説明

高周波発生器の位相および周波数の外部からの制御

【課題】周波数および位相を正確に制御する高周波発生器を提供する。
【解決手段】周波数および位相を正確に制御する高周波発生器14a,14bは、電力源222a,222bと、センサ224a,224bと、センサ信号処理ユニット226a,226bとを含む。センサ信号処理ユニット226a,226bは、電力源222a,222bおよびセンサ224a,224bに接続され、高周波発生器14a,14bの位相および/または周波数を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、高周波(RF:radio frequency)発生器に関し、より詳しくは、高周波発生器の位相および周波数の制御に関する。
【背景技術】
【0002】
プラズマエッチングは、半導体製造に頻繁に使用される。プラズマエッチングにおいて、イオンは、電界によって加速され、基板の露出した表面をエッチングする。プラズマエッチング工程を効果的に実行するため、プラズマチャンバに高周波(RF)発生器から供給する電力は精密に制御されなければならない。例として、高周波プラズマシステムに使用される高周波発生器は、特許文献1(2004年3月16日発行の米国特許第6707255号明細書)に見られる。特許文献1に開示されているものは、全体を参照して本願に組み入れる。
【0003】
高周波発生器システムは、典型的には、高周波電力源と、高周波センサと、センサ信号処理ユニットとを含む。高周波電力源は、センサによって検出される高周波電力信号を生成する。センサは、高周波電力信号を表すアナログセンサ信号を出力する。アナログセンサ信号は、関与する周波数および妨害する周波数の成分を含む。センサ信号処理ユニットは、アナログセンサ信号を帯域制限して、妨害周波数成分をアナログセンサ信号から除去する。これにより、関与する周波数のアナログまたはディジタルの代表信号を残す。
【特許文献1】米国特許第6707255号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
高周波発生器の周波数および位相を正確に制御することが望ましい。例えば、高周波発生器の固定周波数または機動周波数(agile frequency)の典型的な位相偏差は制御されない。高周波センサ信号の1次結合から導き出される位相は、典型的には、適切に制御されない。さらに、従来の高周波発生器は、機動周波数の自動周波数調整システムにおいて複数の高周波発生器の間の変動周波数の同調を維持する間などに、変動する位相偏差を外部から制御しない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、高周波(RF)発生器を指向する。高周波発生器は、センサに接続された電力源を含む。センサ信号処理ユニットは、電力源およびセンサに接続される。センサ信号処理ユニットは、外部ソースからの入力を受け入れることができる。センサ信号処理ユニットは、外部ソースを介して高周波発生器の位相および周波数を制御する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明は、詳細な説明と添付した図面とから、さらに十分に理解されるであろう。
【0007】
以下の多様な実施形態の説明は、事実上単なる例示であり、本発明の適用または使用を限定するものではない。明確化のため、図において、同じ構成要素には同じ参照番号を使用する。
【0008】
図1Aは、プラズマチャンバ20において相互に排他的な負荷を駆動する一対の高周波信号発生器を含むプラズマシステム10を示す。プラズマシステム10は、第1および第2の高周波発生器14a,14bと、整合回路網18a,18bと、プラズマチャンバ20とを含む。高周波発生器14a,14bは、制御信号を使用して主従関係におくことができる。高周波発生器14aは、主器(マスタ)として設定され、高周波発生器14bは、従属器(スレーブ)として設定される。高周波発生器14bの周波数は、高周波発生器14aから高周波発生器14bへ送信される制御信号を使用して、高周波発生器14aの周波数に従属する。制御信号がないとき、高周波発生器14aおよび14bは、独立して作動できる。
【0009】
高周波発生器14a,14bは、それぞれ、高周波電力源222a,222bと、高周波センサ224a,224bと、センサ信号処理ユニット226a,226bとを含む。高周波電力源222a,222bは、それぞれ高周波センサ224a,224bへの高周波電力出力を生成する。高周波センサ224a,224bは、高周波電力出力を検出し、それぞれ、高周波電力に従って変化する高周波電力信号を生成する。高周波センサ224a,224bは、それぞれ電圧プローブと電流プローブとを含む。これらのプローブは、図2に示すように、高周波電圧信号202および高周波電流信号204を出力する。或いは、高周波センサ224a,224bは、方向センサであってもよい。方向センサは、反射した電力または電圧(REV)および送出する電力または電圧(FWD)に対応する出力を有する。
【0010】
いくつかの実施形態において、センサ信号処理ユニット226a,226bは、例えば、高周波センサ224a,224bからの信号をそれぞれ受け入れて、帯域制限する。これは、妨害周波数成分を除去し、望ましい周波数を有する関与する成分を残すものである。センサ信号処理ユニット226a,226bは、また、高周波発生器14a,14bに対する高周波電力の位相および周波数の関係も制御する。高周波電力信号は、それぞれ、整合回路網18a,18bに出力される。整合回路網18a,18bは、プラズマチャンバ20のインピーダンスを、第1および第2高周波発生器14a,14bが予定するインピーダンスに整合させる。これは、プラズマチャンバに対して、電力の反射を最小化するとともに電力の伝達を最大化するものである。いくつかの実施形態において、2つ以上の高周波発生器14a,14bが図1Aの互いに排他的な負荷構成に配置されてもよい。
【0011】
図1Bは、いくつかの実施形態に従って構成された、結合した負荷を駆動する並列した高周波信号システムを含むプラズマシステム100を示す。プラズマシステム100は、第1および第2高周波発生器14a,14bと、結合器160と、整合回路網180と、プラズマチャンバ20とを含む。第1高周波発生器14aは制御信号を第2高周波発生器14bに伝送して、主従関係におく。高周波発生器14a,14bは、図1Aについて上述した如く構成される。第1および第2高周波発生器14a,14bは、共に、高周波電力出力を結合器160に対して出力する。結合器160は、高周波電力出力を合成し、整合回路網180に対して出力する1つの高周波電力出力を生成する。整合回路網180は、高周波構成要素(例えば、高周波発生器14a,14bおよび結合器160)のインピーダンスと、プラズマチャンバ20のインピーダンスとを整合させる。いくつかの実施形態において、2つを超える高周波発生器14a,14bが、図1Bの結合された負荷構成に配置されてもよい。いくつかの実施形態において、2つ以上の図1Aおよび図1Bに示すような高周波発生器を、デイジーチェイン方式または並列に接続してもよい。
【0012】
図2は、図1Aおよび1Bのセンサ信号処理ユニット226a,226bを提供するための基本設計を示す。センサ信号処理ユニット226は、信号処理モジュール210とコントローラ220とを有する。信号処理モジュール210は、複数のローパスフィルタ232a〜cと、複数のA/D(アナログからディジタルへの)変換器と234,235と、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)236と、ディジタル信号処理装置286とを含む。ここでは、フィルタはローパスフィルタとして実装されている。フィルタは、主に、入力信号の周波数帯の帯域幅を制御する。当業者は、ここに記載したローパスフィルタをバンドパスフィルタまたはハイパスフィルタに置き換えてもよいことを認識するであろう。さらに、フィルタ232cは、フィルタ232a,232bと異なる仕様を有してもよい。ローパスフィルタ232aは、高周波センサ224から出力される高周波電圧信号202を受け入れ、ローパスフィルタ232bは、高周波センサ224からの高周波電流信号204を受け入れる。当業者は、高周波測定センサ222a,222bの選択が、ローパスフィルタ232a,232bに入力される信号の種類を決定することを認識するであろう。例えば、方向性結合器は、逆方向電力および正方向電力の信号をローパスフィルタ232a,232bに出力する。電圧/電流センサは、電圧信号および電流信号をローパスフィルタ232a,232bに対して出力し、正方向電力(または電圧)および逆方向電力(または電圧)が、それぞれローパスフィルタ232a,232bに入力されてもよい。ローパスフィルタ232a,232bは、入力信号を、高周波センサ224から高周波電圧入力202および高周波電流入力204で受け入れた関与周波数に帯域制限する。いくつかの実施形態において、アンチエリアジングフィルタがローパスフィルタ232a,232bを構成する。ローパスフィルタ232a,232bは、それぞれアナログからディジタルへの(A/D)変換器対234に出力する。A/D変換器対234は、入力される信号を処理するに十分なデータ処理速度で作動する。A/D変換器対234は、同時に、各ローパスフィルタ232a,233bから出力される電圧信号および電流信号をサンプリングする。A/D変換器対234は、アナログ入力信号を、電圧信号(Vx)および電流信号(Ix)のような、対応するディジタル信号出力に変換する。
【0013】
同様に、位相および周波数の入力制御信号は、ローパスフィルタ232cに入力される。ローパスフィルタ232cに入力される位相および周波数の入力制御信号は、位相および周波数の情報のいずれかまたは両方を含むことができる。いくつかの実施形態において、センサ信号処理ユニット226は、従属高周波発生器として実装され、ローパスフィルタ232cに与えられる位相および周波数情報は、図1Aの高周波発生器14aから出力されるような制御信号を提供する。いくつかの実施形態において、図1Aの高周波発生器14aのような主高周波発生器は、図2に示すセンサ信号処理ユニット226を含んでもよい。しかしながら、そのような実施形態において、位相および周波数以外の情報は、センサ信号処理ユニット226のローパスフィルタ232cに常に入力されるわけではない。さらに詳しくは、いくつかの実施形態において、高周波発生器14aは主器として機能し、高周波発生器14bは従属器として作用する。しかし、当業者は、プラズマ制御システムは、主高周波発生器14aおよび従属高周波発生器14bのいずれかまたは両方に対する設定値情報を生成してもよいことを認識しなければならない。設定値情報は、少なくとも電力レベル、周波数偏差および位相偏差の情報を含む。主プラズマ制御システム(不図示)から提供される設定値情報に加えて、主高周波発生器は、コントローラ220から従属高周波発生器14bに対する、ローパスフィルタ232cに入力される周波数および位相信号を生成する。周波数および位相信号は、高周波電力増幅器駆動回路のサンプルから主器によって生成される。スプリッタは、如何なる必要な分離と減衰も提供する。ローパスフィルタ232cに入力される情報は、従属高周波発生器の動作の基本の周波数および位相を定める完全な周波数および完全な位相を含む。この情報は、主プラズマ制御システムにより与えられる設定値情報とともに、電力レベル、周波数偏差および位相偏差をもたらす。
【0014】
ローパスフィルタ232cは、アンチエリアジングフィルタとして実装されてもよい。フィルタがかけられた信号は、その後、A/D変換器235に入力される。位相および周波数入力制御信号は、検出回路が有効で入力制御回路の存在を確認したときに利用される。周波数入力制御信号の決定は、キャリブレーションを必要とする。米国標準技術局(NIST)追跡可能周波数/時間標準は、このキャリブレーションを実行するための基準線を与える。A/D変換器235は、フィルタがかけられた信号を所定のクロック速度でサンプリングする。いくつかの実施形態において、サンプリング速度は、A/D変換器対234およびA/D変換器235に対するA/Dクロック信号を同時に生成するA/Dクロック発生器(不図示)を通じて提供される。A/D変換器235は、入力信号の位相および周波数を表すディジタル出力信号PnFInを生成する。
【0015】
A/D変換器対234およびA/D変換器235からの信号出力は、大規模集積回路のためのFGPA236または他のプログラム可能な装置に入力される。FPGA236は、A/D変換器対234およびA/D変換器235のサンプリング速度をディジタル信号処理装置(DSP)286による処理に十分なデータ速度に低減する。DSP286は、図1Aおよび1Bの高周波発生器14a,14bのような高周波発生器の位相および/または周波数を制御できる制御信号288を生成するのに適する。制御信号288は、コントローラ220に出力される。
【0016】
コントローラ220は、ダイレクトディジタルシンセサイザ(DDS)290と、ローパスフィルタ292と、スプリッタ295とを含む。DDS290は、入力信号288に基づいて周波数および位相を変更可能な出力信号を生成する従来のディジタル回路として構成される。DDS290は、ローパスフィルタ292に対して信号を出力する。いくつかの実施形態において、ローパスフィルタ292は、アンチエリアジングフィルタとして実装される。ローパスフィルタ292は、前記信号から不要な周波数成分を除去する。ローパスフィルタ292によりフィルタがかけられた信号は、電力分割器として実装されるスプリッタ295に入力される。スプリッタ295は、位相および周波数制御信号および高周波駆動信号を出力する。位相および周波数制御信号は、高周波発生器14a,14bのような高周波発生器を制御して、高周波発生器の位相および/または周波数を変化させる。高周波駆動信号は、高周波発生器14a,14bが作動、または起動することを確実にする。高周波駆動信号は、図1Aの整合回路網18a,18bまたは図1Bの結合器160に入力される。
【0017】
図3は、信号処理ユニット226の一部を展開したブロック図300を示す。図3は、高周波発生器14a,14bの位相および/または周波数を制御するための、図2のFPGA236とDSP286との間の関係を示す。信号処理モジュール226は、電圧/電流信号処理ユニット310および位相/周波数処理ユニット320を含む。当業者は、代案として、電圧/電流制御ユニット310は、適当な高周波測定センサからの逆/正方向信号を測定するセンサであってもよいことを認識するであろう。電圧/電流信号処理ユニット310は、関与する周波数から望まざる周波数成分を除去して関与する周波数を残す。電圧/電流信号処理ユニット310は、一対のミキシングモジュール344a,344bと、ディジタル周波数シンセサイザ342aと、一対のデシメーションモジュール346a,346bと、一対のローパスフィルタ348a,348bと、一対の協調変換器350a,350bとを含む。
【0018】
図2に示すA/D変換器対234から取得されたディジタル信号は、それぞれ、ミキシングモジュール344a,344bに与えられ、ミキシングモジュール344a,344bは、また、ディジタル周波数シンセサイザ342aからの2つの入力をも受け入れる。ディジタルシンセサイザ342aは、ミキシング信号を生成する。ミキシング信号は、周波数設定値を表す正弦波形および余弦波形である。周波数設定値は、関与する周波数と相関関係にある。いくつかの実施形態において、周波数設定値は、位相および周波数処理ユニット320のコントローラ380から受け入れた周波数偏差である。ミキシングモジュール344a,344bは、ミキシング信号とA/D変換器対234から受け入れた信号とを合成する。ディジタルミキシングモジュール344a,344bは、それぞれ、2つの乗算器345a,345a’および345b,345b’を含む。ミキシングモジュール344aおよび344bは、サンプリングした入力信号およびディジタルシンセサイザ342aにより提供される信号に含まれる周波数の和および差からなる周波数帯を有する信号を生成する。サンプリング速度の処理できるデータ速度への変換は、デシメーションモジュール346a,346bによりもたらされる。デシメーションは、カスケード式積分櫛形(CIC)フィルタを介して達成されるが、他のデシメーション手段を実装してデータ速度を低下させてもよい。当業者は、電圧/電流処理ユニット310が、ディジタル処理によって実装されてもよいことを理解するであろう。
【0019】
デシメーションモジュール346a,346bは、それぞれローパスフィルタ348a,348bへの低減したデータ速度の信号を生成する。ローパスフィルタ348a,348bは、それぞれデシメーションモジュール346a,346bのスペクトルの出力を形成する機能を提供する。いくつかの実施形態において、19タップの半帯域フィルタがローパスフィルタ348a,348bとして実装されてもよい。ローパスフィルタ348a,348bは、それぞれ、同相(I)信号および方形(Q)信号を、各協調変換器350a,350bへのディジタル電力信号入力のために出力する。協調変換器350a,350bは、それぞれの電圧入力信号および電流入力信号のI信号データおよびQ信号データを、カルテシアン(直交)座標から極座標に変換する。協調変換器350a,350bは、それぞれの電圧入力信号および電流入力信号の位相信号および振幅信号を出力する。電圧信号および位相信号は、位相および周波数処理ユニット320に与えられ、位相誤差信号の決定を可能にする。当業者は、協調変換器350a,350bがFPGA236の中に存在してもよいことを認識するであろう。いくつかの実施形態において、協調変換器350a,350b,390は、1つの協調変換器に統合できる。そのような統合は、3つの複雑な入力信号を、ディジタル的に同調し、一時的に多重化する。
【0020】
振幅信号は、検出手段として使用でき、高周波の内部制御から外部ソースへの移譲を可能にする。位相成分は、高周波センサの位相に応じた位相制御に使用される。センサの位相は、電圧の位相および電流の位相により表される。制御された高周波センサの位相は、和(電圧の位相+電流の位相)、差(電圧の位相−電流の位相)または個別の位相の値(電圧の位相または電流の位相)の予め定めた如何なる1次結合であってもよい。図3は、これら限定された組合せの特定の1つを明示的に説明するものではない。電圧信号および電流信号は、ここでは電圧高周波センサおよび電流高周波センサの出力を示すのに使用される。位相成分は、図2のローパスフィルタ232cへの入力として示される位相入力制御信号および周波数入力制御信号の周波数を定めるのに使用され得る。
【0021】
位相および周波数処理ユニット320は、ディジタルミキシングモジュール344cと、デシメーションモジュール346cと、微分モジュール360と、コントローラ380と、ディジタル周波数シンセサイザ342bと、協調変換器390と、加算器357,358,359,361とを含む。(図2に示す)A/D変換器235のサンプリングから与えられるPnFIn入力信号は、FPGA236のミキシングモジュール344cに入力される。ミキシングモジュール344cは、PnFIn信号を受け入れる2つのディジタルミキサ345c,345c’を含む。ミキサ345cは、PnFIn信号に加算するためにディジタル周波数シンセサイザ342bからの余弦入力をも受け入れる。PnFIn信号もまた、加算器345c’によりディジタル周波数シンセサイザ342bから出力される正弦信号と加算される。加算器345cによる最終出力は、複合波形の実数成分(I)を表す。加算器345c’による最終出力は、複合波形の虚数成分(Q)を表す。複合波形は、所定の位相偏差を有する。加算器345cからの出力は、PnFIn入力信号とDFS342b信号との周波数の和を含み、加算器345c’からの出力は、PnFIn入力信号とDFS信号との周波数の差である。ディジタルミキシングモジュール344cは、デシメーションモジュール346cにこれらの信号を出力する。
【0022】
デシメーションモジュール346cは、2つの最終信号のデータ速度を低減する。波形の実数I成分と虚数Q成分は、デシメーションモジュール346cのディジタルフィルタを通過する。CICフィルタは、いくつかの機能を効率よく実行できるのでディジタルフィルタとして実装される。例えば、CICフィルタの帯域幅は、変移した周波数を提供し、制御ループを許容して、ディジタル周波数シンセサイザ342bが混成周波数誤差366を介して設定する新しい周波数に更新される前に、入力周波数を調節する。CICフィルタもまた、入ってくるサンプリング速度をより管理しやすいサンプリング速度に低減する。ディジタルフィルタは、協調変換器390に接続されている。
【0023】
協調変換器390は、フィルタリングされたIとQとによって表された複合波形を、カルテシアン形式から極形式に変換する。協調変換器390は、PnFInサンプルの振幅および位相を、それぞれ、コントローラ380および周波数微分モジュール360に出力する。PnFIn信号の振幅は、高周波ソースの内部制御から外部ソースへの移譲を可能にする検出手段を提供する。もしも、協調変換器390から出力される振幅信号が閾値以下であれば、振幅信号を受け取る高周波ソースは、内部で制御される。振幅閾値は、高周波発生器14aおよび14bの各種類に合わせて決定され、内部制御と外部制御との間で切り換える。
【0024】
微分モジュール360は、時間に対応する位相の微分値を導出することでPnFIn信号の周波数、つまり、周波数設定値を定める。微分値は、複合協調システムを介して回転速度を提供する。この速度は、サンプリングした入力信号とディジタルシンセサイザ342bとの周波数の差を間引いた周波数に正比例する。微分した周波数は、時間に対応してサンプリングした入力信号の微分値をフィルタリングしたものであってもよい。例えば、微分値は、時間に対応して算出した信号であり、そして、適宜、線形(平均)フィルタまたは非線形(中央値)フィルタによりフィルタリングされる。微分モジュール360は、加算器361に周波数の値を出力する。
【0025】
加算器361は、微分モジュール360により微分された周波数の出力と、高周波システムが達成しようとする所望の周波数入力信号288とを合算する。周波数誤差368と称される加算器361から出力された和は、コントローラ380に入力される。コントローラ380は、周波数誤差368を用いて、PnFInサンプルの周波数の変化を検出する。周波数誤差368がゼロであれば、周波数は一定に維持されていることを示す。ゼロ以外の値は、周波数が変化していることを示す。コントローラ380は、周波数の変化を追跡する。コントローラ380は、ディジタル周波数シンセサイザ342aを、DDS周波数および入力信号の位相偏差392に更新する。この周波数および位相偏差370は、周波数偏差を有する所望の周波数288である。
【0026】
混成周波数設定値365およびコントローラ380からの信号は、加算器359に与えられる。混成周波数設定値365は、外部ソースから入力される。いくつかの実施形態において、外部ソースは、ユーザが決定した入力である。混成周波数設定値365は、周波数の変化を特定する。加算器359の和は、ディジタル周波数シンセサイザ342bにフィードバックされる混成周波数誤差366である。このようにして、高周波発生器14a,14bの周波数は制御される。
【0027】
いくつかの実施形態において、外部ソースは、高周波発生器14a,14bの位相を制御する。微分モジュール360への入力に加えて、PnFIn信号の位相の極座標信号もまた、加算器357に入力される。ディジタル領域において、加算器357は、PnFIn信号について検出される位相と、電圧位相(VPHASE)および電流位相(IPHASE)のいずれかとの差として、位相偏差を決定する。適宜、VPHASEおよびIPHASEは、合成されて、加算器357に加算されてもよい。代案として、IPHASEは、VPHASEから差し引かれてもよい。当業者は、方向性結合器がここに記載された電圧/電流センサに置き換えられることを認識するであろう。それによって、逆方向信号は電圧に置き換えられ、正方向信号は電流に置き換えられる。
【0028】
加算器358は、加算器357から出力される位相差信号と位相設定値362とを受け入れる。位相設定値362は、高周波電力信号を一定の位相偏差に制御する制約条件である。位相偏差は、周波数が固定または機動であっても、変化させられてもよい。位相設定値362は、ユーザが定めた入力のような、外部ソースからの入力である。位相設定値362および位相差363は、加算器358で比較され、位相誤差364を生成する。位相誤差364は位相偏差である。位相誤差364はコントローラ380に入力される。コントローラ380は、図2のDDS290に高周波発生器14a,14bを制御する周波数および位相データを提供する。
【0029】
数ある多様なシステムの実施形態の1つを開示したが、本発明の範囲に含まれる多様な変形が可能である。例えば、高周波発生器14a,14bは、固定周波数発生器、または、代案として、機動周波数発生器であってもよい。機動周波数発生器は、それぞれの高周波発生器からプラズマチャンバ20への電力伝達を最大化するために周波数を変化させる。本発明は、多くの応用例を有する。例えば、高周波電力信号の位相および周波数は、位相ロックループ(PLL)を使用して制御してもよい。位相ロックループは、アナログ回路、ディジタル回路、または、それらの組合せで実装してもよい。加えて、図は2つの高周波発生器を示すが、本発明は、いくつの高周波発生器に対して適用してもよい。例えば、図2のコントローラ220は、各高周波発生器に対して複製してもよい。複数の高周波発生器に対し、信号をデイジーチェイン接続または並列してもよい。多様な実施形態の他の1つにおいて、デシメーション処理346a〜cに使用されるディジタルフィルタは、多相フィルタであってもよい。多様な実施形態のさらに他の1つにおいて、ダウンサンプラが後に続くローパスフィルタは、ディジタルフィルタからなってもよい。
【0030】
本発明の説明は、単なる例示でしかなく、それ故、発明の要旨から逸脱しない変形は、本発明の範囲内にあると意図される。そのような変形は、本発明の精神と範囲とから逸脱するものとみなされない。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1A】いくつかの実施形態に係る高周波システムを例示するブロック図。
【図1B】いくつかの実施形態に係る高周波システムを例示するブロック図。
【図2】図1A,1Bに示す高周波発生器のセンサ信号処理ユニットのブロック図。
【図3】いくつかの実施形態にかかる信号処理基本設計のブロック図。
【符号の説明】
【0032】
10 プラズマシステム
14a,14b 高周波発生器
222a,222b 高周波電力源
224a,224b 高周波センサ
226a,226b センサ信号処理ユニット
236 フィールドプログラマブルゲートアレイ
380 コントローラ
342a,342b ディジタル周波数シンセサイザ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高周波電力源と、
前記高周波電力源に接続したセンサと、
前記高周波電力源および前記センサに接続したセンサ信号処理ユニットとを含み、
前記センサ信号処理ユニットは、外部高周波ソースからの入力を受け入れ、高周波発生器の位相および周波数を制御する制御信号を生成することを特徴とする高周波発生器。
【請求項2】
前記入力は、位相設定値および混成周波数設定値のいずれかであることを特徴とする請求項1に記載の高周波発生器。
【請求項3】
前記外部高周波ソースは、ユーザが定めた入力であることを特徴とする請求項2に記載の高周波発生器。
【請求項4】
前記センサ信号処理ユニットは、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)ユニットおよびディジタル信号処理ユニットを含むことを特徴とする請求項1に記載の高周波発生器。
【請求項5】
前記フィールドプログラマブルゲートアレイユニットは、位相および周波数の入力信号を受け入れ可能であることを特徴とする請求項4に記載の高周波発生器。
【請求項6】
前記信号処理ユニットは、制御信号を生成可能であることを特徴とする請求項4に記載の高周波発生器。
【請求項7】
前記信号処理ユニットは、微分機能要素に接続されたコントローラを含むことを特徴とする請求項6に記載の高周波発生器。
【請求項8】
前記コントローラは、制御信号を生成し、前記制御信号は高周波信号であることを特徴とする請求項7に記載の高周波発生器。
【請求項9】
前記コントローラにより生成された制御信号は、前記コントローラに対する複数の入力に依存することを特徴とする請求項8に記載の高周波発生器。
【請求項10】
前記複数の入力信号は、位相誤差信号、周波数誤差信号、ならびに、位相入力信号および周波数入力信号であることを特徴とする請求項9に記載の高周波発生器。
【請求項11】
第1機動周波数高周波発生器と第2機動周波数高周波発生器とを含み、
前記第1機動周波数高周波発生器は、電力源と、
前記電力源に接続したセンサと、
前記電力源および前記センサに接続したセンサ信号処理ユニットとを含み、
前記センサ信号処理ユニットは、外部ソースからの入力を受け入れ、前記第1機動周波数高周波発生器が発する高周波電力信号の第1位相および第1周波数のうち少なくとも1つを性御する第1制御信号を生成、
前記第2機動周波数高周波発生器は、前記第1機動周波数高周波発生器からの第2制御信号を受け入れ可能であり、
前記第2制御信号は、前記第2機動周波数高周波発生器の第2位相および第2周波数のうち少なくとも1つを制御することを特徴とする高周波システム。
【請求項12】
前記第1機動周波数高周波発生器と前記第2機動周波数高周波発生器との間の可変周波数偏差は、前記第2制御信号により制御され、前記第1制御信号および前記第2制御信号は、高周波信号であることを特徴とする請求項11に記載の高周波システム。
【請求項13】
前記入力は、ユーザが定めた入力であることを特徴とする請求項11に記載の高周波システム。
【請求項14】
第1高周波発生器と、前記第1高周波発生器に接続した第2高周波発生器とを含み、
前記第1高周波発生器および前記第2高周波発生器は、それぞれ、電力源と、前記電力源に接続したセンサと、前記電力源および前記センサに接続したセンサ信号処理ユニットとを含み、
前記第1高周波発生器の前記センサ信号処理ユニットは、前記第1高周波発生器の位相および周波数を制御し、
前記第2高周波発生器の前記センサ信号処理ユニットは、前記第2高周波発生器の位相および周波数を制御することを特徴とする高周波システム。
【請求項15】
それぞれの前記センサ信号処理ユニットは、固定周波数の可変位相偏差を制御することを特徴とする請求項14に記載の高周波システム。
【請求項16】
それぞれの前記センサ信号処理ユニットは、機動周波数の可変位相偏差を制御することを特徴とする請求項14に記載の高周波システム。
【請求項17】
前記第1高周波発生器と前記第2高周波発生器との間の可変周波数は、前記第1高周波発生器から前記第2高周波発生器への制御信号を介して維持されることを特徴とする請求項15に記載の高周波システム。
【請求項18】
センサを電力源に接続し、
センサ信号処理ユニットを前記電力源および前記センサに接続し、
外部ソースからの入力を受け入れ、
高周波発生器の位相および周波数を制御する制御信号を生成することを含むことを特徴とする方法。
【請求項19】
前記入力は、位相設定値および混成周波数設定値のいずれかであることを特徴とする請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記外部ソースは、ユーザが定めた入力であることを特徴とする請求項18に記載の方法。
【請求項21】
前記制御信号の生成は、位相信号および周波数信号の微分を行い、
前記微分に基づいて信号の周波数を算出し、
周波数偏差を前記微分に加算し、
コントローラにおいて周波数誤差を更新し、
前記コントローラからディジタル周波数シンセサイザに混成周波数誤差を送出することを含むことを特徴とする請求項18に記載の方法。
【請求項22】
外部ソースから位相偏差を受け入れ、
可変位相設定値を生成し、
前記高周波発生器の位相を制御することさらに含むことを特徴とする請求項21に記載の方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−304585(P2006−304585A)
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−329021(P2005−329021)
【出願日】平成17年11月14日(2005.11.14)
【出願人】(592185714)エムケーエス インスツルメント,インコーポレーテッド (1)
【Fターム(参考)】