説明

高バリヤ結合体、及びその製造方法

本発明は、基材、専ら無機材料から構成される第1の層、無機−有機ハイブリッド材料から構成される第1の層、及び専ら無機材料から構成される第2の層を含む高バリヤ結合体であって、無機−有機ハイブリッド材料から構成される層が、直接的に、専ら無機材料から構成される層の両方の間に配置され、及びその厚さが1μmであることを特徴とする高バリヤ結合体に関する。この結合体は、無機−有機ハイブリッド材料が、0.002〜0.02Pasの粘度、及び/又は25〜35mNmの表面張力を有するラッカー、又は0.1〜200Pasの粘度を有するラミネーション材料から構成される1層以上の層を使用して、無機材料が被覆された基材の上に施され、ここで、基材の輸送は、輸送手段と接触することなく行われる工程によって製造される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水蒸気、酸素、及び移動性モノマーに対して非常に高いバイヤ特性を有する、弾力性又は剛性の基材上の複数層が重なった層系に関する。この複数層が重なった層系は、少なくとも2種の無機層(例えば、スパッター層)及びその間に配置された無機−有機ハイブリッドポリマー−層(これは直径が1μm未満である)から構成される。
【背景技術】
【0002】
敏感な食料品の弾力性の梱包の対処として、今日、ポリマーホイルが使用されており、該ポリマーホイルは、真空中で蒸着された、Al、AlOx、SiOx、から成る層と結合して、酸素と水蒸気に対する透過性が低く、このために保存期間(賞味期限)内で、これらの食品を、酸化、湿気の影響、又は−損失から保護することができる。蒸着層は、工業的に大量に製造されており、及び使用に適した値段である。ホイルの品質と、そのつどの無機層に依存して、これらは(無機層を有する12μmPET−ホイルについて)、透過性が1cm3/m2dbar(O2)及び0.5cm3/m2dbar(H2O)未満を達成している。
【0003】
バリヤ特性における高い要求がある技術的な用途(OLEDs及び有機の太陽電池の包み込みの)のために、これらのホイルの結合体は十分なものではない。従来技術(現標準技術)では、無機の、個々の層を有するバリヤの改良は、欠陥部分(Deekte)により制限されていた。従って、超バリヤホイルの使用範囲のために、複数層の構造体の開発へと移行した:無機バリヤ層は、PVD−法によって施され(塗布され)、均一化された、大抵は有機のものである中間層(挟み層)と組み合わされており、この層は、その表面が滑らかで、その下側に位置する層の欠陥(成長欠陥:wachstumsdefekte)を覆い、及び層構造体の全体の弾力性を保証するものである。特許文献1(US6,570,325B2)は、これらの中間層のための材料として、種々のポリマー系を提案しており、これは(一見)、層形成処理と追加的な架橋(網目状結合化)に適している、殆ど全てのモノマーとプレポリマーを含むようである。重点は、真空処理法(真空塗装法)に置かれている;この重点は、それぞれの基礎部分の上に、流体相として施される(塗布される)いわゆる材料でもあるとも言われている。層厚さは、任意に選択することができるが、具体的な上記厚さの範囲は、すなわち、ガス相から施される材料について、1000〜10000Åと言われている。本発明の知識なしに、上記の液体塗布法を使用した場合、即ち、(切望されている)ロール−ツー−ロール法では、このような薄い層は、少なくとも減結合された層としては実現することができない:一方、スピンコーティングは、巻物(ロール状に巻いたもの)を製造するためには適切でない、スプレー法では表面が平滑でなくなる。
【0004】
更なるバリヤホイルが、特許文献2(WO08/122292)、特許文献3(US2006/0063015)、特許文献4(US2008/196664)、特許文献5(US2008/305359)、特許文献6(US7,442,428)、特許文献7(US2008/167413)、特許文献8(US7,449,246)、特許文献9(US2007/224393),特許文献10(US2008/2376615)、特許文献11(EP1384571B1)及び特許文献12(EP1563989)に開示されている。
【0005】
特許文献13(EP1975214A1)には、薄いポリマー及び/又は金属から成る弾力性基材の上の液体層の形成方法が記載されている。
【0006】
実際には、中間層(挟み層)のために、たいていはアクリレートが使用されている。これらの層は、不十分なバリヤしか示さず、今日、浸透性を何等級にも(大幅に)低減させるためには、約5層組を使用しなければならない。このような系は世界的に(特にFirma Vitex Systems,USAから)市販されており、これについては、非特許文献1(Affinito,J.,Hilliard,D.:“A New Class of Ultra−Barrier Materials”,Proc.47th Anspruch.Tech.conf.,Dallas,April 2004,Society of Vacuum Coaters,Albuquerque(2004),s.563−593)が参照される。
【0007】
他の概念を、Firma General Atomicsが追求しており、弾力性PC−ホイルをアルミニウム酸化物で被覆(塗装)する(約80nm)ためのロール−ツー−ロール法を発展させている。一つだけの被覆によって、10-4g/m2dの水蒸気−バリア値が達成可能である。カルシュウムシュピーゲルテストでは、85℃及び85%の空気湿度で、約200時間後に、半分の表面(中間表面)上で、カルシウム層の分解を示している。ここで、このバリヤ層がOLEDの担体材料の外側上に施され、及びOLEDは、80nmの厚さの層のアルミニウム酸化物が再度施されている(http://displayproducts.ga.com/pdf/High%20Performance%20Barrier.pdf、参照)。
【0008】
金属又はセラミック、例えば金属酸化物で被覆されたポリマーホイルの遮断特性が、追加的な無機−有機ハイブリッドポマー層を施すことによって、大きく(劇的に)改良可能であることが、長年にわたり公知である。シリコン原子を含む無機−有機ハイブリッドポリマーは、有機的に変性された珪酸重縮合物とも称される;これは、いわゆるゾル−ゲル−法を使用して構成され、そして通常、加水分解性の縮合によって、対応するシランを形成する無機ネットワークないしは有機置換基、及び場合により無機ネットワーク中ヘテロ原子を有する。この有機の置換基は、場合により、更なる、有機の結合した、無機ネットワークに侵入(挿入)したネットワークを形成することができ、このネットワークは、有機的な重合可能な置換基の、シリコン原子又はその一部での(場合によって、共重合可能な純粋な有機成分の存在下に)重合によって発生するものである。これらの材料は、登録商標名ORMOCER(登録商標)eの下に(本発明の出願人によって)もたらされ、広く公知である。このような遮断層−組合せ構造を有する包装材料は、特許文献14(DE19659286C2)又は特許文献15(EP802218B1)から公知である。ここでは、バリヤ層は、通常、液状塗料(液状ラッカー:Nasslack: wet coating)として施され、及び1〜15μmの厚さを有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】US6,570,325B2
【特許文献2】WO08/122292
【特許文献3】US2006/0063015
【特許文献4】US2008/196664
【特許文献5】US2008/305359
【特許文献6】US7,442,428
【特許文献7】US2008/167413
【特許文献8】US7,449,246
【特許文献9】US2007/224393
【特許文献10】US2008/2376615
【特許文献11】EP1384571B1
【特許文献12】EP1563989
【特許文献13】EP1975214A1
【特許文献14】DE19659286C2
【特許文献15】EP802218B1
【非特許文献1】Affinito,J.,Hilliard,D.:“A New Class of Ultra−Barrier Materials”,Proc.47th Anspruch.Tech.conf.,Dalls,April2004,Society of Vacuum Coaters,Albuquerque(2004),s.563−593
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
使用のための列挙として、例えば、OLEDs及び太陽電池の包装では、自然の環境中に存在するガス、例えば酸素に対する、及び空気中湿分に対する極度のバリヤ(障壁、遮断)が必要とされる。上述したものと同様に、このようなバリヤは、複数層の層構造によってのみ実現可能あり、従って非常にコストが高くなるものである。
【0011】
本発明の目的は、層の数が少なく、水分の透過性が極めて低く、及び好ましくは酸素の透過性も非常に低い、超バリヤとして適切な層結合体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の発明者は、多くの作用効果を観察した。そして、このような作用効果から、明らかに厚い中間層を含むことなく良好な遮断特性が有られ、及び高バリヤ結合体を得るのに、多くの層を重ねてパックする必要がない、という予期しない結果を引き出すことに成功した。
【0013】
(従来のものとは)逆に:非常に良好な遮断特性が、一つのバリヤ結合体によって得られ、該バリヤ結合体は、それぞれの基材と、少なくとも一つ、好ましくは二つの無機遮断層、及び少なくとも一つの無機−有機ハイブリッドポリマー性中間層の組み合わせから構成され、該無機−有機ハイブリッドポリマー性中間層は、非常に薄く、即ち、1μm未満、好ましくは500nm未満、及び特に好ましくは200nm未満、又は更に好ましくは100nm未満の厚さであり、このバリヤ結合体は、それぞれの基材の上に構成されるか、ないしは、(良好な層厚さで構成可能な場合には、)その下側に無機遮断層が構成されるものである。発明者は、最初に、このような、薄いハイブリッド−層の均等な塗布(供給)が可能である方法を提供しているので、従って、(これによってのみ)上記の理解を得ることができる。現在まで、これらは、特に連続的な方法、例えばロール−ツー−ロール法では、実現することができなかった。
【0014】
図5には、基材の上に施された層の組み合わせ(該組み合わせは、無機バリヤ層及び無機−有機ハイブリッドポリマー層から構成される)のみから構成されるバリヤ結合ホイルについての有利な特徴的構成を原理的に示している。図(a)は、無機−有機ハイブリッドポリマー−材料から構成される液状塗料を、無機遮断層(ここでは、例えば、SiOxから成るもの)に供給し(塗布し)、その欠陥個所(欠損個所)又はピンホールを被覆して平滑化している構成を示している。マクロスコープ的な欠陥が、これにより部分的に補償されている。このような効果は、従来技術から既に公知である。図(b)は、Si−O−含有無機−有機ポリマー層の、境界面に形成されたSi−O−Si−結合に基づく、シリコン酸化物層上での良好な付着(接着)を概略的に示している。これらの原理は、他の金属酸化物についても有効である。この理由は、他のM−O−M又はSi−O−M−結合が、同様の効果を有しているからであり;このことは、発明者によって、無機−有機のシリコン原子含有ハイブリッド層と境界を接する、アルミニウム酸化物層を有する層構造について、実験的に実証可能である。無機層としての純粋な金属層においても、このような効果を見出すことができる。この理由は、金属は、その表面上で同様に、ヒドロキシ基を構成するからである。ハイブイッドポリマー層は、低粘度のラッカー(Lack)を使用して、非常に低い粗さ(凹凸性)(<0.5nm)を構成可能であり、これにより、欠陥の少ない無機層をその上に施すことができることが、特に意義を有している。このような根拠において、ハイブリッド層は、粗い表面を平らにするためにも使用可能である。このことは、有機基材について、特に興味が深いものである。この理由は、多くの有機層が、極端に粗い表面を有しているからである。
【0015】
手短に述べると、発明者は、無機層上への非常に良好な層付着性を有する、及び非常に滑らかな(平滑な)表面を有するハイブリッドポリマー層(該ハイブリッドポリマー層は、以下に説明するバリヤ効果に貢献する)を提供することに成功した。これらの層は、優れた流れ性を有するラッカーないしラミネーション粘着剤を施すことによって製造される。ラッカー(Lack)の粘度が低いために、ラッカーは、毛細管現象の影響を受けて、その下側に位置する無機材料の欠陥内に流れ込むということが考えられる。この欠陥を埋めることが、見出されたバリヤホイルの更なるバリヤ効果をもたらす。
【0016】
このような認識から出発して、本発明の課題は、所定の層結合体(該層結合体では、無機−有機ハイブリッド層が、両側において、純粋な無機遮断層によって囲まれている)を提供することによって解決されることが好ましい。この遮断特性は、この層結合体内で、無機層を1層しか有しないハイブリッド層の組み合わせから構成されるものと比較して、大きく(倍にも)改良されている。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】構造体、(即ち)無機層/ハイブリッドポリマー中間層/無機層の酸素透過率を、(異なる欠陥の大きさ、及び孔の距離≒94μmについて)中間層の厚さの関数として示した図である。
【図2】左側に通常のバリヤ層の電子マイクロ画像を、及び右側に2層の無機層と1層の中間に位置する無機−有機ハイブリッドポリマー層を有する、本発明に従う配置構成を示した図である。
【図3】酸素透過率(酸素透過性)及び水蒸気透過率を示した図である。
【図4】酸素透過率(酸素透過性)及び水蒸気透過率を示した図である。
【図5】バリヤ結合ホイルの有利な特徴的構成を原理的に示した図である。(a)は、無機−有機ハイブリッドポリマー−材料から構成される液状塗料を、無機遮断層(ここでは、例えば、SiOxから成るもの)に供給し(塗布し)、その欠損個所又はピンホールを被覆して平滑化している構成を示している。(b)は、Si−O−含有無機−有機ポリマー層の、境界面に形成されたSi−O−Si−結合に基づく、シリコン酸化物層での良好な付着(接着)を概略的に示している。
【発明を実施するための形態】
【0018】
発明者は、更に、数値的な算定(見積もり)を使用して以下のことを示すことができる。ハイブリッド層の厚さが低減されると、このような系の、浸透する酸素−及び(幾分か弱く)浸透する水蒸気に対するバリヤ効果は、明確に改良される。このような極めて驚くべき効果について、以下に説明する。
【0019】
バリヤ又は基材、例えば、パーマネントガスについての所定の透過性を有する合成ホイルの、(このようなガスの濃度の高い部分からこのようなガスの濃度の低い部分への)浸入は、ホイルの表面におけるこのようなガスの吸着、ホイル材料中への吸収、ホイル材料内での拡散、及びホイル材料から第2の部分(場所)への脱着によって測定(決定)される。浸透のための駆動力は、ガスの(このような二つの部分での)分圧差である。単一(均質)のポリマーホイルのガスに対する透過率は、透過係数Pによって記載される。これは、ガスのポリマーへの溶解度係数S及び拡散係数Dから得られるものである。これは、ホイルの厚さから独立している。ホイルの透過率Qは、Q=P/d(d=基材の厚さ)で表される。ホイルは、抵抗として考えることができる。このような2枚のホイル、又は層が、相前後して接続された場合、全体の透過率Qはキルヒホッフの法則に従い、即ち、1/Q=1/Q1+1/Q2、(但し、Q1及びQ2は、二つの層の透過率である)である。最も低い透過率を有する層が、結合体において、最も大きな作用を有することがわかる。
【0020】
純粋な無機バリヤ層、例えば金属又は金属酸化物(これらはガス相から施される(蒸着される))は、たとえこれらが非常に薄くても、理論的に完全に気密(ガス漏れがない)である。しかしながら、実際には、これらはなお、そうではない。この理由は、施された層は、ガスが通過可能な欠損個所、ないし欠陥部分を有するからである。無機バリヤ層の緊密性(Dichtigkeit)は、材料の厚さを増すことによって、任意に高め得るものではなく、材料の厚さを低減することによって低減し得るものでもない。このような層をポリマーに施すことによって得られるバリヤの改良は、BIF(バリヤ改良ファクター;蒸着されたポリマーの透過率が、蒸着されていないポリマーの透過率で割られたもの)によって表される。結合したポリマー/無機バリヤ層/基材ポリマーの透過率Qのために、1/Q=BIF(1/Q1+1/Q2)(但し、Q1及びQ2が、蒸着されていない基材ポリマーないし蒸着されていないハイブリッドポリマーの透過率である)が適用される。このことは、ハイブリッドポリマー層上のBIFは、まさに基材ポリマー上と同様に作用することを意味する。すなわち、上述したように、蒸着層は、欠陥の存在によって完全には緊密ではないので、その実際の緊密性等は、その下側に位置する層の表面の平滑性に依存している。純粋な無機でない、即ち(無機層と接触して存在する)ポリマー又はハイブリッドポリマー層のバリヤ作用は、その層厚さと共に向上する。重要な(決定的な)層厚さから離れて、向上させる明確な手段を得ることは困難となっている。
【0021】
驚くべきことに、これらの挙動は、本発明者によって提供可能なもののような、2層の純粋な無機バリヤ層の間の無機−有機ハイブリッドポリマー層には、あてはまらない。これらのガス、例えばO2の、このような複数層への浸透おいて、ガス分子は、無機層の欠陥を通してハイブリッドポリマー層中に浸入し、ハイブリッドポリマー層中を、主として層表面に対して平行に、第2の無機層の欠陥へと流れ、そしてこの欠陥を通して、ハイブリッドポリマー層から去る(離れる)。層表面に対して平行なハイブリッドポリマー層の透過性は、近似的に、これらが拡散するための横断積に比例し、すなわち、ハイブリッドポリマー層の厚さに近似的に比例するので、複数層のバリヤ効果は、これらの厚さを減少させることによって明確に大きくなる。換言すれば:ガス分子の入口側表面の(対向する側に位置する、最も近い個所への)経路の長さに依存するものではなく、横断面積(該横断面積は、ガス分子に、層表面に沿った拡散のための入口側表面として提供する)に依存するものである。層の体積が少ない程、単位時間当たりに拡散するガス分子は少なくなる。2次元的な層構造において、層の厚さがこの体積を決定することが理解される。従って、無機−有機バリヤ層の材料が少ない程、即ち無機−有機バリヤ層が薄い程、拡散バリヤは高くなる。
【0022】
(これらのことのための前提をTortuous Path−Effekと称する)効果は、第2の層の欠陥の、第1の無機層の欠陥に対するズレ(置き換え)である。これらのことは、中間層によって達成される。この理由は、第1の無機層のこれらの欠陥が覆われ、そしてこれにより、両方の無機層の欠陥の連結関係が外れる(減少する)からである(減結合が作用する)。これらの効果に加え、当然、上述した、公知の減結合効果も作用する。しかしながら、これらの減結合効果も、本発明に従い提供されるバリヤ結合体によって強化される。即ち大まかな規則として、ポリマー性中間層の厚さは、好ましくは、無機層中の欠陥又はピンホールの半径以下である(及び、小さい方程、好ましさが増す)。
【0023】
発明者とって、次のことが、有利に作用している、すなわち、被覆ラッカー、ないしはラミネーション物質(Kaschiermassen)は、卓越した流動特性を有しており、及びこれらは、所定の粘度を有しており、これにより欠陥中の大きな表面積によって、及びこれによる毛細管現象によって、その中に(被覆ラッカー、ないしはラミネーション物質が)流れ込む(吸い込まれる)のである。これによって、これらの欠陥の効果的な減結合が生じ、これにより、バリヤ効果が極めて良好に改良される。
【0024】
全体的に、本発明に従う(複合体技術の)バリヤホイルの、基礎要素、無機層/ハイブリッド層/無機層の透過率Q*は、以下の大きさ(程度、値)に依存している:
・両無機層の欠陥の大きさと頻度、
・ある欠陥と、他方の無機層の次の欠陥との間の平均距離、
・ハイブリッドポリマー中間層の厚さ、及び
・ハイブリッドポリマー中間層の、スケーリング値(Skalierungssrosse)としての見かけの透過率Q100
・無機層の欠陥が満たされた場合には、透過率Q*は、無機層の厚さにも依存する。
*のこれらの依存性は、幾つかのシミュレーションによって調査される[O.Miesbauer,M.Schmidt,H.−C.Langowski,Stoffransport durch Schichtsysteme aus Polymeren und dunnen anorganischen Schichten,Vakuum in Forschung und Praxis,20(2008)Nr.6,32−40.]。
【0025】
図1に、構造体、(即ち)無機層/ハイブリッドポリマー中間層/無機層の酸素透過率を、(異なる欠陥の大きさ、及び孔の距離≒94μmについて)中間層の厚さの関数として示す。ここで、両方の無機層の孔は空(満たされていない)で、周期的に分配され、及び相互にずらされている。中間層の厚さを(圧程度、当面)減少させても、さしあたりは、透過率の本質的な減少にはならないことが理解される。これらの厚さが十分に小さい場合に初めて、厚さを更に減少させることによって、透過率が減少する。それ未満の厚さでは、透過率は、厚さが減少するに従い減少し、欠陥が大きくなるに従い増加する。
【0026】
この技術分野の更なる層列(連層)では、単純な関連が(確かに)明らかである:層列、無機層−第1のハイブリッドポリマー中間層−無機層−第2のハイブイリッドポリマー中間層−無機層の5層構造によって、基礎要素を増加させた場合、(ここで、両方のポリマー層及び3層の無機層は、同一である):
ges-1=Q*-1+Q*-1 又はQges=0.5Q*
【0027】
これによって、第1のサンドイッチ構造が、作成された層系のバリヤ特性について、最も大きな意義を得る。この理由は、この構成は、ベースホイルのバリヤ特性を、10の幾累乗にも改良することができ、更なる無機−有機ハイブリッド層及び更なる無機層から構成される、次の層列はファクター2(しか改良しない)からである。このことは、無機層及びハイブリッドポリマー層から構成される、交互する層中の更なる層組にも、類似して適用される。
【0028】
高−ないしは超バリヤの製造のために、以下の結論が得られる:
・上述の層系の場合のように、欠陥の頻度が可能な限り低減され、及び欠陥間の距離が可能な限り長くされた無機層の製造。このような層は、この技術分野では公知の処理によって得ることができる。
・ハイブリッドポリマーの中間層について、可能な限り低い、水蒸気と酸素の見かけの透過性(透過率)(Q100)を有する材料が使用される必要がある。
・無機−有機の、ハイブリッドポリマーの中間層は、可能な限り薄い厚さ(好ましくは≦100nm)を有する必要がある。ここで、得られる表面品質は高くならなければならない。特に、基礎部上(台上)で、薄く、又は粗悪に進行する層によって、その表面に欠陥が形成されてはならない。
【0029】
基材上の無機及びハイブリッドポリマー層から構成される結合体の配置についての、サンドイッチ構造の上述した考察に基づいて、本発明の更なる好ましい実施の形態を、以下のSiOxで認められたバリヤ効果の改良(概略)を使用して説明する。
【0030】
【表1】

【0031】
表1から、本発明に従う中間バリヤについて、10-3cm3/(d・m2・bar)の酸素透過率が、本発明に従い得ることができることがわかる。これは、実際的に、今までの従来技術(標準技術)で達成可能な値に対して、約10のファクターのものである。
【0032】
幾等級にも及ぶ、更なるバリヤ改良を、以下に列挙した1つ以上の処理によって達成することができる。
・無機−有機ハイブリッドポリマー層の厚さの更なる低減(これらが、更に閉じているという前提の下で)、
・無機層の多孔性(多孔度)を低減すること、
・無機−有機ハイブリッドポリマー−層の浸透係数を低減すること、
・無機−有機ハイブリッドポリマー−層を、純粋な空間条件下で施す(塗布する)こと、個々の層の塗布(供給)の前にホイルを洗浄すること。
【0033】
本発明の無機−有機ハイブリッドポリマーは、式(I)
1a2bSiX4-a-b (I)
の少なくとも1種のシランの使用下に製造される。ここで、R1が、有機の網目状結合/重合に到達可能な基であり、R2が、(少なくとも主に)有機の網目状結合/重合に到達しない有機基であり、及びXが、OH−基、又は加水分解の条件で、更なるこのような基と縮合反応可能であり、及びこれにより、式(I)の更なるシリコン化合物、又は他の加水分解的に縮合可能なシリコン化合物、又は同様の金属の化合物の酸素原子での結合によって、ゾル−ゲル−形成の間、無機の網目状結合に、少なくとも部分的に貢献可能な基を意味し、a及びbが、それぞれ0、1又は場合によっては2が可能であり、及び4−a−bが稀に1であるが、通常は2又は3である。
【0034】
基Xは、無機のネットワーク形成剤(架橋形成剤)と称される。基R1は、有機のネットラーク形成剤(架橋形成剤)とも称される。この理由は、無機の、加水分解的な縮合によって形成されるネットワークに加え、有機のネットワークの形成も可能だからである。基R2は、有機のネットワーク調整剤(Netzwerkwandler)と称される。この理由は、これらは、(これ又はこれらにネットワークを組み込むことなく)ハイブリッドポリマーの特性の決定に参与するからである。
【0035】
Xは、特に、アルコキシ、水素、ヒドロキシ、アクリルオキシ、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、及び特定の場合には、1級又は2級のアミノ基であることができる。好ましくは、Xは、アルコキシ基であり、極めて好ましくは、C1−C4−アルコキシ基である。4−a−b=3が特に好ましい。
【0036】
ハイブリッドポリマーは、場合により更に、(半−)金属アルコキシドの使用下に製造することができ、これらは、例えば、硼素−、アルミニウム−、ジルコン−、ゲルマニウム−、又はチタン化合物から、又他の溶液、好ましくはアルコキシド形主族−、及び遷移金属化合物から選ぶことができる。
【0037】
従って、4−a−b=3である本発明の(実施の)形態が特に好ましい。この理由は、使用されるシランR1SiX3は、3個の無機の網目状結合の個所を有しており、これらは、次の加水分解において、網目結合の程度を高くするからである。これにより、層は密になり、そしてガラス状になり、及び本来的な(固有の)高いバリヤ効果を有するようになる。これに対応して、ハイブリッドポリマーは、好ましくは専らこのようなシランを含む。
【0038】
同様の根拠に基づいて、この替わりに、式(I)のシラン(又は、複数のこのようなシランの組合せ)を、式SiX4(但し、Xが、式(I)のものと同じ意味を有している)のシランと一緒に使用することが好ましい。また同様に、式(I)のシランと1種以上の金属アルコキシドの組合せも効果的である。当然、3種の上述した好ましい形態も相互間で組合せることができる。
【0039】
ハイブリッドポリマーを製造するために使用されるシランが、少なくとも部分的に、aが1であるか、又は稀な場合では2であるシランであることが、本発明に従い好ましい(及び上述した全ての実施の形態との組合せも好ましい)。これに対応して、本発明の特定の実施の形態では、無機のネットワークに加え、有機のポリマーネットワークを有するようなハイブリッドポリマーが、被覆材料として、又はラミネーション材料(Kaschiermassen)として、本発明のために好ましい。このようなネットワークは、例えばR1に結合しているエポキシ基を開けることによって発生させることができる。この替わりに、例えば基R1は、アクリレート、−メタクリレート−、又はビニル基を含む。ここで、例えば、UV−照射により、有機の網目状結合が、二重結合の重合(重付加)によって作用することができる。このような、又は類似した/匹敵する基R1を有するシランは、標準技術では、多数知られている。
【0040】
出発材料は、通常、公知のゾル−ゲル−法に従い、加水分解的に縮合されるか、又は部分的に縮合される。ここで、通常、触媒が、縮合反応を公知の態様で開始させるか、ないしは加速させる。このように製造された被覆材料は、通常、ラッカーとして(溶液、懸濁液)として使用され(施され、塗布され)、次に溶媒を蒸発させることによって、更に進行した無機の網目状結合、及び/又は有機の網目状結合が硬化される。有機の網目状結合が行なわれる場合、ラッカーは、必要に応じて、適切な触媒又は開始剤と混合することができ、及び網目状結合が、熱的又は活性照射(例えばUV−又は他の光照射)を使用して行われ、場合により酸化還元触媒化される。無機の後網目状結合(Nachvernetzung)が、たびたび溶媒の蒸発によって結合される。これらの全ては、従来より公知であり、及び多くの文献に記載されている。
【0041】
溶媒として、好ましくは水、場合によりアルコールを使用することが好ましい。水に基づくラッカーが、環境保護の根拠から好ましい。
【0042】
上述したハイブリッドポリマーないしはラッカー/ラミネーション材料は、無機のバリヤ層と組合せて使用した場合、その本来的な(固有の)バリヤ特性に基づいて、卓越したバリヤ特性をも有する。ハイブリッドポリマーが、無機のポリマー−ネットワークに加え、有機のポリマー−ネットワークをも有する場合には、バリヤの質は、これにより更に改良される。これらの二重の網目状結合構造は、通常はセラミック材料と結びついて使用される有機の部分層(Teilschichten)(例えばアクリラートからなるもの)と、これらとを特に区別する。アクリラート(アクリレート)層の作用は、その本来のバリヤ効果と、複数の無機の、ガス相からもたらされた層との減結合にのみ基づいている。これに対して、ハイブリッドポリマー材料は、その下側に位置する、無機材料(金属−又はセラミック層)から構成されるバリヤ層を追加的に密にする。この構成は、これらが比較的「さらさらした」状態なので、これらを、その欠陥部分(ピンホール)に満たすことができることに基づく。これらについて、同様に、有機の層に対して強調するべきことは、金属−酸素−金属−橋を介して、純粋な無機の層の表面に結合することができるということである。これらの共有結合は、層の組合せの、更なる本来的な(固有の)、全体的な効果を高めるバリヤ効果を与える。この機能(能力)に基づいて、無機層に共有的に結合して、本発明に従って導入可能なハイブリッドポリマー層は、プライマー−機能をも満たすことができる。更に、該ハイブリッドポリマーは、卓越した減結合効果を有する。その下側に位置する層の欠陥及び非平坦性を埋め合わせる(均一化する)その機能のために、上記ハイブリッドポリマーは、更に平滑化層としても機能することができる。最後に、これは、完全に硬化させることができる:標準技術では、このようなハイブリッドポリマーから、引っかき傷に極めて強い層を製造することができることが公知である。
【0043】
特定のホイル結合体の酸素−(OTR)及び水蒸気の透過性(WVTR)の結果を表2に示した。
【0044】
【表2】

【0045】
上述した方式の追加的なハイブリッドポリマー層は、保護層として機能することができ、該ハイブリッドポリマー層は、より厚い層(1μmを超える)に、例えば、UV−保護として、又は結合体に水分抵抗性を与えるために施されることが好ましい。従って、通常、このような層は、結合体の最外層として施される(塗布される)。
【0046】
本発明に従い導入される無機−有機ハイブリッド材料は、これに対応して、本発明に従うバリヤ結合層の中で、ガス及びガス状水分のバリヤとして機能するだけでなく、プライマー(下塗り)、平滑化層、減結合した中間層、及び(種々の保護特性を有する)保護層としても機能する。(発明の範囲の)枠の周辺部では、本発明のために、プライマー層は、ハイブリッドポリマーからの替わりに、個々の場合においては有機層からも構成することできる。
【0047】
無機のバリヤ層のための材料として、全ての金属、及び金属合金、そのオキシド、ニトリド、及びカーバイド、シリコンのオキシド、ニトリド、及びカーバイド、及び対応する混合化合物、及び他のセラミック材料が適切である。有利なものは、例えばアルミニウム又はシリコンのオキシドである。シラザンも適切である。これらは、導入する材料、及びガス相からの必要に従い施される(例えば、スパッタ、又は蒸着される)。これは、真空技術又は非真空技術であることができる。蒸着はスパッタ(Sputtern)と比較して、安価で迅速に行うことができるという長所を有している。後者の技術を使用した場合、層の緊密性を高くすることができ、及び従って層のより良好なバリヤ効果を得ることができる。
【0048】
本発明の無機−有機ハイブリッド材料は、液体状の相から、例えば液状塗料被覆によって施すことができる。これによって、被覆材料が、低粘性で、良好に網目状結合化し、及び無機バリヤ層に化学的に使用され、そして、無機層中の巨視的及び微視的な欠陥を、少なくとも部分的に補償し、及び場合によっては、蒸着でも、スパッタでもされた層に存在する欠陥(ピンホール)を満たす。相互作用によって改良されたバリヤ効果、即ち孔を満たすことよって、あるいは無機層での共有結合によって改良されたバリヤ層は、(全ての層が真空から施された層系に対して、)液状化学的に施されたハイブリッドポリマー中間層の大きな長所を有する。
【0049】
通常、(所定の、又はある)基材表面上に、最初に無機バリヤ層を配置し、そしてその上に、無機−有機ハイブリッド材料から成る、少なくとも一つの層を配置し、第2の無機バリヤ層が続くことが、特に有利である。このような配置構成では、浸透係数は、逆の配置構成(基材−無機−有機ハイブリッドポリマー−無機バリヤ)の浸透係数よりも、何等級も低くなっている。しかしながら、この配置構成は、全ての場合において、更なる層を使用すること無く、又は事前処理することなく使用することができるわけではない。例えば、無機、及びハイブリッドポリマー層は、ポリテトラフルオロエチレンには付着しない。しかしながら、フルオロ化したポリエチレン、例えばPTFE、PVF、ETFEは、基材材料としてしばしば有利である。この理由は、これらはUV−光に透過性であり、UV−安定性であり、及び従って外側領域に使用することに適しているからである。これらのポリマーの更なる短所は、その粗さ(凹凸性)が大きいことである。従って、このような場合、コロナ処理を行った後、好ましくは、無機−有機ハイブリッドポリマーから成る層がプライマー(下塗り材)として基材の上に施される。この層は、本発明に従い導入された、(無機層/ハイブリッド層/無機層から構成される)サンドイッチ結合体に、追加的に導入される。
【0050】
以下の配置構成:無機層/無機−有機ハイブリッドポリマー/無機層を有するバリヤ層結合体は、無機−有機ハイブリッドポリマー−層の厚さが<1μmの場合、上記厚さがこれよりも厚い場合と比較して、(上述した理由により)より良好なバリヤ効果を達成可能である。好ましくは、この層の厚さは、500nm未満、理想的な場合には、200nm未満である。(基材の上に蒸着された無機層の、位相幾何学における隆起の被覆を行う場合には、)最適なものは50nmの値を達成することができる(図2参照、左側に通常のバリヤ層の電子マイクロ画像を、及び右側に2層の無機層と1層の中間に位置する無機−有機ハイブリッドポリマー層を有する、本発明に従う配置構成を見ることができる)。このことから、基材(ホイル)は、好ましくは、粗さが極めて低くあるべきであることがわかる。このことが可能でない場合、平滑化層を、第1の蒸着層の下側に施すことが推奨される。これらは、上述したように、無機−有機ポリマーハイブリッド層として形成することができる。
【0051】
このような構造を製造する最も単純な方法は、第2の無機の(被覆された)基材ホイルを、無機−有機(ハイブリッドポリマー)接着層(ラミネーション層)を介して、無機層と相互に結合させること(PET/無機層/ハイブリッドポリマー接着材/…)、又は通常のラミネーション接着材(Kaschierkleber)を介して、ハイブリッドポリマーと相互に結合させること(PET/無機層/ハイブリッドポリマー/市販のラミネーション接着材/…)である。この替わりに無機の被覆された基材ホイルを、無機−有機ハイブリッド材料で塗ることができ、そして更なる無機層を供給することができる。更なる層を、交互する順番で組み込むことができる。両方の方法が、本発明のために使用可能である。
【0052】
本発明のある好ましい実施の形態では、UV−硬化可能なバリヤ被覆材料が、水ベースで使用される。現在まで使用されていたUV−硬化可能な無機−有機ハイブリッドポリマーは、専らアルコールの存在下にゾル−ゲル−網目状結合されていた。驚くべきことに、アルコール性のバリヤラッカーに代わって、本発明の結合系に、水性系に基くラッカーを使用することで、蒸気遮断特性の改良がもたらされた。図3から、酸素透過率(酸素透過性)は殆ど変わっておらず、一方、水蒸気透過率は、半分に下がっている(システムaは、実施例1のラッカー(A)を示し、システムbは、ラッカー(B)を示す)ことが分かる。
【0053】
本発明の、同様に好ましい更なる実施の形態では、無機−有機ハイブリッド材料からなる所定のバリヤラッカーが使用され、該バリヤラッカーは追加的に粒子、特に酸化物粒子を含んでいる。特に好ましくは、これらの実施の形態は、有機の、網目状結合可能なハイブリッド材料を使用して行なわれる。粒子として、アルミニウムオキシド−及び/又は酸化ケイ素が好ましく;粒子の大きさは、無機−有機ハイブリッド材料のバリヤ層の厚さ(直径)未満の範囲であることが有利であり、及び好ましくは20〜120、特に30nm〜100nm、より好ましくは約50nmである。粒子の直径が小さいために、これらは、単純な方法では、本発明のバリヤラカー内で、均一に組み込むことが困難である。しかしながら、水性、もくしはアルコール性のSiO−ゾル、及びAl23の水性分散物を使用することによって、このことはうまくいった。SiO2−粒子は、熱的に硬化する、及び光(UV)を使用して硬化するラッカー系に、約5〜30、特に5〜6質量%、ないしは、UV−硬化性系においては、約11質量%以下の量で組み込むことができる。充填物質を使用して変性された系が、PET/SiOx(スパット)−及びPET/AlOx(スパット)−ホイルに施された。結果を表3に示した。粒子を含む系で被覆されたホイルの透明性の減少は、粒子を含まない被覆物と比較して、調査された濃度範囲では、認められなかった。
【0054】
熱的に硬化する系(実施例1のラッカー(A)を使用して行なわれた)は、SiO2−粒子と組み合わせて、OTRsのファクター10だけの更なる減少、及びWVTRsのファクター2.5だけの減少を示した(表3、参照)。
【0055】
【表3】

【0056】
UV−硬化性のラッカーも、SiO2−粒子と組み合わせることにより、OTRsのための測定限界:0.005cm3/m2dバールを達成した。>0.1g/m2d(0.04g/m2d)の最終値(出口値:Ausgangswert)と比較して、水蒸気バリヤ特性の明確な改良も達成することができた。
【0057】
球状の、及び/又は表面機能化したSiO2−粒子の使用も、低くなったバリヤ値を明確にもたらした。
【0058】
特に好ましい態様では、本発明の目的のために、水ベースのバリヤラッカー(該バリヤラカーは、追加的に、上述した粒子を含む)が使用される。
【0059】
本発明の特定の実施の形態では、無機、及び無機−有機−ハイブリッドポリマー−層が多数、交互して構成されたサンドイッチ−系が提供される。ここでも、このような系の基礎要素も、薄い、無機−有機ハイブリッド材料−層(該層は、2層の無機層(金属−又は金属酸化物−層)の間に設けられる)から構成される。この層の厚さのために、無機−有機ハイブリッドポリマー層について記載されたものと同様のことが記載される。
【0060】
無機−有機ハイブリッド材料から成るバリヤ層は、前述したように極めて薄い。本発明では、このような薄い層をそれぞれの基礎部分(Unterlage)の上に効果的に施し、及び良好に閉鎖した(密になった)バリヤ層へと硬化させることに成功した。ここで、以下のことが考慮される。即ち、得られるバリヤ効果は、バリヤ層が閉じたフィルムを基礎部分の上に施す場合、無機の、及び場合により有機の網目状結合が、十分な範囲に行なわれた場合、及び場合により無機−有機層の下側に存在する、純粋な無機バリヤ層が十分に密(緊密)である場合にのみ達成することができる。このことは、以下に記載する1つ以上の処理条件を遵守して達成することができる:
【0061】
1.動的粘度(dynamische Viskositat)の測定で、好ましくは組み込まれた濃縮物の無機−有機ハイブリッドラッカーが、通常、ほぼ理想的なニュートン流体として存在するという結果をもたらすこと。動的粘度は、好ましくは約0.008〜0.05Pasの範囲に存在する。本発明の特に有利な実施の形態では、被覆ラッカーは、従って非常に低い有効粘度(effective Viskositat)、例えば0.003〜0.03Pasの範囲で組み込まれる。これに対してラミネーション材料(Kaschiermaterial)の粘度は、0.1〜200Pasの範囲に位置する。ラッカー又はラミネーション材料の製造において、ゾル−ゲル−法における加水分解縮合の結果、これらの値が超過する場合には、供給(塗布)の前に、対応して希釈することが推奨される。場合により希釈された後の固体含有量は、通常、実質的に10〜20質量%を超えない。
【0062】
2.組み込まれた式(I)のシランは、2個、又は−好ましくは−3個の加水分解可能な基を有している。これにより、Si−O−Si−橋で構成される比較的密な無機のネットワークが生じる。
【0063】
3.式(I)のシランは、式SiX4のシランと組み合わせて組み込まれる。これにより、無機の網目状結合が更に高められ、及び被覆物がガラス状になる。
【0064】
4.項目3で記載した処理の替わりに、又はこれに加えて、加水分解可能な金属化合物(例えばアルミニウム、ジルコニウム及び/又はチタンの化合物)が加えられることができる。これにより、有機の網目状結合が更に密になる。
【0065】
5.シランとして、好ましくは、有機の網目状結合可能なシラン、例えばグリシジル−、アンヒドリド−、又は(メト−)アクリラート基を有するものを組み込むことができ、ここで、場合により、これらの基の有機的な網目状結合のための適切な触媒/開始剤が加えられる。ラッカーを施した後、これらは、熱的に、又は光化学的に後処理され、ここで、加水分解的な縮合によって製造された無機のSi−O−Si−ネットワークに加え、有機的なネットワークが形成される。これらは、(これらを通るガス分子のために、)無機−有機層の密さ(緊密さ、密度)を高める。
【0066】
6.式(I)のシラン化合物の加水分解的な縮合は、好ましくは、酸性又は塩基性の触媒を使用して行なわれる。これらは、これらが加えられる1種以上の金属化合物のための錯体リガンドとして、同時に作用可能なように選ばれる:これらは、加水分解的な縮合の速度を遅くし、同様に網目状結合された構造の構造化を促進する。
【0067】
7.密な層を成就する(成功的に得る)ための重要なファクターは、またラッカーの表面張力でもある。この理由は、(均等なラッカー塗布を確保するために、)基材、ないしはその下側に位置する専ら無機の層への十分な網目状結合が保証される必要があるからである。これらは、好ましくは約20〜35mN/mの範囲である。
【0068】
8.従って、これにより、本発明に従うラッカー層が、上限が<1μmの、可能な限り薄い層の状態で、閉じた層として施すことができるか否か、複数の方法が調査される。この理由は、既に上述したように、無機−有機ハイブリッドポリマー−層のバリヤ効果は、主としてフィルムの密閉性(閉鎖性)、無機及び有機のネットワークの最適の網目状結合、及びその下側に位置する無機の蒸着層の緊密性に依存しているからである。
ビードコーティング、リバースグラビア及びカーテンコーティング等の供給方法が試験された。これらの全ての方法は、薄い層を、閉鎖した状態で施すことができるという特性を有している。
「リバースグラビア」法は、対向して走行するラスターローラー供給を使用して行なわれる。項目1で記載した粘度が、この方法のために適切である。これにより発生する、無機−有機ハイブリッド層の構造は、非常に有利なものであることがわかった。
【0069】
9.層の感受性に基づいて、基礎部分(路床:例えばローラー)に接触することなくホイル輸送を行うことが望ましい。標準技術では、ロール−ツー−ロール法のために、対応した適切な処理が使用可能である。
【0070】
10.更に、(除去できない場合には、)埃の粒子の、又は空気中の浮遊粒子を可能な限り少なく維持する環境条件が選ばれるべきである。
【0071】
11.ラッカー溶媒の蒸発において、上述したように、通常(追加的に)、無機の網目状結合工程が導入される。これは、無機の網目状結合反応の化学平衡に関連している(重縮合)。有機の網目状結合可能な官能基が存在する限り、追加的に、なんらかの活性化エネルギーが必要とされ、これにより、網目状結合が開始される。このことは、熱的に、又は照射によってもたらされることができる。ここで問題になり得るのは、高い温度で熱可塑的に変形可能な合成物質ホイルの非耐熱性である。無機−有機ハイブリッドポリマー−層の乾燥と形成において、各ポリマーホイルの熱的な安定性、及びラッカーの硬化条件を考慮した条件を遵守することが好ましい。
【0072】
これらの事情を考慮するために、ある好ましい実施の形態では、従って乾燥は、(高い)空気層流を使用し、次に調節された赤外線−照射を使用して行なわれる。ここで、合成ホイルが損なわれないように、経過温度が制御されるべきである。PETホイルの被覆が、例えば通常、約90°〜120°を超えないようにするべきである。しかしながら、濡れた状態のラッカー層の温度が、有機の網目状結合を開始させるために、これらの温度よりも明らかに高くされる(例えばこれよりも約20K高い)ことが可能である。このための、最も重要な前提は、溶媒の蒸発時に発生する蒸発冷(Verdampfungskalte)である。例えば、ラッカーのシランの有機基がこれにより網目状結合(架橋)される場合には、IR−照射の替わりに、UV−照射を行うことができる。
【0073】
加熱空気−乾燥と照射の分離は、加熱空気のための別個の乾燥ステーションを設けることによって、実質的に容易になる。この理由は、個々の工程は、実質的に2つの機械内で分けることができるからである。
【0074】
図4に、所定の改良(該改良は、上述した処理の使用下におけるロール−ツー−ロール法が提供する)を目視的に示す。PET/Melinex40ホイル(これは、AlOxで蒸着/スパッタされている)の被覆を、ラッカー「ORM8」(実施例1のラッカー(A)に対応)を使用して行ない、次にこれを熱的に硬化させたが、ロール−ツー−ロールパイロット設備上での処理を使用した場合には、(従来技術に従い同じ材料を使用して、同じ厚さに被覆したホイルと比較して、)水蒸気透過度が半分になった。
【0075】
全般の実施例
出発材料:
10〜40モル%テトラアルコキシシラン
10〜90モル%有機的な、網目状結合可能なシラン、
5〜35モル%の、(アルミニウム、ジルコニウム及び/又はチタンから選ばれる)金属アルコラート。
【0076】
比較的反応性の金属アルコラートの場合には、場合により、錯体化剤(錯化剤)、例えば、トリエタノールアミン、アセト酢酸エチルエステル、セチルアセテート、アミノプロピルトリアルキルシラン。金属アルコールが、任意に錯体化剤を使用して変換され、及びシラン成分が得られ及び加水分解される。
【0077】
実施例1
ラッカー(A)の製造
15モル%テトラメトキシシラン(TMOS)
20モル%グリシジルプロピルトリメトキシシラン(GLYMO)
10モル%ジルコニウムプロピラート
10モル%アルミニウム−セク.ブチラート
10モル%アセト酢酸エチルエステル
【0078】
反応性を下げるために、ジルコニウムプロピラート及びアルミニウム−セク.ブチラートを、アセト酢酸エチルエステル中で錯体化した。シランを加えた後、混合物を酸性触媒反応させ(水性HClを加えることにより)、加水分解した。これにより、比較的ゆっくりと有機の網目状結合が行なわれ、これを数週間にわたり放置し、粘度を増加させた。
【0079】
ラッカー(B)の製造
上記成分からのラッカーの製造を、(反応において遊離したアルコールを、合成の後に真空中で除去し、及びこれにより失われた溶媒を水によって置き換えた変更内容を含めて)繰り返した。
【0080】
AlOxが蒸着(蒸着メッキ)されたPET−ホイル(Melinex M400 von Dupont、厚さ75μm)に被覆するために、ラッカー(A)及び(B)を使用した。この目的のために、(前には約40%であった)ラッカーの固体含有量を、水を使用して約10%に希釈した。ホイルの非接触的な輸送下で、室温ないしは室温より僅かに高い温度で、及び埃の粒子を除去した状態でラッカーを施した後、このラッカーを、90℃での分離した加熱空気乾燥、及びIR−照射で、例えば80s(3m/minにおける)の時間、硬化させた。次にホイルの一部を、更なるAlOx−層で蒸着した。これから、再度、一部をもう一度、上層として同じラッカーで被覆した。表2に結果をまとめた。
【0081】
実施例2
実施例1を繰り返したが、しかしながらAlOxで蒸着したホイルの替わりに、厚さが200nmのZnSnOx層をスパッタさせた。ラッカーを施し(塗布し)、及びこれを硬化させた後、これらに、第2の、厚さが同様に200nmのZnSnOx−層を施した。カルシュウムシュピーゲルテストを使用して、38℃、90%相対湿度(rel.F.)で、2×10-4g/m2dの水蒸気透過性が測定された(表2)。
【0082】
実施例3
出発材料:
55〜80モル−%メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン
25〜45モル−%金属アルコラート(モル割合1:0.5〜1で、メタクリル酸で錯体化されたもの)で、金属アルコラートは、特に、Al及び/又はZr及び/又はTiの、1〜4個の炭素原子を有するアルコラートから選ばれる。
【0083】
混合物を、実施例1と同様に加水分解した。
【0084】
ラッカー被覆を、実施例1に記載したように行ったが、しかしながら、硬化の補助のために、ラッカーをIR−照射を使用して照射しなかった。この替わりに、メタクリル基の網目状結合を5〜6J/cm2のUV−照射下に行なった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)基材、
(b)専ら無機材料から構成される第1の層、
(c)無機−有機ハイブリッド材料から構成される第1の層、及び
(d)専ら無機材料から構成される第2の層
を含む高バリヤ結合体であって、
無機−有機ハイブリッド材料から構成される層が、直接的に、両方の専ら無機材料から構成される層の間に配置され、及びその厚さが1μm未満であることを特徴とする高バリヤ結合体。
【請求項2】
無機−有機ハイブリッド材料から構成される層の厚さが、500nm未満、好ましくは200nm未満、及び最も好ましくは100nmであることを特徴とする請求項1に記載の高バリヤ結合体。
【請求項3】
専ら無機材料から構成される第1の層が、基材と無機−有機ハイブリッド材料から構成される第1の層の間に、直接的に配置されることを特徴とする請求項1又は2の何れかに記載の高バリヤ結合体。
【請求項4】
無機−有機ハイブリッド材料から構成される層を、少なくとも2層含み、専ら無機材料から構成される層、及び無機−有機ハイブリッド材料から構成される層が、交互に配置されることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の高バリヤ結合体。
【請求項5】
第1の専ら無機の層が基材の上に直接的に配置され、又は更なるポリマー層、好ましくは無機−有機ハイブリッド材料から構成される更なるポリマーが、第1の専ら無機の層と基材の間に、プリマー−又は平滑化層として施されることを特徴とする請求項1に記載の高バリヤ結合体。
【請求項6】
無機−有機ハイブリッド材料が、無機ネットワーク及び有機ネットワークを有することを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の高バリヤ結合体。
【請求項7】
式(I)
1a2bSiX4-a-b (I)
(但し、R1が、有機の網目状結合に到達可能な基であり、R2が、有機の網目状結合に到達しない有機基であり、及びXが、OHを意味するか、又は加水分解の条件で、Si−O−M(但し、M=金属又シリコン)の形成下に縮合反応可能な基を意味し、a及びbが、それぞれ0、1又は2であり、及び4−a−bが1,2又は3である)
の少なくとも1種のシランの使用下に、無機−有機ハイブリッド材料が製造されることを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載の高バリヤ結合体。
【請求項8】
追加的な、式Si(OR24(但し、R2が式(I)で定義したものである)のシランの使用下に、及び/又は式MIII3又はMIV4(但し、MIIIが、3価の金属であり、及びMIVが4価の金属であり、及びLが、アルコキシ基、又は錯体リガンド、又は複数の歯を有する錯体リガンドの歯を意味する)の、1種以上の、ハイブリッド材料に縮合可能な金属化合物の使用下に、無機−有機ハイブリッド材料が製造されることを特徴とする請求項7に記載の高バリヤ結合体。
【請求項9】
式(I)のシランとして、少なくとも50モル−%、好ましくは、少なくとも80モル−%、極めて好ましくは、100モル−%、4−a−bが3であるものが使用されることを特徴とする請求項7又は8の何れかに記載の高バリヤ結合体。
【請求項10】
式(I)のシランで、aが1を意味し、及び好ましくは、エポキシド−開環下に、又はアクリラート−又はビニル基含有基R1のUV−照射により、有機の網目状結合が発生することを特徴とする請求項7〜9の何れか1項に記載の高バリヤ結合体。
【請求項11】
無機−有機ハイブリッド材料が、水性ベースのゾル−ゲル−法によって製造されることを特徴とする請求項7〜10の何れか1項に記載の高バリヤ結合体。
【請求項12】
無機−有機ハイブリッド材料オキシド粒子が、20〜120nmの直径を有することを特徴とする請求項1〜11の何れか1項に記載の高バリヤ結合体。
【請求項13】
請求項1〜12に記載の高バリヤ結合体を製造する方法であって、
無機−有機ハイブリッド材料から成る1層以上の層が、0.002〜0.02Pasの粘度、及び/又は25〜35mN/mの範囲の表面張力を有するラッカー材料、又は粘度が0.1〜200Pasのラミネーション材料を、場合により無機材料によって被覆された基材の上に塗布することにより施され、及び、
−基材が、所定の供給装置の下に通過され、該装置からラッカー材料/ラミネーション材料が、基材の上に施され、
−基材の輸送が、輸送を行う手段と接触することなく行われ、及び
−場合により、塗布の間、埃粒子の存在が十分に抑制される、
ことを特徴とする方法。
【請求項14】
高バリヤ結合体が、ロール処理なホイルの形状を有し、及びラッカー材料/ラミネーション材料が、ロール ツー ロールによって施されることを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項15】
ラッカー材料ないしラミネーション材料が、有機の、網目状結合可能な基を有するシランの使用下に製造され、及びこれらの材料を基材の上に施した後、これにより形成された層が処理されて、存在する有機の網目状結合可能な基が、有機のネットワークを形成することを特徴とする請求項13又は14の何れかに記載の方法。
【請求項16】
有機基の網目状結合が、熱又は場合により照射によって行なわれることを特徴とする請求項15に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2012−512763(P2012−512763A)
【公表日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−541393(P2011−541393)
【出願日】平成21年12月15日(2009.12.15)
【国際出願番号】PCT/EP2009/067194
【国際公開番号】WO2010/069958
【国際公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【出願人】(503306168)フラウンホーファー・ゲゼルシャフト・ツール・フェルデルング・デア・アンゲヴァンテン・フォルシュング・エー・ファウ (38)
【Fターム(参考)】