説明

高分子繊維材料のめっき方法及び高分子繊維材料の製造方法並びに被めっき用高分子繊維材料

【目的】高分子繊維材料の強度(強力)を低下させずに密着性を向上させ、これにより、めっき皮膜の導電性の低下を防止するともに、導電性のバラツキを減少させることができる高分子繊維材料のめっき方法等を提供すること。
【解決手段】本発明に係るめっき方法は、(1)高分子繊維材料をラジカル処理するラジカル処理工程と、(2)ラジカル処理工程を経た高分子繊維材料Aをカチオン系界面活性剤溶液に浸漬するカチオン処理工程と、(3)カチオン処理工程を経た高分子繊維材料BをPdとSnのコロイド溶液に浸漬するSn−Pd触媒浸漬工程と、(4)Sn−Pd触媒浸漬工程を経た高分子繊維材料Cを酸溶液に浸漬するアクセレーター処理工程とを備える。更に、Sn−Pd処理工程を経た高分子繊維材料Dを無電解めっき又は電気めっきするめっき工程を備えるとよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高分子繊維材料のめっき方法及び高分子繊維材料の製造方法並びに被めっき用高分子繊維材料に関し、更に詳しくは、高分子繊維材料の強度(強力)を低下させることなく、めっき皮膜の密着性を向上させ、これにより、めっき皮膜の導電性の低下やバラツキを減少させるとともに、炭酸ガスや苛性ソーダ等の劇薬を使用しない環境と人間に優しいめっき技術に関する。
【背景技術】
【0002】
この種のめっき技術として、特許文献1に開示の金属めっきされた有機高分子繊維の製造方法には、アラミド繊維をエッチングした後、シランカップリング剤を介してPd金属粒子をアラミド繊維表面に固着させた上でCu、Ni、Co等の金属をめっきする技術が開示されている。
また、特許文献2に開示の低熱膨張線状体の製造方法には、脱脂処理→キャタリップ処理→キャタポジット処理→アクセレーター処理→化学銅めっきという工程を経て高分子繊維材料をめっきする方法が開示されている。
【0003】
また、特許文献3、特許文献4及び非特許文献1に開示の超臨界流体を用いる高分子材料のめっきには、超臨界CO流体に金属錯体(例えば、Pt錯体、Ni錯体、Pd錯体)を溶解させた状態で被めっき物を処理して、金属錯体を被めっき物に吸着・固定化し、更に、熱処理によりその金属を析出させ、これをめっきの核としてめっきする技術が開示されている。
【0004】
また、特許文献5に開示の高分子繊維材料のめっき方法及び製造方法には、精練工程→プラズマ処理工程→アルカリ処理工程→カチオン処理工程→第一Sn−Pd触媒浸漬工程→第一アクセレーター処理工程→熱処理工程→第二Sn−Pd触媒浸漬工程→第二アクセレーター処理工程という工程を経て高分子繊維材料をめっきする方法が開示されている。
【0005】
また、特許文献6に開示の導電性金属被覆微粒子の製造方法及びその製造物には、ヒドロキシル基やペルオキシド基を導入する方法が開示されている。
【0006】
【特許文献1】特開2003−171869
【特許文献2】特開2006−85915
【特許文献3】特開2007−56287
【特許文献4】特開2008−208456
【特許文献5】特開2010−59532
【特許文献6】特開2007−184278
【非特許文献1】堀 照夫; 超臨界流体を用いる高分子材料のめっき, 表面技術, Vol. 56, p.79 (2005)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載のシランカップリング剤を使用しためっき技術では、めっき皮膜と被めっき物との密着性が悪いという問題がある。
また、特許文献2に記載の繊維材料のめっき方法では、繊維材料の表面を脱脂処理により中和した状態とし、その中和状態の繊維材料の表面をSn−Pd合金核によって覆う。しかしながら、その中和状態の繊維材料の表面とSn−Pd合金核とは、ファンデルワールス力によって互いに引きつけ合う状態であるため、その後のアクセレーター処理を経て化学銅めっきを施しても、めっき皮膜と被めっき物との密着性が悪いという問題がある。
また、特許文献3、特許文献4及び非特許文献1に記載の超臨界CO流体を用いるめっき技術は、地球温暖化の原因であるCOを大量に使用するという問題がある。また、超臨界CO流体を取り扱うための設備費や使用するパラジウム錯体が非常に高価であるという問題がある。また、超臨界流体処理後、熱処理を行うため、高分子繊維材料の強度(強力)が低下する問題がある。さらに、超臨界流体処理は、バッチ処理となるため、連続しためっき工程を行えないという問題がある。
【0008】
また、特許文献5に記載の高分子繊維材料のめっき方法では、アルカリ処理工程でNaOH溶液を使い、更に、熱処理を行うことで、繊維強度が低下するという問題がある。また、Sn−Pd触媒浸漬工程とアクセレーター処理工程をそれぞれ2回行う必要があり、製造工程が増え、製造コストが増加する問題がある。また、熱処理工程は、バッチ処理となるため、連続しためっき工程を行えないという問題がある。
更に、特許文献6に記載の方法とは異なる手法が所望されている。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、本発明の第一の目的は、高分子繊維材料の強度(強力)を低下させずに密着性を向上させ、これにより、めっき皮膜の導電性の低下を防止するともに、導電性のバラツキを減少させることができる高分子繊維材料のめっき方法及び高分子繊維材料の製造方法並びに被めっき用高分子繊維材料を提供することにある。
本発明の第二の目的は、炭酸ガスや苛性ソーダ等の劇薬を使用しない環境と人間に優しい高分子繊維材料のめっき方法及び高分子繊維材料の製造方法並びに被めっき用高分子繊維材料を提供することにある。
本発明の第三の目的は、連続しためっき工程を可能とし、これにより、廉価に実施又は製造することができる高分子繊維材料のめっき方法及び高分子繊維材料の製造方法並びに被めっき用高分子繊維材料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明に係る第一の高分子繊維材料のめっき方法は、
高分子繊維材料をラジカル処理するラジカル処理工程と、
前記ラジカル処理工程を経た高分子繊維材料AをPdとSnのコロイド溶液に浸漬するSn−Pd触媒浸漬工程と、
前記Sn−Pd触媒浸漬工程を経た高分子繊維材料Cを酸又はアルカリ溶液に浸漬するアクセレーター処理工程とを備えたことを要旨とする。
また、上記課題を解決するために、本発明に係る第二の高分子繊維材料のめっき方法は、
高分子繊維材料をラジカル処理するラジカル処理工程と、
前記ラジカル処理工程を経た高分子繊維材料Aをカチオン系界面活性剤溶液に浸漬するカチオン処理工程と、
前記カチオン処理工程を経た高分子繊維材料BをPdとSnのコロイド溶液に浸漬するSn−Pd触媒浸漬工程と、
前記Sn−Pd触媒浸漬工程を経た高分子繊維材料Cを酸又はアルカリ溶液に浸漬するアクセレーター処理工程とを備えたことを要旨とする。
【0011】
前記高分子繊維材料としては、例えば、芳香族ポリアミド(ポリパラフェニレンテレフタルアミド)、ポリエステル、ポリプロピレン、ナイロン、ポリフェニレンサルファイド、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール、アラミド繊維、パラ型アラミド繊維(コポリパラフェニレン・3,4’オキシジフェニレン・テレフタラミド)、メタ型アラミド繊維、ガラス繊維、アルミナ繊維、カーボン繊維、その他の有機,無機高分子繊維材料が好ましい。
【0012】
前記ラジカル処理工程は、特に限定されないが、使用するラジカルは、高周波電力や直流電力を用いて大気圧下でガス(N、N+O、空気、N+空気、Ar+O、Ar+空気等)を励起させてプラズマを発生させ、そのプラズマで生成されたラジカル(Oラジカル、OHラジカル、Nラジカル等)が好ましい。
そして、当該ラジカル処理工程は、常温大気雰囲気下で照射口サイズが幅0.1〜20mm、長さ5mm〜60mm、好ましくは、幅0.5mm、長さ16mmのラジカル照射口からラジカルを照射し、ラジカル照射口真下(真下とはラジカル照射口からの距離がゼロという意味)又はラジカル照射口から0超〜5cm、好ましくは、1cm以下、離れた位置に高分子繊維材料を配置して、これを照射口に対して長手方向に繊維走査速度1〜600mm/s、好ましくは、1〜10mm/sで流しながらラジカルと接触させて実施することが好ましい。当該好ましい条件でラジカル照射を1〜9回実施するとよい。但し、当該好ましい条件では10回以上の実施は却って形成させる凹凸を小さくする。
【0013】
ラジカル処理により形成される凹凸は、その表面粗さRaが10〜100nmであり、かつ、その凹凸の平均間隔が10〜100nmであり、その凹凸表面には、図1(a)に示すように、カルボキシル基、カルボニル基その他の親水基が付与される。このラジカル処理により、本発明に係る被めっき用高分子繊維材料が得られる。
ラジカル処理によれば、プラズマ処理の場合のように光や荷電粒子(イオンや電子)によるダメージが発生しない。
ラジカル処理による親水化により、後続のSn−Pd触媒付与工程でのなじみがよくなる。また、ラジカル工程で形成された凹凸表面は、Sn−Pd触媒付与工程でもそのまま維持され、めっき処理におけるアンカー効果の要因となる。
【0014】
ここで、ラジカル処理を実施した後、Sn−Pd触媒付与工程を実施する前に、カチオン処理を実施してもよい。カチオン処理ではクーロン力(正負の電荷の相互作用、以下同じ)により凹凸表面がくまなくカチオン化され、後続のSn−Pd触媒付与工程におけるなじみがカチオン処理を実施しなかった場合に比べて更によくなる。当該カチオン処理工程で用いるカチオン系界面活性剤溶液は、特に限定されないが、例えば、第四級アンモニウム塩(例えば、モノアルキルアンモニウムクロライド(45℃、5分、0.01〜10%)、テトラメチルアンモニウムクロライド(55℃、5分、0.01〜10%)、テトラブチルアンモニウムクロライド(50℃、10分、0.01〜10%))、カチオンポリマー(例えば、ポリアミドポリアミン・エピクロロヒドリン系ポリマー)が好適である。
当該カチオン処理工程によれば、図1(b)に示すように、(1)広い表面積において、且つ、(2)親水基付与部位においても高分子繊維材料の表面がカチオン化される。カチオン処理において、温度条件は40〜70℃で適宜選択でき、pHその他の処理条件についても適宜変更しうる。
【0015】
前記Sn−Pd触媒浸漬工程で用いるSn−Pd触媒溶液は、特に限定されないが、PdとSnのコロイド溶液が好ましく、例えば、塩化スズ(II)と塩化パラジウム(II)をそれぞれ塩酸溶液で溶解させ、これらを攪拌しながら混合し、加熱しながら熟成させて作製したもの(表2参照)が好ましい。浸漬温度は25℃〜60℃が好ましく、浸漬時間は1分〜10分が好ましい。これにより、図1(c)に示すように、PdとSnを当該高分子繊維材料の表面に、(1)広い表面積において、且つ、(2)親水基付与部位においても吸着・結合させることができる。カチオン処理がなされている場合には、クーロン力の寄与により更にこの効果が高まる。
【0016】
前記アクセレーター処理工程で用いられる処理溶液は、特に限定されないが、例えば、Snを溶解させるがPdが溶けない酸又はアルカリ溶液が好ましく、濃度、温度及び処理時間もまた、特に限定されない。好適な酸溶液の例として、硫酸(10%、45℃、5分)、塩酸(10%、室温〜50℃、5分)、フッ化水素酸(5%、室温、5分)、ホウフッ化水素酸(5〜10%、室温、5分)が挙げられ、好適なアルカリ溶液の例として、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニアが挙げられる。
これにより、図1(d)に示すように、Sn−Pd触媒浸漬工程で吸着させたPd及びSnのうちSnを溶解・除去し、Pdのみを当該高分子繊維材料の表面に、(1)広い表面積において、且つ、(2)親水基付与部位においても吸着・結合させることができる。
【0017】
本発明に係る高分子繊維材料のめっき方法は、更に、前記アクセレーター処理工程に代えて、前記Sn−Pd触媒浸漬工程を経た高分子繊維材料Cを導体化処理液に浸漬する導体化処理工程を備えてもよい。ここで、導体化処理液は、特に限定されないが、例えば、後掲の表2に記載のものが好適である。これにより、導電性皮膜として、銅皮膜、又は、硫化パラジウム皮膜を形成させることができる。
【0018】
本発明に係る高分子繊維材料のめっき方法は、更に、前記Sn−Pd処理工程又は前記導体化処理工程を経た高分子繊維材料Dを無電解めっき又は電気めっきするめっき工程を備えることが好ましい。ここで、無電解めっきは、特に限定されないが、例えば、無電解銅めっき、無電解ニッケルめっき、無電解銀めっきが好適である(表2参照)。また、電気めっきは、特に限定されないが、例えば、電気銅めっき、電気ニッケルめっき、電気銀めっき、電気金めっき、電気Snめっきが好適である(表2参照)。
【0019】
めっき工程においては、図1(e)に示すように、凹凸表面によりアンカー効果が発揮されるため凹凸を埋めるようにめっき皮膜が形成され、更にその上にめっき皮膜が析出する。従って、めっき皮膜の密着性を向上させることができる。無電解めっき又は電気めっきにより該当する金属皮膜が形成されためっき済みの高分子繊維材料が得られる。
【0020】
上記課題を解決するために、本発明に係る高分子繊維材料の製造方法は、本発明に係る高分子繊維材料のめっき方法を使用することを要旨とする。
【0021】
上記課題を解決するために、本発明に係る電気めっき又は無電解めっきに用いられる被めっき用高分子繊維材料は、その表面粗さRaが10〜100nm、かつ、その凹凸の平均間隔が10〜100nmであり、その表面にはカルボキシル基、カルボニル基その他の親水基が付与されていることを要旨とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係る高分子繊維材料のめっき方法によれば、ラジカル処理工程で、高分子繊維材料(被めっき物)の表面に凹凸が形成され、且つ、その凹凸表面に親水基が付与される。従って、ラジカル処理工程がなされない場合(すなわち、凹凸が形成されず、又は、親水基が付与されない場合)に比べて、Sn−Pd触媒浸漬工程におけるSn−Pdコロイドのアニオンがその高分子繊維材料の凹凸表面に、(1)広い表面積において、且つ、(2)親水基付与部位においても強固に吸着・結合する(なじみがよい)。そして、アクセレーター処理工程がなされると、Snが溶けてPdのみがその高分子繊維材料の凹凸表面へ(1)広い表面積において、且つ、(2)親水基付与部位においても強固に吸着・結合する。
これを電気めっき又は無電解めっきに供すると、ラジカル処理工程において形成された凹凸表面によりアンカー効果が発揮されるため凹凸を埋めるようにめっき皮膜が形成される。更に、その上にめっき皮膜が析出する。従って、めっき皮膜の密着性を向上させることができる。そのため、めっき皮膜の導電性の低下が防止される。
【0023】
ラジカル処理工程とSn−Pd触媒付与工程との間にカチオン処理工程がなされた場合には、クーロン力に因る吸着力・結合力が付加される。その分、Sn−Pd触媒付与工程における触媒のなじみが更に向上するという効果がある。
【0024】
これを電気めっき又は無電解めっきに供すると、ラジカル処理工程において形成された凹凸表面によりアンカー効果が発揮されるため凹凸を埋めるようにめっき皮膜が形成される。このアンカー効果は、カチオン処理工程がなされた場合にはクーロン力に因る吸着力・結合力が付加された分だけ、更に高まり、その上にめっき皮膜が析出する。従って、めっき皮膜の密着性を向上させることができる。そのため、めっき皮膜の導電性の低下が防止される。
更に、以上においては、プラズマではなくラジカルを用いているためプラズマでの光や荷電粒子(イオンや電子)によるダメージが発生せず、また、熱処理工程は不要であるため、高分子繊維材料の強度(強力)を低下させることもない。
【0025】
本発明に係る高分子繊維材料のめっき方法は、炭酸ガスや苛性ソーダ等の劇薬をしないため、環境と人間に優しいという効果がある。
本発明に係る高分子繊維材料のめっき方法は、熱処理工程が不要であるため、ボビン状態の糸を装置から装置へ移し替える作業が不要となり、最初から最後まで連続した処理(ボビン・トゥー・ボビン)が可能となるという効果がある。
本発明に係る高分子繊維材料の製造方法及び被めっき用高分子繊維材料は、本発明に係る高分子繊維材料のめっき方法を使用するもの又はこれに適したものであるから本発明に係る高分子繊維材料のめっき方法と同様の効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の一実施形態に係る高分子繊維材料のめっき方法を実施した場合における被めっき物の表面状態の模式図である。
【図2A】実施例1Aについてラジカル処理を1回行った後の凹凸表面を示す走査型顕微鏡写真である。
【図2B】実施例2Aについてラジカル処理を2回行った後の凹凸表面を示す走査型顕微鏡写真である。
【図2C】実施例7Aについてラジカル処理を10回行った後の凹凸表面を示す走査型顕微鏡写真である。
【図3】比較例1についてラジカル処理を行っていない状態の表面を示す走査型顕微鏡写真である。
【図4A】実施例1Aについてラジカル処理を1回行った後のX線光電子分光分析の結果を示すグラフである。
【図4B】実施例2Aについてラジカル処理を2回行った後のX線光電子分光分析の結果を示すグラフである。
【図4C】実施例7Aについてラジカル処理を10回行った後のX線光電子分光分析の結果を示すグラフである。
【図5】比較例1についてラジカル処理を行っていない場合のX線光電子分光分析の結果を示すグラフである。
【図6】めっき(カチオン処理工程)前(実施例1Aと比較例2)の強力保持率を未処理の素材の強力を基準として比較したグラフである。
【図7】導電性試験のイメージ図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態に係る高分子繊維材料のめっき方法について説明する。
めっき処理に供される高分子繊維材料は、例えば、芳香族ポリアミド(ポリパラフェニレンテレフタルアミド)、ポリエステル、ポリプロピレン、ナイロン、ポリフェニレンサルファイド、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール、アラミド繊維、パラ型アラミド繊維(コポリパラフェニレン・3,4’オキシジフェニレン・テレフタラミド)、メタ型アラミド繊維、ガラス繊維、アルミナ繊維、カーボン繊維、その他の有機,無機高分子繊維材料が好ましい。
【0028】
ラジカル処理をこれらの高分子繊維材料に施すと、励起されラジカル状態となった反応性の高いOラジカル、OHラジカル、Nラジカル等により繊維表面の結合の弱い部分が化学的にエッチングされる。これにより、凹凸表面が形成され、かつ、その凹凸表面に親水基が付与される。
そのため、(1)触媒のなじみがよくなるとともに、(2)カチオン化がなされる場合にはクーロン力の寄与により凹凸表面がくまなくカチオン化されることによる触媒のなじみがよくなり、(3)凹凸表面に由来するアンカー効果によりめっき物の被めっき物に対する密着性向上に寄与する。また、ガラス繊維、アルミナ繊維が適用しうるのは、ラジカル処理による表面改質効果により水濡れ性が向上するためである。
【0029】
本発明の第一の実施形態に係る高分子繊維材料のめっき方法は、工程順に、(1)ラジカル処理工程、(2)カチオン処理工程、(3)水洗工程、(4)Sn−Pd触媒浸漬工程、(5)水洗工程、(6)アクセレーター処理工程、(7)水洗工程、(8)めっき工程(無電解めっき又は電気めっき)、(9)水洗工程、(10)乾燥工程からなる。本発明の第二の実施形態に係る高分子繊維材料のめっき方法は、工程順に、(1)ラジカル処理工程、(2)Sn−Pd触媒浸漬工程、(3)水洗工程、(4)アクセレーター処理工程、(5)水洗工程、(6)めっき工程(無電解めっき又は電気めっき)、(7)水洗工程、(8)乾燥工程からなる。第一の実施形態と第二の実施形態とで異なるのはカチオン処理工程の有無である。
尚、高分子繊維材料に静電防止剤が付着している場合には、それを除去する工程を前処理として行うとよい。
以下、各工程について説明する。
【0030】
(1)ラジカル処理工程
ラジカル処理工程は、処理前の高分子繊維材料(図1処理前参照)をラジカル処理することにより、当該高分子繊維材料の表面の有機汚れを除去するとともに、高分子繊維材料の表面に凹凸を形成し、カルボキシル基やカルボニル基その他の親水基をその凹凸表面に付与する工程である(図1(a)参照)。例えば、ラジカル処理工程は、高周波電力又は直流電力を用いて大気圧下でガス(N、N+O、空気、N+空気、Ar+O、Ar+空気等)を励起させてプラズマを発生させ、そのプラズマで生成されたラジカル(Oラジカル、OHラジカル、Nラジカル等)を被めっき物である高分子繊維材料に接触させることによりなされる。
【0031】
(2)カチオン処理工程
カチオン処理工程は、省略してもよい工程であるが、高分子繊維材料をカチオン系界面活性剤溶液に浸漬することにより、高分子繊維材料の凹凸表面をカチオン化する工程である(図1(b)参照)。ラジカル処理工程で凹凸表面が形成され、カルボキシル基やカルボニル基その他の親水基が付与されているため、(1)広い表面積において、且つ、(2)親水基付与部位においてもカチオン化が可能である。カチオン系界面活性剤溶液としては、例えば、第四級アンモニウム塩(例えば、モノアルキルアンモニウムクロライド(45℃、5分、0.01〜10%)、テトラメチルアンモニウムクロライド(55℃、5分、0.01〜10%)、テトラブチルアンモニウムクロライド(50℃、10分、0.01〜10%))、カチオンポリマー(例えば、ポリアミドポリアミン・エピクロロヒドリン系ポリマー)(表2参照)を用いることができる。カチオン処理において、温度条件は40〜70℃で適宜選択でき、pHその他の処理条件についても適宜変更しうる。
【0032】
(3)水洗工程
水洗工程は、高分子繊維材料を水洗する工程である。これにより、高分子繊維材料への余分な付着物を除去する他、前工程の薬剤を持ちこまない効果がある。水洗方法は、特に限定されないが、流水槽を潜らせて濯ぐという方法が好ましい。尚、カチオン処理工程が省略される場合には、この水洗工程は不要である。
【0033】
(4)Sn−Pd触媒浸漬工程
Sn−Pd触媒浸漬工程は、高分子繊維材料をPdとSnのコロイド溶液に浸漬することにより、PdとSnを当該高分子繊維材料の凹凸表面に吸着・結合させる工程である(図1(c)参照)。PdとSnのコロイド溶液としては、塩化スズ(II)と塩化パラジウム(II)とをそれぞれ塩酸溶液で溶解させ、これらを攪拌しながら混合し、加熱しながら熟成させて作製したものを用いることができる(表2参照)。
【0034】
Sn−Pd触媒浸漬工程は、(1)広い表面積において凹凸が形成され、且つ、(2)親水基付与部位が形成された状態でなされるため、触媒を(1)広い表面積において、且つ、(2)親水基付与部位においても吸着・結合させることができる(触媒のなじみがよくなる)。ラジカル処理工程の後にカチオン処理工程がなされている場合には、Sn−Pd触媒付与工程は、クーロン力が付加された状態でなされるため、触媒のなじみが更によくなる。
【0035】
(5)水洗工程
上記(3)と同様の水洗工程であるが、詳細な水洗条件は同一とする必要はなく、適宜変更しうる。
【0036】
(6)アクセレーター処理工程
アクセレーター処理工程は、高分子繊維材料を酸又はアルカリ溶液に浸漬することにより、Sn−Pd触媒浸漬工程で吸着させたPd及びSnのうちSnを溶解・除去し、当該高分子繊維材料にPdのみを吸着・結合させる工程である(図1(d)参照)。処理溶液はSnを溶解させるがPdが溶けない酸又はアルカリ溶液であれば特に限定されず、濃度、温度及び処理時間もまた、特に限定されない。好適な酸溶液の例として、例えば、硫酸(10%、45℃、5分)、塩酸(10%、室温〜50℃、5分)、フッ化水素酸(5%、室温、5分)、ホウフッ化水素酸(5〜10%、室温、5分)が挙げられ、好適なアルカリ溶液の例として、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニアが挙げられる。
【0037】
(7)水洗工程
上記(3)と同様の水洗工程であるが、詳細な水洗条件は同一とする必要はなく、適宜変更しうる。
【0038】
(8)めっき工程(無電解めっき又は電気めっき)
めっき工程は、高分子繊維材料を無電解めっき又は電気めっきし、当該高分子繊維材料に金属皮膜を形成させる工程である(図1(e))。めっき工程によれば、ラジカル処理により形成された高分子繊維材料の凹凸表面に吸着・結合したPdを核としてめっきが析出するため、当該凹凸表面はめっき皮膜により埋められ、その上に更にめっき皮膜が析出する。このような機構のため、高分子繊維材料の表面に形成された凹凸によるアンカー効果により、密着性の良好なめっき皮膜が得られる。また、密着性が良好であるため、導電性の低下を防止するとともに、そのバラツキを減少させることができる。
【0039】
ここで、無電解めっきは、触媒活性の高いPd表面で、めっき液に含まれる還元剤が酸化されるときに放出される電子により、めっき液に含まれる金属イオンを還元し、その金属を金属皮膜として被めっき物に析出させる方法である。素材の形状や種類に関わらず均一な厚みの皮膜が得られる。
本実施形態において使用可能な無電解めっきとしては、無電解銅めっき、無電解ニッケルめっき、無電解銀めっきが好適な例として挙げられるが特に限定されない(表2参照)。
【0040】
また、電気めっきは、触媒活性の高いPd表面で、被めっき物を電極として通電することにより、めっき液に含まれる金属イオンを還元し、その金属を金属皮膜として被めっき物に析出させる方法である。
本実施形態において使用可能な電気めっきとしては、電気銅めっき、電気ニッケルめっき、電気銀めっき、電気金めっき、電気Snめっきが好適な例として挙げられるが特に限定されない(表2参照)。また、無電解めっき後、電気めっきを行ってもよい。
【0041】
(9)水洗工程
上記(3)と同様の水洗工程であるが、詳細な水洗条件は同一とする必要はなく、適宜変更しうる。
【0042】
(10)乾燥工程
乾燥工程は、水洗工程を経た高分子繊維材料を乾燥させる工程である。乾燥方法は、温風乾燥でもよいがこれに限定されず、遠心乾燥や真空乾燥も採用しうる。
以上説明した(1)〜(10)の工程を実施することにより、めっきされた高分子繊維材料を得ることができる。
【実施例】
【0043】
以下に、高分子繊維材料としてアラミド繊維(DuPont社製ケブラー(登録商標))を用いて本実施形態に係るめっき方法を実施したのでそれについて説明する。
表1A(実施例1A〜7A:ラジカル処理有り、カチオン処理有り)、表1B(実施例1B〜7B:ラジカル処理有り、カチオン処理無し)、表1C(比較例1〜2)は、これらの実施例及び比較例で用いた高分子繊維材料、及び、実施した各工程を示す。表2は、表1A〜表1Cに示す各工程で用いた処理液その他適用しうる処理液を示す。実施例及び比較例の各工程は処理開始から処理終了(めっき済み)に至るまでボビン・トゥー・ボビンで連続した処理で実施しうる。ここでは、必要に応じてラジカル処理で止め、ラジカル処理を繰り返す、各種試験を行う等以外は、処理開始から処理終了までボビン・トゥー・ボビンで処理を行った。
【0044】
【表1A】

【表1B】

【表1C】

【0045】
【表2】

【0046】
すなわち、表1A〜表1Bに示すように、実施例1A〜7Aは、(1)ラジカル処理工程、(2)カチオン処理工程、(3)水洗工程、(4)Sn−Pd触媒浸漬工程、(5)水洗工程、(6)アクセレーター処理工程、(7)水洗工程、(8)無電解銅めっき工程、(9)水洗工程、(10)乾燥工程を行ってめっき済みの高分子繊維材料を作製したものである。実施例1B〜7Bは、(1)ラジカル処理工程、(2)Sn−Pd触媒浸漬工程、(3)水洗工程、(4)アクセレーター処理工程、(5)水洗工程、(6)無電解銅めっき工程、(7)水洗工程、(8)乾燥工程を行ってめっき済みの高分子繊維材料を作製したものである。
【0047】
比較例1は、ラジカル処理を行わなかった以外は実施例1A〜7Aと同様の工程を行ってめっき済みの高分子繊維材料を作製したものである。比較例2は、ラジカル処理を行わない代わりにアルカリエッチング処理を行ってあとは実施例1A〜7Aと同様の工程によりめっき済みの高分子繊維材料を作製したものである。
【0048】
実施例のラジカル処理工程は、タフプラズマ(富士機械製造株式会社製:型式FPA10-N2)を用いて、
(1)高周波電力を用いて常温大気圧下でNガスに空気を2.5%混合したガス(すなわち、O混合比は0.5%)を励起させてプラズマを発生させ、
(2)発生させたプラズマを細いガス路を通すことによりプラズマの光、荷電粒子を除去し、そのプラズマの光、荷電粒子が除去されているガス路の下流に設けられたラジカル照射口(幅方向0.5mm、長手方向16mm)からラジカル(Oラジカル、OHラジカル、Nラジカル等)を照射するとともに、
(3)高分子繊維材料をラジカル照射口の真下に配置し、そのラジカル照射口に対して繊維走査速度10mm/sでそのラジカルに接触させる、
ことにより行った。
尚、当該ラジカルは方向性があるので、高分子繊維材料の表裏を置き換えて同じことを繰り返した(表裏両方のラジカル処理を行って1回とカウントした)。このラジカル処理は、各実施例について所定回数実施し、その度に走査型電子顕微鏡写真撮影、及び、X線光電子分光分析を行った。
【0049】
図2A〜図2Cは、実施例1A,2A,7Aについてラジカル処理を各々1回、2回、10回行った後の高分子繊維材料の凹凸表面を真上から撮影した走査型顕微鏡写真であり、図3は、比較例1についてラジカル処理を行わなかった場合(要するに実施例でいえば処理前)の高分子繊維材料の表面の真上から撮影した走査型顕微鏡写真である。
【0050】
図4A〜図4C、図5は、X線光電子分光分析の結果を示すグラフである。X線光電子分光分析は、アルバック・ファイ製PHI 5000 VersaProbeを用いて行った。また、表3は、X線光電子分光分析の結果としてC−C結合、C−N結合、C−O結合、C=O結合、COO結合、π−π結合の割合を示す。
【0051】
【表3】

【0052】
(凹凸表面の形成の観察及び評価)
凹凸表面の形成の観察は、ラジカル処理工程を行った度にその段階のものを対象として走査型電子顕微鏡撮影結果を目視で確認することにより行った。撮影倍率は、5万倍(各図左側)と10万倍(各図右側)とした。図2A〜図2Cに示すように、ラジカル処理後は高分子繊維材料の表面に凹凸が形成されていることがわかる。一方、図3に示すように未処理の場合にはそのような凹凸が形成されていない。これは、反応性の高いラジカルが高分子繊維材料の結合の弱い部分を化学的にエッチングしたためと考えられる。
凹凸の表面粗さRaと平均間隔は、走査型電子顕微鏡像から目視で算出した。この結果、ラジカル処理で形成させる凹凸表面の表面粗さRaは10〜100nmが、凹凸の平均間隔は10〜100nmが好ましいことがわかった。
【0053】
(親水基の付与の有無の分析及び評価)
親水基の付与の有無の分析(X線光電子分光分析)は、ラジカル処理工程を行った度にその段階のものを対象としてアルバック・ファイ製PHI 5000 VersaProbeを用いて行った。図4A〜図4C、及び、表3に示すように、ラジカル処理後は高分子繊維材料の表面にカルボキシル基やカルボニル基その他の親水基が付与されていることがわかる。これは、酸化能力の高いOラジカルやOHラジカルにより高分子繊維材料の表面が酸化されたためと考えられる。特に、ラジカル処理を行っていないものはCOO基が付与されていないのに対して、ラジカル処理を行ったものはCOO基が付与された結果、カルボキシル基が増加している点に大きな違いがある。このようにラジカル処理を行ったものは、親水基が付与されるとともに、凹凸表面の形成によりその数が増加する。従って、実施例は比較例(ラジカル処理を行わないもの)に比べて、Sn−Pd触媒付与工程において、(1)より広い表面積において、且つ、(2)親水基付与部位においても触媒が付与されるため触媒のなじみがよくなる。更に、カチオン処理工程を行った場合にはクーロン力の寄与により、Sn−Pd触媒付与工程における触媒のなじみが更によくなる。従って、ラジカル処理がSn−Pd触媒付与工程における高分子繊維材料と触媒とのなじみをよくするのに寄与する。カチオン処理も触媒のなじみをよくする。
【0054】
(密着性試験及び評価)
密着性試験は、実施例及び比較例のめっき済みの高分子繊維材料を用いて行った。密着性試験(テープテスト:JIS H 8504準拠)は、市販のセロハンテープをめっき済みの高分子繊維材料に貼付した後剥がし、「テープ貼付前のめっき面積」に対する「テープ剥離後のめっき面積」の割合を目視にて観察することにより行った。割合が98%以上であるものを◎、95%〜98%であるものを○、90%〜95%であるものを□、85%〜90%であるものを△、85%以下であるものを×と評価した。その評価結果を表4に示す。
【0055】
表4に示すように、ラジカル処理回数が1回〜10回で良好なめっき皮膜の密着性が得られた。ラジカル処理回数が10回以上だとめっき皮膜の密着性は逆に低下したが実用にはめっき密着面積が90%以上という理由で問題ない。このような結果になったのはラジカル処理回数が多すぎると凹凸表面が小さくなることが原因と考えられる。そこで、好適な凹凸の表面粗さRaと平均間隔を、走査型電子顕微鏡像から目視で算出したところ、表面粗さRaは10〜100nmが、凹凸の平均間隔は10〜100nmが好ましいことがわかった。
【0056】
【表4】

【0057】
(繊維の強力試験及び評価)
強力試験は、実施例及び比較例のめっき前(カチオン処理工程前)の高分子繊維材料の強力をJIS L 1013(化学繊維フィラメント糸試験方法)という方法で測定することにより行った。強力試験の測定結果は図6に示す。図6に示すように、実施例に係るラジカル処理を行った高分子繊維材料の場合、素材の繊維強力を100%としたときに、90%までの強力低下で収まっていたが、比較例に係るアルカリエッチングを行った高分子繊維材料の場合、75%まで低下した。ラジカル処理によれば、素材の繊維強力が損なわれないことがわかった。
【0058】
(導電性試験及び評価)
導電性試験は、実施例及び比較例のめっき済みの高分子繊維材料の抵抗値を測定することにより行った。抵抗値バラツキ(((抵抗値最大−抵抗値最小)/抵抗値平均)×100(%))の測定結果は表5に示す。抵抗値測定は、図7に示すように、冶具に取り付けた端子に導電性皮膜付きめっき繊維を接触させ、市販の抵抗計HIOKI製を用い4端子法にて測定を行った。抵抗値の測定長さは25cmとした。抵抗値バラツキが5%以下であるものを◎、5%〜10%であるものを○、10%以上であるものを×と評価した。その評価結果を表5に示す。表5に示すように、ラジカル処理無しの場合、抵抗値のバラツキが大きいがラジカル処理を行うことで抵抗値のバラツキが低減したことがわかる。
【0059】
【表5】

【0060】
以上本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に何ら限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明に係る高分子繊維材料のめっき方法及び高分子繊維材料の製造方法並びに被めっき用高分子繊維材料は、めっきの密着性を向上させるとともに、炭酸ガスや苛性ソーダ等を使用しないため環境と人間に優しく、高価な設備や原料を使用しないため廉価に実施できる。従って、本発明は、高分子繊維材料関連メーカー、その他の各種産業界において産業上利用価値が高い。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高分子繊維材料をラジカル処理するラジカル処理工程と、
前記ラジカル処理工程を経た高分子繊維材料AをPdとSnのコロイド溶液に浸漬するSn−Pd触媒浸漬工程と、
前記Sn−Pd触媒浸漬工程を経た高分子繊維材料Cを酸又はアルカリ溶液に浸漬するアクセレーター処理工程とを備えたことを特徴とする高分子繊維材料のめっき方法。
【請求項2】
高分子繊維材料をラジカル処理するラジカル処理工程と、
前記ラジカル処理工程を経た高分子繊維材料Aをカチオン系界面活性剤溶液に浸漬するカチオン処理工程と、
前記カチオン処理工程を経た高分子繊維材料BをPdとSnのコロイド溶液に浸漬するSn−Pd触媒浸漬工程と、
前記Sn−Pd触媒浸漬工程を経た高分子繊維材料Cを酸又はアルカリ溶液に浸漬するアクセレーター処理工程とを備えたことを特徴とする高分子繊維材料のめっき方法。
【請求項3】
前記アクセレーター処理工程に代えて、前記Sn−Pd触媒浸漬工程を経た高分子繊維材料Cを導体化処理液に浸漬する導体化処理工程を備えた請求項1又は2に記載の高分子繊維材料のめっき方法。
【請求項4】
更に、前記Sn−Pd処理工程又は前記導体化処理工程を経た高分子繊維材料Dを無電解めっき又は電気めっきするめっき工程を備えた請求項1から3のいずれかに記載の高分子繊維材料のめっき方法。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載の高分子繊維材料のめっき方法を使用することを特徴とする高分子繊維材料の製造方法。
【請求項6】
電気めっき又は無電解めっきに用いられる被めっき用高分子繊維材料であって、その表面粗さRaが10〜100nm、かつ、その凹凸の平均間隔が10〜100nmであり、その表面にはカルボキシル基、カルボニル基その他の親水基が付与されていることを特徴とする被めっき用高分子繊維材料。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−233227(P2012−233227A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−102206(P2011−102206)
【出願日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【出願人】(395010794)名古屋メッキ工業株式会社 (14)
【出願人】(510223874)公益財団法人名古屋産業振興公社 (4)
【Fターム(参考)】