説明

高分子化合物

【課題】電解重合が可能であり、電界により様々な発光色を呈する高分子化合物群を提供する。
【解決手段】下記一般式(I)を繰り返し単位とする高分子化合物。Aは(a−1)等で表され、B又はB’は以下の(b−1)又は(b−2)のいずれかである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電界により発光する高分子化合物に関するものであり、特に、電解重合法で形成可能な高分子化合物に関するものである。更に、本発明は、この高分子化合物を用いた電界発光素子、発光装置等に関するものである。
【背景技術】
【0002】
有機化合物の電界発光を利用した電界発光素子は、自己発光のため視認性が高く、また、低駆動電圧などの特徴を有することから、各種表示装置における発光素子としての利用が注目されている。
【0003】
また特に、上記の電界発光素子の用途を広げるためには、多色化すなわちエリアカラーやフルカラーのディスプレイ(以下、「多色表示装置」という。)への適用が期待されている。
【0004】
電界発光素子を用いた多色表示装置の作製方法として、次の方法が知られている。
【0005】
(1)赤(R)、緑(G)、青(B)の三原色で発光するEL材料をマトリックスに配置する方法(例えば、特開昭57−157487号公報、特開昭58−147989号公報、特開平3−214593号公報を参照。)。
【0006】
(2)白色で発光するEL素子とカラーフィルターを組み合わせたRGBの三原色を取り出す方法(例えば、特開平1−315988号公報、特開平2−273496号公報を参照。)。
【0007】
(3)青色で発光するEL素子と蛍光変換膜とを組み合わせたRGBの三原色に変換する方法(例えば、特開平3−152897号公報を参照。)。
【0008】
(4)さらに、上記(2)や(3)の方法で必要とされているカラーフィルターたは蛍光変換フィルターを形成せずに多色表示装置を作製する方法として、電界発光素子に用いる導電性高分子材料をインク化してインクジェット法によりEL材料をパターンニングする技術が知られている(例えば、特開平10−153967号公報、特開平11−87062号公報)。
【0009】
しかしながら、従来より、安定性などの利点から導電性高分子材料として研究されている一群のπ共役高分子は、剛直な主鎖を有し、一般的に不溶、不融であるものが多く、上記のインクジェット法では用いることができない。したがって、インクジェット法で用いるには、導電性高分子材料を可溶化するための化学的な工夫(置換基の導入など)が必要となるが、可溶化した場合には電荷の輸送性や熱的安定性の低下等の問題がある。さらに、インクジェット法により導電性高分子材料を正孔注入層と形成する場合は、各画素間の漏電(クロストーク)を防ぐには高度な技術が必要とされる。
【0010】
また、他の電界発光素子の製造方法として、電気化学法が提案されている。電気化学法の1つとして電解重合法が知られている。電解重合法とは、相対向するアノード電極とカソード電極の少なくとも一方を正孔輸送層または電子輸送層を形成するための材料を含む電解液(重合液)に浸漬させた後、アノード電極とカソード電極の間に電圧を印加することにより、浸漬させたアノード電極あるいはカソード電極上に、正孔輸送層或いは電子輸送層を覆うように形成する方法である。電解重合法による電界発光素子の作製は、正孔または電子の注入や、電荷輸送性能に優れ、且つ熱的にも安定性の高い共役系高分子材料の使用が可能である(例えば、特開平9−976979号公報参照。)。だだし、特開平9−976979号公報には、発光層を電気化学法で形成するための有機材料については一切言及されていない。
【特許文献1】特開昭57−157487号公報
【特許文献2】特開昭58−147989号公報
【特許文献3】特開平3−214593号公報
【特許文献4】特開平1−315988号公報
【特許文献5】特開平2−273496号公報
【特許文献6】特開平3−152897号公報
【特許文献7】特開平10−153967号公報
【特許文献8】特開平11−87062号公報
【特許文献9】特開平9−976979号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
多色表示装置の作製方法のうち、カラーフィルターや蛍光変換フィルターを形成しなければならない方法は、従来の液晶表示装置向けカラーフィルターと同様にコストアップが避けられないという欠点がある。また、インクジェット法を用いる場合はこれらの欠点は無いものの、高度な技術を必要とし、用いられる高分子材料は可溶性でなければならない点が問題である。
【0012】
また、電解重合法などの電気化学法を用いて正孔輸送層または電子輸送層を形成すると、電荷の注入、輸送性に優れ、熱的にも安定性の高い共役系高分子を電荷輸送層として用いることができることは知られているが、発光層を電解重合法で形成することは知られていなく。すなわち電解重合法で合成可能な発光層を形成するための有機材料については知られていない。
【0013】
本発明の目的は、従来技術が持つ欠点を解消し、電解重合が可能であり、なおかつ、電界により様々な発光色を呈する高分子化合物群を提案することにある。更に、この高分子化合物群を用いた電界発光素子や、多色表示装置等の発光装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上述した課題を解決するために、本発明に係る高分子化合物の構造は、下記一般式(I)を繰り返し単位とすることを特徴とする。
【化1】

[一般式(I)中、m及びnは1または2を表し、Aは下記(a−1)〜(a−20)の何れかを表し、B、B’は同一または異なっており、下記(b−1)又は(b−2)のいずれかを表す。
【化2】

((a−1)のRとR、及び(a−20)のRとRは同一または異なっており、R〜Rは水素原子、ハロゲン原子、又は酸素原子、硫黄原子もしくは窒素原子を含有していても良い有機残基である。)
【化3】

((b−1)のRとR8、及び(b−2)のRとR10は、それぞれ、同一または異なっており、R〜R10は水素原子、ハロゲン原子、又は酸素原子、硫黄原子もしくは窒素原子を含有していても良い有機残基である。)]
【0015】
上記一般式(I)で示される高分子化合物は、電解重合法により合成できることを主眼に設計された化合物であって、発明者らが知見した新規な高分子化合物である。もちろん、本発明による高分子化合物は電解重合法により合成できるだけでなく、公知の合成方法によって形成することも可能である。
【0016】
また、上記一般式(I)で示される新規な高分子化合物は電界により発光させることができるため電界発光素子の発光層(発光体)として用いることができる。よって、他の発明として、本発明は電界発光素子に係るものであり、一対の電極間に、上記一般式(I)で示される繰り返し単位を有する高分子化合物を含有する層を有することを特徴とする。
【0017】
上記構成を有する電界発光素子において、高分子化合物を含有してなる層が発光層として機能する。また、高分子化合物を含有してなる層が発した光を取出すため、一対の電極の一方又は両方が透明又は半透明であればよい。
【0018】
また、上記発光素子において、高分子化合物を含有する層は電解重合法で形成されたことを特徴とする。
【0019】
また、画素として上記のような電界発光素子を複数有することにより、発光装置を構成することができる。
【0020】
すなわち、本発明に係る第1の発光装置は、複数の電界発光素子を有する発光装置であって、前記複数の電界発光素子は、それぞれ、対向する一対の電極と、前記一対の電極の間に形成された高分子化合物を含有する層とを有し、前記高分子化合物は、上記一般式(I)で示される繰り返し単位を有する化合物であることを特徴とする。
【0021】
また、上記一般式(I)で示される高分子化合物を含有する層は、いわゆるパッシブ型のエレクトロルミネッセンスディスプレイの発光層として好適である。
【0022】
すなわち、本発明に係る第2の発光装置は、絶縁表面を有する基板と、前記基板の絶縁表面に形成されたストライプ状の複数の第1の電極と、前記複数の第1の電極上にそれぞれ形成された高分子化合物を含有する層と、複数の前記高分子化合物を含有する層上に形成され、第1の電極に直交するように配置されたストライプ状の複数の第2の電極と、を有し、前記高分子化合物は、上記一般式(I)で示される繰り返し単位を有する化合物であることを特徴とする。
【0023】
また、本発明に係る第3の発光装置は、絶縁表面を有する基板と、前記基板の絶縁表面に形成された複数の第1の電極と、前記複数の第1の電極上にそれぞれ形成された高分子化合物を含有する層と、複数の前記高分子化合物を含有する層を挟んで、前記複数の第1の電極のそれぞれと対向する1つの第2の電極と、を有し、前記高分子化合物は、上記一般式(I)で示される繰り返し単位を有する化合物であることを特徴とする。
【0024】
上記本発明に係る第1〜第3の表示装置において、複数の前記高分子化合物を含有する層の少なくとも1つは、含有する高分子化合物が他の高分子化合物を含有する層と異なることを特徴とする。この構成により、複数色で発光させることができ、多色表示可能な発光表示装置を得ることができる。
【0025】
同様に、本発明に係る第4の発光装置は多色表示を可能にした装置であって、絶縁表面を有する基板上に、互い異なる色で発光する第1〜第3の画素を複数有する発光装置であって、複数の第1の電極と、複数の前記第1の電極上にそれぞれ形成された高分子化合物を含有する層と、前記高分子化合物を含有する層上に形成され、前記複数の第1の電極と対向する第2の電極と、を有し、前記第1の電極は前記複数の第1〜第3の画素ごとに設けられ、前記第2の電極は前記複数の第1〜第3の画素に共通に設けられており、前記高分子化合物は、上記一般式(I)で示される繰り返し単位を有する化合物であって、前記第1〜第3の画素において、前記高分子化合物を含有する層の高分子化合物は互いに異なることを特徴とする。
【0026】
さらに、上記一般式(I)で示される新規な高分子化合物を用いた本発明の電界発光素子は、アクティブマトリクス型の発光装置に適用することもできる。この場合は、上記本発明の第3及び第4の発光装置において、データ信号ラインと、走査信号ラインと、前記データ信号ライン及び前記走査信号ライン及び前記第1電極に接続された非線形素子と、をさらに含むことが好ましい。前記非線形素子としては、互いに接続された薄膜トランジスタとキャパシタとの組み合わせ、または、薄膜トランジスタと前記薄膜トランジスタの寄生のキャパシタとの組み合わせ、からなることが好ましい。
【0027】
なお、本明細書中における高分子化合物を含む層とは、層を形成するために不可避的に取込まれた成分や、各種添加剤や、層の機能に直接関係の無い、又は層の機能を妨げないような他の成分を含んでいてもよい層をいう。
【0028】
また、本明細書中における発光装置とは、電界により発光する発光層を用いた発光デバイス、画像表示デバイス等を指す。また、コネクター、例えば異方導電性フィルム(ACF:Anisotropic Conductive Film)もしくはフレキシブルプリント基板(FPC:Flexible printed circuit)もしくはTAB(Tape Automated Bonding)テープもしくはTCP(Tape Carrier Package)が取り付けられたモジュール、TABテープやTCPの先にプリント配線板が設けられたモジュール、またはCOG(Chip On Glass)方式によりIC(集積回路)が直接実装されたモジュールも全て発光装置に含むものとする。
【発明の効果】
【0029】
本発明の一般式(I)で示される高分子化合物群は、電解重合法により合成することができる。電解重合法は重合とパターニングされた膜の形成が同時にできるため、容易に電界発光素子を作成することができる。
【0030】
よって、本発明の新規な高分子化合物を含む層を発光層に用いた、多色表示可能な発光装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
まず、上記一般式(I)で示される高分子化合物の具体例について説明する。
【0032】
まず、一般式(I)におけるAのR〜Rの具体例について説明する。
【0033】
〜Rとしては、炭素数4から30の脂肪族炭化水素基(n−ブチル機、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘプチル基、2,6−ジメチルヘプチル基、1−エチルペンチル基、n−オクチル基、n−デジル基、n−ウンデシル基、n−ヘプタデシル基など)、炭素数4から10の脂環式炭化水素基(シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基など)が挙げられる。あるいは、フェニル基、ナフチル基、アントラニル基、ピレニル基などの芳香族基であってもよい。
【0034】
これらの芳香族基は、炭素数1から5のアルキレン基を介してカルボニル基と結合してもよい。この他、複素環を有する基であってもよい。また、上記置換基は、酸素原子や硫黄原子、窒素原子、あるいは珪素原子によって、チオフェン骨格またはピロールと結合してもよい。
【0035】
また、一般式(I)のB、B’における置換R〜R10の具体例としては、炭素数4から30の脂肪族炭化水素基(n−ブチル機、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘプチル基、2,6−ジメチルヘプチル基、1−エチルペンチル基、n−オクチル基、n−デジル基、n−ウンデシル基、n−ヘプタデシル基など)、炭素数4から10の脂環式炭化水素基(シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基など)が挙げられる。あるいは、フェニル基、ナフチル基、アントラニル基、ピレニル基などの芳香族基であってもよい。
【0036】
これらの芳香族基は、炭素数1から5のアルキレン基を介してカルボニル基と結合してもよい。この他、複素環を有する基であってもよい。また、上記置換基は、酸素原子や硫黄原子、窒素原子、あるいは珪素原子によって、チオフェン骨格またはピロールと結合してもよい。
【0037】
次に、一般式(I)で示される高分子化合物を形成するための材料について説明する。
【0038】
この一般式(I)で示される高分子化合物は、以下の一般式(II)で示されるモノマーをカチオン重合することによって得られる。なお、一般式(II)におけるA、B及びB’は、それぞれ、上記一般式(I)中のA、B及びB’と同様である。
【化4】

【0039】
次に、以下に、上記一般式(II)で示されるモノマーの好ましい具体例を示す。もちろん、本発明の高分子化合物を合成するにはこれらのモノマーに限定されるものではない
【0040】
次の化学式(1)〜(20)で示されるモノマーは、B、B’双方が(b−1)で示されるチオフェンの場合の具体例である。
【化5】

【化6】

【化7】

【0041】
次の化学式(21)〜(40)で示されるモノマーは、B、B’の双方が(b−2)で示されるピロールの場合の具体例である。
【化8】

【化9】

【化10】

【化11】

【0042】
次の化学式(41)〜(60)で示されるモノマーは、B、B’の一方が(b−1)、他方が(b−2)の場合の具体例である。
【化12】

【化13】

【化14】

【化15】

【化16】

【0043】
上記一般式(I)で示される繰り返し単位を有する本発明に係る高分子化合物は、電解重合法を用いることにより、合成され、かつパターニングされた膜を形成することができる。
【0044】
電解重合法で合成・成膜する場合は、ある特定の電解液中にパターニングされた電極を有する基板を浸漬し、その電解液に通電することにより、上記一般式(I)で示される繰り返し単位を有する高分子化合物を、パターニングされた電極上に成膜することができる。すなわち、パターニングされた高分子化合物を含む層を容易に形成することができる。
【0045】
本明細書中におけるパターニングされた電極とは、電界発光素子を発光させたときに発光するその形状を決定するための電極パターンのことであり、例えば、電界発光素子がドットマトリックス素子の場合にはストライプ状の複数の電極パターン、セグメント素子の場合には特定のセグメント電極パターンになる。
【0046】
ある特定の電解液とは、溶媒に支持電解質が溶解しているものであり、用いられる溶媒は水、アセトニトリル、プロピレンカーボネート等の誘電率の高いものが好ましく、支持電解質としては各種過塩素酸塩、その他の塩、酸などを用いる。このような電解液に、上記一般式(II)で示されるモノマーを溶解したものを加え、電解重合を行う。
【0047】
よって、一般式(I)で示される高分子化合物を含有する層を用いた電界発光素子を作製する方法としては、上述した電解重合法を用いることができる。例えばガラスや合成樹脂などからなる透明基板上のパターニングされた電極上に、上記一般式(I)で示される繰り返し単位を有する高分子化合物を含む層を電解重合法を用いて形成する。上記一般式(I)で示される繰り返し単位を有する高分子化合物を含む層は、電極上及びその周辺に形成されていてよく、必ずしも電極の上面のみに限定されるものではない。
【0048】
電界発光素子を電解重合法を利用して作製する場合は、上述のように電解重合法により上記一般式(I)で示される繰り返し単位を有する高分子化合物を含む層を形成する工程が含まれていればよく、電界発光素子として機能する限り、電解重合の工程前後または工程内に、別の操作・処理等を含んでいてもよい。
【0049】
また電界発光素子として、電極の上に導電性高分子を含む層を設けた素子、電極の上に導電性高分子を含む層を設け、前記電極と対になるもう一方の電極と前記導電性高分子を含む層の間に無機化合物からなる層を設けた素子などの構造が例示される。積層する層の順番や数、及び各層の厚さについては、特に制限がない。発光層だけでなく、正孔輸送層、電子輸送層が形成されていてもよい。あるいは、電極との密着性向上や、電極からの電荷注入の改善の為に、電極に密着して電荷注入層を設けてもよい。あるいは界面の密着性向上や結晶化の防止等のために電荷輸送層や発光層の界面に薄いバッファー層を挿入してもよい。
【0050】
次に、多色表示可能な発光装置の作製方法について説明する。
【0051】
例えば、ガラスや合成樹脂などからなる透明基板上の複数の画素に対応する複数のパターニングされた電極を形成する。この基板を、上記一般式(II)で示されるモノマーを含む電解液に浸漬し、少なくとも一つの電極に通電することにより、上記一般式(I)で示される繰り返し単位を有する第一の高分子化合物を含む層が発光層として、通電した電極上に形成される。
【0052】
再び、先と異なるモノマーを含む電解液に基板を浸潤し、同様の工程により、第一の高分子化合物が成膜された電極とは異なる電極に上に、上記一般式(I)で示されるが第一の高分子化合物とは異なる第二の高分子化合物を含む層を発光層として形成する。このような工程を繰り返すことにより、透明基板上に異なる色で発光する複数の各画素が形成される。
【0053】
以下、図面を用いて本発明の実施例について説明をする。本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例の記載に限定されるものではない。
【実施例1】
【0054】
本実施例では、電界発光素子の作製方法について説明する。
【0055】
図1に電界発光素子の断面構造を示す。
【0056】
ガラス基板100に、スパッタ法により110nmの厚みでITO膜101を付け、エッチングによりITO101を2mm×2mmのドット状にして、パターニングされたITO電極101を有するガラス基板100を、以下の化学式(61)で表されるモノマーを有する支持電解質に過塩素酸アンモニウムを用いた電解液に浸漬する。
【化17】

【0057】
そして、ITO電極101を一方の電極に用い、白金線をその対になる電極として用意し、これらの間に電圧を印加することにより電気化学的に、上記化学式(61)の重合体を含有する発光層102が、ITO電極101上に形成される。
【0058】
これを水で洗浄してから、真空乾燥する。次に、Ca、続いてAlを蒸着して陰極103を形成し、電界発光素子を作製する。
【0059】
なお、図1において、第1の電極及び第2の電極の何れか一方が可視光透過性を有して要れば良い。また、第1の電極が陽極の場合は第2の電極を陰極に、第1の電極が陰極の場合は第2電極を陽極とすれば良い。
【実施例2】
【0060】
本実施例では、アクティブマトリクス型の多色化された発光装置の作製方法を示す。
【0061】
図2はアクティブマトリックス型発光装置の部分的な上面図である。
【0062】
ガラスや合成樹脂などからなる透明基板201上に複数のパターニングされた第1の電極202が形成されており、その第1の電極202より上方に突き出たなおかつ、画素部を囲む形で絶縁体隔壁203が形成されている。
【0063】
さらに、データ信号ライン204と、走査信号ライン205と、データ信号ライン204及び走査信号ライン205に接続された非線形素子206が設けられ、非線形素子はコンタクト207により第1の電極に接続されている。これより、各画素をそれぞれ単独でスイッチすることができる。非線形素子206は代表的には電気的に接続された薄膜トランジスタとキャパシタや、薄膜トランジスタと当該薄膜トランジスタの寄生キャパシタとの組み合わせ等、からなる。実施例1と同様に、前記基板を上記化学式(61)で示されるモノマーを有する支持電解質に過塩素酸アンモニウムを用いた電解液に浸漬する。
【0064】
そして、データ信号ライン204を一方の電極に用い、白金線を対極として、これらの電極に電圧を印加することにより、電気化学的に上記化学式(61)の重合体を含む膜が、データ信号ライン204に接続される非線形素子上の電極上に形成される。
【0065】
次に前記基板を以下の化学式(62)で示されるモノマーを有する支持電解質に過塩素酸アンモニウムを用いた電解液に浸漬する。
【化18】

【0066】
そして、データ信号ライン208を用い、白金線を対極として電圧を印加することにより、電気化学的に上記化学式(62)の重合体を含む膜をデータ信号ライン208と接続される非線形素子上の電極上に形成する。その上に、べた付けの形で複数の第1の電極に対して共通の第2の電極が形成される。
【0067】
図2の発光装置の発光素子において、第1の電極及び第2の電極の何れか一方が可視光透過性を有して要れば良い。また、第1の電極が陽極の場合は第2の電極を陰極に、第1の電極が陰極の場合は第2電極を陽極とすれば良い。
【実施例3】
【0068】
本実施例では、画素部に電界発光素子を有する発光装置について図3を用いて説明する。図3(A)は、発光装置を示す上面図であり、図3(B)は図3(A)をA−A’で切断した断面図である。
【0069】
図3(A)において点線で示された矩形の領域は、それぞれ、301は駆動回路部(ソース側駆動回路)、302は画素部、303は駆動回路部(ゲート側駆動回路)である。また、304は封止基板、305はシール剤、シール剤305で囲まれた内側307は、空間(空隙)になっている。
【0070】
308は、ソース側駆動回路301及びゲート側駆動回路303に入力される信号を伝送するための配線であり、外部入力端子となるFPC(フレキシブルプリントサーキット)309からビデオ信号、クロック信号、スタート信号、リセット信号等を受け取る。308として、ここではFPCしか図示されていないが、このFPCにはプリント配線基盤(PWB)が取り付けられていても良い。本明細書における発光装置には、発光装置本体だけでなく、それにFPCもしくはPWBが取り付けられた状態をも含むものとする。
【0071】
次に、断面構造について図3(B)を用いて説明する。
【0072】
ソース側駆動回路301はnチャネル型TFT323とpチャネル型TFT324とを組み合わせたCMOS回路が形成される。また、駆動回路を形成するTFTは、公知のCMOS回路、PMOS回路もしくはNMOS回路で形成しても良い。ゲート側駆動回路303もソース側駆動回路301と同様である。また、本実施の形態では、基板上に駆動回路を形成したドライバー一体型を示すが、必ずしもその必要はなく、基板上ではなく外部に形成することもできる。
【0073】
画素部302はスイッチング用TFT311と、電流制御用TFT312とそのドレインに電気的に接続された第1の電極313とを含む複数の画素により形成される。
【0074】
第1の電極313の端部を覆って絶縁物314が形成されている。ここでは、絶縁物314をポジ型の感光性アクリル樹脂により形成する。また、カバレッジを良好なものとするため、絶縁物314の上端部または下端部に曲率を有する曲面が形成されるようにする。例えば、絶縁物314の材料としてポジ型の感光性アクリルを用いた場合は、絶縁物314の上端部のみに曲率半径(0.2μm〜3μm)を有する曲面を持たせることが容易にできる。また、絶縁物314として、感光性の光によってエッチャントに不溶解性となるネガ型、或いは光によってエッチャントに溶解性となるポジ型のいずれも使用することができる。
【0075】
第1の電極313上には、発光層316、及び第2の電極317がそれぞれ形成されている。ここで、陽極として機能する第1の電極313に用いる材料としては、仕事関数の大きい材料を用いることが望ましい。例えば、ITO(インジウムスズ酸化物)膜、インジウム亜鉛酸化物(IZO)膜、窒化チタン膜、クロム膜、タングステン膜、Zn膜、Pt膜などの単層膜の他、窒化チタンとアルミニウムを主成分とする膜との積層、窒化チタン膜とアルミニウムを主成分とする膜と窒化チタン膜との3層構造等を用いることができる。なお、積層構造とすると、配線としての抵抗も低く、良好なオーミックコンタクトがとれ、さらに陽極として機能させることができる。
【0076】
また、発光層316は、電気化学法である電解重合法によって形成される。発光層316には、本発明の上記一般式(I)の繰り返し単位を有する高分子化合物が含まれる層である。また、発光層316はこの高分子化合物だけでなく、他の材料を含んでいてもよく、その他の材料が低分子化合物であっても他の高分子化合物であっても、また、無機化合物でも良い。また、発光層316は、高分子化合物や低分子化合物でなる有機化合物の単層もしくは積層でなるものや、これらと合わせて無機化合物を含む層を積層させてもよい。
【0077】
発光層316上に形成される第2の電極(陰極)317に用いる材料としては、仕事関数の小さい材料(Al、Ag、Li、Ca、またはこれらの合金MgAg、MgIn、AlLi、CaF、またはCaN)を用いればよい。なお、発光層316で生じた光が第2の電極317を透過させる場合には、第2の電極(陰極)317として、膜厚を薄くした金属薄膜と、透明導電膜(ITO(酸化インジウム酸化スズ合金)、酸化インジウム酸化亜鉛合金(In−ZnO)、酸化亜鉛(ZnO)等)との積層を用いるのがよい。
【0078】
さらにシール剤305で封止基板304を素子基板310と貼り合わせることにより、素子基板301、封止基板304、及びシール剤305で囲まれた空間307に電界発光素子318が備えられた構造になっている。なお、空間307には、不活性気体(窒素やアルゴン等)が充填されている。また、シール剤305で充填してもよい。
【0079】
シール剤305にはエポキシ系樹脂を用いるのが好ましく、できるだけ水分や酸素を透過しない材料であることが望ましい。また、封止基板304に用いる材料としてガラス基板や石英基板の他、FRP(Fiberglass−Reinforced Plastics)、PVF(ポリビニルフロライド)、マイラー、ポリエステルまたはアクリル等からなるプラスチック基板を用いることができる。
【0080】
以上のようにして、本実施例の電界発光素子を有する発光装置を得ることができる。
【実施例4】
【0081】
本実施例では、本発明の電界発光素子を有する発光装置を用いて完成させた様々な電気器具について説明する。
【0082】
本発明の電界発光素子を有する発光装置を用いて作製された電気器具として、ビデオカメラ、デジタルカメラ、ゴーグル型ディスプレイ(ヘッドマウントディスプレイ)、ナビゲーションシステム、音響再生装置(カーオーディオ、オーディオコンポ等)、ノート型パーソナルコンピュータ、ゲーム機器、携帯情報端末(モバイルコンピュータ、携帯電話、携帯型ゲーム機または電子書籍等)、記録媒体を備えた画像再生装置(具体的にはデジタルビデオディスク(DVD)等の記録媒体を再生し、その画像を表示しうる表示装置を備えた装置)などが挙げられる。これらの電気器具の具体例を図4に示す。
【0083】
図4(A)は表示装置であり、筐体2001、支持台2002、表示部2003、スピーカー部2004、ビデオ入力端子2005等を含む。本発明の電界発光素子を有する発光装置をその表示部2003に用いることにより作製される。なお、表示装置は、パソコン用、TV放送受信用、広告表示用などの全ての情報表示用装置が含まれる。
【0084】
図4(B)はノート型パーソナルコンピュータであり、本体2201、筐体2202、表示部2203、キーボード2204、外部接続ポート2205、ポインティングマウス2206等を含む。本発明の電界発光素子を有する発光装置をその表示部2203に用いることにより作製される。
【0085】
図4(C)はモバイルコンピュータであり、本体2301、表示部2302、スイッチ2303、操作キー2304、赤外線ポート2305等を含む。本発明の電界発光素子を有する発光装置をその表示部2302に用いることにより作製される。
【0086】
図4(D)は記録媒体を備えた携帯型の画像再生装置(具体的にはDVD再生装置)であり、本体2401、筐体2402、表示部A2403、表示部B2404、記録媒体(DVD等)読み込み部2405、操作キー2406、スピーカー部2407等を含む。表示部A2403は主として画像情報を表示し、表示部B2404は主として文字情報を表示するが、本発明の電界発光素子を有する発光装置をこれら表示部A、B2403、2404に用いることにより作製される。なお、記録媒体を備えた画像再生装置には家庭用ゲーム機器なども含まれる。
【0087】
図4(E)はゴーグル型ディスプレイ(ヘッドマウントディスプレイ)であり、本体2501、表示部2502、アーム部2503を含む。本発明の電界発光素子を有する発光装置をその表示部2502に用いることにより作製される。
【0088】
図4(F)はビデオカメラであり、本体2601、表示部2602、筐体2603、外部接続ポート2604、リモコン受信部2605、受像部2606、バッテリー2607、音声入力部2608、操作キー2609、接眼部2610等を含む。本発明の電界発光素子を有する発光装置をその表示部2602に用いることにより作製される。
【0089】
ここで、図4(G)は携帯電話であり、本体2701、筐体2702、表示部2703、音声入力部2704、音声出力部2705、操作キー2706、外部接続ポート2707、アンテナ2708等を含む。本発明の電界発光素子を有する発光装置をその表示部2703に用いることにより作製される。なお、表示部2703は黒色の背景に白色の文字を表示することで携帯電話の消費電力を抑えることができる。
【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明の新規な高分子化合物は電解重合法によりパターニングされた層を容易に形成することができるため、フルカラーのエレクトロルミネッセンスディスプレイを生産性よく製造することができる。
【0091】
また、実施例4で述べたとおり、本発明発光装置の適用範囲は極めて広く、この発光装置をあらゆる分野の電気器具に適用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】図1は、電界発光素子の断面構造を示す図である。
【図2】図2は、発光装置の上面図である。
【図3】図3は、発光装置の上面図及び断面図である。
【図4】図4は、電気器具の具体例である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(I)を繰り返し単位とする高分子化合物。
【化1】

[一般式(I)中、m及びnは1または2を表し、Aは下記(a−1)〜(a−20)の何れかを表し、B、B’は同一または異なっており、下記(b−1)又は(b−2)のいずれかを表す。
【化2】

((a−1)のRとR、及び(a−20)のRとRは同一または異なっており、R〜Rは水素原子、ハロゲン原子、又は酸素原子、硫黄原子もしくは窒素原子を含有していても良い有機残基である。)
【化3】

((b−1)のRとR、及び(b−2)のRとR10は、それぞれ、同一または異なっており、R〜R10は水素原子、ハロゲン原子、又は酸素原子、硫黄原子もしくは窒素原子を含有していても良い有機残基である。)]

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−169633(P2007−169633A)
【公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−337878(P2006−337878)
【出願日】平成18年12月15日(2006.12.15)
【分割の表示】特願2004−562867(P2004−562867)の分割
【原出願日】平成15年12月15日(2003.12.15)
【出願人】(000153878)株式会社半導体エネルギー研究所 (5,264)
【Fターム(参考)】