階(押出し、延伸、フィブリル化及びフィブリルのBOPP裏打ち材フィルムへの接着剤接合)で製造しなければならないという欠点がある。特許文献9のフィルムの厚さは、約25μm(BOPP)及び約5μm(配向PPフィルム)である。それ故に達成できる極限引張り強度は99−176N/cmに過ぎず、また達成できる耐引裂け伝播性は15−22N/cmに過ぎない。
【0012】
これらのフィルムは製造工程が非常に複雑であるから、いずれもが大規模には製造できない。またその性質はガラスフィラメントまたはポリエステルフィラメントを有する製品よりかなり劣っている。
【特許文献1】米国特許第4,454,192A号
【特許文献2】独国特許第21 04 817A1号
【特許文献3】ヨーロッパ特許第0 255 866A1号
【特許文献4】独国特許第36 40 861A1号
【特許文献5】独国特許第44 02 444A1号
【特許文献6】米国特許第5,145,544A号
【特許文献7】米国特許第5,173,141A号
【特許文献8】ヨーロッパ特許第1 101 808A1号
【特許文献9】ヨーロッパ特許第0 353 907A1号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の目的は、従来法で記述した欠点を示さない、またはそれよりも低い程度でしか示さない裏打ち材フィルムを提供することである。特に本発明はこれらが高い横方向の耐引裂け伝播性を有し且つ不透明であるということである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
この目的は特許請求の範囲の主請求項に示したような裏打ち材フィルムによって達成される。副請求項の主題は、該裏打ち材フィルムの有利な具体例、その製造法、及びその可能な使用法である。
【0015】
従って、本発明は、少なくとも1つのポリプロピレンを含んでなり、また長さ方向に単軸配向されている裏打ち材フィルムを提供する。少なくとも1つの造核剤が裏打ち材フィルムに不均質に分布していることは本発明にとって重要である。
【0016】
本発明の、フィルム中に不均質に分布している造核剤と、単軸配向との組合せのゆえに、フィルムは真珠質(mother−of−pearl)の外観を示し、更なる顔料または染料を添加しない限り白色である。
【0017】
造核剤(有機酸の塩、例えば安息香酸ナトリウム)を、結晶化しうる熱可塑性物、特にポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミドなどに添加して、結晶化を促進させる。この結晶化工程の変更は、変更された物理性を持つ製品を与える。
【0018】
本発明の一つの有利な具体例において、裏打ち材フィルムのヘイズ値は少なくとも40%、好ましくは少なくとも45%であり、及び/または光沢は60%未満、好ましくは40%未満である。これらの値を決定する試験法を以下に説明する。
【0019】
高引張り強度、1%及び10%の引張り歪における高引張り応力値、及び高耐引裂け伝播性を達成するためには、好ましくは延伸比がそれぞれの場合元のフィルムに対して工業的に可能な最大比であるように選択される。本発明の他の有利な具体例によれば、長さ方向の延伸比は少なくとも1:8、好ましくは少なくとも1:9.5である。この延伸比は、1:8の延伸比の場合、例えば長さ1mのフィルム部分が長さ8mの延伸されたフィルム部分となることを記述する。また延伸比は、線速度と延伸ロール速度から計算される商としても定義される。
【0020】
他の好適な具体例において、機械方向の裏打ち材フィルムの1%引張り歪での引張り応力値は、少なくとも20N/mm、好ましくは少なくとも40N/mmであり、及び/または10%の引張り歪における引張り応力値は少なくとも250N/mm、好ましくは少なくとも300N/mmである。更に好適には引張り強度は少なくとも300N/mm、特に好ましくは少なくとも350N/mmである。フィルムの厚さに基づく横方向の耐引裂け性は好ましくは少なくとも450N/mmに達する。
【0021】
強度値を計算するために、幅に基づく力値を厚さで割る。裏打ち材フィルムを用いて製造した接着テープの決定の場合には、計算の基準に用いる厚さは全厚さではなくて、単に裏打ち材フィルムの厚さである。
【0022】
裏打ち材フィルムの厚さは好ましくは25−200μm、特に好ましくは40−140μm、非常に特に好ましくは50−90μmである。
【0023】
本発明によれば、適当なポリマーフィルムは市販されているポリプロピレンホモポリマーまたはポリプロピレンコポリマーである。これらのポリマーのメルト・インデックスは、平板のフィルム押出しに適当な範囲にあるべきである。ある好適な具体例によれば、この範囲は0.3−15g/10分、好適には0.8−5g/10分(230℃、2.16kgで測定)である。他の有利な具体例によれば、曲げモジュラスは少なくとも1000MPa、好ましくは少なくとも1500MPa、より好ましくは少なくとも2000MPaである。
【0024】
ポリプロピレンの構造は好ましくは主にアイソタクチックである。
【0025】
裏打ち材フィルムを形成するポリマーは直鎖ポリマー、或いは添加剤、例えば抗酸化剤、光安定剤、抗ブロッキング剤、滑剤及び加工助剤、充填剤、染料または顔料とのブレンドであってよい。
【0026】
造核剤の添加によって記述するように真珠質の外観が達成される。硫酸バリウムは造核剤として使用できる。
【0027】
本質的に、ポリプロピレンに適当な造核剤のいずれかを使用することができる。特に適当な造核剤はα結晶またはβ結晶を作るものである。これらは例えば造核作用のある充填剤、例えば水酸化マグネシウム、タルク、カオリン、二酸化チタン、またはシリカゲルである。有機造核剤、例えばベンゾエート、ホスフェートまたはソルビトール誘導体を使用することは好ましい。これらの造核剤は、例えばウルマン工業化学辞典の第9.1章「造核剤」(ワイリー(Wiley)−VCH出版からの2002年版、製品オンライン配送日2000年6月15日)に、または米国特許第2003195300A1号(米国特許第6,927,256B号)の実施例に記述されている。他の適当な手段は、米国特許第2003195300A1号に記述されているごとき準結晶性の分岐したまたはカップルしたポリマー造核剤、例えば4,4’−オキシジベンゼンスルホニルアジド改変ポリプロピレンを使用することである。
【0028】
用いる造核剤は純物質であるか、またはマスターバッチの形であってよい。
【0029】
裏打ち材フィルムのまたは本発明の裏打ち材フィルムを使用する接着テープの製造に好適な方法は、次の工程を含む:
‐ポリマー及び添加剤を混合し、押出し機中で平らなフィルム口金に導入し、但し押出し機は造核剤をポリプロピレンと不均質に混合する。
‐次いで溶融したフィルムを冷却ロールとして知られるロール上での制御された冷却に供する。
‐このフィルムを延伸装置へ導入する前に温度制御されたロールによって適当な延伸温度まで加熱する。
‐フィルムを狭ギャップシステムにおいて機械方向に配向させる。
‐適当ならばこの裏打ち材フィルムに塗布または共押出しによって接着物質を付与する。
【0030】
押出し機のスクリューは、好ましくは過剰な数の混合要素またはあまりに強力に作用する混合要素を含んでいてはならない。さもなければ造核剤があまりにも均質に分布してしまう危険があるからである。
【0031】
本製造工程は、裏打ち材の製造が造核剤の入ってない(non−nucleated)ポリプロピレンを、造核剤の入った(nucleated)ポリプロピレンと一緒に使用する混合物を用いるならば、より信頼性を持って制御できる。この混合物は好ましくは造核剤入り及び造核剤なしのポリプロピレンで構成される。製造されるフィルムは1つまたはそれ以上の層を有することができるが、好ましくは1層のフィルムである。フィルムは積層、エンボス加工、または照射処理によって改変されていてもよい。
【0032】
造核剤を有する未配向のもとのフィルムは真珠質の外観を有しない。それはそれを長さ方向に延伸されるまで見られない。
【0033】
フィルムの通常の外観は真珠質の白色である。真珠質タイプの着色フィルムを製造することも可能であり、それから例えば金色または銅色の色相の接着テープを、フィルムの製造中に顔料または適当な染料を添加することによってまたはフィルムの着色被覆によって作ることも可能である。
【0034】
フィルムは表面処理されていてもよい。これらの処理は、付着促進のためのコロナ処理、炎処理、フッ素処理またはプラズマ処理、或いは溶液の、分散液のまたは照射で硬化しうる液体材料の塗布である。他の可能なコーティングは、プリント及び抗接着性塗膜、例えば架橋したシリコーン、アクリレート(例えばプリマル)(Primal(R)205)、塩化ビニリデンまたは塩化ビニルを単量体とするポリマーまたはステアリル化合物、例えばポリビニルステアリルカーバメートまたはステアリン酸クロム錯体(例えばクイロン(Quilon(R)C)、或いは無水マレイン酸コポリマー及びステアリルアミンの反応生成物からのものである。
【0035】
裏打ち材フィルムの片面または両面に、接着剤物質、好ましくは自己接着性または熱で活性化できる接着剤層を付与することは好ましい。
【0036】
一般的な表記の「接着テープ」とは、平らな製品、例えば2次元フィルムまたはフィルム部分、延伸された長さの及び限定された幅のテープ、テープ部分、打ち抜き部分、ラベルなどのいずれかを包含する。
【0037】
接着剤物質は好ましくは感圧接着剤を含む。接着テープの適用に対して、フィルムの片面または両面は溶液または分散液の形で或いは未希釈(溶融物)で或いはフィルムとの共押出しにより好適な感圧接着剤で塗布される。この接着剤層は、熱または高エネルギー照射で架橋でき、必要ならば保護的に剥離フィルムまたは剥離紙で被覆できる。適当な感圧接着剤は、D.サタス(Satas)著の「感圧接着剤技術ハンドブック」(ファン・ノストランド・レインホールド出版(Van Nostrand Reinhold))に記述されている。特に適当な感圧接着剤はアクリレート、天然ゴム、熱可塑性スチレンブロックコポリマー、またはシリコーンに基づくものである。
【0038】
性質を最適化するために、用いる自己接着性物質は、好ましくは1つまたはそれ以上の添加剤、例えば粘着付与剤(樹脂)、可塑剤、充填剤、顔料、UV吸収剤、光安定剤、抗酸化剤、架橋剤、架橋促進剤、または弾性体と混合することができる。
【0039】
混合のために適当な弾性体の例は、EPDMゴムまたはEPMゴム、ポリイソブチレン、ブチルゴム、エチレン‐酢酸ビニル、水素化された、ジエンで構成されるブロックコポリマー(SBR、cSBR、BAN、NBR、SBS、SISまたはIRの水素化による、これらのポリマーは例えばSEPS及びSEBSとして公知)或いはアクリレートコポリマー、例えばACMである。
【0040】
粘着付与剤の例は、炭化水素樹脂(例えば不飽和CまたはCモノマーに由来)、テルペン‐フェノール樹脂、αまたはβ−ピネンのような原料に由来するテルペン樹脂、クマロン−インデン樹脂のような芳香族樹脂、またはスチレンまたはα−メチルスチレンに由来する樹脂、例えばコロフォニウム(colophonium)及びその下流生成物、例えば不均化、二量化またはエステル化樹脂であり、グリコール、グリセロール、またはペンタエリスリトールが使用でき、そしてウルマン工業化学辞典、12巻、525−555ページ(第4版)に列挙されているごとき他の材料も使用できる。オレフィン性二重結合を有さない耐酸化性樹脂は、特に適当であり、その例は水素化樹脂である。
【0041】
適当な充填剤及び顔料の例は、カーボンブラック、二酸化チタン、炭酸カルシウム、炭酸亜鉛、酸化亜鉛、シリケートまたはシリカである。
【0042】
接着剤物質に適当なUV吸収剤、光安定剤、及び抗酸化剤は、フィルムの安定化に列挙されるものと同一である。
【0043】
適当な可塑剤の例は、脂肪族、脂環族及び芳香族鉱油、フタル酸、トリメリット酸、またはアジピン酸のジまたはポリエステル、液体ゴム(例えばニトリルゴムまたはポリイソプレンゴム)、ブテン及び/またはイソブテンからなる液体ポリマー、アクリルエステル、ポリビニルエーテル、接着剤樹脂の原料に基づく液体の及び可塑化する樹脂、ラノリン及び他のワックス、または液体シリコーンである。
【0044】
架橋剤の例は、フェノール樹脂またはハロゲン化フェノール樹脂、メラミン樹脂、及びホルムアルデヒド樹脂である。適当な架橋促進剤の例は、マレイミド、アリルエステル、例えばトリアリルシアヌレート、アクリル酸及びメタクリル酸の多官能性エステルである

【0045】
接着剤物質のある好適な具体例は、天然ゴム、炭化水素樹脂及び坑酸化剤で構成される感圧接着剤を含んでなる。
【0046】
接着剤物質の塗布厚さは、好ましくは18−50g/m、特に22−29g/mの範囲である。接着テープのロール幅は、好ましくは2−60mmの範囲である。
【0047】
本発明の裏打ち材フィルムは、高品質で魅力的な包装用に特に適当である。従来法において、長さ方向に単軸配向している且つ(白色の)真珠質の外観を持つ裏打ち材フィルムは未知のものである。従来白色の単軸配向した裏打ち材フィルムは、二酸化チタンの添加によってだけ製造されてきた。この本発明の外観を持つ包装工業から公知の唯一の材料は二軸配向したフィルムである。この外観はフィルム中に小さな空洞を形成する充填剤のまたはブロー剤(blowing agents)の添加により達成される。
【0048】
ある好適な具体例において、本フィルムは高引っ張り強度及び10%引っ張り歪における高引張り応力値を有する。フィルムの配向は、好ましくは非常に低い横方向の耐引張り衝撃性を与えるのに十分なほど顕著である。これは引裂きストリップまたはカートンシーリングのようないくつかの用途に対して不利であるが、カートンの打抜き箇所を補強するような用途には有利であることが分かった。高度の長さ方向の配向による低引張り歪は、カートン板(例えば打抜いた運搬用グリップ)の引裂けを回避させる。この種のフィルムは長さ方向にフィブリル化傾向を持ち、これが端の損傷の場合長さ方向に引裂けを曲げることによって横方向の引裂けの伝播を防止する。
【0049】
ヨーロッパ特許第0 353 907A1号に記述される方法と対比して、本裏打ち材フィルムは唯2段階(押出し、延伸)の直列した工程で製造でき、更に非常に高い横方向の耐引裂け性(厚さ70μmで約300N/cm)を有する。
試験法
・厚さ:DIN53370
・引張り強度:DIN53455−7−5、長さ方向
・1%及び10%引張り歪における引張り応力:DIN53455−7−5、長さ方向
・引張り歪破断:DIN53455−7−5、長さ方向
・光沢:DIN67530、角度60°
・ヘイズ:ASTM D1003
・横方向の耐引張り衝撃性:DIN EN ISO8256 (クランプ長さ10mm、振り子7.5J、ラップ(lap)5、ヨーク(yoke)30g)
・横方向の耐引裂け伝播性:DIN53363−2003−1に基づく、但し以下を変更:
・フィルム幅10mm。切り目深さ5mmのために、試験試料の有効幅も5mm。
・フィルム端に関してクランプに対するしるしの角度は75°。
・横方向の耐引裂け伝播性に関して試料をより良く差別化するために、試験速度を100から2000mm/分まで増大させた。これは降伏に基づく試料の破断挙動のより精確な差別化も可能にする。
製造したサンプルは異なる厚さを有するから、耐引裂け伝播性を厚さに関して補正し、N/mmで表示する。
【0050】
降伏の尺度
試料を降伏の種類に関して分類することができる。これは横方向の耐引裂け伝播性に対する品質の尺度にも利用できる。
a)試料中の引裂けは試験試料が破断するまで横方向に簡単に伝播する。これは横方向の耐引裂け伝播性の評価に関して最も不利な事例と見なされる。
b)試料中の引裂けは最初クランプに達するまで長さ方向に伝播し、次いで試料は極限引張り強度に達したときに試験方向に関して横方向に引裂ける。この引裂け挙動はフィルムの高い横方向の耐引裂け伝播性の指標である。
c) 試料中の引裂けは最初クランプに達するまで長さ方向に伝播し、次いで試料は極限引張り強度に達したときに長さ方向に分割しつつ引裂け、個々の多数の繊維を与え、これが最終的に横方向に引裂ける。この引裂け挙動はフィルムの高い横方向の耐引裂け伝播性の指標である。この耐引裂け伝播性は降伏の尺度b)よりも僅かに高い。
・メルト・インデックス:DIN53735(PP230℃、2.16N)
・曲げモジュラス:ASTM D790A
・接着データ:AFERA4001、DIN EN1939に相当
以下の実施例は本発明を例示するが、本発明を限定するものではない。
【0051】
[実施例]
原料:
ダウ(Dow)7C06:PPブロックコポリマー、MFI1.5g/10分、造核剤なし、曲げモジュラス1280MPa(ダウケミカル(Dow Chemical))BA110CF:PPブロックコポリマー、MFI0.85g/10分、造核剤なし、曲げモジュラス1200MPa(ボレアリス(Borealis))
モプレン(Moplen)HP501D:ホモポリマー、MFI0.7g/10分、造核剤なし、曲げモジュラス1450MPa(バゼル(Basell))
ボーモッド(Bormod)HD905:ホモポリマー、MFI6g/10分、曲げモジュラス2150MPa(バゼル)、本発明者の分析によるとホスフェート系α‐造核剤、多分ADK STAB NA−11(ADEKA)を含む
インスパイア(Inspire)D404.01:MFI3g/10分、造核剤あり、曲げモジュラス2068MPa(ダウケミカル)、造核剤は米国特許第2003195300A1号に相当するポリマー造核剤
BNX BETAPP−N:ポリプロピレン中β‐造核剤、MFI4g/10分(メイゾ(Mayzo))
ミラッド(Millad)3988:1,3:2,4‐ビス(3,4‐ジメチルベンジリデン)ソルビトール(ミラッドケミカル)(造核剤)
レマフィンゲルブ(Remafingelb)HG AE30:透明顔料入りのPPカラーマスターバッチ(クラリアントマスターバッチーズ(Clariant Masterbatches))
【実施例1】
【0052】
柔軟な口金リップを持つ平らなフィルム用口金を備えた単軸スクリュー押出し機により、次いで冷却ロール及び一段階狭ギャップ延伸系を用いてフィルムを1層で製造した。インスパイアD404.01及びダウ7C06を1:1の割合で混合し、押出した。口金の温度は235℃であった。冷却ロール温度及び延伸ロール温度を、延伸操作前後の結晶化を最大にするように設定した。延伸比は1:10であった。
フィルムの性質:
延伸後の裏打ち材の厚さ: 80μm
1%引張り歪における引張り応力: 43N/mm
10%引張り歪における引張り応力:340N/mm
引張り強度: 373N/mm
破断引張り歪: 22%
耐引裂け伝播性: 520N/mm
降伏尺度: 3
横方向の耐引張り衝撃性: 63mJ/mm
カラー: 真珠質の白色
ヘイズ: 49.8%
光沢: 28.7%
【0053】
このフィルムを両面コロナ予備処理し、上面にトルエン中0.4%PVSC溶液を剥離系として塗布し、乾燥した。接着剤は、SIS弾性体42重量%、水素化コロフォニウムのペンタエリスリトールエステル20重量%、R&B値が85℃のC炭化水素樹脂37重量%及びイルガノックス(Irganox)1010抗酸化剤1重量%から溶融して混合し、口金を用いてフィルムの下面に150℃で適用した。次いで接着テープを親ロールに巻き取り、更なる試験のために幅15mmに切断した。
接着データ:
スチールへの接着: 2.05N/cm
0.3m/分での巻き解き力:0.9N/cm
適用した重り: 22g/mm
【実施例2】
【0054】
延伸比を1:8にする以外実施例1と同様にしてフィルムを製造した。選択した原料は、モプレンHP501D 98.9重量部、レマフィンゲルブHG AE30 0.9重量部及びBNX BETAPP−N 0.2重量部からなる混合物を含んでなった。
フィルムの性質:
延伸後の裏打ち材の厚さ: 60μm
1%引張り歪における引張り応力: 36N/mm
10%引張り歪における引張り応力:266N/mm
引張り強度: 313N/mm
破断引張り歪: 33%
降伏尺度: 2
横方向の耐引張り衝撃性: 150mJ/mm
カラー: 金黄色の真珠質
ヘイズ: 53%
光沢: 26.1%
【0055】
このフィルムを両面コロナ予備処理し、上面に無溶媒シリコーンを塗布し、これをUV照射で架橋させた。下面には、天然ゴム、シクロゴム及び4,4’−ジイソシアナトジフェニルメタンからなるプライマーを付与した。接着剤は、SMRL天然ゴム(ムーニー70)40重量%、二酸化チタン10重量%、R&B値が95℃のC炭化水素樹脂37重量%及びブルカノックス(Vulkanox)BKF抗酸化剤1重量%を用いて、ニーダーでヘキサンに溶解した。20重量%接着剤物質を、スプレッダーバーを用いてフィルムのプライマー処理した下面に適用し、115℃で乾燥した。次いで接着テープを親ロールに巻き取り、更なる試験のために幅15mmに切断した。
接着データ:
スチールへの接着: 1.9N/cm
0.3m/分での巻き解き力:0.2N/cm
適用した重り: 24g/mm
【実施例3】
【0056】
実施例1と同様にしてフィルムを製造した。用いた原料はBA110CF 50重量部及びボーモッドHD905 50重量部からなる混合物を含んでなった。
【0057】
得られたフィルムの色は真珠質の白色であった。
【実施例4】
【0058】
実施例1と同様にしてフィルムを製造した。用いた原料は、ダウ7C06 98重量部及びPPホモポリマー90重量%とミラッド3988 10重量%からなるマスターバッチ2重量部からなる混合物を含んだ。
【0059】
得られたフィルムの色は真珠質の白色であった。
【0060】
(対照実施例1)
フィルム及び接着テープを、実施例1と同様にして、ダウ7C06から延伸比1:6.1で製造した。
フィルムの性質:
延伸後の裏打ち材の厚さ: 80μm
引張り強度:247N/mm
1%引張り歪における引張り応力: 19N/mm
10%引張り歪における引張り応力:142N/mm
破断引張り歪: 27%
横方向の耐引張り衝撃性: 258mJ/mm
降伏尺度: a)
カラー: 無色、僅かにかすみ
ヘイズ: 36.9%
光沢: 65.7%
【0061】
(対照実施例2)
フィルム及び接着テープを、実施例1と同様にして、インスパイア404.01から延伸比1:10で製造した。
フィルムの性質:
延伸後の裏打ち材の厚さ: 70μm
1%引張り歪における引張り応力: 71N/mm
10%引張り歪における引張り応力:―
引張り強度: 317N/mm
破断引張り歪: 7%
耐引裂け伝播性: 420N/mm
降伏尺度: c)
横方向の耐引張り衝撃性: 31mJ/mm
カラー: ガラス‐透明
ヘイズ: 3.5%
光沢: 145.9%
【0062】
(対照実施例3)
フィルム及び接着テープを、実施例1と同様にして、モプレンHP501から製造した。得られたフィルムは低ヘイズ値の無色であった。降伏尺度はb)であった。
【0063】
(対照実施例4)
インスパイアD404.01及びダウ7C06を1:1の割合で混合し、L/D比36の二軸押出し機で練りこんだ。得られた練りこみ物質を、更に実施例1と同様に処理した。
フィルムの性質:
降伏尺度: b)
カラー: 透明
ヘイズ: 12.5%
光沢: 109.9%

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一つのポリプロピレンを含んでなり且つ長さ方向に単軸配向している裏打ち材フィルムであって、少なくとも一つの造核剤が裏打ち材フィルム中に不均質に分布していることを特徴とする裏打ち材フィルム。
【請求項2】
裏打ち材フィルムのヘイズ値が少なくとも40%、好ましくは少なくとも45%、及び/またはその光沢が60%未満、好ましくは40%未満である、請求項1の裏打ち材フィルム。
【請求項3】
裏打ち材フィルムが少なくとも1:8、好ましくは少なくとも1:9.5の延伸比で長さ方向に配向している、請求項1または2の裏打ち材フィルム。
【請求項4】
裏打ち材フィルムの長さ方向の引張り強度が少なくとも300N/mm、好ましくは350N/mmであり、及び/またはその横方向の耐引裂け伝播性がそのフィルム厚さに基づいて少なくとも450N/mmである、請求項1−3のいずれか裏打ち材フィルム。
【請求項5】
裏打ち材フィルムの1%引張り歪における長さ方向の引張り応力値が少なくとも20N/mm、好ましくは40N/mmであり、及び/または10%引張り歪における長さ方向の引張り応力値が少なくとも250N/mm、好ましくは300N/mmである、上記請求項の少なくとも1つの裏打ち材フィルム。
【請求項6】
裏打ち材フィルムの厚さが25−200μm、好ましくは40−140μm、特に好ましくは50−90μmである、上記請求項の少なくとも1つの裏打ち材フィルム。
【請求項7】
裏打ち材フィルムが、メルト・インデックス0.3−15g/10分、好ましくは0.8−5g/10分及び/または曲げモジュラス少なくとも1000MPa、好ましくは少なくとも1500MPa、特に少なくとも2000MPaのポリプロピレンを含んでなる、上記請求項の少なくとも1つの裏打ち材フィルム。
【請求項8】
ポリプロピレンの構造が主にアイソタクチックである、上記請求項の少なくとも1つの裏打ち材フィルム。
【請求項9】
裏打ち材フィルムが造核剤入りのポリプロピレン及び造核剤の入っていないポリプロピレンの混合物で構成される、上記請求項の少なくとも1つの裏打ち材フィルム。
【請求項10】
造核剤が水酸化マグネシウム、タルク、カオリン、二酸化チタンまたはシリカゲルの群から選択され、或いは造核剤が有機造核剤、好ましくはベンゾエート、ホスフェート、ソルビトール誘導体であり、或いは造核剤が準結晶性の分岐したまたはカップリングしたポリマー造核剤である、上記請求項の少なくとも1つの裏打ち材フィルム。
【請求項11】
ポリマー及び添加剤を混合し、押出し機中で平らなフィルム用口金に導入する段階、但し押出し機が造核剤とポリプロピレンの不均質な混合をもたらす、
次いで溶融したフィルムを、冷却ロールとして公知のものの上での制御された冷却に供する段階、
フィルムを、温度制御されたロールにより適当な延伸温度まで加熱した後、延伸装置に導入する段階、
フィルムを狭ギャップシステムで機械方向に延伸する段階
を含む、上記請求項の少なくとも1つの裏打ち材フィルムの製造法。
【請求項12】
片面または両面接着性の接着テープに、上記請求項の少なくとも1つの裏打ち材フィルムを使用すること。
【請求項13】
カートン、特に好ましくは打ち抜いた箇所、の補強の接着テープに、上記請求項の少なくとも1つの裏打ち材フィルムを使用すること。

【公開番号】特開2008−24934(P2008−24934A)
【公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−186937(P2007−186937)
【出願日】平成19年7月18日(2007.7.18)
【出願人】(501237327)テサ・アクチエンゲゼルシヤフト (62)
【Fターム(参考)】