説明

高免疫抑制活性の水溶性トリプトリド誘導体及びその応用

本発明は免疫抑制活性を有する水溶性トリプトリド(triptolide)誘導体(それらの構造式はそれぞれ下記化28式、化29式、化30式、化31式で示され、式中、R及びRの定義は明細書を参考する)、下記化28式、化29式、化30式、化31式の製造方法及びそれらの化合物を含む免疫抑制剤又は抗炎剤を提供する。
【化28】


【化29】


【化30】


【化31】


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬物化学分野に関する。更に具体的に、本発明は、高免疫抑制活性を有する水溶性トリプトリド(Triptolide)誘導体、その製造方法、及びそれらの誘導体が免疫抑制に関する病気の治療に用いられる用途に関する。
【背景技術】
【0002】
免疫抑制因子は、慢性関節リウマチ、喘息、系統性紅斑狼瘡(SLE)、鱗屑癬、多重硬皮症、動脈粥状硬化、腎炎、I−型糖尿病などの能動免疫欠乏病、及び免疫に関する炎症に、広く使われている。今、免疫抑制因子も、臓器移植後の同種拒絶を解決するための最も有効な手段である。最もよく使われる免疫抑制因子はアザチオブリン(azathyopurine)、コルチコステロイド(corticosterroids)、メトトレクセエイト(methotrexate)、サイクロホスファミド(cyclophospamide)、6−メルカプトプリン(6-mercaptopurine)、ビンクリスチン(vincristine)、セレブロックス(celebrox)、シクロスポリンA(cyclosporine A)、FK506などがある。しかし、これらの薬物はすべて完全に有効ではないし、大多数がわりに高い毒性が伴う。
【0003】
免疫抑制の活性は免疫系統のT、B細胞によく関連していることが分かる。T、B細胞は多種細胞因子を分泌・産生する。細胞因子ごとにその特定の生理機能を有し、そこで、その反映した医療領域は全く同じではない。ある種類の化合物のT、B細胞に対する抑制活性のみから、その化合物の免疫抑制活性の高低を判断することが十分ではない。反って、現在では、T、B細胞に対する抑制活性の測定は、当該化合物の細胞に対する毒性を検出するための指標としてよく用いられている。例えば、サイクロホスファミドとシクロスポリンAに対して、いずれも免疫抑制因子であるが、それぞれ抑制された免疫因子は違う。シクロスポリンAは、主にインターロイキンII(IL−2)を抑制するが、インターロイキンI(IL−I)に対する抑制作用が極めて弱く、その主要な臨床応用が臓器移植後の同種拒絶を防止することである。そして、サイクロホスファミドは、IL−IIに対する抑制作用が比較的に弱いが、IL−Iに対してより強い抑制作用があって、主にリューマチ性関節炎のような免疫抑制に関係がある炎症に用いられる。現在、発見した細胞因子は数十種類に達するが、大多数の細胞因子の生理機能は依然としてよく知らない。しかしIL―1、IL―2、IL−6、TNF、iNOSなどの細胞因子について、それらの免疫調節に関する生理機能及び治療分野との関連性は、既に比較的に明瞭である。そのため、動物試験をする前に、化合物についてこれらの細胞因子の作用に対して研究を行うことができ、以後の動物試験の目標と実験方案の制定に指導的な意義がある。
【0004】
中国の薬用植物であるクロヅルはすでにとても強い免疫抑制活性を持つことが証明された。その粗抽出物(例えば、市販のトリプテリジウムグリコシド(tripterygium glycosides)錠剤)は、すでに臨床に慢性関節リューマチ、喘息、系統性紅斑狼瘡(SLE)、鱗屑癬などの能動免疫欠乏病を治療することに用いられている。クロヅルから抽出された化合物であるトリプトリド(triptolide)を用いて臓器移植後の同種拒絶を防止することを研究したところ、トリプトリドの活性がシクロスポリンAに近いことが認められた。クロヅル植物の著しい免疫抑制活性は国内外の関連実験室の注意を引き起こし、そして多方面の研究を行った。その研究領域が以下の方面に関連する:
【0005】
1.クロヅル植物から有効な免疫調節化合物を分離・精製している。今まですでにクロヅル植物から100種類以上の化合物を分離された。例えば、トリプトリド(triptolide)、16−ヒドロキシトリプトリド、トリプトヘノリド(triptophenolide)、トリプトジオリド(tripdiolide)、トリプクロロリド(tripchlorolide)などの化合物。その中でも、トリプトリドの免疫調節と抗腫瘍活性に対する研究がわりに多い。トリプトリドの免疫抑制活性が最高で、植物の中の含有量は比較的に高くて、構造に修飾を行うことができる位置はわりに多いため、比較的に広範な研究が行なわれた。
【0006】
2.高免疫抑制活性のトリプトリドに対して、化学構造の修飾を行って、リードコンパウンド(lead compound)であるトリプトリドの毒性を下げる。この方面の研究仕事をめぐって次の通りの特許と文献をすでに発表した:特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4、特許文献5、特許文献6、特許文献7、及び特許文献8。
【0007】
3.天然産物であるトリプトリドの化学デノボシンテシース(Chemical total synthesis):非特許文献1。
【0008】
4.細胞培養法で、天然産物のトリプトリドを生産する:特許文献9。
【0009】
トリプトリドの免疫抑制活性がかなり高いが、次の通りの欠点がその臨床応用を制限した:1.毒性は高くて、そのLD50は0.85mg/kg体重であり、そして生殖毒性がある。2.水溶性は低くて、静脈(iV)注射を行うことができない。3.細胞膜の透過性(permeability)が低くて(出願人はまだ実験結果を発表していない)、経口効果がよくない。
【0010】
これらの問題をめぐって、いくつかの実験室はトリプトリドの化学構造の修飾に対して一連の仕事をした。その中で、特許文献4の14―無水琥珀酸トリプトリドは水に対する溶解性が高い。特許文献1の8−ヒドロキシトリプトリドと、特許文献10の12―チオシアノトリプトリド(thiocyano-triptolide)は元の化合物活性を保つと共に、リードコンパウンドであるトリプトリドの毒性を下げるのに、成功を取る。その中で、12―チオシアノトリプトリドLD50は74mg/kg体重で、その毒性はリードコンパウンドであるトリプトリドLD50(0.85mg/kg体重)に比べて約87倍下がった。しかしこれらの、トリプトリドから誘導された類似体の水溶性が依然として低くて、細胞膜の透過性も低い。
【0011】
特許文献11はいくつかの水溶性トリプトリド誘導体の情報を提供した。特許文献1は水溶性トリプトリド誘導体をいくつか提供したが、これらの水溶性のトリプトリド誘導体の免疫抑制活性の実験データを提供していない。現在、発表された資料の中で優れた水溶性、かつ高免疫抑制活性を有する水溶性のトリプトリド誘導体の中で特許文献4に開示されている14―無水琥珀酸トリプトリドは好ましい。それの抗腫瘍と臓器移植に対する応用は特許文献12と非特許文献2に開示されている。
【0012】
【特許文献1】米国特許第6150539号明細書
【特許文献2】米国特許第6004999号明細書
【特許文献3】米国特許第5972998号明細書
【特許文献4】米国特許第5962516号明細書
【特許文献5】米国特許第5663335号明細書
【特許文献6】国際特許出願第WO00/12483号
【特許文献7】中国特許第1027371C号明細書
【特許文献8】ZL特許第89106941.0号明細書
【特許文献9】米国特許第4328309号明細書
【特許文献10】国際特許出願第WO 00/632121号
【特許文献11】国際特許出願WO02/28862号
【特許文献12】米国特許第6329148号明細書
【非特許文献1】Yang Dなど:有機化学(J.Org.Chem.)2000 Apr.7;65(7):2208−17。
【非特許文献2】移植(Transplantation)、2000 Nov.27;70(10):1442―7
【非特許文献3】The use of a standardized adjuvant arthritis assay to differentiate between anti−inflammatory and immunosuppressive agents. Proc Soc Exp Biol Med.1971,137:506−512.
【非特許文献4】Am J Anat.1963:273−278
【発明の開示】
【0013】
本発明の第―発明は、3種類の水溶性と免疫抑制活性を有する新規なトリプトリド誘導体を提供した。それらの構造は以下の通りである。
【0014】
第I種類のトリプトリド誘導体は、下記化9式によって示される。
【0015】
【化9】

【0016】
(式中、RはH、下記化10式で示されるホスファート、或いは下記化11式で示されるホスフィットである。本発明の第I種類の化合物の中に、Rは下記化12式で示されるホスファートで、XとXはNaであるものが好ましい。)
【0017】
【化10】

【化11】

【化12】

【0018】
第II種類のトリプトリド誘導体は、下記化13式で示される。
【0019】
【化13】

【0020】
(式中、RはH、炭素数1〜4のアルキル基、−AC又は−C(=O)(CHCO(ただし、nは1〜4の整数)、或いは下記化14式で示されるホスファート、或いは下記化15式で示されるホスフィットである。XとXはNa、K、又はNHである。RはH、−SCN又は−Cl(−Br)である。)
【0021】
【化14】

【化15】

【0022】
本発明の第II種類の化合物の中に、Rは下記化16式で示されるホスファートと無水琥珀酸[−C(=O)(CHCO]で、XとXはNaで、Rは―SCNであるものが好ましい。
【0023】
【化16】

【0024】
第III種類のトリプトリド誘導体は、下記化17式或いは下記化18式で示される。
【0025】
【化17】


【化18】

(式中、RはH、−SCN、−Cl又は−Brである。)
【0026】
本発明の又の1つの目的は、これらの高水溶性のあるトリプトリドの新規な誘導体の合成方法を提供することにある。具体的に、以下のリードコンパウンドから、前記の3種類の水溶性トリプトリド誘導体を製造する方法(具体的に、実施例1〜7を参照)である。
【0027】
第1種類のリードコンパウンドは次の化19式で示されるトリプトリドであり、
特許文献4に、トリプトリドから14−無水琥珀酸トリプトリド及びそのナトリウム塩の製造方法が開示されているが、本発明のホスホリル化によって製造するトリプトリド−14−β↓リン酸ジナトリウムは、より高水溶性を有する。
【0028】
【化19】

【0029】
第2種類のリードコンパウンドは、下記化20式で示される12−β−チオシアノ−13−α−ヒドロキシトリプトリド(12-β-thiocynao-α-hydroxy triptolide)である。
【0030】
【化20】

【0031】
本発明の又の1つの目的は、これらの高水溶性のあるトリプトリドの新規な誘導体の免疫抑制活性に関する分子生物学証拠(実施例8,9)を提供することにある。これらのトリプトリドの新規な誘導体は、IL−1、IL−2、IL−6、iNOSなどの細胞因子の産生を著しく抑制すると共に、Cox−2の産生を著しく抑制している。
【0032】
本発明のもう1つの目的は、これらの高水溶性のあるトリプトリドの新規な誘導体の低毒性の動物実験証拠(実施例10)を提供することにある。本発明のT−SCNから製造された水溶性トリプトリド誘導体の毒性は、著しく低下し、例えば、12−β−チオシアノトリプトリド−13−β−14−α−リン酸ナトリウムのLD50が126mg/kg体重、その毒性はトリプトリドのLD50(0.85mg/kg体重)に比べて、非常に低くて、またその免疫抑制活性もかなり高い。
【0033】
本発明のもう1つの目的は、これらの高水溶性のあるトリプトリドの新規な誘導体が能動免疫欠乏病の治療に用いられる動物実験証拠(実施例11)を提供することにある。例えば、DNCによるマウス遅延過敏症の影響実験(実施例11)とラット綿球肉芽腫法抗炎試験(実施例12)で、WDY系のトリプトリドの新規な誘導体が全て著しい免疫抑制活性と抗炎活性を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下に、実施例を挙げて本発明を詳しく説明する。
【0035】
(実施例1)
次の化21式で示される12−β−チオシアノトリプトリド−13−α−14−β−リン酸ナトリウム(以下、WDY1と略称する)の製造。
【0036】
【化21】

【0037】
窒素雰囲気で三口フラスコ(three-necked bottle)の中にT−SCN(0.600mmol)251mgを入れて、更にピリジン20ml、POCl(3.000mmol)0.28mlを添加し、最後に40mgのDMAPを入れて、密封して、室温で24時間反応した後、氷浴で冷却・加水分解して、pHが8になるように調節した。乾くまで減圧・濃縮して、アセトニトリルでそれを溶解して、無機塩を除去した。TLCにより検出した(展開剤はn−ブチルアルコール:水:氷酢酸=10:1:1であり、主なスポットは産物であるWDY 1のスポットであり、さらに極めて少量のT−SCNと他の副産物が認められた)。アセトニトリルで溶解して、75〜300メッシュのシリカゲル2gを入れて、アセトニトリルを全部除去した後、溶出剤としてのn−ブチルアルコール:水(20:1)で75〜300メッシュのシリカゲルカラムクロマトグラフィにより分離を行って、TLCにより追従検出して、産物スポットを収集し、併合して、溶媒を減圧で蒸発・除去し、少量溶媒を入れてエーテルで沈殿し、1時間静置した後、ろ過することにより、粉状の固形成分がえられた。えられたものを乾燥ガン(drying pistol)で乾燥することにより、イールド(yield)が75%であり、水溶解度は100mg/mlより大きくて、Rf値が0.24(展開剤はn−ブチルアルコール:水:氷酢酸=10:1:1である)であり、赤紫色を表示した(呈色試薬はKedd’s試薬である)。
【0038】
MS ESI+ m/z:C2123NSOPNa計算値:504.0858,測定値:504.0857。
【0039】
MS ESI− m/z:C2123NSOP計算値:480.0877,測定値:480.0888。
【0040】
IR(KBr)cm−1:3417,2938,2156,1749,1674,1247,1109,1000。
【0041】
HNMR,δppm:0.84(3H,s,18−CH),1.01(3H,d,J=6Hz,16−CH),1.04(3H,s,17−CH),1.34(1H,m,1−αH),1.46(1H,m,1−βH),1.80(1m,t,J=14.4Hz,6−βH),1.94(1H,m,2−H),2.13(1H,m,2−H),2.20(1H,m,6−αH),2.35(1H,m,15−H),3.09(1H,m,5−H),3.51(1H,br,7−H),3.71(1H,s,12−H),4.25(1H,br,11−H),4.61(1H,br,14−H),4.85(2H,dd,J=36Hz,J=17.2Hz,19−H);
13CNMR,δppm:15.4(18−C),17(2−C),19.2(16−C),20(17−C),21.8(6−C),29.5(1−C),32.7(15−C),35.0(10−C),39(5−C),55.7(11−C),56.0,56.2(8−C),56.7(7−C),62.5(12−C),66.0(9−C),70.8(19−C),77.5(14−C),83.7(13−C),112(SCN),123(3−C),163(4−C),173.6(20−C)。
【0042】
31PNMR,δppm:4.57.
【0043】
(実施例2)
下記化22式で示される12−β−チオシアノ−13−α−ヒドロキシトリプトリド−14−β−ブタンジオイン酸モノエステル(Preparation of 12-β-thiocyano-13-α-hydroxy triptolide-14-β-mono-succinate)(以下、WDY6と略称する)の製造。
【0044】
【化22】

【0045】
室温で、50mlの三口フラスコの中に12−β−チオシアノ−13−α−14−β−ヒドロキシトリプトリド(T−SCN)(0.191mmol)80mg、ピリジン8mlを入れて、DMF4mlとDMAP24mgを添加し、最後に無水ブタンジオイン酸3.2g(3.820mmol)を添加し、密封・攪拌し1週間反応した後、反応液を氷水に注いで、ジクロロメタンで数回抽出し、ジクロロメタンを併合し、TLCにより検出した(展開剤はクロロホルム:メタノール=10:1であり、主なスポットはWDY6であり、極めて少量の反応していない12−β−チオシアノ−13−α−14−β−ヒドロキシトリプトリドが認められた)。減圧・濃縮し、溶媒を全部蒸発して、Hシリカゲルを使って、クロロホルム:メタノール(14:1)を溶出剤とするカラムクロマトグラフィにより純標題物が得られた。イールドが90%であり、Rfが0.30である。融点が127〜129℃である。水溶解度は30mg/mlより大きい。
【0046】
元素分析:C2529SNO、計算値%:C、57.79。H、5.63。N、2.70。実測値%:C、57.66。H、5.91。N、3.05。
【0047】
IR:3435,2970,2152,1745,1673,1157,1022,993。
【0048】
HNMR,δppm:0.79(3H,d,J=6.4Hz,16−CH),0.89(3H,s,18−CH),0.97(3H,d,J=6.4Hz,17−CH),1.29(1H,m,1−αH),1.44(1H,m,1−βH),1.83(1m,t,J=14.4Hz,6−βH),1.95(1H,m,15−H),1.99(1H,m,2−H),2.15(1H,m,2−H),2.23(1H,m,6−αH),2.46〜2.51(4H,−CHCH−),2.69(1H,m,5−H),3.52(1H,d,J=6.4Hz,7−H),3.96(1H,d,J=5.2Hz,12−H),4.03(1H,d,J=6.03Hz,11−H),4.53(1H,s,14−H),4.84(2H,dd,J=42Hz,J=18.4Hz,19−H);5.53(1H,s,13−OH),12(1H,br,−COOH)。
【0049】
13CNMR,δppm:14.3(18−C),15.7(17−C),16.3(16−C),16.8(2−C),22.2(6−C),28.8〜28.9(−CHCH−),29.4(15−C),30.1(1−C),35.2(10−C),39.5(5−C),50.9(12−C),57.7(11−C),59.0(8−C),62.1(7−C),67.1(9−C),70.6(19−C),74.2(14−C),75.6(13−C),114.0(SCN),123.5(3−C),162.2(4−C),170.8(−CO−),173.38〜173.43(−COOH,20−C)。
【0050】
(実施例3)
下記化23式で示されるトリプトリド−14−β−リン酸ジナトリウム(triptolide-14-β-phosphate disodium)(以下、WDY7と略称する)の製造
【0051】
【化23】

【0052】
窒素雰囲気で三口フラスコの中にT(0.500mmol)180mg、ピリジン10mlを入れて、POCl3(1.50mmol)0.14mlをゆっくり滴下し、それから、密封し2〜3時間反応し、氷浴で冷却・加水分解して、炭酸水素ナトリウムでpH=9に調節して、乾くまで減圧・濃縮して、メタノールでそれを溶解して、無機塩を除去した。TLCにより検出した(展開剤はn−ブチルアルコール:水:氷酢酸=4:1:1であり、主なスポットがWDY7であり、極めて少量のTと他の副産物が認められた)。n−ブチルアルコール:水(15:2)を溶出剤とするシリカゲルカラムクロマトグラフィにより分離を行った。TLCにより検出しながらWDY 7を併合し、乾くまで減圧・濃縮して、テトラヒドロフランで溶解し、エーテルで沈殿することにより、純標題物167mgが得られ、イールドが75%であり、Rf値が0.32であり、水溶解度は100mg/mlより大きい。
【0053】
MS:ESI+ m/z:C2024PNa2計算値:485.0956,測定値:485.0953。
【0054】
IR(KBr)cm−1:3424,2971,2935,2878,1748,1671,1445,1226,1118,1035,975.
HNMR;δppm:0.70(3H,d,J=7.2Hz,16−CH),0.88(3H,d,J=6.8Hz,17−CH),0.96(3H,s,18−CH),1.25(1H,m,1−αH),1.30(1H,m,1−βH),1.82(1H,t,J=13.8Hz,6−βH),1.96(1H,m,2−H),2.08(1H,m,2−H),2.13(1H,m,6−αH),2.21(1H,m,15−H),2.55(1H,m,5−H),3.36(1H,m,7−H),3.83(1H,m,11−H),4.11(1H,d,J=11.6Hz,14−H),0.83(2H,dd,J=35.0Hz,J=17.4Hz,19−H)。
【0055】
13CNMR,δppm:14.4(18−C),17.1(2−C),17.5(16−C),18.0(17−C),23.1(6−C),26.0(15−C),29.7(1−C),35.7(10−C),40.3(5−C),54.7(12−C),55.5(11−C),60.8(7−C),71.0(19−C),75(14−C),123.8(3−C),163.2(4−C),174.1(20−C),61.1,64.2,65.2,65.3(8−C,9−C,13−C)。
【0056】
(実施例4)
化24式で示されるトリプトリド−14−β−亜リン酸ナトリウム(triptolide-14-β-phosphite sodium)(以下、WDY4と略称する)の製造。
【0057】
【化24】

【0058】
窒素雰囲気で25mlの三口フラスコの中にT(0.556mmol)200mgとピリジン20mlを入れてから、PCl3(1.149mmol)0.10mlをゆっくり滴下し、それから、窒素の通気を停止し、密封し1時間反応し、反応フラスコを氷浴で冷却して、反応液に飽和炭酸水素ナトリウムをゆっくり添加し、加水分解してpH=8に調節した。溶媒を減圧で全部蒸発した後、クロロホルム/メタノール(5/2)を入れて溶解し、無機塩を除去した。TLCにより検出した(展開剤はn−ブチルアルコール:水:氷酢酸=4:1:1であり、主なスポットはWDY4であり、極めて少量の他の副産物が認められた)。Hシリカゲル22gでクロロホルム:メタノール(5:2)を溶出剤とするカラムクロマトグラフィにより分離を行った。TLCにより検出しながら、目的物を併合し、溶媒を減圧で蒸発・除去して、そして、少量の溶出液で溶解してから、エーテルで沈殿し、純標題物70mgがえられた。イールドが50%であり、Rf値が0.46で、呈色試薬であるKedd’s試薬により、赤紫色を表示した。水溶解度は100mg/mlより大きい。
【0059】
IR(KBr)cm−1:3424,2965,2365,1750,1627,1226,1028,972。
【0060】
HNMR,δppm:0.74(3H,d,J=7.2Hz,16−CH),0.90(3H,d,J=6.8Hz,17−CH),0.94(3H,s,18−CH),1.25(1H,m,1−αH),1.32(1H,m,1−βH),1.80(1H,t,J=14.2Hz,6−βH),1.94(1H,m,2−H),2.10(1H,m,2−H),2.20(1H,m,6−αH),2.33(1H,m,15−H),2.59(1H,m,5−H),3.29(1H,m,7−H),3.52(1H,d,J=3.2Hz,11−H),3.82(1H,d,J=3.2Hz,12−H),4.03(1H,d,J=12.4Hz,14−H),4.83(2H,m,19−H),6.7(1H,d,J=595.6Hz,P−H)。
【0061】
13CNMR,δppm:13.9(18−C),16.7(2−C),17.0(16−C),17.5(17−C),22.8(6−C),26.3(15−C),29.2(1−C),35.3(10−C),40.1(5−C),54.3(12−C),54.9(11−C),60.4(7−C),70.3(19−C),73.(C−14,d,J=22.8Hz),123.2(3−C),162.5(4−C),173.2(20−C),63.5,64.5,64.6(8−C,9−C,13−C)。
【0062】
31PNMR,δppm:1.34(d,JP−H=599Hz)。
【0063】
(実施例5)
化25式で示される12−β−クロロトリプトリド−13−α−14−β−リン酸ナトリウム(12-β-chlorotriptolide-13-α-14-β-phosphate sodium)(以下、WDY2と略称する)の製造。
【0064】
【化25】

【0065】
窒素雰囲気で三口フラスコの中にT(0.3mmol)108mgと、ピリジン30mlと、DMAP39mgとを入れてから、POCl(16.37mmol)1.5mlを滴下し、それから、窒素の通気を停止し、密封し室温で24時間反応して、氷浴で冷却・加水分解して、飽和炭酸水素ナトリウムでpH=8に調節して、乾くまで減圧・濃縮して、テトラヒドロフランでそれを溶解して、無機塩を除去した。TLCにより検出した(展開剤はn−ブチルアルコール:水:氷酢酸=10:1:1であり、主なスポットがWDY2であり、極めて少量のTと他の副産物が認められた)。得られたものを、n−ブチルアルコール:水(15:2)を溶出剤とするシリカゲルカラムクロマトグラフィにより分離した。TLCにより検出しながら、WDY2を併合し、濃縮・蒸発乾涸して、少量テトラヒドロフランで溶解しエーテルで沈殿することによって、純標題物115.2mgが得られた。イールドが80%であり、Rf値が0.33であり、呈色試薬であるKedd’s試薬により、赤紫色を表示した。水溶解度は100mg/mlより大きい。
【0066】
元素分析:C2023ClPNa、計算値%:C49.96、H4.82、実測値%:C49.75、H4.43。
【0067】
IR(KBr)cm−1:3428,2930,1741,1634,1244,1023,582
HNMR,δppm:0.78(3H,d,J=6.8Hz,16−CH),0.96(3H,d,J=6.8Hz,17−CH),1.0(3H,s,18−CH3),1.36(1H,m,1−αH),1.38(1H,m,1−βH),1.89(1H,m,6−βH),2.06(1H,m,2−H),2.16(1H,m,15−H),2.21(1H,m,2−H),2.39(1H,m,6−αH),3.05(1H,d,J=12.8Hz,5−H),3.54(1H,d,J=2.4Hz,12−H),3.86(1H,d,J=2.8Hz,11−H),4.44(1H,s,14−H),4.63(1H,s,7−H),4.83(2H,m,19−H)。
【0068】
13CNMR,δppm:15.0(18−C),16.8(16−C),17.6(2−C),18.0(17−C),28.5(6−C),28.9(15−C),29.9(1−C),37.0(10−C),37.5(5−C),53.4(12−C),57.8(11−C),63.7(7−C),70.7(19−C),74.6(14−C),124.0(3−C),163.3(4−C),173.5(20−C),61.8,61.9,62.9,81.4(8−C,9−C,13−C)。
【0069】
31PNMR,δppm:2.96。
【0070】
(実施例6)
下記化26式で示される12−β−チオシアノ−13−α−ヒドロキシトリプトリド−14−β−リン酸ジナトリウム(12-β-thiocyano-13-α-hydroxy triptolide-14-β-phosphate disodium)(以下、WDY3と略称する)の製造。
【0071】
【化26】

【0072】
窒素雰囲気で三口フラスコの中にT−SCN(0.100mmol)41.9mgを入れて、次にピリジン5ml、DMAP8mgを添加し、最後にPCl(0.200mmol)0.018mlを入れて、密封し室温で反応して、p−メトキシベンザルコール(0.520mmol)0.065mlを入れて、室温で10分間反応した後、30%のH0.200mlを入れ、室温で半時間反応した後、氷浴で冷却し飽和炭酸水素ナトリウムを入れ、加水分解する。乾くまで減圧・濃縮して、酢酸エチルでそれを溶解して、無機塩を除去して、飽和塩化ナトリウム水溶液で数回洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、乾くまで減圧・濃縮して、アセトニトリルで溶解しプラスチック試験管の中に転移して、そしてHF(48%)0.300mlを入れて72時間反応させ、TLCにより検出した(展開剤はn−ブチルアルコール:水:氷酢酸=4:1:1であり、主なスポットは産物スポットであり、極めて少量のT−SCNと他の副産物が認められた)。アセトニトリルで溶解し75〜300メッシュのシリカゲル2gと撹拌してからアセトニトリルを全部除去した後、n−ブチルアルコール:水(15:2)を溶出剤とするシリカゲルカラムクロマトグラフィ(75〜300メッシュ)により分離を行って、TLCにより追従検出しながら、産物スポットを収集し、併合し、溶媒を減圧で蒸発・除去し、少量溶媒を入れてエーテルで沈殿し、1時間静置した後、ろ過して粉状の固形成分が得られ、得られたものを乾燥ガンで乾燥した。Rf値が0.24であり(n−ブチルアルコール/水/氷酢酸=4:1:1)、呈色試薬であるKedd’s試薬により、赤紫色を表示した。水溶解度は100mg/mlより大きい。
【0073】
(実施例7)
下記化27式で示される12−β−チオシアノトリプトリド−13−α−ヒドロキシ−14−β−亜リン酸ナトリウムと12−β−チオシアノトリプトリド−14−β−ヒドロキシ−13−α−亜リン酸ナトリウム(12-β-thiocyano-13-α-hydroxy triptolide-14-β-phosphite sodium and 12-β-thiocyano-14-β-hydroxy triptolide-13-α-phosphite sodium)(以下、WDY5と略称する)の製造。
【0074】
【化27】

【0075】
三口フラスコの中にT−SCN(0.191mmol)80mgを入れて、次にピリジン8mlを入れて攪拌しながら溶解した後、無水酢酸を入れて、密封し室温で1週間反応して、そして40℃で10時間反応した後、反応液を氷水に注いで、ジクロロメタンで三回抽出し、ジクロロメタンを併合し、飽和NaHCOで三回洗浄し、そして飽和NaCl水溶液で中性まで洗浄し、最後に無水NaSOで24時間乾燥して、減圧で蒸留・濃縮し溶媒を除去することにより粗品が得られた。TLCにより検出した(展開剤はクロロホルム:メタノール=10:1であり、主なスポットはアセチル化されたT−SCNであり、また少量のT−SCNが認められた)。産物スポットを併合してアセトンで溶解し、シリカゲル0.5gと攪拌してからアセトニトリルを全部除去した後、クロロホルム:メタノール(15:1)を溶出剤とするシリカゲルカラムクロマトグラフィにより分離を行った。TLCにより検出しながら、アセチルT−SCN画分を収集し、70mgが得られた。窒素雰囲気の三口フラスコの中に、アセチル化されたT−SCN 70mgをピリジン2mlに溶解して、そしてPCl0.1mlを入れて、密封し室温で30分間反応した後、氷水で冷却し加水分解し、ジクロロメタンを40ml入れ、水で二回洗浄し、水相のもの60mlを併合し、TLC(展開剤はn−ブチルアルコール:水:氷酢酸=4:1:1である)により検出した結果は、基本的に不純物はないことである。前記60mlの水溶液に飽和NaCO水溶液40mlを入れて、室温で18時間加水分解して、希HSOでPH=7になるように中和して、水を減圧蒸留で除去し、アルコールで脱塩して、TLC(展開剤はn−ブチルアルコール:水:氷酢酸=10:1:1である)により検出した結果は、産物スポットが著しいがわりに多い不純物点もあることである。クロロホルム:メタノール(4:1)を溶出剤とするシリカゲルカラムクロマトグラフィにより分離を行ってWDY5が得られた。Rf値が0.54である。産物の水溶解度は100mg/mlより大きい。
【0076】
(実施例8)
IL―1、IL―2、IL−6及びiNOSの細胞因子に対するWDY系化合物の作用についての説明。
【0077】
細胞因子、プロスタグランジン類、及び亜酸化窒素のいずれも、免疫系の重要な媒質であり、かつ多くの能動免疫欠乏病と炎症病気に関連する組織と細胞の中に発現されている。薬物がそれらの炎症媒質の産生を抑制することを研究するために、リアルタイム逆転写ポリメラーゼチェーンリアクション(PCR)により定量的にIL−1、IL−2、IL−6及びiNOSのmRNA発現レベルを検出したが、それらの炎症因子は、LPS或いはPHAがラットの脾臓リンパ球を刺激することにより、誘導産生された。シクロスポリンAとWDY4が完全的にLPS或いはPHAにより誘導されたIL−2mRNAの発現を抑制した(図1)が、WDY4も完全的にIL−6とiNOSのmRNAの発現を抑制した(図2)。しかし、シクロスポリンAはこれらの二種類の因子に対する作用がわりに弱い。WDY1とWDY6の免疫抑制活性はとても良い。また、動物試験結果から、この二種類の化合物は、毒性がとても低いことが分かる。本発明及びその誘導体が能動免疫欠乏病と炎症病気の治療に有効であることは証明された。
【0078】
(実験方法)
常法に従って、Lewizラットから脾臓細胞を取得して、これを6穴の培養板に接種して、細胞密度が1×106/mlである。培養細胞内に適宜な濃度の化合物を入れて、37℃で15分間予培養しLPS(Sigma産品)1μg/ml或いはPHA(Sigma産品)1μg/mlを入れて、37℃で5%のCO2条件下で2時間培養して、Qiagen社制のRNA製造キットで脾臓細胞の総RNAを抽出した。
【0079】
メーカー(Perkin Elmer applied Biosystems)の提供したABI TaqMan検出キット解説に基づき、RT−PCR実験を行った。デオキシヌクレオチド混合物2mM、DTT100mM、RNase抑制剤40単位、ランダムプライマー50ng、Thermoscriptリバーストランスクリプターゼ15単位を含んでいる反応系の中に、脾臓細胞mRNA(1μg)を相補的なDNA(cDNA)に逆転写し、反応条件は25℃、10分間、48℃、45分間、は90℃、5分間で、その後に、4℃に冷却した。TaqMan PCR技術によりABI7700シーケンス検出器にIL−1、IL−2、IL−6、iNOS及びサイクロフィリン(cyclophilin)の発現レベルを測定した。その反応系は、1× TaqMan Universal Master Mix、900nMの順方向(上流側)と逆方向(下流側)プライマー、200nM、TaqManプローブ、50nMのプライマー及びプローブを含み、熱サイクル条件は、95℃、15分間、60℃、1分間で、全部で40サイクルを行った。相関正規曲線で目標mRNAとサイクロフィリンのmRNAの発現収量を算出した。結果を図1と図2に示す。
【0080】
(実施例9)
PGE酵素活性法で本発明のCOX−2に対する抑制作用について説明する。
【0081】
Cayman社制のPGEEIAキットを用いて、本発明のWDYsがCOX−2の触媒作用によりアラキドン酸からPGEを産生するということに対する影響を検討した。仔牛血清(fetal calf serum)10%と適量のペニシリン、ストレプトマイシンを含んでいるRPMI 1640培養液に適宜密度のHT−29人結腸癌細胞を接種して、翌日に細胞が壁に貼ってから、新たな培養液に変えて本発明(WDY4とWDY7、10μg/ml)を入れて、インドメタシン(100μg/ml)を陽性対照として、薬物を含んでいないものを陰性対照とした。薬物が24時間作用した後、古い培養液を捨てて、PBSで二回洗濯して、アラキドン酸(AA)40μMを含んでいる無血清培地1mlを入れて、37℃で30分間作用し、上清液を収集して、キットの取り扱い解説に従って誘導化を行って夜を越して、且つPGEの産生量を検出・計算し、結果を図3に示す。
【0082】
(実施例10)
WDY1静脈注射のLD50の結果について説明する。
【0083】
水でWDY1を調製して、五つの用量群(150、135、122、109、98mg/kg体重)を設けて、群ごとに10匹の昆明種マウス(動物合格証明番号:川実動管第99−30号)、雌と雄が別々半分であり、尾静脈注射(iv)した。下記表1に示す結果は、WDY1の短期毒性のLD50が126mg/kg体重である。
【0084】
【表1】

【0085】
(実施例11)
WDYのDNCによるマウス遅延型過敏反応に対する影響について説明する。
【0086】
原理:ジニトロフルオロベンゼン(dinitrofluorobenzene、DNCB)をハプテンとして、その溶液を腹壁皮膚に塗布した後、皮膚蛋白質と結合し全抗原になって、これによって、TLCを刺激し感作リンパ球に増殖した。4〜7日後に、これを再び皮膚に塗布し、局部に遅延型アレルギー(水腫)を起こさせ、一般的に、抗原が侵襲した後の24〜48時間にピークに達するために、この時に局部腫脹を測定した。
【0087】
評価:薬物が細胞免疫に対する作用を検出することを除いて、また常に細胞免疫機能増加と減少のモデルを製造することに用いられている。遅延型過敏反応は、感作生体が抗原により攻撃された24〜48時間後に発生した組織損傷であり、ピーク時期で測定された組織腫脹度は遅延型過敏反応の強度とすることができる。
【0088】
(1.試験材料)
試薬:WDY1、WDY6、WDY7のいずれも白色粉末であり、使用直前に生理食塩水で所望の濃度に調製される。
【0089】
動物:昆明種マウス110匹、動物合格証明番号:川実動管第99−30号。
【0090】
試薬:2,4−ジニトロクロルベンゼン(DNCB)、ロット番号:20000101、上海試剤一廠から生産される。使用直前にアセトンで50%、2%、0.5%、0.15%の濃度に調製される。
【0091】
(2.試験方法)
中国衛生部が発布した新薬(西洋薬剤)の臨床前研究指導原則中の抗炎免疫薬物薬力学指導原則に従ってデザインする。用量配置:以下の表2の通りにグループ分けと薬剤投与を行う。
【0092】
【表2】

【0093】
感作:マウスについては一匹ずつ背部に小さい部分が脱毛され、微量注射器で50%のDNCBアセトン溶液2μlを裸出の皮膚に滴下して、動物を感作させる。
【0094】
薬剤投与:感作当日で表1の通り投与開始、一日一回、十日続き(ただし、WDY7は一日おき投与)
誘発:投与10日目後に、一匹ずつ腹部に三箇所の脱毛が認められ、その大きさはd=1cm程度であり、2%、0.5%、0.15%のDNCBアセトン溶液をそれぞれ20μl三箇所の裸出皮膚に滴下して、動物を誘発する。
【0095】
評価指数:誘発の24h、48h、72h後に、動物の三箇所の皮膚の反応を観察して、以下の表3の通りに点数を記録して、三箇所の皮膚の点数合計を評価指数として、対照群と比較する。
【0096】
【表3】

【0097】
(3.試験結果)
下記表4の通りである。
【0098】
【表4】

【0099】
(実施例12)
WDY1、WDY6、WDY7の抗炎試験(綿球肉芽腫法)
原理:綿球をラット体内に植え込み結合組織の過形成を引き起こし、このような肉芽過形成は、臨床で幾つかの炎症後期の病理変化と類似し、薬物の抗結合組織増殖作用に対する評価に用いられる。薬剤投与群と陰性対照群の肉芽腫の重量の差異を比較して、各薬剤投与群の抑制率は有意的な差異が認められ、それで、当該薬物が該炎症モデルに抗炎作用を有すると考えられる。陽性薬物はヒドロコルチゾンである。
【0100】
(1.実験材料)
動物:Wisterラット110匹、雄性、体重200〜250g。試薬:WDY1、WDY6、WDY7。陽性試料:ヒドロコルチゾン。
【0101】
(2.実験方法)
中国衛生部が発布した新薬(西洋薬剤)の臨床前研究指導原則中の抗炎免疫薬物薬力学指導原則に従ってデザインする。
【0102】
110匹の動物をペントバルビダールナトリウムip30mg/kgで麻酔し、消毒幹綿球20mgを右腹部の下部に植え込み、翌日表1の通りにグループ分けに投与して、最終投与24時間後に、ラットを殺して、綿球を剥離して脂肪組織を取り除き、60℃のオーブンで1時間焙焼して、綿球を取り出し秤量して、秤量し得た重量から元の綿球重量20mgを引き、腫脹度としてmg/100gで表示し、同時に薬剤投与群と対照群を比較した。
【0103】
(3.実験結果)
【表5】

【0104】
表5に示すように、ヒドロコルチゾン群が対照群と比較すると、その綿球肉芽腫の重量が対照群より有意的に小さいことが分かる。WDY1、WDY6、WDY7のいずれも著しい抗綿球肉芽腫作用を示した。3薬剤の高、中用量及びWDY1の低用量は、それらの綿球肉芽腫が対照群より、全部有意的に減少して、且つ一定のプラスの量効関係(positive dose-effect relationship)を示す。
【0105】
(実施例13)
短期毒性試験について説明する。
【0106】
マウスのWDY6静脈注射(iv)による短期毒性LD50、
昆明種マウス(雄:5匹、雌:5匹、動物合格証明番号:川実動管第99−30号)を短期毒性LD50試験に使用した。5群のWDY6の用量組(215、187、163、142、123mg/kg体重)を設け、生理食塩水でWDY6を調製し、尾静脈注射した。測定したLD50は172mg/kg体重である。
【0107】
【表6】

【0108】
同様な方法によりWDY1とWDY7を尾静脈注射した場合のLD50はそれぞれ126と0.8mg/kg体重である。
【0109】
(実施例14)
WDY6とWDY7静脈注射のラット佐剤誘導関節炎モデルにおける治療作用について説明する。
【0110】
(実験方法)
Perper RJ et al.の方法(非特許文献3)に従って、ラットの佐剤により誘導された関節炎モデルを作成し、且つWDY6とWDY7のラット佐剤誘導関節炎に対する治療作用を評価した。またラット後足の腫脹用足の厚さを測定した。
【0111】
64匹の雄SDラット(動物合格証明番号:川実動管質99−32号)を無作為的に8群れに分けて、WDY6とWDY7の用量によってそれぞれ5群を設けて、尾静脈注射(iv)した。空白対照は生理食塩水である。陽性対照薬物はヒドロコルチゾン30mg/kg体重である。
【0112】
【表7】

【0113】
Freund佐剤処理後18日に、関節炎モデルを成功的に作った。注射足(右後足)の腫脹は原発性病変であり、注射足の対側足(左後足)の腫脹は続発性病変である。続発性病変は免疫と関係があると考えられる。
【0114】
(実験結果):
WDY6の対側(左後)足に対する影響の結果は図4に示す:WDY6は対側足の厚さを著しく減少させ、厚さ減少とWDY6の用量とは量効関係を示す。その厚さ減少の効果はヒドロコルチゾンによる効果と相当する。低用量WDY6(5mg/kg体重)は対側足の厚さを著しく減少させる。WDY6の短期毒性LD50は172mg/kg、その安全係数“LD50/有効用量”は34(172/5)〜68(172/2.5)である。したがってWDY6は有効且つ安全であるという効果が証明される。
【0115】
WDY7は同じ結果が認められた(図5を参照)。その安全係数“LD50/有効用量”は32(0.8/0.025)である。
【0116】
(実施例15)
WDY6 とWDY7経口投与のラット佐剤誘導関節炎モデルにおける治療作用について説明する。
【0117】
(実験方法)
実施例14と同じ、静脈注射を経口投与に変える。
【0118】
【表8】

【0119】
実験結果(図6と図7を参照)は、WDY6とWDY7経口投与は顕著にラット佐剤誘導関節炎を治療できるということである。
【0120】
(実施例16)
マウス異種心耳接枝実験でWDY6とWDY7の移植心臓の生存時間延長に対する作用について説明する。
【0121】
(実験方法)
Fulmer RI et al.の方法(非特許文献4)Am J Anat. 1963:273−278)に従って、6日齢のC57BLマウス(雄又は雌)の全心臓を雄balb/cマウス(動物合格証明番号:川実動管質99−31号)(体重20−25g)の耳介に接枝する。心電図(ECG)で或いは直接的に解剖顕微鏡で接枝された心臓の拍動を記録する。心拍停止は拒絶発生を示す。
【0122】
用量:WDY6:20,10と5mg/kg;日ごとに投与、静脈注射。
【0123】
WDY7:0.25,0.12と0.05mg/kg;一日おきに投与、静脈注射。
【0124】
シクロスポリンA(Cyclosporine A):25mg/kg;日ごとに投与、経口投与。
【0125】
(結果)
次の表9の通りである。
【0126】
【表9】

【0127】
WDY6、WDY7とシクロスポリンAによって、マウス異種心耳接枝実験で、心臓平均生存時間はそれぞれ12.7、13.8、16.1日である。そして、対照の平均生存時間は9.7日だけである。その結果から、WDY6とWDY7は全部著しい抗拒絶作用を有することが分かる。WDY6とWDY7によって処理されたマウスの体重は全然減少しなくて、食欲も正常に維持した。しかし、シクロスポリンA処理群のマウスの体重と食欲は皆減少した。
【図面の簡単な説明】
【0128】
【図1】IL−2に対する本発明の水溶性トリプトリド誘導体の作用(medium:空白対照、PHA:リポ多糖、CsA:シクロスポリンA)の図である。
【図2】IL−1、IL−6、iNOSに対する本発明の水溶性トリプトリド誘導体の作用(medium:空白対照、PHA:リポ多糖、CsA:シクロスポリンA)の図である。
【図3】HT−29細胞のPGE含有量(pg/ml)に対する本発明の水溶性トリプトリド誘導体の影響(対照=22.93pg/ml、インドメタシン(indo)=1.3pg/ml、WDY4=4.22pg/ml、WDY7=4.97pg/ml)の図である。
【図4】対側足(lateral feet)に対するWDY6の影響の結果を示す図である。
【図5】対側足(lateral feet)の厚さに対するWDY7の影響の結果を示す図である。
【図6】WDY7経口投与場合の左足の厚さに対する影響の結果を示す図である。
【図7】WDY6経口投与場合の左足の厚さに対する影響の結果を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造式が下記化1式で示されることを特徴とするトリプトリド誘導体。
【化1】

(式中、RはH、又は下記化2式で示されるホスファート又は下記化3式のホスフィットであり、X、XはNa、K又はNHである。)
【化2】

【化3】

【請求項2】
請求項1に記載のトリプド誘導体を製造する方法であって、リードコンパウンドトリプトリドを塩化ホスホリル、三塩化リン又はその他のホスファジルハロゲン、リン酸エステル、亜ホスファジルハロゲン、亜リン酸エステルなどの化合物と反応させるステップを含むことを特徴とするトリプド誘導体の製造方法。
【請求項3】
構造式が下記化4式で示されることを特徴とするトリプトリド誘導体。
【化4】

(式中、RはH、炭素数1〜4のアルキル基、−C(=O)(CH)nCO(ただし、nは1〜4の整数)、下記化5式で示されるホスファート、又は下記化6式で示されるホスフィットであり、XとXはNa、K又はNHであり、RはH、−SCN、−Cl、又は−Brである。)
【化5】

【化6】

【請求項4】
請求項3に記載のトリプトリド誘導体を製造する方法において、第2種類のリードコンパウンドである12−β−チオシアノ−13−α−ヒドロキシトリプトリドをエステル化とホスホリル化させるステップを含むことを特徴とするトリプトリド誘導体の製造方法。
【請求項5】
構造式が下記化7式又は下記化8式で示されることを特徴とするトリプトリド誘導体。
【化7】

【化8】

(式中、RはH、−SCN、−Cl又は−Brである。)
【請求項6】
請求項5に記載のトリプトリド誘導体を製造する方法であって、第2種類のリードコンパウンドである12−β−チオシアノ−13−α−ヒドロキシトリプトリドを塩化ホスホリル、又はその他のホスファジルハロゲン、リン酸エステル、亜リン酸エステルなどの化合物と反応させるステップ、或いは第1種類のリードコンパウンドトリプトリドを塩化ホスホリル、又はその他のホスファジルハロゲン、亜ホスファジルハロゲンなどの化合物と反応させるステップを含むことを特徴とするトリプトリド誘導体の製造方法。
【請求項7】
請求項1、3、及び5の内のいずれか一つに記載のトリプトリド誘導体を含有することを特徴とする免疫抑制剤又は抗炎剤。
【請求項8】
請求項7に記載の免疫抑制剤又は抗炎剤において、リンパ球T、Bの成長、細胞因子IL―1、IL―2、IL−6、iNOSの生成及びCox−2の生成に関する疾病を治療することを特徴とする免疫抑制剤又は抗炎剤。
【請求項9】
請求項8に記載の免疫抑制剤又は抗炎剤において、疾病が能動免疫欠乏病及び炎症であることを特徴とする免疫抑制剤又は抗炎剤。
【請求項10】
請求項9に記載の免疫抑制剤又は抗炎剤において、前記疾病が慢性関節リウマチ、喘息、系統性紅斑狼瘡、鱗屑癬、多重硬皮症、動脈粥状硬化、I−型糖尿病、腎炎であることを特徴とする免疫抑制剤又は抗炎剤。
【請求項11】
請求項7に記載の免疫抑制剤又は抗炎剤において、臓器移植時の臓器拒絶を防止し、移植された臓器の生存時間を延長するために用いられることを特徴とする免疫抑制剤又は抗炎剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2006−503831(P2006−503831A)
【公表日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−536777(P2004−536777)
【出願日】平成15年9月4日(2003.9.4)
【国際出願番号】PCT/CN2003/000748
【国際公開番号】WO2004/026298
【国際公開日】平成16年4月1日(2004.4.1)
【出願人】(505098982)成都▲達▼▲遠▼▲薬▼物有限公司 (1)
【出願人】(505099727)ダブリュ アンド ケイ インターナショナル,インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】