説明

高ホモシステイン血症改善剤

【課題】 血中ホモシステイン濃度を低下させ又は上昇を抑制するのに有効である組成物及び飲食品を提供することを目的とする。
【解決手段】 セサミン類を有効成分として含有する、血中ホモシステイン濃度を低下し又は上昇抑制する作用を有する高ホモシステイン血症治療剤である。セサミン類は、食品由来の成分であり、副作用がなく長期間に渡り安全に摂取できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高ホモシステイン血症改善剤に関し、更に詳細には、セサミン類を有効成分として含有する血中ホモシステイン濃度を低下させあるいは血中ホモシステイン濃度の上昇を抑制する剤及びこれを含有する飲食品に関する。
【背景技術】
【0002】
ホモシステインは、メチオニン代謝経路の中間産物で、食事中のタンパク質から供給されるメチオニン由来の含硫アミノ酸の一種である。生体内でホモシステインは、メチオニン又はシステインに代謝されるが、代謝経路に異常が生じると血中のホモシステイン濃度が上昇する。血中ホモシステイン濃度の上昇は、心血管系や脳血管系、末梢静脈系の疾患の発生と関連し、アルツハイマー痴呆やうつ病の発生頻度の上昇とも関連することが指摘されている。また、ホモシステインの体内への蓄積により、体内組織の老化が促進されることも報告されている。したがって、これらのホモシステインが関与していると言われている疾患の予防又は治療や老化に伴う症状を予防又は治療するために、生体内ホモシステイン量、即ち、血中ホモシステイン濃度を低下する、あるいは血中ホモシステイン濃度の上昇を抑制することが重要であると考えられている。
【0003】
血中ホモシステイン濃度が高い症状(高ホモシステイン血症)に対する治療として、ホモシステイン代謝を円滑にすすめるための葉酸投与を第一段階治療とし、第二段階としてビタミンB6とビタミンB12の投与が行われている(非特許文献1参照)。
【0004】
また、日常の食品素材などを利用して、血中ホモシステイン濃度の上昇抑制あるいは低下を図ることも考えられ、このような食品素材としては、例えばコーヒー生豆抽出物(特許文献1)や、ニンニクやタマネギなどのユリ科植物又はその抽出物を活性成分として含む組成物(特許文献2)や、ホモシステイン合成酵素阻害素材としての椎茸由来エリタデニン(特許文献3)等が提案されている。
【0005】
一方、胡麻の生理活性成分であるセサミン類については、動脈肥厚化抑制作用(非特許文献2)やコレステロール低下作用(特許文献4)が知られているが、血中ホモシステイン濃度を低下させ、あるいは上昇を抑制する有効成分であることは、これまで示唆も開示もされていない。
【特許文献1】特開2006−16311号公報
【特許文献2】米国特許第6129918号公報
【特許文献3】特開2006−121913号公報
【特許文献4】特許第3075360号公報
【非特許文献1】プログレス・イン・メディシン(Progress in Medicine), Vol.19 No.8, 1999 p. 49-54
【非特許文献2】Biol.Pharm. Bull. 21(5) 469-473 (1998)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のとおり、非特許文献1には、葉酸、ビタミンB6、ビタミンB12等の酵素補助因子を投与することによりホモシステイン低下作用が得られることが記載されているが、この効果を期待するためには、上記の酵素補助因子を1日の栄養所要量を大幅に上回る用量で摂取しなければならず、副作用についての懸念があった。
【0007】
本発明は、血中ホモシステイン濃度を低下させ又は上昇を抑制するのに有効であり、かつ副作用がなくて安全に摂取できる有効成分を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、血中ホモシステイン濃度を低下させ、又は上昇を抑制する食品由来の副作用のない有効成分を見出すべく鋭意研究を重ねた結果、胡麻の生理活性成分であるセサミン類が血中ホモシステイン濃度を低下しあるいは血中ホモシステイン濃度の上昇を抑制する作用を持つことを見出し、本発明を完成した。
【0009】
すなわち、本発明は下記の内容に関する。
1. セサミン類を有効成分とする、高ホモシステイン血症改善剤。
2. 葉酸、ビタミンB6及びビタミンB12からなる群より選択されるビタミンB群のいずれか1種以上が不足又は欠乏した哺乳動物への経口投与を特徴とする、上記1に記載の高ホモシステイン血症改善剤。
3. 加齢、喫煙又は飲酒により誘発される血中ホモシステイン濃度の上昇を抑制することを特徴とする、上記1に記載の高ホモシステイン血症改善剤。
4. 成人1日の前記高ホモシステイン血症改善剤摂取量あたり、前記セサミン類を1〜200mg含有する、上記1〜3のいずれかの項に記載の高ホモシステイン血症改善剤。
5. セサミン類が、セサミン、エピセサミン又はセサミン/エピセサミン混合物である上記1〜4のいずれかの項に記載の高ホモシステイン血症改善剤。
6. 上記1〜5のいずれかの項に記載の高ホモシステイン血症改善剤を含む、飲食品。
7. セサミン類を有効成分とする、抗老化剤。
【発明の効果】
【0010】
本発明の高ホモシステイン血症改善剤は、血中ホモシステイン濃度の低下作用あるいは上昇抑制作用を有する。有効成分であるセサミン類は、長年に渡って飲食品として摂取されている安全な物質であり、中期、長期にわたって経口摂取しても安全であることは確認されているから、これらの成分を含む剤及び飲食品は、高ホモシステイン血症及びそれに関連する疾患の予防、改善及び治療に有効である。また、セサミン類を経口投与することにより、セサミン類の高ホモシステイン血症改善作用だけでなく、セサミン類のこれまで知られている生理活性も発揮することが期待できることから、有効な健康食品として提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(高ホモシステイン血症改善剤)
ホモシステイン(以下、Hcyと略す)は、含硫アミノ酸であるメチオニンからシステインへの変換過程で生じる代謝産物である。ホモシステイン(還元型)は血液中で速やかに酸化され、約98%は酸化型であるホモシスチン、ホモシステインチオラクトン、混合ジスルフィド、アルブミン等タンパク質結合型などとして存在する。臨床検査等においては、酸化型及び還元型あわせて総ホモシステイン値として測定される。一般に、空腹時の血中総Hcy濃度の正常値は5〜15μmol/L(好ましくは6μmol/L未満)とされ、高ホモシステイン血症は軽度で15〜30μmol/L、中等度で30〜100μmol/L、高度で>100μmol/Lとされている。
【0012】
本発明の高ホモシステイン血症改善剤は、上記の高ホモシステイン血症の患者(空腹時の血中総Hcy濃度が15μmol/Lを超える患者)や、正常値であってもやや高値を示す患者(空腹時の血中総Hcy濃度が6〜15μmol/Lの患者)に対し、好適に使用される。血中総Hcy濃度が14μmol/Lを超えると、アルツハイマー痴呆の発症リスクが2倍になることが報告されているから、本発明の高ホモシステイン血症改善剤は、アルツハイマー痴呆の予防剤としても有用であるといえる。
【0013】
ここで、本発明の高ホモシステイン血症改善剤を投与する対象(患者)は、ヒトのみならず、作業用家畜、猟犬、競走馬、愛玩動物、その他の動物等の哺乳動物である。
血中総Hcy濃度は、Hcy代謝に必須の酵素(メチレンテトラヒドロ葉酸還元酵素、シスタチオニン合成酵素、メチオニン合成酵素)の変異、ビタミンB群(ビタミンB6、ビタミンB12、葉酸)の欠乏、腎機能低下、加齢、性(男性)、悪性腫瘍(乳癌、卵巣癌、膵癌、急性白血病など)、乾癬、薬物(メトトレキサート、フェニトイン、カルバマゼビン、ナイアシン、テオフィリン、経口避妊薬など)の他、喫煙や飲酒など様々な原因により上昇する。本発明でいう高ホモシステイン血症改善剤とは、これら様々な原因により上昇する血中総Hcy濃度の上昇を抑制する、あるいは、上昇した血中総Hcy濃度を低下させる作用をもつものをいう。
【0014】
本発明の高ホモシステイン血症改善剤は、ビタミンB群の不足又は欠乏、喫煙、飲酒などにより軽度に上昇する血中Hcy濃度の抑制に効果的であり、特に、ビタミンB群の不足又は欠乏した哺乳動物に好適に使用される。また、本発明の高ホモシステイン血症改善剤は、薬物と併用してもその効果を発揮することが期待されることから、上記の薬物により上昇する血中Hcy濃度の抑制にも有用である。中高年において、自覚症状がない場合にもMRI診断によって25%くらいの人に無症候性脳梗塞(SBI)が発見されており、SBIと高ホモシステイン血症は正の比例をすることが報告されている。本発明の高ホモシステイン血症改善剤は、このような加齢に伴う疾患又は症状の予防又は治療剤として日常的に摂取することもできる。
【0015】
本発明の高ホモシステイン改善剤及び抗老化剤は、上記SBIの他にも高ホモシステイン血症に関連する疾患、例えば痴呆症、痴呆の主な原因疾患である、退行変性疾患(アルツハイマー型痴呆、進行性核上麻痺、パーキンソン病、汎発性レビー小体病、ピック病、ハンチントン舞踏病、ALS様症状を伴う痴呆、大脳皮質基底核変性病など)、内分泌・代謝性中毒性疾患(甲状腺機能低下症、下垂体機能低下症、ビタミンB12・B1欠乏、ペラグラ、脳リピドーシス、ミトコンドリア脳筋症、肝性脳症、肺性脳症、透析脳症、低酸素症、低血糖症、アルコール脳症、薬物中毒など)、感染症疾患(クロイツフェルト・ヤコブ病、亜急性硬化性全脳脳炎、進行性多巣性白質脳症、各種脳炎・髄膜炎、脳膿瘍、脳寄生虫、進行麻痺など)、腫瘍性疾患(原発性・続発性脳腫瘍、髄膜癌腫症など)、外傷性疾患(慢性硬膜下血腫、頭部外傷後遺症、punchdrunk症候群など)、正常圧水頭症、多発性硬化症、神経ベーチュット、サルコイドーシス、シェーグレン症候群など、骨粗鬆症、外反膝、蜘指症、知能障害、けいれん、水晶体脱臼、虹彩振盪等を予防、治療又は改善するための医薬、飲食品、特定保健用食品、医薬部外品として有用である。
【0016】
また、ホモシステインの体内への蓄積により、体内組織の老化が促進されることも報告されているから、本発明のホモシステイン血症改善剤は、体内組織の老化を予防又は改善するための抗老化剤としても有用である。
【0017】

(セサミン類)
本発明の高ホモシステイン改善剤及び抗老化剤は、セサミン類を有効成分として含有する。本発明のセサミン類とは、セサミン及びその類縁体を含む。前記のセサミン類縁体としては、エピセサミンの他、例えば特開平4−9331号公報に記載されたジオキサビシクロ〔3.3.0〕オクタン誘導体がある。セサミン類の具体例としては、セサミン、セサミノール、エピセサミノール、セサモリン等を例示できる。なかでも、セサミン、エピセサミン又はセサミンとエピセサミンの混合物が好ましく、特に、セサミンとエピセサミンとの混合物がより好ましい成分である。本発明に用いるセサミン類は、その形態や製造方法等によって、何ら制限されるものではない。例えば、セサミン類としてセサミンを選択した場合には、通常、ゴマ油から公知の方法(例えば、特開平4−9331号公報に記載された方法)によって抽出したセサミン(セサミン抽出物または濃縮物という)を用いることもできるが、市販のゴマ油(液状)をそのまま用いることもできる。しかしながら、ゴマ油を用いた場合には、セサミン含量が低い(通常、1%未満)ため、セサミンの生理作用を得るのに必要なセサミンを配合しようとすると、処方される組成物の単位投与当りの体積が大きくなり過ぎるため、摂取に不都合を生じることがある。特に、経口投与用に製剤化した場合は、製剤(錠剤、カプセルなど)が大きくなり過ぎて摂取に支障が生じる。したがって、摂取量が少なくてよいという観点からもゴマ油からのセサミン抽出物(又はセサミン濃縮物)を用いることが好ましい。なお、ゴマ油特有の風味が官能的に好ましくないと評価されることもあることから、セサミン抽出物(又はセサミン濃縮物)を公知の手段、例えば活性白土処理等により無味無臭としてもよい。
【0018】
このように、セサミン類としては、ゴマ油等の食品由来の素材から抽出及び/又は精製によりセサミン類の含有濃度を向上させて得られるセサミン類濃縮物を用いるのが好ましい。濃縮の度合いは、用いるセサミン類の種類や配合する組成物の形態により適宜設定すればよいが、通常、セサミン類が総量で1重量%以上となるように濃縮されたセサミン類濃縮物を用いるのが好ましい。セサミン類濃縮物中のセサミン類総含量は、20重量%以上がより好ましく、さらに50重量%以上が好ましく、さらにまた70重量%以上が好ましく、90重量%以上まで濃縮(精製)されたものが最適である。
【0019】
なお、セサミン類の代謝体も、本発明の効果を示す限り、本発明のセサミン類に含まれるセサミン類縁体であり、本発明に使用することができる。

(飲食品)
本発明はセサミン類をそのままの形態で、又は薬学的に許容される添加剤を配合した組成物の形態で使用してもよく、この組成物としては、血中ホモシステイン濃度を低下させ又は上昇を抑制することができる医薬用組成物(機能性食品、健康補助食品、栄養機能食品、特別用途食品、特定保健用食品等の健康食品、動物用サプリメントを含む)、飲食品、動物用飼料等、経口投与される形態のものが含まれる。本発明ではこれらを総称して飲食品という。
【0020】
本発明の飲食品は、薬理学的に許容される担体、希釈剤もしくは賦形剤等と共に、一般的な方法により目的に応じて製剤化できる。希釈剤、担体の例としては、水、エタノール、プロピレングリコール、グリセリン等の液体希釈剤、グルコース、シュークロース、デキストリン、シクロデキストリン、アラビアガム等固体希釈剤又は賦形剤を挙げることができる。また、製剤化において一般的に使用される乳化剤、緊張化剤(等張化剤)、緩衝剤、溶解補助剤、防腐剤、安定化財、抗酸化剤等を適宜配合することもできる。
【0021】
本発明の飲食品には、ホモシステイン低下作用を増強させるために、葉酸、ビタミンB6、ビタミンB12などのビタミン類などを添加してもよい。
さらに、セサミン類の効果を損なわない、すなわち、セサミン類との配合により好ましくない相互作用を生じない限り、必要に応じて、他の生理活性成分、例えば、ミネラル;ビタミンE、ビタミンC、ビタミンA、ビタミンB、葉酸等のビタミン類;栄養成分;香料;色素などの他の添加物を混合することができる。これらの添加物はいずれも医薬品、飲食品に一般的に用いられるものが使用できる。
【0022】
本発明の飲食品は、その形態は特に制限されるものではなく、例えば、粉末状、顆粒状、錠剤状などの固体状;溶液状、乳液状、分散液状等の液状;またはペースト状等の半固体状等の、任意の形態に調製することができる。具体的な剤形としては、散剤、顆粒剤、細粒剤、錠剤、丸剤、トローチ剤、カプセル剤(ソフトカプセル剤、ハートカプセル剤を含む)、チュアブル剤、溶液剤などが例示できる。
【0023】
また、慣用の飲食品材料に有効成分であるセサミン類を添加、配合して調製する形態であってもよく、例えば、ジュース、牛乳、コーヒー飲料、茶飲料等の飲料、スープ等の液状食品、ヨーグルト等のペースト状食品、ゼリー、グミ等の半固形状食品、クッキー、ガム等の固形状食品、ドレッシング、マヨネーズ等の油脂含有食品等のどのような形態でも良い。
【0024】
本発明の飲食品には、有効成分であるセサミン類を、好ましくは0.001〜5重量%、より好ましくは0.01〜3重量%、さらに好ましくは0.05〜1重量%で含有する形態として使用できる。
【0025】
本発明を飲食品は、血中ホモシステイン濃度を低下させ又は上昇を抑制することができる飲食品である。飲食品(特に、医薬用組成物)の投与量や投与形態は、対象、病態やその進行状況、その他の条件によって適宜選択すればよい。例えば、セサミン類として、セサミンを選択し、ヒト(成人)を対象に高ホモシステイン血症改善作用を得ることを目的として経口投与する場合には、一般に、セサミンを1日当たり1〜200mg、好ましくは20〜100mg、さらに好ましくは30〜100mg程度となるように、1日に1〜2回程度、週に5回以上となる割合で連続投与するとよい。
【実施例】
【0026】
本発明を以下の実施例により、さらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
実施例1.セサミン類のホモシステイン低下作用(1)
低ビタミン飼料により高ホモシステイン状態にしたラットに対する、セサミン類のホモシステイン低下作用について検証した。具体的な試験方法は以下の通りである。
【0027】
Sprague Dawley系雄性ラット(9週齢)を日本クレア社より購入し、1週間試験環境で馴化させた後、順調な発育を示した動物を試験に供した。試験開始前日にラットを各群6匹からなる2群に分け、両群ともAIN-93Gを一部改変して作製した低ビタミン飼料(ビタミンB6、B12、葉酸量を通常飼料の5分の1に調整したもの。飼料100g中の配合量は、ビタミンB6=0.12 mg、ビタミンB12=0.5μg、葉酸=0.04mg:オリエンタル酵母工業株式会社)で2日間飼育し、その後コントロール群にはオリーブ油を3 ml/Kgの用量で、セサミン群にはセサミン類(セサミン/エピセサミン混合物;セサミン:エピセサミン(重量比)=5:5)を100 mg/Kgの用量でオリーブ油に溶解し、ゾンデを用いて経口投与した。この投与を5回/週の割合で2週間行い、一晩絶食させた後採血して、血漿中ホモシステイン量(血中総ホモシステイン濃度)を測定した。ホモシステイン量の測定は、Kuo K et al.(1997) Clin. Chem. 43, 1653 に記載の方法に従って実施した。具体的には、採血後EDTA血漿を分離し、ホモシステインのチオール基を還元した後、酸により除蛋白した。中和後バッファーで希釈し、蛍光標識してHPLCにより分析した。HPLC分析には、カラム:Develosil RP AQUEOUS-AR、蛍光:Ex.385nm/Em.515nm、流速:0.8 ml/min、バッファー:0.1M KH2PO4(4%AcCN、pH2.0)を用いた。
【0028】
その結果を図1に示す。ホモシステイン濃度は、コントロール群で7.16μmol/L、セサミン類100 mg/Kg投与群では4.82μmol/Lであり、コントロール群に比べ有意にホモシステイン量が低下していた(有意水準1%)。この結果より、セサミン類がホモシステイン低下作用を持つことが明らかとなった。
【0029】
また、この実験から、セサミン類の投与は、ホモシステイン濃度が正常値でありながらやや高値を示す患者に対し、有効であることが示唆された。
実施例2.セサミン類のホモシステイン低下作用(2)
Sprague Dawley系雄性ラット(9週齢)を日本クレア社より購入し、1週間試験環境で馴化させた後、順調な発育を示した動物を試験に供した。試験開始前日にラットを各群3匹からなる2群に分け、共に実施例1で使用した低ビタミン飼料で2週間飼育し、その後コントロール群にはオリーブ油を3ml/Kgの用量で、セサミン群にはセサミン類(セサミン/エピセサミン混合物;セサミン:エピセサミン(重量比)=5:5)を20mg/Kgの用量でオリーブ油に溶解し、ゾンデを用いて経口投与した。この投与を5回/週の割合で2週間行い、一晩絶食させた後採血して、血漿中ホモシステイン量を測定した。
【0030】
その結果を図2に示す。セサミン類20mg/Kg投与群でホモシステイン量の変化は認められず、セサミン類を低用量で摂取させてもホモシステイン低下効果を示さないことが明らかとなった。
実施例3. 処方例
(製剤例1)顆粒剤
セサミン 3.0g
酢酸トコフェロール 5.0g
無水ケイ酸 20.0g
トウモロコシデンプン 172.0g
以上の粉体を均一に混合した後に10%ハイドロキシプロピルセルロース・エタノール溶液100mlを加え、常法通り練和し、押し出し、乾燥して顆粒剤を得た。この顆粒剤は1日あたり2gを服用する。
(製剤例2)カプセル剤
ゼラチン 60.0%
グリセリン 30.0%
パラオキシ安息香酸メチル 0.15%
パラオキシ安息香酸プロピル 0.51%
水 適量
上記成分からなるソフトカプセル剤皮の中に、以下に示す組成物を常法により充填し、1粒約360mgのソフトカプセルを得た。
【0031】
セサミン 10.0mg
グリセリン脂肪酸エステル 15.0mg
ミツロウ 15.0mg
小麦胚芽油 250mg
このソフトカプセルは1日あたり1粒360mgを服用する。
(製剤例3)錠剤
セサミン 30g
デンプン 252g
ショ糖脂肪酸エステル 9.0g
酸化ケイ素 9.0g
これらを混合し、単発式打錠機にて打錠して経9mm、重量300mgの錠剤を製造した。この錠剤は1日当たり2錠600mgを服用する。
(製剤例4)ドリンク剤
呈味: DL−酒石酸ナトリウム 0.1g
コハク酸 0.009g
甘味: 液糖 800g
酸味: クエン酸 12g
ビタミン:ビタミンC 10g
セサミン 1g
ビタミンE 30g
シクロデキストリン 5g
香料 15mL
塩化カリウム 1g
硫酸マグネシウム 0.5g
上記成分を配合し、水を加えて10リットルとした。このドリンク剤は、1回あたり約200mLを飲用する。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明の組成物、飲食品、飼料は優れたホモシステイン低下作用、特に、高ホモシステイン血症改善作用を示す。したがって、ホモシステインが関与していると言われている疾患、例えば、動脈硬化、心筋梗塞、脳梗塞、虚血性心疾患、循環機能不全、末梢血管障害、アルツハイマー病、その他血管に起因する症状等の予防、改善又は治療に有用であることが期待されている。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】セサミン類100mg/Kg摂取のホモシステイン低下効果を示す図である。
【図2】セサミン類20mg/Kg摂取のホモシステイン低下効果を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セサミン類を有効成分とする、高ホモシステイン血症改善剤。
【請求項2】
葉酸、ビタミンB6及びビタミンB12からなる群より選択されるビタミンB群のいずれか1種以上が不足又は欠乏した哺乳動物への経口投与を特徴とする、請求項1に記載の高ホモシステイン血症改善剤。
【請求項3】
加齢、喫煙又は飲酒により誘発される血中ホモシステイン濃度の上昇を抑制することを特徴とする、請求項1に記載の高ホモシステイン血症改善剤。
【請求項4】
成人1日の前記高ホモシステイン血症改善剤摂取量あたり、前記セサミン類を1〜200 mg含有する、請求項1〜3のいずれかの項に記載の高ホモシステイン血症改善剤。
【請求項5】
セサミン類が、セサミン、エピセサミン又はセサミン/エピセサミン混合物である請求項1〜4のいずれかの項に記載の高ホモシステイン血症改善剤。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかの項に記載の高ホモシステイン血症改善剤を含む、飲食品。
【請求項7】
セサミン類を有効成分とする、抗老化剤。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−155278(P2009−155278A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−336118(P2007−336118)
【出願日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【出願人】(309007911)サントリーホールディングス株式会社 (307)
【Fターム(参考)】