説明

高周波用銅箔及びそれを用いた銅張積層板とその製造方法

【課題】表面付近の電気抵抗が小さく、高周波回路用導体として用いた場合に伝送損失を小さくすることのできる高周波回路用銅箔を提供する。
【解決手段】電解銅箔の少なくとも片面を粗化処理した高周波用銅箔であって、この高周波用銅箔と樹脂基材とを粗化処理面が樹脂基材と接するようにして積層成形して銅張積層板とし、ハーフエッチングにより高周波用銅箔を重量換算厚さで3μm厚の銅層としたときの銅層の抵抗率が2.2×10-8Ωm以下である高周波用銅箔。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高周波における伝送損失の小さな高周波用銅箔、それを用いた銅張積層板及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
通信情報の大容量化、多様化に伴い、通信の基地局用プリント基板、サーバ用プリント基板、ルータ用プリント基板などは通信速度の高速化が進んでいる。通信速度の高速化は、信号の高周波化につながる。これらの高周波用基板には、出力信号の品質を確保するため、伝送損失の低減が求められている。
【0003】
伝送損失は、主に、樹脂に起因する誘電体損失と、導体に起因する導体損失からなっている。誘電体損失は、樹脂の誘電率及び誘電正接が小さくなるほど減少する。また、導体損失は、周波数が高くなるほど表皮効果によって電流が流れる断面積が減少し、抵抗値が高くなることに由来している。
【0004】
抵抗値の増加には、表皮効果による断面積減少以外にも要因がある。プリント基板用に用いられる銅箔は、圧延法又は電解法によって得られるベースとなる銅箔(ベース銅箔)の少なくとも片面に樹脂基材との接着力を向上させるための粗化処理及び防錆処理が施されているものである。
【0005】
抵抗値には、ベース銅箔自体の抵抗、粗化処理層の抵抗及びそれらの界面で発生する抵抗も影響する。特に周波数が1GHz以上では、信号電流の流れる表皮深さが2.1μm以下となるため、ベース銅箔と粗化層の界面及び粗化層の抵抗の影響が大きくなる。
【0006】
ベース銅箔と粗化層の界面及び粗化層の抵抗を低減させるための手段として、粗化層を形成せずに化学処理のみで樹脂基材と接着する方法が公開されている。しかし、化学処理のみでは熱履歴による樹脂基材との接着力の劣化や耐薬品性において、粗化処理銅箔と同等の特性を得ることは難しい。一方、エッチング法によりベース銅箔表面を粗面化させる方法が公開されている(例えば、特許文献1を参照。)。しかし、エッチング法の場合は、下地の結晶状態によって粗面化後の形状が変化するため、下地結晶状態に合わせてエッチング条件を制御する難しさがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−351677号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、表面付近の電気抵抗が小さく、高周波回路用導体として用いた場合に伝送損失を小さくすることのできる高周波回路用銅箔を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、電解銅箔の少なくとも片面を粗化処理した高周波用銅箔であって、該高周波用銅箔と樹脂基材とを該粗化処理面が樹脂基材と接するようにして積層成形して銅張積層板とし、ハーフエッチングにより該高周波用銅箔を重量換算厚さで3μm厚の銅層としたときの該銅層の抵抗率が2.2×10-8Ωm以下、好ましくは2.0×10-8Ωm以下であることを特徴とする高周波用銅箔を提供するものである。
【0010】
また、本発明は、電解銅箔の粗化処理が、電解銅箔を陰極として、銅イオンを含有するメッキ浴を用いて、メッキ浴の限界電流密度以上の電流密度で電解処理し、次いでメッキ浴の限界電流密度未満の電流密度で電解処理することにより、該電解銅箔の少なくとも片面上にコブ状の銅粒子を形成することによる粗化処理である上記の高周波用銅箔を提供するものである。
【0011】
また、本発明は、上記の高周波用銅箔を用いたことを特徴とする銅張積層板を提供するものである。
【0012】
また、本発明は、上記の高周波用銅箔と樹脂基材とを、該高周波用銅箔の粗化処理面が樹脂基材と接するように積層して加熱加圧することを特徴とする銅張積層板の製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明の高周波用銅箔を用いた銅張積層板は、高周波回路を形成した場合に、伝送損失が少ないという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】比較例における銅張積層板作製及び及びハーフエッチング後の銅箔の断面を示す電子顕微鏡写真である。
【図2】実施例における銅張積層板作製及びハーフエッチング後の銅箔の断面を示す電子顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
回路基板作製に用いられる銅張積層板では、一般に回路形成用の導体として電解銅箔が使用され、本発明も電解銅箔を用いた高周波用銅箔に関する。銅張積層板では樹脂基材と銅箔との接着性が強く要求されることから、銅箔には、樹脂基材と接する少なくとも片面に、一般に粗化処理と呼ばれる微細な凹凸を形成する処理が行われる。本発明の高周波用銅箔も、電解銅箔の少なくとも片面が粗化処理されたものである(以下、この粗化処理された電解銅箔を、単に銅箔と呼ぶことがある。)。
【0016】
電解銅箔は、通常、チタン、ステンレス鋼等を陰極として、銅イオンを含有する銅電解浴中で直流電流を通電することにより陰極上に銅を析出させ、陰極上に析出した銅を剥離することにより製造されるものである。通常、陰極に接していた面は光沢のある光沢面となり、電解浴側の面は粗面となるが、陰極表面形状や、電解浴の組成を調整することにより、電解銅箔の両面の表面粗さが調整されることもある。本発明では、電解銅箔の陰極に接していた側を光沢面と、電解浴側の面を粗面と呼ぶ。
【0017】
本発明に用いられる電解銅箔は、その厚みに特に制限はないが、9〜105μmであることが好ましく、12〜35μmであることがより好ましい。本発明に用いられる電解銅箔は、その少なくとも片面に粗化処理が施されるが、粗化処理を施す面は、光沢面、粗面又は両面のいずれでもよい。電解銅箔の粗化処理を施す側(粗化処理前)の表面粗さRz(JIS B 0601に準じて測定)は、3μm以下であることが好ましく、0.5〜2.5μmであることがより好ましい。粗化処理を施す側の表面粗さRzが0.5μm未満では、粗化処理を銅箔表面へのコブ状銅粒子の形成によって行う場合、コブ状銅粒子が形成されにくい傾向があり、3μmを超えると、粗化処理後の銅箔の3μm厚での抵抗率が高くなる傾向がある。
【0018】
電解銅箔の粗化処理後の銅箔処理面の表面粗さRz(JIS B 0601に準じて測定)は、1.0〜4.5μm以下であることが好ましく、1.5〜4.0μmであることがより好ましく、2.5〜3.5μmであることが更に好ましい。粗化処理後の銅箔処理面の表面粗Rzが1.5μm未満では、樹脂基材との接着力が低くなる傾向があり、特に高周波用プリント配線板で用いられる低誘電率の樹脂は極性が小さく化学的な結合を形成しにくいため、製造工程中で銅箔が剥離する危険がある。また、粗化処理後の銅箔処理面の表面粗さが4.5μmを超えると、粗化処理後の銅箔の3μm厚での抵抗率が高くなったり、微細回路形成時のエッチング残りによる残銅や、粗化処理をコブ状銅粒子の形成によって行った場合、銅張積層板の製造工程中の摩擦によりコブ状銅粒子が脱落する粉落ちが発生しやすくなる傾向がある。
【0019】
電解銅箔の粗化処理方法は、粗化処理後の銅箔の本発明で規定する試験方法で測定した抵抗率が2.2×10-8Ωm以下になる方法であれば特に制限はない。通常、電解銅箔表面に、銅からなる粗化層を形成することが好ましい。銅からなる粗化層形成の好適な方法としては、電解銅箔を陰極として、銅イオンを含有するメッキ浴を用いて、メッキ浴の限界電流密度以上の電流密度で電解処理し、次いでメッキ浴の限界電流密度未満の電流密度で電解処理することにより、電解銅箔の少なくとも片面上にコブ状の銅粒子を形成することによる粗化処理方法がある。この方法では、限界電流密度以上の電流密度による電解処理により、いわゆるコガシメッキによる樹枝状銅電着層が電解銅箔面上に形成され、更にこの樹枝状銅電着層上に限界電流密度未満の電流密度による電解処理により、樹枝状銅電着層上に平滑な銅電着層(カブセメッキ)が形成され、その結果、樹枝状銅がいわゆるコブ状銅に変化する。このコブ状銅を形成することにより、電解処理前と比べて銅箔の被表面積が増大するとともに、コブ状銅によるアンカー効果が発揮されて樹脂基材と銅箔間の接着強度が向上する。
【0020】
上記のコガシメッキ及びカブセメッキによる粗化処理は、硫酸銅を銅イオン源とする硫酸酸性硫酸銅浴(水溶液)を用いて行うことが好ましいが、同様なコブ状銅粒子を形成する方法であれば、銅イオン源は限定されない。硫酸酸性硫酸銅浴の好ましい組成は、下記のとおりである。
【0021】
硫酸銅5水和物(CuSO4・5H2O):20〜300g/l(銅金属換算:5〜75g/l、より好ましくは50〜200g/l(銅金属換算:10〜50g/l)、特に好ましくは80〜160g/l(銅金属換算:20〜40g/l)。硫酸銅5水和物の濃度が20g/l未満(銅金属換算:5g/l未満)であると、カブセメッキ時の限界電流密度が3A/dm2未満となり、所定のメッキ厚さを得るためのカブセメッキ時間が長くなりすぎて生産性の面から実用的でなく、300g/l(銅金属換算:75g/l)を超えると、コガシメッキ時の限界電流密度が100A/dm2以上となり、大電流を使用する必要があるため実用的でない。
【0022】
硫酸:40〜200g/l、より好ましくは80〜160g/l、特に好ましくは90〜120g/l。硫酸の濃度が40g/l未満であると、メッキ時の液抵抗が増加して消費電力が増加するため実用的でなく、200g/lを超えると、粘度の上昇により液抵抗が増加するため実用的でない。
【0023】
浴温:20〜60℃、好ましくは25〜50℃、特に好ましくは30〜40℃。浴温が20℃未満であると、カブセメッキ時の限界電流密度が低下してカブセメッキ時間が長くなる傾向があり、60℃を超えると、メッキ槽で発生する水蒸気が多量になり、結露した水滴によって外観上のムラが発生する。
【0024】
メッキ浴には、更に銅メッキの均一析出性を向上させるために、銅以外の金属を含む化合物を添加してもよいが、添加する場合、その濃度は5g/l以下とすることが好ましく、2g/l以下とすることがより好ましい。銅以外の金属を含む化合物の濃度が5g/lを超えると、未粗化の電解銅箔表面と粗化層との界面への銅以外の金属の共析量が増加し、銅箔の表面層の抵抗率低減が不十分となる。
【0025】
コガシメッキ及びカブセメッキの好ましい電解処理条件は、下記のとおりである。
電流密度:
コガシメッキ(限界電流密度以上):[限界電流密度+0A/dm2]〜[限界電流密度+40A/dm2]、より好ましくは[限界電流密度+5A/dm2]〜[限界電流密度+30A/dm2]、特に好ましくは限界電流密度+10A/dm2]〜[限界電流密度+20A/dm2。限界電流密度未満であると、樹枝状銅の析出が得られず、[限界電流密度+40A/dm2]を超えると、メッキで発生する水素ガスの影響で、円形のムラが発生する傾向がある。
【0026】
カブセメッキ(限界電流密度未満):[限界電流密度−2A/dm2]〜[限界電流密度−20A/dm2]、より好ましくは[限界電流密度−5A/dm2]〜[限界電流密度−10A/dm2]。[限界電流密度−20A/dm2]未満であると、カブセメッキ時間が長くなる傾向があり、[限界電流密度−2A/dm2]を超えると、電流密度分布のばらつきが発生した場合に、部分的なコゲが発生し、残銅や粉落ちが発生することがある。
【0027】
電解処理時間:
コガシメッキ:0.2〜10秒、より好ましくは0.5〜8秒、特に好ましくは1〜5秒。コガシメッキは1回で規定時間をメッキしても、パルスメッキのように複数回に分割して行ってもよい。コガシメッキの合計時間が0.2秒未満では、コガシメッキで析出する樹枝状銅が十分に成長せず、樹脂基材との接着力が十分に得られない傾向があり、10秒を超えると、樹枝状銅が長く成長しすぎ、接着力は得られても残銅や粉落ちが発生する傾向がある。
カブセメッキ:カブセメッキ時間は樹脂基材との接着力が十分に得られ、残銅や粉落ちが発生しない条件であれば特に限定されないが、通常、10〜200秒の範囲が好ましい。
【0028】
本発明の粗化処理された銅箔には、粗化処理後、必要に応じて、銅張積層板用の銅箔に通常設けられるクロメート層からなる防錆処理層や、カップリング剤処理層、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂等の接着樹脂層を設けてもよい。
【0029】
クロメート層の形成方法は特に限定されず、防錆のために必要なクロメート被膜が形成される条件であれば特に限定されない。樹脂基材との濡れ性を向上させ、化学的な結合を形成するカップリング処理層の形成は、通常、各処理剤の塗布・乾燥、又は処理剤中への浸漬・乾燥によって行われる。
【0030】
本発明において、銅箔の抵抗率測定に用いる試料の作製に際しては、まず、銅箔と樹脂基材とを、銅箔の粗化処理した面が樹脂基材に接するようにして積層成形して銅張積層板を作製する。次いで、銅張積層板の銅箔を露出面からハーフエッチングによって3μm厚さになるまでエッチングし、次いで、抵抗率測定に適した回路パターンにパターンエッチングする。樹脂基材としては特に制限はないが、積層成形後に適当な剛性を有するものであることが好ましく、例えば、ガラス布基材エポキシ樹脂プリプレグやポリイミド樹脂フィルムが適当である。本発明の銅張積層板の製造方法に用いられる樹脂基材も同様である。なお、銅箔の抵抗率測定に用いる試料の作製においては、プリプレグの重量が大きいと測定誤差が大きくなりやすいので、薄いプリプレグやフィルムを選択することが好ましく、通常それらの厚みは、プリプレグの場合、0.1〜1.0mmであることが好ましく、フィルムの場合、25〜50μmであることが好ましい。本発明の銅張積層板の製造方法においては、それらの厚みは、用途に応じて適宜選択可能である。積層成形は、通常、加熱加圧によって行われ、150〜230℃、圧力3.0〜5.0MPaで60〜120分間加熱加圧することが好ましい。試料作製において、ハーフエッチング後の銅箔の厚さは、銅箔の重量を測定して求める。実際には正確に3μmまでエッチングすることは困難なので、3μm前後の厚さにエッチングした試料を数点、例えば、3〜10点作製し、内挿により測定値を求めることとなる。抵抗値の測定は4端子法により行う。なお、ハーフエッチング及びパターンエッチングには、塩化銅エッチング液や塩化鉄エッチング液、また、各種の公知のハーフエッチング液を用いることができる。ハーフエッチングの場合、エッチング後の銅箔の厚さを均一にするため、エッチング液を均一に噴射することが重要である。
【実施例】
【0031】
以下、本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0032】
[実施例1]
1.銅箔の製造
(1)厚さ18μmの電解銅箔(日本電解(株)製、HL箔、粗面粗さRz1.5μm、JIS B 0601に準拠して測定)を10wt%硫酸溶液で20秒間酸洗処理した。
(2)この電解銅箔を水洗し、電解銅箔を陰極として硫酸銅5水和物150g/l、硫酸100g/l、浴温度30℃に調整しためっき浴(限界電流密度:15A/dm2)を用いて、(1)電流密度30A/dm2で3秒間電解処理し、(2)電流密度5A/dm2で80秒間電解処理を施してコブ状の銅粒子からなる粗化層を粗面側に形成した。粗化後の表面粗さはRz3.0μmであった。
(3)次にこの粗化処理した銅箔を水洗し、重クロム酸ナトリウム2水和物3.5g/l、pH4.0、浴温度28℃に調整した水溶液を用いて電流密度0.5A/dm2で2.5秒間電解処理し、粗化層上にクロメート層を形成した。
(4)この銅箔を水洗し、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン0.1wt%の水溶液に10秒間浸漬後、直ちに80℃で乾燥して、クロメート層上にシランカップリング剤処理層を形成した。
2.抵抗率の測定
(1)厚さ0.25mmのFR−4プリプレグ(日立化成工業(株)製、商品名:GEA−67N、厚み:0.25mm)1枚の片側に上記の18μmの銅箔を粗化面がプリプレグに接するように重ね、温度:168℃、圧力:3.8MPaで90分間加熱・加圧成形して銅張積層板とし、200mm×40mmの大きさに裁断後に銅張積層板の重量を0.1mgの単位まで測定した。なお、測定前に100℃で10分乾燥し、デシケータ中で放冷した。
(2)次に、銅張積層板の銅箔をシャワー式エッチングマシン中で塩化銅エッチング液を用いて露出面側からハーフエッチングし、重量を0.1mgの単位まで測定した(表1中の各測定厚みの前後となる重量の銅張積層板を各5枚作製した。)。
(3)重量測定後の各銅張積層板を塩化第二鉄エッチング液でスプレーエッチングして幅10mm、長さ200mmのテストパターンを作製し、室温20℃中でアドバンテスト社製デジタルマルチメータ(型番:R6561)を用いて4端子法により100mm間の直流抵抗値を測定した。
(4)更に、測定後の各銅張積層板のテストパターンをシャワー式エッチングマシン中で塩化銅エッチング液を用いてエッチングした後の重量を0.1mgの単位まで測定し、エッチング前後の重量差から銅箔厚さを算出した。ただし、銅の比重を8.92g/cm3として銅箔厚さを算出した。
(5)上記の抵抗値と銅箔厚さを用いて、抵抗率を算出した。
3.ベース箔(未処理電解銅箔)−粗化層の界面観察
(1)銅箔をエポキシ樹脂に埋め込み断面観察を行った。ベース箔と粗化層の界面は認められなかった。断面は鏡面研磨仕上げをした後に硫酸−過酸化水素系化学エッチング液(三菱瓦斯化学製、CPB−60)を用いて30℃中で10秒浸漬し、水洗、乾燥を行ったサンプルを電子顕微鏡で観察した。
【0033】
[実施例2]
FR−4プリプレグの代わりにポリイミド樹脂(宇部興産製、品番:U−ワニス−A)を厚さ210μmとなるように処理後の銅箔に塗布し、350℃で30分間乾燥して乾燥後のポリイミド厚さ25μmとして銅張積層板を作製したほかは、実施例1と同様に銅張積層板を作製し、特性を評価した。結果を表1に合わせて示した。
【0034】
[実施例3]
粗化処理として、硫酸銅5水和物150g/l、硫酸100g/l、浴温度30℃に調整したメッキ浴を用いて、(1)電流密度30A/dm2で0.5秒間の電解処理を6回行い、(2)電流密度5A/dm2で80秒間電解処理を施してコブ状の銅粒子からなる粗化層を形成したほかは、実施例1と同様に行った。結果を表1に合わせて示した。
【0035】
[実施例4]
粗面粗さRz2.0μmの電解銅箔(日本電解(株)製、SLP箔、厚さ18μm)を用い、粗化処理として、硫酸銅5水和物100g/l、硫酸100g/l、浴温度30℃に調整したメッキ浴(限界電流密度:10A/dm2)を用いて、(1)電流密度40A/dm2で2秒間電解処理し、(2)電流密度5A/dm2で80秒間電解処理を施してコブ状の銅粒子からなる粗化層を粗面側に形成したほかは、実施例1と同様に行った。結果を表1に合わせて示した。
【0036】
[実施例5]
光沢面粗さRz1.0μmの電解銅箔(日本電解(株)製、HL箔、厚さ18μm)を用い、光沢面側に粗化処理を施したほかは、実施例1と同様に行った。結果を表1に合わせて示した。
【0037】
[比較例1]
粗面粗さRz1.5μmの電解銅箔(日本電解(株)製、HL箔、厚さ18μm)を用い、粗化処理として、硫酸銅5水和物100g/l、硫酸100g/l、亜ヒ酸カリウム10g/l、浴温度30℃に調整したメッキ浴(限界電流密度:10A/dm2)を用いて、(1)電流密度30A/dm2で3秒間の電解処理を行い、(2)電流密度5A/dm2で80秒間電解処理を施してコブ状の銅粒子からなる粗化層を粗面側に形成したほかは、実施例1と同様に行った。結果を表1に合わせて示した。
【0038】
[比較例2]
粗面粗さRz2.0μmの電解銅箔(日本電解(株)製、SLP箔、厚さ18μm)を用い、粗化処理として、硫酸銅5水和物100g/l、硫酸100g/l、モリブデン酸ナトリウム2水和物15g/l、浴温度30℃に調整したメッキ浴(限界電流密度:10A/dm2)を用いて、(1)電流密度40A/dm2で2秒間の電解処理を行い、(2)電流密度5A/dm2で80秒間電解処理を施してコブ状の銅粒子からなる粗化層を粗面側に形成したほかは、実施例1と同様に行った。結果を表1に合わせて示した。
【0039】
[比較例3]
粗面粗さRz5.0μmの電解銅箔(日本電解(株)製、Y箔)を用いたほかは、実施例1と同様に行った。結果を表1に合わせて示した。
【0040】
[比較例4]
光沢面粗さRz1.0μmの電解銅箔(日本電解(株)製、HL箔、厚さ18μm)を用い、光沢面側に粗化処理を施したほかは、比較例1と同様に行った。結果を表1に合わせて示した。
【0041】
【表1】

表1中、界面有りとは、図1の電子顕微鏡写真に示されるように(比較例1)、ベース銅箔の表面形状に沿って粗化層との間に界面が観察されたことを意味する。界面無しとは、図1の電子顕微鏡写真に示されるように(実施例1)、ベース銅箔と粗化層との間に界面が観察されないことを意味する。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明の高周波用銅箔を用いた高周波回路は抵抗損失が少なく、伝送特性に優れる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解銅箔の少なくとも片面を粗化処理した高周波用銅箔であって、該高周波用銅箔と樹脂基材とを該粗化処理面が樹脂基材と接するようにして積層成形して銅張積層板とし、ハーフエッチングにより該高周波用銅箔を重量換算厚さで3μm厚の銅層としたときの該銅層の抵抗率が2.2×10-8Ωm以下であることを特徴とする高周波用銅箔。
【請求項2】
電解銅箔の粗化処理が、電解銅箔を陰極として、銅イオンを含有するメッキ浴を用いて、メッキ浴の限界電流密度以上の電流密度で電解処理し、次いでメッキ浴の限界電流密度未満の電流密度で電解処理することにより、該電解銅箔の少なくとも片面上にコブ状の銅粒子を形成することによる粗化処理である請求項1に記載の高周波用銅箔。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の高周波用銅箔を用いたことを特徴とする銅張積層板。
【請求項4】
請求項1に記載の高周波用銅箔と樹脂基材とを、該高周波用銅箔の粗化処理面が樹脂基材と接するように積層して加熱加圧することを特徴とする銅張積層板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−138980(P2011−138980A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−299121(P2009−299121)
【出願日】平成21年12月29日(2009.12.29)
【出願人】(000232014)日本電解株式会社 (11)
【Fターム(参考)】