説明

高周波回路基板等のテスト用テーブル

【課題】高周波回路基板等46に搭載された回路素子が残留磁気の影響を受けることがないようにして、正しく調整や検査および測定がなし得る高周波回路基板等のテスト用テーブルを提供する。
【解決手段】非磁性体からなる基台10に、高周波回路基板等46を固定するための非磁性体からなる基板固定台32の配設位置が調整自在となるように配設し、基台10にプローブ用自在アーム16の基端を固定し、高周波回路基板等46に先端を当接させる同軸プローブ20をプローブ用自在アーム16の先端部に配設し、基台10を電気的に接地するためのグランド端子50を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高周波回路基板等の所定箇所にプローブの先端を当接させて高周波回路基板等を調整や検査および測定する際に用いる高周波回路基板等のテスト用テーブルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
高周波回路基板等の所定箇所にプローブの先端を当接させて、当接箇所から得られる電気信号等を測定器等に与えて、高周波回路基板等の高周波回路の調整や検査および測定がなされる。かかる際に、測定器等を自由に手で操作するためには、高周波回路基板等の所定箇所にプローブの先端が当接した状態を保持する治具が必要である。
【0003】
一方、高周波回路基板等と比較してその寸法が極めて小さい半導体チップ回路を検査する装置として、極めて微細な所定箇所に正確にプローブの先端を当接させ得る高精度の位置調整機構を備えたものがある。かかる装置は、位置精度をより高くする目的で重要な構造部材としての基台および半導体チップを固定するための基板固定台等に剛性の高い鋳鉄が用いられている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の半導体チップ回路を検査する装置を高周波回路基板等を測定できる寸法に拡大した装置を構成すれば、高周波回路基板等の所定箇所にプローブの先端を当接させた状態を保持して自由に手で測定器等を操作することのできる治具を実現することができる。しかるに、基台や基板固定台が、剛性に富む鋳鉄等の強磁性体で構成されているので、この強磁性体に残留磁気が生じた場合に、高周波回路基板等に搭載された回路素子としてのコイルやトランス等が残留磁気による磁界の影響を受けて部品自体の特性が変化し、正しく調整や検査および測定ができないという重大な問題が生ずる。
【0005】
本発明は、上述のごとき問題を改善するためになされたもので、高周波回路基板等に搭載された回路素子が残留磁気の影響を受けることがないようにして、正しく調整や検査および測定がなし得る高周波回路基板等のテスト用テーブルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる目的を達成するために、本発明の高周波回路基板等のテスト用テーブルは、非磁性体からなる基台に、高周波回路基板等を固定するための非磁性体からなる基板固定台の配設位置が調整自在となるように配設し、前記基台にプローブ用自在アームの基端を固定し、前記高周波回路基板等に先端を当接させる同軸プローブを前記プローブ用自在アームの先端部に配設し、前記基台を電気的に接地するためのグランド端子を配設して構成されている。
【0007】
さらに、前記基台および前記基板固定台を非磁性体でしかも導電体で構成しても良い。
【0008】
また、前記基台に拡大鏡用自在アームの基端を固定し、前記高周波回路基板等に前記同軸プローブの先端が当接する状態を拡大視認するための拡大鏡を前記拡大鏡用自在アームの先端部に配設して構成することもできる。
【0009】
さらに、前記基台に照明用自在アームの基端を固定し、前記高周波回路基板等に前記同軸プローブの先端が当接する状態を照明するための照明器具を前記照明用自在アームの先端部に配設して構成することもできる。
【0010】
さらにまた、前記基台に拡大鏡および照明用自在アームの基端を固定し、その先端側を2つに分岐し、一方の先端部に前記高周波回路基板等に前記同軸プローブの先端が当接する状態を拡大視認するための拡大鏡を配設し、他方の先端部に前記高周波回路基板等に前記同軸プローブの先端が当接する状態を照明するための照明器具を配設して構成することも可能である。
【0011】
そして、前記同軸プローブと前記プローブ用自在アームを非磁性体で構成することもできる。
【発明の効果】
【0012】
請求項1記載の高周波回路基板等のテスト用テーブルにあっては、基台と基板固定台が非磁性体で構成されているので、固定された高周波回路基板等に最も近接した位置にある基台および基板固定台に残留磁気が生ずることがなく、高周波回路基板等に搭載される回路部品が残留磁気の影響を受けることがない。また、基台が電気的に接地されるので、高周波回路基板等が静電破壊されるようなことがない。もって、高周波回路基板等を正しく調整や検査および測定することが可能である。
【0013】
請求項2記載の高周波回路基板等のテスト用テーブルにあっては、基台と基板固定台を非磁性体でしかも導電体で構成しているので、基台と基板固定台が電磁シールドとして作用する。よって、高周波回路基板等に搭載される回路素子が残留磁気の影響を受けないだけでなく、下方および側方からの電磁波が遮断されてその影響を受けることがない。
【0014】
請求項3記載の高周波回路基板等のテスト用テーブルにあっては、拡大鏡用自在アームの先端に拡大鏡を配設することで、同軸プローブの先端が当接する状態を拡大して確実に視認することができる。
【0015】
請求項4記載の高周波回路基板等のテスト用テーブルにあっては、照明用自在アームの先端に照明器具を配設することで、同軸プローブの先端が当接する状態を照明して確実に視認することができる。
【0016】
請求項5記載の高周波回路基板等のテスト用テーブルにあっては、同軸プローブの先端が当接する状態を照明器具で照明して、拡大鏡により確実に視認し得る。しかも、拡大鏡および照明用自在アームの先端部が2つに分岐されてその先端に拡大鏡と照明器具がそれぞれに配設されるので、拡大鏡と照明器具を支持するための自在アームは基端側で1本で良く、同軸プローブを所定箇所に当接させる際に邪魔になることが少ない。
【0017】
請求項6記載の高周波回路基板等のテスト用テーブルにあっては、同軸プローブとプローブ用自在アームを非磁性体で構成しているので、これらの部材にも残留磁気が生ずることがなく、高周波回路基板等に搭載される回路素子に対する残留磁気の影響をより少なくすることが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の第1実施例を図1ないし図3を参照して説明する。図1は、本発明の高周波回路基板等のテスト用テーブルの第1実施例の構成外観斜視図である。図2は、基台に基板固定台を配設した構造の一例を示す要部縦断面図である。図3は、基台に基板固定台を配設した構造の別の例を示す要部縦断面図である。
【0019】
アルミや黄銅等の非磁性体でしかも導電体からなり平板状で矩形の基台10には、少なくても手前側の部分に一例として25mmの所定のピッチでネジ孔12、12…が刻設される。また、基台10の下面の4隅に高さ調整機構付きのゴム足14、14…が配設される。そして、基台10の上面奥の2隅には、非磁性体からなるプローブ用自在アーム16、16の基端がそれぞれに固定され、これらのプローブ用自在アーム16、16の先端部に非磁性体からなる同軸プローブ20、20がそれぞれに配設される。また、基台10の上面の奥の中央部に、非磁性体からなる拡大鏡および照明用自在アーム22の基端が固定され、この拡大鏡および照明用自在アーム22の先端側が2つに分岐されて、その一方の先端部に拡大鏡24が配設され、他方の先端部に白色LED等を用いた照明器具26が配設される。さらに、基台10の上面の奥に、非磁性体からなるインターフェイス用ブラケット28が立設される。そして、プローブ用自在アーム16、16の先端部に配設された同軸プローブ20、20に同軸ケーブル30、30の一端が接続され、これらの同軸ケーブル30、30の他端が適宜な測定器に直接的に接続される。また、基台10には、グランド端子50が設けられ、このグランド端子50に接続された接地ケーブル52を介して、基台10が電気的に接地されている。
【0020】
さらに、基台10の上面の手前側の中央部には、一対の非磁性体であるとともに導電体からなる基板固定台32、32が適宜なネジ孔12、12…に螺入された固定ネジ34、34…により固定される。これらの基板固定台32、32は対として対向する方向を長軸方向とする長孔からなる挿入孔36、36…が穿設され、これらの挿入孔36、36…に固定ネジ34、34…が挿入貫通し、対向する方向に位置調整可能とされている。挿入孔36、36…の長軸方向の長さは、基台10に刻設されたネジ孔12、12…のピッチと同じ若しくはそれよりも長く設定される。また、基板固定台32、32の対向する縁に、両側に肩部38、38…を形成した固定台40、40が一体に設けられる。しかも、固定台40、40には、断面が下向きのコ字状の非磁性体からなる押さえブロック42、42が上方から被せるように配設され、これらの押さえブロック42、42が押さえネジ44、44…で固定台40、40に締め付け固定される。
【0021】
かかる構成において、基台10に刻設された適宜なネジ孔12、12…に固定ネジ34、34…が螺入されるようにして一対の基板固定台32、32を配設し、しかも長孔からなる挿入孔36、36により位置調整を行って、基板固定台32、32の間の寸法を調整する。ネジ孔12、12…のピッチに対して挿入孔36、36…の長軸方向の長さ寸法を同じ若しくはそれよりも長くすることで、基台10上で基板固定台32、32の間の寸法を任意に設定することが可能である。また、基台10の下面4隅のゴム足14、14…の高さを調整して基台10の傾きを修正するとともにガタがないように調整する。そして、被調整基板としての高周波回路基板等46の両縁を固定台40、40の肩部38、38に裁置させて、押さえネジ44、44…により押さえブロック42、42を締め付けて、固定台40、40に高周波回路基板等46を固定する。高周波回路基板等46には、電源電圧または信号などを印加するための接続ケーブル18、18…の一端が接続され、これらの接続ケーブル18、18…の他端がインターフェイス用ブラケット28に設けられたコネクタに適宜に接続される。このインターフェイス用ブラケット28に設けられたコネクタは、電源電圧や信号源等が適宜に接続されることは勿論である。
【0022】
そして、プローブ用自在アーム16、16を適宜に操作して高周波回路基板等46の所定箇所に同軸プローブ20、20の先端を当接させる。この操作の際に、当接位置を照明器具26で照射するとともに拡大鏡24により当接位置を拡大視認することで、正確な操作が行い得る。ここで、拡大鏡および照明用自在アーム22の先端側を2つに分岐してその先端部にそれぞれ拡大鏡24と照明器具26を設けているので、拡大鏡24と照明器具26に対してそれぞれに自在アームを設ける構造よりも、自在アームの本数が少なくそれだけプローブ用自在アーム16、16の操作に邪魔になることが少ない。
【0023】
ところで、高周波回路基板等46の寸法が大きい場合には、図3に示すごとく、基板固定台32、32の向きを図1および図2に示す状態と180°変えて、固定台40、40が互いに離れた状態で対向するように配設することで、基台10の広さを充分に活用することができる。
【0024】
本発明の高周波回路基板等のテスト用テーブルにあっては、基台10と基板固定台32、32と押さえブロック42、42とプローブ用自在アーム16、16と同軸プローブ20、20および拡大鏡および照明用自在アーム22をいずれも非磁性体で構成することにより、高周波回路基板等46は残留磁気の影響を全く受けることがなく、正確に調整や検査および測定することができる。しかも、基台10および基板固定台32、32を導電体で構成することにより、下面および側方からの電磁波に対してシールド効果が得られ、電磁波の影響も排除することが可能である。
【0025】
次に、本発明の第2実施例を図4を参照して説明する。図4は、本発明の高周波回路基板等のテスト用テーブルの第2実施例の構成外観斜視図である。図4において、図1ないし図3に示す部材と同じまたは均等なものには、同じ符号を付けて重複する説明を省略する。図4に示す第2実施例において、図1に示す第1実施例と相違するところは、基台10の上面の奥の中央部に、非磁性体からなる拡大鏡用自在アーム54の基端が固定されるとともに、これとは別に非磁性体からなる照明用自在アーム56の基端が固定される。そして、拡大鏡用自在アーム54の先端部に拡大鏡24が配設されるとともに、照明用自在アーム56の先端部に照明器具26が配設されたことにある。拡大鏡24と照明器具26をそれぞれ別々の自在アーム54、56の先端部に配設しているので、拡大鏡24と照明器具26を配設する位置やその姿勢が自由に設定でき、それだけ操作性が優れている。ところで、拡大鏡用自在アーム54と照明用自在アーム56の基端は、必ずしも基台10の所定位置に固定されたものでなくても良く、適宜にその配設位置を変更できるような構造であっても良い。
【0026】
なお、基台10と基板固定台32、32と押さえブロック42、42とプローブ用自在アーム16、16と同軸プローブ20、20と拡大鏡および照明用自在アーム22と拡大鏡用自在アーム54および照明用自在アーム56が、非磁性体で構成されれば良く、必ずしも金属で構成されなくても良いので、樹脂で構成されていても良い。また、プローブ用自在アーム16、16および拡大鏡および照明用自在アーム22は、高周波回路基板等46から比較的に離れた位置にあって接近することが少ないので、残留磁気があってもその影響が少なく、必ずしも非磁性体で構成されなくても良い。そして、固定ネジ34、34…や押さえネジ44、44…は、ステンレスや黄銅などの非磁性体で構成されることが望ましい。さらに、プローブ用自在アーム16、16の先端部に、適宜な微調機構を介して同軸プローブ20、20が配設されても良い。微調機構を設けることで、プローブ用自在アーム16、16の先端部を移動することなしに同軸プローブ20、20の先端を当接させる位置を微調整することができる。また、基台10に対して、基板固定台32の配設位置が調整自在となるように配設する構造は、上記実施例に限られず、基台10に長孔が穿設され、この長孔に挿通されたボルトを基板固定台32に刻設されたネジ孔に螺入させて固定しても良く、また基台10および基板固定台32に共に長孔が穿設され、これらの長孔に挿通されたボルトにナットを螺合させて固定しても良い。またさらに、基台10を電気的に接地するためのグランド端子50は、必ずしも基台10に直接配設されなくても良く、基台10と電気的に接続される基板固定台32やインターフェイス用ブラケット28等のいずれかに設けられても良く、またグランド端子50は1つに限られずに基台10と基板固定台32およびインターフェイス用ブラケット28等の適宜な複数箇所に設けられていても良い。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の高周波回路基板等のテスト用テーブルの第1実施例の構成外観斜視図である。
【図2】基台に基板固定台を配設した構造の一例を示す要部縦断面図である。
【図3】基台に基板固定台を配設した構造の別の例を示す要部縦断面図である。
【図4】本発明の高周波回路基板等のテスト用テーブルの第2実施例の構成外観斜視図である。
【符号の説明】
【0028】
10 基台
12 ネジ孔
14 ゴム足
16 プローブ用自在アーム
18 接続ケーブル
20 同軸プローブ
22 拡大鏡および照明用自在アーム
24 拡大鏡
26 照明器具
28 インターフェイス用ブラケット
30 同軸ケーブル
32 基板固定台
34 固定ネジ
36 挿入孔
38 肩部
40 固定台
42 押さえブロック
44 押さえネジ
46 高周波回路基板等
50 グランド端子
52 接地ケーブル
54 拡大鏡用自在アーム
56 照明用自在アーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非磁性体からなる基台に、高周波回路基板等を固定するための非磁性体からなる基板固定台の配設位置が調整自在となるように配設し、前記基台にプローブ用自在アームの基端を固定し、前記高周波回路基板等に先端を当接させる同軸プローブを前記プローブ用自在アームの先端部に配設し、前記基台を電気的に接地するためのグランド端子を配設して構成したことを特徴とする高周波回路基板等のテスト用テーブル。
【請求項2】
請求項1記載の高周波回路基板等のテスト用テーブルにおいて、前記基台および前記基板固定台を非磁性体でしかも導電体で構成したことを特徴とする高周波回路基板等のテスト用テーブル。
【請求項3】
請求項1記載の高周波回路基板等のテスト用テーブルにおいて、前記基台に拡大鏡用自在アームの基端を固定し、前記高周波回路基板等に前記同軸プローブの先端が当接する状態を拡大視認するための拡大鏡を前記拡大鏡用自在アームの先端部に配設して構成したことを特徴とする高周波回路基板等のテスト用テーブル。
【請求項4】
請求項1または3記載の高周波回路基板等のテスト用テーブルにおいて、前記基台に照明用自在アームの基端を固定し、前記高周波回路基板等に前記同軸プローブの先端が当接する状態を照明するための照明器具を前記照明用自在アームの先端部に配設して構成したことを特徴とする高周波回路基板等のテスト用テーブル。
【請求項5】
請求項1記載の高周波回路基板等のテスト用テーブルにおいて、前記基台に拡大鏡および照明用自在アームの基端を固定し、その先端側を2つに分岐し、一方の先端部に前記高周波回路基板等に前記同軸プローブの先端が当接する状態を拡大視認するための拡大鏡を配設し、他方の先端部に前記高周波回路基板等に前記同軸プローブの先端が当接する状態を照明するための照明器具を配設して構成したことを特徴とする高周波回路基板等のテスト用テーブル。
【請求項6】
請求項1ないし5記載のいずれかの高周波回路基板等のテスト用テーブルにおいて、前記同軸プローブと前記プローブ用自在アームを非磁性体で構成したことを特徴とする高周波回路基板等のテスト用テーブル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−208276(P2006−208276A)
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−22812(P2005−22812)
【出願日】平成17年1月31日(2005.1.31)
【出願人】(000006758)株式会社ヨコオ (158)
【Fターム(参考)】