説明

高周波電源装置

【課題】高周波電力を設定値に保つ出力制御と増幅回路を保護する保護制御とを、簡単な構成で、正確かつ安定に行わせることができる高周波電源装置を提供する。
【解決手段】電力増幅部6の出力から高周波検出部8を通して得た進行波検出信号Sf と高周波信号発生部4の出力を分波して得た基準高周波信号とを乗算する乗算部11の出力から直流分を検出することにより進行波電力の基本周波数成分を検出し、高周波検出部8から得た反射波検出信号Sr を検波することにより検出した全反射波電力成分から、反射波検出信号と基準高周波信号とを乗算する乗算部15の出力から直流分と基本周波数の2倍の周波数成分とを除去した信号を検波することにより検出したスプリアス周波数成分を減算することにより反射波電力成分の基本周波数成分を検出し、検出した進行波電力及び反射波電力成分の基本周波数成分を用いて電力増幅部6を制御するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマ処理装置等の負荷に高周波電力を供給する高周波電源装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
プラズマ処理装置などの負荷に電力を供給する高周波電源装置は、負荷に供給する高周波電力と周波数が等しい高周波信号を発生する高周波信号発生部と、高周波信号発生部が発生した高周波信号を増幅する電力増幅部と、電力増幅部の出力側で負荷に供給される進行波電力と負荷から戻ってくる反射波電力とを分離して検出する高周波検出部と、高周波検出部から得られる検出信号に応じて電力増幅部を制御する制御部とを備えている。
【0003】
高周波検出部は、通常電力増幅部と負荷との間に挿入された方向性結合器を備えていて、電力増幅部から負荷に与えられる進行波電力を示す進行波検出信号と、負荷で反射されて電力増幅部に戻ってくる反射波電力を示す反射波検出信号とを出力する。
【0004】
制御部は、高周波電源装置が出力する進行波電力または負荷で消費される有効電力を設定範囲に保つように電力増幅部を制御する出力制御と、負荷から戻ってくる反射波電力が多い場合に、電力増幅部を構成する半導体増幅素子を保護するために、電力増幅部の出力を抑制する保護制御とを行なうように構成される。負荷で反射波が生じる場合、負荷で消費される有効電力は、進行波電力から有効電力を減算することにより求められる。
【0005】
プラズマ処理装置などの負荷に高周波電力を供給する高周波電源装置は、基本周波数以外のスプリアス周波数成分を含まない高純度の高周波電力(進行波電力)を出力することを必要とする。そのため、この種の用途に用いられる高周波電源装置においては、高周波信号発生部から電力増幅部の出力段に至る部分の所要箇所にスプリアス周波数成分を除去するための各種の高周波フィルタを配置している。また電力増幅部の出力段には、基本周波数成分のみを通過させるためにローパスフィルタが接続されている。従って、電力増幅部から出力される進行波電力は、実質的に基本周波数成分のみからなっているが、後記するように、負荷から戻ってくる反射波電力にスプリアス周波数成分が重畳されている場合には、高周波検出部で検出される進行波電力にスプリアス周波数成分が含まれる。
【0006】
高周波電源装置の出力と負荷との間には通常インピーダンス整合器が設けられていて、このインピーダンス整合器が定常状態にある負荷に対してインピーダンスの整合をとることにより、負荷で反射波電力が発生するのを防いでいる。従って、定常状態において負荷のインピーダンスが急激な変化を示さないときには、電力増幅部から負荷に与えられる進行波電力のレベルが安定に保たれ、負荷で反射されて電力増幅部に戻る反射波電力は最小となっている。
【0007】
しかしながら、プラズマ処理装置などの負荷の起動時には、負荷のインピーダンスが非線形の状態にあって、高速で変動するため、インピーダンス整合器の整合動作が追いつかず、負荷を節として反射波が発生する。更に負荷の内部では、そのインピーダンスの非線形性に起因して生じる周波数混合作用により、基本周波数と異なる種々の周波数成分がスプリアス周波数成分として発生し、これらのスプリアス周波数成分が反射波電力に重畳して高周波電源装置側に戻っていく。
【0008】
また、半導体ウェハのエッチングなどを行なうプラズマ処理装置のように、プラズマ処理装置の電極に、2以上の高周波電源装置から周波数が異なる高周波電力が同時に与えられる場合には、負荷のインピーダンスが複雑に変化するため、定常状態においても、インピーダンス整合器によりインピーダンスの整合を完全にとることができず、負荷で反射波が発生するのを避けることができない。このような構成の負荷に高周波電力を供給する場合には、定常状態においても、負荷から電力増幅部に戻ってくる反射波に、基本周波数成分と種々のスプリアス周波数成分とが重畳されている。このように、スプリアス周波数成分が重畳された反射波が戻ってくる場合には、高周波検出部から得られる反射波検出信号に、基本周波数成分の他にスプリアス周波数成分が多く含まれるのはもちろん、進行波検出信号にもスプリアス周波数成分が含まれる。
【0009】
なお「スプリアス周波数」という語は、基本周波数の前後に現れる不要周波数と、各高調波周波数の前後に現れる不要周波数とを指す意味で用いられることもあるが、本明細書においては、基本周波数以外のすべての周波数をスプリアス周波数と呼ぶことにする。
【0010】
進行波検出信号にスプリアス周波数成分が含まれている状態では、進行波電力の基本周波数成分のレベルを正確に検出することができないため、進行波電力を設定範囲に保つ制御を正確に行わせることができない。そこで、従来技術では、特許文献1の図4に示されているように、高周波検出部から得られる進行波検出信号の出力をフィルタに入力することによりスプリアス周波数成分を除去したり、特許文献1の図1に示されているように、進行波検出信号の周波数を、フィルタの作成が容易な周波数に変換した後にフィルタに入力してスプリアス周波数成分を除去したりすることが行なわれている。特許文献1の図1に示され高周波電源装置においては、負荷に与える高周波電力と周波数が等しい高周波信号を発生する高周波信号発生部の他に、高周波電力の周波数と異なる周波数の局部信号を発生する局部信号発生部を設けて、高周波検出部から得られる進行波検出信号と局部信号とを混合(乗算)することにより、進行波検出信号の周波数を、フィルタの作成が容易な比較的低い周波数に変換した後にフィルタに入力して、スプリアス周波数成分を除去するようにしている。進行波電力の検出信号の周波数を局部信号と混合して周波数変換を行ってからフィルタによりスプリアス周波数成分を除去する技術は、特許文献2にも示されている。
【0011】
上記のように、進行波検出信号からスプリアス周波数成分を除去することができれば、高周波電源装置から出力される進行波電力の基本周波数成分を設定範囲に保つ制御、または負荷で実際に消費される有効電力の制御を正確に行なわせることができる。
【0012】
負荷で反射波が生じると、反射波電力が電力増幅部と負荷との間を接続する伝送路上で進行波電力と合成されるため、伝送路上に定在波が発生する。反射波電力が大きく、高いレベルの定在波(電力、電圧及び電流)が発生すると、電力増幅部の半導体増幅素子に印加される電圧が過大になって、半導体増幅素子が劣化したり、破損したりするおそれがある。このような問題が生じるのを防ぐためには、特許文献3に示されているように、高周波検出部により検出された反射波電力が制限値を超えたときに、電力増幅部の出力を抑制する保護制御を行うか、または特許文献4に示されているように、高周波検出部により検出された進行波電力と反射波電力との合計値が制限値を超えたときに、電力増幅部の出力を抑制する保護制御を行なって、半導体増幅素子を保護することが必要である。
【0013】
上記のように,高周波電源装置の制御部は、高周波電力が出力する進行波電力または進行波電力から反射波電力を減算した有効電力を設定範囲に保つように電力増幅部を制御する出力制御と、負荷から戻ってくる反射波電力が多い場合に、反射波電力または進行波電力と反射波電力との合計値が制限値を超えないように電力増幅部の出力を抑制する保護制御とを行なうように構成されるが、実際に出荷される高周波電源装置に持たせる制御特性は、ユーザが要求する仕様に応じて決められる。
【0014】
例えば、出力制御において、高周波電源装置が出力する進行波電力を設定範囲に保つことを重視する場合には、高周波検出部から得られる進行波検出信号から進行波電力の基本周波数成分を検出して、検出した進行波電力の基本周波数成分を設定範囲に保つ出力制御を行なわせるように制御部を構成する。また負荷で実際に消費される高周波電力を設定範囲に保つことを重視する場合には、反射波電力を無効電力として扱って、進行波電力の基本周波数成分から反射波電力を減算して求めた有効電力を設定範囲に保つように出力制御を行なわせる。この場合、進行波電力の基本周波数成分から減算する反射波電力としては、基本周波数成分のみを用いる場合もあり、基本周波数成分と無視できないスプリアス周波数成分との双方を含む反射波電力を用いる場合もある。
【0015】
また進行波電力と反射波電力との合計値が制限値を超えたときに、電力増幅部の出力を抑制する保護制御においては、進行波電力の基本周波数成分に加算する反射波電力として、反射波電力の基本周波数成分のみを用いる場合と、安全を見て、基本周波数成分及びスプリアス周波数成分の双方を含む全反射波電力を用いる場合とがある。
【0016】
上記のように、高周波電源装置においては、ユーザが要求する仕様に応じて、制御部が行なう制御の内容が決められるが、装置の製造を容易にするためには、ユーザが要求する如何なる仕様にも対応できるようにしておく必要がある。そのためには、進行波電力の基本周波数成分を正確に検出することができるようにしておく必要があるのはもちろん、反射波電力の基本周波数成分をも正確に検出し得るようにしておく必要がある。また負荷の状況をモニタする等の目的で、高周波電源装置側でスプリアス周波数成分を監視する必要がある場合には、監視の対象とするスプリアス周波数成分を独立して検出し得るようにしておく必要がある。
【0017】
進行波電力及び反射波電力の基本周波数成分を検出するに際しては、要求される検出精度などに応じて種々の技術が導入される。例えば、前述の特許文献1や特許文献2に示された高周波電源装置においては、電力増幅部に入力する高周波信号を発生する高周波信号発生部の他に、局部信号発生部を設けて、高周波信号検出部から得られる検出信号と局部信号とを混合することにより、検出信号の周波数を、周波数の分離処理が容易な(フィルタの作成が容易な)比較的低い周波数に変換し、しかる後にフィルタを用いて基本周波数成分を分離する処理を行なって、進行波電力の基本周波数成分を高精度で検出するようにしている。
【0018】
また特許文献6に示されているように、負荷に供給される高周波電力と周波数が等しい基準高周波信号と進行波検出信号とを位相を合わせて乗算することにより、進行波検出信号の基本周波数成分を直接直流分に変換して、基本周波数成分を高精度で検出する技術も提案されている。特許文献6に示された例では、高周波信号発生部から電力増幅部に与えられる高周波信号の一部を分波することにより負荷に供給される高周波電力と周波数が等しい基準高周波信号を得て、この基準高周波信号と高周波検出部から得られる進行波検出信号とを位相を合わせて乗算することにより、進行波電力の基本周波数成分に比例した直流分を含む信号を生成し、この信号をローパスフィルタに通して、直流分を抽出することにより、進行波電力の基本周波数成分を検出するようにしている。このようにして基本周波数成分を検出する方式は、周波数変換方式(ヘテロダイン方式)に対して、直接検波方式(ホモダイン方式)と呼ばれている。
【0019】
また、特許文献3や特許文献5に示されているように、周波数変換や直接検波を行なうことなく、高周波検出部から取り出した検出信号をバンドパスフィルタに供給して、検出信号から不要な周波数成分を除去することにより、基本周波数成分を抽出する方法がとられる場合もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【特許文献1】特開2010−108839号公報
【特許文献2】特開2003−179030号公報
【特許文献3】特開平11−233294号公報
【特許文献4】特開2008−276966号公報
【特許文献5】特開平5−63627号公報
【特許文献6】特開2010−238493号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
上記のように、プラズマ処理装置等の負荷に高周波電力を供給する高周波電源装置においては、負荷から多くのスプリアス周波数成分が逆流してくる場合でも、負荷に供給される進行波電力または負荷で実際に消費される有効電力を設定範囲に保つ出力制御を、正確かつ安定に行なわせることができるようにしておく必要がある。また反射波電力が多い場合に半導体増幅素子を劣化させたり破損させたりすることがないように、反射波電力または進行波電力と反射波電力との合計値が制限値を超えたときに電力増幅部の出力を抑制する保護制御を的確に行なわせることができるようにしておく必要がある。そのため、プラズマ処理装置等の負荷に高周波電力を供給する高周波電源装置においては、進行波電力の基本周波数成分及び反射波電力の基本周波数成分を正確に検出し得るようにしておく必要がある。また電源装置側で負荷の状況を監視する等の要望に応えることができるようにしておくために、スプリアス周波数成分を正確に検出し得るようにしておくことが好ましい。
【0022】
進行波検出信号及び反射波検出信号からスプリアス周波数成分を除去して、進行波電力の基本周波数成分及び反射波電力の基本周波数成分を検出するに際して、アナログフィルタを用いた場合には、周囲温度によりフィルタの伝送特性が変化するため、スプリアス周波数成分を完全に除去することが困難である。スプリアス周波数成分を十分に除去できないと、負荷に同時に2以上の周波数の高周波電力が供給される場合のように、反射波電力に重畳されるスプリアス周波数成分が多い場合に、高周波電源装置の出力制御を高精度で行なうことができず、負荷に安定に高周波電力を供給することができない等の問題が生じる。
【0023】
進行波検出信号及び反射波検出信号からスプリアス周波数成分を除去して、進行波電力の基本周波数成分及び反射波電力の基本周波数成分を検出するフィルタとして、デジタルフィルタを用いれば、デジタル演算処理を行なうことで周囲温度の変化の影響を回避して、フィルタの狭帯域化を実現することができ、スプリアス周波数成分を十分に除去して、基本周波数成分を高精度で検出することができる。しかしながら、デジタルフィルタは、高速で多段の乗算器を必要とするため、ハードウェアにかかる負担が重く、回路構成が複雑になり、コストが著しく高くなるのを避けられない。またデジタルフィルタを用いると、多段の演算処理に時間がかかるため、制御の応答性が悪くなるのを避けられない。従って、デジタルフィルタは極力用いないようにしたい。
【0024】
特許文献1及び2に示されているように、進行波検出信号及び反射波検出信号からスプリアス周波数成分を除去して進行波電力の基本周波数成分及び反射波電力の基本周波数成分を検出するに当たり、周波数変換を行えば、進行波電力及び反射波電力の基本周波数成分を高精度で検出することができる。しかしながら、周波数変換を行うためには、検出部に局部信号発生部を設ける必要があり、また周波数変換された信号からスプリアス周波数成分を除去するために狭帯域のフィルタを必要とするため、検出部の構成が複雑になる上に大型化するのを避けられない。また、周波数変換を行なう場合には、複数の信号発生部を設ける必要があるため、信号発生部相互間の干渉を除去したり、ノイズ妨害対策を施したりする必要があり、高周電源装置の製造に高度な技術を必要とする。
【0025】
進行波電力の基本周波数成分を検出するに当り、特許文献6に示されたように、直接検波方式を採用すれば、基本周波数成分を直流信号として検出できるため、基本周波数成分を示す信号成分と他の信号成分との分離を容易に行なうことができ、フィルタの構成を簡単にすることができる。しかしながら、特許文献6に示された高周波電源装置では、反射波電力の基本周波数成分を検出することができず、また反射波電力に重畳しているスプリアス周波数成分を独立して検出することができない。
【0026】
基本周波数にスプリアス周波数成分が重畳されている信号から直接検波方式により基本周波数成分を直流分として検出するためには、検波しようとする信号の位相が一定である必要がある。負荷から戻ってくる反射波電力の位相が一定であれば、特許文献6に示された発明の示唆に従って、反射波検出信号と基準高周波信号とを位相を合わせて乗算することにより直接検波を行うことが可能である。しかしながら、実際には、反射波の位相は機器設置の条件等により異なる値をとり、一定ではないため、基準高周波信号と反射波検出信号とを位相を合わせて乗算することは困難である。従って、直接検波方式により反射波電力の基本周波数成分を検出することは難しい。
【0027】
上記のように、特許文献6に示された装置では、反射波電力の基本周波数成分を検出できないため、進行波電力の基本周波数成分から反射波電力の基本周波数成分を減算した有効電力を設定範囲に保つ出力制御や、進行波電力の基本周波数成分と反射波電力の基本周波数成分との合計値が制限値を超えないように電力増幅部の出力を抑制する保護制御を行なうことが必要とされる場合に対応することができない。また特許文献6に示された装置では、スプリアス周波数成分のみを検出することができないため、負荷の状態を監視する等の目的でスプリアス周波数成分を検出したいとの要望があった場合にその要望に応えることができない。
【0028】
また最近では、正弦波形の高周波電力を、繰り返し周期が1msecないし100μsecのパルス波形に変調して出力することが求められるようになっている。高周波電力をパルス波形に変調する場合に、出力制御及び保護制御を的確に行なうためには、進行波電力及び反射波電力の基本周波数成分を、十分に高い検出速度で検出し得るようにしておく必要がある。進行波電力及び反射波電力の検出速度が遅いと、パルスの立ち上がり時及び立ち下がり時の急峻な振幅の変化に検出動作が追従することができないため、パルス波形に波形鈍りやリンギングが生じて、高周波電力のパルス波形が崩れ、正規のパルス波形の高周波電力を負荷に供給することができなくなる。特にパルスの繰り返し周期が300μsec以下になると、高周波電力の検出遅れにより、パルスの波形鈍りやリンギングなどの波形歪みが顕著に生じるようなる。また進行波電力及び反射波電力の検出速度が遅いと、保護制御を迅速に行なうことができないため、半導体増幅素子の破損を防ぐことができないことがある。
【0029】
従って、パルス波形の高周波電力を出力する高周波電源装置を制御する場合には、進行波電力及び反射波電力の検出速度が遅くなることがないように配慮する必要があり、制御装置を構成する素子として、処理が速い高価なものを用いる必要がある。
【0030】
本発明の目的は、ハードウェアに大きな負担をかけることなく、負荷に与えられる進行波電力の基本周波数成分、負荷から戻ってくる反射波電力の基本周波数成分、基本周波数成分とスプリアス周波数成分との双方を含む反射波電力、及びスプリアス周波数成分を個別に、高精度で、しかも検出速度を十分に高くして検出することができるようにして、連続した正弦波形の高周波電力を負荷に供給する場合の出力制御及び保護制御を正確かつ安定に行わせることができるのはもちろん、負荷に供給する高周波電力をパルス波形に変調する場合にも、波形歪みを生じさせることなく、出力制御及び保護制御を正確かつ安定に行わせることができるようにした高周波電源装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0031】
本発明は、正弦波形の高周波信号を発生する高周波信号発生部と、高周波信号を増幅して高周波電力を出力する増幅回路と出力制御信号に応じて増幅回路の出力レベルを調節するレベル調節部と保護制御信号に応じて増幅回路の出力を抑制する保護制御部とを有する電力増幅部と、電力増幅部の出力から進行波電力及び反射波電力を検出して進行波検出信号及び反射波検出信号を出力する高周波検出部と、進行波検出信号及び反射波検出信号から検出される制御対象電力成分を設定値に保つように電力増幅部に出力制御信号を与え、進行波検出信号及び反射波検出信号から検出される監視対象電力成分を制限値以下に保つように電力増幅部に前記保護制御信号を与える制御部とを備えた高周波電源装置を対象とする。
【0032】
本発明においては、上記制御部が、高周波信号発生部からレベル調節部に入力される高周波信号の一部を分波して負荷に供給される高周波電力と波形及び周波数が等しい基準高周波信号を得る基準高周波信号生成部と、進行波検出信号と基準高周波信号との間の位相差をnπ/2(nは1以上の奇数)以外の値に補正する位相補正部と、位相補正部により位相差が補正された進行波検出信号と基準高周波信号とを乗算する第1の乗算部と、反射波検出信号又は反射波検出信号から検出の対象としないスプリアス周波数成分を除去した信号を処理対象反射波検出信号として、該処理対象反射波検出信号と前記基準高周波信号とを乗算する第2の乗算部と、第1の乗算部の出力から直流分を抽出して進行波電力の基本周波数成分のレベルに対応したレベルを有する第1のアナログ信号を得る第1の信号生成部と、第2の乗算部の出力から直流分と基本周波数の2倍の周波数成分を含むように設定された高域側設定周波数帯域に含まれる周波数成分とを除去して処理対象反射波検出信号に含まれる全検出対象スプリアス周波数成分のレベルに対応したレベルを有する第2のアナログ信号を得る第2の信号生成部と、処理対象反射波検出信号を検波して処理対象反射波検出信号に含まれる基本周波数成分と全スプリアス周波数成分とを含む全検出対象反射波電力成分のレベルに対応したレベルを有する第3のアナログ信号を得る第3の信号生成部と、第1のアナログ信号ないし第3のアナログ信号のレベルをそれぞれ第1のデジタル値ないし第3のデジタル値に変換する第1ないし第3のA/D変換部と、第1のデジタル値ないし第3のデジタル値から制御対象電力成分及び監視対象電力成分を求めて、求めた制御対象電力成分を設定値に保つように前記出力制御信号を出力し、求めた監視対象電力成分が制限値を超えているときに該監視対象電力成分を制限値以下に抑制するように保護制御信号を出力するデジタル演算処理部とを備えている。
【0033】
正弦波形の進行波検出信号と基準高周波信号とを第1の乗算部に入力して乗算すると、両信号の位相が変化しないとした場合、第1の乗算部の出力信号には、進行波電力の基本周波数成分に比例する直流分と基本周波数の2倍の周波数成分とが含まれる。従って第1の乗算部の出力から直流分を抽出すると、進行波電力の基本周波数成分を検出することができる。
【0034】
後述するように、第1の乗算部の出力に含まれる直流分の大きさ(絶対値)は、進行波検出信号と基準高周波信号との位相差により変化する。第1の乗算部の出力に含まれる直流分の大きさは、進行波検出信号と基準高周波信号との位相差を零またはmπ(mは1以上の整数)にすると最大になり、両信号の位相差をnπ/2(nは1以上の奇数)にすると零になる。従って、進行波検出信号と基準高周波信号との位相差をnπ/2以外の大きさに設定しておくことにより、進行波電力の基本周波数成分を検出することができ、両信号の位相差を零またはmπに設定しておくことにより、進行波電力の基本周波数成分を最大感度で検出することができる。
【0035】
上記のように、第1の乗算部の出力には、進行波電力の基本周波数成分に比例した直流分を含ませることができるため、第1の信号生成部で第1の乗算部の出力から直流分を抽出することにより、進行波電力の基本周波数成分を示す第1のアナログ信号を得ることができ、このアナログ信号のレベルを第1のA/D変換部でデジタル値に変換することにより、進行波電力の基本周波数成分のレベルを示す第1のデジタル値を得ることができる。第1のアナログ信号は直流信号であるので、第1のA/D変換部を構成するハードウェアとして変換速度が遅い安価なものを用いても、出力制御及び保護制御を、遅れを伴うことなく行わせるために必要にして十分な速度で変換データを得ることができる。また直流分の抽出はアナログのローパスフィルタを用いて簡単に行なうことができるため、進行波電力の基本周波数成分を検出するに当って高価なフィルタを用いる必要がなく、ハードウェアにかかる負担を軽くして装置の構成を簡単にすることができる。
【0036】
また反射波検出信号又は反射波検出信号から検出の対象としないスプリアス周波数成分を除去した信号を処理対象反射波検出信号として、該処理対象反射波検出信号と基準高周波信号とを第2の乗算部で乗算すると、反射波電力の基本周波数成分の振幅の最大値に比例したレベルの直流分と、基本周波数の2倍の周波数成分と、各スプリアス周波数成分がその周波数と基準高周波信号の周波数との差の周波数に周波数変換された周波数成分(差の周波数変換成分という。)と、各スプリアス周波数成分がその周波数と基準高周波信号の周波数との和の周波数に周波数変換された周波数成分(和の周波数変換成分という。)とが得られる。これらの周波数変換された周波数成分のうち、差の周波数変換成分または和の周波数変換成分のいずれかを検出すれば、反射波電力に含まれている全検出対象スプリアス周波数成分(検出の対象とする全スプリアス周波数成分)を検出することができる。従って、第2の乗算部の出力から直流分と、基本周波数の2倍の周波数成分を含むように設定された高域側設定周波数帯域に含まれる周波数成分とを除去すると、処理対象反射波検出信号に含まれる全検出対象スプリアス周波数成分のレベルに対応したレベルを有する第2のアナログ信号を得ることができ、この第2のアナログ信号のレベルを第2のA/D変換部でデジタル値に変換することにより、処理対象反射波検出信号に含まれる全検出対象スプリアス周波数成分のレベルを示す第2のデジタル値を得ることができる。
【0037】
第2の信号生成部では、第2の乗算部の出力信号に対して、直流分及び基本周波数の2倍の周波数成分の除去と、レベルを検出するための検波とを行なうだけで、直流分を抽出する処理は行なわないので、該直流分は零であってもよい。従って、処理対象反射波検出信号と基準高周波信号との位相差はnπ/2(nは1以上の奇数)であってもよく、処理対象反射波検出信号と基準高周波信号とを第2の乗算部で乗算するに当り、両信号の位相差を調整する必要はない。
【0038】
一方第3の信号生成部で処理対象反射波検出信号を検波してそのレベルを検出すると、処理対象反射波検出信号に含まれる基本周波数成分とスプリアス周波数成分との双方を含む全検出対象反射波電力成分のレベルに対応するレベルを有する第3のアナログ信号を得ることができ、第3のA/D変換部でこの第3のアナログ信号のレベルをデジタル値に変換することにより、処理対象反射波検出信号に含まれる基本周波数成分と全検出対象スプリアス周波数成分との双方を含む全検出対象反射波電力成分のレベルを示す第3のデジタル値を得ることができる。第3のアナログ信号も直流信号であるため、第3のA/D変換部を構成するハードウェアとして変換速度が遅い安価なものを用いても、出力制御及び保護制御を、遅れを伴うことなく行わせるために必要にして十分な速度で変換データを得ることができ、全検出対象反射波電力成分の検出を高速で行なわせることができる。
【0039】
上記のように、進行波電力の基本周波数成分、反射波電力に含まれる全検出対象スプリアス周波数成分、及び基本周波数成分と全検出対象スプリアス周波数成分との双方を含む全検出対象反射波電力成分をそれぞれ示す第1のデジタル値、第2のデジタル値及び第3のデジタル値を得ることができると、第1のデジタル値から進行波電力の基本周波数成分を知ることができ、第3のデジタル値から第2のデジタル値を減算した値から反射波電力の基本周波数成分を求めることができる。
【0040】
また上記のように構成すると、少なくとも第1のA/D変換部及び第3のA/D変換部は、直流信号をA/D変換すればよいため、安価なハードウェアを用いて構成することができ、コストの低減を図ることができる。
【0041】
本発明の好ましい態様では、上記第2の信号生成部が、第2の乗算部の出力から直流分と基本周波数の2倍の周波数成分を含むように設定された高域側設定周波数帯域に含まれる周波数成分とを除去した信号を検波して、処理対象反射波検出信号に含まれる全検出対象スプリアス周波数成分のレベルに対応したレベルを有する直流の第2のアナログ信号を得るように構成される。
【0042】
このように第2の信号生成部を構成すると、第2のA/D変換部も直流信号をA/D変換すればよいため、安価なハードウェアを用いて構成することができる。
【0043】
上記制御対象電力成分は、第1のデジタル値から求められる進行波電力の基本周波数成分とすることができる。即ち、第1のデジタル値から求められる進行波電力の基本周波数成分のレベルを設定範囲に保つように電力増幅部を制御することにより、進行波電力の基本周波数成分を制御対象電力成分として、該制御対象電力成分を設定範囲に保つ出力制御を行わせることができる。
【0044】
また制御対象電力成分は、第3のデジタル値から第2のデジタル値を減算した値から求められる反射波電力の基本周波数成分を第1のデジタル値から求められる進行波電力の基本周波数成分から減算することにより求められる有効電力成分とすることもできる。
【0045】
上記制御対象電力成分はまた、第1のデジタル値から求められる進行波電力の基本周波数成分から、第3のデジタル値から求められる全反射波電力を減算することにより求められる有効電力成分とすることもできる。
【0046】
本発明の好ましい態様では、デジタル演算処理部が、第1のデジタル値から求められる進行波電力の基本周波数成分、第3のデジタル値から第2のデジタル値を減じた値を第1のデジタル値から減じた値から求められる有効電力成分、及び第1のデジタル値から第3のデジタル値を減じた値から求められる有効電力成分のいずれかを制御対象電力成分として外部指令に応じて演算するように構成される。
【0047】
上記のように構成しておくと、外部指令により制御対象電力成分の変更を容易に行うことができるため、ユーザーが要求する仕様に合った高周波電源装置を容易に構成することができる。
【0048】
また監視対象電力成分は、第1のデジタル値から求められる進行波電力の基本周波数成分の値と第3のデジタル値から第2のデジタル値を減じた値から求められる反射波電力の基本周波数成分との合計値とすることができる。
【0049】
上記監視対象電力成分は、第1のデジタル値から求められる進行波電力の基本周波数成分と第3のデジタル値から求められる全検出対象反射波電力成分との合計値とすることもできる。
【0050】
本発明の好ましい態様では、デジタル演算処理部が、第1のデジタル値が示す進行波電力の基本周波数成分の値と前記第3のデジタル値から第2のデジタル値を減じることにより求めた反射波電力の基本周波数成分の値との合計値、または前記第1のデジタル値が示す進行波電力の基本周波数成分と第3のデジタル値が示す全検出対象反射波電力成分との合計値を監視対象電力成分として外部指令に応じて演算するように構成される。
【0051】
上記のように構成しておくと、監視対象電力成分の変更を容易に行うことができるため、ユーザーが要求する仕様に合った高周波電源装置を容易に構成することができる。
【0052】
本発明の好ましい態様では、基準高周波信号のレベルを検出する基準高周波信号レベル検出部が設けられて、この基準高周波信号レベル検出部により検出された基準高周波信号のレベルを一定に保つように高周波信号発生部を制御する高周波信号制御ループが構成される。
【0053】
このような制御ループを構成しておくと高周波信号のレベル及び基準高周波信号のレベルを一定に保つことができるため、制御を安定に行わせることができる。
【0054】
高周波信号発生部は、連続した正弦波形の高周波信号を出力するように構成されていてもよく、正弦波形の高周波信号をパルス波形に変調して出力するよう構成されていてもよい。
【0055】
本発明では、進行波電力の基本周波数成分、反射波電力の基本周波数成分及び全検出対象反射波電力成分を高速で検出することができるため、高周波信号がパルス波形に変調されていても、応答遅れを生じさせることなく、出力制御及び保護制御を支障なく行わせることができる。
【0056】
高周波信号発生部は、水晶発振器のような安定な発振器からなっていてもよく、デジタル信号により指示された通りの振幅と周波数とを有する高周波信号を発生するDDS(Direct Digital Synthesizer)からなっていてもよい。DDSを用いれば、高周波電力の周波数の変更に容易に対応することができる。
【発明の効果】
【0057】
本発明によれば、高周波信号の一部を分波することにより高周波信号と波形及び周波数が等しい基準高周波信号を得て、この基準高周波信号を用いて直接検波を行なうことにより進行波電力の基本周波数成分を検出するようにしたため、周波数変換を行なう場合のように、高周波信号発生部の他に局部信号発生部を設ける必要がなく、ハードウェアの構成を簡単にすることができる。また信号発生部としては高周波信号発生部のみを設ければよいため、信号発生部相互間の干渉を防ぐための対策や高度のノイズ対策を講じる必要性及び信号発生部を同期運転する必要性をなくすことができ、回路構成を簡単にして製造を容易にすることができる。
【0058】
また本発明によれば、反射波検出信号又は反射波検出信号から検出の対象としないスプリアス周波数成分を除去した信号を処理対象反射波検出信号として、該処理対象反射波検出信号と基準高周波信号とを乗算して得た信号から直流分と、基本周波数の2倍の周波数成分を含むように設定された高域側設定周波数帯域に含まれる周波数成分とを除去することにより、全検出対象スプリアス周波数成分のレベルに対応するレベルを有する第2のアナログ信号を得て、この第2のアナログ信号のレベルをデジタル値に変換することにより、全検出対象スプリアス周波数成分のレベルを示す第2のデジタル値を得るようしたので、全検出対象スプリアス周波数成分の検出を高精度で行なうことができ、スプリアス周波数成分のモニタを可能にすることができる。
【0059】
更に本発明によれば、処理対象反射波検出信号を検波することにより基本周波数成分とスプリアス周波数成分との双方を含む全検出対象反射波電力のレベルに対応したレベルを有する第3のアナログ信号を得た後、この第3のアナログ信号のレベルをデジタル変換することにより基本周波数成分とスプリアス周波数成分との双方を含む全検出対象反射波電力のレベルを示す第3のデジタル値を得て、第3のデジタル値からスプリアス周波数成分を示す第2のデジタル値を減算することにより、反射波電力の基本周波数成分を検出するようにしたので、狭帯域フィルタを用いることなく、反射波電力の基本周波数成分を正確に検出することができる。従って、複雑な演算処理を行なうデジタルフィルタを用いる等、ハードウェアに大きな負担をかけることなく、進行波電力及び反射波電力の基本周波数成分を正確に検出して、有効電力を設定範囲に保つ出力制御と、進行波電力と反射波電力との合計値が制限値を超えることがないように電力増幅部を制御する保護制御とを、高精度で行なわせることができる。
【0060】
また本発明によれば、少なくとも第1のアナログ信号及び第3のアナログ信号をそれぞれA/D変換するA/D変換部が直流信号をA/D変換するようにしたので、ハードウェアに大きな負担をかけることなく制御対象電力成分及び監視対象電力成分を高速で検出して、出力制御と保護制御とを高い応答速度をもたせて行なうことができ、連続した正弦波形の高周波電力を負荷に供給する場合の出力制御及び保護制御を正確かつ安定に行わせることができるのはもちろん、負荷に供給する高周波電力をパルス波形に変調する場合にも、ハードウェアの構成を複雑にしたり、波形歪みを生じさせたりすることなく、出力制御及び保護制御を正確かつ安定に行わせることができる。
【0061】
本発明によれば、第1及び第2の乗算部、少なくとも第1及び第3のA/D変換部並びにデジタル演算処理部を高速化することなく、制御の応答性を高めることができるため、入手が容易で低価格の部品を用いてハードウェアを構成して、低コストで、制御の応答性が高いことが必要とされる種々の仕様への対応を可能にすることができる。
【0062】
特に第2のアナログ信号生成部が第2のアナログ信号を直流信号として発生するように構成した場合には、第1ないし第3のA/D変換部のすべてを、変換速度がそれほど速くない低コストのハードウェアを用いて構成することができるため、コストの低減を図ることができる。
【0063】
本発明において、基準高周波信号のレベルを検出する基準高周波信号レベル検出部を設けて、基準高周波信号レベル検出部により検出された基準高周波信号のレベルを一定に保つように高周波信号発生部を制御する高周波信号制御ループを構成した場合には、高周波信号及び基準高周波信号のレベルを一定に保つことができるため、制御を安定に行なわせることができる。
【0064】
また第1のデジタル値から求められる進行波電力の基本周波数成分、第3のデジタル値から第2のデジタル値を減じた値を第1のデジタル値から減じた値から求められる有効電力成分、及び第1のデジタル値から第3のデジタル値を減じた値から求められる有効電力のいずれかを制御対象電力成分として外部指令に応じて演算するようにデジタル演算処理部を構成した場合には、制御対象電力成分の変更を容易に行うことができるため、ユーザーが要求する仕様に合った高周波電源装置を容易に構成することができる。
【0065】
更に、第1のデジタル値から求められる進行波電力の基本周波数成分の値と第3のデジタル値から第2のデジタル値を減じた値から求められる反射波電力の基本周波数成分との合計値、または第1のデジタル値から求められる進行波電力の基本周波数成分の値と第3のデジタル値から求められる全検出対象反射波電力成分との合計値を監視対象電力成分として外部指令に応じて演算するようにデジタル演算処理部を構成した場合には、監視対象電力成分の変更を容易に行うことができるため、ユーザーが要求する仕様に合った高周波電源装置を容易に構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明の一実施形態の構成を示したブロック図である。
【図2】本発明の他の実施形態の構成を示したブロック図である。
【図3】本発明の実施形態においてデジタル演算処理部により構成される機能実現手段の構成例を示したブロック図である。
【図4】本発明の実施形態で用いるローパスフィルタの特性の一例を示した周波数特性図である。
【図5】本発明の実施形態で用いるバンドパスフィルタの特性の一例を示した周波数特性図である。
【図6】本発明の実施形態で用いる他のバンドパスフィルタの特性の一例を示した周波数特性図である。
【図7】(A)及び(B)は高周波電源装置の出力波形の異なる例を模式的に示した波形図である。
【発明を実施するための形態】
【0067】
以下図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。
図1は本発明の一実施形態の全体的な構成を示したもので、同図において、1は、中央演算処理装置CPU,ROMやEEPROM等の不揮発性メモリ、一次記憶メモリRAM等を備えたマイクロプロセッサにより構成されるデジタル演算処理部である。この演算処理部は、基準クロック発生部2が発生する基準クロック信号に基づいて制御されて、不揮発性メモリに記憶されたプログラムを実行することにより、各種の機能を果たす機能実現手段を構成する。デジタル演算処理部1は、インターフェース3を通して外部との信号のやりとりを行なう。
【0068】
4は、デジタル演算処理部1から与えられる周波数指令及び振幅指令により指令された通りの周波数と振幅とを有する高周波数信号を発生する高周波信号発生部、5は高周波信号発生部4が発生した高周波信号を分波して高周波信号Sh1と基準高周波信号Sh2とを出力する分波器、6は分波器5から出力された高周波信号Sh1を増幅して高周波電力を出力する電力増幅部である。
【0069】
図示の電力増幅部6は、高周波信号Sh1を増幅して高周波電力を出力する増幅回路601と、出力制御信号SL に応じて増幅回路の出力レベルを調節するレベル調節部602と、保護制御信号Sp に応じて増幅回路の出力を抑制する制御を行う保護制御部603とを備えている。図示のレベル調節部602は、分波器5と増幅回路601との間に挿入されていて、出力制御信号SL に応じて増幅回路601に入力される高周波信号のレベルを調節することにより、増幅回路601から出力される高周波電力のレベルを調節する。保護制御信号Sp は、増幅回路601の出力の抑制量を指示する信号であり、保護制御部603は、保護制御信号Sp が与えられている間、増幅回路601のゲインを低下させるか、または増幅回路601の電源電圧を低下させることにより、保護制御信号が指示する抑制量だけ増幅回路601の出力を抑制する制御を行う。
【0070】
図示してないが、従来の高周波電源装置と同様に、電力増幅部6の出力段にはスプリアス周波数成分を除去するフィルタが接続されていて、増幅回路601内等で発生したスプリアス周波数成分が電力増幅部6から出力されないように配慮されている。
【0071】
8は電力増幅部6の出力側で負荷9に与えられる進行波電力と負荷9から戻ってくる反射波電力とを検出する高周波検出部である。高周波検出部8は方向性結合器からなっていて、電力増幅部6から出力される高周波電力の大部分を負荷に向けて通過させるとともに、負荷に供給される進行波電力と負荷から戻ってくる反射波電力とを分離して検出して進行波検出信号Sfと反射波検出信号Srとを出力する
【0072】
本実施形態では、分波器5により基準高周波信号生成部10が構成され、この基準高周波信号生成部から出力される基準高周波信号Sh2が第1の乗算部11に入力されている。第1の乗算部11にはまた進行波検出信号Sfが、位相補正部12を通して入力され、基準高周波信号Sh2と、位相補正部12により位相が補正された進行波検出信号Sf とが第1の乗算部11により乗算される。第1の乗算部11の出力信号は、アナログフィルタからなるローパスフィルタ(LPF)により構成された第1の信号生成部13に入力され、第1の信号生成部13から出力される第1のアナログ信号S1が、第1のA/D変換部14を通してデジタル演算処理部1に入力されている。
【0073】
第1の乗算部11に入力される基準高周波信号Sh2の振幅をA、角周波数をω,位相角をα,時間をtとして、基準高周波信号をSh2=Asin(ωt−α)で表わし、進行波検出信号Sf の振幅をB、角周波数をω,位相角をβ,時間をtとして、進行波検出信号をSf =sin(ωt−β)で表わし、乗算記号を*とすると、第1の乗算部11の出力は下記の式で与えられる。
Asin(ωt−α)*Bsin(ωt−β)
=(A*B/2)[cos(α−β)−cos{2ωt−(α+β)}] …(1)
【0074】
位相角α及びβが一定であるとすると、cos(α−β)は定数となるため、上記の式の(A*B/2)*cos(α−β)は直流分となる。即ち、位相角α及びβが一定である場合、第1の乗算部11の出力信号は、直流分と、基本周波数の2倍の周波数の成分とからなる。ここで基準高周波信号のレベルAを一定とすると、上記の直流分は進行波電力の基本周波数成分の振幅の最大値Bに比例する。従って、この直流分を抽出することにより、進行波電力の基本周波数成分の最大値を検出することができる。
【0075】
進行波電力の基本周波数成分を示す直流分(A*B/2)*cos(α−β)は、基準高周波信号と進行波検出信号との位相差α−βが0及びmπ(mは1以上の整数)のときに最大になり、位相差α−βがnπ/2(nは1以上の奇数)のときに0になる。従って、基準高周波信号と進行波検出信号との位相差をnπ/2以外の値に調整することにより、第1の乗算部11の出力に含まれる直流分(A*B/2)cos(α−β)の値を零でない値にすることができ、この直流分を抽出することにより、進行波電力の基本周波数成分を検出することができる。また基準高周波信号と進行波検出信号との位相差を0またはmπに調整して、抽出した直流分A*B/2の絶対値をとることにより、進行波電力の基本周波数成分を最大感度で検出することができる。本実施形態では、位相補正部12で進行波検出信号の位相を補正することにより、α=βに調整して、進行波電力の基本周波数成分の最大値Bに比例する直流分A*B/2を得るようにしている。α=βのとき、(1)式は、
Asin(ωt−α)*Bsin(ωt−α)=(A*B/2)[1−cos(2ωt−2α)] …(1)′
となる。
【0076】
本実施形態では、第1の乗算部11の出力を第1の信号生成部13に与えてローパスフィルタに通すことにより、(1)′式の直流分A*B/2を抽出して、進行波電力の基本周波数成分のレベルに対応するレベルを有する第1のアナログ信号を得、この第1のアナログ信号を進行波電力の基本周波数成分のレベルに対応するレベルを有する信号として用いる。第1の信号生成部13を構成するローパスフィルタとしては、例えば図4に波線で示した周波数特性を有するものを用いる。進行波検出信号にスプリアス周波数成分が混入したとしても、該スプリアス周波数成分が直流分(A*B/2)の近傍に現れることは通常はないため、ローパスフィルタによる直流分の抽出は容易に行うことができる。
【0077】
ローパスフィルタからなる第1の信号生成部13が出力する第1のアナログ信号S1 は第1のA/D変換部14に入力され、第1のA/D変換部14により第1のアナログ信号S1 のレベルが第1のデジタル値D1 (進行波電力の基本周波数成分の最大値を示すデジタル値)に変換されてデジタル演算処理部1に入力される。第1のA/D変換部14が変換するアナログ信号は直流信号であるため、第1のA/D変換部14を構成するハードウェアとして変換速度が遅いものを用いても、高周波電力の波形をパルス変調された波形とする場合の出力制御及び保護制御を、遅れを伴うことなく行わせるために必要にして十分な速度で変換データを得ることができる。従って、ハードウェアに大きな負担をかけることなく、進行波電力の基本周波数成分の検出をハイスピードで行わせることができ、高周波電力の波形をパルス変調された波形とする場合の制御にも十分に対応することができる。
【0078】
本実施形態では、反射波検出信号Sr をアナログフィルタからなるバンドパスフィルタ(BPF)16に入力して、反射波検出信号Sr から検出の対象としない不要なスプリアス周波数成分を除去することにより、基本周波数成分と検出の対象とするスプリアス周波数成分(全検出対象スプリアス周波数成分)とを含む処理対象反射波検出信号Sr ′を生成し、この処理対象反射波検出信号Sr ′を、基準高周波信号Sh2とともに第2の乗算部15に入力する。
【0079】
バンドパルフィルタ16としては、図5に波線で示されたような周波数特性を有して、反射波検出信号に含まれる基本周波数成分と検出の対象とする全スプリアス周波数成分との双方を通過させる広帯域のものを使用する。例えば、高周波電力の基本周波数が50HMHzで、検出の対象とするスプリアス周波数成分が、±30MHzの周波数帯域内に存在するとした場合、図5に示したフィルタとしては、20MHz〜80MHzの周波数成分を通過させ得るバンドパスフィルタを用いる。また例えば検出したいスプリアス周波数が2MHzと12MHzにもある場合、バンドパスフィルタ16の帯域は1MHz〜90MHz以上に設定する。これは、2MHz,12MHz及び50MHz以外にも、50MHz±2MHz,4MHz,6MHz,12MHz,24MHz,36MHzなどの主なスプリアス周波数を検出するためである。更に、高周波電力の基本周波数が50MHzであるときに第2高調波成分(100MHz)をもスプリアス周波数成分として検出したい場合には、バンドパスフィルタ16として、100MHzを通過させ得る周波数帯域を持ったバンドパスフィルタを使用する。
【0080】
第2の乗算部15は、基準高周波信号Sh2を、処理対象反射波検出信号Sr ′に含まれる反射波電力の基本周波数成分と検出の対象とする各スプリアス周波数成分とに乗算する。基準高周波信号を反射波電力の基本周波数成分に乗算することにより、反射波電力の基本周波数成分の振幅の最大値に比例したレベルの直流分と基本周波数の2倍の周波数成分とが得られる。また基準高周波信号を各スプリアス周波数成分と乗算することにより、各スプリアス周波数成分が、各スプリアス周波数と基準高周波信号Sh2の周波数との差の周波数を有する差周波数変換成分と、各スプリアス周波数と基準高周波信号Sh2の周波数との和の周波数を有する和周波数変換成分とに周波数変換される。従って、第2の乗算部15の出力信号は、反射波電力の基本周波数成分の振幅の最大値に比例した直流分と、基本周波数の2倍の周波数成分、差周波数変換成分及び和周波数変換成分を含む交流分とからなる。
【0081】
反射波電力に重畳されている全検出対象スプリアス周波数成分のレベルを検出するためには、周波数変換された全検出対象スプリアス周波数成分のうち、差周波数変換成分または和周波数変換成分のいずれかを検出すればよいが、検出に用いるフィルタを構成する上では、周波数が低い帯域に存在する差周波数変換成分を検出する方が有利である。そこで本実施形態では、第2の乗算部15により周波数変換された全検出対象スプリアス周波数成分のうち、差周波数変換成分を抽出することにより、反射波電力に重畳されている全検出対象スプリアス周波数成分のレベルを検出する。
【0082】
そのため本実施形態では、第2の乗算部15の出力をバンドパスフィルタに供給することにより、第2の乗算部15の出力信号から直流分と、基本周波数の2倍の周波数成分を含むように設定された高域側設定周波数帯域に含まれる周波数成分とを除去して、反射波電力に重畳されている全検出対象スプリアス周波数成分のレベルに対応したレベルを有する検出信号を抽出する。この場合、反射波電力に重畳されているスプリアス周波数成分によっては、バンドパスフィルタが通過させる帯域に、第2の乗算部により周波数変換された和周波数変換成分の一部が含まれることがあり得るが、通常、和周波数変換成分の大部分は基本周波数の2倍の周波数よりも高い周波数帯域に含まれるので、上記のような方法で全検出対象スプリアス周波数成分のレベルを検出しても大きな誤差は生じない。
【0083】
本実施形態では、第2の乗算部15の出力信号が、アナログフィルタからなるバンドパスフィルタと、該バンドパスフィルタの出力のレベルを検出する検波器とからなる第2の信号生成部17に入力される。この場合、検波器としては、精度が高い自乗検波器を用いるのが好ましい。第2の信号生成部17に設けるバンドパスフィルタとしては、図6に波線で示したような周波数特性を有して、直流分(0Hz)と、高周波電力の基本周波数の2倍の周波数成分を含むように設定した高域側設定周波数帯域に含まれる周波数成分との通過を阻止するものを用いる。バンドパスフィルタ16が前述の特性を有する場合、図6に示した特性を有するバンドパスフィルタとしては、例えば0.1MHZ〜80MHzの帯域を有するものを用いる。第2の信号生成部17は、第2の乗算部の出力から直流分と高周波電力の基本周波数の2倍の周波数成分を含む高域の周波数帯域とを除去した信号を検波して、検出の対象とする全スプリアス周波数成分のレベル(瞬時値)を示す直流の第2のアナログ信号S2 を出力する。本実施形態では、この第2のアナログ信号S2 を、反射波電力に重畳されているスプリアス周波数成分のうち、検出の対象とするスプリアス周波数成分のレベルに対応するレベルを有する検出信号として用いる。第2のアナログ信号S2 は、第2のA/D変換部18を通してデジタル演算処理部1に入力される。第2のA/D変換部18は、第2のアナログ信号S2 のレベルを第2のデジタル値D2 に変換してデジタル演算処理部1に入力する。
【0084】
第2のアナログ信号S2 は、全検出対象スプリアス周波数成分のレベル(瞬時値)を示す直流信号であり、第2のデジタル値D2 は、全検出対象スプリアス周波数成分のレベル(瞬時値)を示すデジタル値である。第2のA/D変換部18が変換するアナログ信号も直流信号であるため、第2のA/D変換部18を構成するハードウェアとして変換速度が遅いものを用いても、処理に必要な十分な速度で変換データを得ることができる。
【0085】
バンドパスフィルタ16から出力される処理対象反射波検出信号Sr ′は、自乗検波器とハイカットフィルタ(HCF)とからなる第3のアナログ信号生成部19に入力され、第3のアナログ信号生成部19により得られる第3のアナログ信号S3 が第3のA/D変換部20を通してデジタル演算処理部1に入力されている。
【0086】
第3のアナログ信号生成部19は、基本周波数成分と検出の対象とするすべてのスプリアス周波数成分(全検出対象スプリアス周波数成分)とを含む処理対象反射波検出信号を自乗検波した後、ハイカットフィルタにより、基本周波数成分の2倍の周波数を含む高域の周波数帯域に含まれる周波数成分を除去して、処理対象反射波検出信号Sr ′に含まれる基本周波数成分と全検出対象スプリアス周波数成分とを含む全検出対象反射波電力成分のレベル(瞬時値)に対応したレベルを有する直流の第3のアナログ信号を出力する。第3のA/D変換部20は、第3のアナログ信号S3 のレベルを第3のデジタル値D3 に変換してデジタル演算処理部1に入力する。上記ハイカットフィルタは、検波器の出力端子と接地間に接続されたコンデンサにより構成することができる。
【0087】
第3のアナログ信号S3 は、基本周波数成分及びスプリアス周波数成分の双方を含む全検出対象反射波電力の瞬時値を示す直流信号であり、第3のデジタル値D3 は、全検出対象反射波電力の瞬時値を示すデジタル値である。第3のA/D変換部20が変換するアナログ信号も直流信号であるため、第3のA/D変換部20を構成するハードウェアとして変換速度が遅いものを用いても、処理に必要な十分な速度で変換データを得ることができる。
【0088】
分波器5から出力される基準高周波信号Sh2はまた自乗検波器からなる基準高周波信号レベル検出部21に入力され、基準高周波信号レベル検出部21の出力がA/D変換部22を通してデジタル演算処理部1に入力されている。本実施形態では、レベル検出部21の出力端子と接地間にコンデンサを接続して、このコンデンサにより、レベル検出部21から直流分と共に出力される基本周波数の2倍の周波数成分がA/D変換部22に入力されるのを阻止するハイカットフィルタを構成している。
【0089】
上記のように、第1のデジタル値D1 ないし第3のデジタル値D3 を得ると、第1のデジタル値から進行波電力の基本周波数成分のレベルを知ることができ、第2のデジタル値から反射波電力に含まれているスプリアス周波数成分の内、検出の対象とする全スプリアス周波数成分のレベルを知ることができる。また第3のデジタル値から、基本周波数成分と全検出対象スプリアス周波数成分との双方を含む全検出対象反射波電力のレベルを検出することができ、第3のデジタル値から第2のデジタル値を減算して求めた値から反射波電力の基本周波数成分を検出することができる。
【0090】
デジタル演算処理部1は、CPUに所定のプログラムを実行させることにより、第1のデジタル値D1 ないし第3のデジタル値D3 から求められる制御対象電力成分を設定値に保つようにデジタルの出力制御信号DL を出力し、第1のデジタル値D1 ないし第3のデジタル値D3 から求められる監視対象電力成分が制限値を超えているときに該監視対象電力成分を制限値以下に低下させるようにデジタルの保護制御信号Dp を出力するための機能実現手段を構成する。
【0091】
デジタル演算処理部1はまた、CPUに所定のプログラムを実行させることにより、レベル検出部21により検出された高周波検出信号のレベルを一定に保つように高周波信号発生部4に振幅指令を与える振幅指令発生部を構成する。
【0092】
本実施形態における制御対象電力成分は、第1のデジタル値D1 から求められる進行波電力の基本周波数成分、第3のデジタル値D3 から第2のデジタル値D2 を減算することにより求められる反射波電力の基本周波数成分のレベルを第1のデジタル値から求められる進行波電力の基本周波数成分のレベルから減算することにより求められる有効電力、及び第3のデジタル値D3 から求められる全反射波電力のレベルを進行波電力の基本周波数成分から減算することにより求められる有効電力のうちの何れかである。
【0093】
また本実施形態における監視対象電力成分は、進行波電力の基本周波数成分の値と反射波電力の基本周波数成分の値との合計値、または進行波電力の基本周波数成分の値と全反射波電力の値との合計値である。
【0094】
デジタル演算処理部1は、制御対象電力成分を設定値に保つように、出力制御信号DL を出力する。デジタル演算処理部1が出力する出力制御信号DL は、D/A変換部23によりアナログのレベル制御信号SL に変換されてレベル調節部602に与えられる。出力制御をハイスピードで行なわせて、パルス波形の高周波電力を負荷に供給する場合にも対応し得るようにするため、D/A変換部23としては、シリアルデータではなく、パラレルデータが入力されるものを用いることが好ましい。レベル調節部602は、高周波信号発生部4から分波器5を通して与えられた一定レベルの高周波信号Sh1のレベルを、出力制御信号SL により指示されたレベルに調節して、レベルが調節された高周波信号を増幅回路601に与える。これにより、増幅回路601の出力レベルが設定値に一致するように調節される。
【0095】
デジタル演算処理部1はまた、監視対象電力成分が制限値を超えたときに、該監視対象電力成分が制限値以下になるまでの間、保護制御信号Dp を出力する。この保護制御信号Dpは、D/A変換部24によりアナログの保護制御信号Sp に変換されて保護制御部603に与えられる。保護制御をハイスピードで行なわせて、パルス波形の高周波電力を負荷に供給する場合にも半導体増幅素子の保護を的確に図ることができるようにするため、D/A変換部24としては、シリアルデータではなく、パラレルデータが入力されるものを用いることが好ましい。保護制御部603は、保護制御信号Sp が与えられている間、増幅回路601のゲインを低下させるか、または増幅回路601の電源電圧を低下させることにより、増幅回路601を構成する半導体増幅素子が破損したり、劣化したりするのを防止する保護制御を行う。
【0096】
デジタル演算処理部1が、制御対象電力成分を設定値に保つように、出力制御信号DL を出力するための演算処理を行なう際には、第1ないし第3のデジタル値D1 ないしD3 から進行波電力の基本周波数成分や反射波電力の基本周波数成分の電力値を実際に求めて、求めた電力値を設定値に保つように出力制御信号を発生させるようにしてもよく、電力値に相当するデジタル値を設定値に保つように出力制御信号を発生させるようにしてもよい。例えば、進行波電力の基本周波数成分を設定値に保つ制御を行なう際には、第1のデジタル値から進行波電力の基本周波数成分の電力値を演算して、演算した電力値を設定値に保つように出力制御信号を発生させるようにしてもよく、第1のデジタル値そのものを設定値に保つように出力制御信号を発生させるようにしてもよい。また進行波電力の基本周波数成分から反射波電力の基本周波数成分を減じた有効電力を設定値に保つ制御を行なう際には、第1のデジタル値D1 から進行波電力の基本周波数成分を演算し、第3のデジタル値D3 から第2のデジタル値D2 を減じた値から反射波電力の基本周波数成分を演算して、これらから求めた有効電力を設定値に保つように出力制御信号を発生させるようにしてもよく、D1 −(D3 −D2 )の値そのものを設定値に保つように出力制御信号を発生させてもよい。監視対象電力成分を制限値以下に抑制する保護制御を行なう際の信号処理についても同様である。
【0097】
第1のデジタル値D1 ないし第3のデジタル値D3 の変化が激しい場合には、第1のデジタル値D1 ないし第3のデジタル値D3 をそのまま用いて演算処理を行なうと、制御が不安定になるおそれがあるため、デジタル演算処理部1では、これらのデジタル値に移動平均等の平均化処理を施してから演算処理を行なう。第1のデジタル値D1 は、進行波電力の基本周波数成分の最大値に相当し、第2のデジタル値D2 は全検出対象スプリアス周波数成分の瞬時値に相当し、第3のデジタル値D3 は全検出対象反射波電力成分の瞬時値に相当するが、デジタル演算処理部1ではこれらのデジタル値をすべて平均化することにより、進行波電力の基本周波数成分、検出の対象とするスプリアス周波数成分及び全検出対象反射波電力成分をすべて平均値として扱う。デジタル値D1 ないしD3 に平均化処理を施す過程で遅延が生じ、この遅延が出力制御及び保護制御の応答性に影響を与えるおそれがあるため、平均化処理を行なう際の処理回数は、出力制御及び保護制御に生じる遅延を支障を来さない範囲に収めることができる回数に設定する。
【0098】
本実施形態では、第1の乗算部11と、位相補正部12と、第1の信号生成部13と、第1のA/D変換部14と、第2の乗算部15と、バンドパスフィルタ16と、第2の信号生成部17と、第2のA/D変換部18と、第3の信号生成部19と、第3のA/D変換部20とにより、進行波電力のレベルと、反射波に含まれる全検出対象スプリアス周波数成分(電力)のレベルと、全反射波電力のレベルとを検出する電力成分検出部が構成されている。
【0099】
図3は、本実施形態において、デジタル演算処理部1により構成される各種の機能実現手段を、ハードウェアにより構成される各部の構成とともに示したブロック図である。図3において、30は電力成分検出部で、前述のように、基準高周波信号Sh2と、進行波検出信号Sfと、反射波検出信号Srとを入力として、進行波電力の基本周波数成分のレベルを示す第1のデジタル値D1 と、反射波電力に含まれる全検出対象スプリアス周波数成分のレベルを示す第2のデジタル値D2 と、基本周波数成分とスプリアス周波数成分との双方を含む全反射波電力のレベルを示す第3のデジタル値D3 とを出力する。
【0100】
デジタル演算処理部1は、制御対象電力演算部31と、監視対象電力演算部32と、レベル制御信号発生部33と、出力レベル設定部34と、保護制御信号発生部35と、制限値設定部36と、振幅指令発生部37と、振幅設定部38と、周波数指令発生部39とを構成する。
【0101】
図示の制御対象電力演算部31は、インターフェース3を通して与えられる外部指令41に応じて、進行波電力の基本周波数成分、進行波電力の基本周波数成分から反射波電力の基本周波数成分を減算した電力である第1の有効電力、進行波電力の基本周波数成分から全検出対象反射波電力成分を減算した電力である第2の有効電力の何れかを制御対象電力として演算するように構成されている。ここで、進行波電力の基本周波数成分は、第1のデジタル値D1 から求められ、第1の有効電力成分は、第3のデジタル値D3から第2のデジタル値D2を減算した値から求められる反射波電力の基本周波数成分を第1のデジタル値D1 から求められる進行波電力の基本周波数成分から減算することにより求められる。また第2の有効電力成分は、第1のデジタル値D1 から求められる進行波電力の基本周波数成分から第3のデジタル値D3 により与えられる全検出対象反射波電力成分を減算することにより求められる。
【0102】
制御対象電力成分演算部31が演算した制御対象電力は、出力レベル設定部34により設定される増幅回路の出力レベルの設定値とともにレベル制御信号発生部33に与えられる。レベル制御信号発生部33は、演算された制御対象電力のレベルが設定値よりも低いときに、増幅回路601に入力する高周波信号のレベルを上昇させることを指示する出力制御信号DL を出力し、演算された制御対象電力のレベルが設定値よりも高いときに、増幅回路601に入力する高周波信号のレベルを低下させることを指示する出力制御信号DL を出力する。これにより、電力増幅部から出力される制御対象電力成分を設定値に保つように、電力増幅部が制御される。
【0103】
また監視対象電力成分演算部32は、インターフェース3を通して与えられる外部指令42に応じて、進行波電力の基本周波数成分のレベルと反射波電力の基本周波数成分のレベルとを加算して求めた第1の合計値または進行波電力の基本周波数成分のレベルと全検出対象反射波電力成分のレベルとを加算して求めた第2の合計値を監視対象電力成分として演算する。
【0104】
ここで、第1の合計値は、第3のデジタル値D3 から第2のデジタル値D2 を減算して求めた反射波電力の基本周波数成分のレベルを第1のデジタル値D1 から求められる進行波電力の基本周波数成分のレベルに加算することにより求めることができる。また第2の合計値は、第1のデジタルD1 から求められる進行波電力の基本周波数成分のレベルと第3のデジタル値D3 から求められる全検出対象反射波電力成分のレベルとを加算することにより求めれる。
【0105】
監視対象電力成分演算部32が演算した監視対象電力成分は、制限値設定部36が設定した制限値とともに保護制御信号発生部35に与えられる。保護制御信号発生部35は、演算された監視対象電力成分が制限値を超えているときに、増幅回路601の出力の抑制量を指示する保護制御信号Dp を出力し、演算された監視対象電力成分が制限値以下になったときに保護制御信号Dp の出力を停止する。これにより、監視対象電力成分が制限値を超えることがないように電力増幅部の出力が制御されて、増幅回路を構成する半導体増幅素子が破損したり劣化したりするのが防止される。
【0106】
上記の実施形態において、高周波信号発生部4は、図7(A)に示すように連続した正弦波形の高周波信号を発生するものでもよく、図7(B)に示すように正弦波形の高周波信号をパルス変調して、パルス波形(断続波形)の高周波信号を発生するものでもよい。
【0107】
上記の実施形態のように、高周波信号発生部4が出力する高周波信号の一部を分波することにより高周波信号と波形及び周波数が等しい基準高周波信号を得て、この基準高周波信号を用いて直接検波を行なうことにより、進行波電力の基本周波数成分を検出するようにすると、周波数変換を行なう場合のように、高周波信号発生部4の他に局部信号発生部を設ける必要がないため、ハードウェアの構成を簡単にすることができる。また信号発生部としては高周波信号発生部4のみを設ければよいため、信号発生部相互間の干渉を防ぐための対策や高度のノイズ対策を講じる必要性及び信号発生部を同期運転する必要性をなくすことができ、回路構成を簡単にして製造を容易にすることができる。
【0108】
また上記の実施形態のように、反射波検出信号Sr から不要なスプリアス周波数成分(検出の対象としないスプリアス周波数成分)を除去することにより得た処理対象反射波検出信号Sr ′と基準高周波信号Sh2とを乗算して得た信号から直流分と基本周波数の2倍の周波数成分を含むように設定された高域側設定周波数帯域に含まれる周波数成分とを除去した信号を検波する処理を行なうことにより、全検出対象スプリアス周波数成分のレベルを示す第2のアナログ信号を得て、この第2のアナログ信号のレベルをデジタル値に変換することにより、全検出対象スプリアス周波数成分のレベルを示す第2のデジタル値を得るようすると、全検出対象スプリアス周波数成分のレベルの検出を高精度で行なうことができ、スプリアス周波数成分のモニタを可能にすることができる。
【0109】
更に上記の実施形態のように、反射波検出信号を検波することにより基本周波数成分と検出の対象とする全検出対象スプリアス周波数成分との双方を含む全検出対象反射波電力成分のレベルに対応するレベルを有する第3のアナログ信号を得た後、この第3のアナログ信号をデジタル変換することにより基本周波数成分と全検出対象スプリアス周波数成分との双方を含む全検出対象反射波電力成分のレベルを示す第3のデジタル値を得て、第3のデジタル値から検査の対象とする全スプリアス周波数成分を示す第2のデジタル値を減算することにより、反射波電力の基本周波数成分を検出するようにすると、狭帯域フィルタを用いることなく、反射波電力の基本周波数成分を正確に検出することができる。従って、複雑な演算処理を行なうデジタルフィルタを用いることなく、進行波電力及び反射波電力の基本周波数成分を正確に検出して、有効電力を設定範囲に保つ出力制御と、進行波電力と反射波電力との合計値が制限値を超えることがないように電力増幅部を制御する保護制御とを、ハードウェアに大きな負担をかけることなく高精度で行なわせることができる。
【0110】
また上記の実施形態のよう、直流信号からなる第1のアナログ信号ないし第3のアナログ信号をA/D変換することにより、進行波電力の基本周波数成分を示す第1のデジタル値と、全検出対象スプリアス周波数成分を示す第2のデジタル値と、全検出対象反射電力成分を示す第3のデジタル値とを得て、これらのデジタル値から制御対象電力成分及び監視対象電力成分を検出するようにすると、制御対象電力成分及び監視対象電力成分を検出する際に高速のA/D変換を必要としないため、ハードウェアに大きな負担をかけることなく制御対象電力成分及び監視対象電力成分を高速で検出して、出力制御と保護制御とを高い応答速度をもたせて行なわせることができる。従って、図7(A)に示したような連続した正弦波形の高周波電力を負荷に供給する場合の出力制御及び保護制御を正確かつ安定に行わせることができるのはもちろん、図7(B)に示したように負荷に供給する正弦波形の高周波電力をパルス波形に変調して断続波形とする場合にも、ハードウェアに大きな負担をかけることなく、かつ波形歪みを生じさせることなく、出力制御及び保護制御を正確かつ安定に行わせることができる。
【0111】
上記の実施形態のように構成すれば、各乗算部、各AD変換部及びデジタル演算処理部を高速化することなく、制御の応答性を高めることができるため、入手が容易で低価格の部品を用いてハードウェアを構成して、コストの上昇を伴うことなく、制御の応答性が高い高周波電源装置を得ることができる。
【0112】
また上記の実施形態のように、基準高周波信号Sh2のレベルを検出する基準高周波信号レベル検出部21を設けて、この基準高周波信号レベル検出部により検出された基準高周波信号のレベルを一定に保つように高周波信号発生部4を制御する高周波信号制御ループを構成した場合には、高周波信号及び基準高周波信号のレベルを一定に保つことができるため、制御を安定に行なわせることができる。
【0113】
また上記の実施形態のように、外部指令に応じて、第1のデジタル値D1 から検出される進行波電力の基本周波数成分、第3のデジタル値D3 から第2のデジタル値D2 を減じた値を第1のデジタル値D1 から減じた値から検出される有効電力成分、及び第1のデジタル値D1 から第3のデジタル値D3 を減じた値が示す有効電力成分のいずれかを制御対象電力成分として演算するように構成すると、制御対象電力成分の変更を容易に行うことができるため、ユーザーが要求する仕様に合った高周波電源装置を容易に構成することができる。
【0114】
更に、上記の実施形態のように、外部指令に応じて、第1のデジタル値D1 から求められる進行波電力の基本周波数成分と第3のデジタル値D3 から第2のデジタル値D2 を減じた値から求められる反射波電力の基本周波数成分との合計値、または第1のデジタル値D1 から求められる進行波電力の基本周波数成分のレベルと第3のデジタル値D3 から求められる全検出対象反射波電力成分のレベルとの合計値を監視対象電力成分として演算するように構成した場合には、監視対象電力成分の変更を容易に行うことができるため、ユーザーが要求する仕様に合った高周波電源装置を容易に構成することができる。
【0115】
上記の実施形態では、進行波検出信号Sf の位相を補正するように位相補正部12を設けたが、位相補正部12は、基準高周波信号と進行波検出信号との位相差をnπ/2以外の値にするように補正するためのものであるので、図2に示したように、基準高周波信号の位相を補正するように位相補正部12を設けてもよい。
【0116】
上記の実施形態では、反射波検出信号Sr から検出の対象としない不要なスプリアス周波数成分を除去するために、反射波検出信号Sr をバンドパスフィルタ16に入力することにより、処理対象反射波検出信号Sr ′を得るようにしているが、反射波電力に含まれるすべてのスプリアス周波数成分を検出の対象とする場合には、バンドパルフィルタ16を省略して、高周波検出部8から得られる反射波検出信号Sr そのものを処理対象反射波検出信号Sr ′とする。
【0117】
また上記の実施形態では、進行波電力の基本周波数成分と反射波電力の基本周波数成分との合計値、又は進行波電力の基本周波数成分と基本周波数成分及び検出の対象とするスプリアス周波数成分の双方を含む全検出対象反射波電力成分との合計値を監視対象電力成分として保護制御を行わせているが、本発明は、反射波電力の基本周波数成分または全検出対象反射波電力成分のみを監視対象電力成分として保護制御を行う場合をも包含する。
【0118】
上記の実施形態では、第2の信号生成部17をバンドパルフィルタと該バンドパスフィルタの出力を検波する検波器(好ましくは自乗検波器)とにより構成して、第2のアナログ信号を直流信号とするようにしたが、検波器を省略して、第2の信号生成部17をバンドパルフィルタのみにより構成することもできる。この場合、第2のアナログ信号が交流信号となるため、第2のA/D変換部18を構成するハードウェアとしては、遅れを伴うことなく出力制御と保護制御とを行なわせるために必要な検出速度を得るのに必要な速度で交流信号をA/D変換し得るものを用いる必要があるが、本発明においては、第1のA/D変換部及び第3のA/D変換部をそれぞれ構成するハードウェアとして低コストのものを用いることができるため、第2のA/D変換部18のコストが多少上昇しても、全体としてはコストの上昇を抑えることができる。
【符号の説明】
【0119】
1 デジタル演算処理部
4 高周波信号発生部
5 分波器
6 電力増幅部
601 増幅回路
602 レベル調節部
603 保護制御部
8 高周波検出部
9 負荷
11 第1の乗算部
12 位相補正部
13 第1の信号生成部
14 第1のA/D変換部
15 第2の乗算部
16 バンドパスフィルタ
17 第2の信号生成部
18 第2のA/D変換部
19 第3の信号生成部
20 第3ののA/D変換部
21 基準高周波信号レベル検出部
22 A/D変換部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
正弦波形の高周波信号を発生する高周波信号発生部と、前記高周波信号を増幅して高周波電力を出力する増幅回路と出力制御信号に応じて前記増幅回路の出力レベルを調節するレベル調節部と保護制御信号に応じて前記増幅回路の出力を抑制する保護制御部とを有する電力増幅部と、前記電力増幅部の出力から進行波電力及び反射波電力を検出して進行波検出信号及び反射波検出信号を出力する高周波検出部と、前記進行波検出信号及び反射波検出信号から検出される制御対象電力成分を設定値に保つように前記電力増幅部に出力制御信号を与え、前記進行波検出信号及び反射波検出信号から検出される監視対象電力成分を制限値以下に保つように前記電力増幅部に前記保護制御信号を与える制御部とを備えた高周波電源装置であって、
前記制御部は、
前記高周波信号発生部から前記レベル調節部に入力される高周波信号の一部を分波して負荷に供給される高周波電力と波形及び周波数が等しい基準高周波信号を得る基準高周波信号生成部と、
前記進行波検出信号と前記基準高周波信号との間の位相差をnπ/2(nは1以上の奇数)以外の値に補正する位相補正部と、
前記位相補正部により位相差が補正された前記進行波検出信号と基準高周波信号とを乗算する第1の乗算部と、
前記反射波検出信号又は前記反射波検出信号から検出の対象としないスプリアス周波数成分を除去した信号を処理対象反射波検出信号として、該処理対象反射波検出信号と前記基準高周波信号とを乗算する第2の乗算部と、
前記第1の乗算部の出力から直流分を抽出して前記進行波電力の基本周波数成分のレベルに対応したレベルを有する第1のアナログ信号を得る第1の信号生成部と、
前記第2の乗算部の出力から直流分と基本周波数の2倍の周波数成分を含むように設定された高域側設定周波数帯域に含まれる周波数成分とを除去して前記処理対象反射波検出信号に含まれる全検出対象スプリアス周波数成分のレベルに対応したレベルを有する第2のアナログ信号を得る第2の信号生成部と、
前記処理対象反射波検出信号を検波して前記処理対象反射波検出信号に含まれる基本周波数成分と全スプリアス周波数成分とを含む全検出対象反射波電力成分のレベルに対応したレベルを有する第3のアナログ信号を得る第3の信号生成部と、
前記第1のアナログ信号ないし第3のアナログ信号のレベルをそれぞれ第1のデジタル値ないし第3のデジタル値に変換する第1ないし第3のA/D変換部と、
前記第1のデジタル値ないし第3のデジタル値から前記制御対象電力成分及び監視対象電力成分を求めて、求めた制御対象電力成分を設定値に保つように前記出力制御信号を出力し、求めた監視対象電力成分が制限値を超えているときに該監視対象電力成分を制限値以下に抑制するように前記保護制御信号を出力するデジタル演算処理部と、
を備えていることを特徴とする高周波電源装置。
【請求項2】
前記第2の信号生成部は、前記第2の乗算部の出力から直流分と基本周波数の2倍の周波数成分を含むように設定された高域側設定周波数帯域に含まれる周波数成分とを除去した信号を検波して、前記処理対象反射波検出信号に含まれる全スプリアス周波数成分のレベルに対応したレベルを有する直流の第2のアナログ信号を得るように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の高周波電源装置。
【請求項3】
前記制御対象電力成分は、前記第1のデジタル値から求められる進行波電力の基本周波数成分である請求項1又は2に記載の高周波電源装置。
【請求項4】
前記制御対象電力成分は、前記第3のデジタル値から第2のデジタル値を減算した値から求められる反射波電力の基本周波数成分を前記第1のデジタル値から求められる進行波電力の基本周波数成分から減算することにより求められる有効電力成分である請求項1又は2に記載の高周波電源装置。
【請求項5】
前記制御対象電力成分は、前記第1のデジタル値から求められる進行波電力の基本周波数成分から前記第3のデジタル値から求められる全検出対象反射波電力成分を減算することにより求められる有効電力成分である請求項1又は2に記載の高周波電源装置。
【請求項6】
前記デジタル演算処理部は、前記第1のデジタル値から求められる進行波電力の基本周波数成分、前記第3のデジタル値から第2のデジタル値を減じた値を第1のデジタル値から減算した値から求められる有効電力成分、及び前記第1のデジタル値から第3のデジタル値を減じた値から求められる有効電力成分のいずれかを前記制御対象電力成分として外部指令に応じて演算するように構成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の高周波電源装置。
【請求項7】
前記監視対象電力成分は、前記第1のデジタル値から求められる進行波電力の基本周波数成分と前記第3のデジタル値から第2のデジタル値を減じた値から求められる反射波電力の基本周波数成分との合計値である請求項1ないし6の何れかに記載の高周波電源装置。
【請求項8】
前記監視対象電力成分は、前記第1のデジタル値から求められる進行波電力の基本周波数成分と前記第3のデジタル値から求められる全検出対象反射波電力成分との合計値である請求項1ないし6のいずれかに記載の高周波電源装置。
【請求項9】
前記デジタル演算処理部は、前記第1のデジタル値から求められる進行波電力の基本周波数成分と前記第3のデジタル値から第2のデジタル値を減じた値から求められる反射波電力の基本周波数成分との合計値、または前記第1のデジタル値から求められる進行波電力の基本周波数成分と前記第3のデジタル値から求められる全検出対象反射波電力成分との合計値を前記監視対象電力成分として外部指令に応じて演算するように構成されていることを特徴とする請求項1ないし6の何れかに記載の高周波電源装置。
【請求項10】
前記基準高周波信号のレベルを検出する基準高周波信号レベル検出部を備え、
前記基準高周波信号レベル検出部により検出された基準高周波信号のレベルを一定に保つように前記高周波信号発生部を制御する高周波信号制御ループが構成されていることを特徴とする請求項1ないし9のいずれかに記載の高周波電源装置。
【請求項11】
前記高周波信号発生部は、正弦波形の高周波信号をパルス波形に変調して出力するように構成されている請求項1ないし10のいずれかに記載の高周波電源装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−185922(P2012−185922A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−46412(P2011−46412)
【出願日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【出願人】(000000262)株式会社ダイヘン (990)
【Fターム(参考)】