説明

高分子発光材料、および該高分子発光材料を用いた有機エレクトロルミネッセンス素子

【課題】高い発光効率が得られると共に、長寿命の高分子発光材料を提供する。また、製造工程が簡略化され、大面積化が実現できる有機EL素子および表示装置を提供する。
【解決手段】イリジウム原子または白金原子を含有する金属錯体から導かれる構造単位を有する重合体からなることを特徴とする高分子発光材料。さらに、ホール輸送性の重合性化合物および電子輸送性の重合性化合物からなる群から選択される少なくとも1種の重合性化合物から導かれる構造単位を有する高分子材料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高分子発光材料、該発光材料を用いた有機エレクトロルミネッセンス素子、および該素子を用いた表示装置に関する。より詳しくは、本発明は、高い効率で発光し、長寿命が実現できる、金属錯体から導かれる構造単位を有する重合体からなる高分子発光材料、およびその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、有機エレクトロルミネッセンス素子(本明細書において、有機EL素子ともいう)の用途を拡大するために、材料開発が活発に行われている。
例えば、燐光発光性の低分子化合物として、ビフェニル系配位子を有するイリジウム錯体(特許文献1参照)などが開示されており、また、ポリ(N−ビニルカルバゾール)(PVK)中にイリジウム錯体を分散させた、ドープ型発光材料(非特許文献1)なども開示されている。このドープ型発光材料では、約4%の外部発光量子効率が得られている。
【0003】
しかしながら、上記のような材料においては、発光効率の点で、さらなる改良が求められていた。また、ドープ型発光材料では、ホストとなる高分子中に錯体が分散されているため、熱安定性に劣り、相分離または偏析を起こしやすい。したがって、長寿命の有機EL素子を製造できないという問題もあった。
【0004】
これに対して、例えば、特許文献2では、フェニルピリジン誘導体が配位したイリジウム錯体から導かれる構造単位を有する高分子発光材料が開示されている。このような高分子発光材料では、発光材料を含む有機溶剤または水の溶液を塗布することによって発光層を成膜でき、有機EL素子の製造工程の簡略化、および素子の大面積化が図られると共に、安定な素子が製造できる。
【0005】
しかしながら、上記高分子発光材料は寿命が短く、実用化のためには、さらに長寿命の高分子発光材料の開発が望まれていた。
【特許文献1】特開2003−308978
【特許文献2】特開2003−342325
【非特許文献1】Jpn.J.Appl.Phys.,39,L828(2000)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、高い発光効率が得られると共に、長寿命の高分子発光材料を提供することにある。また、本発明の別の目的は、製造工程が簡略化され、大面積化が実現できる有機EL素子および表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、
特定の金属錯体から導かれる構造単位を有する重合体からなる高分子発光材料により、高い発光効率と共に、長寿命が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は以下のとおりに要約される。
【0009】
[1]下記一般式(1)で表される金属錯体から導かれる構造単位を有する重合体からなることを特徴とする高分子発光材料。
【0010】
【化1】

【0011】
(式中、Mは、配位数nの金属原子(nは、4〜6の整数を示す。)を表し、PおよびQは、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基、または置換基を有していてもよい芳香族複素環基であり、PとQとで、2座配位子を構成しており、PとQとで、縮合環を形成していてもよく、L1は、重合性置換基を有するi座配位子(iは、配
位子の配座数を表し、1〜4の整数を示す。)であり、L2は、j座配位子(jは、配位
子の配座数を表し、1〜3の整数を示す。)であり、Xは、陰イオンまたは陽イオンの対イオンを表し、aは、1または2の整数を示し、bは、0〜3の整数を示し、cは、0〜3の整数を示し、n=2×a+i×1+j×bの関係を満たし、P、Q、L2およびXは、それぞれ、複数あるときは、互いに同じであっても異なっていてもよい。)
【0012】
[2]上記Mが、イリジウム原子または白金原子であることを特徴とする上記[1]に記載の高分子発光材料。
【0013】
[3]上記Mは、PおよびQで構成される2座配位子と、L1と、L2とで、5配位16電子または6配位18電子による結合方式をとることを特徴とする上記[1]または[2]に記載の高分子発光材料。
【0014】
[4]上記重合体が、さらに、ホール輸送性の重合性化合物および電子輸送性の重合性化合物からなる群から選択される少なくとも1種の重合性化合物から導かれる構造単位を有することを特徴とする上記[1]〜[3]に記載の高分子発光材料。
【0015】
[5]陽極と陰極とに挟まれた1層または2層以上の有機高分子層を含む有機エレクトロルミネッセンス素子において、上記有機高分子層の少なくとも1層に、上記[1]〜[4]のいずれかに記載の高分子発光材料を含むことを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
【0016】
[6]上記[5]に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子を用いた画像表示装置。
【0017】
[7]上記[5]に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子を用いた面発光光源。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る高分子発光材料によれば、高い発光効率および長寿命が得られると共に、製造工程が簡略化され、大面積化が実現できる有機EL素子および表示装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明について具体的に説明する。
<金属錯体から導かれる構造単位を有する重合体>
本発明に係る高分子発光材料は、特定の金属錯体から導かれる構造単位を有する重合体からなり、該重合体は、上記式(1)で表される金属錯体を含む単量体を重合して得られる。なお、本発明において、上記金属錯体の単量体は、1種単独で、または2種以上を組み合わせて用いてもよく、上記重合体には、該金属錯体の単独重合体、および2種以上の該金属錯体の共重合体も含む。
【0020】
上記高分子発光材料においては、上記金属錯体の単量体を重合しているため、金属錯体の三重項励起状態を経由する発光が得られる。すなわち、上記高分子発光材料を有機EL素子の発光層に用いる場合は、通常は利用が困難な三重項励起状態からの発光を、高い効率で得ることができる。
【0021】
上記式(1)で表される金属錯体において、Mは、配位数nの金属原子を表す。nは、4〜6の整数を示し、nは、5および6であることが好ましい。
Mとしては、特に限定されず、例えば、Pd、Pt、Ru、Zn、Mg、Sn、Pb、Al、Cd、Si、Ge、Ba、Sr、Be、Sc、Ti、Zr、Hf、Nb、Ta、Co、Rh、Ir、Ni、V、Cu、Ag、Ca、Hg、Mn、Feなどが挙げられる。
【0022】
これらのうちで、高い発光効率が得られるため、イリジウム原子または白金原子が好ましい。
PおよびQは、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基、または置換基を有していてもよい芳香族複素環基であり、PとQとで、2座配位子を構成している。また、PとQとで、縮合環を形成していてもよい。
【0023】
置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニル基、4−メチルフェニル基、4−エチルフェニル基、3−クロロフェニル基、3,5−ジメチルフェニル基、ジフェニルアミノフェニル基、ビフェニル基、ターフェニル基、ナフチル基、アンスリル基、フェナンスリル基、ピレニル基、トリル基、スルホフェニル基、ハロゲン置換ナフチル基などが挙げられる。
【0024】
置換基を有していてもよい芳香族複素環基としては、チエニル基、フリル基、ピロリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、イソチアゾリル基、イソオキサゾリル基等の五員環複素環基、ピラニル基、ピリジル基、ピラジニル基、ピリミジニル基、ピリダジニル基等の六員環複素環基、ビピリジル基、メチルピリジル基、ターチエニル基、プロピルチエニル基、イソベンゾフラニル基、インドリジニル基、イソインドリル基、インドリル基、インダゾリル基、プリニル基、インドリニル基、イソインドリニル基、クロメニル基、キノリジニル基、イソキノリル基、キノリル基、フタラジニル基、ナフチリジニル基、キナゾリニル基、カルバゾリル基、N−エチルカルバゾリル基、チアントレニル基、フェナントリジニル基、ペリミジニル基などが挙げられる。
【0025】
芳香族炭化水素基および芳香族複素環基が有していてもよい置換基としては、特に限定されず、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、tert−ブチル基、オクチル基、ベンジル基、フェネチル基等のアルキル基またはアラルキル基;ビニル基、アリル基(2−プロペニル基)、1−プロペニル基、iso−プロペニル基、2−ブテニル基等のアルケニル基;メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、2−エチル−オクチルオキシ基、フェノキシ基、4−ブチルフェノキシ基、ベンジルオキシ基等のアルコキシ基;アセチル基、プロピオニル基、イソブチリル基、メタクリロイル基、ベン
ゾイル基、ナフトイル基、アンスロイル基、トルオイル基等のカルボニル基;メチルアミノ基、エチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、メチルエチルアミノ基、ベンジルアミノ基、メチルベンジルアミノ基、アニリノ基、ジフェニルアミノ基、フェニルトリルアミノ基、ジトリルアミノ基等のアミノ基;ハロゲン;アゾ基;上記のようなアリール基、複素環基または縮合環などが挙げられる。
【0026】
PとQとで形成していてもよい縮合環としては、例えば、ベンゾ、ナフト、アントラ、アセナフトなどが挙げられ、また、フロ、イミダゾ、ピリド、キノ、チエノなどヘテロ環を含んでいてもよい。
【0027】
これらのうちで、PとQとで構成する2座配位子としては、具体的には、ビフェニル配位子およびフェナントレン配位子が好ましい。このような2座配位子を有することによって、高い発光効率と共に、長寿命が得られる。
【0028】
aは、1〜2の整数を示し、PおよびQは、それぞれ、複数あるときは、互いに同じであっても異なっていてもよい。
1は、重合性置換基を有するi座配位子(iは、配位子の配座数を表し、1〜4の整
数を示す。)である。L1は、単座配位子(i=1)であっても、多座配位子(i=2〜
4)であってもよいが、単座、2座および3座配位子(i=1〜3)であることが好ましい。なお、上記式(1)において、矢印は、L1が単座または多座でMに配位しているこ
とを表している。
【0029】
上記配位子としては、例えば、ヒドロキシル基;メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、2−エチル−オクチルオキシ基、フェノキシ基、4−ブチルフェノキシ基、ベンジルオキシ基等のアルコキシ基;フェニル基、4−メチルフェニル基、4−エチルフェニル基、3−クロロフェニル基、3,5−ジメチルフェニル基、トリフェニルアミノ基、ビフェニル基、ターフェニル基、ナフチル基、アンスリル基、フェナンスリル基、ピレニル基、トリル基、スルホフェニル基、ハロゲン置換ナフチル基等のアリール基;チエニル基、フリル基、ピロリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、イソチアゾリル基、イソオキサゾリル基等の五員環複素環基、ピラニル基、ピリジル基、ピラジニル基、ピリミジニル基、ピリダジニル基等の六員環複素環基、ビピリジル基、メチルピリジル基、ターチエニル基、プロピルチエニル基、イソベンゾフラニル基、インドリジニル基、イソインドリル基、インドリル基、インダゾリル基、プリニル基、インドリニル基、イソインドリニル基、クロメニル基、キノリジニル基、イソキノリル基、キノリル基、フタラジニル基、ナフチリジニル基、キナゾリニル基、カルバゾリル基、N−エチルカルバゾリル基、チアントレニル基、フェナントリジニル基、ペリミジニル基等の複素環基;トリフェニルホスフィノ基、トリメチルホスフィノ基、トリエチルホスフィノ基等のホスフィノ基;アミノ基、メチルアミノ基、エチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、メチルエチルアミノ基、ベンジルアミノ基、メチルベンジルアミノ基、アニリノ基、ジフェニルアミノ基、フェニルトリルアミノ基、ジトリルアミノ基等のアミノ基;β−ジケトン(2,4−ペンタンジオン、アセト酢酸エチルなど)からプロトンを一つ取り去ったβ−ジケトナート基などが挙げられる。また、上記置換基を任意に組み合わせたアゾ基であってもよい。
【0030】
なお、上記配位子は、重合性置換基の他にも置換基を有していてもよく、該置換基としては、特に限定されず、例えば、PおよびQが有していてもよい置換基と同様の置換基が挙げられる。
【0031】
これらのうちで、L1としては、トリフェニルホスフィノ基、トリメチルホスフィノ基
、β−ジケトナート基が好ましい。
上記重合性置換基としては、重合性官能基の部分を有することのほか、特に限定されな
い。例えば、PおよびQが有していてもよい置換基と同様の置換基などであって、かつ重合性官能基の部分を有する置換基が挙げられる。
【0032】
上記重合性官能基は、ラジカル重合性、カチオン重合性、アニオン重合性、付加重合性、および縮合重合性の官能基のいずれであってもよい。これらのうちで、ラジカル重合性の官能基は、重合体の製造が容易であるため好ましい。
【0033】
上記重合性官能基としては、アリル基、アルケニル基、アクリレート基、メタクリレート基、メタクリロイルオキシエチルカルバメート基等のウレタン(メタ)アクリレート基、ビニルアミド基およびそれらの誘導体などを挙げることができる。
【0034】
上記重合性官能基がアルケニル基である場合、L1は、下記式(A1)〜(A12)で
表される重合性置換基を有することが好ましい。
【0035】
【化2】

【0036】
これらのうちで、上記式(A1)、(A5)、(A7)で表される置換基は、上記金属錯体に、重合性置換基が容易に導入できるためより好ましい。
2は、j座配位子(jは、配位子の配座数を表し、1〜3の整数を示す。)である。
2は、単座配位子(i=1)であっても、多座配位子(i=2〜3)であってもよい。
なお、上記式(1)において、矢印は、L2が単座または多座でMに配位していることを
表している。
【0037】
上記配位子としては、例えば、フッ素、塩素等のハロゲンイオン、チオシアン酸イオンの他、L1と同様の配位子が挙げられる。なお、上記配位子は、置換基を有していてもよ
く、該置換基としては、特に限定されず、例えば、PおよびQが有していてもよい置換基と同様の置換基が挙げられる。
【0038】
これらのうちで、L2としては、ハロゲンイオン、チオシアン酸イオン、ヒドロキシル
基、トリフェニルホスフィノ基、トリメチルホスフィノ基、β−ジケトナート基が好ましい。
【0039】
bは、0〜3の整数を示し、L2が複数あるときは、互いに同じであっても異なってい
てもよい。
なお、L2は、上記に挙げたような2座配位子である代わりに、二重結合でMに結合す
る酸素原子であってもよい。
【0040】
Xは、陰イオンまたは陽イオンの対イオンを表す。
上記陰イオンとしては、例えば、F-、Cl-、Br-、I-、O2-、(O22-、(O2-、(OH)-、(SH)-、(SO42-、NH2-、N3-、(CN)-、(NCO)-、(NCS)-、(NO2-、(OAc)-、(ClO4-、(SbO4-、(Im)-、(BF4-などが挙げられ、上記陽イオンとしては、例えば、K+、Na+、NH4+、Li+などが挙げられるが、これらに限定されず、一般的な対イオンを用いてもよい。
【0041】
cは、0〜3の整数を示し、Xが複数あるときは、互いに同じであっても異なっていてもよい。
また、金属原子Mの配位数nと、配位子それぞれの配座数および個数とは、n=2×a+i×1+j×bの関係を満たす。
【0042】
Mは、PおよびQで構成される2座配位子と、L1と、L2とで、5配位16電子または6配位18電子による結合方式をとることが好ましい。これにより、安定で長寿命の高分子発光材料が得られる。
【0043】
上記式(1)で表される金属錯体としては、具体的には、下記式(A)〜(O)で表される錯体が挙げられるが、これらの錯体に限定されるものではない。ここで、Yは、重合性官能基を有する重合性置換基を表し、Phは、フェニル基を表し、Meは、メチル基を表す。
【0044】
【化3】

【0045】
【化4】

【0046】
【化5】

【0047】
【化6】

【0048】
これらのうちで、高い発光効率と共に、長寿命が得られるため、上記式(A)、(B)、(O)で表される錯体が好ましい。
上記式(1)で表される金属錯体は、公知の方法により製造できる。
【0049】
また、上記重合体の重量平均分子量は、1,000〜2,000,000であることが好ましく、5,000〜1,000,000であることがより好ましい。本明細書における分子量は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)法を用いて測定されるポリスチレン換算分子量をいう。上記分子量がこの範囲にあると、重合体が有機溶媒に可溶であり、均一な薄膜を得られるため好ましい。
【0050】
上記重合体は、ランダム共重合体、ブロック共重合体、および交互共重合体のいずれでもよい。
上記重合体の重合方法は、ラジカル重合、カチオン重合、アニオン重合、および付加重合のいずれでもよいが、ラジカル重合が好ましい。
<キャリア輸送性の重合性化合物から導かれる構造単位を有する共重合体>
本発明に用いられる重合体は、さらに、ホール輸送性の重合性化合物および電子輸送性の重合性化合物からなる群から選択される少なくとも1種の重合性化合物から導かれる構造単位を有することが好ましい。上記重合体は、1種または2種以上の上記金属錯体の単量体と共に、さらに、ホール輸送性の重合性化合物および電子輸送性の重合性化合物からなる群から選択される少なくとも1種の重合性化合物を含む単量体を共重合して得られる。なお、本明細書において、ホール輸送性の重合性化合物および電子輸送性の重合性化合物を併せて、キャリア輸送性の重合性化合物ともいう。
【0051】
すなわち、上記高分子発光材料は、1種または2種以上の上記金属錯体から導かれる構造単位と共に、1種または2種以上のホール輸送性の重合性化合物から導かれる構造単位、または1種または2種以上の電子輸送性の重合性化合物から導かれる構造単位を有する共重合体からなることが好ましい。このような高分子発光材料は、上記金属錯体から導かれる構造単位上で、ホールと電子とが効率よく再結合するため、高い発光効率が得られる。
【0052】
また、上記高分子発光材料は、1種または2種以上の上記金属錯体から導かれる構造単位と共に、1種または2種以上のホール輸送性の重合性化合物から導かれる構造単位と、1種または2種以上の電子輸送性の重合性化合物から導かれる構造単位とを有する共重合体からなることがより好ましい。上記高分子発光材料は、ホールと電子とがさらに効率よく再結合するため、より高い発光効率が得られる。また、上記高分子発光材料は、発光性、ホール輸送性および電子輸送性のすべての機能を備えており、他の有機材料を配合することなく、有機EL素子を作成できる。このため、有機EL素子の製造工程がさらに簡略化できると共に、熱的に安定で耐久性に優れた有機EL素子が得られる。
【0053】
上記ホール輸送性の重合性化合物および上記電子輸送性の重合性化合物は、上記重合性置換基を有することのほか、特に限定されず、公知のものが用いられる。
上記重合性置換基としては、重合性官能基の部分を有することのほか、特に限定されない。例えば、PおよびQが有していてもよい置換基と同様の置換基などであって、かつ重合性官能基の部分を有する置換基が挙げられる。
【0054】
上記重合性官能基は、ラジカル重合性、カチオン重合性、アニオン重合性、付加重合性、および縮合重合性の官能基のいずれであってもよい。これらのうちで、ラジカル重合性の官能基は、重合体の製造が容易であるため好ましい。
【0055】
上記重合性官能基としては、例えば、アリル基、アルケニル基、アクリレート基、メタクリレート基、メタクリロイルオキシエチルカルバメート基等のウレタン(メタ)アクリレート基、ビニルアミド基およびそれらの誘導体などを挙げることができる。
【0056】
上記重合性官能基がアルケニル基である場合、上記重合性化合物は、上記式(A1)〜
(A12)で表される重合性置換基を有することが好ましい。
上記ホール輸送性の重合性化合物としては、具体的には、下記式(E1)〜(E6)で表される化合物が好ましく、共重合体におけるキャリア移動度が高いため、下記式(E1)〜(E3)で表される化合物がより好ましい。
【0057】
【化7】

【0058】
上記電子輸送性の重合性化合物としては、具体的には、下記式(E7)〜(E14)で表される電子輸送性化合物が好ましく、共重合体におけるキャリア移動度が高いため、下記式(E7)、(E12)〜(E14)で表される化合物がより好ましい。
【0059】
【化8】

【0060】
なお、上記式(E1)〜(E14)で表されるキャリア輸送性の重合性化合物において、上記式(A1)で表される置換基を、上記式(A2)〜(A12)で表される置換基に代えた化合物も好適に用いられるが、重合性化合物に重合性置換基を容易に導入できるため、上記式(A1)および(A5)で表される置換基を有する化合物が特に好ましい。
【0061】
これらのうちで、上記共重合体は、上記金属錯体から導かれる構造単位と、上記ホール輸送性の重合性化合物として、上記式(E1)〜(E3)のいずれかで表される化合物から導かれる構造単位と、上記電子輸送性重合性化合物として、上記式(E7)、(E12)〜(E14)のいずれかで表される化合物から導かれる構造単位とを有することが特に好ましい。このような共重合体からなる高分子発光材料は、耐久性が高く、発光効率も高いため望ましい。この場合に、上記金属錯体として、上記式(A)または(O)で表される錯体を用いることは、高い輝度、さらに高い発光効率と共に、長寿命の高分子発光材料が得られるため、最も好ましい。
【0062】
上記式(E1)〜(E14)で表されるキャリア輸送性の重合性化合物は、公知の方法によって製造することができる。
また、上記共重合体の重量平均分子量は、1,000〜2,000,000であることが好ましく、5,000〜1,000,000であることがより好ましい。上記分子量がこの範囲にあると、共重合体が有機溶媒に可溶であり、均一な薄膜を得られるため好ましい。
【0063】
上記共重合体は、ランダム共重合体、ブロック共重合体、および交互共重合体のいずれでもよい。
上記共重合体における、上記金属錯体から導かれる構造単位数をxとし、キャリア輸送性化合物から導かれる構造単位数(ホール輸送性の重合性化合物および/または電子輸送性の重合性化合物から導かれる構造単位の総数)をyとしたとき(x、yは1以上の整数を示す)、全構造単位数に対する上記金属錯体から導かれる構造単位数の割合、すなわちx/(x+y)の値は、0.001〜0.5の範囲にあることが好ましく、0.001〜0.2の範囲にあることがより好ましい。x/(x+y)の値がこの範囲にあると、キャリア移動度が高く、濃度消光の影響が小さい、高い発光効率の有機EL素子が得られる。
【0064】
上記共重合体の重合方法は、ラジカル重合、カチオン重合、アニオン重合、および付加重合のいずれでもよいが、ラジカル重合が好ましい。
<有機EL素子>
本発明に係る高分子発光材料は、有機EL素子の材料として用いることが好ましい。上記有機EL素子は、陽極と陰極とに挟まれた1層または2層以上の有機高分子層を含み、上記有機高分子層の少なくとも1層に、上記高分子発光材料が含まれる。本発明に係る高分子発光材料は、簡便な塗布法で発光層を成膜できる利点がある。また、上記高分子発光材料が、上記金属錯体から導かれる構造単位と共に、ホール輸送性の重合性化合物から導かれる構造単位、および電子輸送性の重合性化合物から導かれる構造単位を有する共重合体からなる場合は、他の有機材料を配合することなく、有機EL素子を作成できる。このため、さらに製造工程が簡略化できると共に、安定性および耐久性の高い素子が得られる。
【0065】
本発明に係る有機EL素子の構成の一例を図1に示すが、本発明に係る有機EL素子の構成は、これに限定されない。図1では、透明基板(1)上に設けた陽極(2)および陰極(6)の間に、ホール輸送層(3)、発光層(4)および電子輸送層(5)を、この順で設けている。上記有機EL素子では、例えば、陽極(2)と陰極(6)の間に、1)ホール輸送層/発光層、2)発光層/電子輸送層のいずれかを設けてもよい。また、3)ホール輸送材料、発光材料、電子輸送材料を含む層、4)ホール輸送材料、発光材料を含む層、5)発光材料、電子輸送材料を含む層、6)発光材料の単独層のいずれかの層を一層のみ設けてもよい。さらに、発光層を2層以上積層してもよい。
【0066】
上記において、本発明に係る高分子発光材料が含まれる上記有機高分子層は、ホール輸送性および電子輸送性を併せ持つ発光層として利用できる。
上記の各層は、バインダとして高分子材料などを混合して、形成してもよい。上記高分子材料としては、例えば、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリスルホン、ポリフェニレンオキサイドなどが挙げられる。
【0067】
また、上記の各層に用いられる発光材料、ホール輸送材料および電子輸送材料は、それぞれ単独で各層を形成しても、機能の異なる材料を混合して、各層を形成していてもよい。本発明に係る有機EL素子における発光層においても、本発明に係る高分子発光材料の他に、発光層のキャリア輸送性を補う目的で、さらに他のホール輸送材料および/または
電子輸送材料を含んでいてもよい。このような輸送材料としては、低分子化合物であっても、高分子化合物であってもよい。
【0068】
上記ホール輸送層を形成するホール輸送材料、または発光層と混合させるホール輸送材料としては、例えば、TPD(N,N’−ジメチル−N,N’−(3−メチルフェニル)−1,1’−ビフェニル−4,4’ジアミン);α−NPD(4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル);m−MTDATA(4、4’,4’’−トリス(3−メチルフェニルフェニルアミノ)トリフェニルアミン)等の低分子トリフェニルアミン誘導体;ポリビニルカルバゾール;前記トリフェニルアミン誘導体に重合性置換基を導入して重合した高分子化合物;ポリパラフェニレンビニレン、ポリジアルキルフルオレン等の蛍光発光性高分子化合物などを挙げることができる。上記高分子化合物としては、例えば、特開平8−157575号公報に開示されているトリフェニルアミン骨格の高分子化合物などを挙げることができる。上記ホール輸送材料は、1種単独でも、2種以上を混合して用いてもよく、異なるホール輸送材料を積層して用いてもよい。ホール輸送層の厚さは、ホール輸送層の導電率などに依存するため、一概に限定できないが、好ましくは1nm〜5μm、より好ましくは5nm〜1μm、特に好ましくは10nm〜500nmであることが望ましい。
【0069】
上記電子輸送層を形成する電子輸送材料、または発光層と混合させる電子輸送材料としては、例えば、Alq3(アルミニウムトリスキノリノレート)等のキノリノール誘導体金属錯体、オキサジアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、トリアジン誘導体、トリアリールボラン誘導体等の低分子化合物;上記の低分子化合物に重合性置換基を導入して重合した高分子化合物を挙げることができる。上記高分子化合物としては、例えば、特開平10−1665号公報に開示されているポリPBDなどを挙げることができる。上記電子輸送材料は、1種単独でも、2種以上を混合して用いてもよく、異なる電子輸送材料を積層して用いてもよい。電子輸送層の厚さは、電子輸送層の導電率などに依存するため、一概に限定できないが、好ましくは1nm〜5μm、より好ましくは5nm〜1μm、特に好ましくは10nm〜500nmであることが望ましい。
【0070】
また、発光層の陰極側に隣接して、ホールが発光層を通過することを抑え、発光層内でホールと電子とを効率よく再結合させる目的で、ホール・ブロック層が設けられていてもよい。上記ホール・ブロック層を形成するために、トリアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、フェナントロリン誘導体などの公知の材料を用いることができる。
【0071】
陽極とホール輸送層との間、または陽極と陽極に隣接して積層される有機層との間に、ホール注入において注入障壁を緩和するために、バッファ層が設けられていてもよい。上記バッファ層を形成するために、銅フタロシアニン、ポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)とポリスチレンスルホン酸(PSS)との混合体などの公知の材料を用いることができる。
【0072】
陰極と電子輸送層との間、または陰極と陰極に隣接して積層される有機層との間に、電子注入効率を向上するために、厚さ0.1〜10nmの絶縁層が設けられていてもよい。上記絶縁層を形成するために、フッ化リチウム、フッ化マグネシウム、酸化マグネシウム、アルミナなどの公知の材料を用いることができる。
【0073】
上記のホール輸送層、発光層および電子輸送層の成膜方法としては、例えば、抵抗加熱蒸着法、電子ビーム蒸着法、スパッタリング法、インクジェット法、スピンコート法、印刷法、スプレー法、ディスペンサー法などを用いることができる。低分子化合物の場合は、抵抗加熱蒸着または電子ビーム蒸着が好適に用いられ、高分子材料の場合は、インクジェット法、スピンコート法、または印刷法が好適に用いられる。
【0074】
本発明に係る高分子発光材料を用いて発光層を成膜する場合は、インクジェット法、スピンコート法、ディップコート法または印刷法を用いることができるため、製造工程を簡略化することができる。
【0075】
本発明に係る有機EL素子に用いる陽極材料としては、例えば、ITO(酸化インジウムスズ)、酸化錫、酸化亜鉛、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアニリン等の導電性高分子など、公知の透明導電材料を用いることができる。この透明導電材料によって形成された電極の表面抵抗は、1〜50Ω/□(オーム/スクエアー)であることが好ましい。上記陽極材料の成膜方法としては、例えば、電子ビーム蒸着法、スパッタリング法、化学反応法、コーティング法などを用いることができる。陽極の厚さは50〜300nmであることが好ましい。
【0076】
本発明に係る有機EL素子に用いる陰極材料としては、例えば、Li、Na、K、Cs等のアルカリ金属;Mg、Ca、Ba等のアルカリ土類金属;Al;MgAg合金;AlLi、AlCa等のAlとアルカリ金属との合金など、公知の陰極材料を用いることができる。上記陰極材料の成膜方法としては、例えば、抵抗加熱蒸着法、電子ビーム蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法などを用いることができる。陰極の厚さは、好ましくは10nm〜1μm、より好ましくは50〜500nmであることが望ましい。アルカリ金属、アルカリ土類金属などの活性の高い金属を陰極として使用する場合には、陰極の厚さは、好ましくは0.1〜100nm、より好ましくは0.5〜50nmであることが望ましい。また、この場合には、上記陰極金属を保護する目的で、この陰極上に、大気に対して安定な金属層が積層される。上記金属層を形成する金属として、例えば、Al、Ag、Au、Pt、Cu、Ni、Crなどが挙げられる。上記金属層の厚さは、好ましくは10nm〜1μm、より好ましくは50〜500nmであることが望ましい。
【0077】
本発明に係る有機EL素子の基板としては、上記発光材料の発光波長に対して透明な絶縁性基板を使用することができ、ガラスのほか、PET(ポリエチレンテレフタレート)、ポリカーボネート等の透明プラスチックなどを用いることができる。
【0078】
本発明に係る有機EL素子は、公知の方法で、マトリックス方式またはセグメント方式による画素として画像表示装置に好適に用いられる。また、上記有機EL素子は、画素を形成せずに、面発光光源としても好適に用いられる。
<用途>
本発明に係る高分子発光材料、および該高分子発光材料を用いた有機EL素子は、表示素子、ディスプレイ、バックライト、電子写真、照明光源、記録光源、露光光源、読み取り光源、標識、看板、インテリア、光通信などに好適に用いられる。
【0079】
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
[実施例]
[合成例1]イリジウム錯体(1−1)の合成
【0080】
【化9】

【0081】
(1)ジフェニル(4−ビニルフェニル)ホスフィンの合成
マグネシウム341mg(14mmol)に脱水THF20mlを加え、4−ブロモスチレン2.70g(15mmol)のTHF溶液10mlを滴下し、Grignard試薬を調製した。得られた溶液に、クロロジフェニルホスフィン2.50g(11mmol)のTHF溶液10mlを滴下し、室温で1.5時間撹拌した。減圧下で溶媒を留去した後、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、ヘキサン溶液から再結晶させることにより、ジフェニル(4−ビニルフェニル)ホスフィン2.30g(8.3mmol)を得た。
(2)イリジウム錯体(1−1)の合成
ビス(シクロオクタジエン)ジクロロ二イリジウム0.20g(0.29mmol)およびビフェニレン0.090g(0.59mmol)の混合物に、1,2−ジクロロエタン10mlを加え、4時間加熱還流した。得られた反応混合物に、トリフェニルホスフィン0.10g(0.38mmol)およびジフェニル(4−ビニルフェニル)ホスフィン2.30g(8.3mmol)を加え、10分間加熱還流した。次いで、減圧下で溶媒を留去した後、ジクロロメタン−ヘキサン混合溶液から再結晶させることにより、イリジウム錯体(1−1)0.05g(0.07mmol)を得た。
[合成例2]イリジウム錯体(1−2)の合成
【0082】
【化10】

【0083】
(1)6−(4−ビニルフェニル)−2,4−ヘキサンジオンの合成
水素化ナトリウム1.23g(60% in oil)(31mmol)を、窒素雰囲気下で秤量し、これに乾燥テトラヒドロフラン60mlを加えて、氷浴で0℃に冷却した。この懸濁液に、アセチルアセトン2.5g(24mmol)およびヘキサメチルホスホリックトリアミド1mlの混合溶液を滴下し、無色の沈殿を得た。0℃で10分間撹拌した後、n−ブチルリチウムのヘキサン溶液(1.6M)17.5ml(28mmol)を滴下し、沈殿を溶解させ、さらに0℃で20分間撹拌した。得られた薄黄色の溶液に4−ビニルベンジルクロライド4.0g(26mmol)を滴下し、反応液を室温に戻して20分間撹拌後、希塩酸を加えて水層を酸性にした。有機層を飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した後、エバポレータで溶媒を留去した。シリカゲルカ
ラムクロマトグラフィーで精製することにより、6−(4−ビニルフェニル)−2,4−ヘキサンジオン3.0g(14mmol)を得た。
(2)イリジウム錯体(1−2)の合成
ビス(シクロオクタジエン)ジクロロ二イリジウム0.20g(0.29mmol)およびビフェニレン0.090g(0.59mmol)の混合物に、1,2−ジクロロエタン10mlを加え、4時間加熱還流した。得られた反応混合物に、トリフェニルホスフィン0.20g(0.76mmol)を加え、10分間加熱還流した。次いで、減圧下で溶媒を留去した後、炭酸ナトリウム0.10g(0.94mmol)、6−(4−ビニルフェニル)−2,4−ヘキサンジオン0.20g(0.92mmol)およびTHF10mlを加えて、2時間加熱還流した。次いで、減圧下で溶媒を留去した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:ジクロロメタン)で精製することにより、イリジウム錯体(1−2)0.10g(0.09mmol)を得た。
[実施例1]共重合体(2−1)の合成
密閉容器に80mgのイリジウム錯体(1−1)、重合性化合物(E2)460mgおよび重合性化合物(E7)460mgを入れ、脱水トルエン(9.9ml)を加えた。次いで、V−601(和光純薬工業製)のトルエン溶液(0.1M、198μl)を加え、凍結脱気操作を5回繰り返した。真空のまま密閉し、60℃で60時間撹拌した。反応後、反応液をアセトン(500ml)中に滴下し、沈殿を得た。さらにトルエン−アセトンでの再沈殿精製を2回繰り返した後、50℃で一晩真空乾燥し、目的とする共重合体(2−1)を得た。
[実施例2]共重合体(2−2)の合成
イリジウム錯体(1−1)の代わりにイリジウム錯体(1−2)を用いたほかは、実施例1と同様にして、共重合体(2−2)を得た。
[実施例3]有機EL素子の作製およびEL発光特性の評価
ITO付き基板(ニッポ電機(株)製)を用いた。これは、25mm角のガラス基板の一方の面に、幅4mmのITO(酸化インジウム錫)電極(陽極)が、ストライプ状に2本形成された基板であった。
【0084】
まず、上記ITO付き基板上に、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)・ポリスチレンスルホン酸(バイエル(株)製、商品名「バイトロンP」)を、回転数3500rpm、塗布時間40秒の条件で、スピンコート法により塗布した。その後、真空乾燥器で減圧下、60℃で2時間乾燥し、陽極バッファ層を形成した。得られた陽極バッファ層の膜厚は、約50nmであった。
【0085】
次に、共重合体(2−1)90mgをトルエン(和光純薬工業(株)製、特級)2910mgに溶解し、この溶液を孔径0.2μmのフィルターでろ過し、塗布溶液を調製した。次いで、上記陽極バッファ層上に、上記塗布溶液を、回転数3000rpm、塗布時間30秒の条件で、スピンコート法により塗布した。塗布後、室温(25℃)で30分間乾燥し、発光層を形成した。得られた発光層の膜厚は、約100nmであった。
【0086】
次に、発光層を形成した基板を蒸着装置内に載置した。次いで、カルシウムおよびアルミニウムを重量比1:10で共蒸着し、陽極の延在方向に対して直交するように、幅3mmの陰極をストライプ状に2本形成した。得られた陰極の膜厚は、約50nmであった。
【0087】
最後に、アルゴン雰囲気中で、陽極と陰極とにリード線(配線)を取り付けて、縦4mm×横3mmの有機EL素子を4個作製した。上記有機EL素子に、プログラマブル直流電圧/電流源(TR6143、(株)アドバンテスト社製)を用いて電圧を印加して発光させた。その発光輝度を、輝度計(BM−8、(株)トプコン社製)を用いて測定した。作製した有機EL素子は、赤色の発光を示し、最大発光外部量子効率は5.1%、最高輝度は300cd/m2であった。
[実施例4]有機EL素子の作製およびEL発光特性の評価
共重合体(2−1)の代わりに共重合体(2−2)を用いたほかは、実施例3と同様にして、有機EL素子を作製し、発光色および発光輝度の測定を行った。作製した有機EL素子は、橙色の発光を示し、最大発光外部量子効率は5.6%、最高輝度は1050cd/m2であった。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】図1は、本発明に係る有機EL素子の例の断面図である。
【符号の説明】
【0089】
1: ガラス基板
2: 陽極
3: ホール輸送層
4: 発光層
5: 電子輸送層
6: 陰極


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される金属錯体から導かれる構造単位を有する重合体からなることを特徴とする高分子発光材料。
【化1】

(式中、Mは、配位数nの金属原子(nは、4〜6の整数を示す。)を表し、PおよびQは、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基、または置換基を有していてもよい芳香族複素環基であり、PとQとで、2座配位子を構成しており、PとQとで、縮合環を形成していてもよく、L1は、重合性置換基を有するi座配位子(iは、配
位子の配座数を表し、1〜4の整数を示す。)であり、L2は、j座配位子(jは、配位
子の配座数を表し、1〜3の整数を示す。)であり、Xは、陰イオンまたは陽イオンの対イオンを表し、aは、1または2の整数を示し、bは、0〜3の整数を示し、cは、0〜3の整数を示し、n=2×a+i×1+j×bの関係を満たし、P、Q、L2およびXは、それぞれ、複数あるときは、互いに同じであっても異なっていてもよい。)
【請求項2】
前記Mが、イリジウム原子または白金原子であることを特徴とする請求項1に記載の高分子発光材料。
【請求項3】
前記Mは、PおよびQで構成される2座配位子と、L1と、L2とで、5配位16電子または6配位18電子による結合方式をとることを特徴とする請求項1または2に記載の高分子発光材料。
【請求項4】
前記重合体が、さらに、ホール輸送性の重合性化合物および電子輸送性の重合性化合物からなる群から選択される少なくとも1種の重合性化合物から導かれる構造単位を有することを特徴とする請求項1〜3に記載の高分子発光材料。
【請求項5】
陽極と陰極とに挟まれた1層または2層以上の有機高分子層を含む有機エレクトロルミネッセンス素子において、前記有機高分子層の少なくとも1層に、請求項1〜4のいずれかに記載の高分子発光材料を含むことを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項6】
請求項5に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子を用いた画像表示装置。
【請求項7】
請求項5に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子を用いた面発光光源。


【図1】
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【公開番号】特開2007−31680(P2007−31680A)
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−221493(P2005−221493)
【出願日】平成17年7月29日(2005.7.29)
【出願人】(000002004)昭和電工株式会社 (3,251)
【Fターム(参考)】