説明

高周波信号発生装置

【課題】 本発明は,高周波信号の周波数帯において広い変調帯域を有する高周波信号の発生装置を提供することを目的とする。
【解決手段】 本発明の光高周波信号発生器は,光コム信号を発生する光コム発生器11と,光コム発生器11から発生した光コム信号を分波する光分波器13と,光分波器13で分波された光コム信号を結合する光結合器15と,光結合器15が結合した光周波数成分の差周波信号を発生する光混合器17と,光分波器13から出力された光コム信号の一部から所定の成分を抽出するための第1の光フィルタ19を有する。この第1の光フィルタ19が抽出した光成分と,光コム信号のうち分波器で分波された光成分を光混合器が混合することで,差周波信号が発生する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,高周波信号発生装置に関する。より詳しく説明すると,本発明は,光コム発生器からの光コム信号を利用した,ミリ波(周波数30GHz〜300GHz)およびテラヘルツ波帯(周波数300GHz〜10THz)における信号を発生するための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ミリ波(周波数30GHz〜300GHz)およびテラヘルツ波(周波数300GHz〜10THz)は高速無線通信などで利用されている。下記非特許文献1には,これらの周波数を有する信号を電気的に発生する装置が開示されている。この装置は,電子デバイスを用いて,元となる信号を逓倍する。この方法は,数百GHzの信号(搬送波)を発生できる。一方,この方法の変調帯域幅はおよそ10GHz程度である。
【0003】
特開2005−244274号公報(下記特許文献1)には,パルス波を発生する装置が開示されている。この装置では,このパルス幅が5ps程度,繰返し周波数が10GHz程度のパルス信号を得たことが開示されている。しかしながら,それ以外の周波数のパルス信号を得ることは開示されていない。また,この文献に開示された装置で高周波信号を発生した場合,タイミングジッタが大きいという問題もある。なお,同様の装置を開示する文献として,特開2009−224917号公報,及び特開2006−303705号公報がある。
【0004】
特開2010−62619号公報(下記特許文献2)には,光技術を用いて高周波信号を発生する装置が開示されている。この装置は,光コム信号から2成分を抽出し,それらを光混合することにより,2成分の周波数差に対応した周波数をもつ信号を発生する。この装置では,抽出した光成分を光変調器で変調した後に光混合することで,任意の波形の高周波信号を得ることができる。しかしながら,この装置からの高周波信号の変調帯域は光変調器の帯域により制限される。このため,この装置の変調帯域は,10〜20GHz程度である。同様の装置を開示する文献として,特開2009−175576号公報,特開2005−353769号公報,特開2005−353693号公報,及び特開2007−173958号公報がある。
【0005】
下記非特許文献2には,光パルス波形整形技術を用いて高周波の任意波形信号を発生する装置が開示されている。図10に任意波形発生器の基本構成を示す。この装置では,入力された光パルスの時間波形を光波形整形法により任意波形にした後,フォトダイオ−ドに入射することにより任意波形を得る。この装置は,光波形整形を波長領域での制御し,高周波信号発生に関しては時間領域で制御を行う。この装置は,光波形整形に液晶光変調器を用いる。このため,液晶素子の応答速度による制限(ミリ秒程度)を受けるため,この装置の波形の切換え速度がkHz程度である。また,この装置により高い周波数信号を得るためには,波長軸の分割数を増やす必要がある。このため,液晶のピクセル数が得られる周波数の上限を決めるので,変調周波数が10GHz程度に制限される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−244274号公報
【特許文献2】特開2010−62619号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】C.Jastrow et al 300 GHz transmission system, ElectronicLetters, vol. 44, no. 3, 2008, pp. 213−214.
【非特許文献2】J.D.McKinney et al “Millimeter-wave arbitrary waveform generation with a directspace-to-time pulse shaper” Opt. Lett., vol. 27, no.15, pp. 1345-1347; IEEE J. Sel. Top. QuantumElectron., vol. 2, no. 3, 2002, pp. 709-719.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は,高周波信号の周波数帯において広い変調帯域を有する高周波信号の発生装置を提供することを目的とする。
【0009】
具体的に説明すると,本発明は,40GHz以上の周波数帯において10GHz以上の変調帯域幅を持つ高周波信号の発生装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の側面は,光高周波信号発生器に関する。この光高周波信号発生器は,光コム信号を発生する光コム発生器11と,光コム発生器11から発生した光コム信号を分波する光分波器13と,光分波器13で分波された光コム信号を結合する光結合器15と,光結合器15が結合した光周波数成分の差周波信号を発生する光混合器17とを有する。そして,この光高周波信号発生器は,光分波器13から出力された光コム信号の一部から所定の成分を抽出するための第1の光フィルタ19をさらに有する。この光高周波信号発生器は,光分波器13から出力された光コム信号のうち第1の光フィルタ19に入射する以外の信号から所定の周波数成分を抽出するための第2の光フィルタ23を更に有する。また,この光高周波信号発生器は,分散補償器を有する。この分散補償器は,光コム発生器11からの光が入力する第1の分散補償器28であって,分散補償した光が光分波器13へ入力されるもの,又は第2の光フィルタ23からの光が入力する第2の分散補償器29であって,分散補償した光が光結合器15へ入力されるもののいずれか又は両方である。
【0011】
この第1の光フィルタ19が抽出した光成分と,光コム信号のうち分波器で分波された光成分を光混合器が混合することで,差周波信号が発生する。
【0012】
光高周波信号発生器の好ましい態様は,第1の光フィルタ19は,抽出する光コム信号の周波数間隔を変化させることができる,可変フィルタである。
【0013】
可変フィルタを用いることで,発生する高周波信号の周波数を変化させることができる。
【0014】
光高周波信号発生器の側面の好ましい態様は,光分波器13で分波された光コム信号に変調を与える変調器21をさらに有する。そして,変調器は,強度変調器又は位相変調器である。この変調器21は,第1の光フィルタ19と光結合器15との間に設けられてもよい。この場合,光フィルタ19が抽出した光コム信号に対して,光変調器が変調を施した後,光結合器15において他の成分と合波される。この変調器21は,光分波器13と第1の光フィルタ19との間に設けられてもよい。この場合,光分波器13で分波された光コム信号に変調を施した後,光フィルタ19により特定の成分が抽出されることとなる。
【0015】
光高周波信号発生器の側面の好ましい態様は,光分波器13から出力された光コム信号のうち第1の光フィルタ19に入射する以外の信号から所定の周波数成分を抽出するための第2の光フィルタ23をさらに有する。
【0016】
この光高周波信号発生器は,第1の光フィルタ19及び第2の光フィルタ23を有するため,光フィルタの抽出領域を変化させることで,任意の波形を有する高周波信号を得ることができる。
【0017】
光高周波信号発生器の側面の好ましい態様は,第1の光フィルタ19及び第2の光フィルタ23が,抽出する光コム信号の周波数間隔を変化させることができる,可変フィルタである。
【0018】
光高周波信号発生器の側面の好ましい態様は,第1の光フィルタ19が,光コム信号から1成分を抽出し,第2の光フィルタ23が,光コム信号から複数成分を抽出する。光コム信号から1成分を抽出するとは,光コム信号を構成する複数の光信号から1つの成分を主に抽出することを意味する。すなわち,第1の光フィルタ19がある成分を中心に抽出し,光コム信号に含まれる他の成分も残留する場合も,光コム信号から1成分を抽出することに含まれる。第2のフィルタ23後,分散補償器を配置することにより,光パルスを形成させる。分散補償器は,光コム発生器の直後に配置されてもよい。図1において,符号28は,光コム発生器11と接続された分散補償器28を示し,符号29は第2のフィルタ23に接続された分散補償器を示す。光高周波信号発生器は,2つの分散補償器28,29を有する必要はない。
【0019】
光高周波信号発生器の側面の好ましい態様は,第2の光フィルタ23の後に光コムの周波数間隔を変化させるための第3のフィルタ30をさらに有する。すなわち,このフィルタは,光コム信号の周波数間隔を変えることにより,光パルスの繰返し周波数を変化させ,発生される高周波信号パルスの繰返し周波数を変化させる。
【0020】
光高周波信号発生器の側面の好ましい態様は,第2の光フィルタ23からの出力光をON/OFFするための光スイッチをさらに有する。すなわち,光スイッチは,第2の光フィルタ23からの出力光を透過する動作と,遮断する動作を行うことができる。この光スイッチは光パルスの繰返し周波数に同期した信号で駆動するのが好ましい。光スイッチを駆動する信号は,光コムを駆動する信号を分岐して用いてもよい。光スイッチを有するため,この光高周波信号発生器は,ON/OFF変調された光パルス信号を出力することができる。
【0021】
光高周波信号発生器の側面の好ましい態様は,第1の光フィルタ19及び第2の光フィルタ23が抽出した光コム信号に対してそれぞれ変調を与える第1の変調器25及び第2の変調器27をさらに有し,第1の変調器25及び第2の変調器27は,それぞれ強度変調器又は位相変調器である。
【0022】
第1の変調器25及び第2の変調器27により,2つの光フィルタからの出力信号に対し任意に変調を加えることができるので,この光高周波信号発生器は,任意の波形を有する高周波信号を発生できることとなる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば,高周波信号の周波数帯において広い変調帯域を有する高周波信号の発生装置を提供することができる。
【0024】
本発明によれば,40GHz以上の周波数帯において10GHz以上の変調帯域を持つ高周波信号の発生装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】図1は,本発明の光高周波信号発生器の構成例を示すブロック図である。
【図2】図2は,光コム信号の周波数間隔を変化させることを説明するための概念図である。
【図3】図3は,実施例1の装置のブロック図である。
【図4】図4は,実施例2におけるミリ波信号発生器のブロック図および各段階のスペクトルを示す図である。
【図5】図5(a)は光コム発生器の出力光スペクトルを示す。図5(b)は光分波器により3波を抽出し,そのうちの2波に位相変調器により変調を施し,光合波器により合波した光スペクトルを示す。図5(c)はフォトダイオードにより光混合した結果を示す。
【図6】図6は,実施例3の装置のブロック図である。
【図7】図7は,実施例4の本発明のミリ波帯パルス波発生器の構成を示すブロック図である。
【図8】図8は,図7のミリ波帯パルス発生器の各段階におけるスペクトル波形を示す図である。図8(a)は光コム発生器の出力スペクトルを示す。図8(b)は,光合波器により合波された際の光スペクトルを示す。図8(c)は,光コム信号から抽出された成分を光混合した結果を示す。図8(d)はフーリエ変換スペクトルを示す。
【図9】図9は,実施例5の装置のブロック図を示す。
【図10】図10は,従来の任意波形発生器の基本構成を示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下,図面を参照しつつ本発明を実施するための形態を説明する。図1は,本発明の光高周波信号発生器の構成例を示すブロック図である。図1に示されるように,この光高周波信号発生器は,光コム信号を発生する光コム発生器11と,光コム発生器11から発生した光コム信号を分波する光分波器13と,光分波器13で分波された光コム信号を結合する光結合器15と,光結合器15が結合した光周波数成分の差周波信号を発生する光混合器17とを有する。そして,この光高周波信号発生器は,光分波器13から出力された光コム信号の一部から所定の成分を抽出するための第1の光フィルタ19をさらに有する。この第1の光フィルタ19が抽出した光成分と,光コム信号のうち分波器で分波された光成分を光混合器が混合することで,差周波信号が発生する。
【0027】
光コム発生器11は,光コム信号を発生するための装置である。光コム信号は,所定周波数間隔ずつずれた複数の光成分を有する光信号である。光コム発生器は,すでに知られている。本発明は,すでに知られた光コム発生器を適宜採用できる。光コム発生器を開示した文献の例は,特開2009−175576号公報,特開平08−264870号公報,特開2006−030732号公報及び特開2006−017748号公報である。特開2006−030732号公報に開示された光コム発生器の例は,光SSB変調器と,光入出力ポートとを具備する光ファイバループである。光コム発生器の入力ポートに入力光を入力する。入力光は,単一モードの連続光(f0)である。すると,光SSB変調器により入力光の周波数がシフトする(f0+fm)。周波数がシフトした光成分は,ループを周回し,入力ポートに入力される新たな光と合わさる(f0, f0+fm)。これらの光は,光SSB変調器へと導かれ,両成分とも周波数がシフトする(f0+fm,
f0+2fm)。これらの工程を繰り返すことで,多数のスペクトル成分を有する光(光コム)を得ることができる。
【0028】
光コム発生器(光周波数コム発生装置)の例は,特開2009−175576号公報に開示されたものである。この光コム発生器は,光の入力部と,前記入力部に入力した光が分岐する分岐部と,前記分岐部から分岐した光が伝播する第1の導波路と,前記分岐部から分岐した上記とは別の光が伝播する第2の導波路と,前記第1の導波路と前記第2の導波路から出力される光信号が合波される合波部と,前記合波部で合波された光信号が出力される光信号の出力部とを含む導波路部分と;前記第1の導波路を駆動する第1の駆動信号と前記第2の導波路を駆動する第2の駆動信号を得るための駆動信号系と;前記第1の導波路及び前記第2の導波路に印加するバイアス信号を得るためのバイアス信号系を具備する。そして,第1の駆動信号及び第2の駆動信号は一つの駆動信号系から得られ,前記第1の導波路に沿って設けられた第1の変調電極と,前記第2の導波路に沿って設けられた第2の変調電極の長さをそれぞれl及びlとしたときに,lとlとは異なり,前記駆動信号系及びバイアス信号系は,前記第1の駆動信号,前記第2の駆動信号及びバイアス信号が,下記式(I)を満たすように駆動する。
【0029】
ΔA±Δθ=π/2 (I)
(ここで,ΔA及びΔθは,それぞれΔA≡(A−A)/2,及びΔθ≡(θ−θ)/2と定義され,A及びAはそれぞれ前記第1の駆動信号及び前記第2の駆動信号の電極への入力時における前記第1の駆動信号及び前記第2の駆動信号に誘導される光位相シフト振幅を示し,θ及びθはそれぞれ第1の導波路及び第2の導波路内で誘導される光位相シフト量を示す)。前記第1の駆動信号により誘導される光位相シフト振幅(A)を単に,前記第1の駆動信号の振幅ともよび,前記第2の駆動信号により誘導される光位相シフト振幅(A)を単に,前記第2の駆動信号の振幅ともよぶ。また,“駆動信号の振幅”とは,文脈に応じて,駆動信号により誘導される光位相シフト振幅を意味する。
【0030】
上記式(I)を満たすように駆動することにより,合波される2つの位相変調器(導波路と駆動信号を印加する電極とにより位相変調器を構成する。)からの光信号が互いに補い合って平坦なスペクトル特性を有する光周波数コムを得ることができることとなる。
【0031】
前記駆動信号系及びバイアス信号系は,前記第1の駆動信号,前記第2の駆動信号(10)及びバイアス信号が,前記式(I)の替わりに,下記式(II)を満たすように駆動するものであってもよい。
ΔA=Δθ=π/4 (II)
(ただし,ΔA及びΔθは,上記と同義である。)
【0032】
式(II)は,式(I)を満たすから,式(II)のように駆動すれば,平坦なスペクトル特性を有する光周波数コムを得ることができる。また,後述するように,式(II)を満たすように駆動すれば,効率よく平坦なスペクトル特性を有する光周波数コムを得ることができる。
【0033】
前記第1の駆動信号の振幅(A)と前記第2の駆動信号の振幅(A)とが異なるものであってもよい。
【0034】
本発明の光コム発生器に用いられる光源として,連続光(CW)を出力できる光源や,分布帰還型半導体レーザ(DFBレーザ)があげられる。定光出力動作タイプのDFBレーザが,高い単一波長選択性を有するので好ましい。光の帯域として,C-bandのみならず,その長波側のL-band 又はその短波側のS-bandであってもよい。光強度として,1mW〜50mWがあげられる。
【0035】
光コム信号に分散補償を施すことで超短光パルスを得ることができる。具体的には,マッハツェンダ光変調器型平坦光コム発生器(MZ-FCG)および非線形パルス圧縮技術を用いて超短光パルス発生を行うことができる(信学技報, vol. 107, no. 173, OPE2007-63, pp. 191-194, 2007年8月)。たとえば,繰返し周波数およびパルス幅の可変性を有するシングルモード半導体レーザからの連続光をRF正弦波信号で駆動させたMZ-FCGに入射して光コム信号を発生させ,それをチャープ補償することによりピコ秒光パルスを発生させることができる.そのピコ秒パルスを分散フラット・分散減少ファイバに入射して断熱ソリトン圧縮を行なうことにより,たとえば,5〜20GHzの繰返し周波数の範囲でパルス幅が100〜300psの超短光パルス列を発生させることができる。
【0036】
本発明の光コム発生器に用いられる導波路として,光変調器に用いられる公知の導波路を適宜用いることができる。本発明の光変調器の好ましい態様は,マハツェンダ型光変調器であるから,以下マハツェンダ型光変調器を中心に説明する。通常,マハツェンダ導波路や電極は基板上に設けられる。基板及び各導波路は,光を伝播することができるものであれば,特に限定されない。例えば,LN(LiNbO3)基板上に,Ti拡散のニオブ酸リチウム導波路を形成しても良いし,シリコン(Si)基板上に二酸化シリコン(SiO2)導波路を形成しても良い。また,InPやGaAs基板上にInGaAsP,GaAlAs導波路を形成した光半導体導波路を用いても良い。
【0037】
基板として,XカットZ軸伝搬となるように切り出されたニオブ酸リチウム (LiNbO3:LN)が好ましい。これは大きな電気光学効果を利用できるため低電力駆動が可能であり,かつ優れた応答速度が得られるためである。この基板のXカット面(YZ面)の表面に光導波路が形成され,導波光はZ軸(光学軸)に沿って伝搬することとなる。Xカット以外のニオブ酸リチウム基板を用いても良い。また,基板として,電気光学効果を有する三方晶系,六方晶系といった一軸性結晶,又は結晶の点群がC3V,C3,D3,C3h,D3hである材料を用いることができる。これらの材料は,電界の印加によって屈折率変化が伝搬光のモードによって異符号となるような屈折率調整機能を有する。具体例としては,ニオブ酸リチウムの他に,タンタル酸リチウム (LiTO3:LT),β−BaB2O4(略称BBO),LiIO3等を用いることができる。
【0038】
変調電極は,好ましくは高周波電気信号源と接続される。高周波電気信号源は,変調電極へ伝達される信号を発生するためのデバイスであり,公知の高周波電気信号源を採用できる。変調電極に入力される高周波信号の周波数(f)として,例えば1GHz〜100GHzがあげられる。高周波電気信号源の出力としては,一定の周波数を有する正弦波があげられる。なお,この高周波電気信号源の出力には位相変調器が設けられ,出力信号の位相を制御できるようにされていることが好ましい。なお,高周波電気信号源から出力された電気信号は,分岐され,分岐された一方の電気信号は変調器(遅延器)などで位相などが調整されて変調電極へ印加されるものがあげられる。
【0039】
変調電極は,たとえば金,白金などによって構成される。変調電極の幅としては,1μm〜10μmがあげられ,具体的には5μmがあげられる。変調電極の長さとしては,変調信号の波長の(fm)の0.1倍〜0.9倍があげられ,0.18〜0.22倍,又は0.67倍〜0.70倍があげられ,より好ましくは,変調信号の共振点より20〜25%短いものがあげられる。このような長さとすることで,スタブ電極との合成インピーダンスが適度な領域に留まるからである。より具体的な変調電極の長さとしては,3250μmがあげられる。以下では,共振型電極と,進行波型電極について説明する。
【0040】
光コム発生器の例は,前記第1の導波路に印加する第1のバイアス信号と前記第2の導波路に印加する第2のバイアス信号とを得るためのバイアス信号系を具備する。バイアス信号系は,2つのアームに印加されるバイアス電圧を制御するための信号系である。バイアス信号系は,具体的には,バイアス電源系とバイアス調整電極を含む。バイアス調整電極は,バイアス電源系に接続され2つのアーム間のバイアス電圧を制御することにより,2つのアームを伝播する光の位相を制御するための電極である。バイアス調整電極へは,好ましくは通常直流または低周波信号が印加される。ここで低周波信号における「低周波」とは,例えば,0Hz〜500MHzの周波数を意味する。なお,この低周波信号の信号源の出力には電気信号の位相を調整する位相変調器が設けられ,出力信号の位相を制御できるようにされていることが好ましい。
【0041】
変調電極とバイアス調整電極とは,別々に構成されてもよいし,ひとつの電極がそれらを兼ねたものでもよい。すなわち,変調電極は,DC信号とRF信号とを混合して供給する給電回路(バイアス回路)と連結されていてもよい。
【0042】
なお,本発明の光コム発生器においては,各電極に印加される信号のタイミングや位相を適切に制御するため,各電極の信号源と電気的に(又は光信号により)接続された制御部が設けられることが好ましい。そのような制御部は,変調電極及びバイアス調整電極に印加される信号の変調時間を調整するように機能する。すなわち,各電極による変調が,ある特定の信号に対して行われるように,光の伝播時間を考慮して調整する。この調整時間は,各電極間の距離などによって適切な値とすればよい。
【0043】
[光コム発生器の製造方法]
本発明の光周波数コム発生装置は,基板,基板上に設けられた導波路,電極,信号源,などからなる。そして,導波路の形成方法としては,チタン拡散法等の内拡散法やプロトン交換法など公知の形成方法を利用できる。すなわち,本発明の光周波数コム発生装置は,例えば以下のようにして製造できる。まず,ニオブ酸リチウムのウエハー上に,フォトリソグラフィー法によって,チタンをパターニングし,熱拡散法によってチタンを拡散させ,光導波路を形成する。この際の条件は,チタンの厚さを100〜2000オングストロームとし,拡散温度を500〜2000℃とし,拡散時間を10〜40時間とすればよい。基板の主面に,二酸化珪素の絶縁バッファ層(厚さ0.5〜2μm)を形成する。次いで,これらの上に厚さ15〜30μmの金属メッキからなる電極を形成する。次いでウエハーを切断する。このようして,チタン拡散導波路が形成された光変調器が形成される。
【0044】
光周波数コム発生装置は,また,たとえば以下のようにしても製造できる。まず基板上に導波路を形成する。導波路は,ニオブ酸リチウム基板表面に,プロトン交換法やチタン熱拡散法を施すことにより設けることができる。例えば,フォトリソグラフィー技術によってLN基板上に数マイクロメートル程度のTi金属のストライプを,LN基板上に列をなした状態で作製する。その後,LN基板を1000℃近辺の高温にさらしてTi金属を当該基板内部に拡散させる。このようにすれば,LN基板上に導波路を形成できる。
【0045】
また,電極は上記と同様にして製造できる。例えば,電極を形成するため,光導波路 の形成と同様にフォトリソグラフィー技術によって,同一幅で形成した多数の導波路の両脇に対して電極間ギャップが1マイクロメートル〜50マイクロメートル程度になるように形成することができる。
【0046】
なお,シリコン基板を用いる場合は,たとえば以下のようにして製造できる。シリコン(Si)基板上に火炎堆積法によって二酸化シリコン(SiO2)を主成分とする下部クラッド層を堆積し,次に,二酸化ゲルマニウム(GeO2)をドーパントとして添加した二酸化シリコン(SiO2)を主成分とするコア層を堆積する。その後,電気炉で透明ガラス化する。次に,エッチングして光導波路部分を作製し,再び二酸化シリコン(SiO2)を主成分とする上部クラッド層を堆積する。そして,薄膜ヒータ型熱光学強度変調器及び薄膜ヒータ型熱光学位相変調器を上部クラッド層に形成する。
【0047】
光分波器13は,光コム発生器11から発生した光コム信号を分波するための装置である。また,光コム信号は,複数の成分を有する。光コム信号をf+nf(n=0,1,2...n)とする。この場合,光分波器13は,これら複数の光コム成分のいくつかを分離するものであってもよい。この場合,光分波器の透過帯の間隔が,光コム信号の周波数間隔(f)の整数倍(n(n=2...n))であるものが好ましい。この整数倍の例は,2倍,3倍,4倍又は5倍である。光分波器13は,光コム発生器11から発生した光コム信号を2つに分離するものでもよいし,3つに分離するものでもよい。また,光分波器13は,光コム信号を4つ以上に分離するものでもよい。光分波器13の例は,光多重分離器(DEMUX),アレイ導波路グレーティング(AWG),ファイバブラッググレーティング(FBG),及びエタロンフィルタである。光分波器13の透過帯の間隔は光コム信号の間隔(f)に対して整数倍であることが好ましい。光分波器13の透過帯の間隔が光コム信号の間隔(f)に対して整数倍なので,光分波器13により所定の成分を抽出することができる。また,光分波器13は,光コム発生器11から発生した光コム信号を複数の強度比に分岐してもよい。そのような光分波器の例はカプラである。
【0048】
第1の光フィルタ19は,光分波器13から出力された光コム信号の一部から所定の成分を抽出するための装置である。光分波器13では,光コム信号が分波されるので,光フィルタは,分波されたいずれかの成分を抽出する。光フィルタが,抽出した成分と,光コム信号の残りのある成分とが混合されるので,本発明の光高周波信号発生器は,高周波信号を発生できる。しかも,光フィルタ19が抽出する成分を変化させることで,光高周波信号発生器から出力される高周波信号を任意に変化させることができる。このため,光高周波信号発生器の好ましい態様は,第1の光フィルタ19は,抽出する光コム信号の周波数間隔を変化させることができる,可変フィルタである。可変フィルタを用いることで,発生する高周波信号の周波数を変化させることができる。光分波器が第1の光フィルタとして機能してもよい。
【0049】
光結合器15は,光分波器13で分波された光コム信号を結合するための装置である。光結合器15の例は,カプラである。光結合器15は,分波された導波路が合波される部位であってもよい。なお,光結合器は,光分波器13で分波された複数の成分のうち,いくつかの成分を合波するものでもよい。
【0050】
光混合器17は,光結合器15が結合した複数の光コム信号の成分を用いて,光周波数成分の差周波信号を発生するための装置である。光混合器17の例は,半導体基板,単一キャリアフォトダイオード,光伝導素子,及び非線形光学結晶である。これらの光混合器に合波器において合波された複数の成分を有する光信号を入力すると,差周波に相当する周波数を有する光信号が発信される。
【0051】
次に,光高周波信号発生器の基本動作について説明する。
光コム発生器11から発生した光コム信号が,光分波器13に入射する。光分波器13は,光コム信号の成分を分離する。第1の光フィルタ19は,分離された光コム信号の成分から必要な成分を抽出する。光フィルタは複数存在してもよい。そして,抽出されたすべての成分を,光結合器15で結合させ,光混合器17に入力する。光混合器17では,それぞれの成分間の差周波に相当する光差周波が発生するので,これにより抽出された成分がミリ波・テラヘルツ波信号へ変換される。例えば,光高周波信号発生器が,光コム中の任意の第1の成分(中心周波数f),第1の成分から周波数f1だけ離れた第2の成分(中心周波数f+f1),及び第2の成分から周波数f2だけ離れた第3の成分(中心周波数f+f1+f2)を抽出して光混合器に入射した場合,発生する高周波信号の例は,周波数f=f1およびf=f1+f2の2つの周波数が混合されたものとなる。この光高周波信号発生器は,さらに多数の成分を抽出・合成することにより,様々な周波数を合成した信号を発生できる。光コム信号の各成分は、ある一定の位相関係を持っているため、発生される高周波信号は互いに一定の位相関係を持ったものとなる。また,この光高周波信号発生器は,抽出した各成分の強度あるいは位相を,光変調器等を用いて変調することにより,発生される高周波信号の強度関係あるいは位相関係を変えることもできる。
【0052】
光高周波信号発生器の側面の好ましい態様は,光分波器13で分波された光コム信号に変調を与える変調器21をさらに有する。そして,変調器は,強度変調器,位相変調器,QPSK変調器,又はQAM変調器である。この変調器21は,第1の光フィルタ19と光結合器15との間に設けられてもよい。この場合,光フィルタ19が抽出した光コム信号に対して,光変調器が変調を施した後,光結合器15において他の成分と合波される。この変調器21は,光分波器13と第1の光フィルタ19との間に設けられてもよい。この場合,光分波器13で分波された光コム信号に変調を施した後,光フィルタ19により特定の成分が抽出されることとなる。先に説明したとおり,このような変調器を用いることで,生成する差周波信号の波形に影響を与えることができ,これにより発生する高周波信号の波形を調整することができる。光変調器は,たとえば,光コム発生器11及び光分波器13と同期手段により,同期がとられていてもよい。すると,光変調器は,光分波器13で分波された光コム信号の所定の成分に対して,変調を施すことができることとなる。
【0053】
光高周波信号発生器の側面の好ましい態様は,光分波器13で分波された光コム信号に変調を与える変調器21に位相シフタをさらに有する。この位相シフタは,光コム成分の位相をπ/2だけ変化させる。これにより,隣り合う成分の位相が直交した高周波信号を発生させることができる。
【0054】
光高周波信号発生器の側面の好ましい態様は,光分波器13から出力された光コム信号のうち第1の光フィルタ19に入射する以外の信号から所定の周波数成分を抽出するための第2の光フィルタ23をさらに有する。先に説明したとおり,光コム信号から抽出する成分は,複数種類であってもよい。このため,本発明の光高周波信号発生器は,第1のフィルタのみならず,第2の光フィルタ23,第3の光フィルタ,及び第4の光フィルタなど,複数のフィルタを有していてもよい。そして,それらのうちいくつかは,光コム信号のいずれかの成分を中心に抽出するものであることが好ましい。この場合,たとえば,第1の光フィルタが,光コム信号の1成分を主に抽出し,第2の光フィルタが光コム信号の複数の成分のうち一部(複数の成分)を抽出するものであってもよい。第2の光フィルタ23(又は第3移行の光フィルタ)は,先に説明した第1の光フィルタの構成を適宜採用できる。
【0055】
この光高周波信号発生器は,第1の光フィルタ19及び第2の光フィルタ23を有するため,光フィルタの抽出領域を変化させることができる。このため,この光高周波信号発生器は,任意の波形を有する高周波信号を得ることができる。
【0056】
光高周波信号発生器の側面の好ましい態様は,第1の光フィルタ19及び第2の光フィルタ23が,抽出する光コム信号の周波数間隔を変化させることができる,可変フィルタである。光フィルタが可変フィルタなので,抽出する光コム信号の成分を変化させることができ,これにより装置から出力される高周波信号の周波数,及び波形を制御することができる。
【0057】
光高周波信号発生器の側面の好ましい態様は,第1の光フィルタ19が,光コム信号から1成分を抽出し,第2の光フィルタ23が,光コム信号から複数成分を抽出する。光コム信号から1成分を抽出するとは,光コム信号を構成する複数の光信号から1つの成分を主に抽出することを意味する。すなわち,第1の光フィルタ19がある成分を中心に抽出し,光コム信号に含まれる他の成分も残留する場合も,光コム信号から1成分を抽出することに含まれる。第2のフィルタ後,分散補償器を配置することにより,光パルスを形成させる。分散補償器は,光コム発生器の直後に配置されてもよい。図1において,符号28は,光コム発生器11と接続された分散補償器28を示し,符号29は第2のフィルタ23に接続された分散補償器を示す。光高周波信号発生器は,2つの分散補償器28,29を有する必要はない。分散補償器の例は分散補償ファイバである。本発明における分散補償器は,分散を補償することができるものであれば公知のものを適宜採用できる。
【0058】
光高周波信号発生器の側面の好ましい態様は,第2の光フィルタ23の後に光コムの周波数間隔を変化させるための第3のフィルタ30をさらに有する。すなわち,このフィルタは,光コム信号の周波数間隔を変えることにより,光パルスの繰返し周波数を変化させ,発生される高周波信号パルスの繰返し周波数を変化させる。図2は,光フィルタ(光コム間隔変換フィルタ)により周波数間隔が変化することを説明する概念図である。図2に示されるように,光コムのある部分の光周波数を第3のフィルタにより変化させることで,その変化させた周波数を反映した高周波信号を得ることができる。波長は周波数の逆数に比例する。このため,たとえば,周波数間隔を2倍に変化させると,波長間隔は1/2となる。この第3のフィルタの例は,液晶光変調器又は光インターリーバである。この液晶光変調器は,コンピュータにより,変調帯域や変調量を制御できるものが好ましい。光インターリーバは,例えば,特開2009−153092号公報に開示されている。光インターリーバの例は,偏波無依存の50:50ビームスプリッタを使用して入力光を経路長が等しい2つの光路に分離するマイケルソン干渉計に基づくものである。一方の光路は,ビームスプリッタに光を反射して戻す100%反射率の反射ミラーを有している。他方の光路は例えば,GTR共振器を反射器として有している。
【0059】
光高周波信号発生器の側面の好ましい態様は,第2の光フィルタ23からの出力光をON/OFFするための光スイッチをさらに有する。すなわち,光スイッチは,第2の光フィルタ23からの出力光を透過する動作と,遮断する動作を行うことができる。この光スイッチは光パルスの繰返し周波数に同期した信号で駆動するのが好ましい。光スイッチを駆動する信号は,光コムを駆動する信号を分岐して用いてもよい。光スイッチを有するため,この光高周波信号発生器は,ON/OFF変調された光パルス信号を出力することができる。光スイッチの例は,光学チョッパーやマッハツェンダ型光強度変調器である。
【0060】
光高周波信号発生器の側面の好ましい態様は,第2の光フィルタ23からの出力光を位相変調するための位相変調器をさらに有する。すなわち,位相変調器は,第2の光フィルタ23からの出力光を,例えば,同相で出力する動作と,逆相で出力する動作を行うことができる。この位相変調器は光パルスの繰返し周波数に同期した信号で駆動するのが好ましい。光スイッチを駆動する信号は,光コムを駆動する信号を分岐して用いてもよい。光スイッチを有するため,この光高周波信号発生器は,位相変調された光パルス信号を出力することができる。
【0061】
光高周波信号発生器の側面の好ましい態様は,第1の光フィルタ19及び第2の光フィルタ23が抽出した光コム信号に対してそれぞれ変調を与える第1の変調器25及び第2の変調器27をさらに有し,第1の変調器25及び第2の変調器27は,それぞれ強度変調器,位相変調器,QPSK変調器,又はQAM変調器である。
【0062】
光高周波信号発生器の側面の好ましい態様は,光分波器13で分波された光コム信号に変調を与える変調器21に位相シフタをさらに有する。この位相シフタは,光コム成分の位相をたとえばπ/2だけ変化させる。これにより,隣り合う成分の位相が直交した高周波信号を発生させることができる。
【0063】
第1の変調器25及び第2の変調器27により,2つの光フィルタからの出力信号に対し任意に変調を加えることができるので,この光高周波信号発生器は,任意の波形を有する高周波信号を発生できることとなる。
【実施例1】
【0064】
図3に実施例1の装置のブロック図を示す。このシステムは,光コム発生器より出力された光コム信号を光分波器に入力し,光コム信号の各成分を分離する。ここで用いる光分波器は,透過帯が周波数軸上で周期的に並べられたものである。光分波器の透過帯の間隔は光コム信号の間隔に対して整数倍とする。分離された光コム成分の中から複数の成分を選択抽出して光合波器により合波し,光混合器に入射する。光混合器では,光信号が高周波信号へ変換されて出力される。光分波器出力の各チャンネルに強度調整器,位相調整器,QPSK変調器,又はQAM変調器を挿入してもよく,それにより,発生される高周波信号の波形形状の調整や安定化が可能である。また,光分波器出力の各チャンネルに光変調器を挿入しても良く,これにより,各成分を変調できる。
【実施例2】
【0065】
図4は,実施例2におけるミリ波信号発生器のブロック図および各段階のスペクトルを示す図である。レーザーダイオード(LD)の出力は10dBmであった。そして,MZ−FC(マッハツェンダ型平坦コム発生器)を12.5GHzの正弦波により駆動した。PMは位相変調器を意味する。この例では,光分岐器(DEMUX)の出力のうちいくつかに位相変調器が取り付けられており,適宜位相変調を施すことができるようにされていた。位相変調器は3GHzで駆動し,コム発生器と同期をとっていた。全ての出力モード光を50GHzのバンド幅を有する超早フォトダイオード(光混合素子)にて混合した。図5(a)は光コム発生器の出力光スペクトルを示す。図5(b)は光分波器により3波を抽出し,そのうちの2波に位相変調器により変調を施し,光合波器により合波した光スペクトルを示す。図5(c)はフォトダイオードにより光混合した結果を示す。図5(a)及び図5(b)に示される通り,コム信号から抽出した成分のうち位相変調を施した成分は,光位相変調器の3GHzに相当するサイドバンドを有していた。これにより,ある成分についてのみ位相変調を施すことができたことがわかる。そして,3つの成分は,25GHz及び37.5GHzの間隔を有していた。すなわち,それぞれの周波数差に対応した周波数に変調された高周波信号が発生されていることが分かる。さらに,変調した光成分の位相調整をすることにより,2つの高周波信号の位相を直交させることが可能であることがわかる。
【実施例3】
【0066】
図6に実施例3の装置のブロック図を示す。光コム信号により出力された光コム信号を任意の分散補償器で分散補償したのち,光分岐器により2分し,それぞれを光波長フィルタ(光帯域フィルタ)に入力する。それぞれの光波長フィルタでは,光コム信号から1成分あるいは複数の成分を抽出する。その後,光結合器によりすべての成分を合波し,光混合器に入力する。これによりこのシステムは,任意波形信号を得る。光波長フィルタ1と2の透過波長帯域の間隔を変えることにより,発生される信号の周波数を変えることができ,フィルタ2の帯域幅を変えることにより,発生される信号の波形を変えることができる。さらに,それぞれのフィルタ後に光変調器を挿入して光変調をすることにより,任意波形の信号を発生することができる。
【実施例4】
【0067】
図7は,本発明のミリ波帯パルス波発生器の構成を示すブロック図である。このシステムは,光コム発生器,分散補償器,光分岐器,光帯域フィルタ,光分波器,光合波器,光混合器を有する。光コム発生器により発生された光コム信号は,光分岐器により二分され,それぞれ光帯域フィルタと光分波器に入力される。光帯域フィルタは光コム信号から複数の成分を抽出し,光分波器は光コム信号から1成分を抽出する。この場合光分波器は,光フィルタとして機能する。抽出された光コム信号を光合波器により合波し,光混合器によりミリ波帯信号に変換する。
【0068】
図8は,図7のミリ波帯パルス発生器の各段階におけるスペクトル波形を示す図である。図8(a)は光コム発生器の出力スペクトルを示す。図8(b)は,光合波器により合波された際の光スペクトルを示す。図8(c)は,光コム信号から抽出された成分を光混合した結果を示す。図8(d)はフーリエ変換スペクトルを示す。図8から,この装置により,光スペクトルの周波数差に対応したパルスを発生できることがわかる。また,図8から,光フィルタの中心周波数を制御することにより,発生する電磁波パルスの周波数を制御できることがわかる。さらに,図8より,光フィルタの透過帯域幅を変えることにより,パルス幅を変えることができることがわかる。すなわち,光帯域フィルタあるいは光分波器の透過波長を変えることにより,図8(d)に示されるように,発生される信号の周波数を変えることができる。光コム発生器の駆動信号を変えることにより,光パルスの繰返し周波数が変わるので,発生する高周波信号パルスの繰返し周波数を変えることができる。
【実施例5】
【0069】
図9は,実施例5の装置のブロック図を示す。光コム信号により出力された光コム信号を光分岐器により2分し,それぞれを光フィルタに入力する。フィルタ1は,光コム信号から1成分のみを抽出する。フィルタ2は,複数の成分を抽出する。その後,光結合器によりすべての成分を合波し,光混合器に入力することにより,当該周波数のパルス信号を得る。フィルタ2の後に光スイッチを挿入して光パルスのオン―オフ変調を施すことにより,パルス変調された信号を発生することができる。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明は,無線通信の分野で利用され得る。
【符号の説明】
【0071】
11 光コム発生器
13 光分波器
15 光結合器
17 光混合器
19 第1の光フィルタ
21 変調器
23 第2の光フィルタ
25 第1の変調器
27 第2の変調器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光コム信号を発生する光コム発生器(11)と,
前記光コム発生器(11)から発生した光コム信号を分波する光分波器(13)と,
前記光分波器(13)で分波された光コム信号を結合する光結合器(15)と,
前記光結合器(15)が結合した光周波数成分の差周波信号を発生する光混合器(17)と,を有する光高周波信号発生器において,
前記光高周波信号発生器は,
前記光分波器(13)から出力された光コム信号の一部から所定の成分を抽出するための第1の光フィルタ(19)と,
前記光分波器(13)から出力された光コム信号のうち前記第1の光フィルタ(19)に入射する以外の信号から所定の周波数成分を抽出するための第2の光フィルタ(23)と,
前記光コム発生器(11)からの光が入力する第1の分散補償器(28)であって,分散補償した光が前記光分波器(13)へ入力されるもの,又は前記第2の光フィルタ(23)からの光が入力する第2の分散補償器(29)であって,分散補償した光が前記光結合器(15)へ入力されるもののいずれか又は両方を,更に有する
光高周波信号発生器。

【請求項2】
請求項1に記載の光高周波信号発生器であって,
前記第1の光フィルタ(19)は,抽出する光コム信号の周波数間隔を変化させることができる,可変フィルタである,光高周波信号発生器。

【請求項3】
請求項1に記載の光高周波信号発生器であって,
前記光分波器(13)で分波された光コム信号の成分に変調を与える変調器(21)をさらに有し,
前記変調器は,強度変調器又は位相変調器である,光高周波信号発生器。

【請求項4】
請求項3に記載の光高周波数信号発生器であって,前記変調器(21)は位相変調器であり,前記光分波器(13)で分波された光コム信号の成分のうち,前記変調器(21)に入力された成分に位相変調を施す,
光高周波信号発生器。
【請求項5】
請求項4に記載の光高周波信号発生器であって,
前記第1の光フィルタ(19)及び第2の光フィルタ(23)は,抽出する光コム信号の周波数間隔を変化させることができる,可変フィルタである,
光高周波信号発生器。

【請求項6】
請求項5に記載の光高周波信号発生器であって,
前記第1の光フィルタ(19)は,前記光コム信号から1成分を抽出し,
前記第2の光フィルタ(23)は,前記光コム信号から複数成分を抽出する,
光高周波信号発生器。

【請求項7】
請求項6に記載の光高周波信号発生器であって,
前記第2の光フィルタ(23)からの出力光をON/OFFするための光スイッチをさらに有する,
光高周波信号発生器。

【請求項8】
請求項5に記載の光高周波信号発生器であって,
前記第1の光フィルタ(19)及び第2の光フィルタ(23)が抽出した光コム信号に対してそれぞれ変調を与える第1の変調器(25)及び第2の変調器(27)をさらに有し,
前記第1の変調器(25)及び第2の変調器(27)は,それぞれ強度変調器又は位相変調器である,光高周波信号発生器。





【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−195792(P2012−195792A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−58617(P2011−58617)
【出願日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【出願人】(301022471)独立行政法人情報通信研究機構 (1,071)
【Fターム(参考)】