説明

高周波モジュール筐体構造

【課題】筐体内の空間を導波管モードで伝播する高調波信号と結合して吸収できる終端器装荷アンテナを備えた高周波モジュール筐体構造を得ること。
【解決手段】出力段にマイクロ波増幅器が配置される高周波モジュール筐体において、前記高周波モジュール筐体内の空間を導波管モードで伝播する高調波信号の筐体共振による複数の電界集中箇所の少なくとも1つの電界集中箇所の付近に対応する該高周波モジュール筐体の天井面上所定位置に前記高調波信号と結合できるように配置されたアンテナと、前記アンテナに装荷され、該アンテナに誘起された高調波信号のエネルギーを熱ネルギーに変換して吸収する終端器とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高周波モジュール筐体構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
マイクロ波増幅器では、基本波以外の高調波を発生するため、マイクロ波増幅器の出力側に高調波抑圧回路を配置し、基本波での高出力増幅等の特性に影響を与えることなく、高調波を抑制できるようにしている。
【0003】
高調波抑圧回路としては、マイクロ波増幅器の出力側に、高調波信号に対して短絡状態を実現するショートスタブや開放状態を実現するオープンスタブを設けて高調波信号を反射させる構成(例えば、特許文献1)や、高調波信号に共振する結合線路を設けて高調波信号を反射させる構成(例えば、特許文献2)が知られている。
【0004】
ところが、高調波抑制回路を付加したマイクロ波増幅器においても、モジュール筐体に収納した場合には、マイクロ波増幅器の出力端からモジュール筐体のカットオフ周波数を超える高調波信号が筐体内空間に放射された場合、その高調波信号が導波管モードで伝播し、モジュールの出力コネクタとの接続部に結合してしまい、高調波信号がモジュールの出力コネクタを介して外部へ漏洩する問題が生じていた。
【0005】
このような問題を解決するため、特許文献3では、板状の電波吸収体を筐体内の空間を囲む内面に固定する高周波回路パッケージが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−53510号公報
【特許文献2】特開平8−139535号公報
【特許文献3】特許第3110405号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、電波吸収体では、十分な減衰特性が得られない。また、電波吸収体内の磁性体の歳差運動の周波数限界値以上では使用できないという問題がある。
【0008】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、筐体内の空間を導波管モードで伝播する高調波信号と結合して吸収できる終端器装荷アンテナを備えた高周波モジュール筐体構造を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した目的を達成するために、本発明にかかる高周波モジュール筐体構造は、出力段にマイクロ波増幅器が配置される高周波モジュール筐体において、前記高周波モジュール筐体内の空間を導波管モードで伝播する高調波信号の筐体共振による複数の電界集中箇所の少なくとも1つの電界集中箇所の付近に対応する該高周波モジュール筐体の天井面上の所定位置に配置され、前記高調波信号と結合するアンテナと、前記アンテナに装荷され、該アンテナに誘起された高調波信号のエネルギーを熱ネルギーに変換して吸収する終端器とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、高周波モジュール筐体の天井面に設けたアンテナがモジュール筐体1内の空間を導波管モードで伝播する高調波信号と結合して高調波信号のエネルギーを誘起し、装荷された終端器がアンテナに誘起された高調波信号のエネルギーを熱エネルギーに変換して吸収するので、外部への高調波漏洩を抑圧できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、本発明の一実施の形態による高周波モジュール筐体構造の要部構成を示す一部側面断面図である。
【図2】図2は、実施例1を説明する概念図である。
【図3】図3は、実施例2を説明する概念図である。
【図4】図4は、実施例3を説明する概念図である。
【図5】図5は、実施例4を説明する概念図である。
【図6】図6は、実施例5を説明する概念図である。
【図7】図7は、実施例6を説明する概念図である。
【図8】図8は、実施例7を説明する概念図である。
【図9】図9は、実施例8を説明する概念図である。
【図10】図10は、実施例9を説明する概念図である。
【図11】図11は、実施例10を説明する概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明にかかる高周波モジュール筐体構造の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0013】
実施の形態.
図1は、本発明の一実施の形態による高周波モジュール筐体構造の要部構成を示す一部側面断面図である。図1において、モジュール筐体1は、金属製の有底箱体からなる筐体本体1aと、筐体本体1aの開口を蓋する金属板材からなるカバー1bとを備えている。筐体本体1aの床面には金属キャリア2が配置されている。
【0014】
図中、筐体本体1aの左方が出力であり、右方が入力側である。筐体本体1aの出力側端には、同軸コネクタ3が取り付けられている。同軸コネクタ3は、外導体3aと内導体3cとそれらの間に介在する誘電体3bとを備えている。この筐体本体1aの出力側端から図示しない入力側端に向かって、金属キャリア2上に、高調波抑圧回路4とマイクロ波増幅器5とが、この順に載置されている。
【0015】
そして、マイクロ波増幅器5の出力側と高調波抑圧回路4とが金リボン6を介して接続され、高調波抑圧回路4と同軸コネクタ3の内導体3cとが金リボン7を介して接続されている。つまり、マイクロ波増幅器5の出力は、金リボン6、高調波抑圧回路4、金リボン7を通って同軸コネクタ3に伝達される構成である。
【0016】
以上の構成において、マイクロ波増幅器5の出力側に接続される金リボン6からモジュール筐体1内の空間に、モジュール筐体1のカットオフ周波数を超える高調波信号が放射された場合、導波管モードで伝播した高調波信号は、高調波抑圧回路4にて抑圧されることなく金リボン7と結合し、同軸コネクタ3を介して外部へ漏洩する。
【0017】
そこで、本実施の形態では、モジュール筐体1内には、導波管モードで伝播する高調波信号の筐体共振による複数の電界集中箇所が形成される点に着目し、その複数の電界集中箇所のうちの少なくとも1つの電界集中箇所付近に対応するモジュール筐体1の天井面(つまりカバー1aの裏面)上の位置に、終端器装荷アンテナ8を設けるようにした。
【0018】
終端器装荷アンテナ8は、アンテナがモジュール筐体1内の空間を導波管モードで伝播する高調波信号と結合して高調波信号のエネルギーを誘起し、装荷された終端器がアンテナに誘起された高調波信号のエネルギーを熱エネルギーに変換して吸収する。これによって、モジュール筐体1内の空間を伝播する高調波信号の勢力を弱めることができるので、外部への高調波漏洩を抑圧できる筐体構造が得られる。
【0019】
以下、実施例として、終端器装荷アンテナ8の各種の態様を示す。これによって、アンテナ設計における周波数やQ値の選択において、結合周波数や結合量を自由に選択できる利点が生ずることがわかる。
【0020】
なお、各実施例(図2〜図11)では、理解を容易にするため、モジュール筐体1を天地を逆にして示してあり、下側が裏面を上向きしたカバー1bであり、上側が床面を省略した筐体本体1aである。同軸コネクタ3は示してないが、筐体本体1aの左端側が同軸コネクタ3が取り付けられている出力側端であるとしている。
【0021】
そして、図2、図3、図6、図8、図11では、モジュール筐体1内の空間を高調波信号が導波管モードで伝播するときに形成される電界集中箇所として、導波管モードで伝播する高調波信号のいわゆる管内波長をλとしたとき、筐体本体1aの出力側端面からλ/4離れた位置に形成される電界集中箇所(電界方向が上向きである位置:定在波の最大振幅位置)と、そこからλ/2(つまり筐体本体1aの出力側端面から3λ/4)離れた位置に形成される逆位相の電界集中箇所(電界方向が下向きである位置:定在波の最小振幅位置)とが示されている。
【0022】
<実施例1>
図2は、実施例1を説明する概念図である。図2では、終端器装荷アンテナ8に、基端に終端器9−1を装荷した先端開放型アンテナ8−1を用いる例が示されている。図2において、カバー1bの裏面(天井面)に円筒状の金属リング10が固定され、この金属リング10のリング内に充填された誘電体11表面における金属リング10の軸線位置に、先端開放型アンテナ8−1は立設されている。終端器9−1は、先端開放型アンテナ8−1の基端周辺における誘電体11の表面に配置されている。
【0023】
図2に示すように、先端開放型アンテナ8−1は、金属リング10をその軸線位置が筐体本体1aの出力側端面からλ/4程度離れた位置に位置するようにカバー1bの裏面に固定すると、筐体本体1aの出力側端面からλ/4程度離れた位置に配置される構成になっている。なお、先端開放型アンテナ8−1の長さは、モジュール筐体1内の空間サイズに応じて定められる。
【0024】
この構成によれば、筐体本体1aの出力側端面からλ/4離れた位置は、電界集中箇所であるので、モジュール筐体1内の空間を導波管モードで伝播する高調波信号を効果的に終端器装荷の先端開放型アンテナに結合させ、吸収させることができ、外部へ漏洩する高調波の抑圧が行える。
【0025】
<実施例2>
図3は、実施例2を説明する概念図である。図3では、図2に示した、終端器9−1を装荷した先端開放型アンテナ8−1を予め基板12内に埋め込んでおき、その基板12をカバー1bの裏面の所定位置に固定すると、先端開放型アンテナ8−1が筐体本体1aの出力側端面からλ/4程度離れた位置に配置されるようにした例が示されている。
【0026】
この実施例2によれば、終端器9−1を装荷した先端開放型アンテナ8−1を予め基板12内に収納するので、筐体本体1aの出力端側から外部へ漏洩する高調波信号を抑圧できる効果に加えて、生産性が向上するという効果も得られる。
【0027】
<実施例3>
図4は、実施例3を説明する概念図である。図4では、筐体本体1aの出力側端面からλ/4程度離れた位置に、図2に示した、終端器9−1を装荷した先端開放型アンテナ8−1の複数個(図示例では2個)を、短手方向(Y方向)に並べた例が示されている。これによって、マイクロ波増幅器5の出力周波数の高調波信号による電界集中箇所付近において、より多くの電界に先端開放型アンテナ8−1を触れさせることができるので、マイクロ波増幅器5の出力に起因する高調波信号のより多くの高調波エネルギーを先端開放型アンテナ8−1に結合させ、終端器9−1に吸収させることができる。
【0028】
加えて、モジュール筐体1内を伝播する高調波信号は、マイクロ波増幅器5の様々な出力周波数に起因する。そのような他の周波数の高調波信号でもその波長をλ’とすれば、筐体本体1aの出力側端面からλ’/4離れた位置に電界集中箇所が形成される。この筐体本体1aの出力側端面からλ’/4離れた位置と、筐体本体1aの出力側端面からλ/4離れた位置とは、長手方向(X方向)にずれた位置関係にある。
【0029】
そこで、そのような他の周波数の高調波信号に対しても対応できるようにするため、図4に示すように、筐体本体1aの出力側端面からλ’/4程度離れた位置に、図2に示した、終端器9−1を装荷した先端開放型アンテナ8−1の複数個(図示例では2個)を、短手方向(Y方向)に並べるようにする。これによって、他の周波数の高調波信号による電界集中箇所付近において、より多くの電界に先端開放型アンテナ8−1を触れさせることができるので、他の周波数の高調波信号のより多くの高調波エネルギーを先端開放型アンテナ8−1に結合させ、終端器9−1に吸収させることができる。
【0030】
このように、実施例3では、マイクロ波増幅器5の出力に起因する高調波信号(波長λ)に対する終端器装荷先端開放型アンテナのアンテナ列13と、他の周波数の高調波信号(波長λ’)に対する終端器装荷先端開放型アンテナのアンテナ列14とを並置したので、実施例1よりも抑圧できる高調波信号の帯域を広くすることができ、同時にアンテナとの結合性を高めることができる。
【0031】
<実施例4>
図5は、実施例4を説明する概念図である。図5では、図4に示したアンテナ列13,14を予め基板12内に作り込んでおき、その基板12をカバー1bの裏面に所定位置に固定すると、アンテナ列13が筐体本体1aの出力側端面からλ/4程度離れた位置に配置され、アンテナ列14が筐体本体1aの出力側端面からλ’/4程度離れた位置に配置されるようにした例が示されている。
【0032】
この実施例4によれば、実施例2よりも抑圧できる高調波信号の帯域を広くすることができ、同時にアンテナとの結合性を高めることができる。また、生産性も向上させることができる。
【0033】
<実施例5>
図6は、実施例5を説明する概念図である。図5では、終端器装荷アンテナ8に、先端側に終端器9−2を装荷した先端短絡型アンテナ8−2を用いる例が示されている。図5において、先端短絡型アンテナ8−2は、カバー1bの裏面所定位置に固定される基板12の表面に配置される。先端短絡型アンテナ8−2の基端は、基板12に設けた上下面を貫通するスルーホール15を通してグランドであるカバー1bの裏面に接続される。そして、基板12の表面上における先端短絡型アンテナ8−2の先端にオープンスタブ16を取り付けた構成である。終端器9−2は、オープンスタブ15の取り付け位置に装着されている。
【0034】
図6に示すように、先端短絡型アンテナ8−2は、基板12をカバー1bの裏面所定位置に固定すると、筐体本体1aの出力側端面からλ/4程度離れた位置に配置される構成になっている。
【0035】
実施例5の構成によっても実施例2と同様に、外部へ漏洩する高調波の抑圧効果と、生産性向上の効果とが得られる。
【0036】
<実施例6>
図7は、実施例6を説明する概念図である。図7では、実施例4と同様の考えで、基板12に、図6に示した、終端器9−2を装荷した先端短絡型アンテナ8−2の複数個による、マイクロ波増幅器5の出力に起因する高調波信号(波長λ)に対する終端器装荷先端短絡型アンテナのアンテナ列16と、他の周波数の高調波信号(波長λ’)に対する終端器装荷先端短絡型アンテナのアンテナ列17とを並置して形成した例が示されている。
【0037】
図7において、基板12をカバー1bの裏面に所定位置に固定すると、アンテナ列16が筐体本体1aの出力側端面からλ/4程度離れた位置に配置され、アンテナ列17が筐体本体1aの出力側端面からλ’/4程度離れた位置に配置される構成になっている。
【0038】
この実施例6によれば、実施例5よりも抑圧できる高調波信号の帯域を広くすることができ、同時にアンテナとの結合性を高めることができる。また、生産性も向上させることができる。
【0039】
<実施例7>
図8は、実施例7を説明する概念図である。図8では、終端器装荷アンテナ8に、2つの終端器9−3a,9−3bを装荷した両端開放型方形マイクロストリップアンテナ8−3を用いる例が示されている。図8において、両端開放型方形マイクロストリップアンテナ8−3は、カバー1bの裏面所定位置に固定される基板12の表面上に所定幅の1/2波長導体線路18の両端位置が基板12の上下面を貫通するスルーホール18を介して裏面のグランド導体(カバー1bの裏面)に接続される構成である。終端器9−3a,9−3bは、それぞれ1/2波長導体線路18の両端位置に装着されている。
【0040】
基板12をカバー1bの裏面所定位置に固定すると、両端開放型方形マイクロストリップアンテナ8−3は、1/2波長導体線路18の長手方向の一端が筐体本体1aの出力側端面からλ/4程度離れた位置に配置され、その1/2波長導体線路18の長手方向の他端が筐体本体1aの出力側端面から3λ/4程度離れた位置に配置される構成になっている。
【0041】
筐体本体1aの出力側端面からλ/4離れた位置は、マイクロ波増幅器5の出力に起因する高調波信号の筐体共振における電界集中箇所であり、そこからλ/2離れた位置は、逆相の関係で電界が集中している箇所である。この電界関係は、両端開放型方形マイクロストリップアンテナ8−3のTM100モードに等しいので、効果的に高周波信号を両端開放型方形マイクロストリップアンテナ8−3に結合させることができる。
【0042】
また、両端開放型方形マイクロストリップアンテナ8−3のTM100モードにおける電界集中箇所は電流集中箇所でもあるので、その電界集中箇所付近に装着された終端器9−3a,9−3bは、効果的に高調波信号のエネルギーを熱エネルギーに変換して吸収することができる。
【0043】
したがって、実施の形態7によれば、2つの終端器を装荷した両端開放型方形マイクロストリップアンテナを用いるので、外部へ漏洩する高調波の抑圧効果を実施例1,2,5よりも向上させることができる。
【0044】
<実施例8>
図9は、実施例8を説明する概念図である。図9では、実施例4と同様の考えで、基板12に、図8に示した、終端器9−3a,9−3bを装荷した両端開放型方形マイクロストリップアンテナ8−3の複数個による、マイクロ波増幅器5の出力に起因する高調波信号(波長λ)に対する終端器装荷両端開放型方形マイクロストリップアンテナのアンテナ列20と、他の周波数の高調波信号(波長λ’)に対する終端器装荷両端開放型方形マイクロストリップアンテナのアンテナ列21とを並置して形成した例が示されている。
【0045】
図9において、基板12をカバー1bの裏面に所定位置に固定すると、アンテナ列19が筐体本体1aの出力側端面からλ/4程度離れた位置に配置され、アンテナ列20が筐体本体1aの出力側端面からλ’/4程度離れた位置に配置される構成になっている。
【0046】
この実施例8によれば、実施例7よりも抑圧できる高調波信号の帯域を広くすることができ、同時にアンテナとの結合性を高めることができる。また、生産性も向上させることができる。
【0047】
<実施例9>
図10は、実施例9を説明する概念図である。図10では、終端器装荷アンテナ8に、終端器9−4を装荷した片側短絡型方形マイクロストリップアンテナ8−4を用いる例が示されている。図10において、片側短絡型方形マイクロストリップアンテナ8−4は、カバー1bの裏面所定位置に固定される基板12の表面上に所定幅の1/4波長導体線路22が形成され、その1/4波長導体線路22の両端位置が基板12の上下面を貫通するスルーホール23を介して裏面のグランド導体(カバー1bの裏面)に接続される構成である。終端器9−4は、1/4波長導体線路22の片端位置に装着されている。
【0048】
基板12をカバー1bの裏面所定位置に固定すると、片側短絡型方形マイクロストリップアンテナ8−4は、1/4波長導体線路22の長手方向の一端が筐体本体1aの出力側端面からλ/4程度離れた位置に配置され、そこからλ/4程度離れた位置に1/4波長導体線路22の長手方向の他端が配置される構成である。終端器9−4は、筐体本体1aの出力側端面からλ/4程度離れた位置に配置される1/4波長導体線路22の長手方向の一端に装着されている。
【0049】
筐体本体1aの出力側端面からλ/4離れた位置は、マイクロ波増幅器5の出力に起因する高調波信号の筐体共振における電界集中箇所であり、そこからλ/4離れた位置は、電界がゼロとなる短絡箇所である。この電界関係は、片側短絡型方形マイクロストリップアンテナ8−4のTM100モードに等しいので、効果的に高周波信号を片側短絡型方形マイクロストリップアンテナ8−4に結合させることができる。
【0050】
また、片側短絡型方形マイクロストリップアンテナ8−4のTM100モードにおける電界集中箇所は電流集中箇所でもあるので、その電界集中箇所付近に装着された終端器9−4は、効果的に高調波信号のエネルギーを熱エネルギーに変換して吸収することができる。
【0051】
このように、実施の形態9では、終端器装荷の片側短絡型方形マイクロストリップアンテナを用いて、外部へ漏洩する高調波信号の抑圧が行える。
【0052】
<実施例10>
図11は、実施例10を説明する概念図である。図11では、実施例8と同様の考えで、基板12に、図10に示した、終端器9−4を装荷した片側短絡型方形マイクロストリップアンテナ8−4の複数個による、マイクロ波増幅器5の出力に起因する高調波信号(波長λ)に対する終端器装荷両端開放型方形マイクロストリップアンテナのアンテナ列24と、他の周波数の高調波信号(波長λ’)に対する終端器装荷両端開放型方形マイクロストリップアンテナのアンテナ列24とを並置して形成した例が示されている。
【0053】
図11において、基板12をカバー1bの裏面に所定位置に固定すると、アンテナ列24が筐体本体1aの出力側端面からλ/4程度離れた位置に配置され、アンテナ列22が筐体本体1aの出力側端面からλ’/4程度離れた位置に配置される構成になっている。
【0054】
この実施例10によれば、実施例9よりも抑圧できる高調波信号の帯域を広くすることができ、同時にアンテナとの結合性を高めることができる。また、生産性も向上させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0055】
以上のように、本発明にかかる高周波モジュール筐体構造は、外部へ漏洩する高調波信号を抑圧できる高周波モジュール筐体構造として有用である。
【符号の説明】
【0056】
1 モジュール筐体
1a 筐体本体
1b カバー
2 金属キャリア
3 同軸コネクタ
4 高調波抑圧回路
5 マイクロ波増幅器
6,7 金リボン
8 終端器装荷アンテナ
8−1 先端開放型アンテナ
8−2 先端短絡型アンテナ
8−3 両端開放型方形マイクロストリップアンテナ
8−4 片側短絡型方形マイクロストリップアンテナ
9−1,9−2,9−3a,9−3b,9−4 終端器
12 終端器装荷アンテナを形成させる基板
13,14 終端器装荷先端開放型アンテナのアンテナ列
16,17 終端器装荷先端短絡型アンテナのアンテナ列
20,21 終端器装荷両端開放型方形マイクロストリップアンテナのアンテナ列
24,25 終端器装荷片側短絡型方形マイクロストリップアンテナのアンテナ列

【特許請求の範囲】
【請求項1】
出力段にマイクロ波増幅器が配置される高周波モジュール筐体において、
前記高周波モジュール筐体内の空間を導波管モードで伝播する高調波信号の筐体共振による複数の電界集中箇所の少なくとも1つの電界集中箇所の付近に対応する該高周波モジュール筐体の天井面上の所定位置に配置され、前記高調波信号と結合するアンテナと、
前記アンテナに装荷され、該アンテナに誘起された高調波信号のエネルギーを熱ネルギーに変換して吸収する終端器と
を備えたことを特徴とする高周波モジュール筐体構造。
【請求項2】
前記終端器が装荷されたアンテナは、基端に終端器が装荷された先端開放型アンテナであることを特徴とする請求項1に記載の高周波モジュール筐体構造。
【請求項3】
前記終端器装荷の先端開放型アンテナは、基板に、該基板を前記天井面に固定したとき前記少なくとも1つの電界集中箇所の付近に配置されるように形成されていることを特徴とする請求項2に記載の高周波モジュール筐体構造。
【請求項4】
前記終端器装荷の先端開放型アンテナの複数個が前記少なくとも1つの電界集中箇所の付近に配置されていることを特徴とする請求項2に記載の高周波モジュール筐体構造。
【請求項5】
前記終端器装荷の先端開放型アンテナの複数個が、前記マイクロ波増幅器の出力周波数の前記高調波信号による前記少なくとも1つの電界集中箇所の付近と、他の周波数の前記高調波信号による前記少なくとも1つの電界集中箇所の付近とのそれぞれに配置されていることを特徴とする請求項2に記載の高周波モジュール筐体構造。
【請求項6】
前記基板には、前記天井面に固定したとき、前記少なくとも1つの電界集中箇所の付近に配置される前記終端器装荷の先端開放型アンテナの複数個が形成されていることを特徴とする請求項3に記載の高周波モジュール筐体構造。
【請求項7】
前記基板には、前記天井面に固定したとき、前記マイクロ波増幅器の出力周波数の前記高調波信号による前記少なくとも1つの電界集中箇所の付近に配置される前記終端器装荷の先端開放型アンテナの複数個と、他の周波数の前記高調波信号による前記少なくとも1つの電界集中箇所の付近に配置される前記終端器装荷の先端開放型アンテナの複数個とがそれぞれ形成されていることを特徴とする請求項3に記載の高周波モジュール筐体構造。
【請求項8】
前記終端器が装荷されたアンテナは、先端側に終端器が装荷された先端短絡型アンテナであり、
前記終端器装荷の先端短絡型アンテナは、基板に、該基板を前記天井面に固定したとき前記少なくとも1つの電界集中箇所の付近に配置されるように形成されていることを特徴とする請求項1に記載の高周波モジュール筐体構造。
【請求項9】
前記基板には、前記天井面に固定したとき、前記少なくとも1つの電界集中箇所の付近に配置される前記終端器装荷の先端短絡型アンテナの複数個が形成されていることを特徴とする請求項8に記載の高周波モジュール筐体構造。
【請求項10】
前記基板には、前記天井面に固定したとき、前記マイクロ波増幅器の出力周波数の前記高調波信号による前記少なくとも1つの電界集中箇所の付近に配置される前記終端器装荷の先端短絡型アンテナの複数個と、他の周波数の前記高調波信号による前記少なくとも1つの電界集中箇所の付近に配置される前記終端器装荷の先端短絡型アンテナの複数個とがそれぞれ形成されていることを特徴とする請求項8に記載の高周波モジュール筐体構造。
【請求項11】
前記終端器が装荷されたアンテナは、1/2波長導体線路の両端に終端器が装荷された両端開放型方形マイクロストリップアンテナであり、
前記終端器装荷の両端開放型方形マイクロストリップアンテナは、基板に、該基板を前記天井面に固定したとき、前記1/2波長導体線路の一端が前記少なくとも1つの電界集中箇所の付近に配置され、他端が前記少なくとも1つの電界集中箇所から1/2波長離隔した他の電界集中箇所の付近に配置されるように形成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の高周波モジュール筐体構造。
【請求項12】
前記基板には、前記天井面に固定したとき、前記少なくとも1つの電界集中箇所の付近に配置される前記終端器装荷の両端開放型方形マイクロストリップアンテナの複数個が形成されていることを特徴とする請求項11に記載の高周波モジュール筐体構造。
【請求項13】
前記基板には、前記天井面に固定したとき、前記マイクロ波増幅器の出力周波数の前記高調波信号による前記少なくとも1つの電界集中箇所の付近に配置される前記終端器装荷の両端開放型方形マイクロストリップアンテナの複数個と、他の周波数の前記高調波信号による前記少なくとも1つの電界集中箇所の付近に配置される前記終端器装荷の両端開放型方形マイクロストリップアンテナの複数個とがそれぞれ形成されていることを特徴とする請求項11に記載の高周波モジュール筐体構造。
【請求項14】
前記終端器が装荷されたアンテナは、1/4波長導体線路の一端に終端器が装荷された片側短絡型方形マイクロストリップアンテナであり、
前記終端器装荷の片側短絡型方形マイクロストリップアンテナは、基板に、該基板を前記天井面に固定したとき、前記1/4波長導体線路の前記一端が前記少なくとも1つの電界集中箇所の付近に配置され、他端が他の電界集中箇所に向いて配置されるように形成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の高周波モジュール筐体構造。
【請求項15】
前記基板には、前記天井面に固定したとき、前記少なくとも1つの電界集中箇所の付近に配置される前記終端器装荷の片側短絡型方形マイクロストリップアンテナの複数個が形成されていることを特徴とする請求項14に記載の高周波モジュール筐体構造。
【請求項16】
前記基板には、前記天井面に固定したとき、前記マイクロ波増幅器の出力周波数の前記高調波信号による前記少なくとも1つの電界集中箇所の付近に配置される前記終端器装荷の片側短絡型方形マイクロストリップアンテナの複数個と、他の周波数の前記高調波信号による前記少なくとも1つの電界集中箇所の付近に配置される前記終端器装荷の片側短絡型方形マイクロストリップアンテナの複数個とがそれぞれ形成されていることを特徴とする請求項14に記載の高周波モジュール筐体構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−182179(P2011−182179A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−44238(P2010−44238)
【出願日】平成22年3月1日(2010.3.1)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】